JP6094817B2 - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
この種の電池の典型的な構成では、正極活物質層を有する正極と、上記正極活物質層よりも面積の広い負極活物質層を有する負極と、非水電解質とを備える。一般に、このような電池の製造では、先ず正極と負極を用いて電極体を作製し、次に該電極体と非水電解質を用いて電池組立体を構築する。そして、該電池組立体に対して初期充電(コンディショニング)や高温環境下でのエージング(保持)を施した後、性能の確認(例えば自己放電検査)を行う。
つまり、対向部と非対向部とを有している構成の負極活物質層では、初期充電によって対向部に電荷担体が吸蔵され該対向部の電位が下がると、エージング中に負極活物質層内で濃度緩和が生じ、電荷担体が相対的に電位の高い非対向部へと徐々に移動する。かかる電池組立体を高SOC状態のまま放置すると、濃度緩和が進行し、電荷担体が非対向部のより端部、より深部へと移動する。その後に該電池組立体を放電させると、対向部の電荷担体が放出され該対向部の電位が上昇する一方、非対向部に吸蔵された電荷担体は放出されずに当該部位に残存する。対向部と非対向部とで電荷担体の吸蔵量が異なると、負極活物質層内に電位差(分極)が生じ、かかる電位差が解消されるまで電圧の上昇が続くこととなる。
したがって、精度の高い判定を行うには、上述のような電圧の上昇が収まって電池組立体の内部の状態が十分に安定するのを待つ必要がある。このため、従来の製造方法では概して製造にかかる時間が長くなりがちであった。
この問題に対処する技術として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1には、エージング後の電池を高SOC状態で1〜7日間保持した後に放電させることで、自己放電検査にかかる時間を短縮し得る旨が記載されている。
本発明はかかる状況を鑑みて創出されたものであり、その目的は、自己放電検査時の電圧上昇期間を短くし、短時間で信頼性の高い電池を製造する方法を提供することにある。
さらに、本発明者らの検討によれば、エージング後に高SOC状態で電池組立体を放置する温度(以下、単に「放置温度T」とも言う。)と、上記電圧上昇期間V0との間には反比例の関係があることが判明した。換言すれば、放置温度Tを上昇させることで電圧上昇期間V0を短縮し得ることがわかった。しかしながら単純に放置温度Tを上昇させた場合には自己放電検査の精度や最終製品にバラつきが生じる虞がある。
なお、本明細書において「常温域」とは、20℃±15℃(すなわち、例えば5〜35℃、好ましくは10〜30℃、より好ましくは20〜30℃)を指すものとする。
ここでは、正極および負極を備える電極体を準備する。かかる電極体は、正極活物質層を有する正極と負極活物質層を有する負極とを、典型的にはセパレータを介して、積層してなる。
正極としては、正極活物質を導電材やバインダ等とともに組成物として正極集電体上に付着させ、正極活物質層を形成した形態のものを用いることができる。正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウム)からなる導電性部材を好適に採用し得る。正極活物質としては、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4等)を好適に採用し得る。導電材としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)や黒鉛等の炭素材料を好適に採用し得る。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリエチレンオキサイド(PEO)等の各種のポリマー材料を好適に採用し得る。
負極としては、負極活物質をバインダ等とともに組成物として負極集電体上に付着させ、負極活物質層を形成した形態のものを用いることができる。負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば銅)からなる導電性材料を好適に採用し得る。負極活物質としては、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)等の炭素材料を用いることができ、なかでもアモルファスコートグラファイト(黒鉛粒子の表面にアモルファスカーボンがコートされた形態のもの)を好適に採用し得る。バインダとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の各種のポリマー材料を好適に採用し得る。
セパレータとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る多孔質樹脂シートを好適に採用し得る。なかでも、上記多孔性樹脂シートの片面または両面に多孔質な耐熱層を備えるものが好ましく、該耐熱層と上記正極とが対向するよう配置することがより好ましい。
このような構成の負極活物質層では、初期充電によって対向部に電荷担体(典型的にはリチウムイオン)が吸蔵され該対向部の電位が下がると、エージング中に負極活物質層内で濃度緩和が生じ、電荷担体が相対的に電位の高い非対向部へと徐々に移動する。かかる電池を高SOC状態のまま放置すると、上述のような濃度緩和が進行し、電荷担体が非対向部のより端部、より深部へと移動する。その後に該電池を放電させると、対向部の電荷担体が放出され該対向部の電位が上昇する一方、非対向部に吸蔵された電荷担体は放出されずに当該部位に残存する。対向部と非対向部とで電荷担体の吸蔵量が異なると、負極活物質層内に電位差(分極)が生じ、かかる電位差が解消されるまで電池電圧の上昇が続くこととなる。このため、本発明の適用が特に効果的である。
ここでは、典型的には常温域において、上記電極体と非水電解質とを電池ケース内に収容し、電池組立体を構築する。電池ケースとしては、例えばアルミニウムやスチール等の軽量な金属材製のものを好適に採用し得る。
非水電解質としては、非水溶媒中に支持塩を含有させたものを好適に採用し得る。あるいは、非水電解液にポリマーが添加され固体状(典型的には、いわゆるゲル状)となったものでもよい。支持塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等を用いることができ、なかでもLiPF6、LiBF4等のリチウム塩を好適に採用し得る。非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。
なお、本明細書において「電池組立体」とは、電極体と非水電解質とを用いて初期充電工程に先立った段階にまで組み立てられているもの全般をいい、電池の種類や構成等は特に限定されない。例えば電池ケースは封口前であってもよいし封口後であってもよい。
ここでは、典型的には常温域で、上記電池組立体を充電する。例えば、該電池組立体の正極と負極の間に外部電源を接続し、所定の電圧まで充電(典型的には定電流充電)する。これにより負極で非水電解質の一部(典型的には非水溶媒)が還元分解され、負極活物質の表面にその分解物からなる被膜が形成される。かかる被膜によって該負極活物質と非水電解質との界面が安定化され、以後の充放電に伴う非水電解質の分解を抑制することができる。このため、電池の耐久性を向上させることができる。
初期充電における正負極端子間の電圧(典型的には最高到達電圧)は、電池組立体のSOCが凡そ65%以上(典型的には80%以上、例えば80〜105%)の範囲にあるときに示し得る電圧範囲とすればよい。例えば、4.2Vで満充電となる電池では、正負極間の電圧を凡そ3.7〜4.2Vの範囲に調整するとよい。図3に示す例では、本工程終了後の(終止)電圧を凡そ3.95Vに設定している。また、充電時のレートは、例えば0.1〜10C程度とすることができる。なお、充電は1回でもよく、例えば放電を挟んで2回以上繰り返し行うこともできる。
ここでは、図3に示すように、SOC65%以上(例えばSOC80%以上)の電池組立体を、40℃以上(例えば40〜80℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃)の高温域で、少なくとも5時間(例えば昇温開始からの合計時間が5〜200時間、好ましくは10〜48時間となるまで)保持(放置)する。これによって負極活物質の表面に形成された被膜を良質なものへと改質することができ、負極の抵抗を効果的に低減することができる。また、例えば外部(典型的には製造装置の構成部材)から金属異物が混入した場合であっても、該金属異物を金属イオンとして溶解、拡散することができ、電極体内で微小な内部短絡が発生することを防止することができる。なお、電池組立体を昇温する方法としては、例えば、温度制御恒温槽や赤外線ヒーター等の加熱手段を用いることができる。
好適な一態様では、上記初期充電工程(S30)で調整した端子間電圧、またはこれとほぼ同等の電圧(例えば±0.5V程度)を本工程全体に渡って維持する。例えば4.2Vで満充電となる電池では、正負極間の電圧が凡そ3.7〜4.2Vにある状態を保つことが好ましい。かかる目的のために、本工程では適宜、定電圧充電等の電圧維持手法を採用することもできる。
ここでは、図3に示すように、上記エージング後の電池組立体を所定の温度域(放置温度T)で保持する。電池組立体の温度は、例えば恒温槽等の従来公知の手法で制御することができる。ここで開示される技術では、放置時間Hが予め定められたノーマル放置時間内の場合には、放置温度Tを所定の平常設定温度とする一方で、上記ノーマル放置時間を上回る超過放置時間の場合には、上記放置工程における放置時間Hに応じて、上記放置温度Tを上記平常設定温度よりも上昇させる。
ここでは、図3に示すように、上記電池組立体を所定のSOCに調整した後、典型的には常温域で一定時間自己放電させて電圧降下量を計測する。これによって、製造条件に由来する何らかの影響(典型的にはエージング)に起因した内部短絡の有無を精度よく評価・把握することができる。なお、自己放電検査時(放置時)の環境温度は、例えば20〜25℃とするとよく、該検査の間中、例えば恒温槽等を用いて常に一定に保つことが好ましい。これにより検査を精度よく行うことができる。また、上記放置工程(S50)において、劣化防止の観点から放置温度Tを60℃に設定した場合は、上記算出された電圧上昇期間V0(セル電圧が最も高くなるまでの必要日数)に応じて自己放電日数を延長することが好ましい。
SOCを調整する際のレート(典型的には放電レート)は、例えば0.1〜10C程度(電池の容量にもよるが、例えば0.1〜50A)とすることができる。また、放電は1回でもよく、例えば充電を挟んで2回以上繰り返し行うこともできる。例えば、図3に示すように、0.1〜50Aの定電流で、1.8〜2.5Vまで3回放電するとよい。これにより一層短時間で電池内部の状態を落ち着かせることができ、本工程にかかる日数を一層短縮することができる。また、最終的な正負極端子間の電圧は、例えば電池組立体のSOCが凡そ10%以下(典型的には1〜10%、例えば1〜5%)の範囲にあるときに示し得る範囲とするとよい。例えば4.2Vで満充電となる電池では、凡そ3.0〜3.5Vの範囲に調整することができる。
Claims (1)
- 非水電解質二次電池を製造する方法であって:
正極活物質層を有する正極と、負極活物質層を有する負極と、を備える電極体を準備する工程、ここで、前記負極活物質層の表面積は前記正極活物質層の表面積よりも広く、前記負極活物質層は前記正極活物質層に対向する部位と前記正極活物質層に対向しない部位とを有している;
前記電極体と非水電解質とを電池ケース内に収容し、電池組立体を構築する構築工程;
前記構築工程の後に、前記電池組立体を常温域で充電深度(SOC)が65%以上の状態まで充電する初期充電工程;
前記初期充電工程の後に、前記電池組立体を40℃以上で少なくとも5時間エージングするエージング工程;
前記エージング工程の後に、前記電池組立体を20℃以上60℃以下の温度域で放置する放置工程;および
前記放置工程の後に、前記電池組立体を放電させて充電深度(SOC)を10%以下に調整してから、常温域で自己放電させて電圧降下量を計測する自己放電検査工程;
を包含し、
ここで、前記放置工程における放置時間Hが予め定められたノーマル放置時間以内の場合は前記放置工程における放置温度Tを所定の平常設定温度とする一方、前記ノーマル放置時間を上回る超過放置時間の場合は前記放置工程における放置時間Hに応じて前記放置温度Tを前記平常設定温度よりも上昇させることを特徴とする、非水電解質二次電池の製造方法。
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