JP2015008106A - 非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 初期充電における正極の電位ムラを抑制し、微小短絡の発生が低減された信頼性の高い高品質な非水電解質二次電池の製造方法を提供すること。【解決手段】かかる非水電解質二次電池の製造方法は、次の工程を包含する。すなわち、正極活物質層を有する正極と負極活物質層を有する負極とが対向してなる電極体と、非水電解質と、を電池ケース内に収容する、電池組立体の構築工程(S10)。ここで、負極活物質層の表面積は正極活物質層の表面積よりも広く、負極活物質層は正極活物質層に対向する部位と正極活物質層に対向しない部位とを有している。電池組立体に対して、定電圧充電を行う工程(S21)。定電圧充電後の電池組立体に対して、定電流放電と定電流充電とを2回以上繰り返して行う工程(S22,S23)。電池組立体を所定の充電状態で保持する、エージング工程(S30)。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池の製造方法に関する。
リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、既存の電池に比べて軽量かつエネルギー密度が高いことから、近年、車両搭載用高出力電源等に好ましく利用されている。この種の電池の製造においては、構築した電池組立体に対してコンディショニング処理(初期充電)を行い、次いで所定の温度環境下(例えば高温環境下)でエージング処理を施した後、該電池組立体の性能確認(例えばIV抵抗や自己放電特性の検査)を行うことが一般的である。かかる電池組立後の処理では、電解液の分解を抑制する界面(SEI:solid electrolyte interphase)皮膜を負極活物質層の表面に形成したり、電極体内部に混入した金属異物を溶解したりすることが行われる。また、自己放電特性の検査では、充電状態にある電池組立体を一定期間放置し、かかる放置期間の電圧降下量(自己放電)を計測することで、該電池組立体内に微小な内部短絡が生じているか否かを判定している。上記のコンディショニング処理およびエージング処理に係る先行技術としては、例えば、特許文献1〜3が挙げられる。
特開2004−234897号公報 特開2011−249046号公報 特開2010−080105号公報 特開2012−084322号公報
しかしながら、電池組立体にコンディショニング処理およびエージング処理を行うと、電極体内部に混入した金属異物以外に正極活物質に含まれる金属成分が溶出し、かかる金属成分が対向する負極の表面に局所的に析出することで微小な短絡を生じる場合があった。典型的な非水電解質二次電池の構成においては、例えば、特許文献4に示されるように、負極の負極活物質層の表面積(活物質層の形成された面積)は、正極の正極活物質層の表面積よりも広く構成され得る。この場合、上記負極活物質層は、正極活物質層に対向する部位(以下、単に「対向部」とも言う。)と、正極活物質層に対向しない部位(以下、単に「非対向部」とも言う。)とを有している。かかる正極活物質由来の金属成分による微小短絡は、上記の負極活物質層の非対向部近傍の対向部において発生しがちであり、かかる部位での微小短絡の発生を解消することが望まれている。
本発明はかかる状況を鑑みて創出されたものであり、その目的は、正極活物質由来の金属成分の溶出による微小短絡の発生を抑制し、信頼性の高い高品質な非水電解質二次電池の製造方法を提供することである。
コンディショニング処理において、一般的に、正極活物質層から負極活物質層の対向部に電荷担体(典型的にはリチウムイオン)が移動すると、かかる対向部の電位は低下する。そのため、この対向部に向けた正極活物質層からの電荷担体の移動は抑制され、正極活物質層からの電荷担体の脱離(すなわち電位の上昇)も抑制される。
しかしながら、本発明者らが詳細な検討を行ったところ、負極の負極活物質層の表面積が正極の正極活物質層の表面積よりも広く構成された非水電解質二次電池においては、コンディショニング処理によって正極活物質層から対向部に電荷担体が移動すると、図5に示すように、電荷担体の脱離に伴い正極の電位が上昇する。そして、電荷担体を受け取った負極活物質層の対向部の電位は低下する。しかしながら、負極活物質層においては、対向部よりも非対向部の電位が相対的に高くなるため、非対向部近傍の対向部から非対向部へと電荷担体は引き続き拡散する事態が生じる。すると、一旦低下した非対向部近傍の対向部の電位は電荷担体の拡散に伴い上昇に転じ、これに対向する正極活物質層からの電荷担体の移動は抑制され難い状態となる。すなわち、負極活物質層の非対向部の近傍の対向部と対向している部位の正極活物質層(以下、かかる部位を単に正極活物質層の「端部」という場合がある。例えば、図2の「端部30」参照。)においては、電荷担体の移動が正極活物質層のその他の部位より過剰に行われ、電荷担体が過剰に脱離した状態(すなわち、高電位状態)となり得る。延いては、正極活物質層の上記端部と、この端部以外の部位とでは、電位にムラが生じた状態となり得る。
このような正極活物質層の一部(上記端部)が高電位な状態でエージング処理を施すと、かかる高電位部に存在する正極活物質から金属が溶出して、微小短絡が発生し得る。本発明者らはかかる知見を基に鋭意検討を重ね、上記課題を解決し得る手段を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、ここで開示される非水電解質二次電池の製造方法は、以下の工程(1)〜(4)を包含することを特徴としている。
(1)正極活物質層を有する正極と負極活物質層を有する負極とが対向してなる電極体と、非水電解質と、を電池ケース内に収容する、電池組立体の構築工程。ここで、上記負極活物質層の表面積は上記正極活物質層の表面積よりも広く、上記負極活物質層は上記正極活物質層に対向する部位と上記正極活物質層に対向しない部位とを有している。
(2)上記電池組立体に対して、所定の電圧まで充電を行う充電工程。
(3)上記充電処理後の電池組立体に対して、一定の容量を定電流放電すること、および、上記一定の容量を定電流充電することを2回以上行う工程。ここで、初回の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の上記電池組立体の電圧降下量をΔVとしたとき、2回目以降の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の上記電池組立体の電圧降下量ΔVが、ΔV≦0.5×ΔVとなるまで、上記定電流放電と上記定電流充電との繰り返しを実施する。
(4)上記電池組立体を所定の充電状態で保持する、エージング工程。
ここで開示される技術においては、充電工程の後に、一定容量のCC放電およびCC充電の組み合わせを2回以上行うことで、正極活物質層の上記端部に発生している電位の上昇を緩和するようにしている。かかる正極の局所的な高電位の緩和に際しては、初回のCC充電後0.1秒〜10秒の間の電池組立体の電圧降下量をΔVとしたとき、2回目以降のCC充電後0.1秒〜10秒の間の電池組立体の電圧降下量ΔVが、ΔV≦0.5×ΔVとなるまで、CC放電およびCC充電の組み合わせを複数回繰り返し実施することがより好ましい。ΔVが0.5×ΔV以下となることで、概ね正極活物質層の上記端部の電位が正極活物質からの金属の溶出を防止するに十分低い状態であると判断することができる。上記CC放電およびCC充電の組み合わせは、正極活物質層の上記端部の電位が正極(正極活物質層)の平衡電位とほぼ等しくなるまで実施するのがより一層望ましい。このように、正極活物質層の上記端部とそれ以外の部分との充電深度(State of Charge:SOC)の差を小さくすることにより、当該端部への電荷担体の拡散が抑制されて、当該端部の電位の上昇が抑えられる。
なお、ここで、正極の平衡電位とは、正極活物質の上記端部以外の部位の平均電位である。
そしてまた、電池組立体を、正極に高電位な部分の無い状態でエージング工程に供することで、正極活物質からの金属の溶出を防ぎつつ、金属異物の溶解やSEI皮膜の形成を好適に実施することができる。このことは、正極活物質からの金属の溶出に基づく微小短絡の発生を防止するものであり、意図しない不良品の発生を防ぐものであり得る。したがって、例えば、後工程で電池組立体の性能確認(例えば自己放電特性の検査)を行った場合に、不良品の発生率を大幅に低減することができる。したがって、かかる製造方法によれば、微小短絡の発生が抑制された信頼性の高い電池を製造することができる。
なお、発明者の更なる検討によると、例えば、高容量(例えば、20Ah以上)の電池、高容量比(例えば、正極の初期充電容量(C)に対する負極の初期充電容量(C)の比として算出される容量比(C/C)が1.1〜2.1程度)の電池、高密度な電極活物質層を備える電池(例えば、正極片面当たり10mg/cm以上、負極片面当たり5mg/cm以上)、非対向部がある(例えば、集電体の面積の1%以上)構成の電池等において、正極活物質層の端部が高電位となりやすい傾向が見られる。本発明の製造方法は、このような二次電池の製造に特に好適に適用することができる。
一実施形態に係る製造方法のフローチャートである。 一実施形態に係る電極体の展開図を示した図である。 一実施形態に係るコンディショニング工程およびエージング工程における正極活物質層の端部と端部以外の部位の電位の変化を示すグラフである。 一実施形態に係るコンディショニング工程における初期の過電圧比と、不良品発生率との関係を示すグラフである。 コンディショニング工程およびエージング工程における正極活物質層の端部と端部以外の部位の電位の変化を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示される製造方法は、電池組立体に対する充電工程の後に、一定容量のCC放電およびCC充電の組み合わせを少なくとも2回行うことにより特徴付けられる製造方法であり、具体的には図1のフローチャートに示す(S10)〜(S30)の工程を包含する。また、例えば、これらの工程の後に、自己放電検査工程(S40)を行うことができる。以下、適宜図を参照しつつ、各工程について順に説明する。
(S10)電池組立体の構築工程
ここでは、典型的には、正極と負極とが対向してなる電極体と非水電解質とを電池ケース内に収容することで電池組立体を構築する。電池ケースとしては、例えばアルミニウム合金等の軽量な金属製のものを好適に採用し得る。なお、電池組立体とは、コンディショニング工程に先立った段階にまで組み立てられているもの全般をいい、電池の種類や構成等は特に制限されない。例えば、電池ケースは密閉前であってもよいし、密閉後であってもよい。
電極体は、例えば図2に示すように、正極活物質層22を有する正極20と負極活物質層12を有する負極10とを、典型的にはセパレータ(図示せず)を介して積層することで構成することができる。図2では、捲回型電極体の捲回前の電極10,20の様子を示している。ここで開示される技術において、負極活物質層12の表面積は正極活物質層22の表面積よりも広い。そのため、負極活物質層12は、正極活物質層22に対向する部位(対向部)と、正極活物質層に対向しない部位(非対向部)とを有している。正極活物質層22のうち、負極活物質層12の非対向部近傍の対向部と対向している部位を、以下において端部30という。正負極の初期容量比、すなわち正極の初期充電容量(C)に対する負極の初期充電容量(C)の比として算出される容量比(C/C)については特に制限はないが、例えば1.0〜2.1程度とすることができる。
正極20としては、典型的には、正極活物質を導電材やバインダ等とともに組成物として正極集電体24上に付着させ、正極活物質層22を形成した形態のものを用いることができる。正極集電体24としては、導電性の良好な金属(例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金)からなる導電性部材を好適に採用し得る。正極活物質としては、層状系、スピネル系等のリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNiO、LiCoO、LiFeO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Mn1.5,LiCrMnO、LiFePO等)等を好適に採用し得る。導電材としては、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラックやケッチェンブラック)等の炭素材料等を採用し得る。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリエチレンオキサイド(PEO)等の各種のポリマー材料を採用し得る。
負極10としては、負極活物質をバインダ等とともに組成物として負極集電体14上に付着させ、負極活物質層12を形成した形態のものを用いることができる。負極集電体14としては、導電性の良好な金属(例えば銅)からなる導電性材料を好適に採用し得る。負極活物質としては、例えば、黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)等の炭素材料等を用いることができ、なかでもアモルファスコートグラファイト(黒鉛粒子の表面にアモルファスカーボンがコートされた形態のもの)を好適に採用し得る。バインダとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の各種のポリマー材料を採用し得る。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートを好適に採用し得る。なお、固体状の電解質を用いた電池(リチウムポリマー電池)では、電解質がセパレータを兼ねる構成であり得る。
非水電解質としては、典型的には非水溶媒中に支持塩を含有させたものを用いることができる。あるいは、液状の非水電解質にポリマーが添加され固体状(典型的には、いわゆるゲル状)となったものでもよい。支持塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等を用いることができ、なかでもLiPF、LiBF等のリチウム塩を好適に採用し得る。非水溶媒としては、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。なかでも、カーボネート類、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等を好適に採用し得る。なお、ここで用いられる非水電解質中には、上述した非水溶媒および支持塩以外に、被膜形成剤、ガス発生剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。
(S20)コンディショニング工程
(S21)充電工程
上記電池組立体に対して、まず、所定の電圧まで充電処理を行う充電工程(S21)を施す。典型的には、該組立体の正極(正極端子)と負極(負極端子)の間に外部電源を接続し、所定の電圧まで充電(典型的には定電流充電)を行う。これによって、非水電解質の一部(典型的には非水溶媒)が負極で還元分解され、負極活物質の表面にその分解物からなる被膜が形成される。かかる被膜によって負極活物質と非水電解質との界面が安定化され、更なる電解質の分解を抑制するため、電池の耐久性を向上し得る。充電時のレートは、例えば0.1〜10C程度とすることができる。充電処理における正負極端子間の電圧(典型的には最高到達電圧)は、使用する活物質材料や非水溶媒の種類等にもよるため一概には言えないが、電池組立体のSOCがおよそ60%以上(典型的には80%以上、例えば90〜105%)の範囲にあるときに示し得る電圧範囲とすればよい。例えば、4.2Vで満充電となる電池では、およそ3.8〜4.2Vの範囲に調整することが例示される。なお、充電処理は1回でもよく、例えば放電処理を挟んで2回以上繰り返し行うこともできる。また、コンディショニングの促進等を目的として、圧力の負荷(加圧や減圧)等の手段を適宜併用することもできる。かかる充電工程により、例えば図3に例示するように、正極活物質層の端部の電位は、端部以外の電位よりも高い値となり得る。
(S22)CC放電工程
上記の充電処理後の電池組立体に対して、一定の容量を定電流(CC)放電する。この場合の放電容量は、例えば対象とする電池組立体の電池容量に対して極少量であってよく、例えば、電池容量の数%以下、具体的には、2%以下、典型的には1%以下、例えば、0.5%以下とすること等が例示される。かかる放電容量の下限についても特に制限はなく、例えば、電池容量の0.01%以上、0.05%以上、好ましくは0.1%以上とすることが例示される。例えば、数C(例えば、1C)のレートで、数秒から数10秒の放電を行うことが例示される。
(S23)CC放電工程
次いで、CC放電した電池組立体に対し、上記と同容量の電力を定電流(CC)充電する。例えば、数C(例えば、1C)のレートで、数秒から数10秒の充電を行うことが例示される。
(S24)過電圧緩和測定工程
次いで、上記のCC充電後、0.1秒〜10秒の間の電池組立体の電圧降下量ΔVを測定する。かかる充電直後の電圧降下量を測定することで、CC充電により正極活物質層から負極活物質層の対向部へと移動した電荷担体が、負極活物質層における対向部から非対向部へと拡散する様子を推測するようにしている。
そしてここに開示される発明においては、上記の(S22)〜(S24)の工程を、初回の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の前記電池組立体の電圧降下量をΔVとしたとき、2回目以降の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の前記電池組立体の電圧降下量ΔVが、ΔV≦0.5×ΔVとなるまで、繰り返し行うようにする。これにより、正極活物質層の端部の電位と端部以外の電位とは、図3に示すように、変動を繰り返す。すなわち、端部の電位は上昇を続けることなく安定化される。
ここで、より具体的には、ΔV/ΔVを初期の過電圧比とすると、かかる初期の過電圧比は、負極活物質層における対向部から非対向部への電荷担体の拡散が、かかる放充電サイクルの初期と比べてどの程度に抑制されたかを示し得る。
すなわち、初期の過電圧比が大である(1に近い)と、負極活物質層の非対向部での電荷担体の存在率が低く、対向部から非対向部への電荷担体の拡散が容易に進行していること推測できる。また、初期の過電圧比が小である(ゼロに近い)と、負極活物質層の非対向部に既に電荷担体が高い割合で存在しており、対向部から非対向部への電荷担体の拡散が進行し難いと推測できる。
そして、そして負極活物質層の非対向部にある一定量以上の電荷担体が存在すると、それ以上の電荷担体の拡散は行われず、負極電位が下がり(平衡となり得る。)、同時に正極電位も低下する(平衡となり得る。)。
以上のことから、本発明では、かかる電圧降下量ΔVないしは初期の過電圧比の大小で、負極活物質層の非対向部の電荷担体の存在状況を推定し、これをもとに正極活物質層の端部において高電位部が発生しているかどうかを把握するようにしている。そして、ΔV≦0.5×ΔVとなることで、正極活物質層における高電位部の電位が降下し、正極活物質からの金属の溶出が起こらないほど正極電位が低いと判断している。
(S30)エージング工程
エージング工程では、二次電池の耐久性を高める皮膜の形成および金属異物の溶解等を目的として、典型的には、充電状態の電池を高温に静置する高温エージング処理を好ましく行うことができる。高温でエージング処理を行うことで、エージング工程に要する時間を短縮することができる。
かかる高温エージング処理としては、例えば、上記SOC60%以上(典型的には80%以上、例えば90〜105%)の電池組立体を、40℃以上(例えば50〜80℃、好ましくは50〜75℃)の高温域で、例えば5時間以上(例えば、昇温開始からの合計時間が5〜48時間、好ましくは10〜24時間となるまで)保持することが例示される。
これにより、負極活物質の表面に形成された被膜の品質を改善し、負極の抵抗を効果的に低減することができる。また、外部(例えば製造装置の構成部材)から金属異物が混入した場合であっても、該金属異物を予め金属イオンとして溶解、拡散させて、電極体内で微小な内部短絡が発生することを防止することができる。なお、ここに開示される発明では、コンディショニング工程において正極(正極活物質層)の電位ムラが解消されており、端部等において局所的に高電位となることが抑制されている。したがって、かかる高温エージングにおいて正極活物質に含まれる金属イオンが溶解されるおそれが低減されてもいる。
電池組立体を昇温する方法としては、例えば、温度制御恒温槽や赤外線ヒーター等の加熱手段を用いることができる。また、電池電圧は、本工程全体に渡って比較的高い端子間電圧範囲および/または比較的高いSOC範囲を維持することが好ましい。例えば4.2Vで満充電となる電池では、正負極間の電圧がおよそ3.7〜4.2Vにある状態を保つ範囲で充放電を行うことが好ましい。
なお、エージング工程は、高温エージング処理に限定されることなく、常温あるいは常温近傍の温度範囲(例えば、15℃〜35℃程度)で処理することもできる。かかる常温近傍でのエージング処理としては、例えば、SOC40%以上(典型的には60%以上、例えば80〜105%)の電池組立体を、例えば5時間以上(例えば、昇温開始からの合計時間が5〜48時間、好ましくは10〜24時間となるまで)保持することが例示される。
高温エージングと常温近傍でのエージング処理とを組み合わせて行うようにしても良い。高温エージング後に常温近傍でのエージングを行う場合には、電池組立体を常温域まで降温し、所定の時間放置すればよい。
(S40)自己放電検査工程
好適な一態様では、上記エージング工程後であって出荷前の電池組立体に対し、各種の品質検査を行い、不具合のある電池組立体を検出して除去する。出荷検査の項目は特に限定されないが、例えば、自己放電検査、定電流充放電測定によるIV抵抗測定や所定の電圧区間における電池容量(区間容量)測定等が挙げられる。これによって、後の工程で必要以上に不具合品を発生させることを防止し、更に効率よく、信頼性の高い電池を製造することができる。出荷検査時の環境温度は、常温域とすることが好ましく、例えば20℃〜25℃とすることができる。
自己放電検査工程では、上記電池組立体を放電処理した後、常温域で一定時間自己放電させて電圧降下量を計測する。これによって、製造条件に由来する何らかの影響(典型的には高温エージング)に起因した内部短絡の有無を精度よく評価・把握することができる。放電時のレートは、例えば0.1〜10C程度とすることができる。放電処理における正負極端子間の電圧は、電池組立体のSOCがおよそ10%以下(典型的には1〜10%、例えば1〜5%)の範囲にあるときに示し得る電圧範囲とすればよい。例えば、4.2Vで満充電となる電池では、およそ3.1〜3.5Vの範囲に調整することが好ましい。放電処理は1回でもよく、例えば充電処理を挟んで2回以上繰り返し行うこともできる。
放電検査時(放置時)における環境温度は、例えば20℃〜25℃とすることができ、該検査の間、例えば恒温槽等を用いて一定に保つことが好ましい。これにより、検査を精度よく行うことができる。
そして、上記自己放電検査工程で得られた検査結果から、各々の電池組立体について内部短絡の有無を判定する。具体的には、上記電圧降下量の計測結果に基づいて、良品判定のための基準値を設定する。基準値の設定方法は特に限定されないが、例えば、複数の電池組立体の電圧降下量の算術平均値、中央値(メジアン)等を採用し得る。そして、かかる基準値と各電池組立体の電圧降下量との差分を算出し、この差分が所定の閾値以下の場合にその電池組立体を「内部短絡なし」と判定し、この差分が所定の閾値を越える場合にその電池組立体を「内部短絡有り」と判定する。閾値としては、対象とする電池の規格等にも依るが、例えば2σ〜4σ程度(σは統計学的な標準偏差である。)に相当する値を設定することができる。かかる判定結果に基づいて「内部短絡有り」と判定された電池組立体を取り除くことで、不具合品が後の工程に流れることを防止し、信頼性の高い電池を提供することができる。
ここで開示される方法によって製造された非水電解質二次電池は、信頼性に優れたものであり得る。したがって各種用途に好適に利用することができる。なかでも、理論容量が10〜100Ah程度の高容量型の電池、例えばプラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。
以下、ここで開示される電池の製造方法について、一実施形態としてのリチウムイオン電池を製造する場合を例に、より詳細に説明を行う。
[電池組立体の用意]
正極活物質粉末としてのLi1.00Ni1/3Co1/3Mn1/3粉末と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、質量比率が90:5:5となるようにN−メチルピロリドン(NMP)と混合し、スラリー状組成物を調製した。この組成物を、厚みおよそ15μmの長尺シート状のアルミニウム箔(正極集電体)に塗布して正極活物質層を形成した。得られた正極を乾燥およびプレスし、シート状の正極(正極シート)を作製した。
次に、負極活物質としての天然黒鉛と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、カルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比率が98:1:1となるようにイオン交換水と混合し、スラリー状組成物を調製した。この組成物を、厚みおよそ10μmの長尺シート状の銅箔(負極集電体)に塗布して負極活物質層を形成した。得られた負極を乾燥およびプレスし、シート状の負極(負極シート)を作製した。
次に、上記で作製した正極シートと負極シートとを、厚さ20μmのセパレータ(ここでは、ポリエチレン(PE)層をポリプロピレン(PP)層で挟んだ三層構造のものを用いた。)を介して重ね合わせて捲回し、得られた捲回電極体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形した。そして、かかる捲回電極体の正極集電体の端部に正極端子を、負極集電体の端部に負極端子を溶接によりそれぞれ接合した。
この電極体を電池ケースに収容し、非水電解液を注入した。なお、非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:3:4の体積比率で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFをおよそ1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。そして、電池ケースの開口部に蓋体を装着し、溶接して接合することによって計40個の電池組立体を構築した。なお、上記電池組立体の定格容量は20Ahである。
[コンディショニング処理]
<例1> 上記のとおり構築した電池組立体10個に対し、25℃にて1CでSOC85%まで定電流(CC)充電するコンディショニング処理を行った。かかる充電後の電池組立体を10秒間放置し、0.1秒目〜10秒目の間の電圧降下量(ΔV)を測定した。
<例2> 上記のとおり構築した電池組立体30個に対し、25℃にて1CでSOC85%まで定電流(CC)充電した後、10個ずつの電池組立体に対して、(1)1Cにて10秒間の放電および(2)1Cにて10秒間の充電、からなる工程(1)〜(2)を(a)10サイクル、(b)1000サイクルまたは(c)10000サイクル繰り替えして施すコンディショニング処理を行った。次いで、コンディショニング処理後の電池組立体の、10秒間放置時の電圧降下量(ΔV)を測定した。すなわち、ΔVは、充電後の電池組立体を10秒間放置する際の0.1秒目〜10秒目の間の電圧降下量とした。
[エージング処理]
コンディショニング処理後の電池組立体に対して、(1)上記充電状態で、80℃にて20時間保持した後、(2)20℃にて5日間保持する、エージング処理(1)〜(2)を施した。ただし、上記工程(1)を行う前に、初期電圧V1を測定した。また、上記工程(2)の後に、保持後電圧V2を測定した。
[自己放電検査工程]
上記エージング処理前後での電池組立体の自己放電量δVを、δV=V2−V1として算出した。そして自己放電量δVが4σ以下の電池組立体を良品、δVが4σを超過する電池組立体を不良品と判定し、不良品率(%)を算出した。ここでσは、統計学的な標準偏差である。
[評価]
先ず、上記例1のコンディショニング処理において測定した電圧降下量ΔVを1とし、上記例2において測定した(a)〜(c)のコンディショニング処理後の電圧降下量ΔVの比(初期の過電圧比(ΔV/ΔV)という。)を算出した。その結果、(a)10サイクル時のΔV10に関する初期の過電圧比は0.8、(b)1000サイクル時のΔV1000に関する初期の過電圧比は0.5、(c)10000サイクル時のΔV10000に関する初期の過電圧比は0.3であった。
上記のようにして得られた不良品率(%)を、初期の過電圧比との関係として、図4に示した。かかる初期の過電圧比は、負極活物質層における正極対向部から正極非対向部へのLiイオンの移動を反映し得る。すなわち、かかる値が小さくなればなるほど、負極活物質層において正極対向部から正極非対向部へLiイオンが移動していることを示すといえる。そして、図4に示されるように、本発明の製造方法により、コンディショニング処理において工程(1)〜(2)を2回以上繰り返して製造される非水電解質二次電池は、繰り返し回数が増えるほど初期の過電圧比が小さくなること、そしてこれに伴い不良品率も低下することが確認された。
つまり、コンディショニング処理において上記工程(1)〜(2)を2回以上繰り返すことで、正極端部から負極の正極非対向部にLiイオンが拡散するのが抑制され、正極電位の上昇が抑えられたと言える。また、正極電位の上昇が抑えられたことから、正極活物質からの金属の溶出もが抑制されて、微小短絡の発生が確実に低減される。その結果、不良品(すなわち、自己放電量が所定値よりも多い電池)の発生率が低減されたと言える。図4に示されるように、特に過電圧比が0.5以下となるまで工程(1)〜(2)を繰り返した場合に、不良品率が著しく低下することが確認できた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

Claims (1)

  1. 正極活物質層を有する正極と負極活物質層を有する負極とが対向してなる電極体と、非水電解質と、を電池ケース内に収容する、電池組立体の構築工程、
    ここで、前記負極活物質層の表面積は前記正極活物質層の表面積よりも広く、前記負極活物質層は前記正極活物質層に対向する部位と前記正極活物質層に対向しない部位とを有している;
    前記電池組立体に対して、所定の電圧まで充電処理を行う充電工程;
    前記充電処理後の電池組立体に対して、一定の容量を定電流放電すること、および、前記一定の容量を定電流充電することを2回以上行う工程、
    ここで、初回の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の前記電池組立体の電圧降下量をΔVとしたとき、
    2回目以降の定電流充電後0.1秒〜10秒の間の前記電池組立体の電圧降下量ΔVが、ΔV≦0.5×ΔVとなるまで、前記定電流放電と前記定電流充電との繰り返しを実施する;および、
    前記電池組立体を所定の充電状態で保持する、エージング工程;
    を包含する、非水電解質二次電池の製造方法。
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