JP2015015084A - 二次電池の製造方法 - Google Patents

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宏 川津
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Hisanao Kojima
小島  久尚
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Abstract

【課題】負極における金属異物の集中的な析出が抑制され、内部短絡が生じにくい二次電池を、より効率的に量産し得る方法を提供すること。【解決手段】本発明により、正極と負極を有する電極体と、電解質と、を備える二次電池を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、上記電極体および上記電解質を含むセルを構築すること;上記構築したセルに所定の圧力を負荷すること;上記圧力負荷したセルを、正極が金属異物の酸化電位以上であって、且つ負極が金属異物の還元電位以上となるよう電位を調整すること;を包含する。そして、上記電位の調整においては、上記セルに負荷した圧力を一時的に低減させる処理を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、二次電池の製造方法に関する。詳しくは、金属異物の集中的な析出に起因する内部短絡を抑制し得る該電池を、より効率的に製造する方法に関する。
リチウム二次電池その他の二次電池は、既存の電池に比べ、小型、軽量かつ高エネルギー密度であって、出力密度に優れる。このため近年、パソコンや携帯端末等のいわゆるポータブル電源や、車両駆動用電源として好ましく用いられている。
かかる二次電池は、典型的には、正極と負極とがセパレータを介して対向した構造の電極体と、電解質(典型的には、電解液)と、が電池ケースに収容された後、該ケースに蓋体が装着され封口(密閉)されることにより構築される。そして該電池には実際に使用可能な状態に調整するため、所定の条件で初期充放電処理が施される。
ところで、かかる二次電池の製造にあたっては、外部(例えば製造装置の構成部材)から銅や鉄等の金属異物が混入する場合がある。混入した金属異物は、電池の充電によって溶解電位を上回るとイオン化され(例えばCu2+、Fe2+となって)、電解質中に溶出する。この金属イオンは、一般的に負極側に向かって直線的に移動するため、負極上の該金属異物と対向する位置で還元され、局所的に析出する。このため、充電を続けると金属の析出物がセパレータを貫通して正極に到達し、電池内に内部短絡が発生する虞がある。内部短絡が発生すると電池性能が悪化(例えばエネルギー密度が低下)する等の不具合が生じるため、従来から、金属異物に起因する短絡を防止するために各種の技術(以下、単に「無害化処理」と言うこともある。)が提案されている。かかる技術として、特許文献1および2が挙げられる。例えば、特許文献1には、初期充放電処理において、電池を拘束した状態で正極の電圧を調整した後、1時間〜35時間保持(保持)することで、金属イオンを溶解および拡散し得る技術が開示されている。
国際公開第2011/111153号 特開2007−042486号公報
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、拘束状態のまま一定時間保持するため、イオン化した金属異物(金属イオン)の電解質への拡散が不十分となる場合がある。このため、負極上で金属異物が集中的に析出し、該析出物が正極側に向かって成長する虞がある。また、金属イオンの拡散が不十分なため、金属異物周辺のイオン濃度が飽和状態となり、無害化処理(該金属異物を溶解させるため)に長時間を要する場合がある。このため、より好適、且つ効率的な無害化処理の手法が求められている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡便な手法で信頼性の高い(電池内に混入した金属異物の析出に起因する内部短絡が生じ難い)二次電池を、量産し得る方法を提供することである。
上記目的を実現すべく、本発明によって、正極と負極を有する電極体と、電解質と、を備える二次電池を製造する方法が提供される。かかる製造方法は、(1)上記電極体および上記電解質を含むセルを構築すること;(2)上記構築したセルに所定の圧力を負荷すること;(3)上記圧力負荷したセルを、正極の最高到達電位が金属異物の酸化電位以上となるよう電位を調整すること; を包含する。そして、上記電位の調整において、上記セルに負荷した圧力を一時的に低減させる処理を含むことを特徴とする。
ここで開示される製造方法によれば、電位の調整によって正極電位が上昇し、金属異物の溶解電位(酸化電位)を上回ると、該金属異物は酸化されて金属イオン(例えば、Cu→Cu2+、Fe→Fe2+)となり、電解質中へ溶解する。そして、正に帯電した金属イオンは電解質中に拡散し、より電位の低い負極側へと移動する。ここで開示される技術では、かかる電位の調整の際に上記セルに負荷した圧力を一時的に低減させる。これによって、金属イオンの拡散および負極側への移動が促進され、金属異物の集中的な析出に起因する内部短絡をより好適に抑制することができる。したがって、ここで開示される製造方法によれば、簡便かつ効率的に信頼性の高い(換言すれば、電池内に混入した金属異物の析出に起因する短絡が生じ難い)電池を製造することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記金属異物は鉄(Fe)である。そして、上記電位の調整は、正極の最高到達電位が鉄の酸化電位以上であって、且つ負極の最高到達電位が鉄の還元電位以上となるよう行う。
鉄は種々の金属元素のなかでも製造装置等の素材として多用されていることから、セル内に混入する可能性が高く、また比較的抵抗が高い性質を有する。ここで開示された技術によれば、かかる鉄をも従来に比べ短時間で好適に無害化処理することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記電位の調整は、正極の最高到達電位が上記金属異物の酸化電位以上となるよう充電すること、上記充電後に保持すること、上記保持後に放電すること、および上記放電後に保持すること、を包含する。そして、上記充電においてセルに負荷する圧力(T)と、上記保持においてセルに負荷する圧力(T)および上記放電においてセルに負荷する圧力(T)とが異なっており、T>T且つT>Tの関係となるよう調整する。
充電時(即ち、金属異物をイオン化し電解質中に溶解させる工程)では負荷する圧力を高くし、保持および/または放電時(即ち、イオン化した金属異物が電解質中に拡散する工程)では負荷する圧力を低くすることで、より迅速且つ広範囲に金属イオンを拡散させることができる。したがって、金属異物の析出に起因する短絡をより抑制することができ、さらに無害化処理(電位の調整)に要する時間を短縮することもできる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記充電および上記放電は、1C以上のパルス状の電流をそれぞれ1秒以上10秒以下の時間供給することによって行う。
上記充電および放電において、短時間に比較的大きな電流を供給することにより、金属異物の溶出(溶解)および拡散を促進することができる。このため、負極上での集中的な金属の析出やそれに起因する内部短絡等の問題を抑制し得、本願の目的をより高いレベルで達成することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記Tおよび/またはTは、実質的に0MPaとする。
保持および/または放電において、実質的にセルへの圧力負荷をなくすことで金属イオンの拡散がより進み、本願の効果を高いレベルで発揮することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記電位の調整は、上記構築されたセルの容量が該セルの理論容量を100%としたときに0.01%以上0.5%以下となるよう、1時間以上かけて充電を行う。
電位の調整をより穏やかな充電レート(速度)で長時間かけてゆっくり行うことで、電極電位を安定的に保持することができる。したがって、より品質の安定した電池を製造することができる。なお、本明細書において「理論容量」とは、可逆的に充放電可能な作動電圧の範囲において、その上限となる電圧が得られる充電状態(即ち、満充電状態)における電池容量を指す。かかる充電状態は、一般に充電深度(SOC;State of Charge)として表記されるが、ここではSOC100%のときの容量を理論容量と定義する。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記充電を定電流定電圧(CC−CV)充電によって行い、かかるCC充電時の電流を0.01C以下に設定する。
充電時の電流を0.01C以下と小さくすることで、電位の急激な上昇を抑えることができ、電位調整を精度よく行うことができる。このため、より品質の安定した該電池を製造することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記充電は、CV充電時の正負極間電圧が0.5V以上1.3V以下となるように行う。
正極と負極の電位差(正負極間電圧)を上記範囲に設定することで、本願発明の適用効果をより高いレベルで発揮することができる。すなわち、安定した性能の二次電池を、より効率的に製造することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記電極体は、長尺状の正極集電体上に所定の幅の正極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の正極と、長尺状の負極集電体上に所定の幅の負極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の負極と、を備え、上記長尺状の正極と上記長尺状の負極とが対向した状態で積層され、長手方向に捲回され、側面方向から押圧して拉げさせてなる扁平形状の捲回電極体である。
扁平形状の捲回電極体では、該電極のコーナー部分と直線部分で面圧が異なるため、とりわけ面圧の高いコーナー部分において金属イオンの拡散が生じ難い傾向がある。このため、捲回電極体を備えた電池では、通常、無害化処理に長時間を要する。しかし、ここで開示される製造方法によれば、従来に比べ効率よく無害化処理を行うことができ、品質の安定した該電池を従来に比べて短時間で製造することができる。
ここで開示される二次電池の製造方法における好ましい一態様では、上記電位の調整後に、上記セルの電圧降下量を計測する自己放電検査を含み、上記自己放電検査は15時間以内で行う。
ここに開示される製造方法によれば、金属異物の無害化処理を精度よく行うことができる。このため、かかる処理が施された二次電池は、金属異物の局所的な析出による短絡の可能性が十分に低減されたものであり得る。したがって、自己放電検査を行う場合には、溶解速度が比較的遅い金属異物(例えば、鉄)による短絡の可能性を実質的に考慮しなくてもよく、かかる自己放電検査に要する時間を、例えば15時間以内と極めて短縮することができる。
また、本発明によると、ここで開示されるいずれかの方法により製造された二次電池が提供される。かかる二次電池は、金属異物の無害化処理が好適に行われており、金属異物の局所的な析出による短絡の可能性が十分に低減された信頼性の高いものであり得る。さらに、無害化処理および自己放電検査を従来に比べて短時間で実施可能なため、これらの工程に費やす時間を削減することができる。このため、生産性やコストの観点から好ましい。なお、ここで開示される二次電池は各種用途向けとして利用可能であるが、高い安全性や信頼性が求められる自動車等の車両に搭載される駆動用電源として好適に使用することができる。かかる二次電池は、単独(単電池)で使用されてもよく、直列および/または並列に該二次電池が複数個接続されてなる組電池の形態で使用することもできる。
一実施形態に係る、金属異物の無害化処理を模式的に表す模式図であり、(A);正極の金属異物が溶解する状態、(B);溶解した金属イオンが拡散する状態、(C);溶解した金属イオンが負極上に分散して析出する状態、をそれぞれ示している。 一実施形態に係る、電流、正極電位、負極電位、および正負極間の電位差の経時変化を示した図である。 他の一実施形態に係る、電流、正極電位、負極電位、および正負極間の電位差の経時変化を示した図である。 一実施形態に係る、二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。 図4の二次電池のV−V線における断面構造を模式的に示す図である。 一実施形態に係る、二次電池の捲回電極体の構成を示す模式図である。 複数の二次電池を拘束する様子を説明する斜視図である。 一実施例に係る、二次電池の圧力負荷状態を表す模式的な断面図であり、(A);圧力を負荷した状態、(B);圧力を負荷しない状態、をそれぞれ示している。 一実施形態に係る、二次電池を車両駆動用電源として備えた車両(自動車)を模式的に示す側面図である。 一実施例に係る、光学顕微鏡写真であり、(A)無害化処理前の金属異物、(B);無害化処理後の正極表面、(C);無害化処理後のセパレータの正極側表面、(D);無害化処理後のセパレータの負極側表面、(E);無害化処理後の負極表面、をそれぞれ観察したものである。
本明細書において「二次電池」とは、リチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等のいわゆる化学電池の他、化学電池(例えばリチウム二次電池)と同様の産業分野で同様に使用され得る蓄電素子(例えば、疑似容量キャパシタ、レドックスキャパシタ)、およびこれらを組み合わせたハイブリッドキャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等を包含する用語である。また、「リチウム二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンの移動(電荷の移動)により充放電が実現される二次電池をいう。一般にリチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等と称される二次電池は、本明細書におけるリチウム二次電池に包含される典型例である。また、本明細書において「活物質」とは、正極側または負極側において電荷担体となる化学種(リチウム二次電池ではリチウムイオン)を可逆的に吸蔵および放出し得る物質(化合物)をいう。
以下、ここで開示される二次電池および該電池の製造方法の好適な実施形態について説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。かかる構造の二次電池は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示される二次電池は、正極と負極を有する電極体と、電解質とを備える。かかる二次電池は、以下のように製造することができる。
先ず、二次電池(セル)を構築するには、正極と負極とを(代表的には、セパレータを介して)対向させ、電極体を作製する。次に、上記電極体と電解質とを電池ケースに収容し、該ケースを密封する。これにより、二次電池(セル)を構築することができる。ところで、このセルの構築に際しては、外部(例えば製造装置の構成部材)から金属異物が混入することがあり得る。かかる場合、該電池の充電によって正極の電位が金属異物の溶解電位(酸化電位)よりも高くなると、該金属異物が酸化され(電子を失って)、金属イオン(例えば、Cu→Cu2+、Fe→Fe2+)となって電解質中へと溶解する。この金属イオンは正に帯電しているため、通常は正負極間(典型的にはセパレータ内)を負極に向かって直線的に移動する。そして該金属イオンは、負極上の該金属異物と対向する位置で還元され、局所的に(集中的に)析出する。このため、充電が進むにつれ負極上の析出物は正極側に向かって徐々に成長していく。
そこで、ここで開示される技術では、上記のような析出物の成長を抑えるために、所定容量の充電(以下、本充電という)を行う前に、構築されたセルに対して以下に詳述するような金属異物の無害化処理(予備的なセル電位の調整)を行うことを特徴とする。すなわち、ここで開示される製造方法は、正極と負極を備える電極体と、電解質と、を含むセルを構築すること(セルの構築工程);構築したセルに所定の圧力を負荷すること(圧力負荷工程);および上記圧力負荷したセルを、正極の最高到達電位が金属異物の酸化電位以上となるよう電位を調整すること(電位調整工程);を包含する。
図1は、金属異物の無害化処理を説明するための模式図である。図1(A)に示すように、ここで開示される製造方法によれば、構築したセルに所定の圧力を負荷することで正極10と金属異物30とセパレータ40(該セパレータに含浸された電解質)とが好適に接触し得る。そして、電位調整工程において、正極の電位が上昇し、金属異物30の溶解(酸化)電位を上回ると、該金属異物30は酸化されて(電子を失って)金属イオン32となり、電解質中へと溶解する。正に帯電した金属イオン32は、電解質中に拡散し、より電位の低い負極20側へと移動する。
ここで開示される技術においては、上記電位調整工程において、セルに負荷した圧力を一時的に低減させる。これによって、図1(B)に示すように、金属イオン32はセパレータ40内(該セパレータに含浸された電解質内)で広く充分に拡散される。
そして、図1(C)に示すように、拡散した金属イオン32は負極20に到達して還元され(電子を得て)、該負極20上に広がって析出する。このため、金属イオン30の析出物34は負極20上に広範囲に広がって存在することとなり、析出物34の正極10側への成長を抑制することができる。したがって、ここで開示される製造方法によれば、より簡便かつ効率的に、性能の安定した(電池内に混入した金属異物の析出に起因する短絡が生じ難い)電池を製造することができる。
無害化処理の対象となり得る金属異物としては、二次電池の製造工程において混入する可能性のある金属であって、二次電池の作動電圧範囲内に酸化還元電位を有し、当該電位で溶解(イオン化)し得るものが挙げられる。具体的な金属異物を組成する元素(およびその酸化還元電位)としては、例えば、鉄(Fe;2.6V)、銅(Cu;3.4V)、アルミニウム(Al;1.4V)、マンガン(Mn;1.9V)、亜鉛(Zn;2.3V)、クロム(Cr;2.3V)、カドミニウム(Cd;2.6V)、ニッケル(Ni;2.9V)、スズ(Sn;2.9V)、鉛(Pb;2.9V)等が挙げられる。とりわけ鉄は、例えば種々の製造装置等に多用されるステンレス鋼(SUS;Stainless Used Steel)の主成分でもあることから、製造工程において混入する可能性が高いと考えられる。また、比較的抵抗が高いため、かかる鉄の無害化処理を好適に行うことが好ましい。なお、本明細書において「電位」とは、特に限定しない限り、リチウムの有する電位(V)と該金属異物との電位差(リチウム基準の電位(V))を示す。
以下、ここで開示される製造方法の好ましい一態様について説明する。なお、以下ではリチウム二次電池である場合を例としてより詳しく説明することがあるが、本発明の適用対象をかかる電池に限定する意図ではない。
≪電極体の準備≫
ここでは先ず、正極と負極とを備える電極体を用意する。
正極は、典型的には正極集電体と、該正極集電体上に形成された少なくとも正極活物質を含む正極合材層とを備えている。かかる正極の作製方法は特に限定されないが、例えば、正極活物質と導電材とバインダ(結着剤)等とを適当な溶媒中で混合してスラリー状(ペースト状、インク状のものを包含する。)の組成物(以下、「正極合材スラリー」という。)を調製し、該スラリーを正極集電体上に付与して正極合材層(正極活物質層ともいう。)を形成した形態のものを用いることができる。正極合材スラリーを調製する方法としては、上記正極活物質と導電材とバインダとを一度に混練してもよく、何回かに分けて段階的に混練してもよい。特に限定されるものではないが、正極合材スラリーの固形分濃度(NV)は50質量%〜75質量%(好ましくは55質量%〜65質量%、より好ましくは55質量%〜60質量%)とすることができる。また、正極合材層を形成する方法としては、例えば、上記正極合材スラリーを正極集電体の片面または両面に、従来公知の塗布装置(例えば、スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター、グラビアコーター)を用いて適量塗布した後、乾燥する方法を採用することができる。特に限定されるものではないが、正極集電体の単位面積当たりに設けられる正極合材層の質量(正極集電体の両面に正極合材層を有する構成では両面の合計質量)は、例えば10mg/cm〜30mg/cm程度とすることができる。
正極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられる。集電体の形状は、構築される電池の形状等に応じて異なり得るため特に限定されず、棒状体、板状体、箔状体、網状体等を用いることができる。なお、後述する捲回電極体を備えた電池では、主に箔状体が用いられる。箔状集電体の厚みは特に限定されないが、電池のエネルギー密度と集電体の強度との兼ね合いから、5μm〜50μm(より好ましくは10μm〜30μm)程度のものを好ましく用いることができる。
正極活物質としては、従来から二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等のリチウム原子と遷移金属原子とを構成金属原子として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム原子と遷移金属原子とを構成金属原子として含むリン酸塩等が挙げられる。なかでも、構成元素としてリチウム元素、ニッケル元素、コバルト元素およびマンガン元素を含む層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)は、エネルギー密度が高く、且つ熱安定性にも優れる。さらに、ここで開示される技術の利点をより効果的に受けられるため、好ましく用いることができる。特に限定するものではないが、正極合材層全体に占める正極活物質の割合は、50質量%以上(典型的には70質量%以上100質量%以下、例えば80質量%以上99質量%以下)であることが好ましい。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li、Ni、Co、Mnを構成金属原子とする酸化物のほか、Li、Ni、Co、Mn以外に他の少なくとも一種の金属原子(Li、Ni、Co、Mn以外の遷移金属原子および/または典型金属原子)を含む(他の金属原子で一部構成元素が置換された)酸化物をも包含する意味である。かかる金属原子は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)、白金(Pt)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ランタン(La)、セリウム(Ce)のうちの一種または二種以上の原子であり得る。このことは、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、およびリチウムマンガン酸化物についても同様である。上記置換的な構成原子の量は特に限定されないが、例えば当該置換原子とNiとCoとMnとの合計100質量%に対して、0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上、例えば0.3質量%以上)であって、5質量%以下(典型的には3質量%以下、例えば2.5質量%以下)とすることができる。このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば従来公知の方法で調製されたものをそのまま使用することができる。
溶媒としては、従来から二次電池に用いられる溶媒のうち一種または二種以上を特に限定なく用いることができる。かかる溶媒は水系と有機溶剤に大別され、有機溶媒としては、例えば、アミド、アルコール、ケトン、エステル、アミン、エーテル、ニトリル、環状エーテル、芳香族炭化水素等が挙げられる。より具体的には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−プロパノール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロペン酸メチル、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、アセトニトリル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられ、典型的にはNMPを用いることができる。また、水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒であることが好ましい。該混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒(例えば水)が挙げられる。
導電材としては、従来から二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等)、コークス、黒鉛(天然黒鉛およびその改質体、人造黒鉛)、炭素繊維(PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維)、ナノカーボン等の炭素材料を用いることができる。なかでも、粒径が小さく比表面積の大きなカーボンブラック(典型的には、アセチレンブラック)を好ましく用いることができる。特に限定するものではないが、正極合材層全体に占める導電材の割合は、例えば1質量%以上15質量%以下(典型的には5質量%以上10質量%以下)とすることができる。
バインダとしては、上述した溶媒中に均質に溶解または分散し得る化合物であって、従来から二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。例えば、有機溶剤系のスラリー(分散媒の主成分が有機溶媒である溶剤系スラリー)を用いて正極合材層を形成する場合には、有機溶剤に分散または溶解するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。あるいは、水系のスラリーを用いて正極合材層を形成する場合には、水に溶解または分散するポリマー材料を好ましく採用し得る。かかるポリマー材料としては、セルロース系ポリマー、フッ素系樹脂、酢酸ビニル共重合体、ゴム類等が例示される。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)等が挙げられる。特に限定するものではないが、正極合材層全体に占めるバインダの割合は、例えば0.5質量%以上10質量%以下(好ましくは1質量%以上5質量%以下)とすることができる。
また、ここで調製される正極合材スラリーには、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、各種添加剤(例えば、過充電時においてガスを発生させ得る化合物や分散剤として機能し得る材料)を添加することもできる。上記過充電時にガスを発生させ得る化合物としては、炭酸塩(例えば、炭酸リチウム)やシュウ酸塩(例えば、シュウ酸リチウム)等が挙げられる。また、上記分散剤としては、疎水性鎖と親水性基をもつ高分子化合物(例えばアルカリ塩、典型的にはナトリウム塩)や、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩等を有するアニオン性化合物やアミン等のカチオン性化合物等が挙げられる。より具体的には、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチラール、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ等が挙げられる。
ここで開示される製造方法では、正極合材スラリーを付与した後に、適当な乾燥手段で正極合材スラリーに含まれる溶媒を除去する。かかる手法としては、自然乾燥や、熱風、低湿風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線による乾燥等を単独または組み合わせて用いることができる。上記正極合材スラリーの乾燥後、正極に適宜プレス処理を施すことによって、正極合材層の厚みや密度を調整することができる。プレス処理には、例えば、ロールプレス法、平板プレス法等、従来公知の各種プレス方法を採用することができる。正極集電体上に形成された正極合材層の密度が極端に低い場合は、単位体積当たりのエネルギー密度が低下する虞がある。また、正極合材層の密度が極端に高い場合は、特に大電流充放電時や低温環境下において内部抵抗が上昇する傾向にある。このため、正極合材層の密度は、例えば2.0g/cm以上(典型的には2.5g/cm以上)であって、4.5g/cm以下(典型的には4.2g/cm以下)とすることが好ましい。
負極は、典型的には負極集電体と、該負極集電体上に形成された少なくとも負極活物質を含む負極合材層とを備えている。かかる負極の作製方法は特に限定されないが、例えば、負極活物質とバインダ等とを適当な溶媒中で混合してスラリー状の組成物(以下、「負極合材スラリー」という。)を調製し、該スラリーを負極集電体上に付与して負極合材層(負極活物質層ともいう。)を形成した形態のものを用いることができる。負極合材層を形成する方法としては、上述した正極の場合と同様の手法を適宜採用することができる。特に限定されるものではないが、負極集電体の単位面積当たりに設けられる負極合材層の質量(両面の合計質量)は、例えば5mg/cm〜30mg/cm程度とすることができる。
負極集電体としては、導電性の良好な金属(例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)からなる導電性部材が好ましく用いられる。負極集電体の形状は、正極集電体の形状と同様であり得る。
負極活物質としては、従来から二次電池に用いられる物質の一種または二種以上の材料を特に限定することなく使用することができる。例えば、天然黒鉛(石墨)およびその改質体や石油または石炭系の材料から製造された人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンナノチューブ等少なくとも一部に黒鉛構造(層状構造)を有する(低結晶性の)炭素材料;リチウムチタン複合酸化物等の金属酸化物;スズ(Sn)やケイ素(Si)とリチウムの合金等が挙げられる。なかでも、高エネルギー密度が得られる黒鉛質の炭素材料(典型的には、黒鉛)を好ましく使用することができる。負極合材層全体に占める負極活物質の割合は特に限定されないが、通常は凡そ50質量%以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ90質量%〜99質量%(例えば凡そ95質量%〜99質量%)である。
バインダとしては、上記正極合材層用のバインダとして例示したポリマー材料から適当なものを選択することができる。例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が例示される。負極合材層全体に占めるバインダの割合は、特に限定されないが、例えば1質量%〜10質量%(好ましくは2質量%〜5質量%)とすることができる。その他、既に上述した各種添加剤や導電材等を適宜使用することができる。
負極合材スラリーを付与した後、適宜上述した乾燥手段を用いて溶媒を除去する。かかる乾燥の後、正極の場合と同様に適宜プレス処理を施すことによって、負極合材層の厚みや密度を調整することができる。プレス処理後の負極合材層の密度は、例えば1.1g/cm以上(典型的には1.2g/cm以上、例えば1.3g/cm以上)であって、1.5g/cm以下(典型的には1.49g/cm以下)とすることができる。
上記正極および上記負極を積層して、電極体が作製される。電極体の形状は特に限定されないが、例えば、長尺状の正極集電体上に所定の幅の正極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の上記正極と、長尺状の負極集電体上に所定の幅の負極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の上記負極と、が積層され捲回され、側面方向から押圧して拉げさせてなる扁平形状の捲回電極体を用いることができる。扁平形状の捲回電極体では、該電極のコーナー部分と直線部分とで面圧が異なるため、面圧の高いコーナー部分でとりわけ金属イオンの拡散が進み難い傾向にある。このため、かかる捲回電極体を備えた電池では、通常、無害化処理に長時間を要する。しかし、ここで開示される製造方法によれば、従来に比べ効率よく無害化処理を行うことができ、品質の安定した該電池を従来に比べて短時間で製造することができる。
ここで開示される二次電池の典型的な構成では、正極と負極との間にセパレータが介在される。該セパレータとしては、従来から二次電池に用いられるものと同様の各種多孔質シートを用いることができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。なお、固体状の電解質を用いた二次電池(リチウムポリマー電池)では、電解質がセパレータを兼ねる構成としてもよい。
≪セルの構築工程≫
次に、正極と負極を備える上記電極体と、電解質と、を適当な電池ケースに収容する。そして、該ケースを密閉して、二次電池(セル)が構築される。密閉の作業は、従来から二次電池に用いられる方法と同様の方法で行うことができる。例えば、金属製の電池ケースを用いる場合は、レーザー溶接、抵抗溶接、電子ビーム溶接等の手法を用いることができる。また、非金属製(例えば樹脂材料)の電池ケースを用いる場合は、接着剤による接着や超音波溶接等の手法を用いることができる。
電池ケースとしては、従来から二次電池に用いられる材料や形状を用いることができる。該ケースの材質としては、例えばアルミニウム、スチール等の比較的軽量な金属材や、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を用いることができる。なかでも、放熱性やエネルギー密度の向上等の観点から、比較的軽量な金属(例えばアルミニウムやアルミニウム合金)からなる電池ケースを好ましく採用し得る。また、該ケースの形状(容器の外形)も特に限定されず、例えば円形(円筒形、コイン形、ボタン形)、六面体形(角形、平形)、およびそれらを加工し変形させた形状等であり得る。また、該ケースには必要に応じて電流遮断機構(電池の過充電時に、内圧の上昇に応じて電流を遮断し得る機構)等の安全機構を設けることもできる。
電解質としては、従来から二次電池に用いられるものと同様の一種または二種以上のものを特に限定なく使用することができる。かかる電解質は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩(典型的には、リチウム塩)を含有させた組成を有する。あるいは、液状の電解質にポリマーが添加され固体状(典型的には、いわゆるゲル状)となったものでもよい。
非水溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の非プロトン性溶媒を用いることができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、ジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等を用いることができる。なかでも、カーボネート類(例えば、比誘電率の高いECや、標準酸化電位が高い(即ち、電位窓の広い)DMCおよびEMC等)を用いることが好ましい。例えば、非水溶媒として一種または二種以上のカーボネート類を含み、それらカーボネート類の合計体積が非水溶媒全体の体積の60体積%以上(より好ましくは75体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、実質的に100体積%であってもよい。)を占める非水溶媒を特に好ましく用いることができる。
支持塩としては、二次電池の支持電解質として機能し得ることが知られている各種の材料を適宜採用することができる。例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiCFSO、LiCSO、LiC(SOCF、LiClO等の各種のリチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができる。なかでも、LiPFを好ましく用いることができる。支持塩の濃度は特に制限されないが、極端に低すぎると電解質に含まれるリチウムイオンの量が不足し、イオン伝導性が低下する傾向がある。また極端に濃度が高すぎると電解質の粘度が高くなりすぎて、イオン伝導性が低下する傾向がある。このため、支持塩の濃度は、電解質全体に対して、例えば凡そ0.1mol/L〜2mol/L(好ましくは、凡そ0.8mol/L〜1.5mol/L)程度で含有させることが好ましい。
さらに、ここで用いられる電解質には、例えば、電池の性能を向上させるような添加剤(具体的には、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等)や、過充電防止剤(ここでは、過充電状態において分解され大量のガスを発生させるような化合物をいう。典型的には、ビフェニル(BP)やシクロヘキシルベンゼン(CHB)。)等の各種添加剤を適宜添加することもできる。
≪圧力負荷工程≫
次に、上記構築したセルに所定の圧力を負荷する。セルに負荷する圧力は、特に限定されないが、かかる圧力が極端に小さい場合は金属異物とセパレータ(セパレータに含浸された電解質)との接触が不十分となり、金属イオンが十分に電解質中に溶解しない虞がある。また、加える圧力が極端に大きい場合は、電池ケースが過度に変形したり、電極体内(典型的には、電極やセパレータ)に存在する空隙(細孔)が潰れたりして、電池性能に悪影響を及ぼす虞がある。このため、上記圧力は、例えば0.01MPa以上(典型的には0.05MPa以上)であって、10MPa以下(典型的には5MPa以下、例えば1MPa以下)とすることが好ましい。負荷する圧力が上記範囲にある場合、本願の効果と電池性能とを高いレベルで両立させることができる。なお、本明細書において「圧力」とは、大気圧に対する相対圧、即ち実際の圧力(絶対圧)から大気圧(凡そ0.1MPa)を差し引いた圧力の値を指す。
圧力の負荷は、従来公知の一種または二種以上の手法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、該ケースを1対の拘束板で挟んでボルト等で拘束板を締めつける方法や、拘束バンドを用いる方法、エアープレス、油圧プレス等のプレス機による方法、適度な重量の重りを該ケース上に積載する等の重力を用いる方法、真空炉等で減圧する方法等が挙げられる。圧力の負荷に際しては、典型的には適当な治具(例えば拘束板)を使用する。例えば、セルが六面体形状の場合には、該セルの少なくとも一対の幅広面を拘束板で挟み込んだ状態で圧力を加える手法を好適に用いることができる。拘束板を用いることで、電池ケース(具体的には、該ケース内の電極体)を全体に渡ってムラなく加圧することができる。また、例えば複数のセルを同時に加圧処理する場合には、図7に示すようなコイルスプリングを利用した拘束治具90を好適に用いることができる。該拘束治具90を用いる場合は、例えば二次電池(単セル)100を拘束板92の間に収容した後、取っ手部94を回してコイルスプリングを調整することにより、該セルの一対の幅広面に対し任意の圧力を負荷する。図8(A)には、圧力を負荷された二次電池100(ここでは捲回電極体80を備えた角形電池)の状態を模式的に示している。また、図7に示すような拘束治具90において、負荷した圧力を低減する場合は、上記圧力を負荷する場合とは逆の方向に取っ手部94を回し、コイルスプリングを緩める。図8(B)には、圧力を低減した二次電池100の状態を模式的に示している。なお、負荷した圧力の大きさ(値)は、一般的な圧力測定手法(例えば、ロードセル、ひずみゲージ等)を用いて求めることができる。また、かかる圧力の負荷は一度に行ってもよく、例えば二回以上に分けて段階的に行ってもよい。
≪電位調整工程≫
次に、上記構築した二次電池(セル)について、正極の電位(最高到達電位)が金属異物の酸化電位以上となるよう電位を調整する。正極および負極の電位は、混入する可能性のある金属異物の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、既に上述した金属異物(元素)のうち、酸化還元電位が最も高いものは銅である。したがって、例えば酸化還元電位が銅以下の元素全て(例えば、銅や鉄)を対象とする場合には、正極の電位(最高到達電位)を銅の酸化電位以上(凡そ3.4V以上、例えば4.0V〜4.5V)に設定する。図2に、本工程の好適な一実施形態に係る、電流、正極電位、負極電位、および正負極間の電位差の経時変化を示す。図2に示す例では、正極の電位を凡そ4.5Vに設定している。
また、鉄は種々の金属元素のなかでも製造装置等の素材として多用されていることから、セル内に混入する可能性が高いと考えられる。かかる鉄を対象とする場合(即ち、酸化還元電位が鉄よりも大きいもの(例えば銅)を考慮しない場合)には、正極の電位(最高到達電位)を鉄の酸化電位以上(凡そ2.5V以上、例えば2.5V〜3.5V)に設定し、また負極の電位(最高到達電位)を鉄の還元電位以上(凡そ2.5V以上、例えば1.5V〜2.5V)に設定することが好ましい。図3に、本工程の好適な一実施形態に係る、電流、正極電位、負極電位、および正負極間の電位差の経時変化を示す。図3に示す例では、正極の電位を凡そ3.2Vに設定している。ここで開示された技術によれば、鉄を好適に溶解かつ拡散しえるため、従来に比べ短時間で安定的に無害化処理することができる。
なお、本発明者らの詳細な検討によると、例えば、電位調整工程において所定の大きさの金属異物を溶解するに必要な時間は、様々な因子により影響を受ける。例えば、環境温度、電池電圧(正負極間の電位差)、金属異物の溶解速度の他に、二次電池の構成材料の仕様の違いやバラつき等を考慮することができる。かかる二次電池の構成材料の仕様の違いとしては、例えば、活物質の種類、電解質に加える添加剤の濃度等の影響を考慮することができる。具体的には、電解質に加える添加剤の濃度がより高濃度となることで、金属異物の溶解速度が低下する傾向にあることが確認されている。また、二次電池の構成材料のバラつきについては、電極の管理しきれない水分量の違いや、金属異物の混入状態(正極活物質層への埋まり具合や、電解質との濡れ具合等)、電極および/またはセパレータへの電解質の含浸の度合い等を考慮することができる。具体的には、例えば電極のドライルームでの保管期間が長くなった場合や、瞬間的に大気中に曝された場合などに、金属異物の溶解速度が低下することが確認されている。これらは電極中の水分量が上昇したことによるものであると考えられる。
したがって、ここに開示される製造方法においては、上記に例示した因子による影響やその他の影響も含め、より短時間で確実に無害化処理を行える時間を設定することができる。例えば、ここに開示される製造方法では、以下の手法により、無害化処理の環境あるいは二次電池の状態に応じて、より適切な処理時間で確実に無害化処理を行うようにしている。即ち、後述する実施例に示すように、予め所定の大きさの金属異物(例えば鉄)を正極表面に配置し、その他の条件(ここでは電位調整の態様および負荷する圧力)を様々に変化させて、無害化処理(電位調整工程)を実施する。このとき、所定の時間で溶解される金属異物の溶解量と、変動させた条件(例えば充電パターン、充電レート、負荷する圧力等)との関係を予め調べておくことで、実際の環境温度における適切かつ最短の充電維持時間を設定することができる。
ここで開示される製造方法の好ましい一態様では、上記電位の調整は、上記正極の電位が金属異物の酸化電位以上となるよう充電すること(以下、単に「充電」ということもある。);上記充電後に保持すること(以下、単に「充電後の保持」ということもある。);上記保持後に放電すること(以下、単に「放電」ということもある。);および上記放電後に保持すること(以下、単に「放電後の保持」ということもある。);を包含する。このとき、上記充電においてセルに負荷する圧力(T)と、上記保持においてセルに負荷する圧力(T)および上記放電においてセルに負荷する圧力(T)とを異ならせ、以下の関係:T>T且つT>Tを満たすよう調整する。
金属異物をイオン化し、非水電解質中に溶解させる工程(充電)では負荷する圧力を高くし、逆に、イオン化した金属異物が非水電解質中に拡散する工程(保持および/または放電)では負荷する圧力を低くすることで、より迅速且つ広範囲に金属イオンを拡散させることができる。したがって、当該処理(電位の調整)の所要時間をも短縮することができ、金属異物の析出に起因する短絡をより抑制することができる。
上記充電から上記放電後の保持までは、かかるパターンを1サイクルとして2回以上繰り返すことが好ましい。このことにより、正極からの金属異物の溶解の促進と、負極における金属異物の析出の緩和とを、繰り返し行うことができる。そのため、金属異物を充分に溶解させつつ、負極上での集中的な析出を効果的に抑えることができる。繰り返しの回数は特に限定されないが、例えば5回以上(好ましくは10回以上)とすることができる。一方、繰り返し回数が多すぎると、無害化処理に費やされる時間が長くなりすぎる虞がある。よって、繰り返し回数は、例えば30回以下(好ましくは20回以下)とすることが好ましい。なお、各回の充電、充電後の保持、放電、放電後の保持の態様(例えば充放電レートや所要時間)は、全てのサイクルで同一であってもよく、異なっていてもよい。
充電の態様(具体的には、充電方法、充電電流値、充電時間等)は特に限定されないが、例えばパルス状の電流を短時間(例えば1秒以上10秒以下)供給することによって行うことができる。なお、図2に示す例では、1回目の充電の時間は10秒間であり、2回目の充電の時間は4秒間である。また、金属異物の溶解を促進する観点から、充電における電流値は比較的高い方が好ましい。かかる電流値は、特に限定されるものではないが、例えば1C以上が好ましく、2C以上がより好ましい。図2に示す例では、電流値は1.2C(5A)である。パルス状の大電流を短時間に供給することによって、金属異物の溶出(溶解)をより一層促進することができる。また、充電時間を上記数値範囲とすることで、負極上での集中的な析出を抑制し、本願の効果をより発揮することができる。なお、図2では、充電時の電流をプラスの電流、放電時の電流をマイナスの電流として表記している。また、ここでは金属異物の溶出を促進し得るような処理(例えば加熱)を併せて実施することもできる。
上記充電後の保持では、自己放電はあるものの、正極および負極の電位は実質的に充電後の状態で維持される。保持時間は特に限定されないが、極端に長すぎると金属イオンが負極上に集中的に析出しやすくなる。そこで、保持時間は例えば10分間以内(典型的には5分間以内、例えば3分間以内、好ましくは1分間以内)とすることが好ましく、例えば20秒間〜50秒間であってもよい。図3に示す例では、充電後の保持時間は約44秒間である。
ここで、好ましい一態様としては、上記充電後に、セルに負荷した圧力を一時的に低減させる。該圧力は、充電時に負荷される圧力より低減されている限りにおいて特に限定されないが、典型的には充電時の圧力を100%としたときに、50%以下(例えば80%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは大気圧と同等(例えば、実質的に0MPa))とすることが好ましい。かかる圧力の緩和によって、金属異物から溶出した金属イオンをより迅速且つ広範囲に拡散させることができる。したがって、金属異物の析出に起因する短絡をより抑制することができ、さらに、当該処理(電位の調整)に要する時間を短縮することもできる。
上記放電の態様も特に限定されず、充電時と同様に、パルス状の電流をそれぞれ1秒以上10秒以下の時間供給することによって行うことができる。図2に示す例では、放電の時間は2秒間である。放電電流値や放電時間については、上記充電と同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、充電時間が放電時間よりも短い場合、自己放電の影響も含めて全体として放電されてしまうため、正極電位が下がり続ける虞がある。特に、正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を使用した場合は、自己放電量が大きいため、正極電位が下がり続ける傾向が強い。そのため、充電時間を放電時間よりも長くすることが好ましい。充電時間を放電時間よりも長くすることによって、正極電位の下降を抑制し、金属異物が充分に拡散するまで溶解を持続させることができる。また、セルに負荷した圧力は、充電時より低減されている限りにおいて、上記充電後の保持と同一であってもよく、異なっていてもよい。
放電後の保持では、負極の電位が比較的高いため、金属イオンの析出は起こりにくい。よって、放電後の保持の時間が長くても金属イオンの析出は生じにくい。しかし、放電後の保持の時間が長すぎると、無害化処理を終了するために多くの時間が必要となる。そこで、保持時間は例えば10分間以内(典型的には5分間以内、例えば3分間以内、好ましくは1分間以内)とすることが好ましく、例えば20秒間〜40秒間であってもよい。図2に示す例では、放電後の保持時間は約30秒間である。なお、充電後の保持時間と放電後の保持時間は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、セルに負荷した圧力の低減の度合いは、上記充電後の保持と同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、ここで開示される製造方法の他の好ましい一態様では、図3に示すように電位調整を行う。かかる態様では、構築されたセルの容量が該セルの理論容量を100%としたときに0.01%以上0.5%以下となるよう、1時間以上かけて充電することによって上記電位の調整を行う。電位の調整を穏やかなレート(充電速度)で長時間かけてゆっくり充電を行うことにより、電極電位を安定的に保持することができ、より品質の安定した該電池を製造することができる。かかる電位の調整は、例えば電極の電位が目標値に到達するまで、低レート(例えば、0.001C以上0.01C以下)の定電流で充電する定電流充電(CC充電)により行うことができる。あるいは、電極の電位が目標値に到達するまで、低レート(例えば、0.001C以上0.01C以下)の定電流で充電し、さらに定電圧で所定時間充電する定電流定電圧充電(CC−CV充電)により行うこともできる。
CV充電時の正負極間電圧は、0.5V以上1.3V以下となるように設定することが好ましい。正負極間電圧は0.5V未満であっても無害化処理は可能である。しかしながら、正負極間電圧が0.5V未満であると、金属異物を溶解させるのに必要以上に長い時間を要する虞がある。したがって、正極で溶解された金属異物(金属イオン)の溶解速度を高め、無害化処理に要する時間を短縮するという観点から、正負極間電圧を0.5V以上とするのが好ましい。また、正負極間電圧が1.3Vを超過した場合であっても無害化処理は可能である。しかしながら、1.3Vを超える正負極間電圧を確保するにはより厳密な正極電位および負極電位の管理が必要となり、負極上に金属異物が析出する虞がある。これらのことから、より安定的にかつ短時間で無害化処理を行うためには、正負極間電圧を0.5V以上1.3V以下(好ましくは0.7V以上1.0V以下)とすることを目安にするのが好適な例として示される。
上記電位の調整後は、所定の状態で一定時間保持(以下、「エージング処理」という。)する。なお、かかるエージング処理の方法は特に限定されず、対象となる二次電池の性能を安定化させ得る各種の手法および条件(例えば、50℃〜60℃の温度環境下で1時間以上保持すること。)によって行うことができる。
好適な一態様では、上記エージング処理の後に、さらに自己放電検査を含む。自己放電検査とは、セルの電圧降下量を計測することで不良品(内部短絡の発生の有無)を判定する検査である。ここで検査対象とする内部短絡は、正極側に残存している金属異物に起因する微細な短絡(微短絡)であるため、かかる微短絡の有無を正確に計測するには、従来では少なくとも5日間程度、場合によっては10日間程度の検査時間を要していた。これは主として、溶解速度が遅く抵抗の高い金属異物(典型的には、鉄)がセル内に残存している場合を想定し、かかる異物の影響を検査するために5日間以上の期間が必要との見解に基づいて、検査時間を設定していたことによる。
これに対し、ここに開示される製造方法では上記充電において溶解速度の遅い鉄をも好適に溶解させ、負極上に広く分散した状態で析出させることができる。このため、自己放電検査においては鉄による内部短絡の可能性が非常に低く、鉄以外の金属種による内部短絡の有無を主眼として検査を行うことができる。例えば、銅については、抵抗が小さいため、数時間(例えば、1時間〜2時間)程度で短絡の有無を検査し得る。このことから、自己放電検査の所要時間は、例えば24時間以内(典型的には15時間以内、例えば10時間以内、好ましくは2時間〜5時間程度)とすることができる。したがって、自己放電検査の著しい時間の短縮を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
特に限定することを意図したものではないが、図4,5に本発明の一実施形態に係る二次電池(単電池)の概略構成を示す。以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を反映するものではない。
図4は、本発明の一実施形態に係る二次電池100の外形を模式的に示す斜視図である。また図5は、上記図4に示した二次電池のV−V線に沿う断面構造を模式的に示す図である。図4,5に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、扁平に捲回された捲回電極体80と、ハードケース(外容器)50とを備える。このハードケース50は、上端が開放された扁平な直方体形状(角形)のハードケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。ハードケース50の上面(即ち蓋体54)には、捲回電極体80の正極シートと電気的に接続する正極端子70および該電極体の負極シートと電気的に接続する負極端子72が設けられている。また、蓋体54には、従来の二次電池のハードケースと同様に、電池ケース内部で発生したガスをケースの外部に排出するための安全弁55が備えられている。
電池ケース50の内部には、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20が長尺状のセパレータ40A,40Bを介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない電解質とともに収容されている。
図6は、捲回電極体80を組み立てる前段階における長尺状のシート構造(電極シート)を模式的に示す図である。正極シート10は、その長手方向に沿う一方の端部において、正極合材層14が設けられておらず(あるいは除去されて)、正極集電体12が露出するよう形成されている。同様に、捲回される負極シート20は、その長手方向に沿う一方の端部において、負極合材層24が設けられておらず(あるいは除去されて)、負極集電体22が露出するように形成されている。そして、正極集電体12の該露出端部に正極集電板が、負極集電体22の該露出端部には負極集電板がそれぞれ付設され、正極端子70(図4,5)および負極端子72(図4,5)とそれぞれ電気的に接続される。
このような扁平形状の捲回電極体80は、長尺状の正極集電体12の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って正極合材層14が形成された正極シート10と、長尺状の負極集電体22の片面または両面(典型的には両面)に長手方向に沿って負極合材層24が形成された負極シート20とを、長尺状のセパレータ40Aと40Bとともに重ね合わせて長尺方向に捲回し、側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製することができる。
ここで開示される技術によると、金属異物が混入した場合であっても、内部短絡が生じ難い二次電池を、従来に比べ簡便かつ効率的に(より短時間で)製造することができる。ここに開示される製造方法によって製造された二次電池(典型的にはリチウム二次電池)は、各種用途に好適に用いることができる。例えば、図9に示すような車両1に搭載される車両駆動用モータ(電動機)の電源として、ここに開示されるいずれかの二次電池100(該電池100を直列および/または並列に複数接続してなる組電池の状態であり得る。)を好適に用いることができる。車両1の種類は特に限定されないが、典型的には、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
以下、本発明を試験例により具体的に説明するが、本発明をかかる試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
<評価用セルの構築>
評価用の角形電池(二次電池)を以下の手順に従って構築した。
先ず、正極活物質としてのリチウム遷移金属酸化物(NCM:LiNi1/3Mn1/3Co1/3)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、これら材料の質量比がNCM:AB:PVdF=93:4:3となるように混練機に投入して、固形分濃度(NV)が50質量%となるようにN−メチルピロリドン(NMP)で粘度を調製しながら混練し、正極合材スラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ15μm)に塗布して、乾燥後にプレス処理することで、正極集電体上に正極合材層を有する正極を作製した。なお、このように作製した正極合材層上には、金属異物としてFe(直径200μm、厚み10μm)を付着させた。
次に、負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、分散剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを用い、これら材料を質量比でC:SBR:CMC=98:1:1となるように混練機に投入し、固形分濃度(NV)が45質量%となるようにイオン交換水と混合することにより負極合材スラリーを調製した。このスラリーを、負極集電体としての銅箔(厚さ10μm)に塗布して、乾燥後にプレス処理することで、負極集電体上に負極合材層を有する負極を作製した。
上記で作製した正極と負極とを、セパレータ(ここでは、PE層の両面にPP層が積層された三層構造のものを用いた。)を介して対面に配置し、電極体を作製した。そして、該電極体の正極集電体の端部に正極端子を、負極集電体の端部に負極端子を溶接により其々接合した。かかる電極体を角形の電池ケースに収容し、電解質(ここでは、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、電解質としてのLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させた電解質を用いた。)を注入した。そして、該電池内には、参照極としてリチウム(ここでは、ニッケルリードの先端にリチウム箔を圧着したものを用いた。)を設置した。該電池ケースの開口部を熱融着して、角形電池(二次電池)を構築した。
<実施例1>
上記で構築した二次電池100を、図7に示すようなコイルスプリングを用いた拘束治具90に設置し、該セルの拘束力が60分の時間間隔で、拘束した状態(0.1MPa)と拘束を解除した状態(0MPa)とを交互に繰り返すよう設定した。そして、図3に示すような電位調整を実施した。即ち、0.015mA(0.004C)の定電流で正負極間電圧が0.8Vとなる条件までCC充電を行い、正負間電圧を保ったまま全充電時間が10時間となるまでCV充電を行った。
定電位充電後の角形電池を解体し、光学顕微鏡を用いて正極、負極およびセパレータ(両面)の表面を観察した。無害化処理前後の観察画像を図10に示す。図10(A)は、無害化処理前の金属異物の写真である。また、図10(B)〜(D)は、それぞれ無害化処理後(定電位充電後)の(A)正極表面、(B)セパレータ(正極側)表面、(C)負極表面、(D)セパレータ(負極側)表面、の写真である。
これらの観察結果から、ここで開示される処理(無害化処理)によって、正極上に配置したFe(金属異物)が好適に溶解され、且つ負極側への析出も抑制し得ることが示された。鉄は金属異物の中でも比較的抵抗が高いが、ここで用いた処理方法によれば、直径200μm、厚み10μmという比較的大きな金属異物であっても、凡そ10時間という従来に比べ短い時間で好適に無害化し得ることがわかった。
<実施例2>
上記で構築した二次電池100を、図7に示すようなコイルスプリングを用いた拘束治具90に設置し、取っ手部94を回して該電池100に0.1MPaの圧力を負荷した。その上で、図2に示すような充放電パターンを合計10サイクル行うことによって、電位調整を施した。即ち、初回の充電を10秒間行った後、30秒間保持し、その後、2秒間の放電、30秒間の保持、4秒間の充電、および30秒間の保持という充放電パターンを10回行った。この際、該セルに負荷する圧力は、上記充放電パターンと連動(同期)して、保持時および放電時において一時的に低減される(ここでは、圧力が一時的に解除(0MPa)される)よう設定した。そして、充電時および放電時には、正極と負極との間に5A(1.2C)のパルス状の電流を供給した。なお、初回の充電時の正極の最高到達電位は4.5V、2回目以降の充電時の正極の最高到達電位は約3.8V〜約4.1Vであり、いずれも3.4V以上であった。また、放電時の負極の最高到達電位は約1.5V〜約2.7Vであり、いずれも3.4V以下であった。
上記充電後の角形電池を解体し、光学顕微鏡を用いて正極、負極およびセパレータ(両面)の表面を観察した。その結果、実施例1と同様に、ここで開示される処理(無害化処理)によって、正極上に配設した金属異物が好適に溶解され、且つ負極側への析出も抑制し得ることがわかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 自動車(車両)
10 正極シート(正極)
12 正極集電体
14 正極合材層
20 負極シート(負極)
22 負極集電体
24 負極合材層
30 金属異物
32 金属イオン
34 金属イオンの析出物
40A、40B セパレータシート
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
55 安全弁
70 正極端子
72 負極端子
80 捲回電極体
90 拘束治具
92 拘束板
94 取っ手部
100 二次電池

Claims (11)

  1. 正極と負極を有する電極体と、電解質と、を備える二次電池を製造する方法であって:
    前記電極体および前記電解質を含むセルを構築すること;
    前記構築したセルに所定の圧力を負荷すること; および、
    前記圧力負荷したセルを、正極の最高到達電位が金属異物の酸化電位以上となるよう電位を調整すること;
    を包含し、
    ここで、前記電位の調整において、前記セルに負荷した圧力を一時的に低減させる処理を含むことを特徴とする、二次電池の製造方法。
  2. 前記金属異物は鉄(Fe)であり、
    前記電位の調整は、正極の最高到達電位が鉄の酸化電位以上であって、且つ負極の最高到達電位が鉄の還元電位以上となるよう行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記電位の調整は、
    正極の最高到達電位が前記金属異物の酸化電位以上となるよう充電すること;
    前記充電後に保持すること;
    前記保持後に放電すること;および、
    前記放電後に保持すること;
    を包含し、
    ここで、前記充電においてセルに負荷する圧力(T)と、前記保持においてセルに負荷する圧力(T)および前記放電においてセルに負荷する圧力(T)と、が異なっており、T>T且つT>Tの関係となるよう調整する、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記充電および前記放電は、1C以上のパルス状の電流をそれぞれ1秒以上10秒以下の時間供給することによって行う、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記Tおよび/またはTは、実質的に0MPaとする、請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記電位の調整は、前記構築されたセルの容量が該セルの理論容量を100%としたときに0.01%以上0.5%以下となるよう、1時間以上かけて充電を行う、請求項1または2に記載の製造方法。
  7. 前記充電は定電流定電圧(CC−CV)充電によって行い、該CC充電時の電流を0.01C以下に設定する、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記充電は、CV充電時の正負極間電圧が0.5V以上1.3V以下となるように行う、請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 前記電極体は、
    長尺状の正極集電体上に、所定の幅の正極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の正極と、
    長尺状の負極集電体上に、所定の幅の負極合材層が該集電体の長手方向に沿って形成されている長尺状の負極と、を備え、
    前記長尺状の正極と、前記長尺状の負極とが対向した状態で積層され、長手方向に捲回され、側面方向から押圧して拉げさせてなる扁平形状の捲回電極体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記電位の調整後に、
    前記セルの電圧降下量を計測する自己放電検査を含み、
    前記自己放電検査は15時間以内で行う、請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法により製造された、二次電池。
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