JP5458848B2 - 電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、該電子写真感光体を用い電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置及びプロセスカートリッジに関する。本発明の画像形成装置及びプロセスカートリッジは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に幅広く応用される。
電子写真感光体は、コスト、生産性、材料選択の自由度及び地球環境への影響等の理由から、主として有機材料を用いた有機感光体が広く使用されている。有機感光体は、主に感光材料を含有させた感光層からなっており、電荷発生機能と電荷輸送機能を一つの層に備えた単層型と、電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とに機能分離した積層型に大別される。
機能分離した積層型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、一様に帯電された感光体に光照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質に吸収されて電荷(電荷対)を生成する。それらの一方が電荷発生層と電荷輸送層の界面で電荷輸送層に注入され、更に電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面に達し、帯電により与えられた表面電荷を中和して静電潜像が形成される。これらの積層構成の有機感光体は、静電特性の安定性や耐久性の面で有利であり、電子写真感光体において現在の主流となっている。
電子写真感光体のみならず、現像材あるいは画像形成装置本体の改良も進み、有機感光体を用いた画像形成装置のフルカラー化並びに高速化が急速に進行している。それに伴って、印刷用途も多様化しており、近年では電子写真方式による画像形成装置が、軽印刷分野にも展開されている。軽印刷分野では、同一の画像や文書を繰り返し印刷しても画像欠陥の発生がなく、画像品質が安定に維持される必要がある。それを実現するためには、電子写真感光体において、長期にわたる繰り返し印刷を行なっても、感光体表面が摩耗したり、傷が形成されたりすることなく、機械的耐久性に優れていることと、帯電低下、残留電位上昇、及び感度低下が起こることなく、静電的耐久性に優れていること、これらを同時に実現することが重要である。
感光体の耐摩耗性(機械的耐久性)を改良する従来技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献1参照)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(例えば、特許文献2参照)、(3)表面層にフィラーを分散させたもの(例えば、特許文献3参照)等が挙げられる。
これらの技術のうち、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、硬化することによって耐摩耗性及び耐傷性は、ある程度向上するものの、一般オフィス分野よりもより過酷な条件で用いられる軽印刷分野で使用されることを想定すると、その効果は充分とは言えない。表面層を硬化させる場合、表面層に含有される反応に関与しない物質が硬化阻害を引き起こし、未反応のモノマーが層内に残存すると、残留電位上昇及び帯電低下、耐ガス性の低下等を引き起こすおそれがある。また、硬化度を高めるために硬化反応を促進させると、残留電位上昇が顕著に見られ、機械的耐久性と静電的耐久性とを両立させることは難しい。
(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上は可能であるものの、軽印刷分野での使用に対して十分な機械的耐久性を有しない。また、高分子型電荷輸送物質は材料の重合や精製が困難で、高純度なものが得られにくく、静電的耐久性についても充分とは言えない。更に、塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を起こす場合もある。
(3)のフィラーを分散させたものは、耐摩耗性の向上は実現されるが、やはり軽印刷分野においてその効果は充分とは言えない。フィラーを含有することによって機械的耐久性は高まるが、脱離したフィラーが感光体表面に傷を付ける場合があり、それが進行するとフィルミングや異物付着を促すおそれがある。また、フィラー表面に存在する電荷トラップサイトにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生しやすくなる。
このように、従来の技術では、感光体の耐摩耗性の向上は実現されるものの、静電的な劣化が見られ、画像欠陥が発生する等、機械的及び静電的な耐久性において軽印刷分野での使用に対し充分とは言えない。
一方、これらの技術を組み合わせ、表面層に硬化樹脂を用い、更にフィラーを含有させる方法が開示されている。
例えば、特定の硬化型アクリル系モノマーに導電性金属酸化物微粒子を分散した塗工液を用いて保護層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。また、表面層に微粒子とブロック型イソシアネートで架橋された結着樹脂とを含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。また、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化した架橋樹脂層にフィラー微粒子を分散させる方法が開示されている(例えば、特許文献6参照)。また、表面層が熱硬化性バインダー樹脂と、架橋性官能基を有する電荷輸送物質と、導電性微粒子を含有させる方法が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
このように、フィラーを硬化樹脂中に含有させることは、耐摩耗性の向上に対し非常に有効な方法である。フィラーに導電性微粒子を用いる場合は、表面層の抵抗を制御する目的で添加されている場合がほとんどであるが、耐摩耗性の向上に対しても大きな効果を得ることができる。
しかし、硬化樹脂に硬化反応に関与しない物質を混合した場合、硬化阻害を引き起こし、これらの効果が得られなくなるケースも少なくない。したがって、硬化樹脂中にフィラーを含有させる方法は、大きな効果が期待できる反面、それを作り出すには非常に大きな困難を伴うことになる。
例えば、フィラーの分散性が課題として挙げられる。フィラーの分散性を高める方法としては、酸価が30〜400(mgKOH/g)の不飽和ポリカルボン酸タイプの湿潤分散剤を用いる方法が開示されており(例えば、特許文献8参照)、この方法は非常に有効な方法である。
しかし、これらの公知特許では、バインダー樹脂に熱可塑性樹脂を用いており、硬化樹脂を用いる電子写真感光体とは、技術的に大きく異なる。即ち、硬化樹脂を用いる場合は、フィラーを含有させた状態で硬化させる必要があり、フィラー自身が硬化阻害を誘発するおそれがある。硬化阻害が発生した場合には、硬化樹脂を用いた場合の上記効果を得ることができなくなるため、これらの公知技術だけで解決できる問題ではない。
また、バインダー樹脂を加えないでフィラーを溶媒に分散する工程の後、バインダー樹脂の溶解液と混合することにより該表面層を形成する塗工液を作成する方法が開示されている(例えば、特許文献9参照)。
この方法は、フィラーの分散性並びに分散安定性の向上に非常に有効な方法であるが、この方法だけでは硬化樹脂を用いた本発明に対し効果を得ることができない。
以上のように、硬化樹脂にフィラーを分散させた保護層は、感光体の高耐久化に対し非常に有効な方法であるが、それらの効果を得るためには多くの克服すべき課題がある。したがって、感光体の高耐久化を実現する上で、これらの課題を解決する方法が熱望されていた。
このように、硬化樹脂にフィラーを分散させた保護層を設けた感光体は、耐摩耗性や耐傷性が顕著に高まり、長期にわたり繰り返し印刷を行なっても感光体表面状態が変化しないため、画質の安定化が図られ、軽印刷分野の用途に対しても充分に対応できる非常に有効な技術の一つである。
しかし、電荷輸送層上にフィラー及び硬化樹脂からなる保護層を形成する場合、フィラーの存在が硬化樹脂の硬化反応を阻害するおそれがある。フィラーの分散性が高い場合には大きな問題にはならないが、分散性が悪くフィラーが著しく凝集した状態になると、硬化阻害は顕著になり、フィラーを保持する力が低下する。また、フィラーが凝集し、分散性に乏しい状態になると、樹脂による被覆度の小さいフィラーが増加することになり、その結果フィラーが脱離しやすくなる。これにより、感光体の耐摩耗性は著しく低下することになる。更に、硬化阻害により硬化が充分でない状態になると、感光体表面の耐傷性も低下することになる。この場合、フィラー保持力の低下によりフィラーが脱離しやすくなると、脱離したフィラーによって更に傷が形成されるため、耐摩耗性や耐傷性の劣化は加速されることになる。
また、フィラーの凝集は、保護層の膜質にも大きく影響し、表面に非常に大きな凹凸が形成されたり、突起状の塗膜欠陥が発生したりする。これらは、斑点状の画像欠陥及びトナーのクリーニング不良といった問題を引き起こす。更に、フィラーの分散性が悪いと、塗工液中のフィラーはすぐに沈降するため、塗工経時でフィラー含有量が変化し、保護層中に含まれるフィラーの均一性が低下する。その結果、偏摩耗や部分的な静電劣化が起こり、得られる画像には斑点状の画像欠陥や画像濃度ムラが発生することになる。
したがって、硬化樹脂にフィラーを分散させた保護層を形成するためには、フィラーの分散性を高めることが非常に重要である。
また、硬化阻害はフィラーの凝集によってのみ起こるものではない。感光層上に保護層を形成する際、保護層形成用塗工液に含まれる溶剤によって感光層内に含まれる電荷輸送物質が溶解すると、電荷輸送物質は保護層内に溶出され、溶出された電荷輸送物質によって硬化阻害が引き起こされる場合がある。特に、電荷輸送物質の保護層への溶出量が非常に多くなると、硬化阻害が顕著になり、耐摩耗性や耐傷性が著しく低下する。更に、感光層内にイオン化ポテンシャルが小さい電荷輸送物質を含有させた場合、保護層に電荷輸送物質が大量に溶出すると、酸化性ガス雰囲気下において解像度の低下及び画像ボケが発生し、画質が大幅に低下する場合がある。
加えて、電荷輸送物質の保護層への溶出量が非常に多くなると、それ自身が硬化阻害を引き起こすだけでなく、紫外線照射によって保護層を硬化させる場合には、これらの電荷輸送物質が紫外線を吸収するために、保護層内部の硬化反応を妨げることによる影響も見られる。この場合、硬化反応をより促進させるために、紫外線照射量を増加したり、重合開始剤等を必要以上に増量したりすると、ほとんどの場合著しい残留電位上昇や感度低下が見られたり、保護層にしわ及びクラック等が発生したり、感光層との接着性が低下して膜剥がれが見られる等多くの副作用があるため、解決には至らない。
したがって、電荷輸送物質の保護層への過剰な溶出は、避ける必要がある。
また、硬化阻害を引き起こす原因物質として、保護層中に含有される溶媒の影響も無視できない。一般的に、硬化は保護層を塗工した後に行われるため、残留する溶媒の種類や量によっては、硬化阻害により機械的耐久性が大幅に低下する。また、これらの残留溶媒は、残留電位の上昇及び保存経時における静電特性の変動を促進するおそれがあり、静電的耐久性をも低下する。そのため、これらの残留溶媒は可能な限り少ない方が好ましい。
残留溶媒に関する従来技術としては、光導電層にシクロペンタノンが0.05〜10.0質量%含有されてなる感光体が開示されている(例えば、特許文献10参照)。また、特定のチタニルフタロシアニンを用い、電荷輸送層にテトラヒドロフランとシクロブタノンの残留濃度を規定した感光体が開示されている(例えば、特許文献11参照)。
しかし、機械的耐久性と静電的耐久性の双方を高める効果は、これらの方法で得ることが難しい。
このように、硬化樹脂にフィラーを分散させた保護層を形成するためには、フィラーの分散性を高め、かつフィラーや保護層に溶出された電荷輸送層内の電荷輸送物質、残留溶剤等による硬化阻害を低減することが重要である。フィラーの分散性は、分散時に用いられる溶媒(分散媒)による濡れ性が大きく影響するため、分散媒の選択は非常に重要となる。電荷輸送物質の保護層への溶出については、保護層用塗工液に含有される溶媒の電荷輸送物質に対する溶解性によって大きく影響する。溶解性の高い溶媒を多く含んでいると、保護層への電荷輸送物質の溶出量は増加するし、溶解性の低い溶媒を多く含んでいると、電荷輸送物質の溶出は低減されるが、保護層の膜剥がれや電荷輸送物質の析出等が起こる場合もある。また、電荷輸送物質の種類によっても溶媒に対する溶解性が異なるため、硬化阻害に影響する一因である。更に、保護層の残留溶媒も含めると、これらの課題は溶媒に関連するものであることがわかるが、フィラーの分散性を高め、電荷輸送物質の溶出及び残留溶媒が硬化阻害に及ぼす影響が少ない溶媒を特定することは難しく、機械的及び静電的耐久性を両立し、繰り返し使用しても高画質画像が安定に出力可能な電子写真感光体及び画像形成装置が熱望されていた。
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、少なくともフィラー、ポリカルボン酸化合物、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物からなる硬化樹脂を含有する保護層において、保護層に含有されるフィラーの分散性を高め、保護層の硬化阻害が少なく、電荷輸送物質の保護層への溶出量を適度に維持可能とし、これによって偏摩耗及びフィラーの脱離による表面の傷を防止し、また繰り返し使用しても残留電位及び露光部電位の変動が少なく、その結果、機械的並びに静電的耐久性に優れ、長期にわたって繰り返し印刷を行なっても画像欠陥の発生がなく、高画質画像を安定に出力できる電子写真感光体並びにそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行い以下の知見を得た。
即ち、保護層に少なくともフィラー、ポリカルボン酸化合物、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物からなる硬化樹脂を含有させ、更に導電性支持体上に形成された全層の固形分量に対するテトラヒドロフランの含有量を50ppm以上10,000ppm以下とし、同じくシクロペンタノンの含有量を1ppm以上100ppm以下とすることにより、フィラーの分散性が改善され、硬化阻害の影響を小さくすることができ、かつ感光層内の電荷輸送物質の保護層への溶出量を適度に維持できることを見出した。
この知見は、保護層の硬化阻害を防止し、機械的耐久性を高めると同時に、残留電位及び露光部電位の上昇を抑え、静電的耐久性をも向上するために、主にフィラーの分散性と電荷輸送物質の保護層への溶出量及び溶媒量について注目したものである。
フィラーの分散性が顕著に高まった理由としては、ポリカルボン酸化合物とシクロペンタノンとの添加による効果が大きいと考えられる。フィラーの分散性が悪化する一因としては、フィラーと溶媒や有機材料との親和性が乏しいことが挙げられ、分散時に添加したポリカルボン酸化合物は、自身が持つカルボキシル基がフィラーと親和性を保ち、他の疎水性基が溶媒や有機材料と親和性を保つことによって、フィラー表面が溶媒によって濡れやすくなったことが分散性の向上を実現した一因として挙げられる。
ただ、ポリカルボン酸化合物を添加したとしても、これらの効果は溶媒種によって大きな影響を受ける。本発明においては、分散時にポリカルボン酸化合物を添加し、更に溶媒にシクロペンタノンを用いることによって、フィラー分散性が著しく向上できることを見いだした。したがって、本願発明の効果の一つは、ポリカルボン酸化合物とシクロペンタノンとの組み合わせによって得られるものである。
また、シクロペンタノンは、フィラー分散性の向上に有効であるほか、ポリカルボン酸化合物の添加によって得られた高いフィラー分散性を長期安定化する上でも有効である。その結果、保護層用塗工液中のフィラーの沈降を抑制する効果が得られるとともに、沈降しても軽く攪拌することによってフィラー分散状態は回復され、液寿命も大きく向上することが可能となった。これらの効果により、保護層内にはフィラーが凝集することなく均一に含有され、偏摩耗やフィラーによる硬化阻害等の影響を低減することができ、機械的耐久性も維持できる。また、塗工液を静置保存しても使用時に再度攪拌を施すことによって分散性は回復されるため、同じ塗工液を使用して、常に安定した感光体を製造することができる。
また、シクロペンタノンはフィラーの分散性だけでなく、それが含有されていることにより、電荷輸送層と保護層との接着性を高める効果を得ることができる。保護層に硬化樹脂を用いた場合、電荷輸送層と保護層との硬度に大きな差が生じ、その硬度や保護層の膜厚によっては保護層が剥離する場合がある。保護層が剥離すると、機械的耐久性が維持できないのはもちろん、非常に僅かな剥離であったとしても、その領域において電荷が表面に到達できなくなるため、画像欠陥が発生することになる。したがって、保護層における接着性の低下は、感光体の高耐久化において非常に重要な課題である。
更に、シクロペンタノンは、特にテトラヒドロフランとの共存化において、繰り返し使用における残留電位や露光部電位の上昇を抑制する上でも有効である。この効果は、保護層だけでなく、電荷輸送層や電荷発生層など、保護層以外においても効果が見られる場合がある。シクロペンタノンが、保護層の接着性の向上や露光部電位低減に有効なのは、電荷輸送層上に保護層が塗工される際に生ずる電荷輸送物質の保護層への溶出を適度に維持することが可能であることがその一因であると考えられる。ここで言う適度とは、保護層と電荷輸送層との界面における電荷注入性を高め、保護層の接着性を高める効果が得られ、かつ硬化阻害や画像ボケに影響するような溶出量には達しないレベルである。
即ち、保護層の形成においては、電荷輸送層からの電荷輸送物質の溶出量が増加すると、硬化阻害の影響が大きくなることから、それを抑制する必要がある。その一方で、電荷輸送物質の保護層への溶出がまったくないと、露光部電位の上昇や感度の低下、保護層の接着性の低下等を引き起こす場合がある。したがって、機械的耐久性と静電的耐久性を両立するためには、電荷輸送物質の保護層への溶出量を適度に維持することが必要であり、その状態はテトラヒドロフランとシクロペンタノンの含有量で決まることを見出した。
このように、保護層に少なくともフィラー、ポリカルボン酸化合物、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物からなる硬化樹脂を含有させ、更に導電性支持体上に形成された全層の固形分量に対するテトラヒドロフランの含有量を50ppm以上10,000ppm以下とし、同じくシクロペンタノンの含有量を1ppm以上100ppm以下とすることにより、感光体の機械的耐久性と静電的耐久性を同時に高めることが可能となった。
具体的には、フィラーの分散性並びに分散安定性に優れ、かつ硬化阻害や膜剥がれ等の影響が小さい保護層を形成することによって、表面の耐摩耗性や耐傷性が高まり、またフィラーの脱離も抑制され、感光体の機械的高耐久化が実現される。また、良好な分散状態で含有されたフィラーによって、感光体表面には非常に微細な凹凸形状が形成され、その結果フィルミングやクリーニング不良等に起因する画像欠陥の発生を抑制し、その効果は繰り返し使用しても安定に維持される。また、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の保護層への溶出が適度に維持されることにより、繰り返し使用における残留電位上昇が抑制され、露光部電位の安定性が高められ、静電的高耐久化も同時に実現される。
このように本発明者らが検討を行った電子写真感光体の構成によれば、機械的並びに静電的耐久性に優れ、長期にわたり繰り返し使用しても画像欠陥の発生が抑制され、高画質画像を安定に出力することが可能となるという極めて優れた効果が発揮されることの知見を得た。
本発明は、前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、該支持体上に、少なくとも、電荷発生層と、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層と、フィラー、ポリカルボン酸化合物、及び電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物とを含む硬化性樹脂を含有する保護層と、がこの順で積層されてなり、前記支持体上に積層された全層の固形分量に対する含有量が、テトラヒドロフランについて50ppm以上10,000ppm以下であり、シクロペンタノンについて1ppm以上100ppm以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
<2> 支持体上に積層された全層の固形分量に対するテトラヒドロフランの含有量が、200ppm以上3,000ppm以下である前記<1>に記載の電子写真感光体である。
<3> 支持体上に積層された全層の固形分量に対するシクロペンタノンの含有量が、2ppm以上30ppm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<4> テトラヒドロフランが、電荷輸送層及び保護層に含有され、シクロペンタノンが保護層に含有される前記<1>から<3>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<5> 電荷輸送物質の分子量が、600以上900以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<6> 電荷輸送物質が、下記一般式(1)で示されるジスチリル化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
ただし、前記式(1)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
Aは、置換基を有してもよいアリーレン基、及び下記一般式(1a)で表される基のいずれかを表す。
ただし、前記式(1a)中、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表す。前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
B及びB’は、それぞれ、置換基を有してもよいアリール基、及び下記一般式(1b)で表される基のいずれかを表す。B及びB’は、各々同一でも異なっていてもよい。
ただし、前記式(1b)中、Arは、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリーレン基を表し、また、Ar及びArは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリール基を表す。
<7> 電荷輸送物質が、下記一般式(2)で表されるジスチリル化合物である前記<6>に記載の電子写真感光体である。
ただし、前記式(2)中、R〜R33は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
<8> 電荷輸送物質が、下記一般式(3)で表されるジスチリル化合物である前記<6>に記載の電子写真感光体である。
ただし、前記式(3)中、R34〜R57は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
<9> 電荷輸送性構造を有する重合性化合物の電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造である前記<1>から<8>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<10> 電荷輸送性構造を有する重合性化合物、及び電荷輸送性構造を有しない重合性化合物のいずれかが、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の少なくともいずれかを有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<11> 電荷輸送性構造を有しない重合性化合物が3つ以上の重合性官能基を有し、電荷輸送性構造を有する重合性化合物が1つの重合性官能基を有する前記<1>から<10>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<12> フィラーが、金属酸化物粒子である前記<1>から<11>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<13> 金属酸化物粒子が、α−アルミナ粒子である前記<12>に記載の電子写真感光体である。
<14> フィラーの平均一次粒径が、0.05μm以上0.7μm未満である前記<1>から<13>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<15> 保護層の厚みが、1μm以上5μm以下である前記<1>から<14>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<16> 保護層表面の十点平均粗さRzが、0.3μm以上1.0μm以下である前記<1>から<15>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<17> 保護層表面に存在する凹凸の平均間隔Smが、0.3mm以上1.0mm以下である前記<1>から<16>のいずれかに記載の電子写真感光体である。
<18> 少なくとも、前記<1>から<17>のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、該現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置である。
<19> 少なくとも、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素を複数配したタンデム型である前記<18>に記載の画像形成装置である。
<20> 画像形成装置が、更に電子写真感光体表面に潤滑性物質を塗布する潤滑性物質塗布手段を有する前記<18>から<19>のいずれかに記載の画像形成装置である。
<21> 前記<1>から<17>のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段より選択される少なくとも1つの手段と、を一体として有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
本発明によれば、前記従来における諸問題を解決でき、前記目的を達成することができ、少なくともフィラー、ポリカルボン酸化合物、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物からなる硬化樹脂を含有する保護層において、保護層に含有されるフィラーの分散性を高め、更に保護層の硬化阻害が少なく、電荷輸送物質の保護層への溶出量を適度に維持可能とし、これによって偏摩耗及びフィラーの脱離による表面の傷を防止し、また繰り返し使用しても残留電位及び露光部電位の変動が少なく、その結果、機械的並びに静電的耐久性に優れ、長期にわたって繰り返し印刷を行なっても画像欠陥の発生がなく、高画質画像を安定に出力できる電子写真感光体並びにそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジを提供することができる。
本発明における電子写真感光体の層構成の一例を示す概略図である。 本発明における電子写真感光体の層構成の他の一例を示す概略図である。 本発明における画像形成プロセスを説明するための概略図である。 近接配置型ローラ方式の帯電手段の説明図である。 本発明における画像形成プロセスを説明するための他の概略図である。 本発明における画像形成プロセスを説明するための更に他の概略図である。 本発明のプロセスカートリッジを説明するための概略図である。 実施例で用いた電荷発生物質のX線回折スペクトル図であり、縦軸は一秒当りのカウント数(cps:counts per second)を表し、横軸は角度(2θ)を表す。 実施例で用いた加速摩耗試験装置の概略図である。 実施例で用いたSAICASによる測定結果の一例である。 実施例で用いたSAICASによる測定結果の他の一例である。
(電子写真感光体)
本発明の電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に、少なくとも、電荷発生層と、電荷輸送層と、保護層と、がこの順で積層されてなり、前記支持体上に積層された全層の固形分量に対する含有量が、テトラヒドロフランについて50ppm以上10,000ppm以下であり、シクロペンタノンについて1ppm以上100ppm以下であることとしてなる。
前記電子写真感光体の層構成としては、前記支持体上に、少なくとも、前記電荷発生層と、前記電荷輸送層と、前記保護層と、がこの順で積層されている限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて、更に下引き層、その他の層を積層させたものが挙げられる。前記下引き層としては、特に制限はなく、例えば前記電荷発生層と前記支持体との間に配される層が挙げられる。
<支持体>
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示す導電性支持体が挙げられ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの;アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板及びそれらを、押し出し、引き抜き等の工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩等の表面処理した管等を使用することができる。また、例えば、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも前記導電性支持体として用いることができる。
更に、前記導電性支持体上に導電性粉体をバインダー樹脂に分散させて導電性層を形成(塗工等を用いて形成)したものも導電性支持体として用いることができる。
前記導電性粉体としては、特に制限はなく、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉、導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体等が挙げられる。また、同時に用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が挙げられる。
前記導電性層としては、特に制限はなく、導電性粉体とバインダー樹脂を、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に分散させて塗布することにより設けることができる。
更に、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、ポリテトラフルオロエチレン系フッ素樹脂等の素材に導電性粉体を含有させた熱収縮チューブを用いて、円筒基体上に導電性層を設けたものも、導電性支持体として用いることができる。
前記例示に係る導電性支持体の中でも、陽極酸化被膜処理を簡便に行なうことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が好ましい。前記アルミニウムには、純アルミニウム系あるいはアルミニウム合金のいずれかをも含むこととしてもよい。具体的には、JIS1,000番台、3,000番台、6,000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。
前記陽極酸化被膜としては、特に制限はなく、各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものが挙げられるが、中でもアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくともいずれかを電解質溶液中で陽極酸化処理を行なったアルマイトと呼ばれる被膜が、残留電位上昇が少なく、また反転現像を用いた際に発生する地汚れの防止効果が高く有効である。
前記陽極酸化処理としては、特に制限はなく、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中において行うことができる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の範囲で処理が行なわれるが、これに限定するものではない。
このように作製される陽極酸化被膜は、多孔質であり、また絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化被膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化被膜を更に封孔処理することが好ましい。
前記封孔処理としては、特に制限はなく、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化被膜を浸漬する方法、陽極酸化被膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法等が挙げられる。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。
封孔処理に引き続き、前記陽極酸化被膜の洗浄処理を行うことが好ましい。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰付着物を除去することが主な目的である。
前記過剰付着物が支持体(陽極酸化被膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は多段階の洗浄を行なう。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれいな(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが好ましい。
以上のようにして形成される陽極酸化被膜の膜厚としては、特に制限はないが、5μm〜15μmが好ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化被膜としてのバリア性の効果が充分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
<電荷発生層>
前記電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。
前記電荷発生物質としては、特に制限はなく、公知の電荷発生物質を用いることができ、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、非対称ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、カルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭53−95033号公報参照)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭53−133445号公報参照)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭53−132347号公報参照)、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−21728号公報参照)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−22834号公報参照)、オキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−12742号公報参照)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−17733号公報参照)、ジスチリルオキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−2129号公報参照)、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料(例えば、特開昭54−14967号公報参照)等のアゾ系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料、また下記一般式(4)で表される金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン骨格を有する顔料(フタロシアニン系顔料)等が挙げられる。
ただし、前記式(4)中、M(中心金属)は、金属及び無金属(水素)の元素を表す。ここで挙げられるM(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしく酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物等の2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。
前記フタロシアニン骨格を有する顔料としては、少なくとも前記式(4)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体等多量体構造を持つもの、更に高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また、基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するチタニルフタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等は感光体特性上、特に好ましい。また、これらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことが知られており、例えばチタニルフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、Y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより種々の特性も変化する。これらの種々の結晶系を有するフタロシアニン系顔料を用いた感光体の特性もそれに伴って変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号;1990)。このことから、フタロシアニンの結晶系の選択は感光体特性上非常に重要である。
これらのフタロシアニン系顔料の中でも、CuKαの特性X線(1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶は、特に高い感度を有しており、本発明においては画像形成の高速化が可能となるため特に有効に用いられる。更に、その中でも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、該7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有しないチタニルフタロシアニン結晶は、電荷発生効率が大きく、静電特性も良好で、地汚れが発生しにくい等、本発明の電荷発生物質として極めて有効に使用できる。これらの電荷発生物質は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
前記電荷発生物質としては、特に制限はないが、粒子サイズをより細かくすることにより、その効果がより高くなる場合があり有効である。特に、フタロシアニン系顔料においては、平均粒子サイズは0.25μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。 また、前記アゾ顔料の中では、下記一般式(5)で表されるアゾ顔料は有効に使用される。特に、アゾ顔料のCpとCpが互いに異なるものである非対称ジスアゾ顔料は、キャリア発生効率が大きく、高速化に対して有効であり、前記電荷発生物質として好ましく用いられる。
ただし、前記式(5)中、Cp、Cpはカップラー残基を表す。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていてもよい。またCp、Cpは下記一般式(5a)で表され、互いに異なる構造を持たせることによって非対称ジスアゾ顔料が得られる。
ただし、前記式(5a)中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基を表す。R204、R205、R206、R207、R208は、それぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、及び水酸基のいずれかを表し、Zは、置換もしくは無置換の炭素環式芳香族基芳香族炭素環又は置換もしくは無置換の複素環式芳香族基芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。なお、これらの電荷発生物質は、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
前記電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコ−ン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラ−ル、ポリビニルホルマ−ル、ポリビニルアセタール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾ−ル、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもポリビニルブチラールが好ましく用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、前記電荷発生層の形成に用いられる溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等の一般に用いられる有機溶剤が挙げられるが、中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒を使用することが好ましい。これらは、単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。本発明においては、メチルエチルケトンやシクロペンタノン、あるいはこれらの混合溶媒が特に好ましい。シクロペンタノンを含有することによって、電荷発生物質の分散性が向上し、高感度化、残留電位の低下、繰り返し使用による静電特性の安定化などの効果が得られる場合がある。
前記電荷発生層の塗工に用いる塗工液としては、特に制限はないが、前記電荷発生物質を必要に応じて前記バインダー樹脂とともに、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波等の公知の分散方法を用いて溶剤中に分散させて調製することができる。なお、前記バインダー樹脂の添加は、前記電荷発生物質の分散前及び分散後のいずれでもよい。
前記電荷発生層の塗工液としては、前記電荷発生物質、前記溶媒及び前記バインダー樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等の添加剤が含まれていてもよい。場合によっては、電荷発生層に後述の電荷輸送物質を添加することも可能である。
前記バインダー樹脂の添加量としては、特に制限はなく、前記電荷発生物質100質量部に対して、通常、0質量部〜500質量部であり、10質量部〜300質量部が好ましい。
前記電荷発生層としては、前記塗工液を用いて前記導電性支持体上、もしくは前記下引き層等の上に塗工し、乾燥することにより形成される。
前記塗工の方法としては、特に制限はなく、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができる。
前記電荷発生層の厚みとしては、通常0.01μm〜5μm程度であり、0.1μm〜2μmが好ましい。
また、塗工後の乾燥としては、オーブン等を用いて加熱乾燥することが挙げられる。
前記電荷発生層の乾燥温度としては、特に制限はないが、50℃〜160℃が好ましく、80℃〜140℃がより好ましい。
<電荷輸送層>
前記電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を主成分とする。電前記荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とが挙げられる。
前記電子輸送物質としては、特に制限はなく、例えば、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1、2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、シアノ基やニトロ基を有する芳香族環等、一般に電子受容性を示す物質が挙げられる。
前記正孔輸送物質としては、特に制限はなく、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ−カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ジスチリルベンゼン誘導体、エナミン誘導体、あるいは高分子電荷輸送物質等の物質が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記電荷輸送物質は、電荷を輸送する機能を担うが、前記電荷輸送層上に前記保護層が形成されると、前記電荷輸送層内に含有される前記電荷輸送物質が前記保護層に溶出し、その溶出量によっては、前記保護層における硬化阻害等を引き起こすおそれがある。そのため、前記電荷輸送物質の分子量としては、600以上900以下が好ましく、650以上800以下がより好ましい。
前記分子量が600以上の電荷輸送物質は、分子サイズが大きく、また溶媒に対する溶解性が低下し、その結果電荷輸送層上に保護層を形成しても、電荷輸送物質の保護層への過剰な溶出が抑制される傾向にあるため、好ましく用いることができる。前記電荷輸送物質の溶解性は、必ずしも分子量だけで決まるものではなく、前記電荷輸送物質の分子構造によっても異なるが、分子サイズが大きいほどバインダー樹脂から抜け出にくくなると考えられることから、前記電荷輸送物質の前記保護層への溶出を適度に維持する上で、前記分子量が600以上の電荷輸送物質が好ましい。ただし、電荷輸送層用塗布液に含まれる溶媒に完全に溶解することが重要である。
一方、前記分子量が900を超えると、溶媒に対する溶解性が低下する傾向が見られ、溶解したとしても保護層への溶出量が極度に少なく、保護層と感光層界面における電荷注入性が低下したり、保護層が剥離しやすくなったり、場合によっては結晶が析出したりすることがある。
このように、前記電荷輸送物質を選択することによっても、前記保護層への前記電荷輸送物質の溶出を適度に維持することができ、過剰な硬化阻害を防止し、かつ前記保護層への電荷注入性を高め、更に前記保護層の接着性を高める効果を同時に得ることができる。
前記電荷輸送物質の構造によっても前記保護層への溶出量が影響されるため、前記電荷輸送物質の中でも特に好ましい材料がある。本発明においては、前記電荷輸送物質の中でも、ジスチリル構造を含む化合物が有効であり、その中でも下記一般式(1)に示されるジスチリル化合物が、本発明において非常に有効である。
ただし、前記式(1)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
Aは、置換を有していてもよいアリーレン基、及び下記一般式(1a)で表される基のいずれかを表す。
ただし、前記式(1a)中、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、フェニル基のいずれかを表し、前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
B及びB’は、それぞれ、置換基を有してもよいアリーレン基、及び下記一般式(1b)で表される基のいずれかを表す。B及びB’は、同一であっても異なっていてもよい。
ただし、前記式(1b)中、Arは、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリーレン基を表し、また、Ar及びArは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリーレン基を表す。
これらの化合物の中でも、下記一般式(2)で示されるジスチリル化合物は、本発明において特に効果が高く、有効かつ有用である。
ただし、前記式(2)中、R〜R33は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
また、下記一般式(3)で示される電荷輸送物質も、本発明において有効である。
ただし、前記式(3)中、R34〜R57は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
これらの電荷輸送物質は、π共役系が分子全体に広がった特徴を有しており、これにより移動度や電荷輸送性が高く、かつ保護層への溶出量が過剰にならないため、好ましく用いることができる。
前記電荷輸送物質として用いられる化合物の具体例を以下に示す。ただし、これらは一例であって、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前記電荷輸送層の形成に用いられるバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート及びポリアリレートが好ましく用いられる。
前記電荷輸送物質の含有量としては、特に制限はなく、バインダー樹脂100質量部に対して、通常、20質量部〜300質量部であり、40質量部〜150質量部が好ましい。また、電荷輸送物質を2種以上混合したり、バインダー樹脂を2種以上混合したりして用いることも可能である。
前記電荷輸送層の塗布液として用いられる溶剤としては、特に制限はなく、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、キシレン、アセトン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン等が用いられる。これらの中でも有効に用いられる溶剤としては、テトラヒドロフランやシクロペンタノンあるいはこれらの混合溶媒が好ましく用いられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記電荷輸送層の塗工液として、必要に応じて、単独又は2種以上の可塑剤、レベリング剤、滑剤、酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。特に、前記式(1)、(2)及び(3)で示される電荷輸送物質は、皮脂の付着及び応力等により、膜にクラックが発生する場合がある。この場合に、可塑剤や酸化防止剤を添加することでクラックを防止することができ、本発明の効果を発揮させる上で有効である。
前記可塑剤としては、特に制限はないが、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の可塑剤が好ましい。
前記可塑剤の添加量としては、特に制限はないが、前記バインダー樹脂に対して0質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
前記レベリング剤としては、特に制限はないが、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、オリゴマー等が好ましい。
前記レベリング剤の添加量としては、特に制限はないが、前記バインダー樹脂に対して0質量%〜1質量%が好ましく、0.01質量%〜0.5質量%がより好ましい。これにより、電荷輸送層の塗膜欠陥を防止することができ、平滑な膜を形成することができる。
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えば、フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類、ヒンダードアミン類等の従来公知の材料を挙げることができ、繰り返し使用に対する静電特性の安定化に有効である。前記電荷輸送物質で特にイオン化ポテンシャルが小さい材料は、酸化性ガス雰囲気下において安定性が低い傾向があるが、これらの酸化防止剤を添加することによって酸化性ガス雰囲気下においても良好に用いることが可能となり、また画像ボケを抑制する効果も得られ、高画質化に対し有効である。これらの酸化防止剤の中でも、下記構造式で示される酸化防止剤は、特に有効に用いられる。
前記酸化防止剤の添加量としては、前記電荷輸送物質に対して0質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましい。前記添加量が20質量%を超えると、急激な残留電位上昇等が見られる場合がある。また、前記添加量が少なすぎると、高濃度の酸化性ガス雰囲気下において帯電低下等が見られる場合がある。
また、前記酸化防止剤としては、アルキルアミノ基を有する化合物が好ましい。前記アルキルアミノ基を有する化合物は、オゾンやNOxの高濃度雰囲気下で発生する画像流れや帯電低下等を抑制する効果を有しており、特にイオン化ポテンシャルの小さい電荷輸送物質を用いる場合には、特に有効である。前記アルキルアミノ基を有する化合物を添加することにより、酸化性ガス雰囲気下においても解像度低下や画像ボケを抑制し、帯電低下等の静電劣化をも抑制し、その結果高画質化を実現することができる。また、これらの化合物は、自ら電荷輸送構造を有しているため、残留電位に及ぼす影響が少なく、比較的多量の添加も可能である。
前記アルキルアミノ基を有する化合物としては、特に制限はないが、下記一般式(10)、(11)で示される化合物が好ましい。
ただし、前記式(10)中、Arは、置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。Ar及びArは、それぞれ、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のアラルキル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。R58及びR59は、それぞれ、置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のアラルキル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。また、Ar及びR58、Ar及びR59は、互いに結合し、窒素原子を含む置換もしくは無置換の複素環基を形成してもよい。)
ただし、前記式(11)中、Arは、置換もしくは無置換のアリーレン基を表す。R60〜R63は、それぞれ、置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のアラルキル基を表し、各々同一でも異なっていてもよい。nは、1又は2の整数を表す。
前記電荷輸送層の塗工方法としては、特に制限はなく、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の公知の方法を用いることができるが、中でも浸漬塗工法がより好ましい。
塗工した後は、オーブン等で加熱乾燥させて製造される。電荷輸送層の乾燥温度としては、電荷輸送層の塗工液に含有される溶剤の種類によって異なるが、80℃〜150℃であることが好ましく、100℃〜140℃がより好ましい。また、乾燥時間としては、10分〜60分が好ましく、15分〜30分がより好ましい。
前記電荷輸送層の乾燥条件は、感光体に含有するテトラヒドロフランとシクロペンタノンの量を決定する重要な因子であり、乾燥温度が高い方が、乾燥時間が長い方が、これらの溶媒の含有量は減少し、乾燥温度が低い方が、また乾燥時間が短い方が、これらの溶媒の含有量は増加する。
前記電荷輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、通常10μm〜50μmであり、15μm〜35μmが好ましい。更に、前記電子写真感光体は、表面に前記保護層が形成されるため、20μm〜30μmがより好ましい。
<保護層について>
前記保護層は、少なくとも、フィラーと、ポリカルボン酸化合物と、電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物とを含む硬化樹脂と、を含有する。
前記フィラーの材料としは、有機性フィラー及び無機性フィラーが挙げられる。
前記有機性フィラー材料としては、特に制限はなく、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられる。
前記無機性フィラー材料としては、特に制限はなく、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどの金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウムなどの金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。
これらのフィラーの中で、フィラー硬度及び光散乱性の観点から無機材料、特に金属酸化物を用いることが耐摩耗性及び高画質化の観点から好ましい。更に、前記金属酸化物の使用は、塗膜品質に対しても有利である。前記塗膜品質は、画像品質や耐摩耗性に大きく影響するため、高耐久化及び高画質化に対し有効となる。
更に、画像ボケが発生しにくいフィラーとして、電気絶縁性が高いフィラーの方が好ましい。導電性フィラーを感光体の最表面に含有させた場合には、表面の抵抗が低下することによって電荷の横移動が起こり、画像ボケが発生しやすくなる。特に、前記フィラーの比抵抗が10Ω・cm以上であることが解像度の点から好ましい。
このようなフィラーとしては、特に制限はなく、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、シリカなどが挙げられる。中でも、光透過性が高く、熱安定性が高い上に、耐摩耗性に優れた六方最密構造であるα−アルミナは、画像ボケの抑制や耐摩耗性の向上、塗膜品質、光透過性などの点から特に有効に使用することができる。
一方、前記導電性を示すフィラーとしては、特に制限はなく、酸化錫、酸価インジウム、酸価アンチモン、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウムなどが挙げられるが、本発明においては画像ボケが発生しやすくなることから好ましくない傾向にある。ただし、フィラーが同じ材質であっても、フィラーの比抵抗は異なる場合があり、フィラーの材質によって完全に分類されるものではなく、フィラーの比抵抗によって決めることが重要である。
また、これらのフィラーを2種以上混合して用いることも可能であり、それによって表面の抵抗を制御することも可能である。なお、フィラーの比抵抗の測定は、例えば粉体用抵抗測定装置を用いて行なうことができる。具体的には、セルの中に金属酸化物粉体を入れ電極で挟み、荷重をかけて厚さ約2mmになるように金属酸化物粉体量を調整し、その後電極間に電圧を印加し、その時に、流れる電流を測定することによって比抵抗を求めることができる。
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施すことが可能である。フィラーへの表面処理によって、フィラーの分散性を改善する効果が得られる場合がある。
前記フィラーの平均一次粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光透過性及び耐磨耗性の観点から、0.05μm以上0.7μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。
前記フィラーの平均一次粒径が、0.05μm未満であると、フィラーの凝集及び耐摩耗性の低下などが起こりやすくなり、0.7μmを超えると、フィラーの沈降性が促進されたり、画質劣化あるいは異常画像が発生したりする場合もある。
前記フィラーの添加量としては、特に制限はないが、前記フィラーが含有される層に含まれる全固形分に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましく、5質量%〜20質量%が特に好ましい。
フィラーの添加量が、0.1質量%未満であると、要求される耐摩耗性が得られず、50質量%を超えると、残留電位の増加、画像ボケの発生、解像度の低下など、画質劣化の影響が増大する傾向がある。
前記ポリカルボン酸化合物は、構造中にカルボキシル基を複数有する化合物であり、これが残留電位の低減効果とフィラーの分散性を高める効果を得る上で重要な役割を果たしている。フィラー、特に親水性の金属酸化物は、有機溶媒や樹脂等の有機材料との親和性が低いために、分散は進まず、分散を行ってもすぐに凝集してしまう。これに対し、前記ポリカルボン酸化合物において、構造中のカルボン酸部位は、フィラーとの親和性が高く、その他のポリマー部位は、有機溶剤等の有機材料との親和性が高いため、前記ポリカルボン酸化合物を介して前記フィラーと前記有機材料との親和性を高めることができる。そのため、分散によってフィラーが溶媒に濡れやすくなり、その結果、前記ポリカルボン酸化合物が前記フィラー表面の隅々にまで行き渡り、そのようにして前記フィラーに吸着された前記ポリカルボン酸化合物が、前記フィラー間の立体障害となって、前記フィラーの分散性が高まるとともに、再凝集を抑制する効果をも得ることができると考えられる。
また、前記ポリカルボン酸化合物は、自らカルボキシル基を有していることにより酸価を有している。なお、酸価とは、樹脂1g中に含まれるカルボキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数で定義される。この酸価を有するポリカルボン酸化合物が、フィラー表面の残留電位上昇の原因となる極性基に吸着し、電荷トラップサイトを埋めることによって、分散性が高まる効果のみならず、残留電位低減効果を得ることが可能となると考えられる。
一つのカルボキシル基を有するカルボン酸であっても本発明の効果は認められるが、より多くのカルボキシル基を有するポリカルボン酸化合物の方が、フィラーの分散性の向上や残留電位の低減において極めて高い効果を得ることができる。
前記ポリカルボン酸化合物の酸価としては、100mgKOH/g〜400mgKOH/gが好ましい。前記酸価が、100mgKOH/g未満であると、残留電位の低減効果が充分に得られない場合があり、400mgKOH/gを超えると、酸化性ガス雰囲気下において解像度の低下及び画像ボケを引き起こすおそれがある。
ただし、如何なるポリカルボン酸化合物を用いても、添加量を調節することによって、それらの影響を抑制することも可能であり、ポリカルボン酸化合物の酸価と添加量及びフィラーの添加量とのバランスにより決めることが重要である。
前記保護層を形成するのに用いられる分散剤の添加量としては、下記の関係式を満たすことが好ましいが、可能な限り必要最小量に設定することがより好ましい。
1<(分散剤の添加量×分散剤の酸価)/(フィラーの添加量)<40
前記関係式における(分散剤の添加量×分散剤の酸価)/(フィラーの添加量)の値が、40を超えると、解像度低下及び画像ボケの影響が現れることがあり、分散性も逆に低下する場合がある。一方、1未満であると、分散性が低下したり、残留電位の低減効果が得られなくなり、その結果、異常画像の発生を引き起こす場合がある。
これらのポリカルボン酸化合物の中でも、BYKケミー社より提供されているポリカルボン酸タイプの湿潤分散剤「BYK−P104」は、本発明の効果を得る上で特に適した材料である。これらの技術は、特許第3802787号公報に開示されている。
前記ポリカルボン酸化合物を添加しても、分散性及び残留電位に与える効果が充分に得られない場合がある。それは、分散時に用いられる溶媒、つまり分散媒による。本発明は、この分散媒としてシクロペンタノンを用いることによって、分散性及び残留電位に与える効果を最大限に高めるだけでなく、樹脂の硬化阻害や膜質の低下をも抑制することができ、シクロペンタノンとポリカルボン酸化合物との相乗効果が得られることを見出したことに基づくものである。本発明は、前記シクロペンタノンが含有されていることで効果が得られるが、特に前記フィラーの分散時に前記ポリカルボン酸化合物と前記シクロペンタノンとが共存することによって、非常に大きな効果を得ることができる。
前記保護層に含有されるバインダー樹脂(硬化性樹脂)としては、少なくとも電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物とが硬化された樹脂が用いられる。
前記保護層は、耐摩耗性を高めると同時に、電荷を輸送させる必要があるため、電荷輸送機能を有しない重合性化合物と電荷輸送機能を有する重合性化合物とを硬化させて用いることによって達成できる。ここで、重合とは、高分子化合物の生成反応を大きく連鎖重合と逐次重合に分けた重合の前者の重合反応形態を示し、その形態が主にラジカルあるいはイオンなどの中間体を経由して反応が進行する不飽和重合、開環重合そして異性化重合などのことをいう。また、重合性化合物とは、上記反応形態が可能な官能基を有する化合物を意味する。また、硬化とは一般に上記の官能基を有するモノマーやオリゴマーが、熱、可視光あるいは紫外線などの光、電子線やγ線などの放射線などのエネルギーを与えることによって分子間で結合し(例えば、共有結合)、三次元網目構造を形成する反応である。
前記硬化性樹脂としては、特に制限はなく、熱によって重合する熱硬化性樹脂、紫外線又は可視光線などの光によって重合する光硬化性樹脂、電子線によって重合する電子線硬化性樹脂などが挙げられ、必要に応じて硬化剤や触媒、重合開始剤などと組み合わせて用いられる。
前記硬化性樹脂を硬化させるには、反応性化合物(例えば、モノマーやオリゴマーなど)中に重合反応を起こす官能基を有していることが必要である。それらの官能基としては、重合反応を起こす官能基であれば、特に制限はなく、公知の不飽和重合性官能基及び開環重合性官能基が挙げられる。前記不飽和重合性官能基とは、ラジカルやイオンなどによって不飽和基が重合する反応であり、例えば、C=C、C≡C、C=O、C=N、C≡Nなどの官能基が挙げられる。前記開環重合性官能基とは、炭素環やオクソ環や窒素ヘテロ環などのひずみを有する不安定な環状構造が、開環すると同時に重合を繰り返し、鎖状高分子を生成する反応であり、イオンが活性種として作用するものが大半である。
これらの一例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などの炭素−炭素二重結合を有する基、シラノール基、環状エーテル基などの開環重合を起こす基、あるいは2種以上の分子の反応によるものが挙げられる。
また、硬化反応において、反応性モノマーの1分子に有する官能基数としては、より多い方が3次元網目構造はより強固になり、3官能以上で特に有効である。これにより、硬化密度が高まり、高硬度で高弾性、かつ均一で平滑性も向上し、感光体の高耐久化や高画質化に有効となる。
前記硬化性樹脂としては、電荷輸送構造を有しない重合性化合物と電荷輸送性構造を有する重合性化合物とが硬化する樹脂であれば特に制限はなく、従来公知の材料を使用することができ、材料及び手段によらず高い効果を得ることができる。
前記硬化性樹脂の一例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられ、特にウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル/メタクリル樹脂、シロキサン、エポキシ樹脂などが好適に用いられる。これらの中でもアクリル/メタクリル樹脂は、静電特性が良好で本発明の効果が得やすく、良好に使用できる。なお、これらの硬化性樹脂は3次元網目構造が形成され、有機溶剤に不溶な状態であることが特徴である。従って、本発明において硬化性樹脂が硬化した状態とは、例えば、アルコール系有機溶剤を付着させても膜が溶解しない状態であれば硬化したものと判断できる。
前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物と電荷輸送性構造を有する重合性化合物とを硬化反応させ、3次元的に発達した網目構造を形成する場合、硬化剤や触媒、重合開始剤などを予め混合することで、硬化度を更に高めることが可能である。これにより、保護層の耐摩耗性が一段と向上し、更に未反応官能基も残存しにくくなるため、耐摩耗性の向上や静電特性劣化の抑制に有効である。また、反応が均一であるためにクラックや歪みが生じにくくなり、クリーニング性が改善できるなど、感光体の高耐久化、高画質化に対して高い効果を得ることができる。
前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、電荷輸送性を示す構造が含まれ、かつ硬化するための官能基を有するものであればよく、従来公知の材料を使用することができる。ここで前記電荷輸送性構造とは電荷輸送物質に含まれる構造であり、それによって電荷輸送性を発現する構造をいう。また、電荷輸送性構造としては、主にホールを輸送する構造と電子を輸送する構造に大別されるが、本発明においてはそのどちらも含まれる。
前記電荷輸送性構造、即ちホール輸送性構造あるいは電子輸送性構造が化合物中に一つであっても、あるいは複数であってもよく、複数の方が電荷輸送性に優れるためより好ましい。また、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物の分子中に、前記ホール輸送性構造と前記電子輸送性構造とをそれぞれ含むバイポーラ性を有するものであってもよい。
前記電荷輸送性構造のうち、前記ホール輸送性構造の一例としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、スチルベン、α−フェニルスチルベン、ベンジジン、ジアリールメタン、トリアリールメタン、9−スチリルアントラセン、ピラゾリン、ジビニルベンゼン、ヒドラゾン、インデン、ブタジェン、ピレン、ビススチルベン、エナミンなどの一般に電子供与性を示す構造が挙げられる。
前記電子輸送性構造の一例としては、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、縮合多環キノン、ジフェノキノン、ベンゾキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、シアノ基やニトロ基を有する芳香族環など、一般に電子受容性を示す構造が挙げられる。これらの中でも、特にトリアリールアミン構造が電荷輸送性が高く有効である。
次に、アクリル/メタクリル樹脂を例に挙げて詳細に説明する。
前記電荷輸送性を有しない重合性化合物とは、例えば上記のトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基及びニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送性構造を有しておらず、且つ重合性官能基を有する化合物である。この重合性官能基は、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であれば何れでもよい。これら重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基などが挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基
1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の化学式(1)で表される官能基が挙げられる。
ただし、前記化学式(1)中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CONR228基(R228は、水素、メチル基、エチル基などのアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基などのアラルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基を表す)、または−S−基を表す。
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基などが挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基
1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の化学式(2)で表される官能基が挙げられる。
ただし、前記化学式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基、−COOR229基{R229は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基などのアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基などのアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基などのアリール基、または−CONR230231(R230及びR231は、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基などのアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基などのアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基などのアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい)、また、Xは上記化学式(1)のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。}を表す。
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基などが挙げられる。
なお、これらX、X、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらの重合性官能基の中では、重合性官能基として、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物としては、多官能の方が好ましく、3つ以上の重合性官能基を有することがより好ましい。3官能以上の電荷輸送性構造を有しない重合性化合物(重合性モノマー)を硬化させた場合、3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な層が得られ、かつ均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐キズ性が達成される。
しかし、硬化条件や用いる材料によっては、硬化反応において瞬時に多数の結合を形成させるため、体積収縮による内部応力が発生し、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる場合がある。その場合には1官能あるいは2官能の重合性モノマーを用いたり、あるいはそれらを混合して用いたりすることで改善できる場合がある。
以下、耐摩耗性の向上に有効な前記3官能以上の電荷輸送性構造を有しない重合性化合物について説明する。
該重合性化合物に該当する3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、前記重合性官能基を3個以上有する単量体中の重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的な重合性化合物としては、以下のものが例示される。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
即ち、前記重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
また、前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物としては、前記保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該化合物中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)を250以下とするのが好ましい。この割合が250より大きい場合、前記保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、前記例示したモノマー中、EO、PO、カプロラクトンなどの変性基を有するモノマーについては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用するのが困難になることがある。
前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物の含有量としては、前記保護層全量に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、前記保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されず、80質量%を超えると、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物の含有量が相対的に低下し、残留電位が著しく上昇するおそれがある。使用されるプロセスによって要求される静電特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%〜70質量%の範囲が最も好ましい。
次に、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物について説明する。
前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物とは、例えば前述のトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどのホール輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送性構造のいずれか、もしくは両方を有しており、かつ重合性官能基を有する化合物である。
前記重合性官能基としては、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物について示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物、及び前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物のいずれかが、前記アクリロイルオキシ基及び前記メタクリロイルオキシ基の少なくともいずれかを有することが好ましい。
前記保護層に用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、官能基がいくつのものでも使用可能であるが、静電特性の安定性及び膜質の観点から、1つの重合性官能基を有することが好ましい。2官能以上の場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化層構造の歪みが大きくなり、層の内部応力が高まる原因となる。また、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が発生しやすくなるおそれがある。
前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物の電荷輸送性構造としては、電荷輸送機能を付与できるものであれば如何なる材料でも使用可能であるが、中でもトリアリールアミン構造が高い効果を有し有用である。例えば、下記一般式(12)又は(13)の構造で示される化合物を用いた場合、感度や残留電位等の静電特性が改善され良好に使用できる。
ただし、前記式(12)及び(13)中、R232は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、及び−COOR241(R241は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR242243(R242及びR243は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、及び置換基を有してもよいアリール基のいずれかを示し、各々同一であっても異なっていてもよい)のいずれかを表し、Ar141、Ar142は、それぞれ置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、各々同一であっても異なってもよい。Ar143、Ar144は、それぞれ、置換もしくは無置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、及びビニレン基のいずれかを表す。Zは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、及びアルキレンオキシカルボニル2価基のいずれかを表す。m、nは、それぞれ、0〜3の整数を表す。
以下に、前記一般式(12)、(13)で表されるものの具体例を示す。
前記一般式(12)、(13)において、R232の置換基中、前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R232の置換基のうち、特に好ましいものは、水素原子、メチル基である。置換もしくは無置換のAr143、Ar144は、アリール基であり、前記アリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基、複素環基が挙げられる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、環を形成する炭素数が18個以下のものが好ましく、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が好ましい。
前記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar143、Ar144で表されるアリール基は、例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、更に好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR233)であり、R233は(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基又はアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記の一般式(14)で表される基。
ただし、前記式(14)中、R233及びR234は、それぞれ、水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表す。前記アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R233及びR234は共同で環を形成してもよい。
233及びR234の具体例としては、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N、N−ジフェニルアミノ基、N、N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar141、Ar142で表されるアリーレン基としては、前記Ar143、Ar144で表されるアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
前記Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
前記置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、より好ましくはC1〜C4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には更にフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3、3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
前記置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表し、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
前記ビニレン基は、下記一般式(15)で表される。
ただし、前記式(15)中、R235は、水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar143、Ar144で表されるアリール基と同じ)、aは、1又は2、bは、1〜3の整数を表す。
前記一般式(12)、(13)において、Zは、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、及びアルキレンオキシカルボニル2価基のいずれかを表す。前記置換もしくは無置換のアルキレン基としては、前記Xにおけるアルキレン基と同様のものが挙げられる。前記置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xにおけるアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。前記アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、前記電荷輸送構造を有する重合性化合物として、下記一般式(16)で表される化合物がより好ましい。
ただし、前記式(16)中、o、p、qは、それぞれ、0又は1の整数、Raは、水素原子、及びメチル基のいずれかを表し、Rb、Rcは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基を表し、各々同一でも異なってもよい。s、tは、0〜3の整数を表す。
Zaは、単結合、メチレン基、エチレン基、及び下記化学式(17)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(16)で表される化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
前記一般式(12)、(13)、(16)、特に(16)の1官能性の電荷輸送構造を有する重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上の重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
前記1官能の電荷輸送性構造を有する重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物としては、前記保護層の電荷輸送性能を付与するために重要であり、この成分の含有量としては、前記保護層に対し20質量%〜80質量%が好ましく、30質量%〜70質量%がより好ましい。前記含有量が、20質量%未満であると、前記保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの静電特性の劣化が見られる場合があり、80質量%を超えると前記電荷輸送構造を有しない重合性化合物の含有量が相対的に低下し、架橋結合密度の低下を招き、高い耐摩耗性が発揮されない場合がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30質量%〜70質量%の範囲が最も好ましい。
これらの電荷輸送性構造を有する重合性化合物は、硬化していることにより単離することはできないが、単離できるものではなくても、FT−IR等の方法を用いれば、電荷輸送性構造として定量化できるため、前記電荷輸送物質の濃度比を得ることができる。
以上に説明したように、3つ以上の重合性官能基を有する電荷輸送性構造を有しない重合性化合物と、1つの重合性官能基を有する電荷輸送性構造を有する重合性化合物とを硬化させるものが、特に有効であるが、1官能及び2官能の重合性化合物を用いることも可能であり、材料によっては非常に有効な場合がある。これらの重合性化合物としては、公知のものが利用できる。
前記1官能の重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
前記2官能の重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報に記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
また、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるために保護層塗工液中に重合開始剤を含有させてもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
更に、前記保護層としては、必要に応じて、各種可塑剤(応力緩和や接着性向上を目的として添加される)、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの添加剤を含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。また、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤としては、フェノール系化合物類、ヒンダードフェノール系化合物類、ヒンダードアミン系化合物類、パラフェニレンジアミン類、ハイドロキノン類、有機硫黄化合物類、有機リン化合物類、ベンゾフェノン類、サルシレート類、ベンゾトリアゾール類、クエンチャー(金属錯塩系)等、従来公知の酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤がすべて含まれる。また、前記電荷輸送層に含有されるアルキルアミノ基を有する化合物を前記保護層に添加することも可能であり、非常に有効な場合がある。
前記保護層は、少なくとも、前記フィラー、前記ポリカルボン酸化合物、前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物、及び前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物を含有する塗工液を、前記電荷輸送層上に塗布、その後、硬化、乾燥することにより形成される。かかる塗工液は、重合性化合物が液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて、溶媒により希釈して塗布される。
用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン及びシクロペンタノンが好ましい。また、それ以外にメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系等を含有してもよい。
前記テトラヒドロフラン及びシクロペンタノンが、前記電子写真感光体の全層中に含有されていれば有効であるが、特にシクロペンタノンは、前述の通り、前記保護層における前記フィラーの分散媒として使用し、含有させることが最も有効である。具体的には、前記フィラーと前記ポリカルボン酸化合物と前記シクロペンタノンとを含む状態で分散を行ない、それによって得られたミルベースを、少なくとも前記電荷輸送性構造を有する重合性化合物と前記電荷輸送性構造を有しない重合性化合物と前記テトラヒドロフランとを含有する溶液と混合し、攪拌することによって、前記保護層を形成する塗工液を得ることができる。もちろん、それ以外に上記の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤、アルキルアミノ基を有する化合物、光安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤を、電荷輸送性構造を有する重合性化合物や電荷輸送性構造を有しない重合性化合物を含む溶液に含有させておくことも可能であり有効である。このように、前記シクロペンタノンは、前記フィラーの分散媒として用いると、非常に少量でも分散性の向上に対する高い効果を得ることができ有効である。
前記保護層を形成する塗工液における固形分濃度としては、特に制限はないが、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましい。前記固形分濃度が、5質量%未満であると、残留溶媒の増加及び電荷輸送層内の電荷輸送物質の保護層への溶出量の増加によって、硬化阻害を引き起こすおそれがある。一方、前記固形分濃度が40質量%を超えると、前記保護層の膜質が低下したり、塗膜欠陥が発生したりする場合がある。
前記保護層の塗工方法としては、特に制限はなく、浸漬塗工法、スプレーコート、ビードコート、リングコート法など従来公知の方法を用いて行なうことができるが、前記電荷輸送層内の電荷輸送物質の溶出量を低減させるには、前記塗工層形成時の溶媒含有量、及び溶媒との接触時間を少なくする方が好ましく、その点で前記スプレーコート、塗工液量を規制した前記リングコート法が好ましい。
前記保護層用塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与えて硬化させ、前記保護層を形成する。このとき用いられる外部エネルギーとしては、熱、光、放射線がある。
前記熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度としては、100℃以上170℃以下が好ましく、100℃未満では、反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しない。170℃より高温では硬化反応が不均一に進行し保護層中に大きな歪み、及び多数の未反応残基、反応停止末端が発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
前記光のエネルギーとしては、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、前記重合性含有物、前記光重合開始剤の吸収波長に合わせて可視光光源の選択も可能である。照射光量は、50mW/cm以上1,000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1,000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、硬化型保護層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
前記電子写真感光体は、前記保護層が硬化されることにより、高い効果を得ることができる。前記保護層が硬化されているかどうかについては、有機溶剤に対し不溶性を示すかどうかを判別すればよい。
この有機溶剤に対する溶解性を試験する方法としては、前記電子写真感光体の保護層上に高分子物質に対する溶解性の高い有機溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を1滴滴下し、自然乾燥後に感光体表面形状の変化を実体顕微鏡で観察することで判定できる。溶解性の感光体は、液滴の中心部分が凹状になり、周囲が逆に盛り上がる現象、電荷輸送物質が析出し結晶化による白濁やくもり生ずる現象、表面が膨潤しその後収縮することで皺が発生する現象などの変化がみられる。それに対し、不溶性の感光体は、前記諸現象がみられず、滴下前と全く変化が現れない。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はないが、1μm以上5μm以下が好ましく、2μm以上4μm以下が好ましい。必要以上に厚い場合、例えば、5μmを超える場合には、前述のように残留電位や露光部電位上昇、感度低下、クラックあるいは膜剥がれが発生する場合がある。前記電子写真感光体における前記保護層の耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、また、前記保護層の硬化阻害の影響が少ないため、前記保護層の厚みをより薄くすることが可能である。ただし、前記保護層が1μm未満であると、膜質が低下したり、架橋反応が不均一になったり、イオン化ポテンシャルが小さい電荷輸送物質を前記電荷輸送層に用いた場合には、画像ボケが発生するおそれがあるため、1μm以上にすることが好ましい。
また、前記保護層の表面粗さは、クリーニング性やフィルミング等の異物付着性に大きく影響する。前記保護層の表面において、JIS B0601(1994)に準拠する十点平均粗さRzを0.3μm〜1.0μmとすること、もしくは、前記表面に存在する凹凸の平均間隔Smを0.3μm〜1.0mmとすることで、クリーニング性や異物付着が大幅に改善される。
なお、前記十点平均粗さRzは、粗さ曲線で最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と、最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均の和として定義され、凹凸の平均間隔Smは、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さの平均として定義される。
前記電子写真感光体は、前記RzとSmとが、ともに前記数値範囲に設定されることで、より大きな効果を得ることができる。これは、前記電子写真感光体の垂直方向におけるRzを維持しつつ、水平方向のSmを大きくしたことにより、大きなうねり形状が形成され、前記フィラー添加による微視的な凹凸形状と、うねりによる巨視的な凹凸形状の共存により、クリーニングブレードの挙動が安定化されることが要因であると考えられる。
前記Rzが、1.0μmを超えると、凹部のクリーニング性が低下し、異物が残存しやすくなるおそれがあり、0.3μm未満であると、電子写真感光体の表面(保護層表面)が平滑に近くなり、クリーニングブレードとの接触面積が増加し、クリーニングブレードの挙動が不安定となり、クリーニング不良を引き起こすおそれがある。
また、前記Smが、1.0μmを超えると、膜厚ムラによる電位差が画像上目視で認識され、画質低下を引き起こすおそれがあり、0.3μm未満であると、巨視的な凹凸形状が形成されなくなり、クリーニングブレードの挙動が不安定になったり、クリーニングブレードの欠けなどが発生しやすくなるなど、ブレードの耐久性が低下し、その結果、早期にクリーニング不良を引き起こすおそれがある。
前記Rz及びSmの測定は、JIS B0601(1994)に準じ、(株)東京精密製の表面粗さ計Surfcom1400Dを用いて測定を行うことができる。
測定手順の一例としては、感光体ドラムの長手方向(軸方向)に評価長さを、例えば5.0mmに設定し、感光体ドラムを周方向にて、約90°間隔としたときの4点の位置で、前記評価長さにおける測定を行う。
この際、前記感光体ドラム周方向4点の位置での測定は、(1)感光体ドラムの長手方向の中央部位置と、(2)該中央部位置と感光体ドラムの長手方向一端部との間の中間部位置と、(3)該中央部位置と感光体ドラムの長手方向他端部との間の中間部位置と、の3箇所で行い、全12点の平均値により前記Rz及びSm求める。ただし、これは一例であって、これと同等の測定が可能なものであれば如何なる装置並びに条件を用いても使用することができる。
前記保護層の表面粗さの制御方法としては、特に制限はなく、塗工条件によって制御する方法、塗工液に添加物を添加することにより制御する方法、塗工液の固形分量により制御する方法、塗工後に機械的に粗さを形成する方法等、如何なる方法を用いてもよい。ただし、塗工後に粗さを形成する方法は、コスト高である上、前記表面粗さを形成するのは比較的難しい。そのため塗工条件、及び添加剤、液固形分等で制御する方法が好ましく、塗工条件で制御する方法がより好ましい。
前記塗工条件で制御する方法としては、塗工方法にスプレー塗工法を用いることが好ましく、この条件によって表面粗さを容易に制御することが可能である。例えば、スプレー塗工時の霧化エア圧や液の吐出量、スプレー距離、塗工回数等の条件によって表面粗さを自由に制御することが可能である。また、添加物による制御方法としては、例えば塗工液中のレベリング剤の添加量や塗工液に相溶しにくい溶媒等の添加、あるいは液の固形分等によっても効果的に表面粗さを制御することが可能である。その他、塗工直後の指触乾燥時間を制御したり、塗工直後に溶媒やエアを吹き付ける方法も可能であり、有効である。
次に、硬化性樹脂としてウレタン樹脂を用いた場合について簡単に説明する。前記ウレタン樹脂としては、従来公知の材料を使用することが可能である。前記ウレタン樹脂もまた耐摩耗性に優れ、前記保護層として有効に使用できる。
前記ウレタン樹脂は、高い耐摩耗性が得られ、かつ静電特性も良好であり、膜質も優れており、感光体の高耐久化と高画質化に対し有効である。
前記ウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素成分であるポリオールと、硬化剤である多価イソシアネートとを組み合わせることによって形成できる。
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、ポリアルキレノオキシド等のポリエーテルポリオール、末端に水酸基を有する脂肪族ポリエステル等のポリエステルポリオール、ヒドロキシメタアクリレート共重合体等のアクリル系ポリマーポリオール、エポキシ樹脂等のエポキシポリオール、フッ素含有ポリオール、ポリカーボネート骨格を有するポリカーボネートジオール等公知のものが挙げられる。
前記ポリオールとしては、2官能以上、好ましくは3官能以上であることにより、硬化密度が向上し、3次元網目構造がより強固になり、その結果硬化性が高まり、膜強度が大きくなるため好ましい。
前記ポリオールの分子量としては、100〜150のものが広く用いられている。しかし、硬化条件によっては体積収縮が大きくなり、膜質が低下するおそれがある。この場合、硬化時の体積収縮を緩和するために、分子量が1,000以上のポリオールを別途含有させて硬化させる方法が開示されており(特許第3818585号公報等)、本発明においても好適に用いることができる。
前記ウレタン樹脂とともに用いられる硬化剤の多価イソシアネートとしては、一般的なイソシアネート材料が挙げられる。しかし、経時により膜が変色しないものが好ましい。
前記多価イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等のイソシアネート化合物、HDI−トリメチロールプロパンアダクト体、HDI−イソシアネート体、HDI−ビウレット体、XDI−トリメチロールプロパンアダクト体、IPDI−トリメチロールプロパンアダクト体、IPDI−イソシアヌレート体等のポリイソシアネート等公知のものが例示できる。
アミド結合を有するイソシアネートとしては、HDI−トリメチロールプロパンアダクト体、IPDI−トリメチロールプロパンアダクト体、HDI−ビウレット体等公知のものが例示でき、単独もしくは混合して使用することができる。
前記イソシアネートのNCO基数と前記ポリオールのOH基数との比(NCO/OH比)としては、1.0〜1.5が好ましい。
前記電荷輸送性構造を有する反応性化合物としては、同一構造中に前述した電荷輸送性構造を有するポリオールや、ポリイソシアネート等と硬化反応するための他の官能基(例えばアミノ基、−SH基等の活性水素基含有基、又は空気中の水分により加水分解してSi−OH基を生じるポリハロゲン置換シロキサン、ポリアルコキシ基置換シロキサン等)を複数有するものであれば従来公知の材料を使用できる。前記電荷輸送性構造としては、前述のとおりホール輸送性あるいは電子輸送性のいずれか、もしくは両方を含んでもよいが、中でもトリアリールアミン構造を有する化合物が特に有効である。また、硬化反応するための官能基としては水酸基が一般的である。以下にトリフェニルアミン構造を有する反応性化合物の一例を示す。
添加するフィラー、各種添加剤等及び保護層の形成方法等については、アクリル/メタクリル樹脂で記載した材料や方法を用いることができる。
以上のように、前記保護層に硬化性樹脂を用いる例は、多数挙げられるが、これらに限らず、本発明では従来公知の硬化性樹脂をいずれも良好に使用することが可能であり有効である。
<下引き層>
前記電子写真感光体としては、必要に応じて、善意導電性支持体と前記電荷発生層との間に前記下引き層を設けることができる。
前記下引き層としては、一般的に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂は、その上に電荷発生層や電荷輸送層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であるものを使用することが好ましい。
このような樹脂としては、特に制限はなく、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ポリアミド(共重合ナイロン)、メトキシメチル化ポリアミド(ナイロン)等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、イソシアネート、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
また、前記下引き層としては、モアレ防止、残留電位の低減等のために、金属酸化物を含有させることが好ましい。ここでモアレとは、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行なう際に光干渉によって、モアレと呼ばれる干渉縞が画像に形成される画像欠陥の一種である。基本的に、入射されたレーザー光をこの下引き層によって光散乱させることによりモアレ発生を防止するため、屈折率の大きな材料を含有させる必要がある。モアレを防止する上では、バインダー樹脂に無機顔料を分散させた構成が最も有効である。
前記無機顔料としては、白色の顔料が有効に使用され、金属酸化物、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化インジウム等挙げられる。
前記下引き層としては、前記電子写真感光体の表面に帯電される電荷と同極性の電荷を、電荷発生層から導電性支持体側へ移動できる機能を有することが残留電位の低減上好ましく、前記無機顔料はその役割をも果たしている。例えば、負帯電型の電子写真感光体の場合、前記下引き層は、電子伝導性を有することによって残留電位を低減できる。
これらの無機顔料としては、前述の金属酸化物が有効に用いられるが、抵抗の低い無機顔料を用いたり、バインダー樹脂に対する無機顔料の添加比率を増加させたりすることによって残留電位を低減させる効果が高くなる反面、地汚れ抑制効果が低下するおそれもある。従って、前記電子写真感光体における前記下引き層の層構成及び厚みによって、前記無機顔料を使い分けたり、添加量を調整したりすることによって、地汚れ抑制と残留電位低減の両立を図ることが必要である。モアレ防止、残留電位上昇及び地汚れの抑制を考慮すると、前記金属酸化物の中でも、とりわけ酸化チタンが好ましい。
前記下引き層としては、前記バインダー樹脂、前記無機顔料(金属酸化物)を主成分とし、溶剤を含めた状態で湿式分散を行なって塗工分散液を得ることができる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジオキサン等、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。特に、シクロペンタノンを一部含有させることは、前記無機顔料の分散性を高める効果が得られ、地汚れ耐性や露光部電位の安定性に有効となる場合がある。
前記無機顔料としては、溶剤及びバインダー樹脂とともに、従来公知の方法、例えばボールミル、サンドミル、アトライラー等によって塗工液中に分散することができる。
前記バインダー樹脂の添加は、分散前に行っても分散後に行ってもよい。また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、添加剤、硬化促進剤等や無機顔料の分散性を高める目的で分散剤を加えることも可能である。これらの塗工液を用い、従来公知の方法、例えば浸漬塗工法、スプレーコート、リングコート、ビートコート、ノズルコート法などを用いて導電性基体上に形成される。塗布後は、乾燥や加熱、必要に応じて光照射等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させることにより作製できる。
前記下引き層の厚みとしては、特に制限はなく、含有させる無機顔料の種類によって異なるが、0μm〜10μmが好ましく、2μm〜7μmがより好ましい。
また、前記導電性支持体と、前記下引き層の間、もしくは前記下引き層と前記電荷発生層との間に更に中間層を設けることも可能である。
前記中間層は、導電性支持体からのホールの注入を抑制するために加えられるもので、主目的は地汚れの防止にある。
前記中間層としては、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ポリアミド(可溶性ナイロン)、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
前記中間層の形成方法としては、前記下引き層の形成方法と同様の方法、更に公知の塗布法が採用される。なお、前記中間層の厚さとしては、0.05μm〜2μmが好ましい。
前記中間層と前記下引き層の2層構成とすることにより、地汚れ抑制効果が顕著に高めることが可能となる。
ここで、前記電子写真感光体の構成を図面を用いて説明する。
図1は、導電性支持体(1011)上に、電荷発生層(1015)、電荷輸送層(1016)及び保護層(1013)を、この順で積層した電子写真感光体である。また、図2のように電荷発生層(1035)と導電性支持体(1031)との間に下引き層(1034)を設けてもよい。なお、(1033)は保護層、(1036)は電荷輸送層である。また、下引き層は、2層構成であってもよい。なお、これらの層構成は代表的なものを示したものであって、本発明はこれらの層構成に限定されるものではない。
<テトラヒドロフラン及びシクロペンタノンの含有量>
前記電子写真感光体は、前記導電性支持体上に積層された前記諸層の少なくともいずれかが前記テトラヒドロフラン及び前記シクロペンタノンを含み、前記導電性支持体上に積層された全層の固形分量に対する含有量が、前記テトラヒドロフランについて50ppm以上10,000ppm以下であり、前記シクロペンタノンについて1ppm以上100ppm以下であることを特徴とする。
前記テトラヒドロフラン及び前記シクロペンタノンの含有量が、これよりも多いと、残留電位及び露光部電位の上昇を引き起こし、前記電子写真感光体の保存経時で静電特性や電位特性が変動し、硬化阻害によって充分な耐久性が得られず、画質安定性及び耐久性に大きく影響する。一方、これよりも少ない場合には、実質的に前記シクロペンタノンを含有させる効果が得られないことになり、前記フィラーの分散不良に伴う様々な問題が発生し、前記保護層の接着性が低下して剥離が発生し、前記保護層の膜質が低下してクリーニング不良を誘発し、耐摩耗性及び耐傷性が低下し、耐久性が大幅に低減するなどの影響が見られる。
また、このような観点から、前記テトラヒドロフランの前記含有量としては、200ppm以上3,000ppm以下が好ましく、前記シクロペンタノンの前記含有量としては、2ppm以上30ppm以下が好ましい。
なお、前記導電性支持体上に積層された全層の固形分量とは、前記導電性支持体上に積層された全層の乾燥後の質量を示す。
前記導電性支持体上に積層された全層の固形分量に対し、前記シクロペンタノンを1ppm以上100ppm以下の含有量で含有させるには、塗工液に含まれる前記シクロペンタノンの添加量を調整することが挙げられるが、それだけで決まるものではない。
前記保護層を塗工した後の硬化条件や各層の乾燥条件によっても変わるし、前記シクロペンタノンを分散媒に用いた場合と単に塗工液に添加した場合とでも変わるし、あるいは前記テトラヒドロフランと混合した場合と他の溶媒と混合した場合とでも感光体に含有される前記シクロペンタノンの含有量は、異なる場合がある。そのため、前記電子写真感光体の製造方法及び条件を考慮して、前記シクロペンタノンの添加量を決める必要がある。
また、前記シクロペンタノンを前記保護層のほかに、一部を前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層あるいは前記中間層に含有させることも有効である。特に、顔料を分散している前記電荷発生層及び前記下引き層に対しては、顔料の分散性が高まったり、分散安定性が改善される等の効果が得られる。
ただし、前記電子写真感光体の残留電位及び接着性等の課題は、前記保護層の影響が最も大きく、前記シクロペンタノンは、前記保護層に最も多く含有させることが好ましい。一方、前記テトラヒドロフランについても同様に、一部を前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層あるいは前記中間層に含有させることも有効であり、特に前記電荷輸送層及び前記保護層に含有させることが好ましい。
前記テトラヒドロフラン及び前記シクロペンタノンの前記含有量については、種々の方法により測定することが可能であるが、本発明においては熱抽出ガスクロマトグラフ質量分析法を用いる。
サンプルは、前記電子写真感光体の前記導電性支持体から全層を剥離する方法m導電性支持体ごと切り出す方法など、如何なる方法でも測定できるが、より正確な溶媒量を測定するために、前記導電性支持体ごと切り出すようにする。測定に用いる装置としては、島津製作所社製のQP−2010を用いた。熱抽出条件としては、280℃15分とし、加熱装置は、フロンティア・ラボ社製Py−2020Dを用いた。カラムには、ULTRA ALLOY−5(L=30m、ID=0.25mm、Film=0.25μm)を用い、カラム流量は、1.0ml/minとした。溶媒量の定量については、標準試料として各溶媒について、同様に測定し、作成した検量線を用いて行った。
<各層に対する添加剤>
前記電子写真感光体においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位上昇、帯電低下等を防止する目的で、前記保護層、前記電荷輸送層、前記電荷発生層、前記下引き層、及び前記中間層の少なくともいずれか1層に対して、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤及びレベリング剤等を添加することが好ましい。これらの化合物の代表的な材料を以下に示す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類等。
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等。
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等。
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート等。
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等。
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル等。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル等。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチル等。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル等。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリン等。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル等。
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル等。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート等。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチル等。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステル等。
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミド等。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシル等。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチル等。
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン等。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル等。
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等。
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等。
(g)天然ワックス
カルナウバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウ等。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物等。
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノン等。
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエート等。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール等。
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレート等。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェート等。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン,4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等。
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、少なくとも、本発明の前記電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、該現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを有し、必要に応じて、前記記録媒体に転写されたトナー像を加熱及び加圧によって前記転写媒体上に固定する定着手段、前記転写後、前記電子写真感光体上に残存する前記トナーを除去するクリーニング手段、前記転写後、前記電子写真感光体上に残存する前記静電潜像を除去する除電手段等を有してなる。
前記画像形成装置を図面を用いて詳細に説明する。
図3に本発明の画像形成装置を説明するための概略図を示す。これは一つの代表例であって、これに限定されるものではなく、例えば、後述する変形例も本発明にすべて含まれる。感光体(21)は、ドラム形状を示しているが、これに限られるものではなく、例えばシート状やエンドレスベルト状のものであってもよい。なお、(22)は除電ランプ、(23)は帯電チャージャー、(24)は画像露光部、(25)は現像ユニット、(26)は転写前チャージャー、(27)はレジストローラ、(28)は転写紙、(29)は転写チャージャー、(30)は分離チャージャー、(31)は分離爪、(32)はクリーニング前チャージャー、(33)はファーブラシ、(34)はブレードである。
前記帯電手段としては、例えば、コロトロン、スコロトロン等に代表されるワイヤーに高電圧を印加するコロナ放電方式、ワイヤーの代わりに絶縁板を挟む面状の電極に高周波高圧を印加する固体放電方式、ローラ形状の部材に高電圧を印加し、電子写真感光体に接触させた状態で帯電を行なう接触型ローラ帯電方式、ローラ形状を有し画像形成領域において100μm以下の空隙を介して帯電させる近接配置型ローラ帯電方式、その他ブラシ、フィルム、ブレード等を用いて電子写真感光体に接触した状態で帯電させる接触帯電方式等、従来公知の帯電器を使用することが可能である。
前記コロナ帯電方式は、直径が50〜100μmのワイヤーに高電圧を印加し、その周辺の空気をイオン化させ、それを電子写真感光体に移動させることによって帯電させるものである。コロナ放電方式は、主にコロトロン及びスコロトロンに大別される。スコロトロンは、コロトロンにスクリーン電極(グリッド)を配置した構成となっており、スクリーン電極は1〜3mmピッチで、電子写真感光体からは1〜2mm離れた位置に張られる。これにより、帯電時間が長くなってもグリッド電極に印加された電圧によって帯電電位が規制され、表面電位が飽和する。そのため、帯電電位はグリッド電圧により制御でき、均一帯電が可能となる。高速化に対応させるためには、ワイヤーを2本張ったダブルワイヤー型が特に有効である。また、ダブルワイヤー型の中でも、2本のワイヤー間を仕切ったタイプも有効に用いられる。ただし、ワイヤー同士あるいはワイヤーとケーシング間の放電を防止するために、1kVあたり1.5mm以上の空隙を設ける必要がある。
ローラ形状の帯電方式は、導電性ローラに電圧を印加して、電子写真感光体に接触させて電荷を与える方法である。コロナ帯電方式に比べて印加電圧が低いことと、装置の小型化に有利であり、オゾンの発生量が非常に少ない利点もある。ただし、非常に高速で使用すると、ローラの汚染やローラの寿命により帯電性が低下してくるおそれがある。また、ローラ形状の帯電方式でも画像形成領域において、電子写真感光体と非接触とした近接配置方式も有効に用いられる。これにより、繰り返し使用することによって帯電ローラが現像材や紙粉等によって汚染され、帯電低下や異常画像の発生、更には摩耗等の発生を抑制することが可能となる。電子写真感光体と帯電ローラを画像形成領域において近接配置させる方法として、帯電ローラあるいは電子写真感光体の非画像形成領域にギャップを設ける方法が挙げられる。例えば、図4に示したように帯電ローラー(56)の非画像形成領域に厚みが均一なギャップテープ(ギャップ形成部材51)を設けることで、空隙保持が可能となる。なお、(55)は電子写真感光体、(52)は金属シャフト、(53)は画像形成領域、(54)は非画像形成領域である。電子写真感光体と帯電ローラとのギャップが小さい方が好ましく、100μm以下、より好ましくは50μm以下である。帯電ローラを電子写真感光体に対して接触させない構成にしたことで、その分放電は不均一となり、電子写真感光体の帯電が不安定になる場合がある。それに対しては、印加バイアスは直流成分(DC)に交流成分(AC)を重畳させて帯電することが好ましく、これにより帯電の安定性が著しく向上する。
前記露光手段としては、それより照射された光が電子写真感光体の電荷発生物質に吸収されるものであれば如何なる手段をも使用することができる。帯電された電子写真感光体に露光を行ない、その光が電荷発生物質に吸収されて電荷対が生成され、その一電荷が表面に移動して表面電荷を打ち消すことによって電子写真感光体表面に静電潜像が形成される。
前記露光手段として用いられる光源としては、前記条件を満たすものであれば、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、蛍光灯、ナトリウム灯等を使用することができる。これらの中でも発光ダイオード及び半導体レーザーは、高速化及び装置の小型化の点から有効であり、本発明の効果をより高める上で最も適している。
また、これらの光源は、所望の波長域の光を照射させるために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターと組み合わせて用いることもできる。
また、前記露光手段として、マルチビーム露光手段、特に面発光レーザーが特に好ましく用いられる。前記画像形成装置を高速画像形成に対応させるためには、回動多鏡面体のポリゴンミラーの回転数を高め、副走査方向の画像走査周波数を上げる必要がある。しかし、ポリゴンミラーの回転数にも限界がある。この場合、副走査方向にビーム光源を複数個並べ、主走査方向1回の走査で複数ビームの走査をする、マルチビーム記録ヘッドによるマルチビーム走査露光方法が用いられている。マルチビーム記録ヘッドによるこの方法では、例えば、n本のビーム光源になることで1ビーム光源のみの場合に必要となる回動多鏡面体のポリゴンミラーの回転数が、1/nの回転数でよくなり、1ビーム光源の場合より、n倍の高速化が可能となる。また、走査速度に余裕が生じることになり、その分、走査密度を高密度にして、高速で、高精細な画像出力が可能になる等メリットが大きい。
図5に前記マルチビーム露光手段の一例を示す。複数の発光点(301a)を1次元又は2次元に配置した光源(301)から出た複数のレーザービームは、コリメートレンズ(302)によって平行拘束あるいは略平行拘束になり、シリンドリカルレンズ(303)、アパーチャー(304)を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)(305)によって主走査方向に偏向させられる。回転多面鏡(305)によって偏向されたレーザービームは、走査レンズ1(306a),走査レンズ2(306b)によって収束光となり、反射鏡1、2、3(307a、307b、307c)を介して感光体表面(308)に結像され、主走査方向に走査(309)される。マルチビーム露光手段の光源としては、端面発光レーザー及び面発光レーザーが使用可能である。特に面発光レーザーは発光点を2次元に配列したレーザーアレイを形成することができ、画像形成装置の高速化、小型化、画像の解像度向上に有効である。なお、(302)、(303)、(304)の組み合わせをカップリング光学系と称する。また、(a)部は、光源を拡大して表示したものであり、(b)部は、走査線を拡大して表示したものである。
前記マルチビーム露光手段を用いると、前記ポリゴンミラーの回転速度に限定されることなく、前記電子写真感光体の高速化が可能である。また、前記マルチビーム露光手段により複数のレーザービームの重なりに起因する影響も低減でき、特に好ましい。
前記現像手段は、前記露光手段によって形成された前記静電潜像をトナーによって現像し、前記電子写真感光体上に前記トナー像の形成を行う。前記電子写真感光体の帯電極性と同極性のトナーを用いて現像すると、ネガ画像(反転現像)が得られ、異極性のトナーを用いて現像すると、ポジ画像が得られる。現像には、トナーのみで行なう1成分現像方式と、トナーとキャリアを混合した状態で行なう2成分現像方式があるが、前記画像形成装置においては、いずれも良好に使用できる。
また、前記電子写真感光体上に複数色のトナー像を重ね合わせてフルカラー像を現像する場合、前記電子写真感光体に接触して現像する方法を用いると、先に現像されていたトナー像を乱してしまうおそれがある。したがって、前記電子写真感光体に対して非接触で現像が可能な、例えば、ジャンピング現像方式等の現像手段が好ましく用いられる。
前記転写手段は、前記電子写真感光体上に形成された前記トナー像を転写材(紙等の転写媒体)に転写する手段である。前記転写手段としては、帯電器を使用することが可能であり、例えば、図3に示される転写チャージャ(29)を使用したり、分離チャージャ(30)を併用したものが効果的である。
転写方式としては、前記転写手段を用いて前記電子写真感光体から前記トナー像を紙等の転写媒体に直接転写する方式と、前記電子写真感光体上の前記トナー像を一度中間転写体に転写し、その後中間転写体から紙等の転写媒体に転写する中間転写方式があり、どちらの方式でも良好に使用することができる。後者の中間転写方式は、高画質化に対しては有効であり、フルカラー画像形成装置に対しては有効であるが、反面高速化や装置の小型化に対しては不利であり、使用目的によって使い分けることが必要である。
また、転写時は定電圧方式、定電流方式があり、いずれの方法でも使用可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式の方がより好ましい。転写電流は高い方が転写性は高くなり、特に線速が早くなると転写性は低下するため、転写電流の増加は有効となる。
前記定着手段は、前記紙等の転写媒体に転写されたトナー像を加熱及び加圧によって前記転写媒体上に固定化する工程である。
定着の方法としては、転写媒体にトナーが固定化することが可能であれば、如何なる方法を用いてもよい。具体的には加熱及び/又は加圧する方法が挙げられ、加熱ローラと加圧ローラの組み合わせや、更に無端ベルトを組み合わせる方法もある。
前記クリーニング手段は、現像手段によって前記電子写真感光体上に現像された前記トナーが、前記転写手段によって転写媒体に転写され、なお前記電子写真感光体上に残存したトナーを除去する手段である。
前記クリーニング手段としては、残存トナーを前記電子写真感光体上から除去することが可能であれば如何なる方法を用いてもよい。具体的な手段としては、ファーブラシやブレード、あるいはそれらを組み合わせが挙げられる。その他、磁気ブラシ、静電ブラシ、磁気ローラ等も有効に用いられる。クリーニング工程は、電子写真感光体上には残存トナーの他、現像材成分や紙粉、放電生成物等、多くの異物が付着することで汚染され、それが画質に大きく影響することから、それらを除去する役割を有する。
前記除電手段は、前記クリーニング手段で残存トナーが除去されても、前記電子写真感光体上に前記静電潜像コントラストが残存していた場合、次サイクルでそのコントラストが残像やゴースト画像として可視化されるおそれがあるため、それらを除去する手段である。
前記除電手段としては、そこから照射される光を電荷発生物質が吸収できれば、如何なる手段であってもよい。例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀灯、蛍光灯、ナトリウム灯等が挙げられ、更に露光手段で挙げられた光学フィルターと組み合わせて用いてもよい。また、光照射方式以外に、逆バイアスを印加して除電する方法もあり、静電疲労を抑制する上では好ましい。
前記画像形成装置としては、特に制限はないが、更に、前記電子写真感光体の表面に潤滑性物質を塗布する潤滑性物質塗布手段を有することが好ましい。前記電子写真感光体の表面に前記潤滑性物質を塗布することによって、クリーニングブレードがめくれたり、それに伴ってクリーニング不良が起こったりするのを防止することが可能である。
また、前記電子写真感光体の表面に前記潤滑性物質が塗布されていることによって、帯電による電子写真感光体表面の劣化を防止する効果も有する。即ち、高寿命化と高画質化を両立できる有効な方法である。またm、前記電子写真感光体の耐摩耗性、耐傷性及びクリーニング性の更なる向上を実現できる。
前記潤滑性物質の塗布方法としては、特に制限はなく、前記潤滑性物質を固形化し、それをブラシで掻き取って前記電子写真感光体に塗布する方法、前記潤滑性物質を直接前記電子写真感光体に接触させて塗布する方法、前記現像剤に前記潤滑性物質を粉末状に混合し、現像において前記電子写真感光体の表面に供給、塗布する方法等多くの方法が挙げられる。中でも、ブラシで掻き取って塗布する方法が好ましく用いられる。
また、前記電子写真感光体表面に均一に塗布するために、ブレードを当接させ、塗布された前記潤滑性物質を延展させる方法も好ましく用いられる。この場合、前記ブレードは、前記クリーニングブレードと併用してもよいし、前記クリーニングブレードとは別に前記潤滑性物質専用の塗布ブレードを設けてもよい。前記潤滑性物質の塗布としては、前記クリーニングの後工程として行うことが好ましく、前記潤滑性物質塗布手段としては、前記後工程として実施可能な位置に配されるのが好ましい。
前記潤滑性物質としては、前記電子写真感光体の表面に均一に付着し、その結果、前記電子写真感光体の表面に潤滑性を付与できる物質であれば、如何なる物質でも使用可能である。例えば、ワックス類や滑剤の類の材料は良好に使用できる。
前記ワックス類としては、特に制限はなく、エステル系ワックス、オレフィン系ワックスが好ましい。
前記エステル系ワックスは、エステル結合を有するものであり、例えば、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックス、およびモンタンワックス等が挙げられる。
前記オレフィンワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成ワックスが挙げられる。
滑剤としては、PTFE、PFA、PVDF等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられる。中でも、ステアリン酸亜鉛が最も好ましい。
<タンデム型の画像形成装置>
前記画像形成装置としては、特に制限はないが、タンデム型であることが好ましい。
タンデム型の画像形成装置とは、少なくとも、前記電子写真感光体、前記帯電手段、前記現像手段及び前記転写手段を有する画像形成要素が複数配された画像形成装置である。
前記複数色のトナーを各々独立して保持する現像部に対応して、それと同じ本数の電子写真感光体を具備し、それによって各色の現像を各々独立に平行して処理し、その後各色のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成する。具体的には、フルカラー印刷に必要とされるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の少なくとも4色の現像部及び電子写真感光体が具備されており、4回のプロセスを繰り返して出力される従来のシングルドラム方式に比べて、極めて高速なフルカラー印刷を実現しており、本発明において特に有効な方法である。
図6は、タンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための代表的な概略図である。図6において、符号(1C、1M、1Y、1K)はドラム状の電子写真感光体であり、本発明の電子写真感光体が用いられる。この電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)は図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電手段(2C、2M、2Y、2K)、現像手段(4C、4M、4Y、4K)、クリーニング手段(5C、5M、5Y、5K)が配置されている。
この帯電手段(2C、2M、2Y、2K)と現像手段(4C、4M、4Y、4K)の間の電子写真感光体裏面側より、図示しない露光手段からのレーザー光(3C、3M、3Y、3K)が照射され、電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)に静電潜像が形成される。そして、このような電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)を中心とした4つの画像形成要素(6C、6M、6Y、6K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(10)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(10)は各画像形成ユニット(6C、6M、6Y、6K)の現像手段(4C、4M、4Y、4K)とクリーニング手段(5C、5M、5Y、5K)の間で電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)に当接しており、転写搬送ベルト(10)の電子写真感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(11C、11M、11Y、11K)が配置されている。各画像形成要素(6C、6M、6Y、6K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図6に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行なわれる。まず、各画像形成要素(6C、6M、6Y、6K)において、電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)が矢印方向(電子写真感光体と連れ周り方向)に回転する帯電手段(2C、2M、2Y、2K)により帯電され、次に電子写真感光体の外側に配置された露光部(図示しない)でレーザー光(3C、3M、3Y、3K)により、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像手段(4C、4M、4Y、4K)により静電潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段(4C、4M、4Y、4K)は、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーで現像を行なう現像手段で、4つの電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙(7)は給紙コロ(8)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(9)で一旦停止し、上記電子写真感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(10)に送られる。転写搬送ベルト(10)上に保持された転写紙(7)は搬送されて、各電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行なわれる。
電子写真感光体上のトナー像は、転写ブラシ(11C、11M、11Y、11K)に印加された転写バイアスと電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)との電位差から形成される電界により、転写紙(7)上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙(7)は定着装置(12)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。また、転写部で転写されずに各電子写真感光体(1C、1M、1Y、1K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(5C、5M、5Y、5K)で回収される。
なお、図6の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(6C、6M、6Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。更に、図6において帯電手段は電子写真感光体と当接しているが、図4に示したような帯電機構で、両者の間に適当なギャップ(10〜200μm程度)を設けてやることにより、帯電手段へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の前記電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段より選択される少なくとも1つの手段と、を一体として有し、画像形成装置本体に着脱可能とされる。
前記帯電手段、前記露光手段、前記現像手段、前記転写手段、前記クリーニング手段及び前記除電手段としては、本発明の前記画像形成装置について説明した手段を適用することができる。即ち、これらの手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよく、また、各々の画像形成要素は、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
前記プロセスカートリッジの一般的な例としては、図7に示すものが挙げられる。このプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて示すと、電子写真感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。
この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の電子写真感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき、詳細に説明するが、本発明の思想は、ここに例示される実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は、特に断りのない限り質量部を表す。
<チタニルフタロシアニン結晶(顔料1)の合成>
はじめに、チタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。合成は、特開2004−83859号公報に準じて行った。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン292部とスルホラン1,800部を混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204部を滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間攪拌して反応を行なった。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に攪拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。
得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40部をテトラヒドロフラン200部に投入し、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に攪拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(攪拌開始後20分)、攪拌を停止し、直ちに減圧濾過を行なった。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5部を得た。これを顔料1とする。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、CuKα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有しないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図8に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧 :50kV
電流 :30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数 :2秒
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン溶液及び上記顔料1を投入し、ローター回転数3,000r.p.m.にて120分間分散を行ない、分散液を作製した。
<アゾ顔料の合成>
アゾ顔料の合成は、特許第3026645号公報に記載の方法に準じて行った。
<電荷輸送性構造を有する重合性化合物の合成例>
電荷輸送性構造を有する重合性化合物の合成は、特許第3164426号公報に記載の方法により行った。以下、詳細を説明する。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間かけて滴下し、約60℃の温度で4時間半攪拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。
融点:64.0〜66.0℃
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.54)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g、水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間攪拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。
融点:117.5〜119.0℃
(実施例1)
外径60mmのアルミニウムシリンダー上に下記組成の中間層用塗工液、下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を用いて、浸漬塗工法により順次塗布し、オーブンで乾燥を行い、約0.5μmの中間層と、約2.5μmの下引き層と、約0.2μmの電荷発生層と、約25μmの電荷輸送層を形成した。各層の乾燥条件は、中間層は130℃10分、下引き層は130℃20分、電荷発生層は90℃20分、電荷輸送層は120℃20分とした。なお、用いられるシクロペンタノンの沸点は、130.6℃、テトラヒドロフランの沸点は、65℃である。
<中間層用塗工液>
N−メトキシメチル化ナイロン:5部
(FR101:鉛市社製)
メタノール:70部
n−ブタノール:30部
<下引き層用塗工液>
酸化チタンA:50部
(CR−EL、平均一次粒径:約0.25μm、石原産業社製)
酸化チタンB:20部
(PT−401M、平均一次粒径:約0.07μm、石原産業社製)
アルキッド樹脂:14部
(ベッコライトM6401−50、固形分:50%、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂:8部
(L−145−60、固形分:60%、大日本インキ化学工業社製)
2−ブタノン:70部
<電荷発生層用塗工液>
図8のX線回折スペクトルを示すチタニルフタロシアニン(顔料1):8部
(イオン化ポテンシャル 5.27eV)
ポリビニルブチラール:4部
(BX−1、積水化学工業社製)
2−ブタノン:400部
<電荷輸送層用塗工液>
ポリカーボネート:10部
(Zポリカ、帝人化成社製)
上記CTM14で示される電荷輸送物質(分子量 700.98):10部
テトラヒドロフラン:75部
シリコーンオイル:0.002部
(1cm/s(100cSt)、信越化学社製)
下記構造式で示されるアルキルアミノ基を有する化合物:1.0部
次に、下記組成の保護層用塗工液を以下の手順で作製した。フィラーの分散は、70ccのガラスポットにφ5mmのアルミナボールを入れ、更にフィラー、ポリカルボン酸化合物及びシクロペンタノンを入れ、ボールミルにより24時間分散(150rpm)を行なった。その後、テトラヒドロフランを添加して攪拌することによって得られたミルベースと、その他の材料を予め混合した溶液とを混合することによって保護層用塗工液を作製した。
<ミルベース>
アルミナフィラー:8部
(スミコランダムAA−03、平均一次粒径:0.3μm、住友化学工業社製)
ポリカルボン酸化合物:0.2部
(BYK−P104、不揮発分50%、BYKケミー社製)
シクロペンタノン:8部
テトラヒドロフラン:12部
<保護層用塗工液>
上記ミルベース:3部
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物:4部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99)
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:4部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤:0.5部
(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
テトラヒドロフラン:50部
得られた保護層用塗工液を用いて、下記塗工条件で電荷輸送層の上にスプレー塗工法により保護層を形成した。
スプレー距離:50mm
スプレー移動速度:6mm/s
ドラム回転速度:150rpm
霧化エア圧:0.9kg/cm
霧化流量:14L/min
保護層を塗工してから2分間自然乾燥した後、メタルハライドランプを用いたFusion製UVランプシステムを使用し、照射距離を50mm、照射強度を500mW/cmで照射時間50秒の条件で温度を約42℃に保ちながら光照射を行い、硬化させた。更に130℃で20分間乾燥を行い、厚みが約3μmの保護層を設けた。
以上により実施例1における電子写真感光体を製造した。
(実施例2)
実施例1において、電荷輸送層の乾燥条件を、120℃20分から110℃20分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における電子写真感光体を製造した。
(実施例3)
実施例1において、電荷輸送層の乾燥条件を、120℃20分から130℃20分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における電子写真感光体を製造した。
(実施例4)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から120℃20分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における電子写真感光体を製造した。
(実施例5)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から140℃20分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における電子写真感光体を製造した。
(比較例1)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から150℃20分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における電子写真感光体を製造した。
(実施例6)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から130℃15分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6における電子写真感光体を製造した。
(実施例7)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から120℃15分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7における電子写真感光体を製造した。
(比較例2)
実施例1において、保護層の乾燥条件を、130℃20分から110℃10分に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における電子写真感光体を製造した。
(比較例3)
実施例1のミルベースの調製において、シクロペンタノン12部をテトラヒドロフラン8部に代え、テトラヒドロフランの全添加量を12部から20部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における電子写真感光体を製造した。
(比較例4)
実施例1のミルベースの調製において、シクロペンタノン8部に代えてシクロヘキサノン8部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における電子写真感光体を製造した。
(比較例5)
実施例1のミルベースの調製において、シクロペンタノン8部に代えてトルエン8部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5における電子写真感光体を製造した。
(実施例8)
実施例1のミルベースの調製において、テトラヒドロフラン12部をシクロペンタノン12に代え、シクロペンタノンの全添加量を8部から20部に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8における電子写真感光体を製造した。
(比較例6)
実施例1の保護層用塗工液において、テトラヒドロフラン50部に代えて、テトラヒドロフラン40部及びシクロペンタノン10部を添加したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6における電子写真感光体を製造した。
(実施例9)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から上記CTM13で示される化合物(分子量 700.98)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9における電子写真感光体を製造した。
(実施例10)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から上記CTM52で示される化合物(分子量 881.23)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10における電子写真感光体を製造した。
(実施例11)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から上記CTM54で示される化合物(分子量 615.83)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11における電子写真感光体を製造した。
(実施例12)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から下記構造式で示されるα−フェニルスチルベン誘導体(分子量 451.62)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12における電子写真感光体を製造した。
(実施例13)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から下記構造式で示されるアミノビフェニル誘導体(分子量 379.51)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13における電子写真感光体を製造した。
(実施例14)
実施例1において、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質を、上記CTM14で示される化合物(分子量 700.98)から下記構造式で示されるベンジジン誘導体(分子量 544.75)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14における電子写真感光体を製造した。
(比較例7)
実施例1の保護層用塗工液において、ミルベース添加せず、以下の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7における電子写真感光体を製造した。
<保護層用塗工液>
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物:4部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−60、日本化薬製)
分子量:1263、官能基数:6官能、分子量/官能基数=211
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:4部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤:1部
2、2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン
(イルガキュア651、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン:50部
(比較例8)
実施例1のミルベースの調製において、ポリカルボン酸化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例8における電子写真感光体を製造した。
(実施例15)
実施例1の保護層用塗工液における電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性化合物を下記の化合物に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例15における電子写真感光体を製造した。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー:10部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬社製、分子量:1947、官能基数:6官能、分子量/官能基数=325)
(実施例16)
実施例1の保護層用塗工液における電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を、1官能性の例示化合物No.54 7部、及び下記構造式の2官能性化合物 3部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例16における電子写真感光体を製造した。
(実施例17)
実施例1における保護層用塗工液を下記組成の保護層用塗工液に変更し、光照射による硬化処理を施さず、保護層を塗工後に150℃20分の加熱乾燥を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例17における電子写真感光体を製造した。
<保護層用塗工液>
実施例1におけるミルベース:2部
イソシアネート:3部
スミジュールHT(HDIアダクト)(住化バイエルン社製)
下記構造式で示されるポリオール1:2部
ポリオール2:8部
LZR170(藤倉化成社製)
下記構造式で示される電荷輸送性構造を有する反応性化合物:10部
テトラヒドロフラン:120部
(比較例9)
実施例1における保護層用塗工液を下記組成の保護層塗工液に変更し、光照射による硬化処理を施さず、塗工後に150℃20分の加熱乾燥を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例9における電子写真感光体を製造した。
<保護層用塗工液>
実施例1におけるミルベース:3部
ポリカーボネート:10部
(Zポリカ、帝人化成社製)
上記化合物CTM17で示される電荷輸送物質(分子量 672.92):7部
下記構造式で示されるアルキルアミノ基を有する化合物:1部
テトラヒドロフラン:600部
(実施例18)
実施例1において、電荷発生層を下記組成の電荷発生層形成用塗工液を用いて塗工し、乾燥条件を130℃20分とし、電荷輸送層を下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例18における電子写真感光体を製造した。
<電荷発生層用塗工液>
ボールミル分散機に直径10mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解したシクロヘキサノン溶液及び下記アゾ顔料を投入し、回転数85r.p.m.にて7日間分散を行ない、分散液を作製した。
下記構造式で示される非対称ビスアゾ顔料:5部
ポリビニルブチラール:1.5部
(BM−S、積水化学社製)
シクロヘキサノン:250部
2−ブタノン:100部
<電荷輸送層形成用塗工液>
ポリカーボネート:10部
(Zポリカ、帝人化成社製)
上記化合物CTM17で示される電荷輸送物質(分子量 672.92):7部
シリコーンオイル:0.002部
(1cm/s(100cSt)、信越化学社製)
テトラヒドロフラン:100部
下記構造式で示される酸化防止剤:0.07部
(実施例19)
実施例18の電荷発生層用塗工液において、シクロヘキサノン250部をシクロペンタノン250部に代えたこと以外は、実施例18と同様にして、実施例19における電子写真感光体を製造した。
(実施例20)
実施例1において、保護層用塗工液に含まれるフィラーを、下記のフィラーに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例20における電子写真感光体を製造した。
α−アルミナ:2部
(スミコランダムAA−07、平均一次粒径:0.7μm、住友化学工業社製)
(実施例21)
実施例1において、保護層用塗工液に含まれるフィラーを、下記のフィラーに代えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例21における電子写真感光体を製造した。
シリカ:1部
(SO−E2、平均一次粒径:0.5μm、アドマテックス社製)
(実施例22)
実施例1における保護層の塗工条件である霧化エア圧を、0.9kg/cmから1.1kg/cmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例22における電子写真感光体を製造した。
(実施例23)
実施例1における保護層の塗工条件である霧化エア圧を、0.9kg/cmから0.8kg/cmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例23における電子写真感光体を製造した。
(実施例24)
実施例1の保護層用塗工液におけるテトラヒドロフランの添加量を、50部から20部
に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例24における電子写真感光体を製造した。
<フィラーの分散安定性評価>
実施例1〜24及び比較例1〜9における各保護層用塗工液について、フィラーの分散安定性評価を行なった。
分散安定性の評価には、RUFUTO社製の分散安定性分析装置「LUMiSizer612」を用いた。本装置によって、塗工液を遠心分離にかけ、透過光量の面積を経時的に積分してグラフ化し、その傾きから1時間当たりにおける透過光量積分値の変化率(%/hour)を求めた。変化率が低い方が分散安定性は高いことになる。
遠心分離の回転速度は2,000rpm、温度は25℃に設定した。その後、保護層用塗工液を200cc採取し、ダイヤフラムポンプで循環試験を10時間行い、塗工液を加速劣化させた後、再度上記方法にてフィラーの分散安定性評価を行った。
循環試験前後における透過光量積分値の変化率の変化より、フィラー分散安定性について評価を行った。具体的には、透過光量積分値の変化率の循環試験前後における変化が5%未満のものを◎、10%未満のものを○、20%未満のものを△、20%以上のものを×として評価を行った。これらの結果を下記表3に示す。
<テトラヒドロフランとシクロペンタノンの含有量>
実施例1〜24及び比較例1〜9における電子写真感光体について、熱抽出ガスクロマトグラフ質量分析を行い、テトラヒドロフランとシクロペンタノンの含有量を測定した。 感光体は、支持体ごと切断し、該支持体上に積層された全層の固形分量が0.5mg〜1.0mgになるようにサンプリングを行った。
測定装置は、島津製作所社製のQP−2010を用い、熱抽出条件は280℃15分とし、加熱装置はフロンティア・ラボ社製Py−2020Dを用いた。カラムには、Ultra ALLOY−5(L=30m、ID=0.25mm、Film=0.25μm)を用い、カラム流量は1.0ml/minとした。その他、イオン化方式はEI法、注入モードはスプリット(スプリット比1:100)とした。測定は3点行い、その平均値とした。これらの結果を下記表3に示す。
<保護層の内部硬化性評価>
実施例1〜24及び比較例1〜9における電子写真感光体を図9に示す加速摩耗試験機にセットし、感光体を一定に強制摩耗させながら経時での摩耗量を測定し、この強制磨耗させた時間とその経時での摩耗量の関係に基づき、保護層の内部硬化性について評価を行なった。
研磨シートには、幅10cm、粒度3.0μmのラッピングフィルム71(住友3M社製)を用いた。また、摩耗量は、電子写真感光体70の厚みを測定することによって求め、厚みの測定には渦電流式膜厚測定装置(フィッシャーインスツルメンツ社製)を用いた。
保護層の内部硬化性の評価は、保護層の表面から保護層と電荷輸送層との界面に至るまでの少なくとも8点以上の測定データから、加速摩耗時間に対する摩耗量をプロットしたとき、近似曲線の相関係数が0.996以上を示す直線が得られたサンプルを◎、相関係数が0.990以上0.996未満の直線が得られたサンプルを○、相関係数が0.990未満で明らかに変曲点が観察され、変曲点が保護層の厚みの半分を超えた点で見られたサンプルを△、相関係数が0.990未満で明らかに変曲点が観察され、変曲点が保護層の厚みの半分より手前で見られたサンプルを×として評価を行なった。これらの結果を下記表3に示す。
<保護層の接着性評価>
実施例1〜24及び比較例1〜9における電子写真感光体を、10mm四方サイズに切り出し、表面界面物性解析装置SAICAS DN−20型(ダイプラ・ウィンテス社製)を用いて保護層の接着性の評価を行なった。
測定は、刃幅0.5mmの切刃を用い、水平切り込み速度:0.1μm/sec、垂直切り込み速度:0.01μm/secの切り込み速度一定モードで行った。
接着性の評価は、以下のようにして行なった。
即ち、測定された切削時間(深さ)当たりの水平荷重は、剥離が生じていない場合、図10に示すように、ほぼ直線のグラフが得られるが、剥離が起きると図11に示すように、剥離が発生した深さにおいて水平加重の落ち込みが観察され、変曲点を有するグラフが得られる。
従って、保護層の接着性は、保護層の厚みの深さまで図10のようにほぼ直線のグラフが得られたサンプルを◎、保護層の厚みの深さまで直線のグラフは得られなかったが、水平加重の落ち込みが見られなかったサンプルを○、明らかに水平加重の落ち込みが認められ、その変曲点が保護層の厚みの半分を超えた点で見られたサンプルを△、明らかに水平加重の落ち込みが認められ、その変曲点が保護層の厚みの半分より手前で見られたサンプルを×として評価を行なった。これらの結果を下記表3に示す。
<表面粗さの測定>
実施例1〜24及び比較例1〜9における電子写真感光体に対して、JIS B0601(1994)に準拠し、(株)東京精密社製の表面粗さ計Surfcom1400Dを用いて、十点平均粗さRz及び凹凸の平均間隔Smの測定を行った。
測定は、感光体ドラムの長手方向(軸方向)に評価長さを、5.0mmに設定し、感光体ドラムを周方向にて、約90°間隔としたときの4点の位置で、前記評価長さにおける測定を行った。
この際、前記感光体ドラム周方向4点の位置での測定は、(1)感光体ドラムの長手方向の中央部位置と、(2)該中央部位置と感光体ドラムの長手方向一端部との間の中間部位置と、(3)該中央部位置と感光体ドラムの長手方向他端部との間の中間部位置と、の3箇所で行い、全12点の平均値により前記Rz及びSm求めた。これらの結果を下記表3に示す。
<電子写真感光体の電位特性>
実施例1〜24及び比較例1〜9における電子写真感光体の電位特性の評価を、図4に示される近接ローラ帯電方式の帯電手段、クリーニングブレードによるクリーニング手段、クリーニング手段の下流側に感光体表面にブラシを介してステアリン酸亜鉛を塗布する滑剤塗布手段を搭載したプロセスカートリッジに装着し、更にそれを780nmの半導体レーザーを用いた露光手段、現像部には現像手段の代わりに、表面電位計に接続されたプローブを取り付けた現像ユニットを装着し、除電手段として660nmのLEDを取り付けた、タンデム型のリコー製デジタル複写機の改造機を用いて行なった。
評価は、全面光書き込みによる黒ベタ画像を10枚出力し、10枚目の電位を露光部電位(VL)として読み取った。その後、球状の重合トナーを用いた現像材が充填された現像ユニットに交換し、上記の電子写真感光体について画像出力を行い、得られた画像について評価を行った。
更に、上記装置を用いて、60万枚に及ぶ通紙ラン試験を行い、その後同様に露光部電位の測定と出力した画像の評価を行った。
画像評価結果については、画像欠陥がまったく認められず、良好な画像が得られたレベルを◎、画像品質が若干低下したものの、問題にならないレベルを○、画像品質が明らかに低下し、それが目視上容易に判定されたレベルを△、画像欠陥が目立ち、明らかに画像品質上問題視されるレベルを×として評価を行った。これらの結果を下記表4に示す。
以上の結果から、本発明の電子写真感光体は、フィラーの分散安定性が高く、保護層内部の硬化性や保護層の接着性についても問題なく、高い画質や耐摩耗性は60万枚印刷後においても維持されており、機械的及び静電的耐久性に優れていることが明らかとなった。また、本発明で示された電荷輸送物質を用いることで、それらの効果がより発揮され、かつ静電的耐久性の向上にも有効であることがわかった。更に、保護層表面のRz及びSmを所定の範囲にすることで、トナーのすり抜けやクリーニング不良によるスジ状画像欠陥を防止することが可能となり、更なる高画質化に有効であることが明らかとなった。
しかし、テトラヒドロフランやシクロペンタノンの含有量が、本発明の範囲外の場合には、フィラーの分散安定性が低下したり、保護層の内部硬化性や接着性が低下したりする傾向が見られた。その結果、初期的には良好でも、60万枚印刷後には著しい露光部電位上昇が見られたり、耐摩耗性の低下が発生したり、あるいは偏摩耗が認められ、画像濃度ムラにより均一性の低下が観察された。
以上の結果から、本発明の電子写真感光体は、フィラーの分散安定性を高め、保護層内部の硬化度が均一で、接着性も良好であり、その結果、繰り返し使用しても耐摩耗性や耐傷性に優れ、露光部電位の安定性も高く、機械的及び静電的耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができている。更に、その感光体を用いることにより、長期繰り返し使用しても画像濃度変動が少なく、画質欠陥の発生も少なく、画質安定性に優れた画像形成装置を提供することができている。
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に幅広く応用することができる。
1C、1M、1Y、1K 感光体
2C、2M、2Y、2K 帯電部材
3C、3M、3Y、3K レーザー光
4C、4M、4Y、4K 現像部材
5C、5M、5Y、5K クリーニング部材
6C、6M、6Y、6K 画像形成要素
7 転写紙(記録紙)
8 給紙コロ
9 レジストローラ
10 転写搬送ベルト
11C、11M、11Y、11K 転写ブラシ
12 定着装置
21 電子写真感光体
22 除電ランプ
23 帯電チャージャー
24 画像露光部
25 現像ユニット
26 転写前チャージャー
27 レジストローラ
28 転写紙
29 転写チャージャー
30 分離チャージャー
31 分離爪
32 クリーニング前チャージャー
33 ファーブラシ
34 ブレード
51 ギャップテープ(ギャップ形成部材)
52 金属シャフト
53 画像形成領域
54 非画像形成領域
55、70 電子写真感光体
56 帯電ローラ
71 ラッピングフィルム
101 ドラム
102 接触帯電装置
103 像露光
104 現像装置
105 転写体
106 接触転写装置
107 クリーニングユニット
301 光源
301a 発光点
302 コリメートレンズ
303 シリンドリカルレンズ
304 アパーチャー
305 回転多面鏡(ポリゴンミラー)
306a 走査レンズ1
306b 走査レンズ2
307a 反射鏡1
307b 反射鏡2
307c 反射鏡3
308 感光体表面
309 走査方向
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第2821318号公報 特開2000−330313号公報 特開2005−99688号公報 特開2006−330086号公報 特許第3802787号公報 特開2007−72487号公報 特開平7−5703号公報 特許第4145570号公報

Claims (21)

  1. 支持体と、該支持体上に、少なくとも、電荷発生層と、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する電荷輸送層と、フィラー、ポリカルボン酸化合物、及び電荷輸送性構造を有する重合性化合物と電荷輸送性構造を有しない重合性化合物とを含む硬化性樹脂を含有する保護層と、がこの順で積層されてなり、
    前記支持体上に積層された全層の固形分量に対する含有量が、テトラヒドロフランについて50ppm以上10,000ppm以下であり、シクロペンタノンについて1ppm以上100ppm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 支持体上に積層された全層の固形分量に対するテトラヒドロフランの含有量が、200ppm以上3,000ppm以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 支持体上に積層された全層の固形分量に対するシクロペンタノンの含有量が、2ppm以上30ppm以下である請求項1から2のいずれかに記載の電子写真感光体。
  4. テトラヒドロフランが、電荷輸送層及び保護層に含有され、シクロペンタノンが保護層に含有される請求項1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 電荷輸送物質の分子量が、600以上900以下である請求項1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 電荷輸送物質が、下記一般式(1)で示されるジスチリル化合物である請求項1から5のいずれかに記載の電子写真感光体。
    ただし、前記式(1)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
    Aは、置換基を有してもよいアリーレン基、及び下記一般式(1a)で表される基のいずれかを表す。
    ただし、前記式(1a)中、R、R及びRは、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及びフェニル基のいずれかを表す。前記フェニル基は、無置換又は炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基のいずれかの置換基により置換されていてもよい。
    B及びB’は、それぞれ、置換基を有してもよいアリール基、及び下記一般式(1b)で表される基のいずれかを表す。B及びB’は、各々同一でも異なっていてもよい。
    ただし、前記式(1b)中、Arは、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリーレン基を表し、また、Ar及びArは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシ基のいずれかを置換基として有していてもよいアリール基を表す。
  7. 電荷輸送物質が、下記一般式(2)で表されるジスチリル化合物である請求項6に記載の電子写真感光体。
    ただし、前記式(2)中、R〜R33は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
  8. 電荷輸送物質が、下記一般式(3)で表されるジスチリル化合物である請求項6に記載の電子写真感光体。
    ただし、前記式(3)中、R34〜R57は、それぞれ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、及び置換基を有してもよいフェニル基のいずれかを表し、各々同一でも異なっていてもよい。
  9. 電荷輸送性構造を有する重合性化合物の電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造である請求項1から8のいずれかに記載の電子写真感光体。
  10. 電荷輸送性構造を有する重合性化合物、及び電荷輸送性構造を有しない重合性化合物のいずれかが、官能基としてアクリロイルオキシ基及び/又はメタクリロイルオキシ基を有する請求項1から9のいずれかに記載の電子写真感光体。
  11. 電荷輸送性構造を有しない重合性化合物が3つ以上の重合性官能基を有し、電荷輸送性構造を有する重合性化合物が1つの重合性官能基を有する請求項1から10のいずれかに記載の電子写真感光体。
  12. フィラーが、金属酸化物粒子である請求項1から11のいずれかに記載の電子写真感光体。
  13. 金属酸化物粒子が、α−アルミナ粒子である請求項12に記載の電子写真感光体。
  14. フィラーの平均一次粒径が、0.05μm以上0.7μm未満である請求項1から13のいずれかに記載の電子写真感光体。
  15. 保護層の厚みが、1μm以上5μm以下である請求項1から14のいずれかに記載の電子写真感光体。
  16. 保護層表面の十点平均粗さRzが、0.3μm以上1.0μm以下である請求項1から15のいずれかに記載の電子写真感光体。
  17. 保護層表面に存在する凹凸の平均間隔Smが、0.3mm以上1.0mm以下である請求項1から16のいずれかに記載の電子写真感光体。
  18. 少なくとも、請求項1から17のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、該電子写真感光体上に静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、該現像されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  19. 少なくとも、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する画像形成要素を複数配したタンデム型である請求項18に記載の画像形成装置。
  20. 画像形成装置が、更に電子写真感光体表面に潤滑性物質を塗布する潤滑性物質塗布手段を有する請求項18から19のいずれかに記載の画像形成装置。
  21. 請求項1から17のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段より選択される少なくとも1つの手段と、を一体として有し、画像形成装置本体に着脱可能であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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