JP2007155874A - 画像形成装置及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】感光体の繰り返し使用における残留電位上昇を抑制し、高耐久で高精細な画像形成が可能な画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、静電潜像担持体の残留電荷を光除電する除電手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記除電手段が500nmよりも短波長の光を照射する除電手段であると共に、前記静電潜像担持体が、支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを特徴とする画像形成装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、画像形成装置に用いられる静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」、「光導電性絶縁体」と称することがある)が、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光プリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要が益々高まっていくと予想される。さらに、パーソナルコンピュータの普及及び性能の向上にともない、画像及びドキュメントのカラー出力を行うためのデジタルカラープリンターの進歩も急激に進んでいる。
このようなデジタル画像形成装置のほとんどには、ネガ・ポジ現像が採用されている。これは、従来の画像形成装置で出力される画像(原稿)のほとんどが、文字が中心であり、出力される画像(紙)に対して、書き込み率が低い(5〜10%程度である)ことに起因する。
アナログからデジタルへの変換は、ポジ・ポジ現像からネガ・ポジ現像に推移したとも言え、この大きな違いは、原稿に対して全面に光を照射し、これを感光体に照射していたことから、文字等の情報分だけを感光体に書き込むことに変化した点が挙げられる。これは、上述のように書き込み率が低いため、書き込み光源の寿命を考慮して、原稿情報部分(全体の10%以下程度)だけの使用に留めれば、光源の出力時間が1/10になることを利用している。
ネガ・ポジ現像を用いた画像形成装置においては、書き込み光源によって書き込まれなかった部分(非画像部、地肌部)は、現像及び転写後においても静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」、「光導電性絶縁体」と称することがある)の表面電荷が残存するため、次の帯電に際して影響を及ぼす場合があり、除電が行われている。除電に際しては、光を用いて光キャリアを発生させ表面電荷を打ち消す方法(光除電)と、導電性のブラシ等を感光体に接触させ電荷をリークさせてしまう方法や、逆バイアスを印加して表面電荷をキャンセルする方法などが用いられている。
近年の画像形成装置は、高画質化やカラー化が進み、比較的高精細な書き込み、現像などが可能になり、画像形成装置に入力される情報(原稿)も幾分変わってきた。上述のように、過去の原稿では文字が中心のものであったが、写真画像、カラー化された絵、グラフなどが入力されるようになってきた。このような色々なパターンの入力信号が存在する場合、画像形成における1サイクル前の履歴をキチンと消去しておかないと、次の画像形成に影響がある場合が出てきた。多くの場合は、残像と呼ばれる異常画像の発生である。残像は、画像形成プロセスの中で感光体が帯電を施された状態において、既に不均一な状態が形成されており、ここに感光体のある面積全面一様に書き込みが行われたような場合(特に中間調)、本来ならば書き込み後の帯電電位がほぼ均一になるのに対して、帯電前の感光体帯電状態の履歴を残しているため、不均一な帯電分布になる。この状態で静電潜像が形成され、これが現像部により現像が行われると、不均一な現像が行われることになり、前回の画像形成サイクルで形成した潜像があたかも残ってしまうような現象を生じるものである。
これは、2つの理由がある。1つは、画像形成が非常に高速になってきたため、帯電器の容量(帯電能力)が不足しがちで、帯電前の感光体表面電荷が不均一であると、次回帯電時にその履歴を拾い、帯電の均一化が確保できないことに依るものである。いま1つは、画像形成装置のコンパクト化あるいはカラー化によるタンデム化により、帯電ローラの使用が増えてきたことによる。帯電ローラは、感光体との間で放電現象を起こし、両者の間のバイアス差により感光体表面に帯電を施すが、帯電前の感光体表面電荷が不均一であると、次回帯電時にその履歴を残してしまう。
従って、帯電前の感光体表面電位(表面電荷)を如何に均一化するかが鍵であり、除電工程は高画質化のためには非常に重要な役割を担うようになってきた。
上述した除電方法のうち、光除電以外の方法は、次のような課題を有している。導電性ブラシ等による電荷リークの方法は、感光体表面に当接させる部材が必要であり、感光体及び当接部材の摩耗が生じ、高耐久化を望むことが出来ない。また、電荷リークさせる方法は感光体表面や当接部材表面の汚染によって、その効果が低下してしまう場合がある。また、高速化に際しては、電荷の移動時間を考慮すると、十分な効果が期待できない。
逆バイアスを印加する方法は、バイアスの印加条件が弱すぎる場合には均一化が十分に行われず、強すぎる場合には感光体表面に逆帯電を施してしまう。通常の感光体は、正電荷しか移動できないため、表面が正電荷で荷電された場合にはこれをキャンセルすることが出来ない。従って、次回帯電時に負帯電を施す場合には、まずこの正電荷をキャンセルした後に、負帯電を施すことになる。このことは帯電器の容量不足を更に生み出すことになる。また、正帯電された場合には、感光層内にトラップを形成しやすくなり、感光体の残留電位を生み出しやすくなり、結果として感光体の寿命を短くしてしまう。
以上のことから、画像形成装置における除電工程には、光除電を用いることが現時点ではベストな選択であると言える。
上述のように、近年ではデジタル方式の画像形成装置が主流となっており、上述した理由から、その際に用いられる現像方式としてはネガ・ポジ現像が用いられる。従来用いられていたアナログ方式におけるポジ・ポジ現像の場合と比べて、除電における意味合いが非常に大きく異なっている。
即ち、ポジ・ポジ現像においては、転写後の光除電においては、通常感光体全面に光照射がなされるものの、文字等の書き込み部に対応した領域のみが実質的に除電される。このため、感光体の全面積に対して、高々10%程度の領域である。
一方、ネガ・ポジ現像においては、感光体未露光部(書き込みの行われない部分)が実質的に除電されるため、上記と同じ原稿であれば、感光体の全面積に対して90%近い領域が実質的に除電されることになる。ここで言う、「実質的に除電」とは、光除電を行う場所において、感光体が表面電荷を有しており、除電部材の光照射によって、感光体内部で光キャリアが発生し、それによって感光体の表面電荷が打ち消されることを意味している。
即ち、従来用いられてきたポジ・ポジ現像とネガ・ポジ現像においては、感光体の表面電荷を打ち消す割合が全く異なる(逆の履歴になる)ことを意味しており、ポジ・ポジ現像の場合に比べて、除電による影響は、最低10倍程度は異なることになる。しかしながら、感光体への除電工程での影響(特に除電光波長など)に関する検討は、あまり行われておらず、従来のまま使用されてきたのが実情である。
除電部材に関する技術として、特許文献1あるいは特許文献2には、無機系の感光体(Se系、a−Si)を使用した画像形成装置において、短波長の光を含む適切な除電光を照射することにより、光疲労や帯電疲労の防止を行える旨の記載がある。しかしながら、特許文献1あるいは特許文献2に用いられる感光体は、無機系の感光体であり、後述するように有機系電荷発生物質を用いた感光体とは、本質的に光キャリア発生機構が異なるため、無機系の技術(光除電)を有機系感光体にそのまま水平展開できない。また、使用する現像方式が、ポジ・ポジ現像の時代であり、光除電の影響度合いがネガ・ポジ現像と全く異なる。更に、除電光の波長として、500nm以上の領域の波長光を含む。特許文献1あるいは特許文献2の技術を適用して実験を行った結果では、残留電位上昇を抑制する効果が十分ではなかった。
特許文献3には、色素増感した感光体の固有感光波長と略一致する波長の露光を行う、言い換えれば、増感色素の吸収のない領域の波長を用いて除電を行うことにより、残留電位が除去できる旨の記載がある。しかしながら、色素増感させた感光体の元の材料(例えば、ポリビニルカルバゾール)等は、可視域に吸収を持たないため、可視域に吸収を有する色素で増感するものである。従って、上記の技術は色素に吸収が無く、ポリビニルカルバゾールに吸収を有する波長領域で除電を行うことになる。この場合、この波長帯での光キャリア発生効率が低く、除電を効率よく出来ないばかりでなく、ポリビニルカルバゾールの光劣化等を生じることになるため、必ずしも有効な手段になり得ない場合が存在した。また、使用する現像方式が、ポジ・ポジ現像の時代であり、光除電の影響度合いがネガ・ポジ現像と全く異なる。このため、本発明が対象とするところのネガ・ポジ現像に用いる場合にはその効果が十分でなかった。
特許文献4には、長波長に光感度を有し、短波長側では低感度もしくは実質光感度を有さない感光体に対して、短波長光で除電を行うことにより、光疲労に起因する感度低下を抑制する旨の記載がある。しかしながら、比較的高速の画像形成装置では、低感度もしくは実質的に光感度を有さない領域の光で除電を行った場合には、除電機能が不十分であり、異常画像の抑制が出来ない場合が生じる。除電光に対しては十分な光感度を有することが重要であって、特許文献4の技術では、現在の画像形成措置には対応できない。また、特許文献4では、除電波長の特定がなされていない。
特許文献5及び特許文献6には、電荷輸送層上に電荷発生層を積層した正帯電感光体に、620nm以下の波長の光を照射することによって除電を行い、残留電位の低減を図る旨の記載がある。除電光の波長として、500nm以上の領域の波長光を含む。特許文献5あるいは6の技術を適用して実験を行った結果では、残留電位上昇を抑制する効果が十分ではなかった。
特許文献7には、2種の発光ダイオードを同時に照射することにより除電を行い、高温高湿下での残留電位上昇を防止する旨の記載がある。除電光の波長として、500nm以上の領域の波長光を含む。特許文献7の技術を適用して実験を行った結果では、残留電位上昇を抑制する効果が十分ではなかった。
特許文献8には、有機顔料を含む単層感光体の除電において、感光層の最大吸光度の半値幅以上の波長領域を含む範囲の光を照射することにより、除電を効率よく行う旨の記載がある。通常、実用的な有機顔料は可視域に吸収ピークが存在するため、特許文献8の技術では、残留電位上昇を抑制する十分な効果を獲得することは出来ない。
特許文献9では、除電波長における感光体の感度が、書き込み光における感光体の感度よりも高くなるような波長を選択して、除電光に用いることにより、残留電位低減、ゴースト発生の抑制が出来る旨の記載がある。この技術は、使用する感光体材料によって除電波長が異なることになり、除電波長の特定が出来ない。また、有機顔料は通常、可視域に吸収ピークが存在し、分光感度ピークもこれに伴って可視域に存在する。このため、特許文献9の技術では、500nm以下の波長による除電技術が生み出されない。
特許文献10には、電荷発生材料分散型(単層感光体)の感光体を用いた画像形成装置の除電において、感光体の分光吸収率の相対的に低い波長の光を照射する旨の記載がある。この技術は、単層感光体の繰り返し使用において、感光層バルクに発生する残留電荷を除去するために行われるものである。即ち、単層感光体の場合には、電荷発生材料がバルクに均一に分散されており、吸収率の高い波長においては、感光層の表面近傍で照射光は吸収される。単層感光体の高解像度化はこの現象を利用しており、書き込み光を感光層の吸収率の大きい波長を用いることによって、照射エネルギーを低減化すると共に、感光層表面近傍だけで光キャリア発生させる。このため、感光体表面に帯電される極性とは逆の極性の電荷の移動距離は小さくて済むことになり、電荷の移動距離を小さくすることで、クーロン反発による拡散を防いでいる。一方、バルク内部は照射光がほとんど届かないため、感光体表面に帯電される極性と同じ極性の電荷が、感光層バルクにトラップされて、残留電位となった場合にはこれをキャンセルすることが出来ない。このため、除電光においては、バルク深くまで透過する波長の光を用いて、バルクの深いところ(電極に近いところ、感光層の中央付近など)で、光キャリアを生成させることで、これをキャンセルするものである。
これに対し積層感光体の電荷発生層は、単層感光層とは異なり膜厚が非常に薄い。また、書き込み光に対する吸収率は最大吸収波長でも90%以下である(言い換えれば、書き込み光は電荷発生層を10%以上は透過してしまう)。このため、書き込み光の波長が異なっても、電荷発生は電荷発生層バルク全域で起こるという本質に変化はない。従って、積層感光体の場合には、特許文献10に記載された様な効果は起こらない。
特許文献11には、フタロシアニン化合物のソーレー帯に対する光照射を行ない、除電を行うことが記載されている。また同公報には、これを実現するために蛍光灯を除電光源とすることが記載されている。
更に、特許文献12には、フタロシアニン化合物を含有する感光体に対して、蛍光灯による除電を行うことが記載されている。
図1には、蛍光灯の光の分光発光スペクトルを示す。蛍光灯には幾つかの輝線が含まれているが、この他に500〜650nmにかけての大きな発光が存在する。光照射量(発光量)は、図1の面積に依存することになるから、感光体に照射される蛍光灯の光は、実質的には上記波長域(500〜650nm)の光がメインに照射されていることになる。
特許文献11及び12においては、680nmの赤色LED光による除電と蛍光灯照射による除電を比較している。図1のスペクトルから、両者の比較は680nmの赤色LED光による除電と、500〜650nmにかけての発光による除電が比較されていることになる。フタロシアニンのソーレー帯に相当する光はゼロではないから、ソーレー帯に光が照射されていることは事実であるにしても、それ以外の光の成分の方が大きく、ソーレー帯でない領域の吸収が大きいことになる。
このような状況の中で、上記プリンターや複写機はカラー化を含め、更なる装置の高画質化及び高耐久化が要求される。デジタル機における高画質化は2つの課題があり、1つは如何に静電潜像を微小ドットで均一に形成するかであり、もう1つは各種異常画像を如何に低減するかである。また、高耐久化に関しては、感光体の寿命を延ばすことが最も有効な方法である。
これらを解決するためのアプローチ方法は色々あると考えられるが、両者に共通して言えることは、これら画像形成装置に使用される感光体の静電疲労による劣化を如何に小さくするかと言える。具体的には、繰り返し使用時の残留電位(露光部電位)の上昇を如何に抑えるかということである。
残留電位の上昇に関する対応方法としては、ここまでの開発においては感光体の設計(処方、構成など)を工夫することにより行われてきた。しかしながら、感光体の静電疲労は感光体処方、あるいはプロセス条件によって大きく異なるものであり、感光体の開発側から考えると、プロセス条件ごとに対応を迫られる。このような状況の下で、プロセス条件から感光体の静電疲労に関する検討はほとんどなされていなかった。
特開昭60−88981号公報 特開昭62−87981号公報 特開昭61−36784号公報 特開昭62−38491号公報 特開平1−217490号公報 特開平1−274186号公報 特開平4−174489号公報 特許第3460285号公報 特開2002−287382号公報 特開2005−31110号公報 特開2004−45996号公報 特開2004−45997号公報
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高耐久で高精細な画像を形成するため、感光体の繰り返し使用における残留電位上昇を抑制し、高耐久で高精細な画像形成が可能な画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは感光体の静電疲労、特に残留電位の上昇に関して、プロセス条件がどの様に影響を与えるかに関して検討を行った。検討方法としては、以下の通りである。
画像形成装置における繰り返し使用において、感光体の静電特性以外の形状・物性に影響をなるべく与えないように、現像、転写およびクリーニング部材を外した状態で、帯電、書き込み、除電だけを印加する状態で、感光体の静電疲労試験を実施した。
(1)書き込み光による書き込み率を変化させ、その際の感光体通過電荷量を測定した。
(2)書き込みを行わず、除電光のみで表面電荷を消去して、感光体の通過電荷量を測定した。
この時、(1)、(2)の各種条件を行って、感光体の残留電位を評価することで、以下の知見を得た。
(1)感光体の残留電位上昇は、感光体の通過電荷量に依存する。書き込み率を変えた場合でも、通過電荷量で整理すると残留電位上昇量が一様に揃う。
(2)感光体の通過電荷量は、画像形成1サイクルにおける光照射量に依存する。書き込み、除電に依らず、光照射量(正確には感光体光吸収量)に依存する。
(3)ネガ・ポジ現像の場合には、光照射量のうち、大半は光除電により照射量が与えられる。
更に、除電工程の前に感光体に逆バイアスを印加出来るように、転写部材を取り付けて、上記と同じような実験を行った。除電前の感光体表面電位を測定できるようにし、逆バイアスを変化させて、除電前の感光体表面電位が、上記(1)〜(3)の実験における除電後の表面電位とほぼ同じになるような条件で逆バイアスを印加出来るようにした。
この状態で静電疲労試験を実施すると、感光体の残留電位上昇量が非常に小さくなり、書き込み率に依存した大きさになり、除電の影響は全く現れなくなった。
以上のことから、以下のことが言える。
(4)除電前に感光体表面電位を低下させておくと、残留電位上昇が起こりにくくなる。言い換えれば、除電突入時に感光体表面電位が低ければ、除電光の照射は、残留電位上昇に寄与しない。
(5)逆バイアスを印加し、除電前に感光体表面電位を低下させた場合でも、上記(1)と同じく、感光体通過電荷量で残留電位上昇量が整理できる。
(1)〜(5)から、残留電位上昇は感光体の通過電荷量に依存するが、そのほとんどが除電工程にて生成されており、除電工程を如何に制御するかが、残留電位上昇をコントロールする一つの鍵となる。
(1)に示す通過電荷量とは、画像形成1サイクルにおける感光体の単位表面積あたりの通過電荷量であり、光キャリア発生量に依存する。従って、画像形成条件のうち、帯電電位(感光体への印加電界強度)、露光量、露光面積、感光体の静電容量(膜厚)、キャリア発生効率等に依存することになる。しかしながら、ターゲットとする画像形成装置では、これら項目に関しては、それほど大きな変化を持たせることが出来ない。
例えば、帯電電位を大きく変化させることは以下の変化をもたらす。帯電電位を大きく上昇させる場合には、感光体へのハザードが大きくなる。大きく低下させる場合には、地肌ポテンシャル(感光体帯電電位−現像バイアス)が小さくなったり、現像ポテンシャル(現像バイアス−感光体露光部電位)が小さくなったりして、画像形成条件(特に現像条件)が非常に狭くなり、システムの余裕度が小さくなる。
露光量を大きく変化させることは以下の変化をもたらす。露光量を小さくした場合には、画像濃度が足りなくなったり、コントラストが取れない場合が存在する。一方、露光量を大きくした場合には、ドットが潰れるといった現象が起こる。
感光体の静電容量(膜厚)やキャリア発生効率は、感光体の材料そのものを大きく換えない限り、大きく変化しないものであるが、現状の高速・高耐久・高安定の画像形成装置に使用できる感光体用の主材料(電荷発生物質や電荷輸送物質)には限りがあって、これを全く違う材料に変更することは困難を極める。
従って、ターゲットとする画像形成装置に搭載される感光体の通過電荷量は、極端に大きく変化せず、光照射量に大きく依存することになる。
ところが、ここで言う光照射量は、画像形成1サイクル(帯電、書き込み、現像、転写、除電)における感光体への光照射量ということになる。画像形成には、定着工程が含まれるが、感光体と直接接しているわけではないので、ここでは説明から除く。ということは、感光体への光照射は、書き込み光と除電光の2種類からなる事が分かる。
一般に、現在のデジタル書き込みを行う画像形成装置は、ネガ・ポジ現像を使用している。これは、実際の原稿の書き込み率のほとんどが10%以下であることに起因しており、書き込み光源へのストレスを低減することを目的としている。しかしながら、感光体側から考えてみると、次の画像形成サイクルの前に、感光体の表面電位をキャンセル(平滑化)しておかないと、次の帯電時に影響が出るため、通常は光除電によって、次工程の帯電前に感光体の表面電位を出来る限り低減する。
上述のように、書き込み率が10%程度で使用されるわけであるから、感光体表面の90%以上は表面電荷が乗った状態で除電工程に突入することになる。ここでは、転写後に残った感光体表面電位に対して、除電光が照射され、光キャリアが発生することにより、残留電荷が消去される。即ち、画像形成工程1サイクルで発生する感光体通過電荷は、90%以上は除電工程で発生することになる。
ここまでは、ネガ・ポジ現像を用いた画像形成装置における通常の状態であり、連続して全面書き込みを行うような原稿ばかり出力するような場合を除けば、基本的には全てのネガ・ポジ現像を使用した画像形成装置に共通して言えることである。しかしながら上述のように、感光体の静電疲労に関するプロセス側からの解析は未だそれほど行われていないのが実情であった。
特開2000−105471号公報には、電荷輸送層が書き込み光に対して30%以上の透過率を有する感光体を、短波長書き込み光源を搭載した画像形成装置に使用する技術が開示されている。しかしながら、上述のように感光体の静電疲労に与える光の影響のうち、書き込み光源の影響は全体の高々10%以下程度(一般的には5%程度)に留まるものであり、除電光の影響の方が遙かに大きいものである。また、特開2000−105471号公報には除電光波長に関する特別な記載がないため、本発明のように除電光波長を特定化することによって、感光体の静電疲労を緩和する技術は生み出されない。
また、電荷輸送層の光の透過性に関しては、除電光の場合と書き込み光の場合で異なる。例えば、電荷輸送層が書き込み光の一部を吸収してしまうような場合、感光体の光感度そのものが劣化する課題が存在する。また、吸収した書き込み光により蛍光やリン光を生じるような場合、これを電荷発生層が吸収してキャリアを生成してしまう。このような場合には、光感度の低下は幾分防げるものの、蛍光やリン光には指向性がないため、画像そのものがにじんでしまうという致命的な欠点を有する。
一方、除電光の場合には、既に静電潜像の形成、トナー像の形成が完了した後であるから、次回帯電に備えて感光体表面電位を均一化することが主な狙いである。レイアウト上、光照射時間や光照射量は書き込み光の場合に比べて十分に長く設定できる。このため、除電光に対する光感度の低下はほとんど無視できる。また、蛍光やリン光を生じたとしても、結果的に感光体表面電位を均一化できれば、除電工程での主目的は達成される。これらの点が、書き込みに関する発明と決定的に異なる点である。
本発明者は、感光体の繰り返し使用における残留電位(露光部電位)の上昇に対して、プロセス条件による制御について検討を行ったところ、上述のように画像形成における除電工程が大きな影響を及ぼすことを明らかにした。更に、除電光の条件(主に光波長)に関して検討を重ねた。
除電光は、感光体(電荷発生層)が吸収を有する波長であれば、その機能を発現する。一般的には、感光体の長手方向にほぼ均一な光を照射するために、LEDアレイあるいは蛍光灯のような光源が用いられる。過去には、蛍光灯が主に用いられてきたが、電荷輸送層に吸収がある領域の光を含むため、以下の課題を有していた。
(1)電荷輸送層に光の一部が吸収されてしまうため、電荷発生層に十分な光が届かない場合が存在し、光量を非常に大きくしなければならない場合が存在した。
(2)電荷輸送物質が除電光を吸収した結果、電荷輸送物質が劣化し、感光体の静電特性に影響を与える場合が存在した。
このような課題を克服するため、一般的には赤色(600nm台の波長を有する)LEDが用いられてきた。この赤色LEDの波長では、通常用いられる電荷輸送物質には吸収が無く、上述の2つの課題をクリアでき、電荷発生物質の吸収も大きな材料が多く、効率よく除電が実施される。また、LEDのコストも比較的安価であることもこの部材を使用する大きなメリットである。
本発明者は、この赤色LED等の比較的長波長の光を照射して除電することが、感光体の繰り返し使用に最適なのか疑問を持ち、除電光の波長依存性について検討した。具体的には、単色のレーザー光や適当な光源とフィルターを組み合わせて、様々な波長を作り出し、感光体の繰り返し使用における残留電位上昇に関して検討を行った。
その結果、従来良好であると考えられてきた赤色の除電は、それよりも短波長の光を照射するよりも、残留電位を上昇させることを突き止めた。また、波長依存性を細かく見ていくと、500nmよりも短波長側の光で除電を行うことにより、残留電位の上昇を大幅に抑制できることを見いだした。この実験では、除電時の単位時間あたりの感光体通過電荷量を揃えて実験を行っているため、感光体(電荷発生物質)の分光吸収スペクトルのプロフィールによって、感光体への除電光照射量は変化するが、感光層の光吸収量は変化していない。従って、上述の結果は除電光の波長依存性の影響によるものであることが理解された。
上述のような知見を得て、本発明者は本発明を完成するに至った。
また、画像形成におけるプロセス側の制御技術(手段)によって、上述のように残留電位上昇を抑制することが出来ることが分かったが、使用する感光体の静電疲労に対する耐久性が悪いものであると、その効果が十分に発揮されない。
本発明者は、特定の電荷輸送層(電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有する)を使用することにより、これを用いた感光体の繰り返し使用における静電特性の劣化を大きく制御できることを見いだした。
前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層からなる積層感光層を有する静電潜像担持体における電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有し、かつ、除電光源に500nmより短波長の光源を使用ことによって、画像形成装置における感光体の繰り返し使用時における残留電位上昇を抑制することを見いだし、異常画像の少ない画像形成が安定して行えることを見いだし、上記問題点を解決できることを知見した。
本発明は、本発明者の前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
(1)静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、静電潜像担持体の残留電荷を光除電する除電手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記除電手段が500nmよりも短波長の光を照射する除電手段であると共に、前記静電潜像担持体が、支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを特徴とする画像形成装置。
(2)前記有機電荷発生物質が下記(I)式で表されるアゾ顔料であることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置。
(式中、Cp1,Cp2はカップラー残基を表す。R201,R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1,Cp2は下記(II)式で表され、
式中、R203は、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。R204,R205,R206,R207,R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。)
(3)前記アゾ顔料のCp1とCp2が互いに異なるものであることを特徴とする前記第(2)項に記載の画像形成装置。
(4)前記有機電荷発生物質がCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、該7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置。
(5)前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(6)前記保護層が除電光を30%以上透過することを特徴とする前記第(5)項に記載の画像形成装置。
(7)前記保護層が、比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料及び金属酸化物から選択される少なくともいずれかを含むことを特徴とする前記第(5)項又は第(6)項に記載の画像形成装置。
(8)前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成されることを特徴とする前記第(5)項又は第(6)項に記載の画像形成装置。
(9)前記保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)の少なくとも一種以上であることを特徴とする前記第(8)項に記載の画像形成装置。
{式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}
(10)前記保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)の少なくとも一種以上であることを特徴とする前記第(8)項又は第(9)項に記載の画像形成装置。
(式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
を表わす。)
(11)前記保護層の硬化手段が加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする前記第(8)項乃至第(10)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(12)前記潜像担持体において、支持体と電荷発生層の間に中間層が設けられ、該中間層が電荷ブロッキング層とモアレ防止層からなることを特徴とする前記第(1)項乃至第(11)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(13)前記電荷ブロッキング層が絶縁性材料からなり、その膜厚が2.0μm未満、0.3μm以上であることを特徴とする前記第(12)項に記載の画像形成装置。
(14)前記モアレ防止層が無機顔料とバインダー樹脂を含有し、両者の容積比が1/1乃至3/1の範囲であることを特徴とする前記第(12)項又は第(13)項に記載の画像形成装置。
(15)前記静電潜像形成手段に用いられる画像書き込み光の光源波長が、450nmよりも短波長の光源であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(14)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(16)少なくとも静電潜像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、及び除電手段を有する画像形成要素を複数備えたことを特徴とする前記第(1)項乃至第(15)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(17)静電潜像担持体と、静電潜像形成手段、現像手段、除電手段及びクリーニング手段から選択される1つ以上の手段とが一体となり、装置本体と着脱自在なプロセスカートリッジを搭載していることを特徴とする前記第(1)項乃至第(16)項のいずれかに記載の画像形成装置。
(18)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、該可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、静電潜像担持体の残留電荷を光除電する除電工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記除電工程が500nmよりも短波長の光を照射する除電工程であると共に、前記静電潜像担持体が、支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを特徴とする画像形成方法。
(19)前記静電潜像形成工程に用いられる画像書き込み光の光源波長が、450nmよりも短波長の光源であることを特徴とする前記第(18)項に記載の画像形成方法。
(20)少なくとも静電潜像形成工程、現像工程、転写工程、及び除電工程を有する画像形成工程を複数備えたことを特徴とする前記第(18)項又は第(19)項に記載の画像形成方法。
本発明者の検討に依れば、照射光を細かく分解していくと、短波長光を照射するほど残留電位の上昇を抑制でき、かつ長波長光(500nm以上の光)が混ざった場合には、長波長光が混ざった分に応じて残留電位上昇が観測された。従って、特許文献1に記載された方法では、高耐久化・高画質化を意識して、残留電位上昇を抑制する技術としては、まだ不十分である。
従って、本発明における除電光としての500nmよりも短波長の除電光とは、500nm以上の長波長側の光を含まない光であることを示している(以降、500nm未満の除電光と記す場合がある)。
500nm未満の除電光を用いることにより、感光体の繰り返し使用における残留電位上昇を抑制できる詳細なメカニズムは明らかになってはいない。現時点では、そのメカニズムを以下のように考えている。
図2には、有機材料(有機電荷発生物質)の光キャリア発生機構を示す。ここまでに知られている有機材料の光キャリア発生機構は、そのほとんどが図2に示すような2段階(光励起→中間体の生成→フリーキャリアの生成)からなる反応に基づく。この際、有機電荷発生物質は光吸収し、より高い励起状態に励起されるものの、中間体の生成はある一定のエネルギーレベルから起こる。この一定のエネルギーレベルが、最低励起一重項状態(S)である。基底状態(S)と最低励起一重項状態(S)の間よりも小さなエネルギー(長い波長の光)を照射された場合には、光キャリアはほとんど生成しない。
一方、基底状態(S)と最低励起一重項状態(S)の間よりも大きなエネルギー(短い波長の光)を照射された場合には、Sよりも高いエネルギー準位(S)に励起され、速やかにS状態まで緩和され、Sより中間体が形成される。この際、SとSのエネルギー差に相当するエネルギーは、熱的に緩和される(図では、余剰エネルギーと示している)。
このモデルは、有機系感光体の光キャリア発生効率の波長依存性がない結果から、支持されている。
電子写真感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇は、光キャリア発生により生成した正負の光キャリアが、感光体に印加されている電界の作用により、それぞれの逆極性のサイト(負帯電型の感光体の場合には、負帯電が感光体表面側である)に移動する。この際、この光キャリアがある種のトラップに落ち込み、残留電位を形成する。このトラップの深さは、室温により与えられる活性化エネルギーよりも大きいため、通常の使用では脱トラップできずに、残留電位として蓄積される。
ところで、本発明のように画像形成1サイクルにおいて生成する光キャリアの大半を、500nmよりも短波長の除電光により発生させる場合には、図2に示す余剰エネルギーの大きな状態が繰り返される。このため、この余剰エネルギーが、脱トラップに作用することにより、残留電位上昇を抑制できるものと考えている。
図3には、無機系感光体の光キャリア発生機構の模式図を示す。一般的には、無機材料(無機電荷発生物質)の場合にはバンドモデルが適用されるため、図3に示したような価電子帯と伝導帯からなるモデルが提出される。
光励起により、バンドギャップに相当するエネルギーを得た電子は、価電子帯で自由に動けることが出来、フリーキャリアとして存在する。この際、伝導帯の領域では、直接イオン化して、フリーキャリアになるのが特徴である。従って、図2のようにエネルギーギャップよりも大きなエネルギーを得た場合、キャリア発生効率(イオン解離効率)が向上するが、余剰エネルギーは生じない。この点が、有機系感光体の光キャリア発生機構と大きく異なる点である。
このような無機系のモデルは、無機系感光体のキャリア発生効率が励起光に対する波長依存性を示す結果からも支持されている。
上記の有機系感光体と無機系感光体の光キャリア発生機構の違いを考慮すると、本発明における除電光波長における効果の違いを考察できる。
即ち、上述のように除電工程における光キャリア発生において、有機系感光体の場合には除電光波長に対するキャリア発生量は変わらないが(量子効率の波長依存性がない)、キャリア1つが発生した際の余剰エネルギーが波長依存性を有する。つまり、除電光波長が短いほど、感光体内部に発生する余剰エネルギー量が多くなる。
一方、無機系感光体の場合、量子効率の波長依存性があるため、除電光波長が短いほど、キャリア発生量が多いが、余剰エネルギーは生み出さない(余剰エネルギーに相当するエネルギーは、キャリア発生効率の向上に振り分けられる)。
従って、本発明のように500nmよりも短波長の除電光を照射した場合に、有機系感光体では、従来のような可視光領域の除電を行う場合と比較して、キャリア発生量が変わらないものの、余剰エネルギーを多く獲得することが出来る。この余剰エネルギーを利用して、感光層内にトラップされた電荷を脱トラップする活性化エネルギーとして利用するものである。
一方、無機感光体の場合には、上述のようにキャリア発生量を増やすだけであって、余剰エネルギーは生み出さないから、感光層内にトラップされた電荷を脱トラップすることが出来ない。ここが感光層を構成する材料(キャリア発生機構)の違いに基づく、大きな相違点である。このため、無機系感光体で短波長の除電を行ったとしても、本発明のような効果を得ることが出来ず、仮に類似の構成があったとしても、その思想・目的・効果が本発明とは全く異なるものである。
このような効果を十分に発現させるためには、少なくとも感光体の電荷発生層に除電光が十分に到達する必要がある。このためには、電荷発生層の上層に設置される電荷輸送層が、500nm未満の除電光を十分に透過する必要がある。ここまで電子写真感光体の電荷輸送物質として有用に用いられてきた材料の中には、500nm未満の光を吸収してしまうような材料も含まれている。
このため、このような材料を使用した場合には本発明の効果が十分に得られない場合が存在する。また、500nm未満の光を十分に透過する材料であっても、電荷輸送物質としての能力が十分でないと、繰り返し使用における感光体の静電特性の安定性を確保することができない。
このようなことから、本発明に使用される電荷輸送物質に求められる特性としては、(1)電荷輸送層を形成した状態で500nm未満の除電光を十分に透過すること、具体的には除電光を30%以上透過することが望ましい、(2)有機電荷発生物質とのマッチング性がよいこと、具体的にはエネルギーマッチングが良好であり、電荷発生層で生成した光キャリアをスムーズに注入できることである、(3)感光体の繰り返し使用において材料としての安定性を示すこと、具体的には帯電手段で生成する酸化性ガス等に対する耐性があること、長期間の通電に対しても安定であること、等が挙げられる。
このような観点から材料を選択する必要があり、本発明者は電荷輸送層の物性値として、電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することで、上記の条件を満足することを見いだし、発明を完成するに至った。
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、高耐久で高画質な画像形成を行う事の出来る画像形成装置であり、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有する静電潜像担持体における電荷発生層に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有し、かつ除電光源に500nmよりも短波長の光源を用いた画像形成装置である。これにより、高耐久で異常画像の少ない安定した画像出力が可能な画像形成装置及び画像形成方法が提供できる。
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層感光層を有する静電潜像担持体における電荷発生層に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有する静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段、500nmよりも短波長の光源を有する除電手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
本発明の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程、500nmよりも短波長の光源を有する除電工程と、定着工程とを少なくとも含んでなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含んでなる。
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記除電工程は前記除電手段により行うことが出来、前記定着工程は前記定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、該静電潜像担持体に残留する電荷を除去する除電手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段とを少なくとも有し、前記除電手段が、少なくとも500nmよりも短波長側の光源を有する光源によって、該静電潜像担持体に除電光を照射する。
−静電潜像担持体−
前記静電潜像担持体としては、電荷発生層に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを必須要件とする以外は、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。前記支持体としては、導電性を有する導電性支持体が好ましい。
続いて、本発明に用いられる電子写真感光体について、図面を用いて詳しく説明する。
図4は、本発明に用いられる電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、支持体(31)上に、電荷発生物質として少なくとも有機電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層(37)とが、積層された構成をとっている。
図5は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、支持体(31)上に、中間層(39)と、電荷発生物質として少なくとも有機電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層(37)とが、積層された構成をとっている。
図6は、中間層(39)が電荷ブロッキング層(43)とモアレ防止層(45)から構成され、中間層上に電荷発生物質として少なくとも有機電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層(37)とが、積層された構成をとっている。
また、図7は、本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、支持体(31)上に、中間層(39)と電荷発生物質として少なくとも有機電荷発生物質を主成分とする電荷発生層(35)と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層(37)とが積層され、更に電荷輸送層(感光層)上に保護層(41)を設けた構成をとっている。
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
また、これらの中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行うことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここでいうアルミニウムとは、純アルミニウム系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS 1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。陽極酸化皮膜は各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものであるが、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行ったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体には最も適している。特に、反転現像(ネガ及びポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行われる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の範囲で処理が行われるが、これに限定するものではない。このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、また絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜を更に封孔処理することが好ましい。封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。これが支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は多段階の洗浄を行う。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれいな(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが好ましい。以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5〜15μm程度が好ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が充分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
次に、中間層39について述べる。中間層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶媒で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、中間層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
中でも、中間層に酸化チタンを含有する場合、本発明の効果を顕著にするものであり、最も有効に使用できる。また、この酸化チタンを含有する中間層が以降に示す電荷発生層と接触した状態で存在する場合には、最も効果が顕著になり、その感光体構成が最も適当である。
これらの中間層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の中間層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の中間層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
中間層39は、感光体の帯電時に電極側に誘起される逆極性の電荷の感光層への注入を防止する機能と、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込み時に生じるモアレを防止する機能の少なくとも2つの機能を有する。この機能を2つ以上の層に機能分離した機能分離型中間層は、本発明に用いられる感光体には有効な手段である。以下に、電荷ブロッキング層43とモアレ防止層45の機能分離型中間層について説明する。
電荷ブロッキング層43は、感光体帯電時に電極(導電性支持体31)に誘起される逆極性の電荷が、支持体から感光層に注入するのを防止する機能を有する層である。負帯電の場合には正孔注入防止、正帯電の場合には電子注入防止の機能を有する。電荷ブロッキング層としては、酸化アルミ層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層、ポリフォスファゼンからなる層、アミノシラン反応生成物からなる層、この他には絶縁性の結着樹脂からなる層、硬化性の結着樹脂からなる層等が挙げられる。中でも湿式塗工法で形成可能な絶縁性の結着樹脂あるいは硬化性の結着樹脂から構成される層が良好に使用できる。電荷ブロッキング層は、その上にモアレ防止層や感光層を積層するものであるから、これらを湿式塗工法で設ける場合には、これらの塗工溶媒により塗膜が侵されない材料あるいは構成からなることが肝要である。
使用できる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂例えば、活性水素(−OH基、−NH2基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物とイソシアネート基を複数個含有する化合物及び/又はエポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂等も使用できる。この場合活性水素を複数個含有する化合物としては、例えばポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂等があげられる。イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等とこれらのプレポリマー等があげられ、エポキシ基を複数有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等があげられる。
中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性の点などから、ポリアミドが最も良好に用いられる。
また、オイルフリーアルキッド樹脂とアミノ樹脂例えば、ブチル化メラミン樹脂等を熱重合させた熱硬化性樹脂、さらにまた、不飽和結合を有するポリウレタン、不飽和ポリエステル等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤との組合せ等の光硬化性樹脂も結着樹脂として使用できる。
また、整流性のある導電性高分子や、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂・化合物などを加えて、基体からの電荷注入を制抑するなどの機能を持たせても良い。
また、電荷ブロッキング層の膜厚は0.1μm以上2.0μm未満、好ましくは0.3μm以上2.0μm未満程度が適当である。電荷ブロッキング層が厚くなると、帯電と露光の繰返しによって、特に低温低湿で残留電位の上昇が著しく、また、膜厚が薄すぎるとブロッキング性の効果が小さくなる、また電荷ブロッキング層には、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進材等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
モアレ防止層45は、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を有する層である。基本的には、前記書き込み光の光散乱を起こす機能を有する。このような機能を発現するために、モアレ防止層は屈折率の大きな材料を有することが有効である。一般には、無機顔料とバインダー樹脂を含有し、無機顔料がバインダー樹脂に分散された構成からなる。特に、無機顔料の中でも白色の顔料が有効に使用され、例えば、酸化チタン、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどが良好に用いられる。中でも、隠蔽力の大きな酸化チタンが最も有効に使用出来る。
中間層が、電荷ブロッキング層とモアレ防止層から構成される場合においても、モアレ防止層に酸化チタンが含有される場合が最も本発明の効果が顕著に発現される。また、この酸化チタンを含有するモアレ防止層が電荷発生層と接触する構成にすることにより、その効果は更に顕著に高まるものであり、最も有効な感光体構成である。
また、機能分離型中間層を有する感光体では支持体31からの電荷注入を電荷ブロッキング層にて防止するものであるから、モアレ防止層においては少なくとも感光体表面に帯電される電荷とは同極性の電荷を移動できる機能を有することが残留電位防止の観点から好ましい。このため、例えば負帯電型感光体の場合、モアレ防止層には電子伝導性を付与することが望ましく、使用する無機顔料に電子伝導性を有するものを使用するか、導電性のものを使用することが望ましい。あるいは、モアレ防止層に電子伝導性の材料(例えば、アクセプター)などを使用することは本発明の効果を一層顕著なものにするものである。
バインダー樹脂としては電荷ブロッキング層と同様のものを使用できるが、モアレ防止層の上に感光層(電荷発生層35、電荷輸送層37)を積層することを考慮すると、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)の塗工溶媒に侵されないことが肝要である。
バインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂が良好に使用される。特に、アルキッド/メラミン樹脂の混合物が最も良好に使用される。この際、アルキッド/メラミン樹脂の混合比は、モアレ防止層の構造及び特性を決定する重要な因子である。両者の比(重量比)が5/5〜8/2の範囲が良好な混合比の範囲として挙げることが出来る。5/5よりもメラミン樹脂がリッチであると、熱硬化の際に体積収縮が大きくなり塗膜欠陥を生じやすくなったり、感光体の残留電位を大きくする方向にあり望ましくない。また、8/2よりもアルキッド樹脂がリッチであると、感光体の残留電位低減には効果があるものの、バルク抵抗が低くなりすぎて地汚れが悪くなる方向になり望ましくない。
モアレ防止層においては、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が重要な特性を決定する。このため、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が1/1乃至3/1の範囲であることが重要である。両者の容積比が1/1未満である場合には、モアレ防止能が低下するだけでなく、繰り返し使用における残留電位の上昇が大きくなる場合が存在する。一方、容積比が3/1を超える領域ではバインダー樹脂における結着能が劣るだけでなく、塗膜の表面性が悪化し、上層の感光層の成膜性に悪影響を与える場合がある。この影響は感光層が積層タイプで構成され、電荷発生層のような薄層を形成する場合に深刻な問題になり得るものである。また容積比が3/1を超える場合には、無機顔料表面をバインダー樹脂が覆い尽くせない場合が存在し、電荷発生物質と直接接触することで、熱キャリア生成の確率が大きくなり、地汚れに対して悪影響を与える場合がある。
更に、モアレ防止層には、平均粒径の異なる2種類の酸化チタンを用いることで、導電性基体に対する隠蔽力を向上させモアレを抑制することが可能となるとともに、異常画像の原因となるピンホールをなくすことができる。このためには、用いる2種の酸化チタンの平均粒径の比が一定の範囲内(0.2<D2/D1≦0.5)にあることが重要である。本発明で規定する範囲外の粒径比の場合、すなわち平均粒径の大きな酸化チタン(T1)の平均粒径(D1)に対する他方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)の比が小さすぎる場合(0.2≧D2/D1)は、酸化チタン表面での活性が増加し電子写真感光体としたときの静電的安定性が著しく損なわれるようになる。また、一方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する他方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が大きすぎる場合(D2/D1>0.5)は、導電性基体に対する隠蔽力が低下し、モアレや異常画像に対する抑制力が低下する。ここで言う平均粒径は、水系で強分散を行なったときに得られる粒度分布測定から得られる。
また、粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)の大きさが重要な因子であり、0.05μm<D2<0.20μmであることが重要である。0.05μm以下の場合には隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。一方、0.20μm以上の場合には、モアレ防止層の酸化チタンの充填率を低下させ、地汚れ抑制効果が十分に発揮出来ない。
また、2種の酸化チタンの混合比率(重量比)も重要な因子である。T2/(T1+T2)が0.2よりも小さい場合には、酸化チタンの充填率がそれほど大きくなく、地汚れ抑制効果が十分に発揮出来ない。一方、0.8よりも大きな場合には、隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。従って、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8であることが重要である。
また、モアレ防止層の膜厚は1〜10μm、好ましくは2〜5μmとするのが適当である。膜厚が1μm未満では効果の発現性が小さく、10μmを越えると残留電位の蓄積を生じるので望ましくない。
無機顔料は溶剤とバインダー樹脂と共に常法により、例えばボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散し、また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
次に、感光層について説明する。感光層は電荷発生物質として有機電荷発生物質を含有する電荷発生層35と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層37の積層構成で構成される。
電荷発生層35は、電荷発生物質としての有機電荷発生物質を主成分とする層である。有機電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。バインダー樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷発生物質としては、有機電荷発生物質を用いることができる。
有機電荷発生物質としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
中でも、下記(I)式で表されるアゾ顔料は有効に使用される。特に、アゾ顔料のCp1とCp2が互いに異なるものである非対称アゾ顔料は、キャリア発生効率が大きく、本発明の電荷発生物質として有効に使用できる。
式中、Cp1,Cp2はカップラー残基を表す。R201,R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1,Cp2は下記(II)式で表され、
式中、R203は、水素原子、メチル基、エチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基を表す。R204,R205,R206,R207,R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基などのハロゲン化アルキル基、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。
また、チタニルフタロシアニンも本発明ので電荷発生物質として有効に使用できる。中でも、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶、その中でも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、該7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶は、キャリア発生効率が大きく、本発明の電荷発生物質として有効に使用できる。
本発明の電子写真感光体に含有される有機電荷発生物質においては、電荷発生物質の粒子サイズをより細かくすることにより、その効果が発現されるものであり、平均粒子サイズは0.25μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。以下にその作製方法を示す。感光層に含有される電荷発生物質の粒子サイズをコントロールするための方法は、電荷発生物質を分散した後、0.25μmより大きい粗大粒子を取り除いてしまう方法である。
ここでいう平均粒子サイズとは、体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median径)として算出されたものである。しかしながら、この方法では微量の粗大粒子を検出できない場合があるため、より詳細に求めるには、電荷発生物質粉末、あるいは分散液を直接、電子顕微鏡にて観察し、その大きさを求めることが重要である。
分散液の更なる観察により、微小欠陥に関して検討した結果、上記現象は次のように理解された。通常、平均粒子サイズを測定するような方法においては、極端に大きな粒子が数%以上も存在するような場合には、その存在が検出できるものであるが、全体の1%以下程度のような微量になってくると、その測定は検出限界以下になってしまうものである。その結果として、平均粒子サイズの測定だけでは粗大粒子の存在が検出されずに、上述のような微小欠陥に関する解釈を困難にしていた。
図8及び図9に、分散条件を固定して分散時間だけを変更した2種類の分散液の状態を観察した写真を示す。同一条件における分散時間の短い分散液の写真を図8に示すが、分散時間の長い図9と比較して、粗大粒子が残っている様子が観測される。図8中の黒い粒が粗大粒子である。
この2種類の分散液の平均粒径並びに粒度分布を公知の方法に従って、市販の粒度分布測定装置(堀場製作所製:超遠心式自動粒度分布測定装置、CAPA700)により測定した。その結果を図10に示す。図10における「A」が図8に示す分散液に対応し、「B」が図9に示す分散液に対応する。両者を比較すると、粒度分布に関してはほとんど差が認められない。また、両者の平均粒径値は、「A」が0.29μm、「B」が0.28μmと求められ、測定誤差を加味した上では、両者に全くの差異が認められない。
従って、公知の平均粒径(粒子サイズ)の規定だけでは、微量な粗大粒子の残存を検出できずに、昨今の高解像度のネガ・ポジ現像には対応できていないことが理解される。この微量な粗大粒子の存在は、塗工液を顕微鏡レベルで観察することにより、初めて認識できたものである。
次に有機電荷発生物質を分散した後に、粗大粒子を取り除く方法について述べる。
即ち、出来る限り粒子を微細にした分散液を作製後、適当なフィルターで濾過してしまう方法である。分散液の作製に関しては一般的な方法が用いられ、有機電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル、超音波などを用いて分散することで得られるものである。この際、バインダー樹脂は感光体の静電特性などにより、また溶媒は顔料へのぬれ性、顔料の分散性などにより選択すればよい。
この方法では、残存する目視では観察できない(あるいは粒径測定では検出できない)微量な粗大粒子をも取り除くことができ、また粒度分布を揃えるという点からも非常に有効な手段である。具体的には、上述のように作製した分散液を有効孔径が5μm以下のフィルター、より好ましくは3μm以下のフィルターにて濾過する操作を行ない、分散液を完成させるというものである。この方法によっても、粒子サイズの小さな(0.25μm以下、好ましくは0.2μm以下)有機電荷発生物質のみを含む分散液を作製することができ、これを用いた感光体を画像形成装置に搭載使用することにより、本発明の効果をより一層顕著にするものである。
この際、濾過される分散液の粒子サイズが大きすぎたり、粒度分布が広すぎたりする場合には、濾過によるロスが大きくなったり、濾過の目詰まりを生じて濾過が不可能になったりする場合がある。このため、濾過前の分散液においては、平均粒子サイズが0.3μm以下で、その標準偏差が0.2μm以下に到達するまで分散を行った方が望ましい。平均粒子サイズが0.3μm以上である場合には濾過によるロスが大きくなり、標準偏差が0.2μm以上である場合には濾過時間が非常に長くなったりする不具合点を生じる場合がある。
本発明で使用する電荷発生物質は、高感度な特性を示す電荷発生物質の特徴である分子間水素結合力が極めて強い。このため、分散された顔料粒子の粒子間での相互作用も非常に強い。この結果、分散機などにより分散された電荷発生物質粒子が、希釈などにより再凝集する可能性が非常に大きく、上述のように分散終了後、特定サイズ以下のフィルターで濾過を行うことにより、このような凝集物を取り除くことができる。この際、分散液がチキソトロピーな状態にあるため、使用するフィルターの有効孔径よりも小さいなサイズの粒子まで除去される。または、構造粘性を示す液をフィルター処理によりニュートン性に近い状態に変えることもできる。このようにして、電荷発生物質の粗大粒子を取り除いてやることにより、本発明の効果を著しく向上させるものである。
分散液を濾過するフィルターに関しては、除去したい粗大粒子のサイズによって異なるものであるが、本発明者等の検討によれば、600dpi程度の解像度を必要とする電子写真装置で使用される感光体としては、最低でも3μm以上の粗大粒子の存在は画像に対して影響を及ぼす。したがって、有効孔径が5μm以下のフィルターを使用すべきである。より好ましくは3μm以下の有効孔径を有するフィルターを使用することである。この有効孔径に関しては、細かいほど粗大粒子の除去に効果があるものであるが、あまり細かすぎると、必要な顔料粒子そのものも濾過されてしまうため、適切なサイズが存在する。また、細かすぎた場合には、濾過に時間がかかる、フィルターが目詰まりを起こす、ポンプ等を使用して送液する場合には負荷がかかりすぎる等の問題を生じる。なお、ここで使用されるフィルターの材質は、当然のことながら濾過する分散液に使用される溶媒に対して耐性のあるものが使用される。
電荷輸送層37は、電荷輸送物質を主成分とする層であり、除電光に対して30%以上の透過率を有するものである。電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質としては、上記電荷輸送層の物性値(電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有する)を満足するものであれば、公知の材料のいかなるものも使用することが出来る。透過率に関しては、除電光に対して30%以上、好ましくは50%以上、更に望ましくは85%以上であることが望ましい。
電荷輸送層をこのような条件にするためには、除電光に対して適正な電荷輸送材料を選択して、電荷輸送層を形成することが重要である。上述する電荷輸送物質の中でも、トリアリールアミン骨格を有する電荷輸送物質は、480nm以下の除電光を透過しやすく、かつ移動度も大きいため、本発明の感光体に使用する電荷輸送物質としては好適である。
また、トリアリールアミン骨格を有する電荷輸送物質の中でも、下記(III)式で表される電荷輸送物質は特に有効に使用される。
(式中、R301、R303及びR304は水素原子、アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、メチレンジオキシ基、無置換のアルキル基、ハロゲン原子又は置換もしくは無置換のアリール基を、R302は水素原子、アルコキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲンを表わす。またk、l、m及びnは1、2、3又は4の整数であり、各々が2、3又は4の整数の時は前記R301、R302、R303及びR304は同一でも異なっていてもよい。)
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましいものである。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
感光層が単層構成の場合や、電荷輸送層上に電荷発生層を形成する場合には問題にならないが、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する感光層の場合、適正な電荷輸送物質を選定しないと除電光が電荷発生層に十分に届かずに、除電作用が明確には働かない場合が存在する。また、電荷輸送物質が除電光を吸収することにより、劣化しやすくなり、逆に残留電位上昇を生み出す場合が存在する。このため、上記構成の場合には、電荷輸送層の除電光に対する透過率が30%以上、好ましくは50%以上、更に望ましくは85%以上であることが望ましい。
このような透過率は以下のように測定される。即ち、感光体に使用する電荷輸送層を単独で形成し、これを市販の分光光度計により分光吸収スペクトルを測定する。スペクトルから画像形成装置に使用する除電光の波長における透過率を求めることにより得られる。
本発明において電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。近年、日常的にコンピュータの使用が行なわれるようになり、プリンタによる高速出力とともに、装置の小型化も望まれている。したがって、保護層を設け、耐久性を向上させることによって、本発明の高感度で異常欠陥のない感光体を有用に用いることができる。
本発明に用いられる有効な保護層としては、大別すると、2つのタイプが挙げられる。1つは、バインダー樹脂中にフィラーを添加した構成である。いま1つは、架橋型バインダーを用いたものである。
先に、保護層中にフィラーを添加する構成について説明する。
保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。中でも、ポリカーボネートもしくはポリアリレートが最も良好に使用できる。
保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、シリカ等の無機性フィラー、また有機性フィラーを分散したもの等を添加することができる。
また、感光体の保護層に用いられるフィラー材料のうち有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。特に、フィラーの硬度の点からは、この中でも無機材料を用いることが有利である。特に、無機顔料や金属酸化物が好ましく、シリカ、酸化チタン、アルミナが有効に使用できる。
保護層中のフィラー濃度は使用するフィラー種により、また感光体を使用する電子写真プロセス条件によっても異なるが、保護層の最表層側において全固形分に対するフィラーの比で5重量%以上、好ましくは10重量%以上、50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度が良好である。また、使用するフィラーの体積平均粒径は、0.1μm〜2μmの範囲が良好に使用され、好ましくは0.3μm〜1μmの範囲である。この場合、平均粒径が小さすぎると耐摩耗性が充分に発揮されず、大きすぎると塗膜の表面性が悪くなったり、塗膜そのものが形成できなかったりするからである。
なお、本発明におけるフィラーの平均粒径とは、特別な記載のない限り体積平均粒径であり、超遠心式自動粒度分布測定装置:CAPA−700(堀場製作所製)により求めたものである。この際、累積分布の50%に相当する粒子径(Median径)として算出されたものである。また、同時に測定される各々の粒子の標準偏差が1μm以下であることが重要である。これ以上の標準偏差の値である場合には、粒度分布が広すぎて、本発明の効果が顕著に得られなくなってしまう場合がある。
また、本発明で使用するフィラーのpHも解像度やフィラーの分散性に大きく影響する。その理由の一つとしては、フィラー、特に金属酸化物は製造時に塩酸等が残存することが考えられる。その残存量が多い場合には、画像ボケの発生は避けられず、またそれは残存量によってはフィラーの分散性にも影響を及ぼす場合がある。
もう一つの理由としては、フィラー、特に金属酸化物の表面における帯電性の違いによるものである。通常、液体中に分散している粒子はプラスあるいはマイナスに帯電しており、それを電気的に中性に保とうとして反対の電荷を持つイオンが集まり、そこで電気二重層が形成されることによって粒子の分散状態は安定化している。粒子から遠ざかるに従いその電位(ゼータ電位)は徐々に低くなり、粒子から充分に離れて電気的に中性である領域の電位はゼロとなる。したがって、ゼータ電位の絶対値の増加によって粒子の反発力が高くなることによって安定性は高くなり、ゼロに近づくに従い凝集しやすく不安定になる。一方、系のpH値によってゼータ電位は大きく変動し、あるpH値において電位はゼロとなり等電点を持つことになる。したがって、系の等電点からできるだけ遠ざけて、ゼータ電位の絶対値を高めることによって分散系の安定化が図られることになる。
本発明の構成においては、フィラーとしては前述の等電点におけるpHが、少なくとも5以上を示すものが画像ボケ抑制の点から好ましく、より塩基性を示すフィラーであるほどその効果が高くなる傾向があることが確認された。等電点におけるpHが高い塩基性を示すフィラーは、系が酸性であったほうがゼータ電位はより高くなることにより、分散性及びその安定性は向上することになる。
ここで、本発明におけるフィラーのpHは、ゼータ電位から等電点におけるpH値を記載した。この際、ゼータ電位の測定は、大塚電子(株)製レーザーゼータ電位計にて測定した。
更に、画像ボケが発生しにくいフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラー(比抵抗が1010Ω・cm以上)が好ましく、フィラーのpHが5以上を示すものやフィラーの誘電率が5以上を示すものが特に有効に使用できる。また、pHが5以上のフィラーあるいは誘電率が5以上のフィラーを単独で使用することはもちろん、pHが5以下のフィラーとpHが5以上のフィラーとを2種類以上を混合したり、誘電率が5以下のフィラーと誘電率が5以上のフィラーとを2種類以上混合したりして用いることも可能である。また、これらのフィラーの中でも高い絶縁性を有し、熱安定性が高い上に、耐摩耗性が高い六方細密構造であるα型アルミナは、画像ボケの抑制や耐摩耗性の向上の点から特に有用である。
本発明において使用するフィラーの比抵抗は以下のように定義される。フィラーのような粉体は、充填率によりその比抵抗値が異なるので、一定の条件下で測定する必要がある。本発明においては、特開平5−113688号公報(図1)に示された測定装置と同様の構成の装置を用いて、フィラーの比抵抗値を測定し、この値を用いた。測定装置において、電極面積は4.0cm2である。測定前に片側の電極に4kgの荷重を1分間かけ、電極間距離が4mmになるように試料量を調節する。測定の際は、上部電極の重量(1kg)の荷重状態で測定を行ない、印加電圧は100Vにて測定する。106Ω・cm以上の領域は、HIGH RESISTANCE METER(横河ヒューレットパッカード)、それ以下の領域についてはデジタルマルチメーター(フルーク)により測定した。これにより得られた比抵抗値を本発明でいうところの比抵抗値と定義するものである。
フィラーの誘電率は以下のように測定した。上述のような比抵抗の測定と同様なセルを用い、荷重をかけた後に、静電容量を測定し、これより誘電率を求めた。静電容量の測定は、誘電体損測定器(安藤電気)を使用した。
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al23、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。これらフィラー材料は単独もしくは2種類以上混合して用いられる。フィラーの表面処理量に関しては、上述のようにフィラー量に対する使用する表面処理剤の重量比で定義される。
これらフィラー材料は、適当な分散機を用いることにより分散できる。また、保護層の透過率の点から使用するフィラーは一次粒子レベルまで分散され、凝集体が少ないほうが好ましい。
また、保護層には残留電位低減、応答性改良のため、電荷輸送物質を含有しても良い。電荷輸送物質は、電荷輸送層の説明のところに記載した材料や公知の電荷輸送物質を用いることができる。電荷輸送物質として、低分子電荷輸送物質を用いる場合には、保護層中における濃度傾斜を設けても構わない。耐摩耗性向上のため、表面側を低濃度にすることは有効な手段である。ここでいう濃度とは、保護層を構成する全材料の総重量に対する低分子電荷輸送物質の重量の比を表わし、濃度傾斜とは上記重量比において表面側において濃度が低くなるような傾斜を設けることを示す。また、高分子電荷輸送物質を用いることは、感光体の耐久性を高める点で非常に有利である。
この他、保護層のバインダー樹脂としては公知の高分子電荷輸送物質も用いることが出来る。これを用いた場合の効果としては、耐摩耗性の向上、高速電荷輸送の効果を得ることが出来る。
このような保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。尚、上述した保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
次に、保護層のバインダー構成として、架橋構造からなる保護層について説明する(以下、架橋型保護層と呼ぶ)。
架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
また、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、保護層としての機能を十分に発現することが可能となる。電荷輸送能を有するモノマーとしては、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。
このような網目構造を有する保護層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する保護層を形成しても良い。
架橋型保護層の中でも下記のような特定の構成からなる保護層は、特に有効に使用される。
特定の架橋型保護層とは、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成される保護層である。3官能以上のラジカル重合性モノマーを硬化した架橋構造を有するため3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度且つ高弾性な表面層が得られ、かつ均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。この様に感光体表面の架橋密度すなわち単位体積あたりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、硬化反応において瞬時に多数の結合を形成させるため体積収縮による内部応力が発生する。この内部応力は架橋型保護層の膜厚が厚くなるほど増加するため保護層全層を硬化させると、クラックや膜剥がれが発生しやすくなる。この現象は初期的に現れなくても、電子写真プロセス上で繰り返し使用され帯電、現像、転写、クリーニングのハザード及び熱変動の影響を受けることにより、経時で発生しやすくなることもある。
この問題を解決する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーを多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層を柔らかくする方向性が挙げられるが、いずれも架橋層の架橋密度が希薄となり、飛躍的な耐摩耗性が達成されない。これに対し、本発明の感光体は、電荷輸送層上に3次元の網目構造が発達した架橋密度の高い架橋型保護層を好ましくは1μm以上、10μm以下の膜厚で設けることで、上記のクラックや膜剥がれが発生せず、且つ非常に高い耐摩耗性が達成される。かかる架橋型保護層の膜厚を2μm以上、8μm以下の膜厚にすることにより、さらに上記問題に対する余裕度が向上することに加え、更なる耐摩耗性向上に繋がる高架橋密度化の材料選択が可能となる。
本発明の感光体がクラックや膜剥がれを抑制できる理由としては、架橋型保護層を薄膜化できるため内部応力が大きくならないこと、下層に感光層もしくは電荷輸送層を有するため表面の架橋型保護層の内部応力を緩和できることなどによる。このため架橋型保護層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、この時生ずる、高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との不相溶が原因の傷やトナーフィルミングも起こりにくい。さらに、保護層全層にわたる厚膜を光エネルギー照射により硬化する場合、電荷輸送性構造による吸収から内部への光透過が制限され、硬化反応が十分に進行しない現象が起こることがある。本発明の架橋型保護層においては、好ましくは10μm以下の薄膜とすることにより内部まで均一に硬化反応が進行し、表面と同様に内部でも高い耐摩耗性が維持される。また、本発明の架橋型保護層の形成においては、上記3官能性ラジカル重合性モノマーに加え、さらに1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定され架橋密度はより高まるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂構造の歪みが非常に大きくなり、架橋型保護層の内部応力が高まる原因となる。
更に、本発明の感光体は良好な電気的特性を有し、このため繰り返し安定性に優れており高耐久化並びに高安定化が実現される。これは架橋型保護層の構成材料として1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。上記のように官能基を有しない電荷輸送物質は析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における電気的特性の劣化が著しい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすい。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字細り等の画像として現れる。さらに、本発明の感光体においては、下層の電荷輸送層として従来感光体の電荷トラップの少ない高移動度な設計が適応可能で、架橋型保護層の電気的副作用を最小限に抑えることができる。
更に、本発明の上記架橋型保護層形成において、架橋型保護層が有機溶剤に対し不溶性にすることにより、特にその飛躍的な耐摩耗性が発揮される。本発明の架橋型保護層は電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化することにより形成され、層全体としては3次元の網目構造が発達し高い架橋密度を有するが、上記成分以外の含有物(例えば、1または2官能モノマー、高分子バインダー、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤などの添加剤及び下層からの溶解混入成分)や硬化条件により、局部的に架橋密度が希薄になったり、高密度に架橋した微小な硬化物の集合体として形成されることがある。このような架橋型保護層は、硬化物間の結合力は弱く有機溶剤に対し溶解性を示し、且つ電子写真プロセス中で繰り返し使用されるなかで、局部的な摩耗や微小な硬化物単位での脱離が発生しやすくなる。本発明のように架橋型保護層を有機溶剤に対し不溶性にせしめることにより、本来の3次元の網目構造が発達し高い架橋度を有することに加え、連鎖反応が広い範囲で進行し硬化物が高分子量化するため、飛躍的な耐摩耗性の向上が達成される。
次に、本発明の架橋型保護層塗布液の構成材料について説明する。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=CH−X1− ・・・・式10
(ただし、式10中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表す。)
これらの官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表される官能基が挙げられる。
CH2=C(Y)−X2− ・・・・式11
(ただし、式11中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X2は上記式10のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
これらの官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX、X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋型保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋型保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下する傾向が出てくるため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、架橋型保護層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋型保護層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では架橋型保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成にくくなる傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の架橋型保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の架橋型保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つ1個のラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高い効果を有し、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
{式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。
1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わす。本発明においては該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基を含むものであり、以下の基が挙げられる。
該縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
該非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)
(式中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい。)
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
で表わされ、R5は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン2価変性基が挙げられる。
また、本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
(式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、架橋型保護層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋型保護層に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋型保護層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮しにくい傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本発明の感光体の架橋型保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
本発明の電子写真感光体を構成する架橋型保護層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型保護層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋型保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下であればより好ましい。
また、本発明の架橋型保護層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの硬化反応を効率よく進行させるために架橋型保護層塗布液中に重合開始剤を含有させても良い。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
更に、本発明の架橋型保護層形成用塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
本発明の架橋型保護層は、少なくとも上記の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を前述の電荷輸送層上に塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
本発明においては、かかる架橋型保護層塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋型保護層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線等がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行われる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に硬化反応が終了しない傾向がある。170℃を超える高温では硬化反応が不均一に進行し架橋型保護層中に大きな歪みや多数の未反応残基、反応停止末端が発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。光のエネルギーとしては主に紫外光領域に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋型保護層表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生ずる。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
本発明の架橋型保護層の膜厚は、好ましくは1μm以上、10μm以下、さらに好ましくは2μm以上、8μm以下である。10μmより厚い場合、前述のようにクラックや膜剥がれが発生しやすくなり、8μm以下ではその余裕度がさらに向上するため架橋密度を高くすることが可能で、さらに耐摩耗性を高める材料選択や硬化条件の設定が可能となる。一方、ラジカル重合反応は酸素阻害を受けやすく、すなわち大気に接した表面では酸素によるラジカルトラップの影響で架橋が進まなかったり、不均一になりやすい。この影響が顕著に現れるのは表層1μm未満の場合で、この膜厚以下の架橋型保護層は耐摩耗性の低下や不均一な摩耗が起こりやすい。また、架橋型保護層塗工時において下層の電荷輸送層成分の混入が生じ、特に、架橋型保護層の塗布膜厚が薄いと層全体に混入物が拡がり、硬化反応の阻害や架橋密度の低下をもたらす。これらの理由から、本発明の架橋型保護層は1μm以上の膜厚で良好な耐摩耗性、耐傷性を有するが、繰り返しの使用において局部的に下層の電荷輸送層まで削れた部分できるとその部分の摩耗が増加し、帯電性や感度変動から中間調画像の濃度むらが発生しやすい。従って、より長寿命、高画質化のためには架橋型保護層の膜厚を2μm以上にすることが望ましい。
本発明の電子写真感光体の電荷ブロッキング層、モアレ防止層、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)、架橋型保護層を順次積層した構成において、最表面の架橋型保護層が有機溶剤に対し不溶性である場合、飛躍的な耐摩耗性、耐傷性が達成されることを特徴としている。この有機溶剤に対する溶解性を試験する方法としては、感光体表面層上に高分子物質に対する溶解性の高い有機溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等を1滴滴下し、自然乾燥後に感光体表面形状の変化を実体顕微鏡で観察することで判定できる。溶解性が高い感光体は液滴の中心部分が凹状になり周囲が逆に盛り上がる現象、電荷輸送物質が析出し結晶化による白濁やくもり生ずる現象、表面が膨潤しその後収縮することで皺が発生する現象などの変化がみられる。それに対し、不溶性の感光体は上記のような現象がみられず、滴下前と全く変化が現れない。
本発明の構成において、架橋型保護層を有機溶剤に対し不溶性にするには、(1)架橋型保護層塗工液の組成物、それらの含有割合の調整、(2)架橋型保護層塗工液の希釈溶媒、固形分濃度の調整、(3)架橋型保護層の塗工方法の選択、(4)架橋型保護層の硬化条件の制御、(5)下層の電荷輸送層の難溶解性化など、これらをコントロールすることが重要であるが、一つの因子で達成される訳ではない。
架橋型保護層塗工液の組成物としては、前述した電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー及び1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物以外に、ラジカル重合性官能基を有しないバインダー樹脂、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤を多量に含有させると、架橋密度の低下、反応により生じた硬化物と上記添加物との相分離が生じ、有機溶剤に対し可溶性となる傾向が高い。具体的には塗工液の総固形分に対し上記総含有量を20重量%以下に抑えることが重要である。また、架橋密度を希薄にさせないために、1官能または2官能のラジカル重合性モノマー、反応性オリゴマー、反応性ポリマーにおいても、総含有量を3官能ラジカル重合性モノマーに対し20重量%以下とすることが望ましい。さらに、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を多量に含有させると、嵩高い構造体が複数の結合により架橋構造中に固定されるため歪みを生じやすく、微小な硬化物の集合体となりやすい。このことが原因で有機溶剤に対し可溶性となることがある。化合物構造によって異なるが、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の含有量は1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物に対し10重量%以下にすることが好ましい。
架橋型保護層塗工液の希釈溶媒に関しては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす。このため有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶媒、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける。具体的には、10〜50重量%の範囲で用いることが望ましい。架橋型保護層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶媒含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、感光層(もしくは電荷輸送層)と架橋型保護層の間に、架橋型保護層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
架橋型保護層の硬化条件としては、加熱または光照射のエネルギーが低いと硬化が完全に終了せず、有機溶剤に対し溶解性があがる。逆に非常に高いエネルギーにより硬化させた場合、硬化反応が不均一となり未架橋部やラジカル停止部の増加や微小な硬化物の集合体となりやすい。このため有機溶剤に対し溶解性となることがある。有機溶剤に対し不溶性化するには、熱硬化の条件としては100〜170℃、10分〜3時間が好ましく、UV光照射による硬化条件としては50〜1000mW/cm2、5秒〜5分で且つ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
本発明の電子写真感光体を構成する架橋型保護層を有機溶剤に対し不溶性にする手法について例示すると、例えば、塗工液として、3つのアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一つのアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3〜3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20重量%添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。例えば、架橋型保護層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、中間層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、自然乾燥又は比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射あるいは加熱して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度は50mW/cm2以上、1000mW/cm2以下、時間としては5秒から5分程度が好ましく、ドラム温度は50℃を越えないように制御する。
熱硬化の場合、加熱温度は100〜170℃が好ましく、例えば加熱手段として送風型オーブンを用い、加熱温度を150℃に設定した場合、加熱時間は20分〜3時間である。
硬化終了後は、さらに残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
また、以上の様に記述した、フィラーを含有した保護層、架橋型保護層の他に真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
上述のように、感光層上に保護層を形成する場合、適正な保護層を選定しないと除電光が感光層に十分に届かずに、除電作用が明確には働かない場合が存在する。また、保護層が除電光を吸収することにより、劣化しやすくなり、逆に残留電位上昇を生み出す場合が存在する。従って、上述したいずれの保護層においても、除電光に対する透過率が30%以上、好ましくは50%以上、更に望ましくは85%以上であることが望ましい。
保護層の透過率は電荷輸送層と同様な方法で測定される。即ち、感光体に使用する保護層を単独で形成し、これを市販の分光光度計により分光吸収スペクトルを測定する。スペクトルから画像形成装置に使用する除電光の波長における透過率を求めることにより得られる。
また、電荷発生層と電荷輸送層の順に構成される感光層上に保護層を設け、感光体の表面側から除電光を照射する場合には、除電光は保護層と電荷輸送層を通って電荷発生層に照射されることになる。従って、実質的には電荷輸送層と保護層を積層した形の透過率が重要になってくる。この場合には、電荷輸送層と保護層を積層した状態で、除電光に対する透過率が30%以上、好ましくは50%以上、更に望ましくは85%以上であることが望ましい。
この様な場合に透過率は、電荷輸送層と保護層を積層した状態の塗膜を上述のように分光吸収スペクトルを測定することにより求めることが出来る。
上述したように、感光体の表面に保護層を設けることは、各々の感光体の耐久性(耐摩耗性)を高めるだけでなく、後述のようなタンデム型フルカラー画像形成装置中で使用される場合には、モノクロ画像形成装置にはない新たな効果をも生み出すものである。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、保護層、電荷輸送層、電荷発生層、電荷ブロッキング層、モアレ防止層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
フルカラーの画像の場合、様々な形態の画像が入力されるが、逆に定型的な画像も入力される場合がある。例えば、日本語の文書等における検印の存在などである。検印のようなものは通常、画像領域の端のほうに位置され、また使用される色も限定される。ランダムな画像が常に書き込まれているような状態においては、画像形成要素中の感光体には、平均的に画像書き込み、現像、転写が行なわれることになるが、上述のように特定の部分に数多くの画像形成が繰り返されたり、特定の画像形成要素ばかり使用された場合には、その耐久性のバランスを欠くことにつながる。このような状態で表面の耐久性(物理的・化学的・機械的)の小さな感光体が使用された場合には、この差が顕著になり、画像上の問題になりやすい。一方、感光体を高耐久化した場合には、このような局所的な変化量が小さく、結果的に画像上の欠陥として現われにくくなるため、高耐久化を実現すると共に、出力画像の安定性をも増すことになり、非常に有効である。
−静電潜像形成手段−
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器(感光体表面と帯電器との間に100μm以下の空隙を有する近接方式の非接触帯電器を含む)、などが挙げられる。
前記帯電器により静電潜像担持体に印加される電界強度としては、20〜60V/μmが好ましく、30〜50V/μmがより好ましい。感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるが、電界強度が高すぎると感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着等の問題が発生する場合がある。
なお、前記電界強度は、下記数式(1)で表される。
<数式(1)>
電界強度(V/μm)=SV/G
ただし、前記数式(1)中、SVは、現像位置における静電潜像担持体の未露光部における表面電位の絶対値(V)を表す。Gは、少なくとも感光層(電荷発生層及び電荷輸送層)を含む感光層の膜厚(μm)を表す。
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。前記露光器の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
前記露光器の光源としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保できる光源が使用される。
使用する光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には2400dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「2400dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
また、露光器の光源波長として、450nmよりも短波長の光源を用いることにより、より精細な静電潜像が形成されるため、本発明においては有効に使用される。このような波長範囲にレーザー発振させる技術としては第2高調波発生(SHG)を用いてレーザー光の波長を2分の1にする方法や、ワイドギャップ半導体を用いるものが挙げられる。近年では、400〜410nmの波長領域にレーザー発振するLDも開発され、これを用いた光学系が開発されており、本発明にも有益に用いることができる。現在の書き込み光の使用できる波長下限値は、電荷輸送層や保護層を構成する材料によって異なるが、概ね350nm程度である。新たな材料、レーザーの開発によってこの下限値は短波長化するものである。
−現像手段−
前記現像は、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成することにより行うことができる。前記トナーは、感光体の帯電極性と同極性のトナーを用いられ、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
−転写手段−
前記転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段であるが、感光体表面から記録媒体に可視像を直接転写する方法と、中間転写体を用い、該中間転写体上に可視像を一次転写した後、該可視像を前記記録媒体上に二次転写する方法がある。いずれの態様も良好に使用することができるが、高画質化に際して転写による悪影響が大きいような場合には、転写回数が少ない前者(直接転写)の方法が好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。なお、転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写手段の中から適宜選択することができ、例えば、記録媒体の搬送も同時に行うことのできる転写搬送ベルト等が好適に挙げられる。
前記転写手段(前記第一次転写手段、前記第二次転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写帯電器を少なくとも有するのが好ましい。前記転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記転写帯電器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
また、転写帯電器は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
前述の通り、転写後の感光体表面電位(除電部に突入する差異の表面電位)によって、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量が大きく異なる。これが大きいほど、繰り返し使用における感光体の静電疲労に大きな影響を及ぼす。
この通過電荷量とは、感光体の膜厚方向を流れる電荷量に相当する。感光体の画像形成装置中の動作として、メイン帯電器により所望の帯電電位に帯電され(ほとんどの場合負帯電される)、原稿に応じた入力信号に基づき光書き込みが行われる。この際、書き込みが行われた部分は光キャリアが発生し、表面電荷を中和する(電位減衰する)。この時、光キャリア発生量に依存した電荷量が感光体膜厚方向に流れる。一方、光書き込みが行われない領域(非書き込み部)は、現像工程及び転写工程を経て、除電工程に進む(必要に応じて、その前にクリーニング工程が施される)。ここで、感光体の表面電位がメイン帯電により施された電位に近い状態(暗減衰分は除く)であると、光書き込みが行われた領域とほぼ同じ量の電荷量が感光体膜厚方向に流れることになる。一般的に、現在の原稿は書き込み率が低いため、この方式であると、繰り返し使用における感光体の通過電荷量は除電工程で流れる電流がほとんどと言うことになる(書き込み率が10%であるとすると、除電工程で流れる電流は、全体の9割を占めることになる)。
この通過電荷は、感光体を構成する材料の劣化を引き起こす等、感光体静電特性に大きく影響を及ぼす。その結果、通過電荷量に依存して、特に感光体の残留電位を上昇させる。感光体の残留電位が上昇すると、本発明で使用されるネガ及びポジ現像では、画像濃度が低下することになり、大きな問題となる。従って、画像形成装置内での感光体の長寿命化(高耐久化)を狙うためには、如何に感光体の通過電荷量を小さくするかという課題が存在する。
これに対して、光除電を行わないという考え方もあるが、メイン帯電器の帯電器能力が大きくないと、帯電の安定化が図れず、残像のような問題を生じる場合がある。感光体の通過電荷は、感光体表面に帯電された電位(これにより生じた電界)により、光照射が行われることにより、発生した光キャリアが移動することにより生じる。従って、感光体表面電位を光以外の手段で減衰させることが出来れば、感光体1回転(画像形成1サイクル)あたりの通過電荷量を低減することができる。
このためには、転写工程において転写バイアスを調整することにより、感光体通過電荷量を調整することが有効である。即ち、メイン帯電により帯電され、書き込みが行われない非書き込み部は、暗減衰量を除き、帯電された電位に近い状態で転写工程に突入する。この際、メイン帯電器により帯電された極性側の絶対値として100V以下まで低減することにより、引き続く除電工程に突入しても光キャリア発生がほとんど行われず、通過電荷が生じない。この値は、0Vより近いほど好ましい。
更には、転写バイアスの調整により、メイン帯電により施される帯電極性とは逆極性に感光体表面電位が帯電するように転写バイアスを印加させることにより、光キャリアが絶対に発生しないため、より望ましい。但し、逆極性にまで帯電するような転写条件では、場合により転写チリを多く発生させたり、次の画像形成プロセス(サイクル)のメイン帯電が追いつかない場合が出てくる。その場合には、残像のような不具合が発生する場合があるため、逆極性の絶対値として100V以下であることが好ましい。
以上のような制御を加えることは、本発明における効果を顕著なものとして、有効に使用できるものである。
−定着手段−
前記定着は、記録媒体に転写された可視像を、定着装置を用いて定着され、各色のトナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
前記定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。前記加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組み合わせ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組み合わせ、などが挙げられる。前記加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。なお、本発明においては、目的に応じて、前記定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
−除電手段−
前記除電手段としては、500nm未満(好ましくは480nm未満、より好ましくは450nm未満)の波長を有し、前記静電潜像担持体に対し除電を行うことが出来れば良く、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。
半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の光源には、500nm未満に発振波長を有する半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等、あるいは蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ等と発光が500nm未満に制限できるような適当な光学フィルターと組み合わせたもの等を用いることができる。前記光学フィルターとは、所望の波長域の光(500nm未満)のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
このような波長範囲にレーザー発振させる技術としてはいくつかの手法が挙げられる。一つは、非線形光学材料を利用し、第2高調波発生(SHG)を用いてレーザー光の波長を2分の1にするものである(例えば、特開平9−275242号公報、特開平9−189930号公報、特開平5−313033号公報等参照)。この系は、一次光源として、既に技術が確立し高出力可能なGaAs系LDやYAGレーザーを使用することができるため、長寿命化や大出力化が可能である。もう一つは、ワイドギャップ半導体を用いるもので、SHG利用のデバイスと比べ、装置の小型化が可能である。ZnSe系半導体(特開平7−321409号公報、特開平6−334272号公報等参照)や、GaN系半導体(特開平8−88441号公報、特開平7−335975号公報等参照)を用いたLDが、その発光効率の高さから、以前から多くの研究の対象となっている。また、比較的最近の技術として、日亜化学工業から、GaN系半導体を用いたLD(405nm発振)が実用化され、上記の技術よりも格段に進んだ書き込み系が開発され、本発明にも有益に用いることができる。
また、上記材料を用いたLEDランプ等も上市されており、これらも有効に使用することが出来る。
一方、現時点では次の課題により下限値が定められる。即ち、感光体(書き込み光入射側に存在する電荷輸送層や保護層)を構成する材料として、電荷輸送物質が挙げられるが、高移動度を有し、実用レベルで使用出来る電荷輸送物質の中で350nm程度よりも短波長側の成分の光に対して十分に透明な材料が存在しないことである。これは、現在開発されている電荷輸送物質の殆どがトリアリールアミン構造を有するものであり、この材料の長波長側の吸収端が概ね300〜350nmであることに由来する。従って、除電用光源の更なる短波長化と電荷輸送物質の更なる透明化(吸収の短波長化)が実現されれば、本発明に使用出来る光源の発振波長の加減は更に短波長側に延びることになる。
−その他−
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
前記リサイクル手段は、前記クリーニング手段により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、例えば、公知の搬送手段等が挙げられる。
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
ここで、本発明の画像形成装置の一の態様について、図11を参照しながら説明する。
図11は、本発明の画像形成装置を説明するための概略図であり、後に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図11において、静電潜像担持体としての感光体(1)は支持体上に少なくとも有機系電荷発生物質を含有する電荷発生層と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層からなる積層感光層が設けられてなる。感光体(1)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電器(3)には、ワイヤー方式の帯電器やローラ形状の帯電器が用いられる。高速帯電が必要とされる場合にはスコロトロン方式の帯電器が良好に使用され、コンパクト化や後述の感光体を複数使用するタンデム方式の画像形成装置においては、酸性ガス(NOx、SOx等)やオゾン発生量の少ないローラ形状の帯電器が有効に使用される。この帯電器により、感光体には帯電が施されるが、感光体に印加される電界強度は高いほどドット再現性が良好になるため、20V/μm以上の電界強度が印加されることが望ましい。しかしながら、感光体の絶縁破壊や現像時のキャリア付着の問題を生み出す可能性があり、上限値は概ね60V/μm以下、より好ましくは50V/μm以下である。
また、画像露光部(5)には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度が確保でき、高解像度(600dpi以上の解像度)で書き込むことのできる光源が使用される。光源(書き込み光)の解像度により、形成される静電潜像ひいてはトナー像の解像度が決定され、解像度が高いほど鮮明な画像が得られる。しかしながら、解像度を高くして書き込みを行うとそれだけ書き込みに時間がかかることになるため、書き込み光源が1つであると書き込みがドラム線速(プロセス速度)の律速になってしまう。従って、書き込み光源が1つの場合には1200dpi程度の解像度が上限となる。書き込み光源が複数の場合には、それぞれが書き込み領域を負担すれば良く、実質的には「1200dpi×書き込み光源個数」が上限となる。これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、良好に使用される。
また上述のように発振波長が、450nmより短波長のレーザー光を用いることは有効な手段である。
現像手段である現像ユニット(6)は、少なくとも1つの現像スリーブを有する。
現像ユニット(6)では、感光体の帯電極性と同極性のトナーが使用され、反転現像(ネガ・ポジ現像)によって、静電潜像が現像される。先の画像露光部に使用する光源によっても異なるが、近年使用するデジタル光源の場合には、一般的に画像面積率が低いことに対応して、書込部分にトナー現像を行う反転現像方式が光源の寿命等を考慮すると有利である。また、トナーのみで現像を行う1成分方式と、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を使用した2成分方式の2通りの方法があるが、いずれの場合にも良好に使用できる。
また、転写チャージャ(10)は転写ベルト、転写ローラを用いることも可能であるが、オゾン発生量の少ない転写ベルトや転写ローラ等の接触型を用いることが望ましい。なお、転写時の電圧/電流印加方式としては、定電圧方式、定電流方式のいずれの方式も用いることが可能であるが、転写電荷量を一定に保つことができ、安定性に優れた定電流方式がより望ましい。特に、転写部材に電荷を供給する電源供給用部材(高圧電源)から出力された電流のうち、転写部材に関連する部分に流れ、感光体に流れ込まない電流を差し引くことにより、感光体への電流値を制御する方法が好ましい。
転写電流は、感光体に静電的に付着しているトナーを引きはがし、被転写体(転写紙もしくは中間転写体など)へ移行させるために与える必要電荷量に基づく電流である。転写残などの転写不良を回避するためには、転写電流を大きくすれば良いことになるが、ネガ及びポジ現像を用いた場合には、感光体の帯電極性と逆極性の帯電を与えることになり、感光体の静電疲労が著しいものとなる。転写電流は大きいほど、感光体−トナー間の静電付着力を上回る電荷量を与えられるため有利であるが、ある閾値を越えると転写部材−感光体間で放電現象を生じてしまい、微細に現像されたトナー像を散らせる結果になる。このため、上限値としてはこの放電現象を起こさない範囲ということになる。この閾値は転写部材−感光体間の空隙(距離)、両者を構成する材料などによって変わるものであるが、概ね200μA以下程度で使用することにより、放電現象を回避できる。従って、転写電流の上限値は200μA程度である。
また、感光体上の形成されたトナー像は、転写紙に転写されることで転写紙上の画像となるものであるが、この際、2つの方法がある。1つは図11に示すような感光体表面に現像されたトナー像を転写紙に直接転写する方法と、もう1つはいったん感光体から中間転写体にトナー像が転写され、これを転写紙に転写する方法である。いずれの場合にも本発明において用いることができる。
このような転写部材は、構成上、本発明の構成を満足できるものであれば、公知のものを使用することができる。
また、前述のように転写電流を制御することで、転写後の感光体表面電位(書き込み光の未露光部)を低下させておくことは、画像形成1サイクルあたりの感光体通過電荷量を低減することが出来、本発明においては有効に使用される。
除電ランプ(2)等の光源には、500nm未満(好ましくは480nm未満、より好ましくは450nm未満)の波長を有し、前記静電潜像担持体に対し除電を行うことが出来れば良く、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等が好適に挙げられる。
半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の光源には、500nm未満に発振波長を有する半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等、あるいは蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、キセノンランプ等と発光が500nm未満に制限できるような適当な光学フィルターと組み合わせたもの等を用いることができる。前記光学フィルターとは、所望の波長域の光(500nm未満)のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
使用する波長の下限値としては、感光体に使用される電荷輸送層や保護層の透過率によって異なるが、概ね300〜350nmが下限となる。
図11中、8はレジストローラ、11は分離チャージャ、12は分離爪である。
また、現像ユニット(6)により感光体(1)上に現像されたトナーは、転写紙(9)に転写されるが、感光体(1)上に残存するトナーが生じた場合、ファーブラシ(14)及びクリーニングブレード(15)により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行われることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
次に、図12は、本発明のタンデム型のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図12において、符号(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)はドラム状の感光体であり、感光体は支持体上に少なくとも有機系電荷発生物質を含有する電荷発生層と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層からなる積層感光層が設けられてなる。
この感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)は図12中の矢印方向に回転可能であり、その周りに少なくとも回転順に帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)、少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)、クリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)、500nmよりも短波長(好ましくは480nm未満、より好ましくは450nm未満)の光を照射する除電手段(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)が配置されている。帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電器である。この帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)と現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)の間の感光体表面側より、露光器(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)からのレーザー光が照射され、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)を中心とした4つの画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)が、転写材搬送手段である転写搬送ベルト(22)に沿って並置されている。転写搬送ベルト(22)は各画像形成ユニット(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)の現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)とクリーニング部材(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)の間で感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に当接しており、転写搬送ベルト(22)の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写ブラシ(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)が配置されている。各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)は現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図12に示す構成のフルカラー画像形成装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。まず、各画像形成要素(25Y)、(25M)、(25C)、(25K)において、感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)に静電潜像が形成されるようになっている。そして、このような感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)が回転し、帯電器(17Y)、(17M)、(17C)、(17K)により、感光体が帯電される。この際、高精細の潜像を形成するためには、感光体の電界強度が20V/μm以上(60Vμm以下、好ましくは50V/μm以下)になるように帯電が施される。
次に、感光体の外側に配置された露光部(18Y)、(18M)、(18C)、(18K)でレーザー光により、1200dpi以上(好ましくは2400dpi以上)の解像度で書き込みが行われ、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。この書き込み光源としては前述の様に、任意の感光体に適した光源が用いられる。この場合にも書き込み光源1つに対して2400dpiの書き込みが概ね上限となる。この場合にも、上述のように発振波長が、450nmより短波長のレーザー光を用いることは有効な手段である。
次に、現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)により潜像を現像してトナー像が形成される。現像手段(19Y)、(19M)、(19C)、(19K)は、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のトナーで現像を行う現像手段で、4つの感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。転写紙(26)は給紙コロ(図示せず)によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ(23)で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト(22)に送られる。転写搬送ベルト(22)上に保持された転写紙(26)は搬送されて、各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。
感光体上のトナー像は、転写部材(21Y)、(21M)、(21C)、(21K)に印加された転写バイアスと感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)との電位差から形成される電界により、転写紙(26)上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた転写紙(26)は定着装置(24)に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体(16Y)、(16M)、(16C)、(16K)上に残った残留トナーは、クリーニング装置(20Y)、(20M)、(20C)、(20K)で回収される。
続いて、500nmよりも短波長の光源を有する除電部材(27Y)、(27M)、(27C)、(27K)により、感光体上の余分な残留電荷が除去される。この後再び、帯電器で均一に帯電が施されて、次の画像形成が行われる。
なお、図12の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものではなく、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素((25Y)、(25M)、(25C))が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
また、先に述べたように転写後の感光体表面が、主帯電器により帯電させた極性側に100V以下に帯電させることが好ましく、逆極性側に帯電させることがより好ましく、逆極性側に100V以下に帯電させることが特に好ましい。これにより、感光体の繰り返し使用における残留電位の上昇を低減化することができる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図13に示すものが挙げられる。感光体(101)は支持体上に少なくとも有機系電荷発生物質を含有する電荷発生層と、除電光に対して30%以上の透過率を有する電荷輸送層からなる積層感光層が設けられてなる。
画像露光部(103)には、前述のように好ましくは600dpi以上の解像度で書き込みが行うことのできる光源が用いられ、帯電器(102)には、任意の帯電器が用いられる。図13中、104は少なくとも1つの現像スリーブを有する現像手段、105は転写体、106は転写手段、107はクリ−ニング手段、108は500nmよりも短波長(好ましくは480nm未満、より好ましくは450nm未満)の光源を有する除電部材である。
以下、実施例により本発明について詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に何ら限定されるものではない。尚、部はすべて質量部である。
まず、本発明に用いたアゾ顔料及びチタニルフタロシアニン結晶の合成方法について述べる。以下の実施例で使用するアゾ顔料は、特公平60−29109号公報及び特許第3026645号公報に記載の方法に準じて作製したものである。また、チタニルフタロシアニン結晶は、以下に示すように特開2001−19871号公報及び特開2004−83859号公報に準じて作製した。
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
(合成例1)
特開2001−19871号公報、合成例1に準じて、顔料を作製した。即ち、1,3−ジイミノイソインドリン29.2gとスルホラン200mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド20.4gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後、析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、次にメタノールで数回洗浄し、更に80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶を濾過し、次いで、洗浄液が中性になるまでイオン交換水(pH:7.0、比伝導度:1.0μS/cm)により水洗いを繰り返し(洗浄後のイオン交換水のpH値は6.8、比伝導度は2.6μS/cmであった)、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキ(水ペースト)を得た。得られたこのウェットケーキ(水ペースト)40gをテトラヒドロフラン200gに投入し、4時間攪拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た。これを顔料1とする。
前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で33倍の量を用いた。なお、合成例1の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。
得られたチタニルフタロシアニン粉末を、下記の条件によりX線回折スペクトル測定したところ、Cu−Kα線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θが27.2±0.2°に最大ピークと最低角 7.3±0.2°にピークを有し、更に9.4±0.2°、9.6±0.2°、24.0±0.2°に主要なピークを有し、かつ7.3°のピークと9.4°のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン粉末を得られた。その結果を図14に示す。
また、合成例1で得られた水ペーストの一部を80℃の減圧下(5mmHg)で、2日間乾燥して、低結晶性チタニルフタロシアニン粉末を得た。水ペーストの乾燥粉末のX線回折スペクトルを図15に示す。
<X線回折スペクトル測定条件>
X線管球:Cu
電圧:50kV
電流:30mA
走査速度:2°/分
走査範囲:3°〜40°
時定数:2秒
(合成例2)
−チタニルフタロシアニン結晶の合成−
特開2004−83859号公報、実施例1の方法に従って、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを合成し、次のように結晶変換を行い、先の合成例1よりも一次粒子の小さなフタロシアニン結晶を得た。
先の合成例1で得られた結晶変換前の水ペースト60質量部にテトラヒドロフラン400質量部を加え、室温下でホモミキサー(ケニス、MARKIIfモデル)により強烈に撹拌(2000rpm)し、ペーストの濃紺色の色が淡い青色に変化したら(撹拌開始後20分)、撹拌を停止し、直ちに減圧濾過を行った。濾過装置上で得られた結晶をテトラヒドロフランで洗浄し、顔料のウェットケーキを得た。これを減圧下(5mmHg)、70℃で2日間乾燥して、チタニルフタロシアニン結晶8.5質量部を得た。これを顔料2とする。合成例2の原材料には、ハロゲン含有化合物を使用していない。前記ウェットケーキの固形分濃度は、15質量%であった。結晶変換溶媒は、前記ウェットケーキに対する質量比で44倍の量を用いた。
合成例1で作製された結晶変換前チタニルフタロシアニン(水ペースト)の一部をイオン交換水でおよそ1質量%になるように希釈し、表面を導電性処理した銅製のネットですくい取り、チタニルフタロシアニンの粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM、日立:H−9000NAR)にて、75000倍の倍率で観察を行った。平均粒子径として、以下のように求めた。
上述のように観察されたTEM像をTEM写真として撮影し、映し出されたチタニルフタロシアニン粒子(針状に近い形)を30個任意に選び出し、それぞれの長径の大きさを測定する。測定した30個体の長径の算術平均を求めて、平均粒子径とした。以上の方法により求められた合成例1における水ペースト(ウェットケーキ)中の平均粒子径は、0.06μmであった。
また、合成例1及び合成例2における濾過直前の結晶変換後チタニルフタロシアニン結晶を、テトラヒドロフランでおよそ1質量%になるように希釈し、上の方法と同様に観察を行った。上記のようにして求めた平均粒子径を表1に示す。なお、合成例1及び合成例2で作製されたチタニルフタロシアニン結晶は、必ずしも全ての結晶の形が同一ではなかった(三角形に近い形、四角形に近い形など)。このため、結晶の最も大きな対角線の長さを長径として、計算を行った。
合成例2で作製した顔料2は、先程と同様の方法でX線回折スペクトルを測定した。その結果、合成例2で作製した顔料2のX線回折スペクトルは、合成例1で作製した顔料1のスペクトルと一致した。
(分散液作製例1)
合成例1で作製した顔料1を下記組成の処方にて、下記に示す条件にて分散を行い電荷発生層用塗工液として、分散液を作製した。
チタニルフタロシアニン顔料(顔料1) 15部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 10部
2−ブタノン 280部
市販のビーズミル分散機に直径0.5mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した2−ブタノン及び顔料を全て投入し、ローター回転数1200r.p.m.にて30分間分散を行い、分散液を作製した。これを分散液1とした。
(分散液作製例2)
分散液作製例1で使用した顔料1に変えて、合成例2で作製した顔料2を使用して、分散液作製例1と同じ条件にて分散液を作製した。これを分散液2とした。
(分散液作製例3)
分散液作製例1で作製した分散液1を、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−1−CS(有効孔径1μm)を用いて、濾過を行った。濾過に際しては、ポンプを使用し、加圧状態で濾過を行った。これを分散液3とした。
(分散液作製例4)
分散液作製例3で使用したフィルターを、アドバンテック社製、コットンワインドカートリッジフィルター、TCW−3−CS(有効孔径3μm)に変えた以外は、分散液作製例3と同様に加圧濾過を行い分散液を作製した。これを分散液4とした。
(分散液作製例5)
下記組成の処方にて、下記に示す条件にて分散を行い、電荷発生層用塗工液として、分散液を作製した。
下記構造のアゾ顔料 5部
ポリビニルブチラール(積水化学製:BX−1) 2部
シクロヘキサノン 250部
2−ブタノン 100部
ボールミル分散機に直径10mmのPSZボールを用い、ポリビニルブチラールを溶解した溶媒およびアゾ顔料を全て投入し、回転数85r.p.m.にて7日間分散を行ない、分散液を作製した(分散液5とする)。
(分散液作製例6)
分散液作製例5で使用したアゾ顔料を下記構造のものに変更した以外は、分散液作製例5と同様に分散液を作製した(分散液6とする)。
以上のように作製した分散液中の顔料粒子の粒度分布を、堀場製作所:CAPA−700にて測定した。結果を表2に示す。
(感光体作製例1)
φ30mmのアルミドラム(JIS 1050)上に、下記組成の中間層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの中間層、0.5μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成し、積層感光体を作製した(電子写真感光体1とする)。
◎中間層塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均粒径:0.25μm) 112部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 33.6部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 18.7部
2−ブタノン 260部
◎電荷発生層塗工液
先に作製した分散液1を用いた。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例1)
以上のように作製した電子写真感光体1を図11に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として428nmLED(ローム製:半値幅65nm)を用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続3万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
評価は、3万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した。
測定方法としては、図11に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を−900Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を表3に示す。
また、感光体作製例1の電荷輸送層塗工液を用い、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたφ30mmのアルミドラム(JIS 1050)を準備し、感光体作製例1と同様に電荷輸送層だけ設けた。これを適当な大きさに切り出して、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、電荷輸送層の除電光波長における透過率を測定した。結果を表3に示す。
(実施例2)
実施例1における除電光源として、472nmLED(星和電機製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
(比較例1)
実施例1における除電光源として、502nmLED(星和電機製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
(比較例2)
実施例1における除電光源として、591nmLED(ローム製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
(比較例3)
実施例1における除電光源として、630nmLED(ローム製:半値幅20nm)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
(比較例4)
実施例1における除電光源として、蛍光灯(図1に示す発光スペクトルを有する)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
尚、比較例4において用いた除電光は、図1に示すように単色光ではなく、電荷輸送層透過率は、波長により変化するため特に表記せず、「−」とした。以下蛍光灯を用いた場合は電荷輸送層透過率を同様に「−」とした。
(比較例5)
実施例1における除電光源として、428nmLED(ローム製:半値幅65nm)及び630nmLED(ローム製:半値幅20nm)の2つを用いてほぼ同等の光量を同時に照射するように変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例1の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表3に示す。
表3から、除電光の波長を500nm未満にした場合(実施例1、2)には、それよりも長波長を使用した場合(比較例1〜3)と比較して、繰り返し使用後の露光部電位の上昇が小さいことが分かる。中でも、450nm未満にした場合(実施例1)は、実施例2よりも更に効果が顕著であることが分かる。
また、発光分布が広く、500nm以上の長波長光の成分を含む場合(比較例4)では、実施例ほどの明確な効果が得られていない。また、露光波長の異なる2種類の光源を用いた場合(比較例5)では、短波長光源による除電の効果が低減されていることが分かる。
(感光体作製例2)
感光体作製例1において、電荷発生層塗工液として、先に作製した分散液2を用いた以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体2とする)。
(実施例3)
実施例1において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(実施例4)
実施例2において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、実施例2と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例6)
比較例1において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、比較例1と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例7)
比較例2において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、比較例2と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例8)
比較例3において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、比較例3と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例9)
比較例4において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、比較例4と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
(比較例10)
比較例5において、使用した電子写真感光体1の代わりに、電子写真感光体2を用いた以外は、比較例5と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
表4から、除電光の波長を500nm未満にした場合(実施例3、4)には、それよりも長波長を使用した場合(比較例6〜8)と比較して、繰り返し使用後の露光部電位の上昇が小さいことが分かる。中でも、450nm未満にした場合(実施例3)は、実施例4よりも更に効果が顕著であることが分かる。また、発光分布が広く、500nm以上の長波長光の成分を含む場合(比較例9)では、実施例ほどの明確な効果が得られていない。また、露光波長の異なる2種類の光源を用いた場合(比較例10)では、短波長光源による除電の効果が低減されていることが分かる。
(感光体作製例3)
感光体作製例1における電荷発生層塗工液(分散液1)を、分散液3に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体3とする)。
(感光体作製例4)
感光体作製例1における電荷発生層塗工液(分散液1)を、分散液4に変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体4とする)。
(実施例5)
実施例1と同じ条件で、電子写真感光体1の代わりに電子写真感光体3を用いて評価を行った。また、3万枚の画像出力後に、白ベタの画像を出力して、地汚れの評価を実施した。実施例1及び3の結果と併せて表5に示す。
(実施例6)
実施例1と同じ条件で、電子写真感光体1の代わりに電子写真感光体4を用いて評価を行った。また、3万枚の画像出力後に、白ベタの画像を出力して、地汚れの評価を実施した。結果を表5に示す。
尚、実施例5、6における感光体の電荷輸送層の除電光波長における透過率は、どちらも100%である。
地汚れ評価は、地肌部に発生する黒点の数、大きさからランク評価を実施した。ランクは、4段階にて行い、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。
表5より、電荷発生層に用いられる塗工液の平均粒径が0.25μm以下の場合(実施例3、5、6)、感光体初期状態での露光部の表面電位を低下できるとともに、繰り返し使用後では、露光部電位上昇に影響を与えずに、地汚れの発生を抑制することが出来ることが分かる。
(感光体作製例5)
感光体作製例1における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体5とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例7)
以上のように作製した電子写真感光体5を図11に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として下記のものを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続3万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
除電光源:キセノンランプに分光器を組み合わせて410nmの単色光を作り、これ
を光ファイバーによって画像形成装置に導き、スリット状の光を除電部に
て感光体表面に照射した。
評価は、3万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した。
測定方法としては、図11に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を−900Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。
また、実施例1と同様に、除電光波長における電荷輸送層の透過率を測定した。
結果を表6に示す。
(実施例8)
実施例7における除電光波長を、404nmに変更した以外は、実施例7と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
(比較例11)
実施例7における除電光波長を、401nmに変更した以外は、実施例7と同様に評価を行った。結果を表6に示す。
表6から、電荷輸送層の除電光波長における透過率が30%以上の場合(実施例7、8)には、繰り返し使用後にも良好な特性を示していることが分かる。一方、透過率が30%未満の場合(比較例11)では、繰り返し使用後の露光部電位が上昇していることが分かる。
(感光体作製例6)
感光体作製例1における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体6とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例9)
以上のように作製した電子写真感光体6を用い、除電光波長を440nmとした以外は、実施例7と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
(実施例10)
実施例9における除電光波長を、435nmに変更した以外は、実施例9と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
(比較例12)
実施例9における除電光波長を、433nmに変更した以外は、実施例9と同様に評価を行った。結果を表7に示す。
表6から、電荷輸送層の除電光波長における透過率が30%以上の場合(実施例9、10)には、繰り返し使用後にも良好な特性を示していることが分かる。一方、透過率が30%未満の場合(比較例12)では、繰り返し使用後の露光部電位が上昇していることが分かる。
(感光体作製例7)
感光体作製例1における電荷輸送層の膜厚を22μmとし、電荷輸送層上に下記組成の保護層塗工液を塗布乾燥し、3μmの保護層を設けた以外は感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体7とする)。
◎保護層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
アルミナ微粒子 4部
(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、平均一次粒径:0.4μm)
シクロヘキサノン 500部
テトラヒドロフラン 150部
(感光体作製例8)
感光体作製例7における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に感光体を作製した(電子写真感光体8とする)。
酸化チタン微粒子 4部
(比抵抗:1.5×1010Ω・cm、平均一次粒径:0.5μm)
(感光体作製例9)
感光体作製例7における保護層塗工液中のアルミナ微粒子を以下のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に感光体を作製した(電子写真感光体9とする)。
酸化錫−酸化アンチモン粉末 4部
(比抵抗:106Ω・cm、平均一次粒径0.4μm)
(感光体作製例10)
感光体作製例7における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体10とする)。
◎保護層塗工液
下記構造式の高分子電荷輸送物質 17部
(重量平均分子量:約140000)
アルミナ微粒子 4部
(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、平均一次粒径:0.4μm)
シクロヘキサノン 500部
テトラヒドロフラン 150部
(感光体作製例11)
感光体作製例7における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体11とする)。
◎保護層塗工液
メチルトリメトキシシラン 100部
3%酢酸 20部
下記構造の電荷輸送性化合物 35部
酸化防止剤(サノール LS2626:三共化学社製) 1部
硬化剤(ジブチル錫アセテート) 1部
2−プロパノール 200部
(感光体作製例12)
感光体作製例7における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体12とする)。
◎保護層塗工液
メチルトリメトキシシラン 100部
3%酢酸 20部
下記構造の電荷輸送性化合物 35部
アルミナ微粒子 15部
(比抵抗:2.5×1012Ω・cm、平均一次粒径:0.4μm)
酸化防止剤(サノール LS2626:三共化学社製) 1部
ポリカルボン酸化合物 BYK P104:ビックケミー社製 0.4部
硬化剤(ジブチル錫アセテート) 1部
2−プロパノール 200部
(感光体作製例13)
感光体作製例7における保護層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例7と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体13とする)。
◎保護層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99}
下記構造の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
保護層は、スプレー塗工してから20分間自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W/cm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:60秒の条件で光照射を行うことによって塗布膜を硬化させた。
(感光体作製例14)
感光体作製例13において、保護層塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のラジカル重合性モノマーに変更した以外は、すべて感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体14とする)。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
(ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR−295、化薬サートマー製)
分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基数=88)
(感光体作製例15)
感光体作製例13の保護層塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記の電荷輸送性構造を有さない2官能のラジカル重合性モノマー10部に換えた以外は、すべて感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体15とする)。
電荷輸送性構造を有さない2官能のラジカル重合性モノマー 10部
(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(和光純薬製)
分子量:226、官能基数:2官能、分子量/官能基数=113)
(感光体作製例16)
感光体作製例13において、保護層塗工液に含有される電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記のラジカル重合性モノマーに換えた以外は、すべて感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体16とする)。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
(カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製)
分子量:1947、官能基数:6官能、分子量/官能基数=325)
(感光体作製例17)
感光体作製例13の保護層塗工液に含有される1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を下記構造式に示される2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物10部に換えた以外は感光体作製例13と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体17とする)。
(感光体作製例18)
感光体作製例13において、保護層塗工液を下記組成に換えた以外は、感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体18とする)。
◎保護層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 6部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99}
下記構造の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 14部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
(感光体作製例19)
感光体作製例13において、保護層塗工液を下記組成に換えた以外は、感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体19とする)。
◎保護層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 14部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99}
下記構造の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 6部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
(感光体作製例20)
感光体作製例13において、保護層塗工液を下記組成に換えた以外は、感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体20とする)。
◎保護層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 2部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99}
下記構造の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 18部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
(感光体作製例21)
感光体作製例13において、保護層塗工液を下記組成に換えた以外は、感光体作製例13と同様にして電子写真感光体を作製した(電子写真感光体21とする)。
◎保護層塗工液
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 18部
{トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99}
下記構造の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 2部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
(実施例11)
以上のように作製した電子写真感光体1を図11に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として472nm(星和電機製:半値幅15nm)を用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
また、実施例1と同様に、除電光波長における電荷輸送層の透過率を測定した。
<評価項目>
(1)表面電位測定
評価は、5万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した。
測定方法としては、図11に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を−900Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を表8に示す。
(2)地汚れ評価
また、5万枚の画像出力後(表面電位測定終了後)に、白ベタの画像を出力して、地汚れの評価を実施した(22℃−50%RH)。地汚れ評価は、前述の4段階のランク評価にて、評価を実施した。結果を表8に示す。
(3)クリーニング性評価
更に、地汚れ評価後に、低温低湿環境下(10℃、15%RH)で、図16に示すようなテストチャートを用い、実施例1と同じ条件下で、黒ベタ部から白ベタ部の方向で画像出力し、連続50枚の印刷を実施し、クリーニング性の評価を実施した。この際、50枚目の白ベタ部の画像を目視にて評価した。評価は4段階にて行ない、極めて良好なもの(クリーニング不良全くなし)を◎、良好なもの(うっすらと黒スジが入るレベル、長手方向で1〜2カ所)を○、やや劣るもの(うっすらと黒スジが入るレベル、長手方向で3〜4カ所)を△、非常に悪いもの(明確に黒スジが入るレベル)を×で表わした。結果を表8に示す。
(4)ドット再現性評価
先のクリーニング性試験に引き続き、高温高湿環境(30℃−90%RH)にて、更に1000枚の通紙試験(先の6%チャーと使用)を行い、1000枚通紙後に1ドット画像評価(独立ドットを書き込んだ画像を出力)を実施した。1ドット画像を光学顕微鏡で観察し、ドット輪郭の明確さをランク評価した。ランク評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表わした。結果を表8に示す。
(5)摩耗量評価
感光体初期膜厚を測定し、上記(1)〜(4)の試験を全て終了した後に再び膜厚を測定した。全ての試験前後における膜厚の差(摩耗量)を評価した。尚、膜厚の測定は、感光体長手方向の両端5cmを除き、1cm間隔に測定し、その平均値を膜厚とした。
(実施例12〜26)
実施例11と同じ条件で、上述のように作製した電子写真感光体7〜21を評価した。結果を表8に示す。表8には実施例番号に対応する使用した電子写真感光体番号も併せて記載する。
また、除電光波長における保護層透過率(%)を測定するために、各電子写真感光体の保護層塗工液を用い、ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き付けたφ30mmのアルミドラム(JIS 1050)を準備し、保護層だけ設けた。これを適当な大きさに切り出して、市販の分光光度計(島津:UV−3100)にて、保護層の除電光波長における透過率を測定した。結果を表8に示す。
表8より以下のことが分かる。
保護層を設けた場合でも、500nmよりも短波長の光源にて除電を行うことにより、残留電位上昇防止の効果が認められる。
保護層を設けることにより(実施例12〜26)、設けない場合(実施例11)に比べて、耐摩耗性が向上する。
無機顔料(金属酸化物)を含有する保護層を設けた場合(実施例12〜14)のうち、比抵抗が1010Ω・cm以上の無機顔料(金属酸化物)を含有することにより、高温高湿下でもドット再現性がそれほど低下しない(実施例12、13)。
架橋構造を保護層中に有することにより、有さない場合よりも耐摩耗性が向上する。更に、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成された保護層を用いた場合には、より高い耐摩耗性が得られる(実施例18、19、21、23〜26)。
またこれら電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成された保護層を用いた場合には、クリーニング性も良好である。
(比較例13)
実施例21における除電光源として、502nmLED(星和電機製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例21と同様に露光部電位を測定し評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例21の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表9に示す。
(比較例14)
実施例21における除電光源として、591nmLED(ローム製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例21と同様に露光部電位を測定し評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例21の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表9に示す。
(比較例15)
実施例21における除電光源として、630nmLED(ローム製:半値幅20nm)に変更した以外は、実施例21と同様に露光部電位を測定し評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例21の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表9に示す。
(比較例16)
実施例21における除電光源として、蛍光灯(図1に示す発光スペクトルを有する)に変更した以外は、実施例21と同様に露光部電位を測定し評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例21の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表9に示す。
表9から、除電光の波長を500nm未満にした場合(実施例21)には、それよりも長波長を使用した場合(比較例13〜15)と比較して、繰り返し使用後の露光部電位の上昇が小さいことが分かる。
また、発光分布が広く、500nm以上の長波長光の成分を含む場合(比較例16)では、実施例ほどの明確な効果が得られていない。
(感光体作製例22)
感光体作製例16における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例16と同様に感光体を作製した(電子写真感光体22とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例27)
以上のように作製した電子写真感光体22を図11に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として下記のものを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続5万枚印刷を行った。
評価項目は、実施例21と同じ評価を実施した。結果を表10に示す。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
除電光源: キセノンランプに分光器を組み合わせて410nmの単色光を作り、こ
れを光ファイバーによって画像形成装置に導き、スリット状の光を除電部
にて感光体表面に照射した。
(実施例28)
実施例27における除電光波長を、404nmに変更した以外は、実施例27と同様に評価を行った。結果を表10に示す。
(比較例17)
実施例27における除電光波長を、401nmに変更した以外は、実施例27と同様に評価を行った。結果を表10に示す。
(感光体作製例23)
感光体作製例22における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例22と同様に感光体を作製した(電子写真感光体23とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例29)
以上のように作製した電子写真感光体23を用い、除電光波長を440nmとした以外は、実施例27と同様の評価を行った。結果を表10に示す。
(実施例30)
実施例29における除電光波長を、435nmに変更した以外は、実施例29と同様に評価を行った。結果を表10に示す。
(比較例18)
実施例29における除電光波長を、432nmに変更した以外は、実施例29と同様に評価を行った。結果を表10に示す。
表10から、電荷輸送層の除電光波長における透過率が30%以上の場合(実施例27〜30)には、繰り返し使用後にも良好な特性を示していることが分かる。一方、透過率が30%未満の場合(比較例17、18)では、繰り返し使用後の露光部電位が上昇していることが分かる。
(実施例31)
以上のように作製した電子写真感光体16を図11に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてスコロトロン帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として下記のものを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャートを用い、連続5万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
除電光源: キセノンランプに分光器を組み合わせて450nmの単色光を作り、こ
れを光ファイバーによって画像形成装置に導き、スリット状の光を除電部
にて感光体表面に照射した。
また、除電光波長における電荷輸送層及び保護層の透過率を測定した。
評価は、5万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した。
測定方法としては、図11に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を−900Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を表11に示す。
更に、5万枚出力後に上記電位計測を行った後に、図17に示すようなチャート(手前半分がストライプ、後半分がハーフトーン)を出力し、ハーフトーン部における画像のムラを観察した。
(実施例32)
実施例31における除電光波長を分光器によって400nmに変更した以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表11に示す。
(実施例33)
実施例31における除電光波長を分光器によって393nmに変更した以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表11に示す。
(実施例34)
実施例31における除電光波長を分光器によって390nmに変更した以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表11に示す。
(実施例35)
実施例31における除電光波長を分光器によって385nmに変更した以外は、実施例31と同様に評価を行った。結果を表11に示す。
表11から分かるように、除電光に対する保護層の透過率が30%未満であると、わずかに効果が薄れる。
また、図17のチャート出力において、実施例31〜33のハーフトーン部は全く正常な画像を形成したが、実施例34及び35においては、問題にならないレベルではあったが、ハーフトーン部にストライプに対応した僅かな残像が認められた。この程度は、実施例35の方が実施例34よりも悪かった。
上記の結果から、500nm未満の除電光を照射することにより、繰り返し使用後の露光部電位上昇を抑制することが出来るが、保護層の除電光に対する透過率が30%未満であると、僅かに副作用を生じる場合があることが分かる。
(感光体作製例24)
感光体作製例1における中間層を、電荷ブロッキング層とモアレ防止層の積層構成とした。それぞれの下記組成の電荷ブロッキング層塗工液、モアレ防止層塗工液を塗布乾燥して、1.0μmの電荷ブロッキング層、3.5μmのモアレ防止層とした以外は、感光体作製例1と同様に感光体を作製した(電子写真感光体24とする)。
◎電荷ブロッキング層塗工液
N−メトキシメチル化ナイロン(鉛市:ファインレジンFR−101) 4部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
◎モアレ防止層塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均粒径:0.25μm) 126部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 33.6部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 18.7部
2−ブタノン 100部
上記組成で、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1.5/1である。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の比は、6/4重量比である。
(感光体作製例25)
感光体作製例24において、電荷ブロッキング層の膜厚を0.3μmとした以外は、感光体作製例24と同様に感光体を作製した(電子写真感光体25とする)。
(感光体作製例26)
感光体作製例24において、電荷ブロッキング層の膜厚を1.8μmとした以外は、感光体作製例24と同様に感光体を作製した(電子写真感光体26とする)。
(感光体作製例27)
感光体作製例24において、電荷ブロッキング層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例24と同様に感光体を作製した(電子写真感光体27とする)。
◎電荷ブロッキング層塗工液
アルコール可溶性ナイロン(東レ:アミランCM8000) 4部
メタノール 70部
n−ブタノール 30部
(感光体作製例28)
感光体作製例24において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例24と同様に感光体を作製した(電子写真感光体28とする)。
◎モアレ防止層塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均粒径:0.25μm) 252部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 33.6部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 18.7部
2−ブタノン 100部
上記組成で、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、3/1である。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の比は、6/4重量比である。
(感光体作製例29)
感光体作製例24において、モアレ防止層塗工液を下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例24と同様に感光体を作製した(電子写真感光体29とする)。
◎モアレ防止層塗工液
酸化チタン(CR−EL:石原産業社製、平均粒径:0.25μm) 84部
アルキッド樹脂[ベッコライトM6401−50−S(固形分50%)、
大日本インキ化学工業製] 33.6部
メラミン樹脂[スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%)、
大日本インキ化学工業製] 18.7部
2−ブタノン 100部
上記組成で、無機顔料とバインダー樹脂の容積比は、1/1である。
アルキッド樹脂とメラミン樹脂の比は、6/4重量比である。
(実施例36〜41)
以上のように作製した電子写真感光体24〜29を、実施例11と同じ条件下で5万枚のランニング試験を行った(評価方法、項目も同じ)。結果を実施例11の場合と比較して、表12に示す。
尚、実施例36〜41において、電子写真感光体の電荷輸送層の除電光波長における透過率は、すべて実施例11と同様100%であった。
表12の結果から、中間層の構成を電荷ブロッキング層とモアレ防止層の構成にすることにより、地汚れに対する耐久性が向上することが分かる。
(実施例42)
実施例1において、画像露光光源を407nmの半導体レーザー(日亜化学製)に変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を実施例1の場合と併せて表13に示す。
また、直径60μmの1ドット画像を形成し、実施例1の場合と比較(ドット形成状態を、150倍の顕微鏡にて観察)を行った。
表13から、短波長LD(407nm)を用いて書き込みを行った場合(実施例42)、実施例1の場合と比較して、更に露光部電位上昇が抑制されていることが分かる。更に、ドット評価においては、実施例42の1ドット画像の方が輪郭が明確であった。
(感光体作製例30)
感光体作製例1における電荷発生層塗工液(分散液1)を分散液5に変更し、電荷輸送層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、感光体作製例1と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体30とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例43)
先に作製した電子写真感光体30を図13に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図12に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として接触ローラー帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として428nmLED(ローム製:半値幅 65nm)を用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続3万枚印刷を行った。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
また、実施例1と同様に除電光波長における電荷輸送層の透過率を測定した。
評価は、3万枚の画像印刷前後における感光体露光部電位を測定した(黒ステーション)。
測定方法としては、図12に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体を−900Vに帯電した後、上記半導体レーザーでベタ書込みを行ない、現像部位における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。結果を表14に示す。
また、3万枚の印刷前後において、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力して、カラー色の再現性について評価した。
(実施例44)
実施例43における除電光源として、472nmLED(星和電機製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
(比較例19)
実施例43における除電光源として、502nmLED(星和電機製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
(比較例20)
実施例43における除電光源として、591nmLED(ローム製:半値幅15nm)に変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
(比較例21)
実施例43における除電光源として、630nmLED(ローム製:半値幅20nm)に変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
(比較例22)
実施例43における除電光源として、蛍光灯(図1に示す発光スペクトルを有する)に変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
(比較例23)
実施例43における除電光源として、428nmLED(ローム製:半値幅65nm)及び630nmLED(ローム製:半値幅20nm)の2つを用いてほぼ同等の光量を同時に照射するように変更した以外は、実施例43と同様に評価を行った。除電後の感光体表面電位が、実施例43の場合と同じになるように、除電光量を調整した。結果を表14に示す。
表14から、除電光の波長を500nm未満にした場合(実施例43、44)には、それよりも長波長を使用した場合(比較例19〜21)と比較して、繰り返し使用後の露光部電位の上昇が小さいことが分かる。更に450nm未満とした場合(実施例43)には、更にその効果が顕著であることが分かる。
また、発光分布が広く、500nm以上の長波長光の成分を含む場合(比較例22)では、実施例ほどの明確な効果が得られていない。また、露光波長の異なる2種類の光源を用いた場合(比較例23)では、短波長光源による除電の効果が低減されていることが分かる。
テストチャートの結果から、実施例43、44の場合には、3万枚印刷後においても、初期とほぼ同等の画像を出力したが、比較例19〜24の場合には、3万枚印刷後に、カラーバランスが多少崩れた画像になった。
(感光体作製例31)
感光体作製例30における電荷発生層塗工液(分散液5)を分散液6に変更した以外は、感光体作製例30と同様に電子写真感光体を作製した(電子写真感光体31とする)。
(実施例45)
実施例43において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、実施例43と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(実施例46)
実施例44において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、実施例44と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(比較例24)
比較例19において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、比較例19と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(比較例25)
比較例20において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、比較例20と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(比較例26)
比較例21において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、比較例21と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(比較例27)
比較例22において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、比較例22と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
(比較例28)
比較例23において、使用した電子写真感光体30の代わりに、電子写真感光体31を用いた以外は、比較例23と同様に評価を行った。結果を表15に示す。
表15から、除電光の波長を500nm未満にした場合(実施例45、46)には、それよりも長波長を使用した場合(比較例24〜26)と比較して、繰り返し使用後の露光部電位の上昇が小さいことが分かる。更に450nm未満とした場合(実施例45)には、更にその効果が顕著であることが分かる。
また、発光分布が広く、500nm以上の長波長光の成分を含む場合(比較例27)では、実施例ほどの明確な効果が得られていない。また、露光波長の異なる2種類の光源を用いた場合(比較例28)では、短波長光源による除電の効果が低減されていることが分かる。
テストチャートの結果から、実施例45、46の場合には、3万枚印刷後においても、初期とほぼ同等の画像を出力したが、比較例24〜28の場合には、3万枚印刷後に、カラーバランスが多少崩れた画像になった。
また、表14に記載した実施例43の露光部表面電位と、表15に記載の実施例45の露光部表面電位を比較すると、実施例43の露光部表面電位の方が低い。実施例43に使用したアゾ顔料のカップラー成分の非対称化が高感度化に寄与していることが分かる。
(感光体作製例32)
感光体作製例30における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例30と同様に感光体を作製した(電子写真感光体32とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例47)
以上のように作製した電子写真感光体32を図13に示すような画像形成装置に搭載し、画像露光光源を655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材として接触ローラー帯電器、転写部材として転写ベルトを用い、除電光源として下記のものを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定し、書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、連続3万枚印刷を行った。
評価項目は、実施例43と同じ評価を実施した。結果を表16に示す。
感光体帯電電位(未露光部電位): −900V
現像バイアス: −650V(ネガ・ポジ現像)
除電後表面電位(書き込み光未露光部): −100V
除電光源:キセノンランプに分光器を組み合わせて410nmの単色光を作り、これ
を光ファイバーによって画像形成装置に導き、スリット状の光を除電部に
て感光体表面に照射した。
(実施例48)
実施例47における除電光波長を、404nmに変更した以外は、実施例47と同様に評価を行った。結果を表16に示す。
(比較例29)
実施例47における除電光波長を、401nmに変更した以外は、実施例47と同様に評価を行った。結果を表16に示す。
表16より、除電光に対する電荷輸送層の透過率が小さく、30%未満の場合(比較例29)には、繰り返し使用後の露光部表面電位上昇量が大きいことが分かる。
(感光体作製例33)
感光体作製例32における電荷輸送層塗工液を、下記組成のものに変更した以外は、感光体作製例32と同様に感光体を作製した(電子写真感光体33とする)。
◎電荷輸送層塗工液
ポリカーボネート(TS2050:帝人化成社製) 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
塩化メチレン 80部
(実施例49)
以上のように作製した電子写真感光体33を用い、除電光波長を440nmとした以外は、実施47と同様の評価を行った。結果を表17に示す。
(実施例50)
実施例49における除電光波長を、435nmに変更した以外は、実施例49と同様に評価を行った。結果を表17に示す。
(比較例30)
実施例49における除電光波長を、433nmに変更した以外は、実施例49と同様に評価を行った。結果を表17に示す。
表17より、除電光に対する電荷輸送層の透過率が小さく、30%未満の場合(比較例30)には、繰り返し使用後の露光部表面電位上昇量が大きいことが分かる。
(実施例51)
実施例45において、画像露光光源を407nmの半導体レーザー(日亜化学製)に変更した以外は、実施例45と同様に評価を行った。結果を実施例35の場合と併せて表18に示す。
また、直径60μmの1ドット画像を形成し、実施例45の場合と比較(ドット形成状態を、150倍の顕微鏡にて観察)を行った。
表18から、短波長LD(407nm)を用いて書き込みを行った場合(実施例51)、実施例45の場合と比較して、更に露光部電位上昇が抑制されていることが分かる。更に、ドット評価においては、実施例51の1ドット画像の方が輪郭が明確であった。
蛍光灯の分光発光スペクトルを示す図である。 有機材料の光キャリア発生機構の概念図である。 無機材料の光キャリア発生機構の概念図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の層構成を表わした図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の別の層構成を表わした図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の別の層構成を表わした図である。 本発明に用いられる電子写真感光体の別の層構成を表わした図である。 分散時間が短い場合の分散液の状態を示す図である。 分散時間が長い場合の分散液の状態を示す図である。 図8、9の分散液について、平均粒径及び粒度分布を示す図である。 本発明の電子写真プロセスおよび画像形成装置を説明するための概略図である。 本発明のタンデム方式のフルカラー画像形成装置を説明するための概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジを説明するための図である。 合成例1で合成されたチタニルフタロシアニンのXDスペクトルを表わした図である。 水ペースト(ウェットケーキ)の乾燥粉末のXDスペクトルを表わした図である。 実施例11で用いたテストチャートである。 実施例31で用いたテストチャートである。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電器
5 画像露光部
6 現像ユニット
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
16Y、16M、16C、16K 感光体
17Y、17M、17C、17K 帯電部材
18Y、18M、18C、18K 露光部
19Y、19M、19C、19K 現像部材
20Y、20M、20C、20K クリーニング部材
21Y、21M、21C、21K 転写ブラシ
22 転写搬送ベルト
23 レジストローラ
24 定着装置
25Y、25M、25C、25K 画像形成要素
26 転写紙
27Y、27M、27C、27K 除電部材
31 導電性支持体
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 中間層
41 保護層
43 電荷ブロッキング層
45 モアレ防止層
101 感光体
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段
108 除電手段

Claims (20)

  1. 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、該可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、静電潜像担持体の残留電荷を光除電する除電手段とを少なくとも有する画像形成装置であって、前記除電手段が500nmよりも短波長の光を照射する除電手段であると共に、前記静電潜像担持体が、支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記有機電荷発生物質が下記(I)式で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
    (式中、Cp1,Cp2はカップラー残基を表す。R201,R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1,Cp2は下記(II)式で表され、
    式中、R203は、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。R204,R205,R206,R207,R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基を表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環または置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。)
  3. 前記アゾ顔料のCp1とCp2が互いに異なるものであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記有機電荷発生物質がCuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、更に9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、該7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さず、更に26.3°にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  5. 前記電荷輸送層上に保護層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像形成装置。
  6. 前記保護層が除電光を30%以上透過することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
  7. 前記保護層が、比抵抗1010Ω・cm以上の無機顔料及び金属酸化物から選択される少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
  8. 前記保護層が、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とを硬化することにより形成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
  9. 前記保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(1)又は(2)の少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
    {式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。}
  10. 前記保護層に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物が、下記一般式(3)の少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項8又は9に記載の画像形成装置。
    (式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
    を表わす。)
  11. 前記保護層の硬化手段が加熱又は光エネルギー照射手段であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の画像形成装置。
  12. 前記潜像担持体において、支持体と電荷発生層の間に中間層が設けられ、該中間層が電荷ブロッキング層とモアレ防止層からなることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の画像形成装置。
  13. 前記電荷ブロッキング層が絶縁性材料からなり、その膜厚が2.0μm未満、0.3μm以上であることを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
  14. 前記モアレ防止層が無機顔料とバインダー樹脂を含有し、両者の容積比が1/1乃至3/1の範囲であることを特徴とする請求項12又は13に記載の画像形成装置。
  15. 前記静電潜像形成手段に用いられる画像書き込み光の光源波長が、450nmよりも短波長の光源であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の画像形成装置。
  16. 少なくとも静電潜像担持体、静電潜像形成手段、現像手段、転写手段、及び除電手段を有する画像形成要素を複数備えたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の画像形成装置。
  17. 静電潜像担持体と、静電潜像形成手段、現像手段、除電手段及びクリーニング手段から選択される1つ以上の手段とが一体となり、装置本体と着脱自在なプロセスカートリッジを搭載していることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の画像形成装置。
  18. 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、該静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、該可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、静電潜像担持体の残留電荷を光除電する除電工程とを少なくとも有する画像形成方法であって、前記除電工程が500nmよりも短波長の光を照射する除電工程であると共に、前記静電潜像担持体が、支持体と、該支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とからなる感光層を有し、該電荷発生層中に有機電荷発生物質を含有し、かつ電荷輸送層が除電光に対して30%以上の透過率を有することを特徴とする画像形成方法。
  19. 前記静電潜像形成工程に用いられる画像書き込み光の光源波長が、450nmよりも短波長の光源であることを特徴とする請求項18に記載の画像形成方法。
  20. 少なくとも静電潜像形成工程、現像工程、転写工程、及び除電工程を有する画像形成工程を複数備えたことを特徴とする請求項18又は19に記載の画像形成方法。
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