JP5456553B2 - 靱性を有する焼結工程を含む成型用バインダー - Google Patents

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Description

本発明は、セラミック成型、焼成工程によるガラス・金属紛からの成型等、各種焼結工程を含む成型用のバインダーとして好適に用いられる、高靱性・高強度を併せ持つバインダーに関する。
セラミックスを製造する方法は、顆粒加圧成型とグリーンシート(テープ)成型に大きく分かれ、前者で用いられるセラミックバインダーは水系樹脂(水溶液、エマルジョン)が主流であり、後者では一般的にポリビニルブチラール樹脂等のポリマーを、トルエン、ブチルアルコール、ケトン、トリクロロエチレン等の有機溶媒で溶解する溶剤タイプが主流である。
より詳細には、前者の顆粒加圧成型の場合はセラミックス原料微粉末をバインダー・分散剤・可塑剤等と混合して、ボールミル等で泥漿物(スラリー)に調製した後に噴霧乾燥を行って造粒し、顆粒状の原料を型に充填し、圧力を加えて、製品形状に近い形状に成型する方法である。この場合は焼結される前に焼結時の変形(収縮)を考慮して、最終形状に近い形に加工(切削加工)される。その際に生成型品に力が加わる為に、強度が大きくても、もろいと破損による不良品が発生し、靱性を有するポリマーであれば、切削工程での不良品の発生が抑えられ、高靱性・高強度ポリマーが要望されていた。
一方、後者のグリーンシート(テープ)成型方法は、セラミックス原料微粉末を混合して、ボールミル等で泥漿物(スラリー)に調製し、脱泡後、ドクターブレード法やリバースコーター法等で、ポリエステル等のフィルム上に一定の厚さに塗布し、これを加熱乾燥させ、得られたシートを積層して行く方法である。しかしながら、この方法では、溶剤タイプであれば、有機溶剤を使用するために、作業衛生上及び臭気による環境汚染の問題、さらに容器溶剤の乾燥時に発生する爆発事故等の危険性の問題がある。かかる背景から溶剤の代替として水系樹脂を使用することが提案された。
例えばポリビニルアルコール、水溶性アクリル酸エステル、水溶性ポリウレタン等の水溶性バインダーや、特に乾燥後のグリーンシートがアルカリ水に溶解できることにより再利用可能な水系エマルションが開発されているが(特許文献1)、かかる水系バインダーを使用して得られたセラミックグリーンシートでは、水系バインダーがこれらの有機溶媒に溶解しないため、セラミックグリーンシートの積層体を製造することが困難であった。
またその改良として、親水性基量を減量した有機溶媒に溶解可能な水系セラミックバインダーも提案されているが(特許文献2)、これはメタクリル酸エステル系モノマーの含有量が80重量%以上であるモノマー組成物の共重合体であり、強度・ヤング率共に大きく、硬くて脆い生成型品特性を有するものとなり、従って高強度であっても靭性がなく、積層体の破損が生じ易い。また前者の顆粒加圧成型品も切削工程において破損するため、永年の課題であった高靱性・高強度ポリマーの開発は急務ともなっている。
特開昭60−180955号公報 特開平9−175869号公報
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、有機溶剤に可溶(積層性)でありながら、アルカリ水溶解性を併せ持つと同時に、生成型品での高靱性・高強度を発現するセラミック成型等の各種焼結工程を含む成型用バインダーを提供することを目的とする。
本発明の焼結工程を含む成型用バインダーは、上記の課題を解決するために、以下のモノマー(A)〜(D);
(A)カルボキシル基含有ビニルモノマー 1〜10重量%
(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー 1〜30重量%
(C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜85重量%、及び
(D)ポリオキシエチレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー 5〜40重量%を含むモノマー組成物から得られるポリマーである共重合体であるポリマー及び/又はその塩からなるものとする。
また、上記モノマー組成物は、(C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルを20〜80重量%含有することがより好ましい。
本発明のバインダーに用いられるポリマーは重量平均分子量が10万〜200万であることが好ましい。
また、本発明のバインダーに用いられるポリマーはTgが−20〜60℃であることが好ましい。
本発明のバインダーに用いられるポリマーは、乳化重合、転相重合、又は非水溶媒を用いた溶液重合で前記モノマー(A)〜(D)を共重合させ、得られた共重合体を中和することにより得ることができる。
さらに、本発明のバインダーに用いられるポリマーは生成型品の強度とヤング率とから次式で表される靭性が0.4〜0.8の範囲内であることが好ましい。
靭性=強度(MPa)/ヤング率(MPa)
本発明のバインダーは、例えば、セラミックグリーンシートを成型する際に水系バインダーとして機能し、成型後に積層体を製造するときは有機溶媒に溶解して積層体の製造を可能にする上、このバインダーを用いて調製したセラミックグリーンシートに高靱性・高強度を付与し、その破損による不良率を減少させることができる。かつ高度な脱脂性も有するものとなる。
また、顆粒加圧成型セラミックス製造方法においてバインダーとして使用した場合も、得られた生成型品は高靱性・高強度を有するものとなり、切削工程での破損による不良率を低減させることができる。
本発明で用いられるポリマーの原料であるモノマー組成物を構成するモノマー(A)カルボキシル基含有ビニルモノマーの例としては、アクリル酸等のモノカルボン酸やマレイン酸等のジカルボン酸といった炭素数が3〜4の不飽和カルボン酸が挙げられる。
また、モノマー(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマーとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸と炭素数2〜4のヒドロキシアルコールとのエステルが挙げられる。
また、モノマー(C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
さらに、モノマー(D)ポリオキシエチレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、反応性界面活性剤であり、例としては、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールが挙げられ、ポリオキシエチレン単位の繰り返し数は5〜25が好ましく、10〜20がより好ましい。
上記モノマー(A)〜(D)を含むモノマー組成物を構成する各モノマー成分の割合は、モノマー(A)カルボキシル基含有ビニルモノマーが全量の1〜10重量%(以下、%と略記する)であることが好ましく、より好ましくは2〜4%とする。モノマー(A)の量が1%未満では生成型体のアルカリ水溶解性が悪くなり、また10%を超えるとグリーンシートが硬くなりすぎて実用に適さなくなる。
また、モノマー(B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマーは1〜30%であることが好ましく、より好ましくは5〜20%である。モノマー(B)の量が1%未満では、セラミック粉体の分散性が悪くなり、セラミックスラリーが増粘して作業性が低下し、30%を超えるとバインダーの溶剤溶解性が低下し、グリーンシートの積層性が悪化する。
また、モノマー(C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルは5〜85%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%である。モノマー(C)の量が5〜85%の範囲を外れると、グリーンシートの強度が不十分となり易い。この量を20〜80%の範囲内とすることにより、高靱性かつ高強度を有する生成型を提供することができる。
さらに、モノマー(D)ポリオキシエチレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは5〜40%であることが好ましく、より好ましくは10〜30%である。モノマー(D)の量が5%未満ではエマルションの安定が不足し、40%を超えると強度が低下する傾向がある。
本発明で用いるポリマーは、上記成分(A)〜(D)のみを共重合させることによっても得られるか、本発明の目的を離れない範囲であれば、上記モノマーに加えて他の共重合可能なモノマーをさらに用いることもできる。共重合可能なモノマーの例としては、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン等が挙げられる。
本発明で用いるポリマーの製造においては、上記モノマー混合物を乳化重合または転相重合等の生成物がエマルジョンとして得られる方法で製造するのが好ましい。
共重合体の重量平均分子量Mwは10万〜200万が好ましく、より好ましくは20万〜100万の範囲、特に好ましくは25万〜80万の範囲である。バインダー樹脂の重量平均分子量がかかる範囲であれば、焼成前の生成型品を、強度、伸度に優れたものとすることができる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準物質を用いて容易に測定できる。乳化重合による本発明のポリマーの製造は、公知の通常の手法にて容易に行うことができる。乳化剤としてはアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が単独で、或いは2種類以上の併用で用いられる。
重合時に使用する重合開始剤としては、過酢酸、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物系開始剤や、アゾビスシアノ吉草酸、2,2’−アゾビスプロパンアミジン塩酸塩等のアゾ系開始剤の他、レドックス系開始剤が挙げられる。これらは単独で、または2種以上を混合して使用しても良い。
また、重合時には分子量の制御のために連鎖移動剤を配合することもできる。連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン等の汎用のものが使用できる。
さらに、乳化重合や転相重合以外に、非水溶媒を用いた溶液重合により合成することもできる。
このようにして得られた共重合体は、更にアンモニア、有機アミン等で中和してから使用することも可能であり、中和により混和安定性の良好なスラリーを得ることができる。使用できる有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンやトリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンまたはモルホリンが挙げられる。
本発明のバインダーとして使用する上記共重合体あるいは中和後の共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−20℃〜+60℃の範囲であることが好ましい。Tgが60℃以上では、バインダー機能が低下するとともに柔軟な生成型品が得られず、−20℃以下では加圧成型であれば顆粒が粘着性を持ち粘接着し、またグリーンシートの生成型体の表面も粘着性となり、取扱い難くなるとともに、その強度も低下する等の弊害がある。このようなガラス転移温度を有する共重合体の調製に際して上記した範囲内で重合反応に供するモノマーの組み合わせや各モノマーの割合等、Tgに影響を及ぼす要因を適宜調整する必要がある。
なおガラス転移温度(Tg)は以下のフォックス式に従って、バインダー樹脂を構成する各構成ポリマーのTgから計算できる。
フォックス式:100/Tg=Σ(Wn/Tg
Tg:重合体の計算Tg(絶対温度)
Wn:モノマーnの重量分率(%)
Tg:モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
モノマーnのホモポリマーのTg値(Tg)は、例えば、三菱レイヨン(株)などのモノマーメーカーの技術資料や高分子データハンドブック(培風館発行、高分子学会編(基礎編)、昭和61年1月初版)に記載されている。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(105℃)、ポリメタクリル酸イソブチル(PIBMA)(48℃)、ポリメタクリル酸ラウリル(−65℃)、ポリメタクリル酸2−エトキシエチル(−31℃)、ポリアクリロニトリル(100℃)などである。
このようにして調製された本発明のバインダーを使用したセラミックスグリーンシートは以下のようにして製造することができる。まず、セラミックス微粉体100重量部に対してバインダー中の固形分が好ましくは0.5〜25.0重量部、より好ましくは1.0〜15.0重量部となるようにバインダーを加え、更に必要に応じて、水、可塑剤、分散剤及び消泡剤等の成型助剤を適宜加える。
セラミックス微粉体としては、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、フェライト、マンガン等の酸化物系または複合酸化物系セラミックス微粉体、炭化ケイ素、窒化ケイ素、サイアロン等の非酸化物系セラミックス微粉体が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類やフタル酸ジブチル等のフタル酸エステル等が挙げられる。
分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム塩、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
次いで、得られた配合液をボールミル等で十分に混合して水性泥漿組成物とし、これをドクターブレードやリバースコーターを使用してポリエステル等のキャリーフィルム上に均一に塗布し、加熱乾燥することにより製造される。セラミックスグリーンシートの積層体は、表面に有機溶媒を塗布したシートを重ねて圧着し、更に燒結等の工程を経て製造される。
顆粒加圧成型の場合はセラミックス微粉体をバインダー・分散剤・可塑剤等と混合して、ボールミル等で泥漿物(スラリー)に調製した後に噴霧乾燥を行って造粒し、顆粒状の原料を型に充填し、圧力を加えて、製品形状に近い形状に成型して生成型品を得る。この生成型品は焼結前に焼結時の変形(収縮)を考慮して、最終形状に近い形に加工(切削加工)する。セラミックス微粉体、分散剤、可塑剤等の原料は、上記グリーンシートの場合と同様のものを使用することができる。但し、この場合はセラミックス微粉体100重量部に対してバインダー中の固形分が好ましくは0.3〜10.0重量部、より好ましくは0.5〜5.0重量部となるようにバインダーを加える。
本発明において、靭性は強度(MPa)/ヤング率(MPa)比にて評価するものとする。ここで強度は生成型品の強度であり、ヤング率は生成型品のヤング率である。本発明のポリマーでは、これらの比で表される靭性が0.4〜0.8の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると生成型品の破損を抑えることができ、この強度/ヤング率比はポリマー設計の好適な指標となる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
撹拌器、環流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器にイオン交換水150.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム(第一工業製薬(株)製、商品名アクアロンKH−10)5.0重量部、メタクリル酸4.0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル46重量部、アクリル酸エチル20重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(日立化成工業(株)製、ファンクリルFA−400M)20重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.4重量部を仕込み、反応器を70℃に加温して、アゾビスシアノ吉草酸0.25重量部を添加して重合を開始させた。反応器を70℃に保ち、6時間後、アゾビスシアノ吉草酸0.05重量部を追添加して、反応器を75℃に保ち、1時間撹拌して、共重合体のエマルジョン(ポリマー1)を得た。
[実施例2]
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入管のついた反応器に2−プロパノール200重量部を仕込み、窒素ガスを流して溶存酸素を除去し、60℃に加温した。一方、メタクリル酸4.0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル46重量部、アクリル酸エチル20重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール20.0重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.2重量部を仕込んだ滴下ロートとイオン交換水20.0重量部及び2,2−アゾビスアミジノプロパン塩酸塩0.6重量部を仕込んだ滴下ロートより4時間で各溶液を滴下し、共重合体溶液を得た。
次にこの共重合体にアンモニアを加え中和し、イオン交換水400.0重量部を加えた後、減圧下で2−プロパノールを留去し、イオン交換水を追加してポリマー分25%の水性エマルジョン(ポリマー2)を得た。
[実施例3]
撹拌器、環流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器にイオン交換水150.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム(第一工業製薬(株)製、商品名アクアロンKH−10)5重量部、メタクリル酸4.0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル36重量部、アクリル酸エチル30重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(日立化成工業(株)製、商品名ファンクリルFA−400M)20重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.4重量部を仕込み、反応器を70℃に加温して、アゾビスシアノ吉草酸0.25重量部を添加して重合を開始させた。反応器を70℃に保ち、6時間後アゾビスシアノ吉草酸0.05重量部を追添加して、反応器を75℃に保ち、1時間撹拌して、共重合体のエマルジョン(ポリマー3)を得た。
[比較例1]
撹拌器、環流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器にイオン交換水150.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム(第一工業製薬(株)製、商品名アクアロンKH−10)5.0重量部、メタクリル酸4.0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸n−ブチル46重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(日立化成工業(株)製、商品名ファンクリルFA−400M)20.0重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.4重量部を仕込み、反応器を70℃に加温して、アゾビスシアノ吉草酸0.25重量部を添加して重合を開始させた。反応器を70℃に保ち、6時間後アゾビスシアノ吉草酸0.05重量部を追添加して、反応器を75℃に保ち、1時間撹拌して、共重合体のエマルジョン(ポリマー4)を得た。
[比較例2]
撹拌器、環流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器にイオン交換水150.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム(第一工業製薬(株)製、商品名アクアロンKH−10)5.0重量部、メタクリル酸4.0重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル36重量部、メタクリル酸n−ブチル30重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(日立化成工業(株)製、商品名ファンクリルFA−400M)20.0重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.4重量部を仕込み、反応器を70℃に加温して、アゾビスシアノ吉草酸0.25重量部を添加して重合を開始させた。反応器を70℃に保ち、6時間後アゾビスシアノ吉草酸0.05重量部を追添加して、反応器を75℃に保ち、1時間撹拌して、共重合体のエマルジョン(ポリマー5)を得た。
[比較例3]
撹拌器、環流冷却器、温度計、窒素導入管のついた反応器にイオン交換水150.0重量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム(第一工業製薬(株)製、商品名アクアロンKH−10)5.0重量部、メタクリル酸12重量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10重量部、メタクリル酸メチル24重量部、メタクリル酸n−ブチル34重量部、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(日立化成工業ファンクリルFA−400M)20.0重量部、及びn−ドデシルメルカプタン0.4重量部を仕込み、反応器を70℃に加温して、アゾビスシアノ吉草酸0.25重量部を添加して重合を開始させた。反応器を70℃に保ち、6時間後アゾビスシアノ吉草酸0.05重量部を追添加して、反応器を75℃に保ち、1時間撹拌して、共重合体のエマルジョン(ポリマー6)を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜3にて得たポリマー1〜6について、次の方法にてセラミックスグリーンシート及び顆粒加圧成型品を作成した。
<セラミックスグリーンシート作成方法>
適当量のイオン交換水に易焼結アルミナ(昭和電工(株)製、商品名AL−45)100重量部、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩(東亜合成(株)製、商品名AronA6114)0.5重量部、及びポリマー1〜7をその固形分が10重量部になるようにボールミル中で混合し、減圧下に水を留去して水分を調整し、粘度が5000cPの均一な水性泥漿組成物を作成し、これを厚さが0.7mmになるように、ドクターブレードでポリエステルフィルム上に塗布した後、45℃で1時間、次いで80℃で1時間乾燥して、乾燥後の厚さが約0.5mmのセラミックスグリーンシートを得た。
<セラミック顆粒加圧成型による生成型品(切削工程・焼結工程前)の作成方法>
適当量のイオン交換水に易焼結アルミナ(昭和電工(株)製、商品名AL−160SG−3)100重量部、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム塩(東亜合成(株)製、商品名AronA6114)0.5重量部、ポバール3重量部、ポリエチレングリコール2重量部及びポリマー1〜7をその固形分が5重量部になるようにボールミル中で混合した後、スプレードライによる噴霧乾燥を行い、顆粒を作成した。この顆粒を成型器に入れて加圧し、生成型品を得た。
上記生シートにつき、テープ表面平滑性、成型性、アルカリ水溶解性、有機溶媒溶解性、吸湿性、脱脂性、積層性、引張強度、伸び率の試験を行った。また、顆粒加圧成型による生成型品については、吸湿性、密度、3点曲げ強度を測定した。各試験方法及び評価基準は以下の通りである。
<テープ表面平滑性の評価方法>
生シートを用いて、以下の基準に従い目視にて判定した。
○:良好(凹凸、亀裂の無い状態)
×:不良(凹凸または亀裂がみられる状態)
<成型性の評価方法>
セラミックスグリーンシートをポリエステルフィルムから剥がした際にシートの形状が良好であるか否かを観察した。
○:ひび割れのないシートが得られた
×:ひび割れが生じた
<アルカリ水溶解性の評価方法>
セラミックグリーンシートの小片を1%アンモニア水中で振とうし、バインダーの溶解により液が混濁するか否かを観察した。
○:混濁した
×:混濁しなかった
<有機溶媒溶解性の評価方法>
セラミックグリーンシートの小片をトルエン中で振とうし、バインダーの溶解により液が混濁するか否かを観察した。
○:混濁した
×:混濁しなかった
<脱脂性の評価方法>
熱分析器(TG−DTA)の測定条件を昇温速度2℃/分、空気雰囲気下に設定して、樹脂の重量減少率が95%を超える温度(熱分解温度)及び試料容器底部残渣の状態を目視にて判断した(500℃まで加熱)。
○:残渣がなく完全に分解した
×:残渣があった
<積層性の評価方法>
生テープを3枚重ねて、50℃で加圧(150kg/cm)後の層間剥離を指触判断した。
○:密着していた
×:層間脆化又は亀裂が発生していた
<吸湿性評価方法>
調製したグリーンシートを30℃、湿度90%の恒温槽(夏場の温度・湿度設定)に放置し、1時間、2時間、3時間経過後の重量変化から吸湿率を計算し、ポリマー毎に比較した。
吸湿率=吸湿した水分量/ポリマー乾燥重量
<強度/伸び>
調製したグリーンシートを引張強度試験(JIS K7113)に供した。吸湿性測定試験前の試料と吸湿性測定恒温槽3時間後の試料とで評価した。
強度…○:20kg/cm以上、△:5kg/cm以上・20kg/cm未満、×:5kg/cm未満
伸び…○:30%以上、△:10%以上・30%未満、×:10%未満
<顆粒加圧成型による生成型品の密度>
顆粒加圧圧力(t/cm)が0.5、0.8、1.5の3水準について、アルキメデス法による密度測定を行った。評価判断基準は、縦軸に密度(g/cm)、横軸に成型圧力(t/cm)をとり、この3点のグラフを描き、圧力0.8の時の密度を読み取り、この数字が2.26以上であれば○、2.23以上2.26未満であれば△、2.23未満を×とした。
<加圧0.8t/cmでの顆粒加圧成型による生成型品の3点曲げ強度>
セラミックス曲げ試験装置((株)島津製作所製)を用い、JIS R1601(ファインセラミックスの曲げ試験方法)に従い3点曲げ強度(MPa)を測定し、1.7以上を○、1.7未満を×とした。30℃、湿度90%の恒温槽3時間放置前後において、それぞれ測定を行った。
<靭性>
上記により得られた曲げ強度から次式に基づき計算し、下記基準で評価した。
靭性=強度(MPa)/ヤング率(MPa)
○:0.6±0.2以内、×:範囲外
表1に示されるように、本発明の実施例に係るポリマー1〜3はアクリル酸エステルを共重合したことにより、Tgが同じ程度の比較例のポリマー4〜6に比べて強度・伸度のバランスが良く、高靱性・高強度で、生成型体の必要物性の全てを具備するものである。
Figure 0005456553
本発明のバインダーは、各種セラミック成型、ガラス・金属粉からの成型等、各種焼結工程を含む成型用バインダーとして好適に用いられる。

Claims (6)

  1. 以下のモノマー(A)〜(D);
    (A)カルボキシル基含有ビニルモノマー 1〜10重量%
    (B)ヒドロキシル基含有ビニルモノマー 1〜30重量%
    (C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルモノマー 5〜85重量%、及び
    (D)ポリオキシエチレン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー 5〜40重量%を含むモノマー組成物から得られるポリマーである共重合体及び/又はその塩からなる
    ことを特徴とする焼結工程を含む成型用バインダ
  2. 前記モノマー組成物が、(C)アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルを20〜80重量%含有することを特徴とする、請求項に記載の焼結工程を含む成型用バインダ
  3. 前記ポリマーの重量平均分子量が10万〜200万であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の焼結工程を含む成型用バインダ
  4. 前記ポリマーのTgが−20〜60℃であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の焼結工程を含む成型用バインダ
  5. 乳化重合、転相重合、又は非水溶媒を用いた溶液重合で前記モノマー(A)〜(D)を共重合させ、得られた共重合体を中和することにより、アルカリ水溶解性に転換させることにより得られた、請求項1〜のいずれか1項に記載の焼結工程を含む成型用バインダ
  6. 生成型品の強度とヤング率とから次式で表される靭性が0.4〜0.8の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の焼結工程を含む成型用バインダ
    靭性=強度(MPa)/ヤング率(MPa)
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