JP5430995B2 - アッセイ方法およびアッセイ用デバイス - Google Patents

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Description

本発明は、分析対象物(被験物質)を含む試料を高感度かつ高精度に定性及び定量を行うことができるアッセイ方法およびアッセイ用デバイスに関するものである。
近年、検体溶液を展開し、検体溶液中の分析対象物を検出する簡便なデバイスが数多く開発されており、体外診断薬や毒物検出等の各種デバイスが市販されている。このようなデバイスの一例としてイムノクロマトグラフ法を利用したものが挙げられる。イムノクロマトグラフ法は、その判定・測定に重厚な設備・機器を必要とせず、操作が簡便であり、分析対象物を含む可能性のある検体溶液を担体上に滴下した後、約5〜10分間静置するだけで測定結果が得られるもので、簡便・迅速・特異性の高い判定・測定手法として、多くの場面、例えば病院における臨床検査あるいは研究室における検定試験等に広く使われている。
ところで、天然物、毒素、ホルモン、又は農薬等の生理活性物質あるいは環境汚染物質は、従来の一般的なイムノクロマトグラフ法では検出できない極微量で生体に作用する物質が多いため、それらの物質の迅速、簡便、且つ高感度なイムノクロマトグラフ法の開発が求められている。このため、分析対象物を含む検体溶液を担体に滴下して分析対象物を検出するといった単純な工程のものだけでなく、例えば、分析対象物を含む検体溶液を担体に滴下して、分析対象物を担体に固定化した後、これを洗浄液で洗浄し、固定化した分析対象物に反応基質液や増幅溶液等を接触させて、分析対象物からのシグナルを増幅して検出する等の方法が行われるようになってきている。
例えば特許文献1には、分析対象物を高感度に分析することができるイムノクロマトグラフ法として、検出部位に金属コロイド等の増幅液を滴下する方法が記載されている。また、特許文献2には、分析物捕捉試薬が結合された固相担体に対して、分析対象物を含む検体溶液を酵素標識抗体と接触させてから流し、担体上に分析対象物−酵素標識抗体を結合させた後、酵素基質液を流すことによって、酵素基質を反応させ、シグナルを検出する方法が記載されている。
上記の特許文献1や2に記載されているイムノクロマトグラフ法によれば、酵素や銀によってシグナルを増幅することができるため、微量の分析対象物を分析することが可能である。
特開2002−202307号公報 特許第3309977号公報
しかし、特許文献1や2に記載されているイムノクロマトグラフ法では、親疎水性や静電的相互作用など固相担体との分子的な相互作用の差により酵素基質液や金属コロイド増幅液等のシグナル増幅液や洗浄液等の液剤の成分が固相担体に均一に送液されないことがあるため、均一な反応を固相担体中で進行させるのが困難であり、高精度、高感度の検出を行うことには限界がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、均一な液展開が可能であって、高精度かつ高感度な測定を行うことが可能なアッセイ方法およびアッセイ用デバイスを提供することを目的とするものである。
本発明のアッセイ方法は、少なくとも1以上の被験物質を含有する検体溶液と、試薬溶液、増幅溶液または検出溶液の3種の液体のうちいずれか1種類以上の液体とを、前記被験物質に対する特異的結合物質を含有する不溶性担体上に形成されている検出部位に送液することによって、前記検体溶液中に含まれる前記被験物質の定性または定量を行う検出方法であって、前記不溶性担体と、前記不溶性担体に向き合っている面を持つ部材との隙間に、試薬溶液、増幅溶液または検出溶液の3種の液体のうちいずれか1種類以上の液体を注入し充填させることを特徴とするものである。
本発明のアッセイ用デバイスは、被験物質に対する特異的結合物質を含有する検出部位を有する第1の不溶性担体が収容された第1のデバイス部品と液体を注入するための孔を有する第2のデバイス部品とからなる複合部品のアッセイ用デバイスであって、前記第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する面を有する部位が前記第2のデバイス部品に設けられていることを特徴とするものである。
より好ましい本発明のアッセイ用デバイスは、被験物質に対する特異的結合物質を含有する検出部位を有する第1の不溶性担体が収容された第1のデバイス部品と液体を注入するための孔を有する第2のデバイス部品からなる複合部品に、液体を展開するための第2の不溶性担体と、液体を吸収するための第3の不溶性担体とが収容されたアッセイ用デバイスであって、前記第2の不溶性担体と前記第3の不溶性担体とを、前記第1の不溶性担体の前記検出部位において重なる位置関係で保持するとともに、前記第1の不溶性担体、前記第2の不溶性担体および前記第3の不溶性担体とを互いに接触しない状態で収容してなり、前記第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する押付け面を有し、前記検出部位に向けて押圧されることにより、前記押付け面が変位して、前記第1の不溶性担体の上から前記第2の不溶性担体と前記第3の不溶性担体とを前記第1の不溶性担体に押し付ける押付け部が、前記第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する前記第2のデバイス部品に設けられていることを特徴とするものである。
前記押付け部を前記検出部位に向かって押圧したときの、前記検出部位と前記押付け面との隙間が0.01〜1mmであることが好ましい。
前記押付け部に対向する前記第1のデバイス部品の内面に、前記押付け部の一部に当接して前記押付け面の変位を規制するリブが設けられていることが好ましい。
前記検出部位と前記押付け面との隙間に対して液体を送液することが可能な液体貯蔵ポットが前記第1のデバイス部品および/または前記第2のデバイス部品に設けられ、該液体貯蔵ポットがラミネートフィルムで封止されていることが好ましく、前記液体貯蔵ポットに銀イオンを含む増幅溶液が注入されていることが好ましい。
本発明のアッセイ方法は、少なくとも1以上の被験物質を含有する検体溶液と、試薬溶液、増幅溶液または検出溶液の3種の液体のうちいずれか1種類以上の液体とを、前記被験物質に対する特異的結合物質を含有する不溶性担体上に形成されている検出部位に送液することによって、前記検体溶液中に含まれる前記被験物質の定性または定量を行う検出方法であって、前記不溶性担体と、前記不溶性担体に向き合っている面を持つ部材との隙間に、試薬溶液、増幅溶液または検出溶液の3種の液体のうちいずれか1種類以上の液体を注入し充填させると、隙間の毛細管現象によって、均一に液体を展開することができ、高精度かつ高感度な測定を行うことが可能となる。
本発明のアッセイ用デバイスの一実施の態様を示す分解概略模式図である。 第1のデバイス部品の不溶性担体装填前の構成を示す概略模式図である。 第2のデバイス部品の内面の構成を示す概略模式図である。 図1のIV−IV線断面図である。 図4において、押付け部と封止破り部位がともに押圧された状態を示す概略断面図である。
以下、本発明のアッセイ用デバイスの一実施の態様を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明のアッセイ用デバイスの一例として、イムノアッセイ(免疫学的測定法)に使用することができるアッセイ用デバイスの一実施の態様を示す分解概略模式図、図2は第1のデバイス部品の不溶性担体装填前の構成を示す概略模式図、図3は第2のデバイス部品の内面の構成を示す概略模式図、図4は図1のIV−IV線断面図である。なお、以下ではイムノアッセイの一実施の態様として、サンドイッチ法を例にとって説明するが、特にこれに限定されるものではなく、競合法などのその他イムノアッセイも好適に実施することが可能である。
図1に示すように、本発明のアッセイ用デバイス1は、第1のデバイス部品10と第2のデバイス部品20とが上下に接合されてなるもので、第1のデバイス部品10は、被験物質に対する特異的結合物質を含有する検出部位14を有する第1の不溶性担体11と、液体を展開するための第2の不溶性担体12と、液体を吸収するための第3の不溶性担体13とを収容してなる。
第1のデバイス部品10は、第1の不溶性担体11の横に設けられたリブ15の凹部(切欠け部)によって、第2の不溶性担体12と第3の不溶性担体13とを、第1の不溶性担体11の検出部位14において重なる位置関係で保持するとともに、図4に示すように、第1の不溶性担体11、第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13を互いに接触しない状態で収容している。第1の不溶性担体11の下には、図2に示すように、第1の不溶性担体11の検出部位14を第1のデバイス部品10の表面(アッセイ用デバイス1の裏面)から観察できる観察窓16が設けられている。また、第2の不溶性担体12の下には洗浄液貯蔵ポット17が設けられ、洗浄液貯蔵ポット17の上部はラミネートフィルムで封止されている。
第2のデバイス部品20の表面には、第1のデバイス部品10に収容されている第1の不溶性担体11に対して披験物質を含有する検体溶液を注入するための検体溶液注入孔31と、第1の不溶性担体11に対して増幅液を供給する増幅溶液貯蔵ポット32がセットされた増幅溶液貯蔵ポット受け部33が設けられている。増幅溶液貯蔵ポット32は、増幅液が充填された状態でラミネートフィルムにより封止され、この封止された部分を下にしてセットされている。また、増幅溶液貯蔵ポット受け部33の内部には増幅溶液貯蔵ポット32に充填されている増幅溶液を第1の不溶性担体11に対して供給する際に、増幅溶液貯蔵ポット32を押し込むと、増幅溶液貯蔵ポット32のラミネートフィルムを破ることが可能な封止破り突起部位(図示せず)が設けられている。
第2のデバイス部品20の内面には、第1の不溶性担体11の検出部位14に対向する位置に、図3および図4に示すように、第1の不溶性担体11の検出部位14に対して平行な押付け面18aを有し、検出部位14に向けて押圧されることにより、押付け面18aが変位して、第1の不溶性担体11の上から第2の不溶性担体12と第3の不溶性担体13とを第1の不溶性担体11に接触させるとともに、第1の不溶性担体11と押付け面18aの間に隙間を形成するための押付け部18が設けられている。
第2のデバイス部品20の内面の増幅溶液貯蔵ポット受け部33に対応する位置には増幅溶液注入孔35が設けられている。この増幅溶液注入孔35は、封止破り突起部位が増幅溶液貯蔵ポット32のラミネートフィルムを破ると、この増幅溶液注入孔35から、増幅溶液貯蔵ポット32に充填されている増幅溶液が、第1の不溶性担体11と押付け面18aの間に形成された隙間に送液されて、第1のデバイス部品10に装填されている第1の不溶性担体11の検出部位14に送液される位置に設けられている。
第2のデバイス部品20の表面には押付け部18の対応する位置に押し付け部位34が設けられている。また、第2のデバイス部品20の内面の、第1のデバイス部品10の洗浄液貯蔵ポット17に対向する位置には、洗浄液貯蔵ポット17の上部を封止しているラミネートフィルムを破るための封止破り部位19aが設けられ、第2のデバイス部品20の表面には封止破り部位19aを押し込むための封止破り部19が設けられている。
第1の不溶性担体11は、検体溶液を滴下する部分である試料添加パッド21、披験物質または特異的結合物質のいずれか一方と結合可能な標識物質が固定化された標識物質保持パッド22、披験物質に対する特異的結合物質を含有する検出部位14を有するクロマトグラフ担体23、及び送液された検体溶液を吸収する吸収パッド24からなっている。なお、ここでは説明を簡単にするために検出部位14として検出ライン14aを1つ設けた態様について説明するが、検出ラインはそれぞれ異なる特異的結合物質を含有するものを複数設けてもよい。こうすることによって検体溶液に複数の披験物質が含まれる場合に、一度に複数の披験物質を検出することが可能となる。また、クロマトグラフ担体23には、所望により、コントロ−ル用特異的結合物質を固定化した領域(コントロ−ル部位)を設けてもよい。
次ぎに、本発明のアッセイ用デバイスを用いた被験物質の検出方法の手順を説明する。ここでは液体として検体溶液、試薬溶液として洗浄液および増幅溶液を用いる場合を例にとって説明する。まず、検体溶液を、第2のデバイス部品20の検体溶液注入孔31から、第1のデバイス部品10に収容されている第1の不溶性担体11の試料添加パッド21に点着する。点着した検体溶液は第1の不溶性担体11の毛細管力によって標識物質保持パッド22の方向へと送液される。標識物質保持パッド22には披験物質と結合可能な標識物質が含有されているため、検体溶液中の披験物質は、標識物質保持パッド22を送液される間に、この標識物質によって標識される。
標識された披験物質は毛細管力によってクロマトグラフ担体23の方向へとさらに移動し、特異的結合物質を固定化した領域である検出ライン14aで捕捉される。つまり、検出ライン14aでは特異的結合物質−披験物質−標識物質の複合体が形成されることになる。捕捉されなかった披験物質や結合しなかった未反応標識物質等は吸収パッド24に吸収される。この検体溶液を送液する段階においては、図4に示すように第1の不溶性担体11と、第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13とは互いに接触しない状態となっている。このように、第1の不溶性担体11、第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13を互いに接触しない状態とすることにより、検体溶液を送液する段階においては、第1の不溶性担体11にのみ検体溶液を送液することが可能となり、第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13に検体溶液が浸潤することがなく、稀少な検体溶液を検出ライン14aで無駄なく捕捉することが可能となる。
次ぎに、検出ライン14aに特異的結合反応以外で残存している未反応標識物質等クロマトグラフ担体23から洗浄することで除去する。図5を用いて説明する。図5は図4において、押付け部および封止破り部位がともに押圧された状態を示す概略断面図である。この洗浄工程においては、第2のデバイス部品20の表面に設けられている押し付け部位34を、第1のデバイス部品10に向けて押圧する。これによって、第2のデバイス部品20の内面に設けられた押付け部18の押付け面18aが変位して、クロマトグラフ担体23と第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13とが部分的に接触する状態となる。
このとき、押付け面18aは押付け部18に設けられた切欠け部18bがリブ15に当接するため、押付け面18aの変位が規制され、クロマトグラフ担体23と押付け面18aとの間には隙間(クリアランス)Pが形成される。この隙間Pは0.01〜1mm程度が好ましい。0.01mm未満の場合には、後述する増幅液等が浸潤することが困難であり、一方、1mmよりも大きくなると毛細管力が発揮されず、洗浄液や増幅液等の均一な液展開が難しくなる。リブ15および押付け部18は、クロマトグラフ担体23と押付け面18aとの間の隙間が上記範囲となるように構成されることが好ましい。
一方、第1のデバイス部品10に設けられた洗浄液貯蔵ポット17には洗浄液が充填されており、第2のデバイス部品20の表面に設けられた封止破り部19を押すことによって、封止破り部位19aが、洗浄液貯蔵ポット17の上部を封止しているラミネートフィルムを破り、第2の不溶性担体12の一端が洗浄液貯蔵ポット17に充填されている洗浄液に浸漬する。そして、第2、第1、第3の不溶性担体の毛細管力によって、第2の不溶性担体12から第1に不溶性担体11へ、第1の不溶性担体11から第3の不溶性担体13に向けて洗浄液が送液される。
また、上記のとおり、検体溶液が流れる流路(第1の不溶性担体11)と洗浄液が流れる流路(第2の不溶性担体12、第3の不溶性担体13)の交わりが最小限であるため、検体溶液の送液によって送液方向の下流(吸収パット24)に溜まった未結合の被験物質や検体溶液に含まれる夾雑物が再度、検出部位に流れることがなく、洗浄液を多量に用いなくても、検出部位の洗浄を効果的に行うことが可能であり、高精度の検出を行うことが可能である。
続いて検出部位14に第2のデバイス部品20に設けられた増幅溶液貯蔵ポット32より、増幅溶液を送液する。増幅溶液の送液に際しては、増幅溶液貯蔵ポット32を第1のデバイス部品10の方向に押圧することにより行う。この押圧により幅溶液貯蔵ポット受け部33の内部に設けられた封止破り突起部位が、増幅溶液貯蔵ポット32の底部のラミネートフィルムを破り、第2のデバイス部品20の内面に設けられた増幅溶液注入孔35から、第1の不溶性担体11の検出部位14に向けて増幅溶液が送液される。このときも、クロマトグラフ担体23と押付け面18aとの間には隙間Pが形成されており、この隙間Pによって増幅溶液はクロマトグラフ担体23上を均一に送液されることになる。これによって、検出部位14に捕捉されている複合体の標識物質は均一に増幅されることになる。また、増幅溶液の送液は検出部位14に対して垂直方向からの送液となり、このように送液することによって、増幅溶液の液量を節約することも可能である。
増幅後、第1のデバイス部品10の観察窓16より、検出ライン14を目視あるいは光源等を利用して観察、測定することにより披験物質の検出を高精度かつ高感度に行うことができる。
なお、ここでは、検体溶液、洗浄液(試薬溶液)、増幅溶液の3種類の複数の液体を例にとって説明したが、検体溶液を含むものであれば、検体溶液、増幅溶液および検出溶液といった組合せ、検体溶液、試薬溶液および検出溶液といった組合せ等にも適用が可能である。
以下、本発明のアッセイ用デバイスに用いられる検体溶液、試薬溶液などの各種溶液、標識物質、不溶性担体等について説明する。
(検体溶液)
本発明のアッセイ用デバイスを用いて分析することのできる検体溶液としては、被験物質(天然物、毒素、ホルモンまたは農薬等の生理活性物質あるいは環境汚染物質等)を含む可能性のあるものである限り、特に限定されるものではなく、例えば、生物学的試料、特には動物(特にヒト)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、又は喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚、それらを含むと考えられる搾過検体(スワブ)、うがい液、又は動植物それ自体若しくはそれらの乾燥体を後述の希釈液で希釈したもの等を挙げることができる。
上記検体溶液はそのままで、あるいは、検体溶液を適当な抽出用溶媒を用いて抽出して得られる抽出液の形で、さらには、この抽出液を適当な希釈剤で希釈して得られる希釈液の形、若しくは抽出液を適当な方法で濃縮した形で用いることができる。抽出用溶媒としては、通常の免疫学的分析法で用いられる溶媒(例えば、水、生理食塩液、又は緩衝液等)、あるいは、これらの溶媒で希釈することにより直接特異的な結合反応(例えば、抗原抗体反応)を実施することができる水混和性有機溶媒を用いることもできる。
(標識物質)
本発明で使用することができる標識物質としては、一般的なイムノクロマトグラフ法で用いられるような金属微粒子、着色ラテックス粒子、酵素など、有色で視認できる、または、反応により検出できるようになる標識物であれば特に限定されることなく用いることができるが、標識物質を触媒とした金属イオンの還元反応によって、標識物質への金属の沈着でシグナルを増幅する場合には、その触媒活性の観点から金属微粒子が好ましい。
金属微粒子としては、金属コロイド又は金属硫化物、その他金属合金、また金属を含むポリマ−粒子標識を用いることができる。粒子(又はコロイド)の平均粒径は、1nm〜10μmの範囲が好ましい。より詳細には、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、鉄コロイド、水酸化アルミニウムコロイド、およびこれらの複合コロイドなどが挙げられ、好ましくは、金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、およびこれらの複合コロイドであることが望ましい。特に、金コロイドと銀コロイドが適当な粒径において、金コロイドは赤色、銀コロイドは黄色を示し視認度が高いという観点からより好ましい。金属コロイドの平均粒径としては、約1〜500nmが好ましく、さらには1〜100nmがより好ましい。
(特異的結合物質)
特異的結合物質としては、被検物質に対して親和性を持つものならば特に限定されることはなく、一例として抗体を挙げることができる。例えば、その被験物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その被験物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]を用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。
(標識物質のシグナル増幅)
標識物質として金属コロイド標識又は金属硫化物標識、その他金属合金標識、また金属を含むポリマ−粒子標識を用いるアッセイの場合には、金属系標識の信号を増幅させることができる。具体的には、被験物質と標識物質の複合体の形成後に、無機銀塩、有機銀塩などの銀を含む化合物から供給される銀イオンおよび還元剤を接触させ、還元剤によって銀イオンを還元して銀粒子を生成させると、その銀粒子が金属系標識を核として金属系標識上に沈着するので、金属系標識が増幅され、被験物質の分析を高感度に実施することができる。
(第1の不溶性担体)
第1の不溶性担体(以下、イムノクロマトグラフ用ストリップともいう)は図1に示すように、被験物質と結合可能な特異的結合物質を含む少なくとも1つの検出ラインを有する担体であり、展開方向の上流から下流に向かって、試料添加パッド、標識物質保持パッド、クロマトグラフ担体、及び吸収パッドに分画され、この順に、粘着シート上に配置されてなる。イムノクロマトグラフ用ストリップの材質は、多孔性であることが好ましく、例えば、ニトロセルロース膜、セルロース膜、アセチルセルロース膜、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、ナイロン膜、ガラス繊維、不織布、布、または糸等が好ましく挙げられる(なお、各パッド、クロマトグラフ担体のより好ましい材質は下記にそれぞれ記載する)。
クロマトグラフ担体には、披験物質に対する特異的結合物質を固定化させて検出ラインや所望によりコントロール部位が作製される。特異的結合物質は、特異的結合物質をクロマトグラフ担体の一部に物理的または化学的結合により直接固定化させてもよいし、特異的結合物質をラテックス粒子などの微粒子に物理的または化学的に結合させ、この微粒子をクロマトグラフ担体の一部にトラップさせて固定化させてもよい。なお、クロマトグラフ担体は、特異的結合物質を固定化後、不活性蛋白による処理等により非特異的吸着防止処理をして用いるのが好ましい。
標識物質保持パッドは、前述の標識物質を含む懸濁液を調製し、その懸濁液を適当なパッド(例えば、グラスファイバーパッド)に塗布した後、それを乾燥することにより調製することができる。標識物質保持パッドの材質としては、例えば、セルロース濾紙、グラスファイバー、及び不織布等が挙げられる。
試料添加パッドは添加された被験物質を含む検体試料を点着する部分であって、試料中の不溶物粒子等を濾過する機能をも兼ねる部分である。その材質は、セルロース濾紙、ガラス繊維、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、及び綿布等の均一な特性を有するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、分析の際、試料中の被験物質が試料添加部の材質に非特異的に吸着し、分析の精度を低下させることを防止するため、試料添加パッドには、予め非特異的吸着防止処理して用いることもある。
吸収パッドは、添加された試料がクロマト移動により物理的に吸収されると共に、クロマトグラフ担体の検出ラインに不溶化されない未反応標識物質等を吸収除去する部位であり、セルロ−ス濾紙、不織布、布、セルロースアセテート等吸水性材料が用いられる。添加された試料のクロマト先端部が吸収部に届いてからのクロマトの速度は、吸収材の材質、大きさなどにより異なるので、その選定により被験物質の測定に合った速度を設定することができる。
(第2の不溶性担体−送液用不溶性担体)
第2の不溶性担体は、洗浄液を毛細管力により第1の不溶性担体に送液することができるものであれば特に限定されるものではなく、グラスファイバーパッドやセルロースメンブレン、ニトロセルロースメンブレンなどを用いることができる。
(第3の不溶性担体−吸収用不溶性担体)
第3の不溶性担体は、第1の不溶性担体に浸潤した洗浄液を吸水することができる物質であれば特に限定されるものではなく、セルロース、ニトロセルロース、グラスファイバー、それらの混合体などを用いることができる。
(試薬溶液)
試薬溶液は、増幅溶液や検出溶液の補足的な役割を持つ薬品を含む溶液を意味し、アッセイにおいて洗浄機能を有する液、洗浄液もこれに含まれる。例えば、増幅溶液が後述する銀イオン溶液である場合には、その銀イオンの還元剤となるハイドロキノンや2価鉄イオン溶液などが挙げられる。ペルオキシダーゼ酵素での増幅をする場合には、過酸化水素の溶液が試薬溶液となる。また、アッセイ系において洗浄機能を有する洗浄液もこれに含まれる。
洗浄液は特異的な結合反応以外でクロマトグラフ担体内に残存している、つまり非特異的に残存している標識物質を洗浄するための液体であれば特に限定されるものではなく、単なる水やエタノールなどの溶剤単独でも良いし、例えば1%BSA入りのPBSバッファーや界面活性剤等の溶液等を用いることができる。また、洗浄液として、後述する銀イオンを含む液体、銀イオンの還元剤を含む液体を用いることもできる。なお、洗浄液は展開途中に非特異的に残存した標識物質を洗浄しながら展開するので標識物質を含みながら展開されることになるが、展開される前の洗浄液は洗浄効果を高めるために、標識物質を含んでいない液を用いる。なお、洗浄効果を上げる為にそのpHを調整したり、界面活性剤成分やBSAなどのタンパク質、ポリエチレングリコールなどの高分子化合物を加えた洗浄液を用いてもよい。
(増幅溶液)
増幅溶液は、含まれる薬剤が標識物質や被験物質の作用により、触媒的に反応することで、着色した化合物や発光などを生じ、シグナルの増幅を起こすことができる溶液であり、例えば、金属標識上で、物理現像により金属銀の析出を起こす銀イオン溶液や、ペルオキシダーゼ標識と過酸化水素の作用により色素となる、フェニレンジアミン化合物とナフトール化合物の溶液などが挙げられる。
詳細には、写真化学の分野での一般書物(例えば、「改訂写真工学の基礎-銀塩写真編-」(日本写真学会編、コロナ社)、「写真の化学」(笹井明、写真工業出版社)、「最新処方ハンドブック」(菊池真一他、アミコ出版社))に記載されているような、いわゆる現像液を用いることができ、液中に銀イオンを含み、液中の銀イオンが現像の核となるような金属コロイド等を中心に還元される、いわゆる物理現像液であれば、特に限定されることなく増幅溶液として用いることができる。
以下、増幅溶液として銀イオンを含む化合物と銀イオンの還元剤等について説明する。
(銀イオンを含む化合物)
銀イオン含有化合物としては、有機銀塩、無機銀塩、もしくは銀錯体を用いることができる。好ましくは、水などの溶媒に対して溶解度の高い銀イオン含有化合物であり、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀、酪酸銀、チオ硫酸銀などが挙げられる。特に好ましくは硝酸銀である。銀錯体としては、水酸基やスルホン基など水溶性基を有する配位子に配位された銀錯体が好ましく、ヒドロキシチオエーテル銀等が挙げられる。
無機銀塩、もしくは銀錯体は、銀として一般に0.001モル/m2〜0.2モル/m2、好ましくは0.01モル/m2〜0.05モル/m2含有されることが好ましい。
(銀イオンの還元剤)
銀イオンの還元剤は、銀イオンを銀に還元することができれば、無機・有機のいかなる材料、またはその混合物でも用いることができる。
無機還元剤としては、Fe2+、V2+、Ti3+、などの金属イオンで原子価の変化し得る還元性金属塩、還元性金属錯塩を好ましく挙げることができる。無機還元剤を用いる際には、酸化されたイオンを錯形成するか還元して、除去するか無害化する必要がある。例えば、Fe2+を還元剤として用いる系では、クエン酸やEDTAを用いて酸化物であるFe3+の錯体を形成し、無害化することができる。本系ではこのような無機還元剤を用いることが好ましく、より好ましくはFe2+の金属塩が好ましい。
なお、湿式のハロゲン化銀写真感光材料に用いられる現像主薬(例えばメチル没食子酸塩、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン、3−ピラゾリドン類、p−アミノフェノール類、p−フェニレンジアミン類、ヒンダードフェノール類、アミドキシム類、アジン類、カテコール類、ピロガロール類、アスコルビン酸(またはその誘導体)、およびロイコ色素類)、および本分野での技術に熟練しているものにとって明らかなその他の材料、例えば米国特許第6,020,117号に記載されている材料も用いることができる。
還元剤としては、アスコルビン酸還元剤が好ましい。有用なアスコルビン酸還元剤は、アスコルビン酸と類似物、異性体とその誘導体を含み、例えば、D−またはL−アスコルビン酸とその糖誘導体(例えばγ−ラクトアスコルビン酸、グルコアスコルビン酸、フコアスコルビン酸、グルコヘプトアスコルビン酸、マルトアスコルビン酸)、アスコルビン酸のナトリウム塩、アスコルビン酸のカリウム塩、イソアスコルビン酸(またはL−エリスロアスコルビン酸)、その塩(例えばアルカリ金属塩、アンモニウム塩または当技術分野において知られている塩)、エンジオールタイプのアスコルビン酸、エナミノールタイプのアスコルビン酸、チオエノ−ルタイプのアスコルビン酸等を好ましく挙げることができ、特にはD、LまたはD,L−アスコルビン酸(そして、そのアルカリ金属塩)若しくはイソアスコルビン酸(またはそのアルカリ金属塩)が好ましく、ナトリウム塩が好ましい塩である。必要に応じてこれらの還元剤の混合物を用いることができる。
(検出溶液)
検出溶液とは、含まれる薬剤が標識物質や被験物質などと反応し、変色、着色した化合物の生成、発光等の変化が生じる溶液を意味し、例えば、被験物質であるカルシウムイオンと錯体化することで呈色するオルソクレゾールフタレインコンプレキソンや、被験物質であるタンパク質と反応し変色する銅イオン溶液などが挙げられる。また、被験物質に対して特異的に結合する標識化された複合体の溶液もこれに含まれる。例えば、ハイブリダイゼーションによりDNAやRNAを検出する標識化DNAや標識化RNA、抗原を検出する抗体感作粒子や抗体標識化酵素などが挙げられる。
(その他の助剤)
試薬溶液、検出溶液、増幅溶液のその他の助剤としては、緩衝剤、防腐剤、例えば酸化防止剤または有機安定剤、速度調節剤を含む場合がある。緩衝剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウムまたはこれらの塩、またはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用いた緩衝剤、その他一般的化学実験に用いられる緩衝剤を用いることができる。これら緩衝剤を適宜用いて、その増幅溶液に最適なpHに調整することができる。
以下に本発明のアッセイ用デバイスを実施例を用いてさらに詳細に説明する。
(1)インフルエンザA型B型検出用イムノクロマトグラフ用ストリップの作製
(1-1) 抗インフルエンザA型B型抗体修飾金コロイドの作製
(1-1-1) 抗インフルエンザA型抗体修飾金コロイドの作製
直径50nm金コロイド溶液(EM.GC50、BBI社)9mlに50mM KH2PO4バッファー(pH 7.5)1mlを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、90μg/mlの抗インフルエンザA型モノクローナル抗体(Anti-Influenza A SPTN-5 7307、Medix Biochemica社)溶液1mlを加え攪拌した。10分間静置した後、1%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000、品番168-11285、和光純薬)水溶液を550μl加え攪拌し、続いて10%牛血清アルブミン(BSA FractionV、品番A-7906、SIGMA)水溶液を1.1ml加え攪拌した。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心(himacCF16RX、日立)した後、1ml程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20mlの金コロイド保存液(20mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05 % PEG(Mw.20000), 150mM NaCl, 1% BSA, 0.1%NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1ml程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド(50nm)溶液を得た。
(1-1-2)抗インフルエンザB型抗体修飾金コロイドの作製
直径50nm金コロイド溶液(EM.GC50、BBI社)9mlに50mM KH2PO4バッファー(pH 8.0 )1mlを加えることでpHを調整した金コロイド溶液に、80μg/mlの抗インフルエンザB型モノクローナル抗体(MONOTOPE aby Influenza B Virus (nuclear) Purified 1131、ViroStat, Inc.)溶液1mlを加え攪拌した。10分間静置した後、1%ポリエチレングリコール(PEG Mw.20000、品番168-11285、和光純薬)水溶液を550μl加え攪拌し、続いて10%牛血清アルブミン(BSA FractionV、品番A-7906、SIGMA)水溶液を1.1ml加え攪拌した。この溶液を8000×g、4℃、30分間遠心(himacCF16RX、日立)した後、1ml程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散した。この後、20mlの金コロイド保存液(20 mM Tris-HClバッファー(pH 8.2), 0.05 % PEG(Mw.20000), 150mM NaCl,1%BSA, 0.1 % NaN3)に分散し、再び8000×g、4℃、30分間遠心した後、1ml程度を残して上清を取り除き、超音波洗浄機により金コロイドを再分散し、抗体修飾金コロイド(50nm)溶液を得た。
(1-2)金コロイド抗体保持パッド(標識物質保持パッド)の作製
上記(1-1)で作製したインフルエンザA型、B型抗体修飾金コロイドを、1:1で混合し、金コロイド塗布液(20mM Tris-Hclバッファー(pH 8.2), 0.05 % PEG(Mw.20000), 5%スクロース)及び水により希釈し、520nmのOD(optical density)が3.0となるように希釈した。この溶液を、8mm×150mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社)1枚あたり0.8mlずつ均一に塗布し、一晩減圧乾燥し、金コロイド抗体保持パッドを得た。
(1-3)抗体固定化メンブレン(クロマトグラフ担体)の作製
25mm×200mmに切断したニトロセルロースメンブレン(プラスチックの裏打ちあり、HiFlow Plus HF120、ミリポア社)に関し以下のような方法により抗体を固定し抗体固定化メンブレンを作製した。メンブレンの長辺を下にし、下から7mmの位置に、1.5mg/mlとなるように調製した固定化用抗インフルエンザA型モノクローナル抗体(Anti-Influenza A SPTN-5 7307、Medix Biochemica社)溶液をインクジェット方式の塗布機(BioDot社)を用いて幅0.7mm程度のライン状に塗布した。同様に、下から10mmの位置に、1.5mg/mlとなるように調製した固定化用抗インフルエンザB型モノクローナル抗体(MONOTOPE aby Influenza B Virus (nuclear) Purified 1131、ViroStat, Inc.)溶液を幅0.7mm程度のライン状に塗布した。さらに同様に、下から13 mmの位置に、0.5mg/mlとなるように調製したコントロール用抗マウスIgG抗体(抗マウスIgG(H+L),ウサギF(ab')2, 品番566-70621、和光純薬)溶液をライン状に塗布した。塗布したメンブレンは、温風式乾燥機で50℃、30分間乾燥した。ブロッキング液(0.5 w%カゼイン(乳由来、品番030-01505、和光純薬)含有50mMホウ酸バッファー(pH 8.5))500mlをバットに入れ、そのまま30分間静置した。その後、同様のバットに入れた洗浄・安定化液(0.5w%スクロースおよび0.05w%コール酸ナトリウムを含む50mM Tris-HCl(pH 7.5)バッファー)500mlに移して浸し、そのまま30分間静置した。メンブレンを液から取り出し、室温で一晩乾燥し、抗体固定化メンブレン(ライン塗布)とした。
(1-4)イムノクロマトグラフ用ストリップの作製
バック粘着シート(20mm×150mm(ARcare9020、ニップンテクノクラスタ社))に、(1-3)で作製した抗体固定化メンブレンを3mm重なるように貼り付けた。その際メンブレン長辺側のうち、抗インフルエンザA型抗体ライン側にバック粘着シートを貼り付けた。次ぎに、抗体固定化メンブレンに3mm重なるように(1-2)で作製した金コロイド抗体保持パッドを貼り付けた。試料添加パッド(18mm×150mmに切ったグラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社))をメンブレンの貼っていない方のバック粘着シートの長辺に合わせ、金コロイド保持パッドを挟み込むように貼り付けた。続いて、メンブレンのコントロール用抗マウスIgG抗体ライン側を、バック粘着シート(20mm×150mm)と吸収パッド(20 mm×150 mm)で挟み込むように貼り付けた。これら重ね張り合わせた部材(イムノクロマト本体部材)を、部材の長辺側を7mm幅になるように短辺に平行にギロチン式カッター(CM4000、ニップンテクノクラスタ社)で切断していくことで、7mm×60mmのイムノクロマトグラフ用ストリップを作製した。
(1-5)銀増幅溶液の作製
(1-5-1-1)還元剤溶液Aの作製
水290gに、硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬、095-00995)を水に溶解して作製した1mol/lの硝酸鉄水溶液23.6ml、クエン酸(和光純薬、038-06925)13.1gを溶解させた。全て溶解したら、スターラーで攪拌しながら硝酸(10重量%)を36ml加え、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(和光純薬、091-00855)を60.8g加えこれを還元剤溶液Aとした。
(1-5-1-2)還元剤溶液Bの作製
水290gに、硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬、095-00995)を水に溶解して作製した1mol/lの硝酸鉄水溶液23.6ml、クエン酸(和光純薬、038-06925)13.1g、ドデシルアミン(和光純薬、123-00246)0.2g、1,12-ジアミノドデカン(和光純薬、042-25702)0.2gを溶解させた。全て溶解したら、スターラーで攪拌しながら硝酸(10重量%)を36ml加え、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(和光純薬、091-00855)を40.5g加えこれを還元剤溶液Bとした。
(1-5-1-3)還元剤溶液Cの作製
水320gに、硝酸(10重量%)を36ml、ドデシルアミン(和光純薬、123-00246)0.2g、1,12-ジアミノドデカン(和光純薬、042-25702)0.2gを溶解させた。全て溶解したら、スターラーで攪拌しながら加え、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物(和光純薬、091-00855)を30.4g加えこれを還元剤溶液Cとした。
(1-5-2-1)銀イオン溶液Aの作製
水66gに、硝酸銀溶液8ml(10gの硝酸銀を含む)と1mol/lの硝酸鉄水溶液24mlを加えた。さらに、この溶液と、硝酸(10重量%)5.9ml、ドデシルアミン(和光純薬、123-00246)0.1g、界面活性剤C1225-C64-O-(CH2CH2O)50H 0.1gをあらかじめ47.6gの水に溶解した溶液を混合し、これを銀イオン溶液Aとした。
(1-5-2-2)銀イオン溶液Bの作製
水90gに、硝酸銀溶液8ml(10gの硝酸銀を含む)を加えた。さらに、この溶液と、硝酸(10重量%)5.9ml、界面活性剤C1225-C64-O-(CH2CH2O)50H 0.1gをあらかじめ47.6gの水に溶解した溶液を混合し、これを銀イオン溶液Bとした。
(1-5-2-3)銀イオン溶液Cの作製
水82gに、硝酸銀溶液16ml(10gの硝酸銀を含む)を加えた。さらに、この溶液と、硝酸(10重量%)5.9ml、アセチレングリコール系界面活性剤サーフィノール465(日信化学工業株式会社) 0.1gをあらかじめ47.6gの水に溶解した溶液を混合し、これを銀イオン溶液Cとした。
<実施例1>
(アッセイ用デバイスの作製)
図2に示す第1のデバイス部品(射出成形によるポリプロピレン製)に、図1で示すようにイムノクロマトグラフ用ストリップを装填し、第2の不溶性担体12および第3の不溶性担体13として、グラスファイバーパッド(Glass Fiber Conjugate Pad、ミリポア社)を装填した。図2の洗浄液貯蔵ポット17には上記(1-5-1)で作製した還元剤溶液を150μlいれ、アルミラミシート(NewADM、サンライズ社)で熱ラミネートにより封止し、第2のデバイス部品20を第1のデバイス部品10に嵌め合わせた。なお、図1に示したポット受け部33には、上記(1-5-2)で作製した銀イオン溶液を110μlを入れ、アルミラミシートで封止した液体貯蔵ポット32を装填した。
(抗原液の点着・展開)
検体液として、クイックS-インフルA・B「生研」陰性/陽性コントロール(品番322968、デンカ生研)を使用した。1質量%BSAを含むPBSバッファーでこの陽性コントロール液を希釈した。市販イムノクロマト検出キット「キャピリアFluA・B」(アルフレッサファーマ)によるクイックS-インフルA・B「生研」の検出限界はA型B型ともに1/40であった。ここでは1質量%BSAを含むPBSバッファーで、このA型陽性コントロールの希釈系列として、1/80、1/160、1/320、1/640、1/1280、1/2560、1/5120を作製し、これを検体液として準備した。準備した検体液を検体液注入孔に、検体液140μlを滴下し、10分静置した。
(第2、第3の不溶性担体の押し付け)
検体液を10分間展開した後、第2のデバイス部品20の押し付け部位34を10Nの力で押し、第2のデバイス部品20をたわませることで、送液用不溶性担体(第2の不溶性担体12)をメンブレンに押し付けた。この際の、押し付け量は第1のデバイス部品10のリブ15と第2のデバイス部品20が接触することで制限されている。イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体11)のメンブレン表面と、第2のデバイス部品によって送液用不溶性担体のメンブレンに接触する部位が0.2mmに潰されるようにリブ部材15の高さを調整した。また、イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体11)のメンブレン表面と第2のデバイス部品の押付け面18aとのクリアランスが0.005mmとなるように、第2のデバイス部品の押付け部の形状を調整した。
(洗浄)
送液用不溶性担体を押し付けてから30秒経過したところで、第2のデバイス部品20の封止破り部19を押し付け、送液用不溶性担体とともにアルミシートを突き破り、不溶性担体12を還元剤溶液に浸した。こうして還元剤溶液をイムノクロマトグラフストリップに展開させ3分間送液した。この工程によりイムノクロマトグラフストリップが還元剤溶液Aに浸され、さらに特異的に吸着していない材料が洗浄された。
(増幅溶液によるシグナル増幅)
第2のデバイス部品20に装填した液体貯蔵ポット32を押し込み、突起部位により封止を突き破り銀イオン溶液Aを液体貯蔵ポットから排出させて注入孔に注ぎ込ませた。銀イオン溶液Aがメンブレン表面と第2のデバイス部品の押付け部とのクリアランスに満たされ、検出ラインに吸着された金コロイド標識を1分間増幅した。
なお、(洗浄)および(増幅溶液によるシグナル増幅)について、還元剤溶液Bと銀イオン溶液Bの組み合わせ、還元剤溶液Cと銀イオン溶液Cの組み合わせについて、同様に実施した。
<実施例2>
イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体11)のメンブレン表面と第2のデバイス部品の押付け部とのクリアランスが0.2mmとなるように第2のデバイス部品の押付け部の形状を調整した以外は実施例1と同様にして増幅を行った。
<実施例3>
イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体11)のメンブレン表面と第2のデバイス部品の押付け部とのクリアランスが1mmとなるように第2のデバイス部品の押付け部の形状を調整した以外は実施例1と同様にして増幅を行った。
<実施例4>
イムノクロマトグラフ用ストリップ(第1の不溶性担体11)のメンブレン表面と第2のデバイス部品の押付け部とのクリアランスが1.2mmとなるように第2のデバイス部品の押付け部の形状を調整した以外は実施例1と同様にして増幅を行った。
<比較例1>
第2のデバイス部品の押付け部を取り除き、メンブレン表面とのクリアランスが形成されないようにして、110μ1の銀イオン溶液をメンブレン表面に滴下して供給した以外は、実施例1と同様にして増幅を行った。
<比較例2>
液体貯蔵ポットから銀イオン溶液を供給せずに、銀イオン溶液110μlをサンプルパッドに直接滴下して供給した以外は実施例1と同様にして増幅を行った。
<比較例3>
液体貯蔵ポットから銀イオン溶液を供給せずに、銀イオン溶液と還元剤溶液を1対4の割合で混合し作製した増幅溶液110μlをサンプルパッドに直接滴下して供給した以外は実施例1と同様にして増幅を行った。
<評価>
増幅後のデバイスを第1のデバイス部品10の観察窓16から目視で観察し、陽性反応が確認できた最小の検体液希釈系列の濃度を検出感度限界とした。結果を表1に示す。
Figure 0005430995
表1から明らかなように、実施例1〜4の場合には検出感度が1/2560〜1/5120と非常に高感度であるとともに、増幅液がクリアランス部Pに均一に充填されていた。なお、実施例1では、クリアランス部Pの隙間が0.005mmと狭いために、極まれに増幅液が広がらない部分が存在し、実施例4では、クリアランス部Pの隙間が1.2mmと広いために毛細管力が発揮されず、増幅液が極まれに広がらない部分が存在した。このことから、クリアランス部Pは0.01〜1mmの範囲に調整されることが好ましいことがわかる。
一方、クリアランス部Pを設けることなく、第1のデバイス部品10の上方から増幅液を滴下した比較例1では、検出感度は実施例と変わらなかったものの、均一に増幅液が広がらなかったため、検出ラインに増幅されていない部分が残存していた。また、サンプルパッドに直接増幅液を滴下した比較例2では、増幅が全くされなかったが、これは増幅液が第1の不溶性担体であるメンブレン中を流れることで、メンブレンに含まれていた還元剤溶液が吸収パットへと押し流され、還元反応が進行せず増幅できなかったためである。さらに、試薬溶液と増幅液の混合液をサンプルパッドに滴下した場合には、増幅はされるものの非常にムラが多い結果となったが、これは還元剤溶液や増幅液に含まれる成分が、そのメンブレンとの分子的相互作用の違いにより、成分のメンブレン上での分布が一様にならず、反応の進行が均一にならなかったためムラが生じたためである。
以上のように、本発明のアッセイ用デバイスは、第1の不溶性担体の検出部位に対して平行な押付け面を有し、検出部位に向けて押圧されることにより、押付け面が変位して、第1の不溶性担体の上から第2の不溶性担体と前記第3の不溶性担体とを第1の不溶性担体に押し付ける押付け部が、第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する第2のデバイス部品の内面に設けられているので、第のデバイス部品の表面から押付け部を第のデバイス部品に対して押圧すると、押付け部の押付け面が変位して検出部位との間に隙間が形成され、このクリアランスの毛細管現象によって、均一に液体を展開することができ、高精度かつ高感度な測定を行うことができる。
1 アッセイ用デバイス
10 第1のデバイス部品
11 第1の不溶性担体
12 第2の不溶性担体
13 第3の不溶性担体
14 検出部位
15 リブ
16 観察窓
17 洗浄液貯蔵ポット
18 押付け部
18a 押付け面
19 封止破り部
20 第2のデバイス部品
21 試料添加パッド
22 標識物質保持パッド
23 クロマトグラフ担体
24 吸収パッド
31 検体溶液注入孔
32 増幅溶液貯蔵ポット
33 増幅溶液貯蔵ポット受け部
34 押し付け部位
35 増幅溶液注入孔

Claims (4)

  1. 少なくとも1以上の被験物質を含有する検体溶液と、
    試薬溶液、増幅溶液または検出溶液の3種の液体のうちいずれか1種類以上の液体とを、
    前記被験物質に対する特異的結合物質を含有する不溶性担体上に形成されている検出部位に送液することによって、前記検体溶液中に含まれる前記被験物質の定性または定量を行う検出方法であって、
    前記検体溶液及び前記試薬溶液を、前記不溶性担体上に形成されている検出部位に、前記検体溶液、前記試薬溶液の順序で送液した後で、
    前記不溶性担体と、前記不溶性担体に向き合っている面を持つ部材との隙間であり、0.01〜1mmの該隙間に、増幅溶液および/または検出溶液を注入し充填させることを特徴とするアッセイ方法。
  2. 被験物質に対する特異的結合物質を含有する検出部位を有する第1の不溶性担体が収容された第1のデバイス部品と液体を注入するための孔を有する第2のデバイス部品からなる複合部品に、液体を展開するための第2の不溶性担体と、液体を吸収するための第3の不溶性担体とが収容されたアッセイ用デバイスであって、
    前記第2の不溶性担体と前記第3の不溶性担体とを前記第1の不溶性担体の前記検出部位に向けて押し付けた場合に、前記第1の不溶性担体の前記検出部位において、前記第2の不溶性担体および前記第3の不溶性担体がそれぞれ前記第1の不溶性担体と接触する位置関係となるように、前記第1の不溶性担体、前記第2の不溶性担体および前記第3の不溶性担体とを互いに接触しない状態で収容してなり、
    前記第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する押付け面を有し、前記検出部位に向けて押圧されることにより、前記押付け面が変位して、前記第1の不溶性担体の上から前記第2の不溶性担体と前記第3の不溶性担体とを前記第1の不溶性担体に押し付ける押付け部が、前記第1の不溶性担体の前記検出部位に対向する前記第2のデバイス部品に設けられており、
    前記押付け部に対向する前記第1のデバイス部品の内面に、前記押付け部の一部に当接して前記押付け面の変位を規制するリブが設けられており、前記押付け部を前記検出部位に向かって押圧したときの、前記検出部位と前記押付け面との隙間が0.01〜1mmであることを特徴とするアッセイ用デバイス。
  3. 前記検出部位と前記押付け面との隙間に対して液体を送液することが可能な液体貯蔵ポットが前記第1のデバイス部品および/または前記第2のデバイス部品に設けられ、該液体貯蔵ポットがラミネートフィルムで封止されていることを特徴とする請求項記載のアッセイ用デバイス。
  4. 前記液体貯蔵ポットに銀イオンを含む増幅溶液が注入されていることを特徴とする請求項記載のアッセイ用デバイス。
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