JP3859027B2 - 乳頭分泌液中の特定物質の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳癌のスクリーニングに適した乳頭分泌液中の特定物質の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳癌を診断するための血中の特定物質としてCEA(癌胎児性抗原)、erbB−2、NCC−ST−439、CA15−3、CA72−4、TPA(組織ポリペプチド抗原)、CA125、IAP(免疫抑制酸性蛋白)、フェリチン、CA54/61、CA602、CA19−9、CA549、ras蛋白、P53などが知られている。しかし、これらの物質の血中濃度を指標にした原発性乳癌の陽性率はきわめて低く、乳癌のスクリーニングに使用することは困難であった。従来、これらのマーカーは主に乳癌再発のモニターとして使われている。
【0003】
乳癌をスクリーニングするために乳頭分泌液中の特定物質の測定が提唱されている。乳頭分泌液中の特定物質として、森らはCEA(乳癌の臨床 4:99−103、1989)を、弥生らはNCC−ST−439抗原(日本外科学会 1996年 学術講演会要旨集 175ページ)を、稲治らはerbB−2(Breast Cancer 1:25−30、1995)を報告している。また、乳頭分泌液が血性であるかどうかも乳癌診断の重要な情報となっている(弥生ら、癌と臨床 6:133−139、1994)。
【0004】
微量の乳頭分泌液を測定する方法として、乳頭分泌液を液体不透過性シート上に採取し乾燥させた後、そのシート上で免疫反応を行う測定方法および測定用器材が特開平1−250069号公報や特開平2−280061号公報に開示されており、キットも市販されている。しかし、この方法は、反応工程が多く最短で2時間半を要し、診察室で簡便に使うことはできなかった。また、吸着担体を有する貼付剤を乳房に貼付し乳頭分泌液を直接貼付剤に吸着固相化し測定する方法が特表平6−513985号公報に開示されているが、この方法は、すべての患者に対して一定量の乳頭分泌液が採取できず、貼付している時間の影響もあるので診断の正確さに問題があり、実用的ではない。
【0005】
一方、近年血液や尿などの生体試料に対して、家庭、診療室での使用に適し、使用者の熟練や手間をほとんど必要せずに短時間で測定できる簡易測定装置が普及してきている。その一つの形態はイムノクロマト法測定装置である(特公平7−18876、特公平7−78503、特公平7−36017、特公平6−27738、特開平1−244370号公報など)。液体が毛管現象で移動することができる多孔性のシート状ストリップの一部に、測定対象物質に特異的に反応する抗体が固定化されており、その上流に金コロイドなどの着色粒子で標識された測定対象物質に特異的な抗体(標識抗体)がストリップ上に固定されていない状態で配置(塗布・乾燥等により配置)されており、標識抗体の上流から液体試料を添加すると、試料はストリップ中の毛管を伝わって浸透し標識抗体を溶解し、さらに、標識抗体を溶解した試料はストリップの抗体を固定化した部分を通過してストリップの下流に移動して、試料中に測定対象物質が存在する場合には、溶解した標識抗体と反応し、ついでストリップに固定化された抗体に「測定対象物質−標識抗体」複合体として捕獲される。未反応の標識抗体は下流に移動してしまうため、測定対象物質が存在する場合にだけテストストリップの抗体を固定化した部分に金コロイド粒子による着色が観察される。
【0006】
もう一つの形態はフロースルー法測定装置である(特公平7−34016、特公平7−113637、特開平1−24768、特開平3−118473号公報など)。この装置は、測定対象物質に特異的に反応する抗体が固定化されていて液体が通過できる毛管を有する多孔性のメンブレンとその下面で毛管が連絡して接触している吸水性部材より構成される。メンブレンの上面から液体試料を添加すると、メンブレンを通過して吸水性部材に吸収され、その時、試料中に測定対象物質が存在する場合には、測定対象物質はメンブレンに固定化された抗体上に捕獲される。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素で標識した測定対象物に特異的な抗体(標識抗体)を添加し、メンブレンに固定化された抗体上に捕獲された測定対象物質に反応させてサンドイッチ複合体を形成させる。さらに、洗浄液でメンブレンの毛管中にある未反応の標識抗体を吸水性部材に吸収させた後、標識した酵素により発色する基質液を添加することにより、メンブレンの抗体を固定化した部分に着色が観察される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
乳頭分泌液は血液や尿と異なり、粘調性等の試料性状にバラつきが大きく、しかも、採取できる量が20μl以下の微量である場合が多い。前述のイムノクロマト法測定装置あるいはフロースルー法測定装置はクロマト用ストリップや多孔性メンブレンの全面を濡らすような多量の血液や尿を試料とする場合に使用されており、乳頭分泌液に適用できるとは考えられていなかった。即ち、試料が粘調で微量である場合にも、展開液によって多孔性基材中を均一に移動し、正確な測定ができる程度に試料中の分析対象物質が多孔性基材に固定化された抗体によりうまく捕捉できるか不明であった。
【0008】
本発明の目的は、微量しか採取できない乳頭分泌液中の特定物質を短時間に精度よく測定する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、これら従来の課題を解決し、乳癌のスクリーニングに役立てようとするものである。すなわち、本発明は
(1)微量の乳頭分泌液に含まれる特定物質(測定対象物質)を測定する方法であって、該特定物質あるいは該特定物質に対する抗体を固定化した多孔性基材を使用し、乳頭分泌液を多孔性基材の該特定物質あるいは該特定物質に対する抗体を固定化した部位を通過させ、その部位あるいはその下流に検出可能な信号を得ることにより測定を行なうことを特徴とする微量の乳頭分泌液に含まれる特定物質の測定方法、
【0010】
(2)測定に用いる乳頭分泌液の量が20μl以下である上記(1)に記載の測定方法、
(3)信号を得るために標識抗体を用い、サンドイッチ形式で測定を行う上記(1)または(2)に記載の測定方法、
(4)信号を得るための標識が金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子または着色ラテックス粒子である上記(3)に記載の測定方法、
【0011】
(5)乳頭分泌液を展開液により多孔性基材中を移動させる上記(1)から(4)のいずれかに記載の測定方法、
(6)乳頭分泌液に含まれる特定物質が乳ガンの発症に伴い乳頭分泌液中の濃度が変化する物質である上記(1)から(5)のいずれかに記載の測定方法、
【0012】
(7)乳頭分泌液に含まれる特定物質がCEA(癌胎児性抗原)である上記(1)から(5)のいずれかに記載の測定方法、
(8)乳頭分泌液に含まれる特定物質がNCC−ST−439抗原である上記(1)から(5)のいずれかに記載の測定方法、
(9)乳頭分泌液に含まれる特定物質がヘモグロビンである上記(1)から(5)のいずれかに記載の測定方法、に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。乳癌の発症などに伴う乳頭分泌液は、一般に微量にしか採取できず、多くの患者を対象にして本発明の測定方法を適用するためには、測定に必要な乳頭分泌液量は50μl以下、好ましくは20μl以下、より好ましくは0.1〜20μl、特に好ましくは0.5〜10μlである。患者から採取した乳頭分泌液は試験管などにとり、希釈して測定することもできるが、使用者の簡便性を考えると、そのまま希釈せずに測定する方が好ましい。さらに、乳頭より直接に一定量の乳頭分泌液が採取できる簡易測定装置を使用することは、使用者の負担を著しく軽減し、一層好ましい。
【0014】
本発明において、乳頭分泌液中に含まれる特定物質は抗体を用いて測定可能な物質であれば特に限定されないが、乳癌のスクリーニングを目的とした場合には、乳ガンの発症に伴い乳頭分泌液中の濃度が変化する物質である。その代表的なものとして、CEA(癌胎児性抗原)、erbB−2、NCC−ST−439、CA15−3、CA72−4、TPA(組織ポリペプチド抗原)、CA125、IAP(免疫抑制酸性蛋白)、フェリチン、CA54/61、CA602、CA19−9、CA549、ras蛋白、P53およびヘモグロビン等が挙げられる。その中で特に好ましい物質は、CEA、NCC−ST−439、ヘモグロビンである。これらの物質は、単独で測定しても良いし、2つ以上を組み合わせて測定しても良い。
【0015】
特定物質に対する抗体は公知の方法で作成することができる。ウサギ、モルモット、マウス、ヤギ、ヒツジ、ウマなどの哺乳動物やニワトリ、アヒル、ガチョウなどの鳥類に抗原やハプテン等を免役して得られるものや、細胞融合などの技術を用いて得られるものでもよい。抗体の種類も問わない。IgG,IgM、IgA、IgE、IgD、IgY抗体のうちの1種または2種以上の混合物であってもよく、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のどちらでも使用できる。モノクローナル抗体はマウス腹水、培養上清等より得られるものであっても良い。抗体はペプシン、パパイン等の酵素処理や還元等の化学処理により、F(ab’)2 、Fab’、Fabの様な抗体断片にして使用することもできる。
【0016】
多孔性基材とは、毛管作用により流体が流れることのできる孔を有する材料を意味し、ペーパークロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーに用いられる材料や濾過に用いられる材料等が含まれる。多孔性基材は試料が毛細管力により移動できる孔を有するものであればいずれでも良い。孔径としては0.1μm以上、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜10μmが良い。具体的にはシリカ、チタニア、ジルコニア、セリアおよびアルミナ等のセラミック微粒子や有機高分子の微粒子、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、ニトロセルロースや酢酸セルロースなどのセルロース誘導体等の織った繊維状マトリクスおよび織ってない繊維状マトリクスや膜、濾紙、ガラス繊維濾紙、布、綿等があげられる。微粒子はそれ自体が多孔性でなくとも、充填された状態では微粒子間に空隙が生じ多孔性基材となる。好ましくはセルロース誘導体やナイロンの膜、濾紙、ガラス繊維濾紙等であり、より好ましくはニトロセルロース膜、混合ニトロセルロースエステル(ニトロセルロースと酢酸セルロースの混合物)膜、ナイロン膜、濾紙である。これらの材料は必要に応じ、プラスチック等の水不透過性の材料で裏打ちしたものであっても良い。
【0017】
多孔性基材への測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体の固定化は直接的または間接的に行われる。直接的固定化としては物理吸着を利用しても良いし、共有結合によっても良い。一般に多孔性基材がニトロセルロース膜、または混合ニトロセルロースエステル膜の場合、物理吸着を行うことができる。共有結合では多孔性基材の活性化には一般的に臭化シアン、グルタルアルデヒドおよびカルボジイミド等が用いられるが、これらに限定されるものではない。間接的な固定化としては不溶性微粒子に測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体を結合させた後に多孔性基材に固定化する方法がある。微粒子への抗体の固定化には物理吸着、共有結合のいずれの方法でも使用可能である。微粒子の粒径は多孔性基材に補足されるが移動できないサイズのものを使用して多孔性基材に固定化する。不溶性微粒子としては平均粒径10μm程度以下の微粒子が好適に用いられる。これらの粒子としては抗原抗体反応に使用されるものが種々知られており、本発明でもこれら公知の粒子が特に限定されずに使用できる。例えば、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体などの乳化重合法によって得られる有機高分子ラテックス粒子などの有機高分子物質の微粒子、ゼラチン、ベントナイト、アガロース、架橋デキストランなどの微粒子、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナなどの無機酸化物や無機酸化物にシランカップリング処理などで官能基を導入した無機粒子等が挙げられる。
【0018】
測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体を固定化した後、多孔性基材は干渉を防ぐために必要に応じて公知の方法でブロッキング処理を行うことができる。一般にブロッキング処理はウシ血清アルブミン、スキムミルク、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質、ツイーン20、トリトンX−100、SDS等の界面活性剤、ポリビニルアルコール、エタノールアミン等のうちの1つまたは2つ以上を組み合わせて行われる。ブロッキング処理を必要としないエタノールアミン基を導入した濾紙も本発明では使用できる。
【0019】
多孔性基材への測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体の固定化には、いろいろな方法が使用できる。例えば、マイクロシリンジ、調節ポンプ付きペン、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、転写プリント、インキ噴射印刷等いろいろな印刷技術が使用可能である。形態としては特に限定されないが、円形のスポット、多孔性基材のクロマト方向に垂直にのびるライン、数字、文字や+、−などの記号等として固定化することができる。また、固定化する物質の溶液に漬けて多孔性基材全体に固定化する場合もある。
【0020】
本発明において、検出可能な信号を得るためにはラジオアイソトープ、酵素、蛍光物質、着色粒子などの標識物質を測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体に結合した標識結合体を用いる必要がある。特別な装置を使用せず肉眼で結果を判定するためには発色基質との反応によって着色を得ることのできる酵素やそのまま着色が観察できる有色又は着色粒子による標識が好ましい。有色又は着色粒子は酵素反応を行わせるための洗浄操作や発色反応操作を必要としないので一層好ましい。
【0021】
酵素としては、アルカリフォスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等があり、例えば石川栄治らの「酵素免疫測定法第3版(医学書院、1987年)」に記載されるような公知の方法により標識結合体を調製することができる。また、それぞれの酵素に対応する発色基質も公知のものが使用でる。
【0022】
有色又は着色粒子としては金、銀、白金、プラチナ、銅のような金属コロイド、酸化鉄のような金属酸化物コロイド、硫黄、セレン、テルルなどの非金属コロイド、顔料粒子、ラテックス粒子を染色したもの、リポソームなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有色又は着色粒子が毛管現象により多孔性基材中を移動するためには、粒子径が毛管より小さい必要があり、平均粒径は1μm以下、とくに0.5μm以下であることが好ましい。有色又は着色粒子を用いて標識結合体を調製するには、物理吸着や化学結合などの公知の方法が使用できる。例えば、金コロイドに抗体を結合した金コロイド標識抗体は、金コロイド溶液に抗体を加えて物理吸着させた後、牛血清アルブミン溶液を添加して金コロイドの抗体未結合表面をブロックすることにより調製される。
【0023】
標識結合体は、多孔性基材に配置(塗布・乾燥等により配置)させて使用することもできるし、標識結合体液として後から添加することもできる。
多孔性基材に配置する場合、多孔性基材が湿潤した時、速やかに溶解して毛管作用によって自由に移動できるように支持される。支持されている部位にはこれら粒子の再溶解性を良好にするため、サッカロース、マルトース、ラクトース等の糖類、マンニトール等の糖アルコールを添加して塗布したり、これらの物質を予めコーティングしておくことも可能である。標識結合体を塗布・乾燥等により配置させる多孔性基材は測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体を固定化した多孔性基材であってもよく、別の多孔性基材に塗布・乾燥等により配置させたのち、測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体を固定化した多孔性基材と毛管で繋がるように配置してもよい。作製する簡易測定装置の形態によって適宜選択される。また、標識結合体を多孔性基材に支持する方法としては前述の多孔性基材へ測定対象物質あるいは測定対象物質に対する抗体を固定するのに用いたのと同様な印刷技術等が使用できる。
【0024】
標識結合体液として使用する場合、一般的には緩衝液に溶解して使用する。例えばリン酸、トリス−塩酸、酢酸、ホウ酸、炭酸、グッドの緩衝塩類を含む緩衝液などが使用でき、食塩なども添加される。また、この緩衝液には標識結合体の安定化や非特異的反応を抑制するために公知の添加剤も使用できる。例えば、牛血清アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの蛋白質、ポリエチレングリコール、デキストラン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の高分子化合物や、他のイオン性界面活性剤、デキストラン硫酸、ヘパリン、ポリスチレンスルホン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のポリアニオンまたはその塩等、アジ化ナトリウム、チメロサール、ケーソンCG、長鎖アルキル4級アンモニウム塩などの抗菌剤などが添加できる。
【0025】
本発明を実施する際に使用される測定方法としてはイムノクロマト法あるいはフロースルー法が挙げられる。測定形式としては、例えばP.TIJSSENの「エンザイムイムノアッセイ(生化学実験方法11、東京化学同人、1989年)」297〜314ページに記載されるような抗体あるいは抗原(測定対象物質)を固定化した固相を用いる種々の公知の形式を用いることができる。
【0026】
イムノクロマト法は、その特定部位に測定対象物質あるいはそれに対する抗体が固定化されたクロマトグラフィー用基材(多孔性基材)中を試料(本発明の場合は乳頭分泌液)を毛管現象により移動させ、試料中の測定対象物質、標識をつけた測定対象物質あるいは測定対象物質に対する標識抗体の該特定部位での免疫反応による捕獲を検出することにより試料のアッセイを行なう方法である。
又、フロースルー法は、測定対象物質あるいはそれに対する抗体が固定化された多孔性メンブレンの上面から下面に試料(本発明の場合は乳頭分泌液)を通過させ、試料中の測定対象物質、標識をつけた測定対象物質あるいは測定対象物質に対する標識抗体の該メンブレンでの免疫反応による捕獲を検出することにより試料のアッセイを行なう方法である。
【0027】
その代表例をイムノクロマト法で説明する。反応形式には「従来の技術」の項で説明したサンドイッチ形式や結合阻害形式あるいは競合形式などがある。結合阻害形式の例としては、液体が毛管現象で移動することができる多孔性のシート状ストリップ(クロマトグラフィー用基材)の特定部位に、測定対象である抗原が固定化されており、その上流に金コロイドなどの着色粒子で標識された標識抗体がストリップ上に固定されていない状態で塗布・乾燥等により配置されている。標識抗体の上流から液体試料を添加すると、試料はストリップ中の毛管を伝わって標識抗体を溶解し、さらに、ストリップの抗原を固定化した部位を通過して下流に移動する。試料中に抗原が存在するとき、標識抗体は試料中の抗原と先に反応するので、ストリップに固定化した抗原とは反応できない。そのため抗原固定化部位に着色は観察されず、抗原固定化部位の下流に着色が観察される。試料中に抗原が存在しないときには、標識抗体は固定化した抗原に捕獲されるため、抗原固定化部位に着色が観察され、抗原固定化部位の下流には着色が観察されない。
【0028】
競合形式の例としては、多孔性のシート状ストリップの特定部位に測定対象である抗原に対する抗体が固定化されており、その上流に金コロイドなどの着色粒子で標識された標識抗原がストリップ上に固定されていない状態で塗布・乾燥等により配置されている。標識抗原の上流から液体試料を添加すると、試料はストリップ中の毛管を伝わって標識抗原を溶解し、さらに、ストリップの抗体を固定化した部位を通過して下流に移動する。試料中に抗原が存在するとき、固定化した抗体は試料中の抗原と反応し、標識抗原との反応は妨害される。従って、ストリップの抗体固定化部位に着色は観察されず、抗体固定化部位の下流に着色が観察される。試料中に抗原が存在しないときには、固定化した抗体に標識抗原が捕獲されるため、抗体固定化部位に着色が観察され、抗体固定化部位の下流には着色が観察されない。
【0029】
測定形式には上に説明した以外の形式もあり、これに限定されるものではない。特に好ましい測定形式としては、多孔性基材に抗体を固定化し、標識抗体とともに測定を行うサンドイッチ形式である。
【0030】
なお、測定対象物質が酵素や酵素活性物質である場合には、標識結合体を必要としない場合がある。例えば、ヘモグロビンはペルオキシダーゼ活性を有しており、多孔性基材に固定化された酵素活性を阻害しない抗体に捕獲されたヘモグロビンは、ジアミノベンジジンやテトラメチルベンジジンと過酸化水素よりなる発色液を使用して検出できる。本発明の測定方法には、このような場合も含まれる。
【0031】
本発明の方法において、乳頭分泌液はキャピラリーやピペット等の器具を用いて採取することもでき、採取方法は必ずしも限定されないが、微量にしか採取できないので、乳頭から直接に一定量の試料を採取して測定する方法が好ましい。さらに、使用者が採取量を知るために注意深く目盛りを読んだり採取器具の調整しなくとも、乳頭に押し当てるだけで一定量の試料が採取できる方法はより好ましい。
【0032】
本発明においては、必要により、測定対象物質やそれに対する抗体を固定した多孔性基材中を試料(乳頭分泌液)を移動させて測定を完了させるための展開液を別に使用する。展開液は測定対象物質やそれに対する抗体を固定した多孔性基材に試料が浸透する位置あるいはその上流から添加する。更に、展開液は別の容器に入れて添加することもできるが、あらかじめ本測定のための装置の部分として装置に組み込んで使用することもできる。展開液には標識結合体液のところで記載した緩衝液や添加物と同様なものが使用される。標識結合体液をそのまま展開液としてもよい。また、標識が酵素の場合や標識結合体液を展開液として用いた場合、多孔性基材の判定部分に標識が残り、判定を妨害することがある。その場合には、さらに洗浄液を用い、多孔性基材中に残留した標識を移動させることもできる。特に標識が酵素の場合には、非常に微量な残留であっても鋭敏に反応するので、発色反応のまえに充分洗浄する必要がある。洗浄液も標識結合体液のところで記載した緩衝液や添加物と同様なものが使用される。
【0033】
以下に、本発明を実施する際に使用することができる具体的な簡易測定装置を図によって説明する。
【0034】
図1はイムノクロマト法用の簡易測定装置の一例の概略図である。プラスチック製ケース2は展開液添加口3、試料添加口4および判定窓5を有する。図2は図1で示した簡易測定装置の側断面図である。クロマト用ストリップ6は両面テープ7でケース2に接着されている。クロマト用ストリップ6の最上流で展開液添加口3の直下と、最下流の位置には吸水用部品8、9が置かれ、ケースによって固定されている。クロマト用ストリップ6は判定窓5の直下に抗体を固定化した部位を有し、さらに展開液添加口3の下流で試料添加口4の上流の位置に金コロイド粒子標識抗体添着部10を有する。試料は試料添加口4からマイクロピペット等でクロマト用ストリップに添加する。展開液添加口3から添加された展開液が金コロイド標識抗体と添加された試料をクロマトさせる。試料に分析対象物質が含まれる場合には金コロイドによる着色が判定窓5より観察できる。
【0035】
図3はイムノクロマト法による簡易測定装置の別の一例の概略図である。プラスチック製の持ち手部分11と吸水性材料12からなる試料採取部分から構成される乳頭から分泌液を直接採取するための試料採取部品を有する。ポリスチレン製ケース13は展開液添加口14、採取部品を組み込み試料を添加する試料添加口15および判定窓16を有する。図4は図3で示した簡易測定装置の側断面図である。抗体固定化ストリップ17と金コロイド標識抗体ストリップ18は両面テープ110でケース13に接着されている。金コロイド標識抗体ストリップ18の最上流で展開液添加口14の直下と、抗体固定化ストリップの最下流の位置には吸水用部品111、112が置かれ、ケースによって固定されている。抗体固定化ストリップ17は判定窓16の直下に抗体を固定化した部位を有し、金コロイド標識抗体ストリップ18は展開液添加口14の下流で試料添加口15の上流の位置に金コロイド粒子標識抗体添着部19を有する。金コロイド標識抗体ストリップ18と抗体固定化ストリップ17は採取部品が組み込まれた時、吸水性材料12がそれらと一部分が重なって毛管で繋がるように分離して配置されている。試料を採取した採取部品を試料添加口15に組み込み、展開液添加口14より展開液を添加することにより、試料中に分析対象物質が存在する場合には金コロイドの着色が判定窓16より観察できる。
【0036】
図5もクロマト法による簡易測定装置の一例の概略図である。プラスチック製ケース23は試料添加口24と判定窓25を有する。図6は図5で示した簡易測定装置の側断面図である。抗体固定化ストリップ26は両面テープ27でケース23に固定されている。抗体固定化ストリップ26の最上流と最下流には吸水用部品28、29がケースによって固定されている。抗体固定化ストリップ26は判定窓25の直下に抗体を固定化した部分を有する。試料はマイクロピペット等により試料添加口24から吸水用部品28に添加する。その後、金コロイド標識抗体を含む展開液を試料添加口24より添加すると展開液とともに試料はクロマトされ、試料中に分析対象物質が含まれる場合には金コロイドの着色が判定窓25より観察できる。
【0037】
図7はフロースルー法による簡易測定装置の一例の概略図であり、試料添加口33および空気抜き穴36を有する筒形の装置である。図8は図7で示した簡易測定装置の側断面図である。プラスチック成形体34に抗体固定化メンブレン35を抗体が固定化された部分がプラスチック成形体の試料添加口33の中心にくるように挿入し、さらに厚手の濾紙を重ねて作製した吸水用部品37を挿入し、プラスチック成形体34の試料添加口33と抗体固定化メンブレン35および抗体固定化メンブレン35と吸水用部品37が完全に密着し、展開液を試料添加口から添加しても周りに漏れずに抗体固定化メンブレン35を通過して吸水用部品37に吸収されるように下から蓋38をする。試料をマイクロピペット等により試料添加口33から抗体固定化メンブレン35の抗体を固定化した部分に添加し、更に金コロイド標識抗体を含む展開液を添加する。展開液が完全に吸収された後、さらに洗浄液を添加して吸収させる。試料中に分析対象物質が含まれる場合、抗体固定化部位に金コロイドの着色が観察できる。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1 イムノクロマト法によるCEA標準液および乳頭分泌液中CEAの測定1
(1)金コロイドの調製
濃度0.01重量%の塩化金酸水溶液200mlを沸騰させ、これに濃度1重量%のクエン酸ナトリウム水溶液3mlを加え、溶液の色が赤色に変わるまで加熱沸騰を行い、平均粒径25nmの金コロイド分散液を調製した。
【0040】
(2)金コロイド粒子標識抗体の調製
上記の金コロイド分散液10mlに0.1M塩酸−炭酸カリウム緩衝液pH9.0を0.5ml加えてpHを調整し、これにウサギ抗ヒトCEA抗体を、金コロイド分散液1mlあたり30μgとなるように加えて室温で1時間緩やかに振とうした。その後、その10mlに8重量%BSAを含む2mMホウ酸緩衝液pH9.0を1.5ml加え、室温で30分間緩やかに振とうした。さらに、この分散液を4℃で10,000rpm1時間遠心して上清を除いた後、得られたペレットに濃度1重量%のBSAを含む2mMトリス−塩酸緩衝液pH7.6を10ml加えて再懸濁した。同様にして遠心操作をさらに2回繰り返した後、上記トリス−塩酸緩衝液にてOD(520nm)=20になるように再懸濁して金コロイド粒子標識抗体を調製した。
【0041】
(3)ストリップの作製
50mMリン酸生理食塩水pH7.2に溶解したマウス抗CEAモノクローナル抗体(濃度1.2mg/ml)を5×50mmに切断したミリポア社製ニトロセルロースメンブレン(ハイフローメンブレン、マイラーバック)の図1で示す検出部位5に相当する位置に幅1mmのライン状に添着し風乾した。その後、濃度5重量%カゼインを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2に室温で2時間浸漬し、再び風乾した。さらに図2の10の位置に相当する部位に5重量%のサッカロースを添加した(2)で調製した金コロイド粒子標識抗体液を5μlずつ、乾燥させながら2回添着し、ストリップを作製した。
【0042】
(4)装置の作製
図1に示すように、展開液添加口3、試料添加口4および判定窓5を有するポリエチレン製ケース2にその構成部品を納めて作製した。図2示すように、上記(3)で作製したストリップ6のマイラーバックの面を両面テープ7でケース2に接着し、その両端(展開液添加口3の直下と最下流の位置)に、ワットマン社製ガラス繊維濾紙GF/D 5×8mmを吸水性部材8,9として置き、ポリエチレン製ケースにより吸水性部材をストリップの上に固定し装置とした。
【0043】
(5)測定
標準液として濃度0、200、400、1000、3000ng/mlのCEAと濃度1重量%のBSAを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2及び乳癌患者の乳頭分泌液各3.0μlを装置の試料添加口4からストリップ上に添加し、次いで、展開液として50mMリン酸生理食塩水pH7.2を100μl展開液添加口3から吸水性部材8の上に添加し、10分後に判定を行った。結果は表1に示す。標準液のCEA濃度400ng/ml以上で判定窓の中に金コロイドによる赤色のバンドが観察された。既知濃度の乳頭分泌液でもそれに対応する濃度で陽性・陰性が判定された。
【0044】
実施例2 イムノクロマト法によるCEA標準液および乳頭分泌液中CEAの測定2
(1)抗体固定化ストリップの作製
50mMリン酸生理食塩水pH7.2に溶解したマウス抗CEAモノクローナル抗体(濃度1.2mg/ml)を5×26mmに切断したミリポア社製ニトロセルロースメンブレン(ハイフローメンブレン、マイラーバック)の図3で示す検出部位16に相当する位置に幅1mmのライン状に添着し風乾した。その後、濃度5重量%カゼインを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2に室温で2時間浸漬し、再び風乾して抗体固定化ストリップを作製した。
【0045】
(2)金コロイド粒子標識抗体ストリップの作製
東洋濾紙社製の濾紙No.50を5×20mmの大きさに切断し、濃度5重量%カゼインを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2に室温で2時間浸漬したのち乾燥させた。さらに、図4の19の位置に相当する部位に5重量%のサッカロースを添加した実施例1の(2)で調製した金コロイド粒子標識抗体液を5μlずつ、乾燥させながら2回添着し、金コロイド粒子標識抗体ストリップを作製した。
【0046】
(3)装置の作製
図3に示すように、展開液添加口14、採取部品を組み込み試料を添加する試料添加口15および判定窓16を有するポリエチレン製ケース13にその構成部品を納めて作製した。図4に示すように、上記(1)で作製した抗体固定化ストリップ17(マイラーバックの面)および(2)で作製した金コロイド粒子標識抗体ストリップ18を両面テープ110でケース3に接着し、実施例1と同様に展開液添加口14の直下と最下流の位置に、ワットマン社製ガラス繊維濾紙GF/D 5×8mmを吸水性部材111,112として置き、ポリエチレン製ケースにより吸水性部材を抗体固定化ストリップおよび金コロイド粒子標識抗体ストリップの上に固定し装置とした。また、試料採取部品は東洋濾紙社製の濾紙No.50を4×6mmの長方形に切断した採取部分12をプラスチック成形体11の底面に両面テープで貼り付けて作製した(図3)。
【0047】
(4)測定
標準液として濃度0、200、400、1000、3000ng/mlのCEAと濃度1重量%のBSAを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2及び乳癌患者の乳頭分泌液の各5μlを図3の採取部品の採取部分12に吸収させて採取した。採取部品を装置の試料添加口15に組み入れ、採取部品の試料採取部分12を装置のストリップ17,18と密着させた。その後、展開液として50mMリン酸生理食塩水pH7.2を100μl展開液添加口14から吸水性部材111の上に添加し、10分後に判定を行った。結果は表1に示す。標準液のCEA濃度400ng/ml以上で判定窓の中に金コロイドによる赤色のバンドが観察された。既知濃度の乳頭分泌液でもそれに対応する濃度で陽性・陰性が判定された。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例 3 イムノクロマト法によるNCC−ST−439抗原の測定
(1)金コロイド粒子標識抗体を含む展開液の調製
実施例1の(1)の金コロイド分散液10mlに0.1M塩酸−炭酸カリウム緩衝液pH9.0を0.5ml加えてpHを調整し、これにマウス抗NCC−ST−439モノクローナル抗体を、金コロイド分散液1mlあたり40μgとなるように加えて室温で1時間緩やかに振とうした。その後、その10mlに8重量%BSAを含む2mMホウ酸緩衝液pH9.0を1.5ml加え、室温で30分間緩やかに振とうした。さらに、この分散液を4℃で10,000rpm1時間遠心して上清を除いた後、得られたペレットに濃度1重量%のBSAを含む2mMトリス−塩酸緩衝液pH7.6を10ml加えて再懸濁した。同様にして遠心沈降処理をさらに2回繰り返した後、上記トリス−塩酸緩衝液にてOD(520nm)=20になるように再懸濁し、さらにOD(520nm)=5になるように50mMリン酸生理食塩水pH7.2で希釈し、金コロイド標識抗体を含む展開液を調製した。
【0050】
(2)抗体固定化ストリップの作製
50mMリン酸生理食塩水pH7.2に溶解したマウス抗NCC−ST−439モノクローナル抗体(濃度5mg/ml)を5×35mmに切断したミリポア社製ニトロセルロースメンブレン(ハイフローメンブレン、マイラーバック)の図5で示す検出部位25に相当する位置に幅1mmのライン状に添着し風乾した。その後、濃度5重量%カゼインを含む50mMリン酸生理食塩水pH7.2に室温で2時間浸漬し、再び風乾して抗体固定化ストリップを作製した。
【0051】
(3)装置の作製
図5で示すように、試料添加口24および判定窓25の2か所に開口部を持つプラスチックケース23にその構成部品を納めて作製した。図6示すように、上記(2)で作製した抗体固定化ストリップ26のマイラーバックの面を両面テープ27でケース23に接着し、その両端に、ワットマン社製ガラス繊維濾紙GF/D 5×8mmを吸水性部材28,29として置き、ポリエチレン製ケースにより吸水性部材を抗体固定化メンブレンの上に固定しイムノクロマト装置とした。
【0052】
(4)測定
NCC−ST−439抗原濃度が既知の乳癌患者の乳頭分泌液各10μlを装置の試料添加口24から添加し、次いで、50mMリン酸生理食塩水pH7.2からなる展開液50μlを試料添加口24から添加し、展開液が完全に吸収された後に、更に金コロイド粒子標識抗体を含む展開液100μlを同様に添加し、10分後に判定を行った。結果は表2に示す。既知濃度の乳頭分泌液で濃度に対応して陽性・陰性が判定された。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例4 フロースルー法による乳頭分泌液中のヘモグロビンの測定
(1)抗体固定化メンブレンの作製
濃度8mg/mlのマウス抗ヒトヘモグロビン抗体を含む50mMのリン酸生理食塩水pH7.2をポール社製イムノダイン イムノアフィニティーメンブレン(3μm)に0.5μlドットし風乾した。その後メンブレンを濃度2.5重量%のカゼインナトリウムと濃度8重量%のサッカロースを含む50mMのリン酸生理食塩水pH7.2に室温2時間漬けた後、濾紙上にメンブレンを取り出し水分を吸い取り、乾燥して抗体固定化メンブレンを作製した。
【0055】
(2)装置の作製
図7および図8に示すように、試料添加口33と空気穴36のあるプラスチック成形体34に(1)で作製したメンブレン35をメンブレンの抗体がドットされた部分がプラスチック成形体の試料添加口33の中心にくるように挿入し、さらに厚手の濾紙を重ねて作製した吸水性部材37を重ねて挿入し、プラスチック成形体の試料添加口とメンブレンおよびメンブレンと吸水性部材が完全に密着し、展開液を試料添加口から添加しても周りに漏れずにメンブレンを通過して吸水性部材に吸収されるように下から蓋38をして装置とした。
【0056】
(3)展開液の調製
0.1Mの尿素および濃度0.1重量%のツイーン20を含む50mMのリン酸生理食塩水pH7.2を展開液とした。
【0057】
(4)発色液の調製
濃度3mg/mlになるようにテトラメチルベンジジンをジメチルホルムアミドに溶解し、その4mlを96mlの0.0126重量%の過酸化水素を含む0.1M酢酸ナトリウムクエン酸緩衝液pH6.0に加えて良く混合し、発色液とした。
【0058】
(5)測定
ヘモグロビンの有無が既知である乳癌患者の乳頭分泌液各10μlを試料添加口33からメンブレンの抗体をドットした部分に添加した。その後、展開液を200μl試料添加口33から添加し完全に展開液が吸収されるまで待った。展開液の添加を3回繰り返した後、メンブレンの抗体をドットした部分に発色液を200μl滴下して、3分後にメンブレンの着色を観察した。結果を表3に示す。ヘモグロビン陽性検体I,Jでは着色が観察されたが、陰性検体Kでは着色が観察されなかった。
【0059】
【表3】
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、微量にしか採取できない乳頭分泌液中の特定物質を、短時間に精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で用いたイムノクロマト法による簡易測定装置の概略図
【図2】図1で示した簡易測定装置の側断面図
【図3】実施例2で用いたイムノクロマト法による簡易測定装置の概略図
【図4】図3で示した簡易測定装置の側断面図(採取部品を除く)
【図5】実施例3で用いたイムノクロマト法による簡易測定装置の概略図
【図6】図5で示した簡易測定装置の側断面図
【図7】実施例4で用いたフロースルー法による簡易測定装置の概略図
【図8】図7で示した簡易測定装置の側断面図
Claims (6)
- 0.1〜20μlの乳頭分泌液に含まれる特定物質を測定する方法であって、該特定物質あるいは該特定物質に対する抗体を固定化した多孔性基材のシート状ストリップを使用し、乳頭分泌液を希釈することなく、試料添加口からストリップまたは吸水用部品に添加し、展開液を展開液添加口または試料添加口から添加して該シート状ストリップに添着した標識抗体若しくは該展開液に溶解した標識抗体を該乳頭分泌液に接触させ、続いて該特定物質あるいは該特定物質に対する抗体を固定化した部位を通過させ、その部位あるいはその下流に検出可能な信号を得ることにより測定を行なうことを特徴とする乳頭分泌液に含まれる特定物質のイムノクロマト法による測定方法。
- 標識抗体の標識が金属コロイド粒子、非金属コロイド粒子または着色ラテックス粒子であり、サンドイッチ形式で測定を行なう請求項1に記載の測定方法。
- 標識抗体が金コロイド粒子標識抗体である請求項2に記載の測定方法。
- 乳頭分泌液に含まれる特定物質が乳ガンの発症に伴い乳頭分泌液中の濃度が変化する物質である請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
- 乳頭分泌液に含まれる特定物質がCEA(癌胎児性抗原)である請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
- 乳頭分泌液に含まれる特定物質がNCC−ST−439抗原である請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
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