JP5429733B2 - アルミナゾル及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミナゾル及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高アスペクト比を有する、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子が溶液に分散した、粒子集積時の配向性が有り、保存安定性の高い高純度アルミナ多孔質自立膜を作製することが可能なアルミナゾル及びその製造方法に関するものである。本発明は、アルミナゾルが、乾燥ゲル移行時に、高い粒子配向性を有し、細孔を有する高純度アルミナ多孔質自立膜を作製することを可能とするアルミナゾルであって、例えば、光学材料、センサー素子、分離膜、光電気化学膜、イオン伝導膜、触媒担体などの材料として利用可能な新しいアルミナゾルを提供するものである。
近年、液晶、有機ELなどのディスプレーや、電子機器配線基盤のフレキシブル化により、柔軟性、透明性、高耐熱性、可撓性を有する独立したフィルムや、シートなどの、高性能の自立膜が求められている。プラスチックなどの有機フィルムは、柔軟性や、透明性に優れている反面、例えば、耐熱性が低いという欠点を有している。また、薄板のガラスなどは、耐熱性、透明性が優れているものの、厚さ0.4mm程度までの薄板しかできないため、軽量化、柔軟性の面で限界がある、という問題を有している。
一方、アルミナは、優れた電気絶縁性と、熱伝導性を兼ね揃えていることから、高耐熱性、柔軟性を有する独立したフィルムやシート(以後、自立膜と記載することがある。)用の素材の一つとして、その将来性が高く期待されているが、従来、この種の膜の報告例はない。一方、この種の膜の原料として期待されるアルミナ粒子には、板状、柱状、針状、繊維状など、様々な形状の粒子が知られており、板状、柱状のような低アスペクト比の粒子ゾルを使用して自立膜を作製する試みがなされているが、自立膜として利用できる十分な大きさ、強度の膜は、得られなかった。
一方、粒子のアスペクト比が高いものでは、比較的大きな面積を有する自立膜が得られやすく、細孔径も低下する傾向になるといえるが、実際に、十分利用できる大きさ、強度、可撓性を有する自立膜は未だ作製可能となっておらず、更に実用的に十分な強度を有する自立膜を作製することを可能とするアルミナゾルが望まれていた。
比較的、高アスペクトを示すアルミナゾルは、従来、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、もしくはNaOなどの不純物を含む水酸化アルミニウムなどを用いて製造されるため、得られたアルミナゾルを焼成する際に、有毒なガスが発生し、焼成後も、アルミナ内に、Na、K、Cl、NO、SOが残存する欠点があり、高品質のアルミナ製品が得られない、という問題を有していた。
繊維状もしくは針状のアルミナゾルについては、先行技術として、例えば、短径が10nm以下で、長径が200nm以下の擬ベーマイト結晶からなる透明性の高いアルミナゾル、及び、当該アルミナゾルから得られる擬ベーマイト膜、が提案されている(特許文献1参照)。
他の先行技術として、100オングストロームのアモルファスの酸化アルミニウム微粒子ゾルと分子の両端に極性基及び疎水基がそれぞれ付加された、両親媒性化合物を含有する展開液を支持体に展開することにより作製される酸化アルミニウム薄膜、が開示されている(特許文献2参照)。
また、他の先行技術として、水酸化アルミニウムを原料に用いて、Mg2+、Mn2+、Zn2+のような金属イオン及びカルボン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオンのような陰イオンの存在下で、粒子成長を行うことにより製造される針状ベーマイト粒子、が開示されている(特許文献3参照)。
また、他の先行技術として、アルミニウム金属塩水溶液中にアルカリ水溶液を添加し、ゲル状の水酸化アルミニウムを生成後、4段階の水熱処理工程を施すことからなる針状のベーマイト粒子の製法、が開示されている(特許文献4参照)。
これらの先行技術のうち、上記特許文献1で合成した、粒子の短径が10nm、長径が約100nmである針状の擬ベーマイト粒子からなるフィルムは、可撓性が十分ではなく、また、この文献には、ポリビニルアルコールをバインダーとして使用し、フィルムを作製することが記載されているが、水溶性の高分子を含まないアルミナゾルからのみ作製した擬ベーマイトフィルムについては、何も記載されていない。
上記特許文献2に開示されている酸化アルミニウム複合膜は、両親媒性化合物を必須要件としており、この両親媒性化合物を添加せずに膜を作製すると、膜の乾燥中にクラックが入り、均一な膜が得られず、更に、このような両親媒性化合物は、特殊な構造をしており、容易に入手できるものではないので、工業化の面で問題を有していた。
上記特許文献3に開示されている針状ベーマイトの製法は、針状の水酸化アルミニウムを使用し、また、金属イオン、硫酸イオンが、アルミナゾル中に混入してしまい、これらが、アルミナの物性に大きく影響するなどの問題を有している。
更に、この製法で得られる粒子は、短軸長が30nm〜300nm、長軸長が1000nm〜10000nm、アスペクト比が5〜50であり、短軸長が10nm以上では、得られる自立膜の可撓性は低く、更に、この製法では、これ以上のアスペクト比の向上は容易ではなく、要望される高アスペクト比を有する粒子を合成することができない。
上記文献4に開示されている針状ベーマイトの製法では、短軸径5.5±0.5nm、長軸径が350±37nm、アスペクト比が45〜80の針状ベーマイトが得られている。しかし、この製法では、粒子成長過程における急激な温度変化を必要とし、温度制御が複雑であり、工業化の面で問題を有している。
特開昭59−78925号公報 特開平5−238728号公報 特開2008−37741号公報 特開2006−56739号公報
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、自立膜として利用できる十分な面積及び強度を有する、高純度アルミナ多孔質自立膜を形成するための、高アスペクト比を有する繊維状もしくは針状のアルミナゾルを開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、原料として、アルミニウムアルコキサイドを利用し、特定の製法及び条件で反応を行うことにより、高アスペクトを有し、粒子配向性を有し、高い保存安定性を保持した自立膜の作製に極めて好適な、高純度繊維状又は針状アルミナゾルを開発することに成功し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するための本発明の構成は、以下の技術的手段から構成される。
(1)アルミニウムアルコキシドの加水分解で得られるアルミナゾルであって、短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000であり、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散したものであり、以下の特性;Na、K、SOの含量:0〜1ppm、粒子集積時の配向性:有り、250〜900℃の焼成処理後の紫外線励起による発光:有り、を有することを特徴とするアルミナゾル。
(2)前記アルミナゾルにおいて、アルミナ粒子の短径が、1〜10nmの長さで、長径が、100〜10000nmの長さである、前記(1)に記載のアルミナゾル。
(3)前記アルミナゾル中のアルミナ粒子のアスペクト比が、100〜3000である、前記(1)又は(2)に記載のアルミナゾル。
(4)前記アルミナゾル中のアルミナ粒子の短径が、2〜5nmの長さで、長径が、500〜7000nmの長さである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(5)前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲル中のアルミナ粒子が、ベーマイト又は擬ベーマイトである、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(6)前記アルミナゾル溶液中のNa、K、Cl、SOの濃度が、1ppm以下である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(7)前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、150℃で焼成処理したときのアルミナゲルが、0.4nm〜20nmの間に、細孔分布極大を示す、前記(1)〜(6)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(8)前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、発光現象を示す、前記(1)〜(7)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(9)前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、波長390nm〜700nmの範囲で発光する、前記(1)〜(8)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(10)前記アルミナゾルの粘度が、室温で、2ヶ月間の放置後においても、経時変化を起さないものである、前記(1)〜(9)のいずれかに記載のアルミナゾル。
(11)アルミニウムアルコキサイドを、酸水溶液中で加水分解してアルミナ水和物とし、生成したアルコールを留去した後、解膠することにより、ゾル中のアルミナ粒子の形状が、繊維状もしくは針状で、短径が1〜10nm、アスペクト比が30〜5000のアルミナ粒子が分散した溶液からなり、アルミナゾル溶液中のNa、K、SO濃度が0〜1ppmの範囲であるアルミナゾルを製造する方法であって、
酸の使用量が、アルミニウムアルコキサイドに対し、0.2〜2.0モル倍であり、加水分解反応を、固形分濃度2〜15wt%で、100℃を超えない温度で、0.1〜3時間行い、解膠処理を100〜200℃で、0.1〜10時間の加熱で行うことを特徴とするアルミナゾルの製造方法。
(12)酸が、酢酸である、前記(11)に記載のアルミナゾルの製造方法。
(13)前記アルミナゾル中のアルミナを、加水分解終了時に、2〜15wt%となるようにする、前記(11)又は(12)に記載のアルミナゾルの製造方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、アルミニウムアルコキシドの加水分解で得られるアルミナゾルであって、短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000であり、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散したものであり、Na、K、SOの含量が0〜1ppmで、粒子集積時に配向性を有し、250〜900℃で焼成処理し、紫外線で励起すると発光する特性を有することを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000であり、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散したアルミナゾルであって、次の特性Na、K、SOの含量:0〜1ppm、粒子集積時の配向性:有り、250〜900℃の焼成処理後の紫外線励起による発光:有り、を有するものである。
まず、本発明のアルミナゾルについて説明する。本発明のアルミナゾルは、アルミニウムアルコキサイドを原料として、ゾルゲル法で合成された繊維状もしくは針状粒子からなるアルミナゾルであり、組成式Al・nHO(n=1〜1.5)で表されるアルミナ水和物の結晶であり、結晶系は、ベーマイトもしくは、擬ベーマイトである。
本発明のアルミナゾルは、平均アスペクト比(長径/短径)が30〜5000、平均短径が1〜10nm、かつ平均長径が100〜10000nmである、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子からなるアルミナゾルであり、アスペクト比が100〜3000で、平均短径が2〜5nmで、平均長径が500〜7000nmであることが好ましい。
アスペクト比が5000を超える場合は、多大な製造時間を要するため、実用的でない上に、この種の巨大分子からなる膜は、透明性、可撓性に乏しくなるので、好ましくない。粒子の平均短径が1nm未満である場合は、粒子が微小であるため、凝集し易くなり、それにより、粘度が増大し、保存安定性が低下するため、好ましくない。
本発明において、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子の集積とは、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子が平面方向及び垂直方向に積み重なったことを意味するものとして定義される。本発明のアルミナゾルを使用して成膜することにより、アルミナ多孔質自立膜を作製することが可能である。本発明のアルミナゾルは、粒子集積時に配向性を有する。本発明において、多孔質とは、繊維状もしくは針状の粒子と粒子とで形成される空隙を有することを意味するものとして定義される。粒子の平均長径は、好適には700〜7000nmである。平均長径が100nm未満の場合は、成膜して得られる膜の可撓性や、強度が不十分となるので、好ましくない。平均長径が10000nmを超える場合は、多大な製造時間を要することになるので、好ましくない。
本発明のアルミナゾルは、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲル中のアルミナ粒子の結晶系が、ベーマイト又は擬ベーマイトであることが好ましい。また、本発明のアルミナゾルは、好適には、前記アルミナゾル溶液中のNa、K、Cl、SOの濃度が0〜1ppmの1ppm以下であり、前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、150℃で焼成処理したときのアルミナゲルが、0.4nm〜20nmの間に、細孔分布極大を示す。
また、本発明のアルミナゾルは、前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、発光現象を示し、前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、波長390nm〜700nmの範囲で発光し、前記アルミナゾルの粘度が、室温で、2ヶ月間の放置後においても、経時変化を起さないものである。
本発明の繊維状及び針状のアルミナゾルを使用することにより、水溶性高分子もしくは界面活性剤を含まなくとも、アルミナ多孔質膜自立膜を作製することが可能である。自立膜の作製方法について説明すると、必ずしも、この方法に限定されるものではないが、本発明では、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子分散液を、テフロン(登録商標)コートした容器(80mm×80mm×2mm)に流し込み、送風式オーブン内で、40℃、3時間乾燥して成膜し、これを支持体より剥離することにより、アルミナ多孔質自立膜が得られる。
このアルミナ多孔質自立膜を、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくはX線回折測定の結果、結晶配向性を有しており、特に、結晶子面(020)が、高い異方性を示している。アルミナの熱伝導性、電気伝導性などの諸物性に関する異方性を利用する場合には、ベーマイト又は擬ベーマイト粒子が、特定結晶面の強度比が、大きく高配向しているものであることが好ましい。
本発明の繊維状及び針状のアルミナゾルのpHは、2.5〜4の酸性を示すことから、コーティング、フィルムなどに使用した際は、基板に腐食などの影響を与えることがある。その場合、pH調製試薬を添加し、アルミナゾルのpHを、中性又はアルカリ性に調整することにより、基板への影響を抑え、塗膜を作製することができる。
この場合、pH調整試薬として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はアンモニア、及び、エチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、尿素などの有機アミン類などが使用可能である。無機水酸化物、炭酸塩などは、焼成後も、元素が残存してしまうことから、好ましくなく、好適には、アンモニア、有機アミン類である。
また、アルミナ多孔質膜が形成される過程で、アンモニア、有機アミンなどの塩基性物質が発生する場合は、この種の調整剤の添加は、特に必要としないので、この場合は、pH調整用添加物に特にとらわれるものではなく、それに規制されるものではない。
また、自立膜には、粒子空隙で表される細孔が存在しており、液体窒素温度で測定した窒素吸着等温線から、マイクロ孔ないしメソ孔依存のヒステリシスとして、MP法ないしBJH法により解析して得られた細孔分布曲線において、ピークットップを示す細孔直径dpeakが、0.5〜20nmである細孔分布を有する。
MP法とは、吸着等温線からマイクロ孔容積、マイクロ孔面積及びマイクロ孔の分布などを求める方法である(文献:R.S.Mikhail,S.Brunauer,E.E.Bodor,J.Colloid Interface Sci.,26,45(1968))。また、BJH法とは、吸着等温線からメソ孔容積、メソ孔表面積及びメソ孔の分布などを求める方法である(文献:E.P.Barrett,L.G.Joyner,P.P.Halenda,J.Am.Chem.Soc.,73,373(1951))。
本発明により作製したアルミナ多孔質膜を、100℃〜1000℃で焼成しても、膜の形状は保持される。また、本発明によって作製したアルミナ多孔質自立膜を、250℃〜900℃で焼成し、365nmの波長の光を照射すると、波長390〜700nmの波長の光を発光する。
次に、本発明のアルミナゾルの製造方法について説明する。本発明では、アルミニウムアルコキサイドを、酸水溶液中で加水分解してアルミナ水和物とし、生成したアルコールを留去した後、解膠すること、その際に、加水分解の反応条件、及び解膠の処理条件を、後記する特定条件とすること、により、平均短径が1〜10nm、平均アスペクト比が30〜5000、かつ平均長径が100〜10000nmである、繊維状もしくは針状のアルミナ水和物粒子が分散している水性アルミナゾルを作製することができる。
アルミニウムアルコキサイドとしては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、環状アルミニウムオリゴマー、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウムなどのアルミニウムキレートなどが例示される。
これらの化合物のうち、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であることなどから、炭素数2〜5のアルコキシル基を有するものが特に好ましい。また、これらのアルコキサイドの性状は、液体でも、粉末ないし顆粒状でもよく、純度は、99%以上であることが好ましい。
加水分解に使用する酸としては、塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの一価の酸が好ましく、無機酸は、焼成後もアルミナ中に残存してしまうため、好ましくない。有機酸として、操作性、経済性の面で、酢酸が特に好ましい。酸の使用量は、アルミニウムアルコキサイドに対し、0.2〜2.0モル倍であり、好ましくは0.3〜1.8モル倍である。0.2モル未満の場合は、得られる粒子のアスペクト比が小さく、好ましくない。2.0モル以上の場合、経時安定性が低下し、更に経済性の面で好ましくない。
加水分解の条件は、100℃以下で、0.1及至3時間が好ましい。100℃を超える場合は、突沸の恐れがあるため、好ましくない。加水分解の時間が0.1時間未満では、温度コントロールが困難であり、3時間を超えると、工程時間が長くなるため、好ましくない。
加水分解するアルミニウムアルコキサイドの酸水溶液の固形分濃度は、2〜15wt%が好ましく、好ましくは3〜10wt%である。固形分濃度が2wt%以下の場合、得られる粒子のアスペクト比が小さくなり、好ましくなく、15wt%以上の場合、解膠中に反応液の撹拌性が低下するため、好ましくない。
加水分解で生成したアルコールを留去後、解膠処理を行う。解膠処理は、100℃〜200℃で、0.1〜10時間加熱し、更に好ましくは110〜180℃で、0.5〜5時間処理する。加熱温度が100℃未満の場合は、反応に長時間必要とし、200℃を超えるときは、高圧の容器などを必要とし、経済的に不利であるため、好ましくない。加熱時間が0.1時間未満の場合、粒子サイズが小さく、保存安定性が低く、10時間を超える場合は、工程時間が長くなるだけで、好ましくない。
本発明では、これらの条件を満たすことにより、短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000である、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散したアルミナゾルであって、以下の特性;Na、K、SOの含量が0〜1ppm、粒子集積時に配向性を有し、250〜900℃の焼成処理で、紫外線励起による発光:有り、を有することを特徴とするアルミナゾルを製造し、提供することが可能となる。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明により、高アスペクト比を有する、保存安定性の高い、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子が溶液に分散した、高純度アルミナ多孔質自立膜を作製することを可能とするアルミナゾルを提供することができる。
(2)短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000であり、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散し、Na、K、SOの含量が0〜1ppmで、粒子集積時に配向性を有し、250〜900℃の焼成処理で、紫外線励起による発光を有する、アルミナゾルを提供することができる。
(3)本発明のアルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、発光現象を示す高純度アルミナ多孔質自立膜を作製することができる。
(4)アルミナ多孔質自立膜、及び、コーティング処理などで得られる支持体付の膜などの前駆体、具体的には、例えば、優れた熱安定性、熱伝導性、電気絶縁性などを併せ持つ、光学材料、センサー素子、分離膜、光電気化学膜、イオン伝導膜、触媒担体などの原料として利用可能な新規アルミナゾルを提供することができる。
次に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、自立膜を構成する粒子の同定は、X線回折測定で行った。X線回折測定は、回折角2θが10〜90°で測定した。繊維状擬ベーマイト粒子の平均長径及び平均短径、及び、アスペクト比は、電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。
測定装置については、以下の装置を使用した。
・X線回折装置(Mac.Sci.MXP−18、管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:250mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター、サンプリング幅:0.020°、走査速度:10°/min、発散スリット:0.5°、散乱スリット:0.5°、受光スリット:0.30mm)
・透過型電子顕微鏡(FEI−TECNAI−G20)
・分光蛍光光度計(日立ハイテクF−2500)
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸3.1g(0.051mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド34g(0.17mol)を、0.6時間かけて滴下し、発生するイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を、95℃まで上昇させた。反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、150℃で、6時間反応を行った。
反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、2.8質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が4nm、平均長径が2000nm、平均アスペクト比が500の繊維状アルミナ粒子であった。図1に、本実施例で作製した、アルミナゾルの透過型電子顕微鏡画像を示す。
実施例1で作製したアルミナゾル10gを、テフロン(登録商標)コートした容器(80mm×80mm×2mm)に流し込んで膜を形成し、これを、送風式オーブン内で、40℃、3時間乾燥し、形成された膜を剥離させることにより、80mm×80mm×厚さ40μmの擬ベーマイト自立膜を得た。擬ベーマイト自立膜の細孔分布曲線(MP法)及びX線回折図を、図2及び図3に示す。細孔分布曲線のdpeakは、0.8nm付近であった。
また、上記自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=25で、高い異方性を示した。また、この自立膜を、500℃で5時間焼成し、365nmの波長の光で励起した場合、390nm〜700nm範囲の発光スペクトルを示した。そのスペクトルを、図4に示した。また、アルミナゾルの2ヶ月後の保存安定性を調べた結果、粘度変化は、ほとんど認められず、保存安定性は高いことが確認された。
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸10.2g(0.17mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド64g(0.34mol)を、0.5時間かけて滴下し、発生するイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を98℃まで上昇させた。反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、160℃で、3時間反応を行った。
反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、4.8質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が2nm、平均長径が2000nm、平均アスペクト比が1000の繊維状アルミナ粒子であった。
実施例2で調製したアルミナゾル10gを使用し、実施例1で作製した自立膜の場合と同様な操作で、アルミナ自立膜を作製した結果、80mm×80mm×厚さ70μmの自立膜を得た。擬ベーマイト自立膜の細孔分布を測定した結果(MP法)、dpeakは、0.9nm付近であった。
また、上記アルミナ自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=20で、高い異方性を示した。また、この自立膜を、500℃で5時間焼成し、365nmの波長の光で励起した場合、390nm〜700nm範囲の発光スペクトルを示した。また、アルミナゾルの2ヶ月後の保存安定性を調べた結果、粘度変化は、ほとんど認められず、保存安定性は高いことが確認された。
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸25.3g(0.421mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド115g(0.56mol)を0.8時間かけて滴下し、発生したイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を95℃まで上昇させた。反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、160℃で、5時間反応を行った。
反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、10質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が2nm、平均長径が3000nm、平均アスペクト比が1500の繊維状アルミナ粒子であった。
実施例3で調製したアルミナゾル5gを使用し、実施例1で作製した自立膜の場合と同様な操作で、アルミナ自立膜を作製した結果、80mm×80mm×厚さ60μmの自立膜を得た。擬ベーマイト自立膜の細孔分布を測定した結果(MP法)、dpeakは、0.9nm付近であった。
また、上記アルミナ自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=27で、高い異方性を示した。また、この自立膜を、500℃で5時間焼成し、365nmの波長の光で励起した場合、390nm〜700nm範囲の発光スペクトルを示した。また、アルミナゾルの2ヶ月後の保存安定性を調べた結果、粘度変化は、ほとんど認められず、保存安定性は高いことが確認された。
比較例1
(アスペクト比が10未満の柱状ベーマイト1)
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸4.08g(0.068mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド64g(0.34mol)を滴下し、発生するイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を98℃まで上昇させた。
反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、180℃で、5時間反応を行った。反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、4.8質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が10nm、平均長径が100nm、平均アスペクト比が10の柱状アルミナ粒子であった。
比較例1で調製したアルミナゾル10gを使用し、実施例1で作製した自立膜の場合と同様な操作で、アルミナ自立膜を作製した。その結果、膜の乾燥途中でクラックが入り、10mm×10mm程度の膜しか得られず、成膜性は良くなかった。擬ベーマイト自立膜の細孔分布を測定した結果(BJH法)、dpeakは2.1nm付近であった。
また、上記自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=2.1で、低い異方性を示した。また、2ヶ月後の保存安定性を調べた結果、粘度変化は、ほとんど認められず、保存安定性は高いことが確認された。
比較例2
(アスペクト比が10未満の柱状ベーマイト2)
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸2.34g(0.039mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド16g(0.078mol)を滴下し、発生するイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を98℃まで上昇させた。
反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、150℃で、5時間反応を行った。反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、1.2質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が10nm、平均長径が50nm、平均アスペクト比が5の柱状アルミナ粒子であった。
比較例2で調製したアルミナゾル20gを使用し、実施例1で作製した自立膜の場合と同様な操作で、アルミナ自立膜を作製した。その結果、膜の乾燥途中でクラックが入り、数mm×数mm程度の膜しか得られず、成膜性は良くなかった。擬ベーマイト自立膜の細孔分布を測定した結果(BJH法)、dpeakは、2.3nm付近であった。
また、上記自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=1.3で、低い異方性を示した。また、アルミナゾルの2ヶ月後の保存安定性を調べた結果、粘度変化は、ほとんど認められず、保存安定性は高いことが確認された。
比較例3
500mlの四つ口フラスコに、イオン交換水300g、酢酸15.3g(0.255mol)を取り、撹拌しながら、液温を75℃に上昇させた。これに、アルミニウムイソポロポキシド64g(0.34mol)を0.6時間かけて滴下し、発生したイソプロピルアルコールを留出させながら、液温を95℃まで上昇させた。
反応液を、電磁撹拌式のオートクレーブに移し、撹拌しながら、100℃で、1時間反応を行った。反応液を、40℃以下に冷却し、反応を終了した。反応液中の固形分濃度は、4.8質量%であった。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果、平均短径が0.8nm、平均長径が100nm、平均アスペクト比が125の繊維状アルミナ粒子であった。
比較例3で調製したアルミナゾル10gを使用し、実施例1で作製した自立膜の場合と同様な操作で、アルミナ自立膜を作製した。その結果、膜の乾燥途中でクラックが入り、10mm×10mm程度の膜しか得られず、成膜性は良くなかった。擬ベーマイト自立膜の細孔分布を測定した結果(BJH法)、dpeakは、0.8nm付近であった。
また、上記自立膜の結晶系は、ベーマイトであり、14.5°付近の(020)面ピーク及び28.5°付近の(120)面ピーク強度比は、(020)/(120)=12で、異方性を示した。しかし、アルミナゾルの保存安定性を調べた結果、1週間後、ゲル化し、保存安定性は低いことが確認された。実施例及び比較例で試作したアルミナゾルの評価結果を表1に示す。
以上詳述したように、本発明は、アルミナゾル及びその製造方法に係るものであり、本発明により、高アスペクト比を有する、保存安定性の高い、繊維状もしくは針状のアルミナ粒子が溶液に分散した、アルミナゾルを提供することができる。本発明のアルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、発光現象を示すアルミナ多孔質自立膜を作製することができる。本発明は、粒子配向性を有し、マイクロ孔を有した自立膜を提供でき、光学材料、センサー素子、分離膜、光電気化学膜、イオン伝導膜、触媒担体などの材料として利用可能な新しい高純度アルミナ多孔質自立膜を提供するものとして有用である。
実施例1で合成したアルミナゾルの透過型電子顕微鏡画像を示す。 実施例1作製した乾燥アルミナゲルの細孔分布曲線を示す。 実施例1で作製した乾燥アルミナゲルのX回折図を示す。 実施例1で作製した乾燥アルミナゲルの波長365nmの紫外線で励起した場合の発光スペクトルを示す。

Claims (13)

  1. アルミニウムアルコキシドの加水分解で得られるアルミナゾルであって、短径が1〜10nm、長径が100〜10000nmで、アスペクト比(長径/短径)が30〜5000であり、繊維状もしくは針状の形状を有するアルミナ水和物粒子又はアルミナ粒子が溶液中に分散したものであり、以下の特性;Na、K、SOの含量:0〜1ppm、粒子集積時の配向性:有り、250〜900℃の焼成処理後の紫外線励起による発光:有り、を有することを特徴とするアルミナゾル。
  2. 前記アルミナゾルにおいて、アルミナ粒子の短径が、1〜10nmの長さで、長径が、100〜10000nmの長さである、請求項1に記載のアルミナゾル。
  3. 前記アルミナゾル中のアルミナ粒子のアスペクト比が、100〜3000である、請求項1又は2に記載のアルミナゾル。
  4. 前記アルミナゾル中のアルミナ粒子の短径が、2〜5nmの長さで、長径が、500〜7000nmの長さである、請求項1〜3のいずれかに記載のアルミナゾル。
  5. 前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲル中のアルミナ粒子が、ベーマイト又は擬ベーマイトである、請求項1〜4のいずれかに記載のアルミナゾル。
  6. 前記アルミナゾル溶液中のNa、K、Cl、SOの濃度が、1ppm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のアルミナゾル。
  7. 前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、150℃で焼成処理したときのアルミナゲルが、0.4nm〜20nmの間に、細孔分布極大を示す、請求項1〜6のいずれかに記載のアルミナゾル。
  8. 前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、発光現象を示す、請求項1〜7のいずれかに記載のアルミナゾル。
  9. 前記アルミナゾルから、溶媒を除去して得られる乾燥アルミナゲルを、250℃〜900℃で焼成処理し、365nmの波長の光を照射すると、波長390nm〜700nmの範囲で発光する、請求項1〜8のいずれかに記載のアルミナゾル。
  10. 前記アルミナゾルの粘度が、室温で、2ヶ月間の放置後においても、経時変化を起さないものである、請求項1〜9のいずれかに記載のアルミナゾル。
  11. アルミニウムアルコキサイドを、酸水溶液中で加水分解してアルミナ水和物とし、生成したアルコールを留去した後、解膠することにより、ゾル中のアルミナ粒子の形状が、繊維状もしくは針状で、短径が1〜10nm、アスペクト比が30〜5000のアルミナ粒子が分散した溶液からなり、アルミナゾル溶液中のNa、K、SO濃度が0〜1ppmの範囲であるアルミナゾルを製造する方法であって、
    酸の使用量が、アルミニウムアルコキサイドに対し、0.2〜2.0モル倍であり、加水分解反応を、固形分濃度2〜15wt%で、100℃を超えない温度で、0.1〜3時間行い、解膠処理を100〜200℃で、0.1〜10時間の加熱で行うことを特徴とするアルミナゾルの製造方法。
  12. 酸が、酢酸である、請求項11に記載のアルミナゾルの製造方法。
  13. 前記アルミナゾル中のアルミナを、加水分解終了時に、2〜15wt%となるようにする、請求項11又は12に記載のアルミナゾルの製造方法。
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