従来、図9(a)に示すように、リアクトルL1、コンデンサC1、およびスイッチ素子S1,S2を備えた昇圧チョッパ装置101が知られている。リアクトルL1は、一端が直流電源V1に接続され、他端がスイッチ素子S1を介して出力端子Toに接続されるとともにスイッチ素子S2を介して接地されている。またコンデンサC1は、一端が出力端子Toに接続され、他端が接地されている。またスイッチ素子S1,S2はMOSFETで構成されている。
このように構成された昇圧チョッパ装置101においては、スイッチ素子S1とスイッチ素子S2とを交互にオン/オフさせて、電源電圧より高い電圧を出力端子Toに発生させることができる。すなわち、まずスイッチ素子S2をオンすると、リアクトルL1に磁気エネルギーが蓄積される。その後にスイッチ素子S2をオフすると、リアクトルL1に蓄積された磁気エネルギーにより、リアクトルL1とスイッチ素子S2との接続点での電圧が上昇し、コンデンサC1に電荷が蓄積される。この動作を繰り返すことにより、出力端子Toの電圧(以下、出力電圧ともいう)が上昇する。
なおコンデンサC1は、出力電圧のリップルを十分抑えるために、静電容量が大きいものが用いられる。これにより、コンデンサC1の体格が大きくなるために、コンデンサC1は、スイッチ素子S1,S2から離して配置される。このため、スイッチ素子S1とコンデンサC1との間の配線に寄生するインダクタンス成分Laが大きくなる。
ところで、大きな静電容量を有するコンデンサとして、一般にフィルムコンデンサまたは電解コンデンサが用いられる。これらのコンデンサは、静電容量が大きいほどコンデンサの端子およびコンデンサの内部電極に寄生するインダクタンス成分Lcが大きくなることが知られている。すなわち、出力電圧の平滑能力を重視し、大きな静電容量のものを平滑コンデンサとして用いると、寄生インダクタンス成分La,Lcが増大する。
そして、寄生インダクタンス成分La,Lcの増大により、以下の二つの問題が発生する。
第1の問題は、スイッチ素子S2のターンオフ時とターンオン時に、スイッチ素子S1,S2の電圧定格を超えるサージ電圧が発生し、スイッチ素子S1,S2が破壊されてしまうことである。
すなわち、スイッチ素子S2のターンオフ時には、スイッチ素子S2のオン時にスイッチ素子S2に流れていたリアクトル電流ILが瞬時にスイッチ素子S1へ転流される。このため、図9(b)に示すように、スイッチ素子S2のターンオフの瞬間に、スイッチ素子S1の並列ダイオードD1に流れる電流Iの時間勾配(dI/dt)1(以下、電流勾配(dI/dt)1という)が大きくなる。図9(b)は、スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時に、図9(a)のスイッチ素子S2と寄生インダクタンス成分Laとの接続点T1を流れる電流を示す図である。
そして、並列ダイオードDaに流れる電流Iの変動成分IripはコンデンサC1に流れるため、電流Iの変動成分Iripは寄生インダクタンス成分La,Lcを通過することになる。したがって、スイッチ素子S2のターンオフ時に発生する大きな電流勾配(dI/dt)1が寄生インダクタンス成分La,Lcにかかる。これにより、スイッチ素子S2の寄生容量と寄生インダクタンス成分La,Lcとの間で共振する。このため、図10(a)に示すように、接続点T1において電圧変動が発生し、この電圧変動の極大値として、下式(1)で表されるサージ電圧VS1が発生する。図10(a)はスイッチ素子S2のターンオフによる接続点T1における電圧と電流の変動を示す図である。
また、スイッチ素子S2のターンオンにおいても同様の問題が発生する。ターンオン時にスイッチ素子S1の並列ダイオードD1に流れる電流Iの時間勾配(dI/dt)2(以下、電流勾配(dI/dt)2という)は負の値となるため(図9(b)を参照)、図10(b)に示すように、ターンオンの瞬間に、接続点T1における電圧は、下式(2)で表される振幅V’ S2で負側に振れ、その後、スイッチ素子S2の寄生容量と寄生インダクタンス成分Laとの間で共振する。このため、接続点T1において電圧変動が発生し、この電圧変動の極大値として、下式(2)で表されるサージ電圧VS2が発生する。図10(b)はスイッチ素子S2のターンオンによる接続点T1における電圧と電流の変化を示す図である。
第2の問題は、電流勾配(dI/dt)1および電流勾配(dI/dt)2により接続点T1で発生した電圧変動が出力端子Toに現れることで、出力電圧にノイズが発生し、出力電圧の品質が低下することである。
接続点T1におけるサージを十分平滑できる静電容量を有するコンデンサをコンデンサC1として用いたとしても、寄生インダクタンス成分La,Lcにより接続点T1における電圧変動が分圧されるため、ターンオン・ターンオフ時に出力端子Toに現れるノイズ電圧の極大値Vn1,Vn2は下式(3),(4)で表される。
すなわち、寄生インダクタンス成分Lcの増大により出力端子Toに現れるノイズ電圧の極大値Vn1,Vn2が大きくなり、出力電圧の品質が低下する。
以上のように、出力電圧の平滑能力を確保するためにコンデンサC1の静電容量を大きくすると、接続点T1に現れるサージ電圧、および出力端子Toに現れるノイズ電圧が増大するという問題が発生する。
このような問題を解決するために、図11(a)に示すように、コンデンサC1よりスイッチ素子S1に近くなるように、コンデンサC1より静電容量の小さい表面実装のコンデンサCaを並列に配置し、スイッチ素子S1,S2とコンデンサCaとから形成されるループ線路RL11を絶縁層を介して対向させるように配線する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時の電流勾配(dI/dt)1,(dI/dt)2は瞬間的に発生するため、この瞬間の電流が流す電荷は少ない。このため、コンデンサCaの静電容量が小さくても、サージ電流を吸収することができる。また、この瞬間以外の出力電流リップルはコンデンサC1で吸収されるため、コンデンサC1として、電流リップルを十分に吸収できる静電容量のコンデンサを用いることにより出力電圧の電圧平滑能力を確保することができる。
さらに、コンデンサCaとして、寄生インダクタンスの小さい表面実装のコンデンサ(例えば、積層セラミックコンデンサ)を用いることで寄生インダクタンス成分Lcを低減させる。また、絶縁層を介して対向させた線路により寄生インダクタンス成分Laを低減させる。そして、スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時に接続点T1において発生するサージ電圧VS1,VS2は、上式(1),(2)で表されるため、寄生インダクタンス成分La,Lcの低減により、サージ電圧を小さくすることができる。
また、接続点T1において発生する電圧については、寄生インダクタンス成分La,Lcに加え、コンデンサCaとコンデンサC1との間の配線に寄生するインダクタンス成分LbとコンデンサC1の寄生インダクタンス成分Ldによって電圧変動が分圧されるため、ターンオン・ターンオフ時に出力端子Toに現れるノイズ電圧の極大値Vn1,Vn2は下式(5),(6)で表される。
なお、式(5),(6)中の記号「//」はインピーダンスの並列接続を表す記号であり、下式(7)で定義される。
ここで、式(5),(6)において共通にかかる因子gを下式(8)で定義すると、式(5),(6)は下式(9),(10)で表される。
そして、式(8)で表される因子gを展開すると、下式(11)が得られる。
ここで、コンデンサC1の静電容量が大きいため、上述の理由から寄生インダクタンス成分Lb,Ldが寄生インダクタンス成分La,Lcに比べて十分大きくなり、下式(12)で表される関係が成り立つ。
そして、上式(11)に上式(12)を適用すると、下式(13)が得られる。
したがって、ターンオン・ターンオフ時に出力端子Toに現れるノイズ電圧の極大値Vn1,Vn2は下式(14),(15)で表される。
上式(14),(15)に示すように、寄生インダクタンス成分Lcの低減によりノイズ電圧を小さくすることができるとともに、寄生インダクタンス成分Lbを寄生インダクタンス成分Ldより十分大きくすることにより、ノイズ電圧をさらに小さくすることができる。
そして、上記特許文献1に記載の技術では、図11(a)に記載の回路を絶縁層を介して金属ベース板の上に配置するとともに、図11(a)に記載のループ線路RL11が金属ベース板を通って上記回路と対向するようにループ線路RL11を形成することにより、寄生インダクタンス成分Laを低減させる。また、コンデンサCaに表面実装部品を用いることで寄生インダクタンス成分Lcを低減させる。また、コンデンサC1を金属ベース板の外に配置することで寄生インダクタンス成分Lbを増大させる。これらにより、サージ電圧とノイズ電圧の両方について大きな低減効果を得ることができる。
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1(a)は、本実施形態の昇圧チョッパ装置1の構成を示す回路図である。図1(b)は、昇圧チョッパ装置1の表面配線を示す図である。図1(c)は、昇圧チョッパ装置1の裏面配線を示す図である。
昇圧チョッパ装置1は、図1(a)に示すように、リアクトルL1、コンデンサC1,C2,Ca、およびスイッチ素子S1,S2を備えている。
なおコンデンサC1は、電源を十分に平滑することができるように、静電容量が大きいものが用いられている。またコンデンサCaは、コンデンサC1より静電容量の小さい表面実装コンデンサである。またスイッチ素子S1,S2は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
これらのうちスイッチ素子S1は、ドレインが出力端子Toに接続されるとともに、ソースがスイッチ素子S2のドレインに接続されている。またスイッチ素子S2は、ドレインがスイッチ素子S1のソースに接続されるとともに、ソースが接地されている。
またコンデンサCaは、一端がコンデンサC1とスイッチ素子S1との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。またコンデンサC1は、一端が出力端子ToとコンデンサCaとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
またリアクトルL1は、一端が直流電源V1に接続されるとともに、他端がスイッチ素子S1とスイッチ素子S2との接続点に接続されている。
またコンデンサC2は、一端が直流電源V1とリアクトルL1との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
このように構成された昇圧チョッパ装置1においては、スイッチ素子S1とスイッチ素子S2とを交互にオン/オフさせて、出力端子Toに電源電圧より高い電圧を発生させることができる。すなわち、まずスイッチ素子S2をオンすると、リアクトルL1に磁気エネルギーが蓄積される。その後にスイッチ素子S2をオフすると、リアクトルL1に蓄積された磁気エネルギーにより、リアクトルL1とスイッチ素子S2との接続点での電圧が上昇し、コンデンサC1に電荷が蓄積される。この動作を繰り返すことにより、出力端子Toの電圧(以下、出力電圧ともいう)が上昇する。
図1(b)に示すように、昇圧チョッパ装置1の部品を実装する基板Bの表面上には、コンデンサC1,C2,Caとスイッチ素子S1,S2が実装されるとともに、入力端子Tiと出力端子Toとグランド端子GNDが設けられる。
さらに、基板Bの表面上には、スイッチ素子S1のドレイン端子Td1とコンデンサC1,Caの一端を出力端子Toに接続するための配線W1と、スイッチ素子S2のソース端子Ts2とコンデンサC1,C2,Caの他端をグランド端子GNDに接続するための配線W2と、スイッチ素子S1のソース端子Ts1をスイッチ素子S2のドレイン端子Td2に接続するための配線W3と、入力端子TiとコンデンサC2の一端とを接続するための配線W4とが形成される。なお、スイッチ素子S1,S2はそれぞれゲート端子Tg1,Tg2に電圧を印加することによりオン/オフする。
さらに、配線W2において、コンデンサCaの他端の近傍に、基板Bの表面から裏面に貫通して、基板Bの表面と裏面とを電気的に接続するヴィアVA1が形成される。また、配線W3,W4において、リアクトルL1の端部と接続するための接続端子TLが設けられている。すなわち、リアクトルL1の一端を配線W3の接続端子TLに接続するとともにリアクトルL1の他端を配線W4の接続端子TLに接続することにより、配線W3と配線W4とがリアクトルL1を介して電気的に接続される。
そして、図1(c)に示すように、基板Bの裏面上には、ヴィアVA1の形成箇所を一端としスイッチ素子S2のソース端子Ts2を他端として、スイッチ素子S1,S2の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W5が形成される。また、スイッチ素子S1,S2に対向するようにしてヒートシンクHSが配置される。
上記の配線W1,W2,W3,W5により、以下の線路F1,F2,F3が形成される。
図2(a)は、リアクトルL1、コンデンサC2、および直流電源V1を除いた昇圧チョッパ装置1の表面配線を示す図である。図2(b)は、図2(a)に示す昇圧チョッパ装置1の裏面配線を示す図である。
まず線路F1は、図2(a)に示すように、スイッチ素子S1のドレイン端子Td1からコンデンサCaの一端に至る配線W1上の経路である。なお、線路F1をできる限り短くするために、コンデンサCaの一端は、スイッチ素子S1のドレイン端子Td1の近傍に配置されている。
また線路F2は、コンデンサCaの他端からスイッチ素子S2のソース端子Ts2に至る配線W2上の経路である。なお、配線W2とスイッチ素子S1,S2との絶縁の確保が可能な範囲で線路F2が最短となるように、配線W2の形状が決定されている。
また線路F3は、ヴィアVA1からスイッチ素子S2のソース端子Ts2に至る配線W5上の経路である。なお、スイッチ素子S1,S2の端子周りに形成された絶縁領域を挟んで線路F1と線路F3とが互いに略対称となるように、配線W1,W2,W5の形状が決定されている。
上記のように線路F1,F2,F3が形成されることにより、ドレイン端子Td1に発生した電流勾配が形成する瞬時電流は、ドレイン端子Td1→線路F1→コンデンサCa→ヴィアVA1の経路で流れた後に、ヴィアVA1から線路F2と線路F3とに分割して流れる。
図3(a)は、ドレイン端子Td1からソース端子Ts2に至る電流経路を模式的に示す図である。図3(b)は、図3(a)の電流経路の等価構造を示す図である。
図3(a)に示すように、ドレイン端子Td1からヴィアVA1に至る経路を経路R1、ヴィアVA1から線路F3を通りソース端子Ts2に至る経路のうち経路R1と対向する部分を経路R2、ヴィアVA1から線路F2を通りソース端子Ts2に至る経路を経路R3、ヴィアVA1から線路F3を通りソース端子Ts2に至る経路のうち経路R1と対向しない部分を経路R4とする。
また、時計回りに流れる電流を正とするとともに、経路R1を流れる電流値をI1(=I)、経路R2を流れる電流値をI2、経路R3を流れる電流値をI3、経路R4を流れる電流値をI4とする。
ここで、スイッチ素子S2のターンオン・ターンオフ時において瞬間的な電流の時間勾配(以下、電流勾配という)が加わったときに配線に流れる電流を考慮すると、このような瞬時電流は、コンデンサC1を通る経路には殆ど流れない。コンデンサC1とコンデンサCaとの間の配線インダクタンスLb(図1を参照)が大きいためである。
したがって、経路R1、R2、R3、R4、およびコンデンサCaを通る経路に全ての瞬時電流が流れると近似すると、下式(16)で表される関係が成り立つ。
次に、線路Rn(n=1,2,3,4)に流れる電流が作り出すベクトルポテンシャルAn(n=1,2,3,4)は、線路Rnに流れる電流値In(n=1,2,3,4)に比例するため、下式(17)で表される。
さらに、線路を線で近似し、ドレイン端子Td1から線路沿いに時計回りにとった線路長パラメータをxとする。そして、各線路Rn上の点xにおいて、線路Rnに沿って時計回りに単位ベクトルe(x)をとると、線路Rnの電流ベクトルIn(x)は、下式(18)で表される。
また、線路Rnに寄生するインダクタンスにより線路Rn内に蓄えられるエネルギーEnは、式(17),(18)を用いて下式(19)で表される。
ここで、線路R1と線路R2とは、絶縁層を介して基板面に垂直な方向で対向している。このため、電流量が等しい電流が互いに逆方向に流れることでベクトルポテンシャルを打ち消しあう。I1=―I2の時にA1+A2=0となるため、線路R1と線路R2間のベクトルポテンシャルの係数α1、α2は、下式(20)で表される。
そして、式(20)を式(19)に代入すると、下式(21)が得られる。
ここで、線路R1と線路R2は基板面に垂直な方向で接近して対向しているため、線路R1と線路R2の線路長パラメータxの範囲は互いに等しいことに注意する。
そして、式(21)を用いて、線路R1〜R4の全線路におけるエネルギーEは、下式(22)で表される。
ここで、線路R1と線路R3とを結合した線路R13には電流I3が流れ、ベクトルポテンシャルの係数としてα13が発生していると仮定すると、ベクトルポテンシャルは内部の各線路Rnが生み出すポテンシャルの総和であるので、下式(23)が成り立つ。
そして、式(23)を式(22)に代入すると、下式(24)が得られる。
このとき、線路R13の自己インダクタンスをL13、線路R4の自己インダクタンスをL4、線路R13と線路R4の相互インダクタンスをMとすると、下式(25)で表される関係が成り立つ。
そして、式(25)を式(24)に代入すると、下式(26)が得られる。
ここで、線路R13と線路R4は、スイッチ素子S1,S2の端子周りに形成された絶縁領域を迂回するようにして互いに略対称となるように形成されている。このため、自己インダクタンスL13と自己インダクタンスL4が略等しく、両者の値がLであるとすると、下式(27)が得られる。
ここで、電流I3,I4は、式(16)を満たしながら、全線路のエネルギーEが最小となるように流れる。このため、式(27)で表されるエネルギーEが最小となる電流I3,I4は、下式(28)で表される。
したがって、図3(a)に示す電流経路は等価的に、図3(b)に示すように、ドレイン端子Td1からソース端子Ts2に至る線路R13と、ドレイン端子Td1からソース端子Ts2に至る線路R4とから構成される構造と一致する。すなわち、ドレイン端子Td1からソース端子Ts2までコンデンサCaを介して最短で結ぶ従来の線路R13のみの電流経路と比較して、線路R13と線路R4とで電流が等しく分割される分、ドレイン端子Td1に誘導される電圧が小さくなる。
なお、配線インダクタンスLa1は自己インダクタンスL13であり、配線インダクタンスLa2は自己インダクタンスL4である。そして、線路R13と線路R4は上記絶縁領域の分だけ離れているため、線路R13と線路R4の相互インダクタンスMは十分小さいと近似することができる。このため、上述のように、自己インダクタンスL13と自己インダクタンスL4が略等しく、両者の値がLである。したがって、配線インダクタンスLa1と配線インダクタンスLa2の合成インダクタンスLaは(L/2)になる。
ここで、線路R2が線路R1と垂直方向に対向しない場合には、線路R4は線路R13に比べて線路R1と線路R2の自己インダクタンスの分だけ大きくなる。但し、線路R1と線路R2を短くすることにより、自己インダクタンスL13と自己インダクタンスL4が近似的に略等しくなる。しかし、配線インダクタンスLa1と配線インダクタンスLa2の合成インダクタンスをより低減するためには、線路R1と線路R2とを垂直方向に対向させることが望ましい。
次に、図2(a)に示すように、コンデンサC1,Caと、コンデンサC1,Ca間の配線とで形成されるループ線路RL1に囲まれる領域の面積SL1が、線路F2,F3で形成されるループ線路RL2に囲まれる領域の面積SL2よりも大きい。また、ループ線路RL1の上下にはグランド配線層を配置していない。
ここで、ループ線路の自己インダクタンスはループ線路が囲む領域の面積に比例することが一般的に知られている。したがって、線路13と線路R4を直列に接続した線路のインピーダンス(La1+La2≒2L)は、ループ線路RL2の面積SL2に比例する。このため、比例定数κを用いて、下式(29)が得られる。
ここで、上述のように、配線インダクタンスLa1と配線インダクタンスLa2の合成インダクタンスLaは(L/2)に近似できるため、合成インダクタンスLaは下式(30)で表される。
さらに、上述のように、ループ線路RL1の下層にはグランド配線層を存在しないため、ループ線路RL1のインダクタンスLbは、ループ線路RL2と同じ比例定数κを用いて、下式(31)で表される。
ここで、式(30)と式(31)とを比較すると、ループ線路RL1の面積SL1がループ線路RL2の面積SL2に等しい場合であっても、インダクタンスLbはインダクタンスLaの4倍の値を得ることができる。そして、上述のように、面積SL1は面積SL2よりも大きいため、Lb>>Laを実現できる、すなわちインダクタンスLbをインダクタンスLaよりも十分大きくすることができる。
次に、コンデンサCaの静電容量の設定方法を説明する。図4は、スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時にスイッチ素子S1と寄生インダクタンスLa1,La2との接続点T1(図1を参照)を流れる電流を示す図である。
図4に示すように、スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時には接続点T1に高い電流勾配が瞬間的に発生する。このような瞬時電流は上述のようにコンデンサCaに流れて、コンデンサCaが充電される。したがって、コンデンサCaは、スイッチ素子S2のターンオフ・ターンオン時に瞬時電流が流す電荷Q1,Q2を充電した場合に電圧を十分に平滑化する必要がある。すなわち、サージ電圧の許容値をVsとすると、コンデンサCaの静電容量は、下式(32)を満たす必要がある。
また、コンデンサCaに電荷Q1,Q2が充電されて上昇する電圧がサージ電圧の許容値の10%以下であるためには、コンデンサCaの静電容量は、下式(33)を満たす必要がある。
ここで、ターンオフもしくはターンオンのスイッチングにかかる時間のうち、長い方の時間をΔt、リアクトルL1に流れる最大電流をIp、素子の耐圧をVabs、スイッチ素子S1にかかる最大電圧をVmとすると、下式(34),(35)で表される関係が得られる。
そして、式(34),(35)を式(33)に代入すると、コンデンサCaについての望ましい静電容量の条件として、下式(36)が得られる。
これにより、スイッチ素子S1,S2のスイッチング動作による瞬時電流が流す電荷をコンデンサCaが充電することができ、瞬時電流による電圧を十分に平滑することができる。
表1に、本実施形態の昇圧チョッパ装置1の動作条件と、コンデンサCaの容量値を示す。
このように構成された昇圧チョッパ装置1は、基板Bを貫通して設置されるドレイン端子Td1とソース端子Ts1とを有し、ドレイン端子Td1とソース端子Ts1との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S1と、ソース端子Ts1と電気的に接続されるドレイン端子Td2と、グランドに接続されるとともに基板Bを貫通して設置されるソース端子Ts2とを有し、ドレイン端子Td2とソース端子Ts2との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S2と、一端がドレイン端子Td1に接続されるとともに他端がソース端子Ts2に接続されるコンデンサC1を備える。
そして、コンデンサC1よりも静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCaについて、その一端がドレイン端子Td1に接続されるとともに他端がソース端子Ts2に接続される。さらに、ドレイン端子Td1からコンデンサCaを通ってソース端子Ts2に至る電流経路(以下、第1電流経路という。線路F1+線路F2が第1電流経路に相当する。)は、ドレイン端子Td1からコンデンサC1を通ってソース端子Ts2に至る電流経路(以下、第2電流経路という)よりも、スイッチ素子S1,S2から近くなるように形成される。
なお、スイッチ素子S1,S2のスイッチング動作により、電流勾配が瞬間的に発生する。しかし、この瞬間の電流が流す電荷は少ないため、静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCaによりサージ電流を吸収することができる。さらに、この瞬間以外の出力電流リップルはコンデンサC1により吸収される。
さらに、寄生インダクタンスの小さい表面実装型のコンデンサCaを用いているために、コンデンサCaの寄生インダクタンス成分を低減させることができ、サージ電流およびノイズを小さくすることができる。
そして、第1電流経路上において、基板Bを貫通して基板Bの表面側と裏面側とを電気的に接続するヴィアVA1が設けられ、基板Bにおいて、第1電流経路が形成されている面とは反対側の面上に、スイッチ素子S1,S2の周辺の絶縁領域を囲むようにして、ヴィアVA1からソース端子Ts2に至る電流経路(以下、第3電流経路という。線路F3が第3電流経路に相当する。)が形成される。
これにより、ドレイン端子Td1からソース端子Ts2に至る電流経路において、第1電流経路と第3電流経路とで構成される並列配線が得られる。このため、例えば、第1電流経路による配線インダクタンスと、第3電流経路による配線インダクタンスとを等しくすれば、第3電流経路がなく第1電流経路のみの場合と比較して、コンデンサCaを通る電流経路の配線インダクタンスを半減することができる。
したがって、スイッチ素子S1,S2を基板面に実装することなく、コンデンサCaを通る電流経路の配線インダクタンスを低減することが可能となり、サージ電流をさらに小さくすることができる。
また、線路R1と線路R2とは基板Bを挟んで対向するとともに、対向している部分において、電流が流れる方向が逆方向になるように形成されている。これにより、線路R1と線路R2では磁場を打ち消しあうように電流が流れるため、コンデンサCaを通る電流経路の配線インダクタンスを低減することができる。
また、基板Bの面上においてコンデンサC1とコンデンサCaとを通って形成されるループ線路RL1により囲まれる領域の面積SL1は、基板Bの面上において第1電流経路および第3電流経路を通って形成されるループ線路RL2により囲まれる領域の面積SL2よりも大きく、ループ線路RL1が形成されている面とは反対側の基板面上において、ループ線路RL1と対向する領域に、グランド配線が存在しない。
これにより、コンデンサC1とコンデンサCaとの間の配線インダクタンスLbが、コンデンサCaを通る電流経路の配線インダクタンスLaよりも十分小さくなるため、ノイズ電圧を小さくすることができる。
また、線路R13と線路R4は、ドレイン端子Td1とソース端子Ts2とを結ぶ直線に対して互いに略対称となるように形成されている。これにより、第1電流経路による配線インダクタンスと第3電流経路による配線インダクタンスとを略等しくすることができ、第3電流経路がなく第1電流経路のみの場合と比較して、コンデンサCaを通る電流経路の配線インダクタンスを略半減することができる。
以上説明した実施形態において、昇圧チョッパ装置1は本発明における半導体装置、ドレイン端子Td1は本発明における第1端子、ソース端子Ts1は本発明における第2端子、スイッチ素子S1は本発明における第1半導体スイッチ素子、ドレイン端子Td2は本発明における第3端子、ソース端子Ts2は本発明における第4端子、スイッチ素子S2は本発明における第2半導体スイッチ素子、コンデンサC1は本発明における第1コンデンサ、コンデンサCaは本発明における第2コンデンサ、ループ線路RL1は本発明における第1ループ配線、ループ線路RL2は本発明における第2ループ配線である。
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を図面とともに説明する。
図5(a)は、本実施形態の降圧チョッパ装置11の構成を示す回路図である。図5(b)は、降圧チョッパ装置11の表面配線を示す図である。図5(c)は、降圧チョッパ装置11の裏面配線を示す図である。
降圧チョッパ装置11は、図5(a)に示すように、リアクトルL11、コンデンサC11,C12,Cb、およびスイッチ素子S11,S12を備えている。
なおコンデンサC11,C12は平滑コンデンサであり、コンデンサCbは表面実装コンデンサである。またスイッチ素子S11,S12は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
これらのうちリアクトルL11は、一端が出力端子Toに接続されるとともに、他端がスイッチ素子S11とスイッチ素子S12との接続点に接続されている。
またコンデンサC11は、一端がリアクトルL11と出力端子Toとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
またスイッチ素子S11は、ドレイン端子Td11が直流電源V11に接続されるとともに、ソース端子Ts11がスイッチ素子S2のドレイン端子Td12に接続されている。またスイッチ素子S12は、ドレイン端子Td12がスイッチ素子S11のソース端子Ts11に接続されるとともに、ソース端子Ts12が接地されている。
またコンデンサCbは、一端が直流電源V11とスイッチ素子S11との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
またコンデンサC12は、一端が直流電源V11とコンデンサCbとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
このように構成された降圧チョッパ装置11においては、スイッチ素子S11とスイッチ素子S12とを交互にオン/オフさせて、出力端子Toに電源電圧より低い電圧を発生させることができる。すなわち、スイッチ素子S11がオフからオンに変化してから次にオフからオンに変化するまでの期間(以下、スイッチング周期という)に対する、スイッチ素子S11がオン状態である期間(以下、スイッチオン時間という)の比率を変化させ、スイッチング周期に対してスイッチオン時間を短くするほど、出力端子Toの電圧(出力電圧)を低下させることができる。なお、リアクトルL11およびコンデンサC11は、出力電圧を平滑化するための平滑回路を構成する。
図5(b)に示すように、降圧チョッパ装置11の部品を実装する基板Bの表面上には、コンデンサC11,C12,Cbとスイッチ素子S11,S12が実装されるとともに、入力端子Tiと出力端子Toとグランド端子GNDが設けられる。
さらに、基板Bの表面上には、スイッチ素子S11のドレイン端子Td11とコンデンサC12,Cbの一端を入力端子Tiに接続するための配線W11と、スイッチ素子S12のソース端子Ts12とコンデンサC11,C12,Cbの他端をグランド端子GNDに接続するための配線W12と、スイッチ素子S11のソース端子Ts11をスイッチ素子S12のドレイン端子Td12に接続するための配線W13と、出力端子ToとコンデンサC11の一端とを接続するための配線W14とが形成される。
さらに、配線W12において、コンデンサCaの他端の近傍に、基板Bの表面から裏面に貫通して、基板Bの表面と裏面とを電気的に接続するヴィアVA11が形成される。また、配線W13,W14において、リアクトルL11の端部と接続するための接続端子TLが設けられている。すなわち、リアクトルL11の一端を配線W13の接続端子TLに接続するとともにリアクトルL11の他端を配線W14の接続端子TLに接続することにより、配線W13と配線W14とがリアクトルL11を介して電気的に接続される。
そして、図5(c)に示すように、基板Bの裏面上には、ヴィアVA11の形成箇所を一端としスイッチ素子S12のソース端子Ts12を他端として、スイッチ素子S11,S12の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W15が形成される。
このように構成された降圧チョッパ装置11は、基板Bを貫通して設置されるドレイン端子Td11とソース端子Ts11とを有し、ドレイン端子Td11とソース端子Ts11との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S11と、ソース端子Ts11と電気的に接続されるドレイン端子Td12と、グランドに接続されるとともに基板Bを貫通して設置されるソース端子Ts12とを有し、ドレイン端子Td12とソース端子Ts12との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S12と、一端がドレイン端子Td11に接続されるとともに他端がソース端子Ts12に接続されるコンデンサC12を備える。
そして、コンデンサC12よりも静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCbについて、その一端がドレイン端子Td11に接続されるとともに他端がソース端子Ts12に接続される。さらに、ドレイン端子Td11からコンデンサCbを通ってソース端子Ts12に至る電流経路(以下、第1電流経路という)は、ドレイン端子Td11からコンデンサC12を通ってソース端子Ts12に至る電流経路(以下、第2電流経路という)よりも、スイッチ素子S11,S12から近くなるように形成される。
なお、スイッチ素子S11,S12のスイッチング動作により、電流勾配が瞬間的に発生する。しかし、この瞬間の電流が流す電荷は少ないため、静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCbによりサージ電流を吸収することができる。さらに、この瞬間以外の出力電流リップルはコンデンサC12により吸収される。
さらに、寄生インダクタンスの小さい表面実装型のコンデンサCbを用いているために、コンデンサCbの寄生インダクタンス成分を低減させることができ、サージ電流およびノイズを小さくすることができる。
そして、第1電流経路上において、基板Bを貫通して基板Bの表面側と裏面側とを電気的に接続するヴィアVA11が設けられ、基板Bにおいて、第1電流経路が形成されている面とは反対側の面上に、スイッチ素子S11,S12の周辺の絶縁領域を囲むようにして、ヴィアVA11からソース端子Ts12に至る電流経路(以下、第3電流経路という)が形成される。
これにより、ドレイン端子Td11からソース端子Ts12に至る電流経路において、第1電流経路と第3電流経路とで構成される並列配線が得られる。このため、例えば、第1電流経路による配線インダクタンスと、第3電流経路による配線インダクタンスとを等しくすれば、第3電流経路がなく第1電流経路のみの場合と比較して、コンデンサCbを通る電流経路の配線インダクタンスを半減することができる。
したがって、スイッチ素子S11,S12を基板面に実装することなく、コンデンサCbを通る電流経路の配線インダクタンスを低減することが可能となり、サージ電流をさらに小さくすることができる。
以上説明した実施形態において、降圧チョッパ装置11は本発明における半導体装置、ドレイン端子Td11は本発明における第1端子、ソース端子Ts11は本発明における第2端子、スイッチ素子S11は本発明における第1半導体スイッチ素子、ドレイン端子Td12は本発明における第3端子、ソース端子Ts12は本発明における第4端子、スイッチ素子S12は本発明における第2半導体スイッチ素子、コンデンサC12は本発明における第1コンデンサ、コンデンサCbは本発明における第2コンデンサである。
(第3実施形態)
以下に本発明の第3実施形態を図面とともに説明する。
図6(a)は、本実施形態の昇降圧コンバータ装置21の構成を示す回路図である。図6(b)は、昇降圧コンバータ装置21の表面配線を示す図である。図6(c)は、昇降圧コンバータ装置21の裏面配線を示す図である。
昇降圧コンバータ装置21は、図6(a)に示すように、リアクトルL21、コンデンサC21,C22,Cc,Cd、およびスイッチ素子S21,S22,S23,S24を備えている。
なおコンデンサC21,C22は平滑コンデンサであり、コンデンサCc,Cdは表面実装コンデンサである。またスイッチ素子S21,S22,S23,S24は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
これらのうちスイッチ素子S21は、ドレイン端子Td21が直流電源V21に接続されるとともに、ソース端子Ts21がスイッチ素子S22のドレイン端子Td22に接続されている。またスイッチ素子S22は、ドレイン端子Td22がスイッチ素子S21のソース端子Ts21に接続されるとともに、ソース端子Ts22が接地されている。
またスイッチ素子S23は、ドレイン端子Td23が出力端子Toに接続されるとともに、ソース端子Ts23がスイッチ素子S24のドレイン端子Td24に接続されている。またスイッチ素子S24は、ドレイン端子Td24がスイッチ素子S23のソース端子Ts23に接続されるとともに、ソース端子Ts24が接地されている。
またリアクトルL11は、一端がスイッチ素子S21とスイッチ素子S22との接続点に接続されるとともに、他端がスイッチ素子S23とスイッチ素子S24との接続点に接続されている。
またコンデンサCcは、一端が直流電源V21とスイッチ素子S21との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。またコンデンサC21は、一端が直流電源V21とコンデンサCcとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
またコンデンサCdは、一端が出力端子Toとスイッチ素子S23との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。またコンデンサC22は、一端が出力端子ToとコンデンサCdとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
このように構成された昇降圧コンバータ装置21においては、昇圧時には、スイッチ素子S21をオンするとともにスイッチ素子S22をオフし、スイッチ素子S23とスイッチ素子S24とを交互にオン/オフさせて、出力端子Toに電源電圧より高い電圧を発生させることができる。また降圧時には、スイッチ素子S23をオンするとともにスイッチ素子S24をオフし、スイッチ素子S21とスイッチ素子S22とを交互にオン/オフさせて、出力端子Toに電源電圧より低い電圧を発生させることができる。
図6(b)に示すように、昇降圧コンバータ装置21の部品を実装する基板Bの表面上には、コンデンサC21,C22,Cc,Cdとスイッチ素子S21,S22,S23,S24が実装されるとともに、入力端子Tiと出力端子Toとグランド端子GNDが設けられる。
さらに、基板Bの表面上には、スイッチ素子S21のドレイン端子Td21とコンデンサC21,Ccの一端を入力端子Tiに接続するための配線W21と、スイッチ素子S23のドレイン端子Td23とコンデンサC22,Cdの一端を出力端子Toに接続するための配線W22と、スイッチ素子S22,S24のソース端子Ts22,24とコンデンサC21,C22,Cc,Cdの他端をグランド端子GNDに接続するための配線W23と、スイッチ素子S21のソース端子Ts21をスイッチ素子S22のドレイン端子Td22に接続するための配線W24と、スイッチ素子S23のソース端子Ts23をスイッチ素子S24のドレイン端子Td24に接続するための配線W25とが形成される。
さらに、配線W21,W22において、コンデンサCc,Cdの一端の近傍に、基板Bの表面から裏面に貫通して、基板Bの表面と裏面とを電気的に接続するヴィアVA21,VA22が形成される。また、配線W24,W25において、リアクトルL21の端部と接続するための接続端子TLが設けられている。すなわち、リアクトルL21の一端を配線W24の接続端子TLに接続するとともにリアクトルL21の他端を配線W25の接続端子TLに接続することにより、配線W24と配線W25とがリアクトルL21を介して電気的に接続される。
そして、図6(c)に示すように、基板Bの裏面上には、ヴィアVA21の形成箇所を一端としスイッチ素子S22のソース端子Ts22を他端として、スイッチ素子S21,S22の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W26と、ヴィアVA22の形成箇所を一端としスイッチ素子S24のソース端子Ts24を他端として、スイッチ素子S23,S24の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W27とが形成される。
このように構成された昇降圧コンバータ装置21は、基板を貫通して設置されるドレイン端子Td21(Td23)とソース端子Ts21(Ts23)とを有し、ドレイン端子Td21(Td23)とソース端子Ts21(Ts23)との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S21(S23)と、ソース端子Ts21(Ts23)と電気的に接続されるドレイン端子Td22(Td24)と、グランドに接続されるとともに基板を貫通して設置されるソース端子Ts22(Ts24)とを有し、ドレイン端子Td22(Td24)とソース端子Ts22(Ts24)との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S22(S24)と、一端がドレイン端子Td21(Td23)に接続されるとともに他端がソース端子Ts22(Ts24)に接続されるコンデンサC21(C22)を備える。
そして、コンデンサC21(C22)よりも静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCc(Cd)について、その一端がドレイン端子Td21(Td23)に接続されるとともに他端がソース端子Ts22(Ts24)に接続される。さらに、ドレイン端子Td21(Td23)からコンデンサCc(Cd)を通ってソース端子Ts22(Ts24)に至る電流経路(以下、第1電流経路という)は、ドレイン端子Td21(Td23)からコンデンサC21(C22)を通ってソース端子Ts22(Ts24)に至る電流経路(以下、第2電流経路という)よりも、スイッチ素子S21(S23),S22(S24)から近くなるように形成される。
なお、スイッチ素子S21(S23),S22(S24)のスイッチング動作により、電流勾配が瞬間的に発生する。しかし、この瞬間の電流が流す電荷は少ないため、静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCc(Cd)によりサージ電流を吸収することができる。さらに、この瞬間以外の出力電流リップルはコンデンサC21(C22)により吸収される。
さらに、寄生インダクタンスの小さい表面実装型のコンデンサCc(Cd)を用いているために、コンデンサCc(Cd)の寄生インダクタンス成分を低減させることができ、サージ電流およびノイズを小さくすることができる。
そして、第1電流経路上において、基板Bを貫通して基板Bの表面側と裏面側とを電気的に接続するヴィアVA21(VA22)が設けられ、基板Bにおいて、第1電流経路が形成されている面とは反対側の面上に、スイッチ素子S21(S23),S22(S24)の周辺の絶縁領域を囲むようにして、VA21(VA22)からソース端子Ts22(Ts24)に至る電流経路(以下、第3電流経路という)が形成される。
これにより、ドレイン端子Td21(Td23)からソース端子Ts22(Ts24)に至る電流経路において、第1電流経路と第3電流経路とで構成される並列配線が得られる。このため、例えば、第1電流経路による配線インダクタンスと、第3電流経路による配線インダクタンスとを等しくすれば、第3電流経路がなく第1電流経路のみの場合と比較して、コンデンサCc(Cd)を通る電流経路の配線インダクタンスを半減することができる。
したがって、スイッチ素子S21(S23),S22(S24)を基板面に実装することなく、コンデンサCc(Cd)を通る電流経路の配線インダクタンスを低減することが可能となり、サージ電流をさらに小さくすることができる。
以上説明した実施形態において、昇降圧コンバータ装置21は本発明における半導体装置、ドレイン端子Td21,Td23は本発明における第1端子、ソース端子Ts21,Ts23は本発明における第2端子、スイッチ素子S21,S23は本発明における第1半導体スイッチ素子、ドレイン端子Td22,Td24は本発明における第3端子、ソース端子Ts22,Ts24は本発明における第4端子、スイッチ素子S22,S24は本発明における第2半導体スイッチ素子、コンデンサC21,C22は本発明における第1コンデンサ、コンデンサCc,Cdは本発明における第2コンデンサである。
(第4実施形態)
以下に本発明の第4実施形態を図面とともに説明する。
図7(a)は、本実施形態のモータインバータ装置31の構成を示す回路図である。図7(b)は、モータインバータ装置31の表面配線を示す図である。図7(c)は、モータインバータ装置31の裏面配線を示す図である。
モータインバータ装置31は、図7(a)に示すように、コンデンサC31,Ce,Cf,Cg、およびスイッチ素子S31,S32,S33,S34,S35,S36を備えている。
なおコンデンサC31は平滑コンデンサであり、コンデンサCe,Cf,Cgは表面実装コンデンサである。またスイッチ素子S31,S32,S33,S34,S35,S36は、Nチャネル型の電界効果トランジスタである。
これらのうちスイッチ素子S31,S33,S35は、ドレイン端子Td31,Td33,Td35が直流電源V31に接続されるとともに、ソース端子Ts31,Ts33,Ts35がスイッチ素子S32,S34,S36のドレインに接続されている。またスイッチ素子S32,S34,S36は、ドレイン端子Td32,Td34,Td36がスイッチ素子S31,S33,S35のソース端子Ts31,Ts33,Ts35に接続されるとともに、ソース端子Ts32,Ts34,Ts36が接地されている。
またコンデンサCeは、一端が直流電源V31とスイッチ素子S31との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。またコンデンサC31は、一端が直流電源V31とコンデンサCeとの接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
またコンデンサCfは、一端がスイッチ素子S31とスイッチ素子S33との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。またコンデンサCgは、一端がスイッチ素子S33とスイッチ素子S35との接続点に接続されるとともに、他端が接地されている。
そして、スイッチ素子S31とスイッチ素子S32との接続点、スイッチ素子S33とスイッチ素子S34との接続点、およびスイッチ素子S35とスイッチ素子S36との接続点が、モータMTに接続される。なお、モータMTは、三相交流モータである。
このように構成されたモータインバータ装置31においては、スイッチ素子S31とスイッチ素子S32とを交互にオン/オフさせてU相電圧を制御し、スイッチ素子S33とスイッチ素子S34とを交互にオン/オフさせてV相電圧を制御し、スイッチ素子S35とスイッチ素子S36とを交互にオン/オフさせてW相電圧を制御することにより、モータMTを回転させる。
図7(b)に示すように、モータインバータ装置31の部品を実装する基板Bの表面上には、コンデンサC31,Ce,Cf,Cgとスイッチ素子S31,S32,S33,S34,S35,S36が実装されるとともに、入力端子Tiとモータ接続端子TMとグランド端子GNDが設けられる。
さらに、基板Bの表面上には、スイッチ素子S31,S33,S35のドレイン端子Td31,Td33,Td35とコンデンサC31,Ce,Cf,Cgの一端を入力端子Tiに接続するための配線W31と、スイッチ素子S32,S34,S36のソース端子Ts32,Ts34,Ts36とコンデンサC31,Ce,Cf,Cgの他端をグランド端子GNDに接続するための配線W32と、スイッチ素子S31のソース端子Ts31をスイッチ素子S32のドレイン端子Td32に接続するための配線W33と、スイッチ素子S33のソース端子Ts33をスイッチ素子S34のドレイン端子Td34に接続するための配線W34と、スイッチ素子S35のソース端子Ts35をスイッチ素子S36のドレイン端子Td36に接続するための配線W35とが形成される。
さらに、配線W32において、コンデンサCe,Cf,Cgの一端の近傍に、基板Bの表面から裏面に貫通して、基板Bの表面と裏面とを電気的に接続するヴィアVA31,VA32,VA33が形成される。また、配線W33,W34,W35において、モータMTと接続するためのモータ接続端子TMが設けられている。
そして、図7(c)に示すように、基板Bの裏面上には、ヴィアVA31の形成箇所を一端としスイッチ素子S32のソース端子Ts32を他端として、スイッチ素子S31,S32の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W36と、ヴィアVA32の形成箇所を一端としスイッチ素子S34のソース端子Ts34を他端として、スイッチ素子S33,S34の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W37と、ヴィアVA33の形成箇所を一端としスイッチ素子S36のソース端子Ts36を他端として、スイッチ素子S35,S36の端子周りに形成される絶縁領域を迂回するようにして設けられた配線W38とが形成される。
このように構成されたモータインバータ装置31は、基板Bを貫通して設置されるドレイン端子Td31(Td33,Td35)とソース端子Ts31(Ts33,Ts35)とを有し、ドレイン端子Td31(Td33,Td35)とソース端子Ts31(Ts33,Ts35)との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S31(S33,S35)と、ソース端子Ts31(Ts33,Ts35)と電気的に接続されるドレイン端子Td32(Td34,Td36)と、グランドに接続されるとともに基板Bを貫通して設置されるソース端子Ts32(Ts34,Ts36)とを有し、ドレイン端子Td32(Td34,Td36)とソース端子Ts32(Ts34,Ts36)との間を、電気的に絶縁した状態、および電気的に導通した状態の何れか一方に切り換えるスイッチ素子S32(S34,S36)と、一端がドレイン端子Td31(Td33,Td35)に接続されるとともに他端がソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に接続されるコンデンサC31を備える。
そして、コンデンサC31よりも静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCe(Cf,Cg)について、その一端がドレイン端子Td31(Td33,Td35)に接続されるとともに他端がソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に接続される。さらに、ドレイン端子Td31(Td33,Td35)からコンデンサCe(Cf,Cg)を通ってソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に至る電流経路(以下、第1電流経路という)は、ドレイン端子Td31(Td33,Td35)からコンデンサC31を通ってソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に至る電流経路(以下、第2電流経路という)よりも、スイッチ素子S31(S33,S35),S32(S34,S36)から近くなるように形成される。
なお、スイッチ素子S31(S33,S35),S32(S34,S36)のスイッチング動作により、電流勾配が瞬間的に発生する。しかし、この瞬間の電流が流す電荷は少ないため、静電容量が小さい表面実装型のコンデンサCe(Cf,Cg)によりサージ電流を吸収することができる。さらに、この瞬間以外の出力電流リップルはコンデンサC31により吸収される。
さらに、寄生インダクタンスの小さい表面実装型のコンデンサCe(Cf,Cg)を用いているために、コンデンサCe(Cf,Cg)の寄生インダクタンス成分を低減させることができ、サージ電流およびノイズを小さくすることができる。
そして、第1電流経路上において、基板Bを貫通して基板Bの表面側と裏面側とを電気的に接続するヴィアVA31(VA32,VA33)が設けられ、基板Bにおいて、第1電流経路が形成されている面とは反対側の面上に、スイッチ素子S31(S33,S35),S32(S34,S36)の周辺の絶縁領域を囲むようにして、ヴィアVA31(VA32,VA33)からソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に至る電流経路(以下、第3電流経路という)が形成される。
これにより、ドレイン端子Td31(Td33,Td35)からソース端子Ts32(Ts34,Ts36)に至る電流経路において、第1電流経路と第3電流経路とで構成される並列配線が得られる。このため、例えば、第1電流経路による配線インダクタンスと、第3電流経路による配線インダクタンスとを等しくすれば、第3電流経路がなく第1電流経路のみの場合と比較して、コンデンサCe(Cf,Cg)を通る電流経路の配線インダクタンスを半減することができる。
したがって、スイッチ素子S31(S33,S35),S32(S34,S36)を基板面に実装することなく、コンデンサCe(Cf,Cg)を通る電流経路の配線インダクタンスを低減することが可能となり、サージ電流をさらに小さくすることができる。
以上説明した実施形態において、モータインバータ装置31は本発明における半導体装置、ドレイン端子Td31,Td33,Td35は本発明における第1端子、ソース端子Ts31,Ts33,Ts35は本発明における第2端子、スイッチ素子S31,S33,S35は本発明における第1半導体スイッチ素子、ドレイン端子Td32,Td34,Td36は本発明における第3端子、ソース端子Ts32,Ts34,Ts36は本発明における第4端子、スイッチ素子S32,S34,S36は本発明における第2半導体スイッチ素子、コンデンサC31は本発明における第1コンデンサ、コンデンサCe,Cf,Cgは本発明における第2コンデンサである。
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、図1(c)に示すように、配線W5が、ヴィアVA1からゲート端子Tg1を迂回してソース端子Ts2に至るもの、すなわち、ヴィアVA1からソース端子Ts2への最短経路が形成されていないものを示した。しかし、図8(a)に示すように、スイッチ素子S1,S2の端子周りに形成される絶縁領域の周辺を全て囲むように配線W5を形成してもよいし、図8(b)に示すように、ソース端子Ts1とゲート端子Tg2との間に電流経路を形成するようにしてもよい。