JP5414187B2 - 光偏向器 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザ光等の光ビームを偏向・走査する光偏向器に関する。
近年、画像表示装置の一形態として、光偏向器を用いて光源からの光を偏向してスクリーンに投影し、スクリーン上に画像を映し出すようにしたプロジェクションディスプレイが提案されている。光偏向器としては、例えば、半導体プロセスやマイクロマシン技術を用いたMEMS(micro electro mechanical systems)デバイスとして、半導体基板上にミラーや圧電アクチュエータ等の機構部品を一体的に形成した光偏向器が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この光偏向器では、圧電アクチュエータの一端が枠部(支持部)に連結されて支持され、この圧電アクチュエータが発生したトルクを他端に連結されたトーションバー(弾性梁)に伝え、トーションバーの先に備え付けられたミラーを回転駆動する。このような光偏向器は、小型で簡単な構造で大きな駆動力が得られるという利点がある。
上述のようなプロジェクションディスプレイにおいて、ランプに比べて光源の寿命が長く、エネルギー利用効率が高く、光の三原色の色純度も高い、半導体レーザ等のレーザ光源を光源として用いる技術が提案されている。しかし、光源としてレーザ光源を用いた場合、スペックルノイズ(粒状の干渉パターン)が生じて画質が劣化するという問題がある。スペックルノイズは、レーザ光源からの位相が揃ったコヒーレント光がランダムな位相面(物体面)によって散乱されることにより、物体面の隣接する領域からの乱れた波面が観察面上で干渉することで生じる現象であり、粒状の強度分布として観察面上に現れる。レーザ光源を用いたプロジェクションディスプレイにおいては、このようなスペックルノイズが、物体面であるスクリーンと、観察面である観察者の目(網膜)との間で生じると、観察者が画像の劣化を認識することになる。このため、スペックルノイズを低減するために様々な技術が提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
特許文献2の画像表示装置では、偏光分布変換手段により、入射レーザ光の偏光状態を空間的に変化させることでスペックルのイズを低減させる。具体的には、この画像表示装置は、光源から出射され空間変調器にて変調された光により画像を表示するものであり、偏光分布変換手段によって、空間変調器の隣接する画素に入射される光の偏光方向が互いに直交するように、光源から出射された光の空間的な偏光分布を変換する。直交する偏光同士は干渉しないため、表示された画像の中で、空間変調器の隣接する画素に対応した領域同士の干渉によるスペックルノイズが抑制される。
これに対して、特許文献3の画像表示装置では、入射レーザ光の偏光状態を変えるのではなく、光路上に微小光路差(映像に影響は与えない程度、すなわち、回折角が十分に小さくなる程度に分布した光路差)を与える光学部品を配置し、光路差分布が時間的に変動するように光学部品を駆動手段で振動または回転させることにより、発生したスペックルパターンを混合・平均化してスクリーン上に見えるスペックルノイズを低減させている。
特開2005−148459号公報 特開2002−62582号公報 特開2004−138669号公報
しかしながら、特許文献2,3の装置では、光偏向器とは別体で、光学系にスペックルノイズを低減するための光学素子や駆動機構を追加する必要がある。すなわち、特許文献2の手法では、偏光分布変換手段が必要となると共に、偏光分布変換手段の偏光要素のサイズ以上にレーザ光の径を拡げる必要が生じてしまい、そのために追加のレンズが必要となったり、光学系のサイズが大きくなったりしてしまう。また、特許文献3の手法では、光路長を変えるための光学部品と、光学部品を振動または回転させる駆動機構とを設ける必要がある。このように、特許文献2,3のような手法では、部品点数の増大、システムとしてのサイズの増大、消費電力の増大、騒音の増大、および光学アライメントの煩雑さ等の問題が生じていた。
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、圧電アクチュエータを用いた光偏向器において、小型で簡単な構造で、レーザ光源等の光源からの光を走査して画像を表示する際に生じるスペックルノイズを低減することができる光偏向器を提供することを目的とする。
本発明は、反射面を有するミラー部と、該ミラー部を駆動する少なくとも1つの圧電アクチュエータとを備え、該圧電アクチュエータは、支持体上に形成された圧電体に駆動電圧を印加することで圧電駆動により屈曲変形を行う1つ以上の圧電カンチレバーを含み、該圧電アクチュエータに駆動電圧を印加することで該ミラー部を回転駆動させる光偏向器において、
前記圧電アクチュエータは、前記ミラー部と該ミラー部の両端から外側に伸びた1対のトーションバーとを挟んで対向するように1対又は2対配置され、各圧電アクチュエータの少なくとも一端が該1対のトーションバーに連結され、他端は該ミラー部を囲むように設けられた可動枠の内側に連結されて支持された第1の圧電アクチュエータと、前記1対のトーションバーと異なる方向に該ミラー部及び可動枠を挟んで対向するように1対配置され、各圧電アクチュエータの一端が該可動枠の外側に連結され、他端は該可動枠を囲むように設けられた支持部に支持された第2の圧電アクチュエータとで構成され、
前記第2の圧電アクチュエータは複数の圧電カンチレバーで構成され、各圧電カンチレバーは、前記可動枠と前記支持部との間で互いに隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように各圧電カンチレバーの端部が機械的に連結され、
前記ミラー部は、前記第1の圧電アクチュエータにより前記1対のトーションバーを介して第1の軸周りで回転駆動され、
前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーの一方には、前記ミラー部を前記第1の軸周りと異なる第2の軸周りで回転駆動させる回転駆動用の電圧成分と、前記第2の圧電アクチュエータの並進駆動モードの共振周波数で前記ミラー部を前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動させる並進駆動用の電圧成分とを重畳した電圧を印加し、前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーの他方には、前記回転駆動用の電圧成分と異なる位相を有し前記ミラー部を前記第2の軸周りで回転駆動させる回転駆動用の電圧成分と、前記並進駆動用の電圧成分と同じ位相を有し前記第2の圧電アクチュエータの並進駆動モードの共振周波数で前記ミラー部を前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動させる並進駆動用の電圧成分とを重畳した電圧を印加することにより、前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーが互いに逆方向に屈曲変形すること駆動される前記可動枠を介して、前記第2の軸周りで回転駆動されると共に、該第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーが互いに同方向に並進変位するように共振振動させることにより、前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動されることを特徴とする(第1発明)。
上記第1発明の光偏向器によれば、1対又は2対の内側の第1の圧電アクチュエータを、ミラー部を挟んで対向して配置し、これらの第1の圧電アクチュエータの駆動によりミラー部を第1の軸周りで回転させることができる。さらに、この回転とは独立且つ両立して、1対の外側の第2の圧電アクチュエータを、可動枠を挟んで対向して配置し、これらの第2の圧電アクチュエータの駆動により、可動枠をミラー部及び第1の圧電アクチュエータと一体的に第2の軸周りで回転させることができる。これにより、ミラー部を2軸で回転させることができ、光偏向器で、2方向について安定して偏向・走査を行うことができる。そして、この光偏向器を用いて光源からの光を走査してスクリーン上に投影し、画像を表示可能である。
このとき、2軸の回転駆動と共に、第2の圧電アクチュエータの駆動により、可動枠をミラー部及び第1の圧電アクチュエータと一体的に並進駆動させる。この並進駆動によって、光偏向器により走査される光の位相を変動させて、光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性を低減することができ、スクリーン上の画像におけるスペックルノイズを低減することができる。このように、第2の圧電アクチュエータを回転駆動と並進駆動とに併用することで、スペックルノイズを低減するための新たな構成を備える必要がなく、小型で簡単な構造の光偏向器で、スペックルノイズを低減することができる。
また、前記第2の圧電アクチュエータは複数の圧電カンチレバーから構成され、各圧電カンチレバーは、前記可動枠と前記支持部との間で互いに隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように各圧電カンチレバーの端部が機械的に連結されている。
すなわち、第2の圧電アクチュエータの各圧電カンチレバーは、両端部が隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように機械的に連結されているので、第2の圧電アクチュエータの出力(例えば、圧電アクチュエータ全体の先端部で出力されるトルク又は変位)は、各圧電カンチレバーで発生する出力を重ね合わせたものとなる。
例えば、光偏向器の垂直方向(第2の圧電アクチュエータの回転駆動方向)では、隣り合う2つの圧電カンチレバー全体として発生する出力(角度変位)は、2つの圧電カンチレバーが互いに逆方向に屈曲変形した場合に、各圧電カンチレバーで発生した出力の大きさを加算した大きさとなる。
また、例えば、光偏向器の面内方向(第2の圧電アクチュエータの並進駆動方向)では、隣り合う2つの圧電カンチレバー全体として発生する出力(並進変位)は、2つの圧電カンチレバーが互いに同方向に並進変位した場合に、各圧電カンチレバーで発生した出力の大きさを加算した大きさとなる。
これによれば、回転駆動用の電圧成分の周波数に応じてミラー部を第2の軸周りで回転振動させることができると共に、並進駆動用の電圧成分の周波数に応じてミラー部を第2の軸と平行な面内方向に並進振動させることができる。
よって、第2の圧電アクチュエータにより、各圧電カンチレバーで発生する出力が加算された大きな出力を得ることができると共に、光偏向器の垂直方向の出力と面内方向の出力とを得ることができる。これにより、第2の圧電アクチュエータにより、ミラー部の回転駆動と並進駆動とを両立することができる。
上記第1発明の光偏向器において、該光偏向器への入射光及び該光偏向器からの反射光を透過させ、且つ該透過される光に面内で光路差を生じさせる光学窓を備えたパッケージの内部に実装されることが好ましい(第2発明)。
第2発明の光偏向器によれば、ミラー部の並進駆動により、光偏向器からの反射光が光学窓を透過する位置が変動するので、光路差分布が変動することとなる。よって、ミラー部の並進駆動による位相の変動に加えて、光路差分布が変動することとなるので、走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性をより低減することができる。しかも、光偏向器が実装されるパッケージの光学窓を、光路差を生じさせる構成とすることで、光学系に別体で光学素子を設ける場合に比べて、光学的なアライメントが不要であると共に、コンパクトな光学系を維持することができる。
或いは、第1発明の光偏向器において、該光偏向器への入射光及び該光偏向器からの反射光を透過させ、且つ該透過される光の偏光状態を面内で変調する光学窓を備えたパッケージの内部に実装されることが好ましい(第3発明)。
第3発明の光偏向器によれば、ミラー部の並進駆動により、光偏向器からの反射光が光学窓を透過する位置が変動するので、面内で偏光状態が変動することとなる。よって、ミラー部の並進駆動による位相の変動に加えて、面内で偏光状態が変動することとなるので、走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性をより低減することができる。しかも、光偏向器が実装されるパッケージの光学窓を、偏光状態を変調する構成とすることで、光学系に別体で光学素子を設ける場合に比べて、光学的なアライメントが不要であると共に、コンパクトな光学系を維持することができる。
また、第1〜第3発明のいずれかの光偏向器において、前記第1及び第2の圧電アクチュエータへ印加される駆動電圧は周期的に変動する電圧であることが好ましい(第4発明)。ここで、周期的に変動する電圧とは、交流電圧、又は周期的に大きさが変動する直流電圧である。駆動電圧の波形としては、正弦波、三角波、矩形波、鋸波、又はこれらの組み合わせ等を、用途に応じて任意に選択することができる。さらに、駆動電圧は、任意のオフセット電圧を有するものでもよい。
第4発明の光偏向器によれば、第1の圧電アクチュエータと第2の圧電アクチュエータとをそれぞれ駆動して、ミラー部を2軸で回転振動して2次元的に光走査することができる。このとき、第1の圧電アクチュエータの共振駆動により、比較的高い走査周波数において低電圧で大きな偏向角の走査を行うことができると共に、この走査と独立且つ両立して、第2の圧電アクチュエータの非共振駆動により、任意の走査周波数で、すなわち、比較的低い走査周波数でも、大きな偏向角の走査を行うことができる。これにより、水平方向の高速の走査と垂直方向の低速の走査とを独立に且つ両立させて行うことができるので、ミラー部に入射された光を2次元的に効率良くラスタスキャンすることができる。さらに、外側の第2の圧電アクチュエータを駆動して、回転振動と共に、面内で並進振動させることができる。この並進振動により、位相を変動させてスペックルノイズを低減することができる。
また、第4発明の光偏向器において、前記第1の圧電アクチュエータへ印加される駆動電圧は交流電圧であり、該1対又は2対の第1の圧電アクチュエータのうちの、前記トーションバーの一方の側の圧電アクチュエータへ印加される第1の交流電圧と、該トーションバーの他方の側の圧電アクチュエータへ印加される第2の交流電圧とは、互いに180度位相が異なることが好ましい(第5発明)。
第5発明の光偏向器によれば、トーションバーを挟んで対向した各対の第1の圧電アクチュエータの圧電カンチレバーを逆位相で屈曲変形させることにより、ミラー部をトーションバーを中心軸として効率良く回転振動させ、光走査を行うことができる。
また、第1〜第5発明のいずれかの光偏向器において、前記ミラー部、前記トーションバー、前記可動枠、及び前記圧電カンチレバーの支持体は、半導体基板を形状加工して前記支持部と一体的に形成されることが好ましい(第6発明)。
第6発明の光偏向器によれば、ミラー部、トーションバー、支持部、可動枠及び圧電カンチレバーの支持体が形状加工により一体的に形成されるので、別体で形成して接合や接着等の加工法を用いて形成する場合に比べて、接合部材や接着剤等が不要であり、アライメント精度を向上することができ、容易に精度良く形成することができる。
また、一体的に形成されることにより光偏向器全体が機械的に連結されることとなるので、別体で形成して連結する場合に比べて、連結部に応力が集中することがなく光偏向器の強度を向上することできる。
さらに、半導体基板(例えば単結晶シリコン基板やSOI基板等のシリコン基板)から形成されるので、半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて半導体基板の一部を除去加工することで、容易に一体的に形成することができる。
上記第6発明の光偏向器において、前記圧電カンチレバーの圧電体は、前記半導体基板上に直接成膜された単層の圧電膜を形状加工して形成されるものであることが好ましい(第7発明)。
第7発明の光偏向器によれば、圧電カンチレバーの圧電体は、半導体基板上に直接成膜された単層の圧電膜を形状加工して形成されるので、構造が簡単であり、半導体プレーナプロセスを用いて容易に形成することができる。しかも、支持体と圧電体とを一体的に形成可能であり、支持体と圧電体とを別体で形成して接着する場合に比べて、接着剤が不要であり、アライメント精度が向上し、接着部に応力が集中することがなく圧電アクチュエータの強度を向上することができる。
上記第7発明の光偏向器において、前記ミラー部の反射面及び前記圧電カンチレバーの電極は、前記半導体基板上に直接成膜された金属薄膜と、前記圧電膜上に直接成膜された金属薄膜とを形状加工して形成されることが好ましい(第8発明)。
第8発明の光偏向器によれば、ミラー部の反射面及び圧電カンチレバーの電極は、直接成膜された金属薄膜を形状加工して形成されるので、構造が簡単であり、半導体プレーナプロセスを用いて容易に形成することができる。
そして、本発明の光偏向器によれば、半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて光偏向器全体を一体的に形成することができるので、光偏向器の作製が容易になり、量産や歩留りの向上が可能となる。さらに、この光偏向器をデバイスに組み込む場合に、デバイス全体として半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することが可能となるので、他のデバイスに組み込むことが容易となり、小型化や量産が可能となる。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における光偏向器の構成を示す斜視図、図2は、図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータの回転駆動を示す説明図、図3は、図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータの並進駆動を示す説明図、図4は、図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータに印加する駆動電圧を示すグラフ、図5は、図1の光偏向器の製造工程を示す説明図、図6は、図1の光偏向器を使用した画像表示装置の構成を示す説明図である。
図1に示すように、本実施形態の光偏向器A1は、入射された光を反射するミラー部1と、ミラー部1に連結されたトーションバー2a,2bと、ミラー部1をそれぞれトーションバー2a,2bを介して駆動する2対の内側の第1の圧電アクチュエータ8a〜8dと、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dを支持する可動枠9と、可動枠9を駆動する1対の外側の第2の圧電アクチュエータ10a,10bと、第2の圧電アクチュエータ10a,10bを支持する支持部11とを備えている。
図1に示すように、ミラー部1は円形形状で、その直径線分の両端から外側へ向かって、上記1対のトーションバー2a,2bが延びている。一方のトーションバー2aは、その先端部がミラー部1に連結され、その基端部を挟んで対向した1対の内側の第1の圧電アクチュエータ8a,8cのそれぞれの先端部に連結されている。また、他方のトーションバー2bも、その先端部がミラー部1に連結され、その基端部を挟んで対向した1対の第1の圧電アクチュエータ8b,8dのそれぞれの先端部に連結されている。これらの第1の圧電アクチュエータ8a〜8dは、それぞれ、その基端部が、ミラー部2とこれらの第1の圧電アクチュエータ8a〜8dとを囲むように設けられた可動枠9の内側に連結されて支持されている。
可動枠9は矩形形状で、トーションバー2a,2bと直交する方向の1対の両側が、可動枠9を挟んで対向した1対の外側の第2の圧電アクチュエータ10a,10bの先端部にそれぞれ連結されている。また、これらの第2の圧電アクチュエータ10a,10bは、その基端部が、可動枠9とこれらの1対の圧電アクチュエータ10a,10bとを囲むように設けられた支持部11に連結されて支持されている。
第1の圧電アクチュエータ8a〜8dは、それぞれ、1つの圧電カンチレバーから構成される。各圧電カンチレバーは、支持体4a〜4dと下部電極5a〜5dと圧電体6a〜6dと上部電極7a〜7dとを備えている。
また、一方の第2の圧電アクチュエータ10aは、4つの圧電カンチレバー(圧電アクチュエータ10aの先端部側から奇数番目の2つの圧電カンチレバー3e,3eと、偶数番目の2つの圧電カンチレバー3f,3f)が連結されて構成されている。また、他方の第2の圧電アクチュエータ10bも、4つの圧電カンチレバー(圧電アクチュエータ10bの先端部側から奇数番目の2つの圧電カンチレバー3g,3gと、偶数番目の2つの圧電カンチレバー3h,3h)が連結されて構成されている。各圧電カンチレバー3e〜3hは、支持体4e〜4hと下部電極5e〜5hと圧電体6e〜6hと上部電極7e〜7hとを備えている。
一方の第2の圧電アクチュエータ10aにおいて、4つの圧電カンチレバー3e,3fは、その長さ方向が同じになるように、各圧電カンチレバー3e,3fの両端部が隣り合うように、後述の並進駆動が可能な間隔で並んで配置されている。そして、各圧電カンチレバー3e,3fは、隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように連結されている。
他方の第2の圧電アクチュエータ10bにおいても、4つの圧電カンチレバー3g,3hは、その長さ方向が同じになるように、各圧電カンチレバー3g,3hの両端部が隣り合うように、後述の並進駆動が可能な間隔で並んで配置されている。そして、各圧電カンチレバー3g,3hは、隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように連結されている。
また、光偏向器A1は、一方の対の第1の圧電アクチュエータ8a,8cの上部電極7a,7cと下部電極5a,5cとの間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12a及び下部電極パッド13aと、他方の対の第1の圧電アクチュエータ8b,8dの上部電極7b,7dと下部電極5b,5dとの間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12b及び下部電極パッド13bとを、支持部11上に備えている。また、光偏向器は、1対の第2の圧電アクチュエータ10a,10bの奇数番目の上部電極7e,7gと下部電極5e,5gとの間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12c,12dと、1対の第2の圧電アクチュエータ10a,10bの偶数番目の上部電極7f,7hと下部電極5f,5hとの間にそれぞれ駆動電圧を印加するための上部電極パッド12e,12fと、上部電極パッド12c,12eの共通の下部電極パッド13cと、上部電極パッド12d,12fの共通の下部電極パッド13dとを、支持部11上に備えている。
下部電極5a〜5hと下部電極パッド13a〜13dとは、シリコン基板上の金属薄膜(本実施形態では2層の金属薄膜、以下、下部電極層ともいう)を、半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成される。この金属薄膜の材料としては、例えば、1層目(下層)にはチタン(Ti)を用い、2層目(上層)には白金(Pt)を用いる。
詳細には、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの圧電カンチレバーの下部電極5a〜5dは、支持体4a〜4d上のほぼ全面に形成され、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの圧電カンチレバーの下部電極5e〜5hは、それぞれ、支持体(直線部と連結部とを合わせた全体)4e〜4h上のほぼ全面に形成されている。そして、下部電極パッド13a〜13dは、支持部11上及び可動枠9上の下部電極層を介して、下部電極5a〜5hに導通される。
圧電体6a〜6hは、半導体プレーナプロセスを用いて下部電極層上の1層の圧電膜(以下、圧電体層ともいう)を形状加工することにより、それぞれ、下部電極5a〜5h上に互いに分離して形成されている。この圧電膜の材料としては、例えば、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が用いられる。
詳細には、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの圧電カンチレバーの圧電体6a〜6dは、支持体4a〜4d上のほぼ全面に形成されて、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの圧電カンチレバーの圧電体6e〜6hは、支持体4e〜4hのうちの直線部上のほぼ全面に形成されている。
上部電極7a〜7hと、上部電極パッド12a〜12fと、これらを導通する上部電極配線(図示せず)は、半導体プレーナプロセスを用いて、圧電体層上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜、以下、上部電極層ともいう)を形状加工することにより形成されている。この金属薄膜の材料としては、例えば白金(Pt)又は金(Au)が用いられる。
詳細には、第1及び第2の圧電アクチュエータ8a〜8d,10a,10bの圧電カンチレバーの上部電極7a〜7hは、圧電体6a〜6h上のほぼ全面に形成されている。そして、上部電極パッド12a,12bは、支持部11上、支持体4e〜4h上の側部、及び可動枠9上に形成された上部電極配線(図示せず)を介して、上部電極7a〜7dに導通される。また、上部電極パッド12c〜12fは、支持部11上及び支持体4e〜4h上の側部に形成された上部電極配線(図示せず)を介して、上部電極7e〜7hに導通される。なお、上部電極配線は、平面的に互いに分離して設けられていると共に、下部電極パッド13a〜13d及び下部電極5a〜5hと層間絶縁されている。
ミラー部1は、ミラー部支持体1aと、ミラー部支持体1a上に形成されたミラー面反射膜(反射面)1bとを備えている。ミラー面反射膜1bは、半導体プレーナプロセスを用いて、ミラー部支持体1a上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜)を形状加工して形成されている。金属薄膜の材料としては、例えばAu,Pt,銀(Ag),アルミニウム(Al)等が用いられる。
また、ミラー部支持体1aと、トーションバー2a,2bと、支持体4a〜4hと、可動枠9と、支持部11とは、複数の層から構成される半導体基板を形状加工することにより一体的に形成されている。シリコン基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。
ミラー部1と可動枠9との間には空隙9’が設けられ、ミラー部1が所定角度まで回転可能となっている。また、可動枠9と支持部11との間には空隙11’が設けられ、可動枠9が所定角度まで回転可能となっている。ミラー部1は、一体的に形成することで、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dとトーションバー2a,2bを介して機械的に連結され、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの駆動に応じて回動する。また、可動枠9は、一体的に形成することで、第2の圧電アクチュエータ10a,10bと機械的に連結され、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの駆動に応じて回動及び並進する。
さらに、光偏向器A1は、ミラー部1の偏向・走査を制御する制御回路20に接続されている。制御回路20は、その機能として、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの駆動電圧の位相、周波数、振幅、波形等を制御することで、ミラー部1の第1の軸x1周りでの偏向・走査(回転駆動)の位相、周波数、偏向角等を制御する第1制御手段21と、第2の圧電アクチュエータ10a,10bへ印加する駆動電圧の位相、周波数、振幅、波形等を制御することで、ミラー部1の第2の軸x2周りでの偏向・走査(回転駆動)及び並進駆動の位相、周波数、偏向角、変位量等を制御する第2制御手段22とを備えている。このとき、第2制御手段22は、駆動電圧として、後述のようにミラー部1の回転駆動用の電圧成分P2と並進駆動用の電圧成分P3とを重畳した電圧を用いる。
次に、本実施形態の光偏向器A1の作動を説明する。まず、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dによる第1の軸周りの回転駆動について説明する。光偏向器A1では、一方の対の第1の圧電アクチュエータ8a,8cに対して、上部電極7a,7cと下部電極5a,5cとの間にそれぞれ第1の電圧、第2の電圧を印加して駆動させると、互いに逆方向に屈曲変形する。なお、第1の電圧と第2の電圧とは、互いに逆位相或いは位相のずれた交流電圧(例えば正弦波)とする。これらの屈曲変形により、トーションバー2aにねじれ変位が生じて、ミラー部1にトーションバー2aを中心とした回転トルクが作用する。同様に、他方の対の第1の圧電アクチュエータ8b,8dにそれぞれ第1の電圧、第2の電圧を印加して駆動させることにより、トーションバー2bに同じ方向にねじれ変位が生じて、ミラー部1にトーションバー2bを中心とした回転トルクが作用する。
よって、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの駆動により、ミラー部1にはトーションバー2a,2bを中心とした回転トルクが作用する。これにより、ミラー部1は、図1の矢印で示したように、トーションバー2a,2bを中心軸として第1の軸x1周りで回転する。これにより、ミラー部1を回転させて第1の方向(例えば水平方向)について所定の第1周波数で所定の第1偏向角で光走査することができる。このとき、これらの第1の圧電アクチュエータ8a〜8dでは、駆動電圧としてトーションバー2a,2bを含むミラー部1の機械的な共振周波数付近の周波数の交流電圧を印加して共振駆動させることで、より大きな偏向角で光走査することができる。
これと共に、光偏向器A1では、外側の1対の第2の圧電アクチュエータ10a,10bに駆動電圧を印加する。具体的には、第2の圧電アクチュエータ10aでは、上部電極パッド12cと共通の下部電極パッド13cとの間に、第3の電圧を印加して、奇数番目の圧電カンチレバー3eを駆動させる。これと共に、上部電極パッド12eと共通の下部電極パッド13cとの間に、第4の電圧を印加して、偶数番目の圧電カンチレバー3fを駆動させる。同様に、対向した第2の圧電アクチュエータ10bに第5,第6の電圧を印加して圧電カンチレバー3g,3hを駆動させる。
このとき、第3,第4の電圧の回転駆動用の電圧成分(P2又は−P2)は、第2の圧電アクチュエータ10aの垂直方向について、奇数番目の圧電カンチレバー3eと偶数番目の圧電カンチレバー3fとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。例えば、第2の圧電アクチュエータ10aの先端部を上方向(図1に示す方向U)に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー3eを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー3fを下方向に変位させる。第2の圧電アクチュエータ10aの先端部を下方向に変位させるには、その逆にする。第2の圧電アクチュエータ10bに対する第5,第6の電圧の回転駆動用の電圧成分(P2又は−P2)についても同様である。
ここで、図2は、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの垂直方向についての駆動状態を模式的に示した図である。図2では、第2の圧電アクチュエータ10aの先端部を上方向に変位させる場合が例示されている。なお、以下では適宜、可動枠9側からi番目の圧電カンチレバーについて(i)と付記して説明する(i=1〜4)。
図2に示すように、第2の圧電アクチュエータ10aに電圧を印加して、可動枠9側(先端部側)から奇数番目の圧電カンチレバー3eを上方向に屈曲変形させると共に、偶数番目の圧電カンチレバー3fを下方向に屈曲変形させる。このとき、圧電カンチレバー3f(4)は、支持部11と連結した基端部を支点として、その先端部に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー3e(3)は、圧電カンチレバー3f(4)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に上方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー3f(2)は、圧電カンチレバー3e(3)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー3e(1)は、圧電カンチレバー3f(2)の先端部と連結した基端部を支点として、その先端部(可動枠9と連結している)に上方向の角度変位が発生している。これにより、第2の圧電アクチュエータ10aでは、各圧電カンチレバー3e,3fの屈曲変形の大きさを加算した大きさの角度変位が発生する。
また、第3,第4の電圧の並進駆動用の電圧成分(P3又は−P3)は、光偏向器A1の面内方向について、奇数番目の圧電カンチレバー3eと偶数番目の圧電カンチレバー3fとの並進変位が同方向に発生するように印加する。例えば、第2の圧電アクチュエータ10aの先端部を右方向(図1に示す方向R)に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー3eも、偶数番目の圧電カンチレバー3fも、右方向に変位させる。第2の圧電アクチュエータ10aの先端部を左方向に変位させるには、その逆にする。第5,第6の電圧の並進駆動用の電圧成分(P3又は−P3)についても同様である。
ここで、図3は、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの面内方向についての駆動状態を模式的に示した図である。図3(a)は、ミラー部1を右方向に並進駆動させた状態を示し、図3(b)は、ミラー部1を左方向に並進駆動させた状態を示す。
図3(a)の場合、第2の圧電アクチュエータ10a圧電カンチレバー3e,3fは、それぞれ矢印で示したように、その基端部を支点として、その先端部に右方向の角度変位が発生している。これにより、第2の圧電アクチュエータ10aでは、各圧電カンチレバー3e,3fの屈曲変形の大きさを加算した大きさの右方向の並進変位が発生する。
また、もう1つの第2の圧電アクチュエータ10b圧電カンチレバー3g,3hでも、それぞれ矢印で示したように、その基端部を支点として、その先端部に右方向の角度変位が発生している。これにより、第2の圧電アクチュエータ10bでは、各圧電カンチレバー3g,3hの屈曲変形の大きさを加算した大きさの右方向の並進変位が発生する。
これらの並進変位により、図中に白抜き矢印で示したように、ミラー部1とトーションバー2a,2bと第1の圧電アクチュエータ8a〜8dと可動枠9が一体的に右方向に並進する。
このように、第3〜第6の電圧の駆動により、第2の圧電アクチュエータ10a,10bが駆動され、それぞれ、圧電カンチレバーに中心軸線が同軸の角度変位を発生すると共に、中心軸線に平行な並進変位を発生する。
まず、上記の角度変位により、可動枠9は、図1の矢印で示したように、第1の軸x1と直交する第2の軸x2周りで回転する。これにより、ミラー部1と可動枠9とが互いの動きに干渉することなく独立に回転される。そして、この可動枠9の回転により、ミラー部1と第1の圧電アクチュエータ8a〜8dとが一体的に回転し、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの駆動による回転とは独立にミラー部1が回転することになる。これにより、ミラー部1を回転させて第2の方向(例えば垂直方向)について所定の第2周波数で所定の第2偏向角で光走査することができる。
また、上記の角度変位による回転と同時に、並進変位により、図1の矢印で示したように、ミラー部1とトーションバー2a,2bと第1の圧電アクチュエータ8a〜8dと可動枠9とが、一体的に第2の軸x2に平行に並進する。これにより、ミラー部1を所定の第3周波数で所定の変位量(例えば、50[μm]以上)で並進振動することができる。
ここで、図4は、第2の圧電アクチュエータ10a,10bに印加する駆動電圧の一例を示すグラフである。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。図4中、実線で回転駆動用の電圧成分P2を示し、1点鎖線で回転駆動用の電圧成分P2と並進駆動用の電圧成分P3とを重畳した電圧を示す。
回転駆動用の電圧成分P2は、振幅V2、周波数F2(例えば60Hz)の単極(ユニポーラ)の鋸波であり、並進駆動用の電圧成分P3は、振幅V3、周波数F3(例えば300Hz)の正弦波である(F2<F3,V2>V3)。第3〜第6の電圧は、これらの電圧成分P2,P3を重畳したものとなる。具体的には、例えば、第3〜第6の電圧は、回転駆動用の電圧成分P2又は−P2と並進駆動用の電圧成分P3又は−P3とをそれぞれ重畳した(P2+P3)、(−P2+P3)、(P2−P3)、(−P2−P3)交流電圧とする。なお、電圧成分P2,P3の重畳のパターンは、これに限らない。
本実施形態では、第3の電圧と第4の電圧と、回転駆動用の電圧成分が逆極性(例えば、P2に対して−P2)となるように印加されるものとしているが、第3の電圧と第4の電圧とで、回転駆動用の電圧成分P2が互いに位相がずれるように印加されるようにしてもよい。また、第3の電圧と第4の電圧とは、並進駆動用の電圧成分が同じ位相(例えば、P3に対してP3)となるように印加されるものとしている。第5の電圧と第6の電圧との関係も同様である。
このとき、回転駆動用の電圧成分P2としては、ミラー部1とトーションバー2a,2bと第1の圧電アクチュエータ8a〜8dとを含む可動枠9の機械的な共振周波数(第一次共振点)より小さい周波数の周期的に変動する電圧を印加して非共振振動させることで、印加した電圧の大きさに応じた偏向角で安定に光走査することができる。また、並進駆動用の電圧成分P3としては、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの並進駆動モードの共振周波数付近の周波数の交流電圧(例えば正弦波)を印加して共振振動させることで、より大きな変位量で並進振動させることができる。なお、並進駆動用の電圧成分P3の周波数F3としては、例えば、この並進振動によるフリッカーノイズの発生が抑制されるよう、人間の目がフリッカーノイズを感じない程度に大きな周波数が用いられる。
本実施形態によれば、第1及び第2の圧電アクチュエータ8a〜8d,10a,10bの回転駆動により、入射されたレーザ光等の光ビームが2方向(例えば水平方向、垂直方向)で独立に走査されるので、入射された光ビームを水平方向、垂直方向にラスタスキャンしてスクリーン上に投影して画像を表示することができる。これと共に、本実施形態によれば、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの並進駆動により、ミラー部1を並進振動することができる。これにより、ミラー部1で走査される光の位相を変動させることができるので、光偏向器A1により走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性を低減し、スクリーン上の画像におけるスペックルノイズを低減することができる。
[製造工程]
図5は、本実施形態における光偏向器A1の製造工程を示す。なお、図5(a)〜(h)は、光偏向器A1の断面を模式的に示している。
上述のように、ミラー部支持体1a、トーションバー2a,2b、支持体4a〜4h、可動枠9、支持部11を形成する半導体基板としては、図5(a)に示すように、SOI基板31を用いている。
まず、図5(b)に示すように、SOI基板31の表面(活性層31a側)及び裏面(ハンドリング層31c側)を熱酸化炉(拡散炉)によって酸化し、熱酸化シリコン膜32a,32bを形成する(熱酸化膜形成ステップ)。熱酸化シリコン膜32a,32bの厚みは、例えば0.1〜1[μm]とする。
次に、図5(c)に示すように、SOI基板31の表面(活性層31a側)に、下部電極層33、圧電体層34、上部電極層35を順次形成する。
まず、下部電極層形成ステップで、SOI基板31の活性層31a側の熱酸化シリコン膜32a上に、2層の金属薄膜からなる下部電極層33を形成する。下部電極層33の材料としては、1層目(下層)の金属薄膜にはチタン(Ti)を用い、2層目(上層)の金属薄膜には白金(Pt)を用いる。各金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。各金属薄膜の厚みは、例えば1層目のTiは30〜100[nm]、2層目のPtは100〜300[nm]程度とする。
次に、圧電体層形成ステップで、下部電極層33上に、1層の圧電膜からなる圧電体層34を形成する。圧電体層34の材料としては、圧電材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる。また、圧電膜の厚みは、例えば1〜10[μm]程度とする。圧電膜は、例えば、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法により成膜する。反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法については、具体的には、本願出願人による特開2001−234331号公報、特開2002−177765号公報、特開2003−81694号公報に記載された手法を用いる。
このアーク放電プラズマを利用した反応性イオンプレーティング法は、プラズマガンで真空容器内に発生させた高密度酸素プラズマ中で原料金属を加熱蒸発させ、真空容器内或いは半導体基板上において各金属蒸気と酸素とが反応することにより、半導体基板上に圧電膜を形成するものである。この方法を用いることにより、比較的低い成膜温度においても高速に圧電膜を形成できる。特に、アーク放電反応性イオンプレーティング法による圧電膜を形成する際に、その下地として、例えば化学溶液堆積法(CSD(Chemical Solution Deposition)法)によりシード層を形成することで、より優れた圧電特性を有する圧電膜を形成することができる。
なお、圧電膜は、例えばスパッタ法、ゾルゲル法等により成膜してもよい。ただし、反応性アーク放電を利用したイオンプレーティング法を用いることにより、良好な圧電特性(バルクの圧電体と同等の圧電特性)を有する厚みのある膜を成膜することができる。
次に、上部電極層形成ステップで、圧電体層34上に、1層の金属薄膜からなる上部電極層35を形成する。上部電極層35の材料としては、Pt又はAuを用いる。上部電極層35は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。上部電極層35の厚みは、例えば10〜200[nm]程度とする。
次に、図5(d)に示すように、形状加工ステップで、上部電極層35、圧電体層34、下部電極層33の形状を加工して、上部電極7a〜7h、圧電体6a〜6h、下部電極5a〜5hを形成する。
具体的には、まず、上部電極層35上にフォトリソグラフィ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、上部電極層35及び圧電体層34に対して、RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いて、ドライエッチングを行う。これにより、上部電極パッド12a〜12f、上部電極7a〜7h、及び圧電体6a〜6hが形成される。また、このとき、これらの上部電極パッドと所定の圧電カンチレバーの上部電極とを接続するための上部電極配線(電極配線パターン)も形成される。
同様に、下部電極層33上にフォトリソグラフィ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、下部電極層33に対して、RIE装置を用いて、ドライエッチングを行う。これにより、下部電極パッド13a〜13d、及び下部電極5a〜5hが形成される。
次に、図5(e)〜(h)に示すように、支持体形成ステップで、ミラー部支持体1a、トーションバー2a,2b、支持体4a〜4h、可動枠9、支持部11及びミラー面反射膜1bが形成される。
まず、図5(e)に示すように、熱酸化膜32bを除去して、ハードマスクを形成する。詳細には、SOI基板31の表面全体を厚膜レジストで保護しておき、裏面のハンドリング層31c側の熱酸化シリコン膜32bをバッファードフッ酸(BHF)で除去する。そして、SOI基板31の裏面側のハンドリング層31c上の全面に、1層のAl薄膜37を形成する。Al薄膜37は、例えばスパッタ法、蒸着法を用いて成膜する。そして、Al薄膜37上にフォトリソグラフィ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、Al薄膜37に対してウェットエッチングを行う。これにより、後述の図5(g)のICP(Inductively Coupled Plasma)−RIE装置によるドライエッチングに用いるハードマスクが形成される。
次に、図5(f)に示すように、活性層31a(単結晶シリコン)の形状を加工する。まず、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト材料をパターニングし、このパターニングしたレジスト材料をマスクとして、ICP−RIE装置を用いて、熱酸化膜32a及び活性層31aのシリコンの形状を加工する。ICP−RIE装置は、マイクロマシン技術で使用されるドライエッチング装置であり、シリコンを垂直に深く掘ることが可能な装置である。
さらに、図5(f)に示すように、SOI基板31の表面側のミラー部1に対応する位置のSOI基板31の熱酸化シリコン膜31aをICP−RIE装置を用いて除去する。そして、反射面形成ステップで、ミラー部1のミラー面反射膜1bが形成される。まず、中間酸化膜層31bを除去して露出したSOI基板31のハンドリング層31c上に、1層の金属薄膜(反射膜)36を形成する。金属薄膜36の材料としては、例えばAu,Pt,Ag,Al等を用いる。また、金属薄膜36は、例えばスパッタ法、蒸着法を用いて成膜する。金属薄膜36の厚みは、例えば100〜500[nm]程度とする。
次に、金属薄膜36の形状を加工する。具体的には、まず、金属薄膜36上にフォトリソグラフィ技術を用いてレジスト材料をパターニングする。次に、パターニングしたレジスト材料をマスクとして、金属薄膜36に対して、RIE装置を用いてドライエッチングを行う。これにより、SOI基板31のハンドリング層31c上に、ミラー面反射膜1bが形成される。
次に、図5(g)に示すように、ハンドリング層31cの形状を加工する。図5(e)で形成したハードマスクを用いて、ICP−RIE装置を用いて、ハンドリング層31cのシリコンをSOI基板31の裏面から加工する。これにより、圧電カンチレバーの支持体4a〜4hの裏側を深く掘り下げ中空状態にする。
次に、図5(h)に示すように、SOI基板31の中間酸化膜層31bをバッファードフッ酸(BHF)でウェットエッチングして除去する。これにより、ミラー部1、トーションバー2a,2b、第1の圧電アクチュエータ8a〜8d、第2の圧電アクチュエータ10a,10b、可動枠9の周囲を部分的にSOI基板31から切り離して空隙を形成し、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dの駆動と、第2の圧電アクチュエータ10a,10bの駆動と、ミラー部1、トーションバー2a,2b、及び可動枠9の回転及び並進とを可能にする。
以上の工程により、光偏向器A1が作製される。光偏向器A1のデバイスサイズは、例えば6×4〜10×6[mm]程度とする。なお、上述の工程を行った後、各デバイスは、ダイシング工程によってSOI基板31から個片(チップ)として分離される。そして、各デバイスのチップは、例えばLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)パッケージにダイボンド及びワイヤーボンドにより実装される。
このように、光偏向器A1を半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することができるので、作製が容易であり、小型化や量産や歩留まりの向上が可能となる。さらに、光偏向器A1をデバイスに組み込む場合に、デバイス全体として半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスを用いて一体的に形成することが可能となるので、光偏向器A1を他のデバイスに組み込むことが容易となる。
[実施例1]
実施例1として、本実施形態の光偏向器A1の駆動特性の試験について説明する。本実施例では、上述の光偏向器を、共振周波数が15[kHz]となるように設計し、上述の製造工程で作製した。このとき、SOI基板の各層の厚みは、活性層50[μm]、中間酸化膜層2[μm]、ハンドリング層525[μm]とし、熱酸化シリコン膜の厚みは500[nm]とした。また、下部電極層(Ti/Pt)の厚みはTiを50[nm]、Ptを=150[nm]とし、圧電体層の厚みは3[μm]とし、上部電極層(Pt)の厚みは150[nm]とした。
この光偏向器について、第1の圧電アクチュエータ8a〜8dに振幅電圧Vpp=25[V]、周波数15[kHz]の交流電圧を駆動信号として印加し、第2の圧電アクチュエータ10a,10bに振幅電圧Vpp=20[V]、周波数60[Hz]の鋸波電圧(回転駆動用の電圧成分)を駆動信号として印加した。第1の圧電アクチュエータ8a〜8dは水平軸走査用で共振駆動とし、第2の圧電アクチュエータ10a,10bは垂直軸走査用で非共振駆動とした。このとき、水平軸で最大偏向角±6.5°、垂直軸で最大偏向角±4.5°を得られた。さらに、第2の圧電アクチュエータ10a,10bに、回転駆動用の電圧成分に、振幅電圧Vpp=5[V]、周波数300[Hz]の交流電圧(並進駆動用の電圧成分)を重畳して駆動信号として印加した。なお、この並進駆動用の駆動周波数は、作製した光偏向器の素子デザインによって定まる並進駆動の共振周波数と一致するものとした。このとき、第2の圧電アクチュエータ10a,10bは回転振動しながら同時に並進振動し始めた。そして、本実施例では、並進振動の振幅として50[μm]が観測された。
図6は、本実施形態の光偏向器A1を使用した画像表示装置51を示す。この画像表示装置51は、光偏向器A1と、レーザ光源52と、ハーフミラー(ビームスプリッター)53と、スクリーン54とを備えている。レーザ光源52、ハーフミラー53、スクリーン54は所定の位置に固定されている。レーザ光源52から出力されたレーザ光は、所定の強度変調を受けて集光用のレンズ又はレンズ群(図示せず)を通過して、ハーフミラー53を通り、光偏向器A1のミラー部1に入射される。入射されたレーザ光は、ミラー部1の偏向角に応じた所定の方向に偏向され、ハーフミラー53で分岐された光がスクリーン54上に投影され、画像を形成する。光偏向器A1は、入射されたレーザ光を水平方向、垂直方向にラスタスキャンし、スクリーン54上の水平方向H、垂直方向Vの長方形の領域を走査して画像を表示する。
このとき、並進駆動用の電圧成分を駆動信号として印加する前後で、スクリーン54上の画像のスペックルノイズを目視で比較したところ、10人中7人によりスペックルノイズの低減が認識された。なお、並進駆動用の電圧成分を駆動信号として印加する前後で、フリッカーノイズの違いは認識されなかった。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図7〜図8を参照して説明する。図7は、本発明の第2実施形態における光偏向器の構成を示す斜視図、図8は、図7の光偏向器のパッケージの光学窓の構成を示す図である。本実施形態の光偏向器は、第1実施形態の光偏向器を実装するパッケージの光学窓を、該光学窓を透過する光に面内で光路差を生じさせる構成としたものである。第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態では、光偏向器A1の各デバイスのチップは、パッケージ(例えばLTCCパッケージ)101にダイボンド及びワイヤーボンドにより実装される。パッケージ101の上部には、入射光をミラー部1のミラー面反射膜1bに導入するための透明な光学窓102aが形成されている。この光学窓102aの中央部には、図8に示すように部分的に光学多層膜を成膜した千鳥格子上のパターンが形成されており、このパターンによって光偏向器A1に入射するレーザ光の光路に微小な差がつくことになる。なお、図8中、白抜きの部分(a1)は光学多層膜を成膜していない部分であり、点描を付した部分(a2)は光学多層膜を成膜した部分である。光学多層膜の素材としては、例えば、高屈折率の素材として、TiO2,Ta25,Nb25等を用い、低屈折率の素材として、SiO2等を用いることができる。また、光学多層膜の膜厚は、例えば、100[nm]/1層とし、全膜厚が2〜5[μm]とする。また、パターンの格子サイズは、例えば、各格子が3〜5[μm]角とする。他の構成及び作動は、第1実施形態と同じである。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ミラー部1を並進振動することで、光偏向器A1により走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性を低減し、スクリーン上の画像におけるスペックルノイズを低減することができる。さらに、本実施形態では、ミラー部1の並進駆動により、走査光が光学窓102aを透過する位置が変動し、光路差分布が変動することとなるので、走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性をより低減することができる。しかも、光偏向器A1が実装されるパッケージの光学窓102aを、光路差を生じさせる構成とすることで、光学的なアライメントが不要であると共に、コンパクトな光学系を維持することができる。
なお、本実施形態では、光学窓102aのパターンを、光学多層膜の有無によって形成したが、例えば、屈折率の大きな材料を用いた単層膜の有無によってパターンを形成してもよく、成膜ではなく、光学窓の表面に微小な凹凸を形成することでパターンを形成してもよい。
[実施例2]
実施例2として、本実施形態の光偏向器A1の駆動特性の試験について説明する。本実施例では、実施例1と同様に設計した光偏向器を作製し、実施例1と同様に交流電圧を印加した。そして、この光偏向器を上述の光学窓102aを備えたパッケージ101の内部に実装した。本実施例では、並進駆動用の電圧成分を駆動信号として印加する前後で、スクリーン54上の画像のスペックルノイズを目視で比較したところ、10人中9人によりスペックルノイズの低減が認識された。
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態における光偏向器のパッケージの光学窓の構成を示す図である。本実施形態の光偏向器は、第2実施形態の光偏向器を実装するパッケージの光学窓を、該光学窓を透過する光の偏光状態を面内で変調する構成としたものである。第1実施形態と同じ構成は、同じ符号を付して説明を省略する。
本実施形態において、この光学窓102bの中央部には、透過光を4方向に変調する偏光素子b1〜b4から成る平面偏光素子が配置されており、この平面偏光素子によって光偏向器A1に入射して走査されるレーザ光の偏向状態を空間的に変化させる。偏光素子b1〜b4のグレーティングは、例えば、200[nm]程度のピッチとする。また、偏光素子b1〜b4の素子サイズは、例えば、3〜5[μm]角とする。他の構成及び作動は、第2実施形態と同じである。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ミラー部1を並進振動することで、光偏向器A1により走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性を低減し、スクリーン上の画像におけるスペックルノイズを低減することができる。さらに、本実施形態では、ミラー部1の並進駆動により、光が光学窓102bの平面偏光素子を透過する位置が変動し、偏向状態が変動することとなるので、走査光が投影されるスクリーン上の画像における隣接画素間の可干渉性をより低減することができる。しかも、光偏向器A1が実装されるパッケージの光学窓102aを、偏向状態を変調する構成102bとすることで、光学的なアライメントが不要であると共に、コンパクトな光学系を維持することができる。
[実施例3]
実施例3として、本実施形態の光偏向器A1の駆動特性の試験について説明する。本実施例では、実施例1と同様に設計した光偏向器を作製し、実施例1と同様に交流電圧を印加した。そして、この光偏向器を上述の光学窓102bを備えたパッケージ101の内部に実装した。本実施例では、並進駆動用の電圧成分を駆動信号として印加する前後で、スクリーン54上の画像のスペックルノイズを目視で比較したところ、10人中9人によりスペックルノイズの低減が認識された。
なお、第1〜第3実施形態の光偏向器では、第2の圧電アクチュエータは4つの圧電カンチレバーを連結して構成されるものとしたが、連結する数は任意に変更可能である。また、第2の圧電アクチュエータを、第1の圧電アクチュエータのように1つの圧電カンチレバーからなるものとしてもよい。また、第2の圧電アクチュエータを共振駆動としてもよい。
また、第1〜第3実施形態の光偏向器は、例えば、投影型ディスプレイ等の画像表示装置に用いることができる。
本発明の第1実施形態における光偏向器の構成を示す斜視図。 図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータの回転駆動を示す説明図。 図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータの並進駆動を示す説明図。 図1の光偏向器の第2の圧電アクチュエータに印加する駆動電圧の一例を示すグラフ。 図1の光偏向器の製造工程を示す説明図。 図1の光偏向器を使用した画像表示装置の構成を示す説明図。 本発明の第2実施形態における光偏向器の構成を示す斜視図。 図7の光偏向器のパッケージの光学窓の構成を示す図。 本発明の第3実施形態における光偏向器のパッケージの光学窓の構成を示す斜視図。
符号の説明
1…ミラー部、1a…ミラー部支持体、1b…ミラー面反射膜、2a,2b…トーションバー、3a〜3h…圧電カンチレバー、4a〜4h…支持体、5a〜5h…下部電極、6a〜6h…圧電体、7a〜7h…上部電極、8a〜8d…第1の圧電アクチュエータ、9…可動枠、10a,10b…第2の圧電アクチュエータ、11…支持部、12a〜12f…上部電極パッド、
31…SOI基板、31a…活性層、31b…中間酸化膜層、31c…ハンドリング層、32a,32b…熱酸化シリコン膜、33…下部電極層、34…圧電体層、35…上部電極層、36…反射膜、37…Al薄膜、
101…パッケージ、102a,102b…光学窓。

Claims (8)

  1. 反射面を有するミラー部と、該ミラー部を駆動する少なくとも1つの圧電アクチュエータとを備え、該圧電アクチュエータは、支持体上に形成された圧電体に駆動電圧を印加することで圧電駆動により屈曲変形を行う1つ以上の圧電カンチレバーを含み、該圧電アクチュエータに駆動電圧を印加することで該ミラー部を回転駆動させる光偏向器において、
    前記圧電アクチュエータは、前記ミラー部と該ミラー部の両端から外側に伸びた1対のトーションバーとを挟んで対向するように1対又は2対配置され、各圧電アクチュエータの少なくとも一端が該1対のトーションバーに連結され、他端は該ミラー部を囲むように設けられた可動枠の内側に連結されて支持された第1の圧電アクチュエータと、前記1対のトーションバーと異なる方向に該ミラー部及び該可動枠を挟んで対向するように1対配置され、各圧電アクチュエータの一端が該可動枠の外側に連結され、他端は該可動枠を囲むように設けられた支持部に支持された第2の圧電アクチュエータとで構成され、
    前記第2の圧電アクチュエータは複数の圧電カンチレバーで構成され、各圧電カンチレバーは、前記可動枠と前記支持体との間で互いに隣り合うように並んで配置され、それぞれ隣り合う圧電カンチレバーに対し折り返すように各圧電カンチレバーの端部が機械的に連結され、
    前記ミラー部は、前記第1の圧電アクチュエータにより前記1対のトーションバーを介して第1の軸周りで回転駆動され、
    前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーの一方には、前記ミラー部を前記第1の軸周りと異なる第2の軸周りで回転駆動させる回転駆動用の電圧成分(P2又は−P2)と、前記第2の圧電アクチュエータの並進駆動モードの共振周波数で前記ミラー部を前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動させる並進駆動用の電圧成分(P3又は−P3)とを重畳した電圧(P2+P3又は−P2−P3)を印加し、前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーの他方には、前記回転駆動用の電圧成分と異なる位相を有し前記ミラー部を前記第2の軸周りで回転駆動させる回転駆動用の電圧成分(−P2又はP2)と、前記並進駆動用の電圧成分と同じ位相を有し前記第2の圧電アクチュエータの並進駆動モードの共振周波数で前記ミラー部を前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動させる並進駆動用の電圧成分(P3又は−P3)とを重畳した電圧(−P2+P3又はP2−P3)を印加することにより、前記第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーが互いに逆方向に屈曲変形すること駆動される前記可動枠を介して、前記第2の軸周りで回転駆動されると共に、該第2の圧電アクチュエータの隣り合う2つの圧電カンチレバーが互いに同方向に並進変位するように共振振動させることにより、前記第2の軸と平行な面内方向に並進駆動されることを特徴とする光偏向器。
  2. 請求項1記載の光偏向器において、該光偏向器への入射光及び該光偏向器からの反射光を透過させ、且つ該透過される光に面内で光路差を生じさせる光学窓を備えたパッケージの内部に実装されることを特徴とする光偏向器。
  3. 請求項1記載の光偏向器において、該光偏向器への入射光及び該光偏向器からの反射光を透過させ、且つ該透過される光の偏光状態を面内で変調する光学窓を備えたパッケージの内部に実装されることを特徴とする光偏向器。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の光偏向器において、前記第1及び第2の圧電アクチュエータへ印加される駆動電圧は周期的に変動する電圧であることを特徴とする光偏向器。
  5. 請求項4記載の光偏向器において、前記第1の圧電アクチュエータへ印加される駆動電圧は交流電圧であり、該1対又は2対の第1の圧電アクチュエータのうち前記トーションバーの一方の側の圧電アクチュエータへ印加される第1の交流電圧と、該トーションバーの他方の側の圧電アクチュエータへ印加される第2の交流電圧とは、互いに180度位相が異なることを特徴とする光偏向器。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の光偏向器において、前記ミラー部、前記トーションバー、前記可動枠、及び前記圧電カンチレバーの支持体は、半導体基板を形状加工して前記支持部と一体的に形成されることを特徴とする光偏向器。
  7. 請求項6記載の光偏向器において、前記圧電カンチレバーの圧電体は、前記半導体基板上に直接成膜された単層の圧電膜を形状加工して形成されることを特徴とする光偏向器。
  8. 請求項7記載の光偏向器において、前記ミラー部の反射面及び前記圧電カンチレバーの電極は、前記半導体基板上に直接成膜された金属薄膜と、前記圧電膜上に直接成膜された金属薄膜とを形状加工して形成されることを特徴とする光偏向器。
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