以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
〔実施形態1〕
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態1に係る光走査装置の一例の構成を示した斜視図である。図1(A)は、実施形態1に係る光走査装置の一例の構成を示した上面斜視図であり、図1(B)は、実施形態1に係る光走査装置の一例の構成を示した下面斜視図である。
図1(A)、(B)において、本実施形態に係る光走査装置は、ミラー10と、ミラー支持部20と、捻れ梁30と、連結梁40と、第1の駆動梁50と、可動枠60と、第2の駆動梁70と、連結部80と、固定枠90とを備える。捻れ梁30には、スリット31が設けられている。また、図1(A)に示すように、第1の駆動梁50は、駆動源51を備え、第2の駆動梁70は、駆動源71を備える。更に、図1(B)に示すように、ミラー支持部20の裏面にはリブ21が設けられ、第2の駆動梁70の裏面には、高調波重畳防止用リブ72が設けられている。
図1(A)、(B)において、ミラー支持部20の表面にミラー10が支持され、ミラー支持部20は、両側にある捻れ梁30の端部に連結されている。捻れ梁30は、揺動軸を構成し、軸方向に延在してミラー支持部20を軸方向両側から支持している。捻れ梁30が捻れることにより、ミラー支持部20に支持されたミラー10が揺動し、ミラー10に照射された光の反射光を走査させる動作を行う。捻れ梁30は、連結梁40に連結支持され、第1の駆動梁50に連結されている。第1の駆動梁50、連結梁40、捻れ梁30、ミラー支持部20及びミラー10は、可動枠60に取り囲まれている。第1の駆動梁50は、可動枠60に片側が支持され、内周側に延びて連結梁40と連結している。第1の駆動梁50は、捻れ梁30とは直交する方向に、ミラー10及びミラー支持部20を挟むように、対をなして2つ設けられている。第1の駆動梁50の表面には、圧電素子の薄膜が駆動源51として形成されている。圧電素子は、印加する電圧の極性に応じて伸長したり縮小したりするので、左側の第1の駆動梁50と右側の第1の駆動梁50とで異なる位相の電圧を交互に印加することにより、ミラー10の左側と右側で第1の駆動梁50が上下反対側に交互に振動し、捻れ梁30を揺動軸又は回転軸として、ミラー10を軸周りに揺動させることができる。このミラー10が捻れ梁30の周りに揺動する方向を、以後、水平方向と呼ぶことにする。例えば、第1の駆動梁50による水平駆動には、共振振動が用いられ、高速にミラー10を揺動駆動してよい。また、可動枠60の外部には、第2の駆動梁70の一端が連結されている。第2の駆動梁70は、第1の駆動梁50と平行に延在する梁が、隣接する梁と端部で連結され、全体としてジグザグ状の形状を有する。そして、第2の駆動梁70の他端は、固定枠90の内側に連結されている。第2の駆動梁70も、可動枠60を左右両側から挟むように、対をなして2つ設けられている。また、第2の駆動梁70の表面には、曲線部を含まない矩形単位毎に、圧電素子の薄膜が駆動源71として形成されている。矩形単位毎に隣接している駆動源71同士で、異なる極性の電圧を印加することにより、隣接する矩形梁を上下反対方向に反らせ、各矩形梁の上下動の蓄積を可動枠60に伝達することができる。そして、水平方向と直交する方向、つまり垂直方向にミラー10を揺動させることができる。例えば、第2の駆動梁70による駆動力は、非共振振動により発生させてもよい。
本実施形態に係る光走査装置は、上述のような構成を有し、このような構成を実現できれば、種々の材料及び加工方法により実現されてよい。例えば、本実施形態に係る光走査装置は、MEMS(Micro Electro Machine Systems)技術により、半導体を用いて実現されてもよい。例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いることにより、厚さの薄い梁部分は表面側のシリコン基板のみを残して加工し、厚さの厚い枠やリブの部分は裏面のシリコン基板も残して加工することにより、容易に光走査装置の構造体を作製することができる。
本実施形態に係る光走査装置は、マイクロプロジェクタに搭載可能な圧電2軸駆動型アクチュエータとして構成することができ、小型で高性能、かつ安価に製造することができる。なお、小型とは、例えば、高さ7mm以下、高性能とは50cmの距離でA3サイズ画面に解像度XGA(eXtended Graphic Array、1024×768ピクセルの解像度)又は720pで高速描画が行えることを意味する。本実施形態に係る光走査装置は、例えば、60Hzの鋸波で、機械角±9degで垂直方向に揺動する非共振駆動型アクチュエータ機構と、水平方向に共振周波数25kHzで機械角±12deg揺動する共振駆動型アクチュエータを搭載した、小型で高性能な2軸駆動型マイクロミラーアクチュエータとして構成してもよい。
図2は、図1(A)のA部及びB部を拡大した図である。図2(A)は、図1(A)のA部を拡大した図であり、図2(B)は、図1(A)のB部を拡大した図である。
図2(A)において、連結梁40に4個のミラー水平角度センサ100が設けられている。ミラー水平角度センサ100は、ミラー10の水平方向の傾き角度を検出するセンサである。連結梁40は、第1の駆動梁50による水平方向のミラー10の傾き角度を反映しているので、ミラー水平角度センサ100を連結梁40に設けることにより、水平方向のミラー10の傾斜角度を検出することができる。ミラー水平角度センサ100は、例えば、圧電素子の薄膜を有し、角度に応じて圧電素子の薄膜に励起された電圧を検出し、水平方向の角度を検出するように構成されてもよい。
図2(B)において、ミラー垂直角度センサ101が第2の駆動梁70に設けられている。垂直方向の駆動は、第2の駆動梁70の動きに反映されるので、例えば、ミラー垂直角度センサ101を第2の駆動梁70に設けるようにしてもよい。ミラー垂直角度センサ101も、例えば上述のように、圧電素子を用いて構成してよい。
次に、実施形態1に係る光走査装置の構成の詳細について、構成部分毎に順次説明する。なお、実施形態1に係る光走査装置において、測定結果等の実施例がある場合には、構成部分毎に実施例として採り上げて説明するものとする。
[スリット構造]
図3は、本実施形態に係る光走査装置のスリット構造について説明するための比較例を示した図である。図3において、本実施形態とは異なり、スリット31が形成されていない捻れ梁130を有する比較例に係る光走査装置が示されている。なお、図3において、本実施形態に係る光走査装置と同様の構成要素については、図1及び図2と同様の参照符号を付し、本実施形態に係る光走査装置と異なる構成要素には異なる参照符号を付すものとする。
図3(A)は、比較例に係る光走査装置の可動枠60内の構成を示した図である。図3(A)に示すように、可動枠60の内側において、捻れ梁130にスリット31が形成されていない点のみが本実施形態に係る光走査装置と異なっている。
図3(B)は、比較例に係る光走査装置の捻れ梁130を拡大して示した斜視図である。図3(B)に示すように、捻れ梁130は、厚さに比して横幅の大きい薄板上の形状であることが示されている。近年求められている高解像度化のためには、単位時間当たりに多くのピクセル分を走査する必要があるので、走査のための揺動駆動の高速化が求められる。高速化を実現するためには、ミラー10を駆動する共振周波数を上げる必要があるが、そのためには、捻れ梁130の剛性を上げる必要がある。そうすると、MEMS技術により半導体プロセスで光走査装置を構成する場合には、梁等の薄い部分の厚さは、第2の駆動梁70の揺動感度と1次共振周波数f0に関わる剛性により決定され、総て一定に構成されるので、剛性を上げるためには捻れ梁130の横幅を長くする必要が出てくるからである。
図3(C)は、比較例に係る光走査装置の捻れ梁130の断面図である。図3(C)に示すように、捻れ梁130の断面は、厚さに比して横幅が大きい長方形の形状である。これは、上述のように、捻れ梁130の梁幅を広くし、剛性を向上させたためである。そうすると、捻れ梁130が捻れたときに、捻れ梁の中心位置Ctと、端部Egと、中間部Mdとでは、位置により異なる変形をする。ミラー角度が大きく捻れた場合、位置Ct、Md、Egによる変形状態差が、変位の非線形性として現れることになる。
図4は、線形共振振動と非線形共振振動の周波数/変位特性を示した図である。図4(A)は、線形共振振動の周波数/変位特性の一例を示した図である。図4(A)に示すように、線形共振振動においては、共振周波数faを中心として、左右対照の振動を示す。
図4(B)は、非線形共振振動の周波数/変位特性の一例を示した図である。図4(B)に示すように、左右のバランスが崩れ、共振周波数の山が右又は左に傾いた状態となる。図4(B)においては、共振周波数の山が右に傾いた状態となっている。
図4(C)は、非線形共振振動が強く出た場合の周波数/変位特性の例を示した図である。図4(C)に示すように、非線形共振振動が強く出た場合の最大の問題点は、駆動周波数fを一定として駆動電圧をV1〜V3に増減させても、駆動周波数fにおける変位は増減しないことである。つまり、ピークが傾いてしまっているので、駆動電圧を増減させても傾いた方向に変位は増減し、周波数fの点においては変位が何ら増減しないという現象が発生してしまう。これでは、レーザ光の投影サイズを、印加電圧の調整により自由に変更することができなくなってしまう。
図3に戻る。図3(D)は、正方形の断面を有する梁を示した図である。図3(D)において、幅がW、厚さがTで示されている。非線形性を防ぐ最も有効な手段は、梁の断面形状を、図3(C)に示した長方形から図3(D)に示した正方形にすることである。
しかしながら、駆動周波数を一定に保ちつつ、断面形状を正方形にするためには、図3(C)の長方形の形状から、厚さTを増加させる必要がある。しかし、単に厚さTを増加させると、垂直非共振駆動機構である第2の駆動梁70の厚さも増加してしまい、所望の垂直駆動電圧感度が得られなくなってしまう。
そこで、本実施形態に係る光走査装置においては、捻れ梁30にスリット31を設け、スリット31の両側の捻れ梁30の断面は各々正方形としつつ、全体としては捻れ梁30の幅を広げて、剛性を保つ構成としている。
図5は、実施形態1に係る光走査装置の捻れ梁30について説明するための図である。図5(A)は、実施形態1に係る光走査装置の可動枠60の内側の構成を示した図である。図5(A)において、本実施形態に係る光走査装置の捻れ梁30は、スリット31を有している。
図5(B)は、実施形態1に係る光走査装置の捻れ梁30の拡大図である。図5(B)に示されるように、本実施形態に係る光走査装置の捻れ梁30は、軸方向に平行なスリット31を有している。図5(B)においては、捻れ梁30の中央に1本だけスリット31が設けられているので、スリット31は、揺動軸と一致した位置に設けられている。また、スリット31は、捻れ梁30の内側端及び外側端までには到達しておらず、捻れ梁30を分割する構成とはなっていない。
図5(C)は、実施形態1に係る光走査装置の捻れ梁30の断面構成の一例を示した図である。図5(C)に示されるように、捻れ梁30の中央にスリット31を形成したことにより、スリット31を含む断面においては、捻れ梁30は、左側の捻れ梁30Lと右側の捻れ梁30Rに分割される。分割された左側の捻れ梁30L及び右側の捻れ梁30Rは、ともに正方形に近い断面形状となる。よって、左側の捻れ梁30Lの回転中心30LC及び右側の捻れ梁30Rの回転中心30RCは、ともに各々の捻れ梁30L、30Rの中心となり、変位による差が生じなくなり、非線形振動を低減させることができる。また、捻れ梁30全体としては、仮想回転中心31Cを中心に揺動しており、ミラー10に所望の水平方向の揺動を行わせることができる。
このように、本実施形態に係る光走査装置によれば、捻れ梁30に軸方向と平行なスリット31を設け、スリット31の存在する断面において分割された各捻れ梁30L、30Rを正方形に近い形状とすることにより、非線形振動の発生を抑制することができる。
(実施例1)
図6は、本発明の実施例1に係る光走査装置の実施結果を示した図である。図6(A)は、スリット31を有しない比較例に係る光走査装置の実施結果を示した図であり、図6(B)は、スリット31が形成された実施例1に係る光走査装置の実施結果を示した図である。
図6(A)は、比較例に係る光走査装置の構造で、線形的に変位した場合と非線形的に変位した場合のモーメントを示している。線形と非線形のモーメントが乖離していると非線形性が強く、一致していると非線形性が無いことを示す。図6(A)においては、線形と非線形のモーメントが重なっておらず、スリット31が設けられていない捻れ梁130を有する比較例に係る光走査装置は、非線形性が強い特性を示している。
一方、図6(B)は、実施形態1と同様の構成を有する実施例1に係る光走査装置の構造で、線形的に変位した場合と非線形的に変位した場合のモーメントを示している。図6(B)において、線形と非線形のモーメントは重なっており、非線形性が無いことが示されている。
図7は、実施例1及び比較例に係る光走査装置の変位/周波数特性を示した図である。図7(A)は、実施例1に係る光走査装置の変位/周波数特性を示した図であり、図7(B)は、スリット31により分割される捻れ梁30L、30Rの角型比を変化させた場合の変位/周波数特性であり、図7(C)は、比較例に係る光走査装置の変位/周波数特性を示した図である。
図7(A)に示すように、実施例1に係る光走査装置においては、非線形性がほぼ無くなり、駆動電圧の増減により、周波数fで変位を増減できる特性となっている。これにより、駆動電圧の増減により、光の照射面積を増減させることが可能となる。
なお、図7(B)に示すように、スリット31を設けていても、スリット31の右側の捻れ梁30R及び左側の捻れ梁30Lについて、角型比を変化させ、発生応力を緩和すると、非線形性が現れてくる。しかしながら、非線形性は弱くなり、周波数fで一定のときに、駆動電圧の増減により、変位を増減させることが可能となっている。
よって、図7(A)、(B)から、捻れ梁30にスリット31を設けることにより、周波数fを一定とし、駆動電圧を増減させた場合に、変位を増減させることが可能であることが分かる。
一方、図7(C)に示すように、比較例に係る光走査装置のように、非線形性が強い場合には、周波数fを一定として駆動電圧を増減させても、周波数fにおける変位は変化せず、走査領域の大きさを変えることができないことが分かる。
このように、実施例1に係る光走査装置によれば、捻れ梁30の中央部分に、軸方向と略平行にスリット31を設けることにより、非線形性を低減させることが可能となる。この場合、スリット31は、回転軸又は揺動軸と一致することになる。
なお、捻れ梁30にスリット31を、回転軸に対称に複数本設けることも可能である。しかしながら、回転軸対称にスリット31の数を2本、3本と増加させると、非線形性は更に弱まるが、軸梁としての剛性も弱まる。剛性を強化するために、ミラー支持部20の裏面にリブ21を多く設けると、今度は、ミラー重心は回転軸よりも厚さ下方向に移動し、振り子運動を発生させてしまう。よって、スリット31の数を増加させる場合には、剛性とのバランスを考慮しつつスリット31の数を増加することが必要である。なお、スリット31が1本だけの場合も、振り子運動自体は発生するが、捻れ梁30の捻れ剛性が十分に高いため、ミラー傾角が機械角±12degで揺動したときでも、振り子変位梁は微量であり、問題とはならない。
[応力分散による変位拡大構造]
図8は、実施形態1に係る光走査装置において、非線形振動対策として、捻れ梁30にスリット31を設けた場合に考慮すべき点について説明するための図である。図8(A)は、捻れ梁30に短いスリット131を設けた場合の表面側の拡大図であり、図8(B)は、捻れ梁30に短いスリット131を設けた場合の裏面側の拡大図であり、図8(C)は、捻れ梁30に短いスリット131を設けた場合の裏面側の応力分布を示した図である。
図8(A)、(B)には、捻れ梁30に設けたスリット131の端部が、ミラー支持部20の裏面に設けられたリブ121の端面と接している場合が示されている。かかる場合には、図8(C)に示すように、スリット31の端部に応力が集中して破損し易くなり、大きくミラー10を傾けることができないという問題を生じる。このような現象は、スリット131の端部がリブ121の端面に到達しない場合にも発生する。
図9は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20と捻れ梁30との連結部の構成の一例を示した図である。図8で説明したスリット31の端部への応力集中の発生を防止するために、実施形態1に係る光走査装置においては、図9に示す構成を採用する。
図9(A)は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20と捻れ梁30との連結部の表面側の構成を示した図であり、図9(B)は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20と捻れ梁30との連結部の裏面側の構成の一例を示した図である。
図9(A)において、捻れ梁30に設けられたスリット31の端部31Eは、ミラー支持部20の裏面のリブ21の外側端よりも内側に食い込んでおり、スリット31からリブ21の一部が露出した構成となっている。このように、スリット31の端部31Eを、リブ21の外側端よりも内側に到達させることにより、スリット31の端部31Eをリブ21が補強するような構造となり、スリット31の端部31Eで発生した応力をリブ21で吸収し、緩和することができる。
なお、図9(A)において、ミラー10と捻れ梁30との間に、黒色レジスト32の薄膜が形成されている。黒色レジスト32は、ミラー10を超える範囲で光が照射されたときに、ミラー10よりも外側の捻れ梁30との間から光が反射されるのを防ぐために形成されている。黒色レジスト32は、例えば、塗布により形成されてよい。
図9(B)に示すように、ミラー支持部20と捻れ梁30との連結部に存在する連結リブ22の内側まで、スリット31が到達した構造となっていることが分かる。
図10は、実施形態1に係る光走査装置において、捻れ梁30のスリット31の端部31Eにおける応力分布を示した図である。図10において、スリット31の端部31Eに発生した応力は、端部31Eに集中するのではなく、捻れ梁30中に分散していることが示されている。図8(C)と比較すると、その差が明確となる。
このように、捻れ梁30に設けたスリット31のミラー支持部20側の端部を、リブ21の外側端面よりも内側に到達させ、ミラー10側に食い込んだ構成とすることにより、スリット端部31Eに発生した応力をスリット端部31E以外に分散することができ、大きな変位でミラー10を傾けることが可能となる。
[ミラー変形防止構造]
図11は、ミラー変形防止構造の無い構成の光走査装置におけるミラーの変形分布と応力分布の一例を示した図である。図11(A)は、ミラー変形防止構造が無い構成の光走査装置のミラー10の変形分布の一例を示した図であり、図11(B)は、ミラー変形防止構造が無い構成の光走査装置のミラー10の応力分布の一例を示した図である。
図11(A)において、ミラー10の中心を通る上下が揺動軸となっている。図11(A)に示すように、揺動軸に直交する直径上の中心から最も遠い部分、及びその間の揺動軸に対称な部分の変形が大きくなっている。
図11(B)において、ミラー10の中心を通る上下が揺動軸となっている点は、図11(A)と同様である。図11(B)から、ミラー10に発生する応力が大きい部分は、捻れ梁30との連結部であることが分かる。
図12は、実施形態1に係る光走査装置のミラー変形防止構造を説明するための図である。図12において、ミラー10の変形の大きい部分がA〜Fで示されている。実施形態1に係る光走査装置においては、このような、ミラー10の変形が大きい部分を結ぶリブ21をミラー支持部20の裏面に設け、更に捻れ梁30とミラー支持部20との境界の連結部にリブ21を設けることにより、最小のリブ数で最大のミラー変形防止効果を得る。
図13は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20の裏面のリブ構造を示した図である。図13(A)は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20のリブ構造を示した斜視図であり、図13(B)は、実施形態1に係る光走査装置のミラー支持部20のリブ構造を示した平面図である。
図13(A)、(B)において、図12に示した応力の大きいA〜F点を結ぶように、リブ21が設けられている。具体的には、図12のAとB、CとDを各々円弧状に結ぶ円弧状リブ23と、円弧状リブ23の両端を結んで円弧状リブ23を強化する弦状リブ24と、EとFを揺動軸に直交する方向に結ぶ横断リブ26、AとC、BとDを揺動軸に平行な方向で結ぶ縦断リブ25とを備える。かかるリブ23〜26により、ミラー10の変形を直接的に抑制することができる。
しかしながら、図11(B)に示したように、捻れ梁30の応力はミラー支持部20との連結部からミラー10に至り、ミラー10を変形させる作用を及ぼすと考えられるので、応力の対策も必要である。そこで、本実施形態に係る光走査装置においては、捻れ梁30とミラー支持部20との連結部にも連結リブ22を設けている。更に、図13(B)に示すように、連結リブをミラー10の端部よりも捻れ梁30側に突出させ、捻れ梁30からの応力の伝達を効果的に阻止している。かかる連結リブ22の突出部は、回転軸(又は揺動軸)付近にあるので、慣性は増加せず、高速駆動に有利な構造となっている。
図14は、実施形態1に係る光走査装置のミラー変形量及び応力分布の一例を示した図である。図14(A)は、実施形態1に係る光走査装置のミラー変形量の一例を示した図である。図14(A)に示すように、ミラー変形防止構造としてミラー支持部20の裏面にリブ21を設けた場合には、ミラー10の変形量が殆ど皆無となっており、十分に平坦となっていることが分かる。
図14(B)は、実施形態1に係る光走査装置の応力分布を、連結リブ22の突出部を含めて示した図である。図14(B)に示すように、ミラー10の端部よりも捻れ梁30側にリブ21(連結リブ22)を突出させることで、突出部に応力が集中して捻れ梁30の応力緩衝部となっていることが分かる。
図14(C)は、ミラー10の面内の応力分布を示した図である。図14(C)に示すように、ミラー10の面内では、応力は殆ど発生しなくなっている。これは、図14(B)で示したように、捻れ梁30からの応力が連結リブ22の突出部で吸収され、ミラー10まで伝達しないような構成となっているからである。
(実施例2)
図15は、本発明の実施例2に係る光走査装置の構成及び実施結果を示す図である。図15(A)は、実施例2に係る光走査装置の捻れ梁30の断面構成を示した図である。図15(A)に示すように、捻れ梁30の中央には、スリット31が設けられ、スリット31の両側に正方形に近い断面形状の捻れ梁30L、30Rが形成されている。左側の捻れ梁30L及び右側の捻れ梁30Rは、等しい断面構成を有しており、幅をW、厚さをTで表すものとする。
図15(B)は、実施例2に係る光走査装置の裏面の平面構成を示した図である。図15(B)に示すように、実施例2に係る光走査装置は、図13において説明した実施形態1に係る光走査装置と同様の構成を有し、ミラー10の外周よりも捻れ梁30側に突出した連結リブ22を有しており、連結リブ22のミラー10からの突出量をX[mm]で表すものとする。
図15(C)は、連結リブ22の突出量Xと、最大傾角時のミラー平面度λ及び非線形係数βとの関係を示した図である。図15において、Wは捻れ梁片側幅、Tは捻れ梁厚さ、W/Tは捻れ梁片側の角型比、Xはリブ突出量、λは最大傾角時のミラー平面度、βは非線形係数を表すものとする。また、実線で示された特性はミラー平面度λを示し、破線で示された特性は非線形係数βを示している。
図15(C)の破線で示された特性において、捻れ梁の角型比W/Tが小さく1に近付き(正方形に近付き)、突出量X[mm]が小さくなる程、非線形係数βは小さくなる。しかしながら、非線形線係数βの値は、リブ突出量Xが変化しても、比較的変化は小さい。
一方、図15(C)の実線で示された特性において、ミラー平面度λは、W/T=1.8、X=0.1[mm]付近で極小値となる。X=0.1[mm]では、非線形係数βは必ずしも最適値ではないが、上述のように、非線形係数βの変化はそれ程大きくないことと、リブ21を突出させる構成は、ミラー変形防止を目的としていることに鑑み、W/T=1.8、X=0.1[mm]を最適値とする。
図15(D)は、捻れ梁30の角型比W/Tと、最大傾角時ミラー平面度λ、最大傾角時軸梁最大応力σ及び非線形係数βとの関係を示した図である。図15(D)においては、図15(C)の結果から、突出量XをX=0.1[mm]に固定している。そして、捻れ梁30の片側30R、30Lの角型比W/Tを変化させ、最大傾角時ミラー平面度λ、最大傾角時軸梁最大応力σ及び非線形係数βの変化を測定した。
図15(D)に示されるように、非線形係数βは、W/Tが小さくなり、1に近付く程(正方形に近付く程)小さくなった。これは、捻れ梁30の片側30R、30Lを正方形に近付けるのは、本来的に非線形対策として行っているので、当然の結果とも言える。
一方、最大傾角時のミラー平面度λは、W/T=1.76で極小値をとる。また、最大傾角時軸梁最大応力σは、W/Tが大きくなる程小さくなるが、最大応力σが、捻れ梁30の許容応力以下であれば問題はない。図15(D)に示された最大傾角時軸梁最大応力σは、総て問題の無い値となっている。
図15(C)より、リブ突出量Xの最適範囲は、0.05≦X≦0.15[mm]となり、X=0.1[mm]が最適値となる。
また、図15(D)に示される最大傾角時軸梁最大応力σ及び非線形係数βの特性から、W/Tの最適範囲は、1.7≦W/T≦1.9となり、W/T=1.76が最適値となる。
このように、リブ突出量X及び捻れ梁30の片側30R、30LのW/Tを調整することにより、捻れ梁30に加わる最大応力σを問題無い大きさにしつつ、ミラー平面度λ及び非線形係数βを低減させることができる。
[水平駆動時の垂直駆動梁へのクロストーク防止構造]
図16は、実施形態1に係る光走査装置において、裏面にリブを有しない可動枠160を用いた場合に発生するクロストークを説明するための図である。図16(A)は、裏面にリブを有しない可動枠160を用いた光走査装置の表面側の構成を示した斜視図であり、図16(B)は、裏面にリブを有しない可動枠160を用いた光走査装置の裏面側の構成を示した図であり、図16(C)は、裏面にリブを有しない可動枠160を用いた光走査装置の水平駆動状態を示した図である。
図16(A)、(B)に示されるように、裏面にリブを有しない可動枠160で光走査装置を構成した場合には、可動枠160も他の梁と同じ厚さの梁として構成される。
図16(C)に示されるように、裏面にリブを有しない可動枠160で光走査装置を構成した場合には、捻れ梁30の水平駆動により、垂直駆動梁である第2の駆動梁70は大きく変形してしまう。つまり、水平駆動時に垂直駆動に影響を与える、いわゆるクロストークが発生してしまう。
図17は、裏面にリブを設けた可動枠60を用いた場合でも発生するクロストークを説明するための図である。図17(A)は、裏面にリブを設けた可動枠60を用いた光走査装置の表面側の構成を示した斜視図であり、図17(B)は、裏面にリブを設けた可動枠60を用いた光走査装置の裏面側の構成を示した斜視図であり、図17(C)は、裏面にリブを設けた可動枠60を用いた光走査装置の水平駆動状態を示した図である。
図17(A)、(B)に示すように、裏面にリブを設けた可動枠60を用いることにより、可動枠60は厚みを有し、剛性の高い枠として構成される。
しかしながら、図17(C)に示すように、第1の駆動梁50を用いて水平駆動させると、垂直駆動梁である第2の駆動梁70に変形がやはり生じてしまう。
図18は、実施形態1に係る光走査装置の水平駆動時の垂直駆動梁へのクロストーク防止構造について説明するための図である。図18(A)は、実施形態1に係る光走査装置の表面側の構成を示した斜視図であり、図18(B)は、実施形態1に係る光走査装置の裏面側の斜視図であり、図18(C)は、実施形態1に係る光走査装置のクロストーク防止構造の拡大図である。
図18(A)に示されるように、光走査装置の表面側には特にクロストーク防止構造は設けられていない。
一方、図18(B)に示されるように、実施形態1に係る光駆動装置の裏面側には、リブを有する可動枠60が設けられるとともに、第2の駆動梁70と可動枠60との連結部80に、複数のクロストーク防止リブ81〜83が設けられている。なお、図18(B)において、第2の駆動梁70には、可動枠60との連結部80以外にもリブ72が設けられているが、これは、垂直方向に駆動した場合の高調波重畳防止用リブ72であり、クロストーク防止用のリブとは異なる。なお、高調波重畳防止用リブ72は、例えば、第2の駆動梁70が60Hzで駆動している場合に、120Hz、240Hz、360Hz等の60Hzの倍数の周波数の高調波が重畳する場合があるので、そのような高調波の重畳を防止する目的で設けられている。
図18(C)に示されるように、可動枠60と第2の駆動梁70との連結部80は、水平駆動の軸方向及び当該軸方向に直交する方向に延在する複数のクロストーク防止リブ81〜83を有する。クロストーク防止リブ81は、捻れ梁30及び第2の駆動梁70と平行に、可動枠60から連続して延びているリブである。また、クロストーク防止リブ82は、高調波重畳防止用リブ72と対称に、第2の駆動梁70の幅方向に延在して設けられている。クロストーク防止リブ83は、クロストーク防止リブ82と平行に、可動枠60から連続して延びて設けられている。また、クロストーク防止リブ81、83で、可動枠60の外側に、三角形の窪み84が形成された構成となっている。
このように、垂直駆動梁である第2の駆動梁70の端部と可動枠60との間にクロストーク防止リブ81〜83を設けることにより、水平駆動時の振動が、第2の駆動梁70に伝達するのを防止することができる。特に、クロストーク防止リブ81とクロストーク防止リブ83で三角形84を形成することにより、三角形84の部分で水平駆動により発生する応力を吸収し、垂直駆動梁である第2の駆動梁70への影響を低減させることができる。
図19は、クロストーク防止リブ81〜83を有する実施形態1に係る光走査装置の水平駆動時の応力分布を示した図である。図19に示すように、水平駆動しているミラー10には応力が働いているが、垂直駆動梁である第2の駆動梁70には、応力が発生していない。このように、垂直駆動梁端と可動枠60との間にクロストーク防止リブ81〜83を設けることにより、水平共振駆動時の揺動振動の垂直駆動梁への伝搬を遮断することができる。
[周波数変動防止構造]
図20は、実施形態1に係る光走査装置に形状が類似しているが、周波数変動防止構造を有していない光走査装置の駆動による周波数変動を説明するための図である。図20(A)は、周波数変動防止構造を有していない光走査装置の平面構成を示した図である。図20(A)において、周波数変動防止構造を有していない光走査装置は、可動枠60の内壁面から、水平方向の共振駆動梁150が延びた形状を有している。共振駆動梁150は、可動枠60の内壁面から、長さLで垂直に延びている。
図20(B)は、図20(A)に示した周波数変動防止構造を有していない光走査装置の可動枠60及び共振駆動梁150の断面構成を示した図である。図20(B)に示すように、可動枠60は、厚いシリコン基板を含むSOI基板全体で構成され、共振駆動梁150は、酸化膜61を介して薄いシリコン基板で構成される。また、共振駆動梁150は、表面に圧電素子の薄膜からなる駆動源151を備えている。このように、可動枠60のように、リブを有する部分は、裏面の厚いシリコン基板、酸化膜、表面の薄いシリコン基板が積層されたSOI基板全体で構成される。また、共振駆動梁150のように、梁を構成する部分は、表面の薄いシリコン基板のみで構成される。この点は、実施形態1に係る光走査装置も同様である。
図20(C)は、共振駆動梁150を駆動させた状態を示した図である。駆動源151が伸縮を駆動電圧の極性に応じて繰り返し、共振駆動梁150が上下に振動する。このとき、共振駆動梁150と可動枠60に挟まれている酸化膜61は、上下駆動の起点になり、また酸化膜61は弾性の少ないガラスのような部材であるので、脆性が高く、壊れやすい。よって、共振駆動梁150の上下駆動によりクラック62が発生し、破損することがある。
図20(D)は、共振駆動梁150の積算駆動時間と共振周波数変化率との関係の一例を示した図である。図20(D)に示すように、共振駆動梁150の連続駆動を行うと、ある時間Tcで酸化膜61の起点にクラック62が入り、見掛け上の共振駆動梁150の長さLが(L+α)に増大し、周波数が低い方にシフトして変動しまう。
図21は、周波数変動防止構造を有しない光走査装置の水平駆動時の応力分布を示した図である。図21(A)は、周波数変動防止構造を有しない光走査装置の水平駆動時の表面側の応力分布を示した図であり、図21(B)は、周波数変動防止構造を有しない光走査装置の水平駆動時の裏面側の応力分布を示した図であり、図21(C)は、周波数変動防止構造を有しない光走査装置の水平駆動時の裏面側の応力分布の駆動梁の起点部分の拡大図である。
図21(A)、(B)に示すように、共振駆動梁150は、可動枠60から垂直に延びた状態で接合している。また、図21(C)に示すように、可動枠60の共振駆動梁150の起点となる根元部分63に、応力が発生し易い状態となっていることが分かる。
図22は、実施形態1に係る光走査装置の第1の周波数変動防止構造を説明するための図である。図22(A)は、周波数変動防止構造を有する本実施形態に係る光走査装置の平面構成を示した図である。図22(A)において、第1の駆動梁50の可動枠60と接合する根元部分52が、可動枠60の内周壁面に垂直に連結されずに、可動枠60の手前で丸め構造を有する湾曲形状部53が形成され、湾曲形状部53を介して可動枠60に連結された構成となっている。つまり、第1の駆動梁50の平面形状は、可動枠60と連結梁40とを結ぶ側辺の可動枠60寄りで可動枠60に達しない位置に、内側に凹んだ湾曲形状部53を有した形状となっている。
図22(B)は、図22(A)に示した根元部分52の拡大図である。図22(B)において、可動枠60と第1の駆動梁50との境界部である起点64から、距離Dだけ離れた箇所に、内側に凹んだ湾曲形状部53が形成されている。湾曲形状部53は、応力を分散させて緩和させる効果があるので、これを可動枠60の起点64よりも内側に形成することにより、起点64に集中する応力を湾曲形状部53に分散させることができる。これにより、可動枠60の酸化膜61の部分を保護し、連続駆動が行われても壊れにくくすることができる。
図23は、第1の周波数変動防止構造を有する実施形態1に係る光走査装置の水平駆動時の応力分布を示した図である。図23(A)は、実施形態1に係る光走査装置の水平駆動時の第1の駆動梁50の表面側の応力分布を示した図であり、図23(B)は、実施形態1に係る光走査装置の水平駆動時の第1の駆動梁50の裏面側の応力分布を示した図である。図23(A)、(B)において、第1の駆動梁50の根元部分52に、湾曲形状部53が形成されている。
図23(C)は、図23(B)に示した第1の駆動梁50の根元部分52を拡大した図である。図23(C)において、起点64よりも内側で、連結梁40よりも可動枠寄りの位置に、湾曲形状部53が形成されている。応力分布は、湾曲形状部53よりも内側寄りに発生しており、起点64の部分には到達していないことが示されている。ここで、起点64と湾曲形状部53の最も起点64寄りの位置との距離Dは、小さ過ぎると上下駆動の起点64から発生応力を隔離することができず、大き過ぎるとミラー10の揺動感度が低下し、仕様を満たせなくなるおそれがある。よって、距離Dを適切な値に設定する必要があり、例えば、0.1[mm]に設定してもよい。
図24は、実施形態1に係る光走査装置の共振駆動による積算駆動時間と、共振周波数変化率を示した図である。図24で示されるように、図20(D)の例とは異なり、積算駆動時間が長くなっても、共振周波数変化率は一定で、共振周波数が一定に保たれることが示されている。
このように、実施形態1に係る光走査装置によれば、共振駆動を行う第1の駆動梁50の平面形状を、可動枠60と連結梁40とを結ぶ側辺において、可動枠60寄りで可動枠60に達しない位置に、内側に凹んだ湾曲形状部53を形成することにより、可動枠60と第1の駆動梁50との境界の起点64への応力の集中を防ぎ、可動枠60の酸化膜61の破損を防いで駆動周波数を一定に保つことができる。
図25は、第1の周波数変動防止構造に加えて、第2の周波数変動防止構造を更に有する実施形態1に係る光走査装置を説明するための図である。図25(A)は、第1及び第2の周波数変動防止構造を有する実施形態1に係る光走査装置の表面側の平面構成図であり、図25(B)は、第1及び第2の周波数変動防止構造を有する実施形態1に係る光走査装置の裏面側の平面構成図である。図25(A)、(B)において、第1の駆動梁50の側辺が、湾曲形状部53のみでなく、ミラー10側に切り込まれた括れ部54を有する点で、図22及び図24に示した形状と異なっている、このように、湾曲形状部53だけでなく、内側に削れた括れ部54を設けることにより、更に第1の駆動梁50の応力を更に内側に移動させて分散させることができる。
図25(C)は、実施形態1に係る光走査装置の可動枠60の内側を拡大した平面図であり、図25(D)は、第1の駆動梁50の側辺部の応力分布を示した拡大図である。図25(C)に示されるように、第1の駆動梁50は、湾曲形状部53と、括れ部54が連続して第1の駆動梁50の側辺部を構成している。また、図25(D)に示されるように、ミラー10近くの連結梁40寄りに括れ部54を設けたことにより、括れ部54の方に応力がシフトしており、可動枠60側の根元には応力が非常に低減されていることが分かる。つまり、括れ部54を可動枠60の起点64から離間させて形成することにより、起点64への応力を括れ部54へと大きく移動させ、起点64の応力を極めて小さくすることができる。
図26は、各態様の光走査装置の応力分布を比較して示した図である。図26(A)は、周波数変動防止構造を設けない光走査装置の応力分布を示した図であり、図26(B)は、第1の周波数変動防止構造のみを設けた光走査装置の応力分布を示した図であり、図26(C)は、第1及び第2の周波数変動防止構造を設けた実施形態1に係る光走査装置の応力分布を示した図である。
図26(A)においては、応力が共振駆動梁150の根元の起点64に加わってしまっており、起点64は破損のおそれがある応力分布を示している。
一方、図26(B)においては、湾曲形状部53を起点64よりも内側に設けたことにより、湾曲形状部53より内側に応力が発生し、起点64に応力が到達することを防ぐことができている。
更に、図26(C)においては、括れ部54をミラー10側、つまり連結梁40側に設けたことにより、応力を括れ部54に移動させ、湾曲形状部53よりも外側には殆ど応力を発生させていない。
図27は、図26で示した各周波数変動防止構造について、第1の駆動梁50の根元における応力測定結果を示した図である。図27に示すように、周波数変動防止構造を有しない(A)の梁形状に比較して、第1の周波数変動防止構造を設けたことにより、(B)の梁形状は大幅に根元の応力を低下させている。また、第2の周波数変動防止構造を更に設けることにより、(C)の梁形状は、(B)の梁形状よりも更に根元の発生応力を低減させている。
このように、湾曲形状部53及び括れ部54の周波数防止構造を第1の駆動梁50に設けることにより、可動枠60の起点64の酸化膜61の破損を防ぎ、長時間の連続駆動を行った場合にも、周波数を一定に保って駆動することができる。
〔実施形態2〕
図28は、本発明の実施形態2に係る光走査装置の一例を示した図である。実施形態2に係る光走査装置においては、ミラー支持部20の裏面に設けられたリブ21Aの構造のみが実施形態1に係る光走査装置と異なっている。よって、その他の構成要素については、今までの説明と同一の参照符号を用いるとともに、その説明を省略する。
実施形態2に係る光走査装置のリブ21Aは、連結リブ22A、円弧状リブ23A、弦状リブ24A、縦断リブ25A及び横断リブ26Aについては、実施形態1に係る光走査装置と同様の構成を有している。実施形態2に係る光走査装置は、縦断リブ25Aを延長させた貫通リブ27Aが弦状リブ24Aと交差し、更に円弧状リブ23Aの内壁まで到達している点で、実施形態1に係る光走査装置と異なっている。
実施形態2に係る光走査装置によれば、弦状リブ24Aを貫き、円弧状リブ23Aに到達する貫通リブ27Aを更に設けたことにより、ミラー10の変形を更に抑制させることができる。
〔実施形態3〕
図29は、本発明の実施形態3に係る光走査装置の一例を示した図である。実施形態3に係る光走査装置のリブ21Bにおいては、縦断リブ25B及び貫通リブ27Bが、AとD、BとCを各々結び、X状にクロスしている形状を有する点で、実施形態2に係る光走査装置と異なっている。他の連結リブ22B、円弧状リブ23B、弦状リブ24B、横断リブ26Bについては、実施形態2に係る光走査装置の対応リブと同様の構成を有しているので、その説明を省略する。
実施形態3に係る光走査装置によれば、斜めの応力にも強いミラー変形防止構造とすることができる。
〔実施形態4〕
図30は、本発明の実施形態4に係る光走査装置の一例を示した図である。実施形態4に係る光走査装置のリブ21Cにおいては、連結リブ22C、円弧状リブ23C及び弦状リブ24Cが、1つの大きな塊となって形成されている点で、実施形態1及び2とは異なっている。このように、連結リブ22Cを、円弧状リブ23C及び現状リブ24Cと一体的に構成してもよい。より強固にミラー支持部20を補強するので、ミラー変形を防止する効果を確実に高めることができる。なお、縦断リブ25C及び横断リブ26Cの構成については、実施形態1及び2と同様であるので、その説明を省略する。
〔実施形態5〕
図31は、本発明の実施形態5に係る光走査装置の一例を示した図である。実施形態5に係る光走査装置のリブ21Dにおいては、連結リブ22D、円弧状リブ23D及び弦状リブ24Dが、1つの大きな塊となって形成されている点で、実施形態3と異なっている。この場合においても、より強固にミラー支持部20を補強するので、ミラー変形を防止する効果を確実に高めることができる。なお、縦断リブ25D及び横断リブ26Dの構成については、実施形態3と同様であるので、その説明を省略する。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。