JP5386215B2 - 放射性廃液の処理方法および処理装置 - Google Patents
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Description
例えば、アメリカ合衆国エネルギー省(United States Department of Energy、DOE)では、Naイオン電導体膜(NASICON膜、Na Super Ionic Conductor)あるいは有機性陽イオン交換膜を用いて、硝酸ナトリウムを主成分とする放射性廃液からナトリウムイオン(Na+)を分離する方法が検討されており、Naイオン電導体膜あるいは有機性陽イオン交換膜が、ナトリウムイオンを水酸化ナトリウム(NaOH)として回収可能なことが実証されている。
ナトリウム選択透過膜を用いた電気透析法により、放射性物質を含む廃液および/または放射性物質を含まない廃液からナトリウムを回収する技術としては、非特許文献1〜4などの論文が公表され、公知の技術となっている。
この技術では、陽極室に対象とする廃液を供給し、陰極室に水酸化ナトリウム水溶液を充填し、電解槽の陽極室と陰極室の隔膜としてNASICON膜を用いて、電気透析を行うことにより、ナトリウムイオンを陽極室から陰極室へ移動させている。
また、非特許文献1〜4では、多種の放射性核種を含む放射性廃液から、ナトリウムと同族であるセシウム137(Cs−137)を含まず、ナトリウムのみを分離し、回収することができる旨の報告がなされている。
非特許文献5〜8、および、特許文献1、2では、触媒および還元剤を使用して硝酸ナトリウム廃液中の硝酸イオンを分解するが、触媒の種類によって還元生成物の種類が異なる。触媒の種類を変えて、第一段階においてCu−Pd/AC触媒により硝酸イオン(NO3 −)を亜硝酸イオン(NO2 −)とし、第二段階においてCu/βアルミナ触媒により亜硝酸イオンを窒素(N2)に還元する。原子力施設では、爆発性ガスの使用は好まれないため、ヒドラジン(N2H4)やホルムアルデヒド(HCOH)などの還元剤が用いられる。
例えば、高濃度のナトリウム塩を含む放射性廃液からナトリウムおよび酸を回収して、この廃液の減容化、並びに、ナトリウムおよび酸の再利用を図るために、陽電極と陰電極の間に、二枚のバイポーラ膜を配置し、このバイポーラ膜間の陽電極側に陰イオン交換膜、陰電極側にナトリウムイオン選択透過膜をそれぞれ配置して電気透析を行うことにより、ナトリウム塩を含む放射性廃液からナトリウムイオンを水酸化ナトリウムとして、陰イオンを酸として、それぞれに分離し、回収する放射性廃液が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、陽極室には、放射性核種を含んだ硝酸が生成するため、減容化の観点からは、さらに硝酸を処理する必要がある。また、厚みが数mmの非常に薄いナトリウムイオン選択透過膜を介して、強アルカリと強酸の液が存在することになるため、透過膜が破損した時の化学的危険性が非常に高いという問題がある。
また、この電気透析法により、低レベル放射性濃縮廃液から放射性核種を含まない水酸化ナトリウムを分離し、回収することができるものの、硝酸の生成によって、水酸化ナトリウムの回収が効率的に進まないという問題があった。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
この実施形態の放射性廃液の処理装置(以下、「放射性廃液処理装置」と言う。)10は、還元装置11と、電気透析装置12と、放射性廃液貯留槽17と、蒸発装置18と、復水受槽19と、濃縮液受槽20と、pH計測装置21と、循環槽22と、陰極液受槽23とから概略構成されている。
また、電気透析装置12は、透過膜13、この透過膜13を介して設けられた陽極室14および陰極室15からなる電解槽16、並びに、陽極室14内に設置された陽電極(図示略)および陰極室15内に設置された陰電極(図示略)を備えている。すなわち、陽電極と陰電極は、透過膜13の両側にそれぞれ設置されている。
還元剤を用いる化学反応による処理方法を用いた装置としては、例えば、硝酸ナトリウムを含む放射性廃液に、還元剤として、ヒドラジン(N2H4)および/またはギ酸(HCOOH)を投与して、硝酸ナトリウムの還元反応(塩転換反応)を進行させる装置が挙げられる。
電気透析装置12の陽電極としては、寸法安定電極(Dimensionally Stable Electrode、DSE)、白金めっきしたチタン電極などが用いられる。
電気透析装置12の陰電極としては、白金めっきしたチタン電極などが用いられる。
このpH計測装置21は、電気透析装置12における放射性廃液の電気透析により陽極室14にて分離され、回収されて、陽極室14から還元装置11に供給される放射性物質濃縮溶液のpHを計測するためのものである。
また、pH計測装置21としては、上記のものの他、還元装置11内のpHまたは陽極室14の入口のpHを測定するものであってもよく、電気透析工程において陽極室14にて回収された放射性物質濃縮溶液のpH、還元装置11内のpHおよび陽極室14の入口のpHのうち2ヶ所以上のpHを測定するものであってもよい。
詳細には、放射性廃液は、硝酸ナトリウムを主成分とし、放射性核種を含む液であるから、この廃液還元工程における還元(塩転換)処理は、放射性廃液に含まれる硝酸ナトリウムを部分的に還元して、放射性廃液を、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種を含む還元液とする処理である。
還元剤を用いる化学反応としては、硝酸ナトリウムを含む放射性廃液に、ヒドラジン(N2H4)および/またはギ酸(HCOOH)を投与することによる還元反応が用いられることが好ましい。
さらに、還元剤を用いる化学反応による処理方法であって、触媒存在下において処理する方法としては、例えば、パラジウム−銅触媒が共存する中で硝酸ナトリウムを含む廃液に還元剤を投与し、硝酸イオンを窒素に還元させる反応が挙げられる。
廃液還元工程において、放射性廃液への還元剤の供給速度は特に限定されないが、放射性廃液に含まれる硝酸ナトリウムの量に応じて、この工程において生成される還元液のpHが、電気透析装置12における電気透析に適した範囲内となるように適宜調整される。
このようにすれば、廃液還元工程において生成される還元液のpHが、電気透析装置12における電気透析に適した範囲内となる。
なお、ナトリウムイオン回収速度は、処理の対象となる放射性廃液の容量(規模)に応じて設定するので、放射性廃液への還元剤の供給速度は、そのナトリウムイオン回収速度に応じて、適宜調整される。
このようにすれば、廃液還元工程において生成される還元液のpHが、電気透析装置12における電気透析に適した範囲内となるように適宜調整される。
廃液還元工程にて生成する還元液、すなわち、電気透析装置12における電気透析工程に供給される還元液のpHが上記の範囲内であれば、電気透析工程において、ナトリウムイオン(Na+)の分離を常に高効率に維持することができるので、放射性廃液の処理を連続的に行うことができる。還元液のpHが10未満では、陽極室14の陽電極と、陰極室15の陰電極との間に印加する電圧が上昇するため、透過膜13の抵抗が大きくなるので、ナトリウムイオンが透過膜13を透過し難くなり、ナトリウムイオン(Na+)の分離効率が低下し、放射性廃液の処理を連続的に行えなくなるおそれがある。また、このように陽極室14の陽電極と、陰極室15の陰電極との間に印加する電圧が上昇すると、消費電力が増加するので、放射性廃液処理のプロセスとしての価値が下がる。
ここで、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種を高濃度に含有する還元液とは、具体的に、水酸化ナトリウムを1mol/L以上含有し、好ましくは水酸化ナトリウムを1mol/L以上、35mol/L以下含有する液、または、炭酸水素ナトリウムを1mol/L以上含有し、好ましくは炭酸水素ナトリウムを1mol/L以上、3mol/L以下含有する液、または、炭酸ナトリウムを0.5mol/L以上含有し、好ましくは炭酸ナトリウムを0.5mol/L以上、4mol/L以下含有する液である。
電気透析を行う際の電気透析装置12の電解槽16(陽極室14および陰極室15)の温度は、還元液に含まれるナトリウム塩の種類や濃度に応じて適宜設定されるが、室温(20℃)以上、100℃以下とすることが好ましい。
4OH−→2H2O+O2↑+4e− (1)
また、還元液に含まれる炭酸水素ナトリウムまたは炭酸ナトリウムは、電気透析中において、ナトリウムイオンの分離、回収の進行に伴って、陽極室14内の放射性廃液のpHが一時的に低下するため、それぞれ炭酸水素イオン(HCO3 −)または炭酸イオン(CO3 −)が二酸化炭素として陽極室14から排出され、結果として水として回収される。この時、陽極室14において、下記の式(2)に示す炭酸水素イオンに関する化学反応が進行する。
2HCO3 −+2OH−→2H2O+2CO2↑+O2↑+4e− (2)
また、陽極室14において、下記の式(3)、(4)に示す炭酸イオンに関する化学反応が進行する。
CO3 −+H2O→HCO3 −+OH− (3)
2HCO3 −+2OH−→2H2O+2CO2↑+O2↑+4e− (4)
このようにすれば、電気透析工程において、ナトリウムイオン(Na+)の分離を常に高効率に維持することができる。
例えば、印加する電流密度としては、25mA/cm2以上、200mA/cm2以下とすることが好ましく、より好ましくは50mA/cm2以上、100mA/cm2以下である。
なお、放射性物質濃縮溶液には、透過膜13を透過しない放射性物質が残留するため、この放射性物質は放射性物質濃縮溶液とともに、還元装置11に戻される。
一方、循環槽22に残された水酸化ナトリウム水溶液は、所定濃度に希釈され、再び陰極室15へ送り込まれ、電気透析装置12における放射性廃液の電気透析に用いられる。
そして、この分離、回収された放射性核種は、濃縮液受槽20へ送り込まれ、再び還元装置11に送り込まれる。
また、放射性廃液に含まれる硝酸ナトリウムを塩転換処理してナトリウム塩を生成し、このナトリウム塩を含む放射性廃液の電気透析を行うので、放射性核種を含む酸(硝酸)などが発生せず、濃縮された放射性廃液の処理を簡素化することができる。さらに、硝酸ナトリウムを塩転換処理してナトリウム塩を生成することにより、硝酸イオンに起因する環境負荷をなくすことができる。
Pd−Cu触媒を充填した還元装置の触媒槽に、ヒドラジン(N2H4・H2O)を、供給速度7g/h(0.15mol/h)で供給し、上記の反応溶液に含まれる硝酸イオンを部分的に還元して、還元液としながら、ポンプを使用して、この還元液を抜き出して、電気透析装置の陽極室に供給するとともに、陽極室から還元装置の触媒槽に戻す操作を繰り返して、還元液(反応溶液を含む)を循環させた。
また、陽極室内における還元液の温度を65℃に制御した。
また、透過膜に対する還元液の供給圧力を0.01MPaとした。
図2は、陽極室における還元液のpHを測定した結果を示したグラフである。
図2に示したグラフの結果から、試験開始から5時間後にpHの僅かな減少が見られるが、これは、ヒドラジンの供給量が経時的に減少したためであると考えられる。そこで、これ以降、ヒドラジンの供給量を増加させて、その供給量を一定に制御することにより、還元液のpHを一定に保ちながら、硝酸イオンの分解とナトリウムイオンの回収を行えることが確認された。
水酸化物イオンの生成量は、下記の反応式(5)に基づいて、測定により得られた硝酸イオンの減少量から求めた。
4NaNO3+5N2H4→7N2+4NaOH+8H2O (5)
このように、ナトリウムイオンの回収速度と水酸化物イオンの生成速度がほぼ等しいことが確認された。したがって、還元液のpHがほぼ一定のまま反応溶液を処理できたのは、電気透析による水酸化ナトリウムの回収速度と、触媒法による水酸化ナトリウムの生成速度がほぼ等しいことによるのが、実験的に示された。
その結果、水酸化ナトリウムの回収速度、あるいは、水酸化ナトリウムの生成速度を制御する、すなわち、ヒドラジンの供給速度、あるいは、陽電極と陰電極の間に流す電流値を制御することにより、pHを制御しながら、反応溶液を処理することが可能であることが確認された。
これにより、触媒法による水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種の生成速度と、電気透析によるナトリウムイオンの回収速度をあらかじめ設定することにより、処理中の還元液のpHを任意に設定できる。また、処理中の還元液のpHの調整は、ヒドラジンの供給速度(すなわち、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種の生成速度)、あるいは、陽電極と陰電極の間に流す電流値(すなわち、ナトリウムイオンの回収速度)を制御することにより可能となる。
Claims (9)
- ナトリウム塩を含有する放射性廃液の処理方法であって、
放射性廃液に含まれる硝酸ナトリウムを部分的に還元して、前記放射性廃液を、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種を含む還元液とする廃液還元工程と、
ナトリウムイオンを選択的に透過する透過膜を介して設けられ、陽電極が設置された陽極室と陰電極が設置された陰極室とを有する電解槽の前記陽極室に、前記還元液を供給して、前記還元液の電気透析を行う電気透析工程と、を有し、
前記電気透析工程にて、前記陰極室にて、前記透過膜を透過したナトリウムイオンを水酸化ナトリウムとして分離回収し、前記陽極室に残留した放射性物質を、放射性物質濃縮溶液として分離し、分離された前記水酸化ナトリウムおよび前記放射性物質濃縮溶液をそれぞれ回収し、
前記廃液還元工程における水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種の生成速度と、前記電気透析工程におけるナトリウムイオン回収速度を等しくすることを特徴とする放射性廃液の処理方法。 - 前記廃液還元工程にて、還元剤としてヒドラジンおよび/またはギ酸を用いる化学反応による処理方法を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記還元剤としてヒドラジンおよび/またはギ酸を用いる化学反応による処理方法が、触媒存在下において処理される方法であることを特徴とする請求項2に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記廃液還元工程において、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種の生成速度を、前記放射性廃液への前記還元剤の供給速度により制御することを特徴とする請求項2または3に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記廃液還元工程にて生成する前記還元液のpHを10以上とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記廃液還元工程において、前記放射性廃液への前記還元剤の供給速度を、前記電気透析工程において前記陽極室にて回収された放射性物質濃縮溶液のpH、前記放射性廃液を還元する還元装置内のpHおよび前記陽極室入口のpHのうち少なくとも1つを計測した計測値に基づいて制御することを特徴とする請求項5に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記電気透析工程において前記陽極室にて回収された放射性物質濃縮溶液を、前記廃液還元工程に供給することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の放射性廃液の処理方法。
- 前記電気透析工程において、ナトリウムイオン回収速度を、前記陽電極と前記陰電極の間に流す電流値により制御することを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の処理方法。
- ナトリウム塩を含有する放射性廃液の処理装置であって、
放射性廃液に含まれる硝酸ナトリウムを部分的に還元して、前記放射性廃液を、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種を含む還元液とする還元装置と、
前記還元液に含まれるナトリウムイオンを選択的に透過する透過膜、前記透過膜を介して設けられた陽極室および陰極室、並びに、前記透過膜の両側にそれぞれ設置された陽電極および陰電極を有する電気透析装置と、
前記陽極室にて回収され、前記陽極室から前記還元装置に供給される放射性物質濃縮溶液のpH、前記還元装置内のpHおよび前記陽極室入口のpHのうち少なくとも1つを計測するpH計測装置と、を備えたことを特徴とする放射性廃液の処理装置。
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