JP5365524B2 - ロボット動作規制方法およびロボットシステム - Google Patents
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Description
動作に際し、ロボットアームおよびその手首(そして、手首に備えられたワークやツール)は、制御装置のメモリに予め教示し記録された作業プログラム(ロボットを動作させ作業を実行するための手順が記述されたもの)により、周辺機器と干渉しないように、また無駄な動きにならないよう、所望の移動軌跡に沿って動作するようにされている。
しかし、ロボットアームや手首の動作により作業者などを危険に曝すような不測の事態が生じないように、ロボットの前記移動軌跡の外側には所定のマージンをおいて安全防護柵が配置されるのが通常である。
この安全防護柵は、ロボットの最大動作範囲の外部に設けられるものであるが、例えば、小物部品の搬送用途などでは、ロボットの作業のための動作範囲が狭いにもかかわらず、ロボットの最大動作領域の外部に安全防護柵を設けることは、ロボットの占有領域を広く確保することとなり、無駄である。そこで、ロボットの動作範囲をコンピュータによる制御で制限することも行われている。
例えば、特許文献1には、ロボット動作を規制するための領域を「仮想安全柵」としてメモリー上に定義し、ワークやツールを含むロボットの一部を内包する3次元空間領域を少なくとも2箇所以上定義し、この3次元空間領域の軌跡計算上での予測位置と仮想安全柵との照合を行い、一部でも仮想安全柵に接する場合に、ロボットを停止させる制御を行うことを特徴とするロボット動作規制方法が記載されている。
また、このような動作領域の監視の具体的な手段としては、例えば特許第3937080号(以降、参考文献1と称す)に、直方体として定義された干渉領域を、直方体の各面の4つの頂点を通る6つの外接球として内部表現し、外接球の中心位置とアーム各部との距離を求め、アームに設定した半径と外接球の半径から、干渉状態にあるかどうかを判断するという方法が提案されている。この方法によれば、コントローラのCPUにさほど負荷を与えることなく、リアルタイムでの干渉領域チェックが可能である。
これらの技術を用いることにより、安全防護柵などに頼らずにロボットの動作範囲を制限することが可能となり、安全防護柵をより狭く設置して、工場などの限られた床面積を有効に活用することが可能となる。
しかし、特許文献1では、結論から言うと惰走距離について考慮されていない。ここで充分に余裕を持った先読みを実時間で実施しようとした場合、非常に高いCPU能力が必要となり現実的ではない。
また、軌跡計算上は仮想安全柵に接触しないような動作パターンでも、何らかの異常事態(例えばライン非常停止や、サーボアンプの故障など)にて緊急停止した場合、各軸の惰走角度は、慣性力により生じる力のモーメントや重力モーメントの大小、ブレーキ能力の差異により、軸ごとに異なるため、惰走した位置は、本来想定されている動作軌跡から逸脱する。よってこの位置が仮想安全柵を越えてしまう可能性がある。
よって、ロボットを導入しようとするときに、この惰走量も考慮に入れた上で、安全防護柵と仮想安全柵の間のマージンを大きく確保する必要があり、スペースに無駄が生じることとなる。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、仮に緊急停止された場合に、各軸が惰走した位置が、動作禁止領域に進入する可能性がある場合に、その時点でロボットを停止させるか、または警告を発し、作業プログラムの修正を促すことにより、いかなる場合でもロボットが動作禁止領域に進入する事がないようにする。この作用によって、工場などの床面積や空間を無駄のない状態で有効に活用できるようにした、ロボット動作規制方法およびロボットシステムを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ロボットのアームと手首に備えたツール又は把持したワークを含めたアーム占有領域と、前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域と、をメモリー上に定義し、前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶しておき、演算周期毎に前記ワーク又はツールの目標位置を演算して前記ロボットの各軸の動作指令を生成する時に、次回の演算周期の前記ツール又はワークの目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する制御を行ない、進入が確認されなかった場合には、現在位置における各軸の角度と次回目標位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、次回目標位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記次回の演算周期の前記ツール又はワークの目標位置への動作指令に基づく前記ロボットの動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、各軸の惰走角度を次回の演算周期の前記各軸の前記動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求め、前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する制御を行なうことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を有し、前記ロボット制御装置は、前記ロボットのアーム又は前記ロボットの手首に備わるツール若しくは把持したワークに基づくアーム占有領域と前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域とを格納するとともに、前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶するメモリーと、演算周期毎に前記ツール又はワークの動作目標位置を求め前記ロボットの各軸の動作指令を生成する目標位置算出部と、前記目標位置算出部で求めた前記ツール又はワークの動作目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を出力する動作禁止領域進入監視部と、前記ロボットの動作を行なう駆動部と、を備え、前記停止要求で前記ロボットの動作を停止制御するロボットシステムにおいて、前記ロボット制御装置は、現在位置における各軸の角度と次回目標位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、次回目標位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記ツール又はワークの動作目標位置へ前記ロボットを動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、前記推定した各軸の惰走角度を前記各軸の動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが動作目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求める惰走予測位置算出部を備え、前記動作禁止領域進入監視部は、前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を更に出力することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記ロボット制御装置は表示装置を備える教示具と接続され、前記ロボットの動作を停止する停止要求で停止制御を行う時に、合わせて前記ロボットを停止する旨の表示を行うことを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記ロボット制御装置は表示装置を備える教示具と接続され、予め定められた制御方式が継続の設定であれば、前記停止要求で停止制御を行わず、前記ロボットを継続制御する旨の表示を行うことを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を有し、前記ロボット制御装置は、演算周期毎に手首に備えたツール又は把持したワークの動作目標位置を求め前記ロボットの各軸の動作指令を生成する目標位置算出部と、前記動作指令に基づいて前記ロボットの動作を行なう駆動部と、を備えたロボットシステムにおいて、前記ロボットのアーム若しくは前記ロボットの手首に備えたツール又は把持したワークに基づくアーム占有領域と前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域とを格納するとともに、前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶するメモリーと、前記ロボットの各軸に備わる位置検出器からモータの現在位置を読み取り、モータの現在位置から前記ロボットの現在位置を求め、モータの現在位置及びロボットの現在位置を記憶する現在位置検出部と、前記目標位置算出部で求めた前記ツール又はワークの動作目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を出力する動作禁止領域進入監視部と、前回位置における各軸の角度と現在位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、現在位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記ツール又はワークの動作目標位置へ前記ロボットを動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、前記推定した各軸の惰走角度を前記各軸の動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが動作目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求める惰走予測位置算出部と、を有し、前記動作禁止領域進入監視部は、前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を更に出力する動作領域監視装置を備えることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、前記メモリー、前記現在位置検出部、前記惰走予測位置算出部及び前記動作禁止領域進入監視部は前記ロボット制御装置とは独立していることを特徴とするものである。
また、請求項3及び4に記載の発明によると、動作制限の状態を作業者が確認することができ、作業者による確認を容易化することができる。
また、請求項5及び6に記載の発明によると、ロボットの動作監視する動作領域監視装置は、ロボットを制御するロボット制御装置より独立した構成となるので、ロボットの制御に関する改善(バージョンアップ)などを行っても、動作領域監視装置は影響を受けない構成となる。動作領域監視での安全性は、ロボットの制御に関係なく維持することができるので、例えば動作領域監視装置を第三者機関による安全認証取得などで顧客の信頼を得ることが容易にできる。
2 本体
3、4、5 アーム
6 把持装置
7 ツール
8 関節
9 ワーク
10 物理的な安全防護柵
20 制御装置
21 教示具
50 動作禁止領域
51 動作禁止領域(1)
52 動作禁止領域(2)
53 動作禁止領域(3)
54 動作禁止領域(4)
70 動作可能領域
201 教示・操作部
202 教示データ格納エリア
203 パラメータ格納エリア
204 動作指令生成部
205 駆動部
206 次回目標位置算出部
207、603 惰走予測位置算出部
208、604 動作禁止領域進入監視部
301 現在位置
302 次回目標位置
303 惰走予測位置
304 第1軸
601 動作領域監視装置
602 現在位置検出部
605 モータ位置
606 緊急停止指令
A1、A2、A3、A4、A5、A6 アーム占有領域
この例で、ロボット1は、本体2と3本のアーム3、4、5を備えている。アーム5には把持装置6を介してツール7が備えられる。ツール7として、アーク溶接用の溶接トーチや、スポット溶接用の溶接ガン、搬送用途におけるハンドなどが取り付けられる。アーム3、アーム4、アーム5は、それぞれ関節8で接続されている。
9は床に置かれたワークである。ワーク9は、被溶接体や搬送物などである。
本体2には制御装置20から必要な信号が送られ、所定の作業プログラムに従い、アーム3、4、5は所定の動作を行い、把持装置6又はツール7は所望の軌跡に沿った動作を行う。
制御装置20には教示具21が接続されていて、ロボット1への教示や作業プログラムの書き換えなどを行なう。
まず、アーム3、4、5を、関節8をつなぐ直線を軸心とする所定半径の円筒領域として定義し、それぞれをA4、A5、A6とする。
また、ロボット1の各関節8を内包する領域A1、A2は、関節8の軸上の1点を中心とする所定半径の球として定義する。関節8の軸上の1点は、通常は前記A4、A5、A6の領域を定義する際に使用される「関節8をつなぐ直線」と、関節8の軸線との交点を使用する。さらに、アーム5の先端の把持装置6及びツール7を内包する領域を、所定半径の球A3として定義する。これらのアーム占有領域A1ないしA6の定義も、制御装置20のメモリー上に格納される。
いずれのアーム占有領域も、おおよその半径を持つ球および円筒であればよく、より半径の大きな球および円筒として定義する場合には、それだけ安全率は高くなるが、上記した動作禁止領域50はより広い領域として設定することが必要となり、スペース効率が低下する。あるいはアームの移動に制限を受けるようになる。
教示・操作部201は、教示具21における操作者の操作で、作業プログラムの呼出し・実行、及び教示作業のためのロボット操作を行なう。また、教示データ格納エリア202への教示データ(作業プログラムやその他の作業に関連する情報)の格納や、パラメータ格納エリア203への各種パラメータの格納なども行なう。パラメータ格納エリア203には、補間演算のために必要なアーム各部の寸法や、ロボット軸動作のために必要な、減速比やモータ定数などの軸仕様、及び各軸アーム占有領域A1ないしA6の半径及び動作禁止領域50を定義するための座標値等も格納される。
駆動部205は、ロボット1の各軸を、動作指令生成部204から送られた指令値に動作させるが、停止要求を入信すると、ロボット1の動作を行わず、停止させる。
ロボット1は、現在位置301から、次回目標位置302へ動作しようとしている。ここで、ロボット1に緊急停止をかけると、それぞれの軸は、その時の負荷状況に応じて僅かなりとも惰走して停止する。各軸について惰走角度を予測して、次回目標位置に加算することで、惰走予測位置303を求めることが出来る。
図3(b)において、θs1は、現在位置301における第1軸304の角度、θe1は、次回目標位置302における第1軸304の角度を表している。θd1は、次回目標位置302の姿勢における負荷状況において、緊急停止した場合の惰走角度を表している。ここで、θe1+θd1を算出することにより、惰走予測位置303を求めることが出来る。
この惰走予測位置303において、アーム占有領域を考慮し、これが動作禁止領域50に進入する場合には、ロボット1を次回目標位置302へ動作させるよりも先に、ロボット1を停止させることで、惰走しても動作禁止領域50に進入することを回避できる。
図3では、(a)よりも(b)の方が、第1軸304における慣性力により生じる力のモーメント及び重力モーメントが大きい。よって、(b)の方が、より大きな惰走角度を生じ、図に示したように、手首部のアーム占有領域が、動作禁止領域50に進入することが予測できる。従って(b)の場合には、ロボット1を停止させる。
ここでは、軸数がn個であるロボットについて考慮するものとする。基本的には、各ステップにおいて、第1軸から第n軸について同様の処理を繰り返す。各軸の軸番号を表す添字として、iを用いる。(例えば、6軸ロボットであれば、i=1・・・6を取る。)
ステップS01では、次回目標位置算出部206において、演算周期毎の次回目標位置(図3の302)を算出する。この次回目標位置とは、ロボット各軸の角度まで求められたものを指す。
続いてステップS02へ進む。
ステップS02では、ステップS01で求めた次回目標位置において、アーム占有領域A1ないしA6が、動作禁止領域50に進入していないかどうかのチェックを行なう。このチェックは、動作禁止領域進入監視部208において行なわれる。
ここでの進入監視の具体的な方法については、様々な方法があるが、ここでは、参考文献1のように、動作禁止領域を直方体として定義したものを、各面の4つの頂点を通る6つの外接球として表現し、その中心位置と、アーム各部との距離を求め、アームに設定した半径と外接球の半径から、干渉状態にあるかどうかを判断する方法を用いるものとする。
なお、動作禁止領域50が、複数個の領域で定義されている場合、全ての動作禁止領域について同様のチェックを行ない、一つでも進入している場合には、「進入する」という判定とする。
ここで「進入する」と判断された場合は、ステップS12に進む。そうでなければ、ステップS03へ進む。
ステップS03では、現在位置と次回目標位置の差分と、演算周期時間:tから、ロボット各軸の速度:ωiを求める。
この速度の算出は、惰走予測位置算出部207において行なわれる。
例えば、図3(b)における第1軸の速度ω1は、次式で求められる。
ω1=(θe1−θs1)/t
ここでθs1、θe1は、図3において説明したとおり、
θs1:現在位置での第1軸角度、 θe1:次回目標位置での第1軸角度
を表す。
同様にして、他の軸(2〜n軸)についても、各軸速度ωiを算出する。つまり、
ωi=(θei−θsi)/t ( i = 1〜n )
続いてステップS04へ進む。
ステップS04では、惰走予測位置算出部207において、次回目標位置におけるロボットの各軸周りに発生する慣性行列:J、及び重力モーメント:Gを算出する。
軸数nのロボットの場合、慣性行列Jはn行n列、重力モーメントGは、n行1列の行列式で表現される。
ロボット各軸の慣性行列や重力モーメントは、各アーム部を、関節を区切りとした個別のパーツに分割し、それぞれにおける質量及び重心位置、形状モーメントと、ロボット各軸角度から算出することが出来る。各アーム部の質量及び重心位置、形状モーメントは、パラメータ格納エリア203に予め格納しておく。
ロボットの姿勢から各軸の慣性行列や重力モーメントを算出する具体的な方法としては、様々な運動方程式があるので、これらの何れかを用いれば良い。例えば、「ニュートン・オイラーの運動方程式」や「ラグランジュの運動方程式」等の運動方程式を用いる方法が、一般的によく知られており、計算機上での実時間計算に向いている。
続いてステップS05へ進む。
ステップS05では、惰走予測位置算出部207において、ステップS04までに求められた、各軸の速度ωi、慣性行列J、重力モーメントGを用いて、各軸に発生するエネルギー:Uiを算出する。
動作中の回転体に働く全エネルギーは、下記式にて表現される。
U=K+P
ここで、U:全エネルギー、K:運動エネルギー、P:位置エネルギーである。
ロボットアームは、殆どの場合、各軸を中心とした回転運動を行なう回転体である。運動エネルギー:K は、回転体の場合、下式で表現される。
一方、位置エネルギー:Pは、重力モーメント:Gと等しい。
従って、第i軸のエネルギー:Uiは、次式にて求めることが出来る。
i=1〜nの全軸について上記式の計算を行ない、各軸のエネルギーを算出する。
続いてステップS06へ進む。
ステップS06では、惰走予測位置算出部207で、ロボット1に対して緊急停止をかけた場合の、各軸の惰走角度を算出する。第i軸に発生しているエネルギーと、第i軸のブレーキング能力、及び各軸の惰走角度の間には、下式のような関係がある。
Ui=Tbi・θdi
Tbi:第i軸のブレーキングトルク θdi:第i軸の惰走角度
ここで、ブレーキングトルク:Tbiとは、サーボモータに備わる機構式ブレーキの能力や、サーボアンプのダイナミックブレーキ、電源回生、減速機構部の摩擦抵抗などによって決まる、各軸固有の値である。ブレーキングトルクが大きいほど、各軸の惰走角度は小さくなる。
従って、あるエネルギーを持って動作しているロボット軸を緊急停止させた際の、第i軸の惰走角度は、下式によって算出出来る。
この式を用いて、各軸の惰走角度θdiを算出する。ここで、例えば、図3(b)のθd1は、第1軸における惰走角度を表している。
なお、各軸のブレーキングトルクの設定値は、教示具21等によって、パラメータ格納エリア203に格納されている。
続いて、ステップS07へ進む。
ステップS07では、ステップS06で求めた各軸の惰走角度に基づいて、「惰走予測位置」を算出する。つまりここで求めた惰走予測位置は、次回目標位置にて、ロボット1に緊急停止がかけられた場合にロボット1が行き着くと予想される位置である。図3(b)の第1軸で説明すると、次回目標位置302における第1軸の角度θe1に対し、ステップS06で求めた惰走角度θd1を加算した角度が、惰走予測位置303における第1軸の角度となる。
続いてステップS08へ進む。
ステップS08では、惰走予測位置303が、動作禁止領域に進入するかどうかのチェックを行なう。チェック方法自体は、ステップS02と同様であり、このチェックは、動作禁止領域進入監視部208において行なわれる。
ここで「進入する」と判断された場合は、ステップS09に進む。そうでなければ、ステップS11へ進む。
[S09]
ステップS09では、予め操作者がパラメータに設定した制御方法に従い、停止又は継続の制御へ分岐する。制御方法が停止であれば、ステップS12へ進み、継続であれば、ステップS10へ進む。
ステップS10では、教示具21のディスプレイに、ステップS08にて惰走予測位置が動作禁止領域に進入してしまう作業プログラムの教示ステップ番号と一緒に、「動作継続」又は動作継続の旨のメッセージを表示し、ステップS11へ進む。
[S11]
ステップS11では、次回目標位置算出部206が算出した次回目標位置に動作するための動作指令を、駆動部205へ出力し、ロボット1を動作させる。
[S12]
ステップS12に到達した場合は、動作禁止領域進入監視部208が、駆動部205に対して、停止要求を送る。この停止要求で駆動部205はロボット1の動作を停止させる。また、停止理由をメッセージとして教示具21のディスプレイに表示させる。
このような手順を取ることにより、仮に緊急停止が起こって、ロボット1が惰走したとしても、ロボット1が動作禁止領域に入り込むことがなくなる。
本実施例においては、惰走予測位置が動作禁止領域に進入すると予測された場合の制御手法として「緊急停止」と「動作継続」を選択できるようにしている。(ステップS09)
これを活用して、作業プログラムを教示した後の動作確認の際には「動作継続」を指定しておいて作業プログラムを再生することにより、緊急停止で動作禁止領域への干渉の恐れがある箇所を確認し、教示点や指令速度の見直しを行なって、通常動作では干渉の恐れが無いようにする。これにより、予測が困難な惰走での干渉の可能性を極力排除することが出来る。
そして、実際の生産時には「緊急停止」を指定しておき、特異な状況にて干渉の恐れが発生した場合には、緊急停止させる、という活用が可能である。
この様な場合は、定義された動作可能領域を取り囲むような、複数の動作禁止領域を定義することによって、同様の効果を得ることが可能である。
図5は、動作可能領域70がロボット1を包含する直方体として定義されたシステムを、上面から見た様子を表している。
ユーザーが動作可能領域70を定義した場合に、コントローラは自動的に、動作可能領域70の各面に隣接する、複数の動作禁止領域51〜54を自動生成して、予めパラメータ格納エリア203に展開させるようにすれば良い。これにより、前記した方法を用いて、動作可能領域70の外に出ないような動作規制を実現することが出来る。
図6及び図7は、本発明の他の態様として、前記の監視及び停止制御を行なう装置を独立させた場合の実施形態を説明する図である。
図6は、図2のシステムに対し、動作領域監視装置601を追加した構成となっている。動作領域監視装置601は、駆動部205より、定められた監視周期毎に各軸モータ位置605をエンコーダ等の位置検出器から、現在位置検出部602が読み取る。この各軸のモータ位置605から、ロボットの現在位置(ワーク又はツールの位置、TCPとも言う。)を求め、このロボットの現在位置に対し、動作禁止領域進入監視部604にて、動作禁止領域への進入をチェックする。また、現在位置検出部602で読み取ったモータ位置605情報を元に、惰走予測位置算出部603において、この時点で緊急停止をかけられた場合に惰走して停止する位置を算出する。この惰走予測位置に対し、動作禁止領域進入監視部604にて、動作禁止領域への進入をチェックする。動作禁止領域進入監視部604は、動作禁止領域との進入を検知すると、駆動部205に対して、例えば駆動電源遮断信号などの緊急停止指令606を出力する。
図7は、図6のシステム構成において、動作禁止領域に干渉しないようにロボットの動作を制限することを実現するためのフローチャートである。この図を用いて本発明の方法を順を追って説明する。
ステップS101で、現在位置検出部602にてロボットの各軸のモータ位置605を読み込む。次に、読み込んだ各モータ位置605からロボットの現在位置を求める。以降で行う処理のために、各軸モータの現在の位置(現在位置)は、前回読み込んだ前回の位置(前回位置)と共に記憶しておく。続いてステップS102へ進む。
[S102]
ステップS102では、動作禁止領域進入監視部604にて、ステップS101で求めたロボットの現在位置において、アーム占有領域A1ないしA6が、動作禁止領域50に進入していないかどうかのチェックを行なう。具体的な進入監視の方法は、前記図4のフローチャートのステップS02で行なっていたのと同様の手法が適用できる。
ここで「進入する」と判断された場合は、ステップS109に移行する。そうでなければ、ステップS103へ進む。
[S103]
ステップS103では、各軸モータの前回位置と現在位置の差分と、監視周期時間から、ロボット各軸の速度:ωiを求める。iは各軸の軸番号を表す添字である。続いてステップS104へ進む。
ステップS104では、各軸モータの現在位置における、ロボットの各軸周りに発生する慣性行列:I、及び重力モーメント:Gを算出する。これらの算出は、惰走予測位置算出部603にて行なわれる。その方法は、図4のステップS04と同じである。
続いてステップS105へ進む。
[S105]
ステップS105では、ステップS104までに求められた、各軸の速度ωi、慣性行列I、重力モーメントベクトルGを用いて、各軸に発生するエネルギー:Uiを算出する。これらの算出は、惰走予測位置算出部603にて行なわれる。算出方法は、図4のステップS05と同じである。続いてステップS106へ進む。
[S106]
ステップS106では、各軸モータの現在位置からロボットに緊急停止をかけた場合の、各軸の惰走角度を算出する。これらの算出は、惰走予測位置算出部603にて行なわれる。算出方法は、図4のステップS06と同じである。続いて、ステップS107へ進む。
[S107]
ステップS107では、各軸モータの現在位置に、ステップS106で求めた各軸の惰走角度を加算して、「惰走予測位置」を算出する。これらの算出は、惰走予測位置算出部603にて行なわれる。算出方法は、図4のステップS07と同じである。続いて、ステップS108へ進む。
ステップS108では、惰走予測位置が、動作禁止領域に進入するかどうかのチェックを行なう。チェック方法自体は、ステップS102と同様である。
ここで「進入する」と判断された場合は、ステップS109に進む。そうでなければ、今回の監視周期における監視処理は終了する。
[S109]
ステップS109では、駆動部205に対して、緊急停止要求を指令する。
このような構成及び手順を取ることにより、仮に動作指令生成部が故障して、ロボットに異常な指令が送信された場合でも、惰走位置が動作禁止領域に入り込まないうちにロボットを停止させることが出来る。
Claims (6)
- ロボットのアームと手首に備えたツール又は把持したワークを含めたアーム占有領域と、
前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域と、をメモリー上に定義し、
前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶しておき、
演算周期毎に前記ワーク又はツールの目標位置を演算して前記ロボットの各軸の動作指令を生成する時に、
次回の演算周期の前記ツール又はワークの目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、
進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する制御を行ない、
進入が確認されなかった場合には、
現在位置における各軸の角度と次回目標位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、次回目標位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記次回の演算周期の前記ツール又はワークの目標位置への動作指令に基づく前記ロボットの動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、
各軸の惰走角度を次回の演算周期の前記各軸の前記動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求め、
前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、
進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する制御を行なうことを特徴とするロボット動作規制方法。 - ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を有し、
前記ロボット制御装置は、
前記ロボットのアーム又は前記ロボットの手首に備わるツール若しくは把持したワークに基づくアーム占有領域と前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域とを格納するとともに、前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶するメモリーと、
演算周期毎に前記ツール又はワークの動作目標位置を求め前記ロボットの各軸の動作指令を生成する目標位置算出部と、
前記目標位置算出部で求めた前記ツール又はワークの動作目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を出力する動作禁止領域進入監視部と、
前記ロボットの動作を行なう駆動部と、を備え、
前記停止要求で前記ロボットの動作を停止制御するロボットシステムにおいて、
前記ロボット制御装置は、
現在位置における各軸の角度と次回目標位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、次回目標位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記ツール又はワークの動作目標位置へ前記ロボットを動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、前記推定した各軸の惰走角度を前記各軸の動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが動作目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求める惰走予測位置算出部を備え、
前記動作禁止領域進入監視部は、
前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、
進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を更に出力することを特徴とするロボットシステム。 - 前記ロボット制御装置は表示装置を備える教示具と接続され、前記ロボットの動作を停止する停止要求で停止制御を行う時に、合わせて前記ロボットを停止する旨の表示を行うことを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
- 前記ロボット制御装置は表示装置を備える教示具と接続され、予め定められた制御方式が継続の設定であれば、前記停止要求で停止制御を行わず、前記ロボットを継続制御する旨の表示を行うことを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
- ロボットと、前記ロボットを制御するロボット制御装置と、を有し、
前記ロボット制御装置は、
演算周期毎に手首に備えたツール又は把持したワークの動作目標位置を求め前記ロボットの各軸の動作指令を生成する目標位置算出部と、
前記動作指令に基づいて前記ロボットの動作を行なう駆動部と、を備えたロボットシステムにおいて、
前記ロボットのアーム若しくは前記ロボットの手首に備えたツール又は把持したワークに基づくアーム占有領域と前記アーム占有領域が進入してはならない動作禁止領域とを格納するとともに、前記ロボットの各軸に対して設定され、前記ロボットを緊急停止した場合に、前記各軸を駆動するモータに備わるブレーキによって前記各軸に生じるブレーキングトルクを予め記憶するメモリーと、
前記ロボットの各軸に備わる位置検出器からモータの現在位置を読み取り、モータの現在位置から前記ロボットの現在位置を求め、モータの現在位置及びロボットの現在位置を記憶する現在位置検出部と、
前記目標位置算出部で求めた前記ツール又はワークの動作目標位置に基づく前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を出力する動作禁止領域進入監視部と、
前回位置における各軸の角度と現在位置における各軸の角度との差分を演算周期時間で除することによって各軸の速度を算出し、現在位置における各軸周りの慣性行列及び重力モーメントを算出し、前記各軸の速度及び前記慣性行列を用いて各軸に発生する運動エネルギーを算出し、前記重力モーメントを用いて各軸に発生する位置エネルギーを算出し、前記運動エネルギーに前記位置エネルギーを加算した値を前記ブレーキングトルクで除することによって、前記ツール又はワークの動作目標位置へ前記ロボットを動作中に前記ロボットを緊急停止した場合の前記ロボットの各軸の惰走角度を推定し、前記推定した各軸の惰走角度を前記各軸の動作指令に加算することで、前記ツール又はワークが動作目標位置に到達するまでの想定されている前記ロボットの動作軌跡から逸脱する前記ロボットの惰走予測位置を求める惰走予測位置算出部と、を有し、
前記動作禁止領域進入監視部は、前記惰走予測位置における前記アーム占有領域が前記動作禁止領域に進入しないかを確認し、進入が確認された場合には、前記ロボットの動作を停止する停止要求を更に出力する動作領域監視装置を備えることを特徴とするロボットシステム。 - 前記メモリー、前記現在位置検出部、前記惰走予測位置算出部及び前記動作禁止領域進入監視部は前記ロボット制御装置とは独立していることを特徴とする請求項5記載のロボットシステム。
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