JP4668251B2 - ロボットシステムの制御装置、制御方法およびそのプログラム - Google Patents
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[ロボットシステムの構成]
図1は、ロボットシステムを模式的に示す構成図である。ロボットシステム1は、回転動作またはスライド動作する可動部を備えている。このロボットシステム1は、図1に示すように、主として、マニピュレータ(アーク溶接ロボット)2と、制御装置(ロボットシステムの制御装置)3と、教示ペンダント4とを備えている。
教示ペンダント4は、マニピュレータ2の教示作業の際に、被溶接部の溶接経路や溶接作業条件等を入力するために使用される。
図2は、図1に示した制御装置の構成を模式的に示すブロック図である。制御装置3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インタフェース等から構成される。また、制御装置3は、後記する各種機能を実現するために、図2に示すように、教示プログラム記憶手段10と、パラメータ記憶手段20と、次回位置制御手段30と、最大減速時間算出手段40と、未来位置算出手段50と、動作限界判別手段60と、マニピュレータ制御手段(可動部制御手段)70と、溶接制御手段80とを備えている。以下、図2を参照(適宜図1参照)して制御装置3の構成を説明する。
教示プログラム記憶手段10は、教示プログラムを記憶するものであり、例えば、一般的なメモリやハードディスク等から構成される。教示プログラムには、例えば、マニピュレータ2に取り付けられた溶接トーチ5の移動する目標位置と補間方式、指定速度が記述されている。教示プログラム記憶手段10に記憶された教示プログラムは、予め作成されたものであるが、教示ペンダント4からの入力操作またはパーソナルコンピュータ等の接続機器(図示しない)からの入力操作によって編集可能なものである。
パラメータ記憶手段20は、各種パラメータを記憶するものであり、例えば、一般的なメモリやハードディスク等から構成される。各種パラメータは、例えば、動作限界の位置座標、最大動作速度(目標速度)「Vmax」、最大加速度および最大減速度(加減速度)「Acc」、加速パターンおよび減速パターン(速度パターン)「Taなど」、制御周期τ等を含む。例えば、最大動作速度のパラメータは軸毎に指定されている。
本実施形態では、動作限界は、マニピュレータ2に取り付けられた溶接トーチ5の先端に対応して予め設定される。図3は、動作限界を指定する一例として、溶接トーチの先端の位置を、仮想の直方体の範囲で制限する例を模式的に示す図である。動作限界内の動作範囲は、マニピュレータ2が教示データ作成時に用いる座標系で記述されXYZ方向それぞれの上限値、下限値で指定される。ここでは、3次元座標空間上に、縦(X方向)の長さが「a」、横(Y方向)の長さが「b」、高さ(Z方向)が「c」である仮想の直方体300を想定し、溶接トーチの先端310は、仮想の直方体300の内部空間領域だけで動作が許可されているものとする。この仮想の直方体300には、X+方向、X−方向、Y+方向、Y−方向、Z+方向、およびZ−方向に動作限界(上限値または下限値)が設定されている。例えば、図3に示すように、XY平面上にZ−方向の動作限界を設定し、X軸上に設定された溶接線の所定の溶接開始位置から溶接終了位置までの長さを「a」に設定し、溶接線に対するウィービング方向の動作限界を「b/2(Y上限値)」、「−b/2(Y下限値)」のように設定することができる。これにより、溶接トーチの先端310の座標値が、パラメータで指定されている上下限範囲外とならないように制限することができる。
本実施形態では、速度パターンの一例として図4に示す変形正弦速度パターンを使用する。この変形正弦速度パターンは、カム曲線として用いられるものである。ここでは、一例として、時刻tが「0」のときに、速度が「0」の状態から移動を開始した場合について説明する。図4に示す速度パターンは、時刻tが「0」から「Ts」に至るまでの加速区間410と、時刻tが「Ts」から「Tc」に至るまでの等速区間420と、時刻tが「Tc」から「Tt」に至るまでの減速区間430とを備えている。
<次回位置制御手段>
次回位置制御手段30は、移動経路算出手段31と、現在位置判別手段32と、次回位置算出手段33と、停止制御手段34とを備えている。
移動経路算出手段31は、現在位置と、教示プログラムにて指定された目標点と、指定速度および最大加速度とから、目標位置までの速度パターンを決定するものである。
現在位置判別手段32は、現在位置が目標位置であるか否かを判別し、現在位置が目標位置である場合に処理を終了する。また、現在位置判別手段32は、現在位置が目標位置ではない場合に、その旨を次回位置算出手段33に出力する。
次回位置算出手段33は、マニピュレータ2に取り付けられた溶接トーチ5(可動部)の動作点が目標点に移動する際の移動速度の経時変化を示す速度パターンと現在時刻とに基づいて所定の制御周期ごとに溶接トーチ5(可動部)に対して次に指令すべき次回位置を算出するものである。ここで、動作点は、例えば、溶接トーチ5の所定地点の位置に対応した可変値により自位置を示す仮想的な点の位置である。本実施形態では、目標点は、教示プログラムまたはインチング指令で定められ、次回位置算出手段33は、移動経路算出手段31で決定された速度パターンの全区間[0,Tt]内の任意時刻Tnを現在時刻として、Tnにおける溶接トーチの先端位置(溶接トーチ先端の次回位置)を計算する。例えば、図4に示したS字カーブの速度パターンを用いた場合には、次回位置算出手段33は、前記した式(1)または式(2)で算出された速度v(t)で示される加速パターンと、時間軸(横軸)と、速度軸(縦軸)と、任意時刻Tnとで囲まれた領域の面積を求めることで、任意時刻Tnにおける溶接トーチ先端の次回位置を算出する。また、次回位置算出手段33は、計算の結果得られた動作点の次回位置に相当するモータ指令信号が出力された後に、この算出された次回位置をあらためて前回位置としてパラメータ記憶手段20に保存する。
停止制御手段34は、マニピュレータ2に取り付けられた溶接トーチ5(可動部)の動作中に動作限界判別手段60によって、後述する動作点の未来位置が動作限界を越えたと判別された場合に、現時点から溶接トーチ5を減速停止させる指令(以下、減速停止指令という)を生成するものである。この減速停止指令は、マニピュレータ制御手段70に出力される。本実施形態では、停止制御手段34は、動作限界判別手段60により溶接トーチ先端の未来位置が動作限界を越えたと判定された場合に、現在時刻から、後述する最大減速時間Tfと1制御周期τとの和で表される時間(Tf+τ)の間に減速して停止すればよいように設定されている。実際には溶接トーチ5は最大減速時間で停止可能なので、各軸の加速度が指定加速度を超えることなく、溶接トーチ5の動作範囲内で余裕をもって停止することができる。
最大減速時間算出手段40は、溶接トーチ5(可動部)の最大動作速度と、予め定められた減速度とに基づいて最大減速時間を算出するものである。本実施形態では、最大減速時間算出手段40は、マニピュレータ2が動作する前に、パラメータ記憶手段20から、指定された最大動作速度と減速度とを読み出して最大減速時間を予め算出する。最大減速時間Tfとは、最大動作速度で動作中の溶接トーチ5を停止させるために、マニピュレータのすべての軸毎にそれぞれ必要な時間のうちの最大値を示すものである。最大減速時間算出手段40は、最大減速時間Tfを、制御周期τの倍数となるように計算する。これにより、最大減速時間Tfを容易に計算することができる。
未来位置算出手段50は、溶接トーチ5(可動部)が最大動作速度で動作しているときに予め定められた減速度内で停止可能な時間を示す予め求められた最大減速時間に基づいて、現時点から少なくとも最大減速時間だけ経過した時刻において次に指令すべき動作点の位置を未来位置として算出するものである。本実施形態では、未来位置算出手段50は、現時点(時刻Tn)から1制御周期(τ)と最大減速時間(Tf)との和だけ経過した時刻「Tn+Tf+τ」において次に指令すべき動作点の位置を示す未来位置(溶接トーチ先端の未来位置)を、次回位置算出手段33で用いた速度パターンにより算出する。なお、現時点から制御周期の整数倍(n倍)の時間(n×τ)と最大減速時間との和だけ経過した時刻「Tn+Tf+n×τ」において未来位置を算出することも可能である。この場合には、溶接トーチ5を動作限界に対してさらに余裕をもって停止させることができる。
動作限界判別手段60は、溶接トーチ5(可動部)の動作中に、溶接トーチ5の動作限界を示す予め定められた位置座標に基づいて、算出された動作点の未来位置が動作限界を越えたか否かを判別するものである。本実施形態では、動作限界判別手段60は、未来位置算出手段50で算出した溶接トーチ先端の未来位置が、パラメータで指定された仮想の直方体(図3参照)の動作範囲内にあるか否かを判定する。なお、1つの動作点に対して複数の動作限界がある場合には、動作限界判別手段60は、その動作点のそれぞれの動作限界に対して未来位置が動作限界を越えたか否かを判別する。
マニピュレータ制御手段(可動部制御手段)70は、溶接トーチ5(可動部)の動作中に未来位置が動作限界を越えていないと判別された場合に、次回位置算出手段33で算出された次回位置と、マニピュレータモータMから出力されるモータ現在位置とに基づいて、マニピュレータモータMの制御を行い、算出された次回位置で指定された位置にマニピュレータ2を移動させるものである。本実施形態では、マニピュレータ制御手段70は、次回位置算出手段33で算出された溶接トーチ先端の次回位置から、モータで駆動される軸毎の角度を算出し、算出した角度をモータ指令位置とする。ここで、溶接トーチ先端の次回位置から軸毎の角度を算出する方法は、任意である。本実施形態では、6軸構成の垂直多関節型のマニピュレータ2を用いているので、例えば、特定のリンクの位置や方向を満たすような関節角度を求める逆運動学(Inverse Kinematics:IK)を解くことにより、溶接トーチ先端の次回位置の位置座標を軸毎の角度(次回位置)へ変換し、算出した角度をモータ指令位置とすることができる。ここで、逆運動学は、多関節リンク構造を構成する関節の回転角度から各リンクの位置や姿勢を求める順運動学(Forward Kinematics:FK)とは逆方向に計算を行うものである。また、マニピュレータ制御手段70は、停止制御手段34から減速停止指令を受けた場合には、次回位置算出手段33で算出された溶接トーチ先端の次回位置に対応したモータ指令位置を算出することを中断して、マニピュレータモータMを減速停止させる制御信号をマニピュレータモータMに出力する。
溶接制御手段80は、溶接時に溶接指令信号を溶接電源Pに出力するものである。この溶接制御手段80は、動作点が動作限界を越えた場合、すなわち、停止制御手段34から減速停止指令を受けたときに、溶接トーチ5から溶接ワイヤが送り出されている状態の場合には、溶接ワイヤの送給停止指令(アークOFF指令)を溶接電源Pに出力する。
次に、制御装置3の動作について図5を参照(適宜図1ないし図4参照)して説明する。図5は、図2に示した制御装置の動作を示すフローチャートである。まず、マニピュレータ2が動作する前の準備段階として、予め制御装置3は、最大減速時間算出手段40によって、最大減速時間を算出しておく(ステップS1)。そして、制御装置3は、移動経路算出手段31によって、目標位置(目標点)までの移動経路を算出しておく(ステップS2)。
図6は、溶接トーチ先端の軌跡と動作限界線との関係を模式的に示す説明図である。
図6(a)に示す溶接トーチ先端の軌跡600は、溶接トーチ先端が、図中破線上方の動作範囲の所定位置601から、動作限界線Lを一旦越えて再び動作範囲に戻る放物線である。ここで、動作限界線Lは、例えば、図3において、Y−方向の動作限界としてのY下限値を示す直線Y=−b/2を示す。ここで、動作限界線Lが壁等の物理的障壁を示す場合には衝突後の軌跡は異なるため、動作限界線Lを一旦越えた後の軌跡を仮想線で示した。このような軌跡600で溶接トーチ先端が移動しようとする場合、仮に、従来の特許文献1に記載の方法をマニピュレータ2に適用したとすると、次のようになる。すなわち、マニピュレータ2の関節にブレーキをかけた場合に関節が停止する位置が通常動作範囲の限界位置(関節角度=θLimit)を越えると演算されたときにマニピュレータモータに減速停止指令を出力し、関節角度がθLimitのときに関節が停止する。このとき、関節角度を溶接トーチ先端に置き換えてみると、溶接トーチ先端が、例えば、動作限界線Lまでの距離が「d」である位置603に達したときに減速を開始し、動作限界線Lの手前の位置602で停止することになる。
2 マニピュレータ(アーク溶接ロボット)
3 制御装置(ロボットシステムの制御装置)
4 教示ペンダント
5 溶接トーチ
10 教示プログラム記憶手段
20 パラメータ記憶手段
30 次回位置制御手段
31 移動経路算出手段
32 現在位置判別手段
33 次回位置算出手段
34 停止制御手段
40 最大減速時間算出手段
50 未来位置算出手段
60 動作限界判別手段
70 マニピュレータ制御手段(可動部制御手段)
80 溶接制御手段
M マニピュレータモータ
P 溶接電源
W ワーク
Claims (5)
- 回転動作またはスライド動作する可動部を備えたロボットシステムにおいて前記可動部の動作を制御するロボットシステムの制御装置であって、
前記可動部の動作点が目標点に移動する際の移動速度の経時変化を示す速度パターンと現在時刻とに基づいて所定の制御周期ごとに前記可動部に対して次に指令すべき次回位置を算出する次回位置算出手段と、
前記可動部が最大動作速度で動作しているときに予め定められた減速度内で停止可能な時間を示す予め求められた最大減速時間と前記速度パターンと現在時刻とを用いて、現時点以降も当該速度パターンに従って前記可動部の動作点が移動するものとして、前記所定の制御周期ごとに、現時点から少なくとも前記最大減速時間だけ経過した時刻において前記可動部に対して次に指令すべき前記動作点の位置を未来位置として算出する未来位置算出手段と、
前記可動部の動作中に、前記可動部の動作限界を示す予め定められた位置座標に基づいて、前記算出された未来位置が前記動作限界を越えたか否かを判別する動作限界判別手段と、
前記可動部の動作中に前記未来位置が前記動作限界を越えたと判別された場合に、現時点から前記可動部を減速停止させる指令を生成する停止制御手段と、
前記可動部の動作中に前記未来位置が前記動作限界を越えていないと判別された場合に、前記可動部を前記算出された次回位置まで動作させる指令を生成する可動部制御手段とを備えることを特徴とするロボットシステムの制御装置。 - 前記可動部の最大動作速度と、前記予め定められた減速度とに基づいて前記最大減速時間を算出する最大減速時間算出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のロボットシステムの制御装置。
- 前記未来位置算出手段は、
現時点から前記制御周期の整数倍の時間と前記最大減速時間との和だけ経過した時刻において前記可動部に対して次に指令すべき前記動作点の位置を示す未来位置を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロボットシステムの制御装置。 - 回転動作またはスライド動作する可動部を備えたロボットシステムにおいて前記可動部の動作を制御するロボットシステムの制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記可動部の動作点が目標点に移動する際の移動速度の経時変化を示す速度パターンと現在時刻とに基づいて所定の制御周期ごとに前記可動部に対して次に指令すべき次回位置を算出する次回位置算出ステップと、
前記可動部が最大動作速度で動作しているときに予め定められた減速度内で停止可能な時間を示す予め求められた最大減速時間と前記速度パターンと現在時刻とを用いて、現時点以降も当該速度パターンに従って前記可動部の動作点が移動するものとして、前記所定の制御周期ごとに、現時点から少なくとも前記最大減速時間だけ経過した時刻において前記可動部に対して次に指令すべき前記動作点の位置を未来位置として算出する未来位置算出ステップと、
前記可動部の動作中に、前記可動部の動作限界を示す予め定められた位置座標に基づいて、前記算出された未来位置が前記動作限界を越えたか否かを判別する動作限界判別ステップと、
前記動作限界判別ステップで前記未来位置が前記動作限界を越えたと判別された場合に、現時点から前記可動部を減速停止させる指令を生成する停止制御ステップと、
動作限界判別ステップで前記未来位置が前記動作限界を越えていないと判別された場合に、前記可動部を前記算出された次回位置まで動作させる指令を生成する可動部制御ステップとを実行することを特徴とするロボットシステムの制御方法。 - 回転動作またはスライド動作する可動部を備えたロボットシステムにおいて前記可動部の動作を制御するために、コンピュータを、
前記可動部の動作点が目標点に移動する際の移動速度の経時変化を示す速度パターンと現在時刻とに基づいて所定の制御周期ごとに前記可動部に対して次に指令すべき次回位置を算出する次回位置算出手段、
前記可動部が最大動作速度で動作しているときに予め定められた減速度内で停止可能な時間を示す予め求められた最大減速時間と前記速度パターンと現在時刻とを用いて、現時点以降も当該速度パターンに従って前記可動部の動作点が移動するものとして、前記所定の制御周期ごとに、現時点から少なくとも前記最大減速時間だけ経過した時刻において前記可動部に対して次に指令すべき前記動作点の位置を未来位置として算出する未来位置算出手段、
前記可動部の動作中に、前記可動部の動作限界を示す予め定められた位置座標に基づいて、前記算出された未来位置が前記動作限界を越えたか否かを判別する動作限界判別手段、
前記可動部の動作中に前記未来位置が前記動作限界を越えたと判別された場合に、現時点から前記可動部を減速停止させる指令を生成する停止制御手段、
前記可動部の動作中に前記未来位置が前記動作限界を越えていないと判別された場合に、前記可動部を前記算出された次回位置まで動作させる指令を生成する可動部制御手段、
として機能させることを特徴とするロボットシステムの制御プログラム。
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