JP5364214B2 - 二枚貝の剥身を蒸してなる蒸貝の生産方法 - Google Patents
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第一に、特許文献1記載の技術では、衣を付けて油で揚げたフリッターとしているため、牡蠣の主要な調理法である鍋物に用いることが困難である。また、この技術では蒸煮加熱を行っているため、生かきの中心部の温度を85℃以上で1分間維持してノロウイルスを失活させようとした場合、加熱過多となり、特に、無脊椎でしかも含水率が80%以上と云う軟体性の生物だけに豊満に見えても総ての障害に対して悉く反応が早く、殊に加熱過多は経時変化が大きく瞬時に旨味成分を流出させ、痩せ細り、品質低下は避けることができず、また、歩留まりも極端に低下するため不良品が多く、逆に、原価高となるという問題があった。
本実施形態において、「二枚貝(Bivalvia)」とは、軟体動物の一群である二枚貝綱に属する動物を意味する。また、本実施形態で用いる貝としては、この二枚貝綱に属する貝の中でも、カキ目に属する貝が好ましい。さらに、本実施形態で用いる貝としては、カキ目に属する貝の中でも、イタボガキ科に属する貝が好ましい。そして、本実施形態で用いる貝としては、イタボガキ科に属する貝の中でも、マガキ属又はイタボガキ属に属する貝が好ましい。
本実施形態で「蒸気」とは、水蒸気を含む気体を意味する。すなわち、「蒸気」には、水蒸気を含み、かつ水粒子が分散している気体が含まれるものとする。
図2は、実施形態に係る蒸貝の生産方法を説明するための製造工程図である。この図に示すように、具体的には、一連の作業を開始すると、まず、ボイラーで高圧蒸気を発生させる(S102)。そして、この高圧蒸気をスチームチェンジャーで減圧して減圧蒸気を得る(S104)。続いて、この減圧蒸気を用いて二枚貝の剥身を蒸す(S106)。その際、ノロウイルスを確実に失活させるように二枚貝の剥身の中心温度が85℃に到達した後、その中心温度が85℃以上の状態を1分以上維持する(S108)。その後、蒸した二枚貝の剥身を冷凍する(S110)。こうして一連の製造工程が終了する。
図5は、実施形態に係る蒸貝の製造装置の変形例の構成を示した概念図である。この蒸貝の製造装置1100は、上記の蒸貝の製造装置1000と基本的には同様の構成であるため、同様の構成については説明を省略する。以下、この蒸貝の製造装置1100について特有の点について説明する。
図5に示す蒸貝の製造装置1100を用いて実際に牡蠣を各種条件で蒸す実験を行った。具体的には、下記の表2及び表3に示すように、広島産の牡蠣の剥身120を蒸機110の内部を通るメッシュ(網)ベルト118上に載せて、実験例1(製品1)ではボイラー102から発生した130℃、5〜6kgf/cm2Gの高圧蒸気をそのまま蒸機110に牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.4kg/hで供給して蒸し工程を行った。その際、牡蠣の剥身120の中心部の温度が85℃に到達してから1分間85℃の状態を維持するまでにかかった時間を測定したところ、16分25秒かかった。その際の蒸し後の芯温の測定データを図7に示す。その後、この蒸し工程を経た牡蠣の剥身120をスチールベルト119によって冷凍機112に投入して11分かけて冷凍した。その際、上下方向からフロンで冷却した−50℃の冷気を噴霧した。その結果について表3、図8及び図9に示す。その結果、冷凍後の重量(D)/洗浄後重量(B)の歩留まりは80.8%となり、牡蠣の剥身120から多くの旨みエキスが流出していることが判明した。また、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが肉眼で観察したところ、牡蠣の剥身120が黄色く変色しており外観が劣化していた。さらに、これらの官能パネラーが実際に試食してみたところ、牡蠣の剥身120の食感及び旨みの面で劣化が著しかった。
実験例1と同様の実験を広島牡蠣に代えて兵庫牡蠣を用いて行った。その結果について表3、図8及び図9に示す。その結果、牡蠣の剥身120の中心部の温度が85℃に到達してから1分間85℃の状態を維持するまでにかかった時間を測定したところ、15分45秒かかった。また、冷凍後の重量(D)/洗浄後重量(B)の歩留まりは75.3%となり、牡蠣の剥身120から多くの旨みエキスが流出していることが判明した。また、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが肉眼で観察したところ、牡蠣の剥身120が黄色く変色しており外観が劣化していた。さらに、これらの官能パネラーが実際に試食してみたところ、牡蠣の剥身120の食感及び旨みの面で劣化が著しかった。
実験例1と同様の実験を蒸し工程の加熱時間を6分に固定して行った。その結果について表3、図8及び図9に示す。その結果、牡蠣の剥身120の中心部の温度が6分後には73.2℃〜77.0℃までしか上昇しなかった。そのため、ノロウイルスの失活は不十分である可能性がある。なお、冷凍後の重量(D)/洗浄後重量(B)の歩留まりは88.1%となり、牡蠣の剥身120から多くの旨みエキスの流出が抑制されていることが判明した。また、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが肉眼で観察したところ、牡蠣の剥身120がほとんど変色しておらず外観が良好であった。さらに、これらの官能パネラーが実際に試食してみたところ、牡蠣の剥身120の食感及び旨みの面で良好であった。
実験例1と同様の実験を、ボイラー102から発生した130℃、5〜6kgf/cm2Gの高圧蒸気を、一旦スチームチェンジャー106を通して100℃、0〜0.07kgf/cm2Gの減圧蒸気にした上で、蒸機110に牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.4kg/hで供給して蒸し工程を行った。その結果について表3、図8及び図9に示す。その結果、牡蠣の剥身120の中心部の温度が6分後には85.7℃〜87.5℃まで上昇したので、そのままさらに1分間加熱した。そのため、ノロウイルスの失活は十分であると考えられる。なお、冷凍後の重量(D)/洗浄後重量(B)の歩留まりは84.2%となり、牡蠣の剥身120から多くの旨みエキスの流出が抑制されていることが判明した。また、十分なトレーニングを積んだ複数の官能パネラーが肉眼で観察したところ、牡蠣の剥身120がほとんど変色しておらず外観が良好であった。さらに、これらの官能パネラーが実際に試食してみたところ、牡蠣の剥身120の食感及び旨みの面で良好であった。
実験例1と同様の実験を、岡山産、兵庫産、広島産の生牡蠣に対して、それぞれ高圧蒸気(130℃、5〜6kgf/cm2G)および低圧蒸気(100℃、0〜0.07kgf/cm2G)を用いて、牡蠣の剥身1kgあたり蒸気量0.4kg/hで供給して蒸し工程を行った。その際、牡蠣の剥身120の中心部の温度が85℃に到達してから1分間85℃の状態を維持するまで加熱を継続した。なお、特に冷凍工程は行わなかった。その後、蒸し工程の前後の牡蠣の全体重量の変化を比較して歩留を計算した。その結果について表4に示す。
上記の実験例1〜4の実験結果から、100℃以上の温度かつ1kgf/cm2G以下の圧力の低温低圧の多湿蒸気を用いれば、飽和水蒸気に含まれる顕熱量に対する潜熱量の割合が大きくなり、短時間で効率的かつ均一に二枚貝の剥身を蒸すことができることがわかる。そのため、従来公知の高温高圧の乾燥蒸気を用いる場合に比べて短時間のうちに二枚貝の剥身の中心温度を上昇させることができる。そのため、ノロウイルスを短時間のうちに失活させることができる上に、その間二枚貝の表面温度が中心温度に比べて過度に加熱されにくいため、牡蠣の旨味・食感・外観などの低下を抑制することができる。
104 高圧蒸気配管
106 スチームチェンジャー
108 減圧蒸気配管
110 蒸機
112 冷凍機
114 フロン供給部
118 メッシュ(網)ベルト
119 スチールベルト
120 二枚貝の剥身
122a、122b 蒸気噴出口
124a、124b 蒸気
126a、126b 冷気噴出口
128a、128b 冷気
202 水
204 高圧蒸気
206 減圧蒸気
208 貯水槽
1000 蒸貝の製造装置
1100 蒸貝の製造装置
Claims (8)
- 牡蠣を蒸してなる蒸牡蠣の生産方法であって、
100℃以上の温度かつ3kgf/cm2G以上の圧力の高圧蒸気を用いて水を沸騰させることによって、100℃以上105℃以下の温度かつ0kgf/cm2G以上0.5kgf/cm 2 G以下の圧力の減圧蒸気を得る工程と、
液体中に浸されていない状態の前記牡蠣に対して前記牡蠣1kgあたり蒸気量0.1kg/h以上で前記減圧蒸気を噴射することによって前記牡蠣を蒸すことによって、前記牡蠣の中心温度が85℃以上である状態を1分間以上維持する工程と、
を含む、生産方法。 - 請求項1記載の生産方法において、
前記蒸す工程が、前記牡蠣に内在しているノロウイルスの感染力を低減させる工程を含む、生産方法。 - 請求項1または2に記載の生産方法において、
前記蒸す工程で得られる蒸牡蠣を冷凍する工程をさらに含む、生産方法。 - 請求項3記載の生産方法において、
前記冷凍する工程が、−20℃以下の冷気を用いて前記蒸牡蠣を冷凍する工程を含む、生産方法。 - 請求項4記載の生産方法において、
前記冷凍する工程が、前記蒸牡蠣に対して前記冷気を噴射することによって前記蒸牡蠣を冷凍する工程を含む、生産方法。 - 請求項1〜5いずれかに記載の生産方法を用いて生産されてなる蒸牡蠣。
- 牡蠣を蒸すための蒸牡蠣の製造装置であって、
高圧蒸気を供給するボイラーと、
前記高圧蒸気を減圧蒸気に変換するスチームチェンジャーと、
前記減圧蒸気を用いて前記牡蠣を蒸す蒸機と、
前記ボイラー及び前記スチームチェンジャーを接続する高圧蒸気配管と、
前記スチームチェンジャー及び前記蒸機を接続する減圧蒸気配管と、
を備え、
前記スチームチェンジャーが、100℃以上の温度かつ3kgf/cm2G以上の圧力の前記高圧蒸気が該スチームチェンジャー内に設けられている貯水槽内に供給されることによって、前記貯水槽中の水が沸騰して100℃以上105℃以下の温度かつ0kgf/cm2G以上0.5kgf/cm 2 G以下の圧力の前記減圧蒸気が発生するように構成されており、
前記減圧蒸気配管が、前記高圧蒸気配管の内径よりも大きい内径を有し、
前記蒸機が、該蒸機中で液体中に浸されていない状態の前記牡蠣に対して前記牡蠣1kgあたり蒸気量0.1kg/h以上で前記減圧蒸気を噴射することによって前記牡蠣を蒸すことによって、前記牡蠣の中心温度が85℃以上である状態を1分間以上維持するための蒸気噴出口を有する、製造装置。 - 請求項7記載の製造装置において、
蒸牡蠣を冷凍するための冷凍機と、
前記冷凍機にフロンを供給するためのフロン供給部と、
をさらに備え、
前記冷凍機が、該冷凍機で前記蒸牡蠣に対して前記フロンによって冷却された冷気を噴射することによって前記蒸牡蠣を冷凍するための冷気噴出口を有する、製造装置。
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