JP5348446B2 - 活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、密着性、耐溶剤性に優れる活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物、金属材料表面に対する密着性に優れ、かつ耐溶剤性に優れる硬化塗膜を有する塗装金属材料およびその製造方法、さらに、硬化塗膜を有する塗装金属材料の接合方法に関する。
従来から塗料・コーティングにおいては、塗装・印刷といった塗工工程に適した塗工粘度を得るために、溶剤で希釈する溶剤型が主流であるが、有機溶剤を使用することは、安全衛生性や作業環境の面で問題がある。また無溶剤型塗料の場合は、溶剤の乾燥工程は不必要となるが、塗工粘度を得るために塗料の加熱を必要とする場合があり、添加する希釈単量体の皮膚毒性、臭気など、溶剤型と同様に問題点が残る。しかも、塗工粘度の制限から高分子材料を利用することができず、このため被膜の化学的・物理的性能を上げることが容易ではない。
特に成形金属材料、金属板等の表面保護に用いられる、金属被覆用塗料には、安全性、環境調和性はもとより、被膜硬度等の一般に求められる性能とともに、金属被覆用途特有の、高度な、密着性、耐溶剤性、さらに後加工に於ける溶接工程において、塗装された保護被膜を除去することなく直接の溶接を可能にする性能が求められる。
これらの問題等を解決するため、近年、水性化の研究開発が盛んに行われている。樹脂の水系媒体への分散もしくは溶解は、分散剤あるいは乳化剤を用いるか、または、内部に局在する分散性基、乳化性基、または溶解性基(イオン性官能基あるいは非イオン性官能基)の作用により達成されており、後者の自己乳化型あるいは自己溶解型樹脂の方が比較的優れた性能を確保している。しかし、分子内に自己乳化を可能にするだけ充分の水溶性官能基を導入する必要があるため、必然的に耐水性と乳化性とのバランスをとる必要が生じ、耐沸騰水性や耐溶剤性などの塗膜物性が不十分となる。
熱硬化型の組成物では、密着性を改善する方法として水性アクリル樹脂と水性アミノ樹脂へ、エポキシ樹脂と燐酸、あるいはエポキシ樹脂と燐酸エステルとカルボン酸との反応物を添加することが、特開昭61−83262号公報、特公平2−41555号公報、特開平5−320568号公報等に開示されている。これらは優れた密着性を有するが、数ミクロンの薄い塗膜においては、耐溶剤性、密着性、加工性を満足させるものではない。種々の方策が提案されているが、現在に至るまで、金属材料、殊に、金属板表面に塗布した数ミクロンの薄膜塗膜の中には、密着性に優れ、高度の加工性に耐え、しかも耐溶剤性、特に極性溶剤に強いものは無い。
活性エネルギー線硬化性の水性塗料組成物は、有機溶剤を用いない環境調和型の塗料として、近年盛んに研究がなされている。塗膜形成成分を構成する基本成分である樹脂系として、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が知られている。アクリル樹脂は主鎖に炭素−炭素結合を有しているため一般に耐薬品性等に優れるが、高度の加工性を得るのが難しい。ポリエステル樹脂は主鎖のエステル結合が柔軟で加工性が得られるが、耐酸、耐アルカリ等の耐薬品性に弱い。また、エポキシ樹脂は密着性、耐薬品性等に優れるが、高度の加工性と耐溶剤性のバランスを取ることが難しい等の一長一短がある。ポリウレタン系樹脂は原料イソシアネートの反応によって、生成するウレタン結合や尿素結合は水素結合を作りやすく粘度が高くなる欠点がある。しかし、イソシアネート基の高い反応性を利用して機能性、性能のバランスを取るのが容易である点や、ウレタン結合が分子内にあるため、その塗膜は水素結合を介して、分子同士が絡み合い、擬似高分子として働くため加工性、密着性に優れる。
たとえば、塗膜形成性に特に優れるポリウレタン樹脂系の活性エネルギー線硬化性水性組成物として、特開平8−259888号公報記載の発明は、水と水に分散した活性エネルギー線硬化性マイクロゲル粒子からなる水性分散体を提供している。前記マイクロゲル粒子は、ポリウレタン樹脂と該樹脂相互間をウレタン結合または尿素結合を介して架橋した架橋構造とからなるゲル状態の被膜形成性ポリウレタン樹脂粒子であり、該樹脂粒子が活性エネルギー線硬化性エチレン性不飽和二重結合と塩の基とを有している。この中において、被膜形成性ポリウレタン樹脂粒子内部に、他の活性エネルギー線硬化性化合物や、活性エネルギー線硬化反応の開始剤を1〜50%含有することができるとしており、こうした活性エネルギー線硬化性マイクロゲル粒子を用いることに依って、水性で充分な加工性、耐溶剤性に優れる塗膜が得られるとしている。
また、特開平9−31150号公報には、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物の二重結合に、活性水素を有するヒドロキシル化合物をマイケル付加させてなる生成物と、酸性基を有するポリヒドロキシ化合物およびポリイソシアネート化合物を必須成分として反応させたものである活性エネルギー線硬化性水性ポリウレタン樹脂組成物が、高架橋度の塗膜が得られる組成物として開示されている。また、従来、一般に活性エネルギー線硬化性組成物には硬化性に優れるアクリロイル基を有する組成物が使われているが、特開平10−251360号公報には、メタクロイル基を持つ活性エネルギー線硬化性水性ポリウレタン組成物が、密着性、耐薬品性、表面硬度、耐熱黄変性に優れ、塗料、コーティング、インキ用に用いられることが開示されている。
また、特開平10−251361号公報には、活性エネルギー線硬化性マイクロゲル粒子と活性エネルギー線硬化性水性ポリウレタン樹脂を混合することにより優れた密着性と耐溶剤性、加工性および塗工適性が得られると記載されている。
こうした活性エネルギー線硬化性水性ポリウレタン樹脂組成物はプラスチックフィルム、木質建材、建材化粧紙等の有機材料、金属材料やガラス等の無機材料の何れにも密着性が優れ、耐溶剤性にも優れ、塗料、コーティング剤、インキ等の用途に用いられている。これらは何れも、活性エネルギー線硬化性エチレン性不飽和二重結合と塩の基とを併せ有する水性ポリウレタン樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性水性組成物であるが、その塗膜は活性エネルギー線によって硬化し、アクリロイル基濃度が高く、架橋度が高いほど耐溶剤性は高くなる。しかしながら、架橋度が上がるほど、密着性およびそれに伴う加工性が低下する欠点がある。また、耐溶剤性においても、水性化するため塩の基や極性基を導入する必要があり、化学組成自身の極性が高くなり、こうした組成物の架橋度を相当上げても、特にエタノール等の極性溶剤に対する耐性を得るのは困難である。
耐溶剤性を得るために架橋度を上げてしまうと、さらに過酷な態様、たとえば、金属板を成形する絞り加工のような高度の加工性と密着性を必要とする用途には対応できない。
エマルジョンタイプの組成物としては、特開平10−298213号公報では、エマルジョンの安定化と基材への密着性の良い組成物として、重合性二重結合を有し、かつカルボキシル基、燐酸エステル基、カルボン酸塩基、燐酸エステル塩基等のアニオン性親水基を含有する活性エネルギー線硬化性乳化剤を含む活性エネルギー線硬化性エマルジョンを提唱している。しかし、得られるエマルジョンタイプの組成物は塗膜形成の時に分子レベルで均質化せず、どうしても成分の局在化が起き、塗膜の表面平滑性、光沢といった塗膜表面の物性ばかりでなく、耐溶剤性、耐薬品性に劣る。さらにはニュートン流動にならないために、均質な水溶性タイプに比べ、塗料にした場合ロール塗工等の塗工適性に劣る。
塗装金属材料を溶接加工する際、接合部位の塗膜が厚いと、電気抵抗が大きく、電圧降下が大きくなる。そのため、溶接に必要な印加電圧を高くしなければならない。従来の塗料を使用した場合であっても、塗膜厚を数ミクロン以下にすれば、前記電圧降下の問題はなくなるが、反面、塗膜の耐溶剤性、金属材料表面との密着性が極度に低下し、その結果、塗装金属材料の後工程における加工性が悪化する。
現在に至るまで、上記欠点を改善するための種々の方策が提案されているが、活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物で、これを使用して金属材料表面上に数ミクロン以下の薄膜を形成した場合に、密着性、耐溶剤性を兼ね備えた塗膜を形成できる塗料組成物は得られていない。また、金属材料表面の接合部位に、薄膜で密着性、耐溶剤性を兼ね備えた塗膜を有した状態で溶接することが可能な塗装金属材料も知られていない。
発明が解決しようとする課題
本発明の課題は、薄膜で密着性、耐溶剤性、特に耐エタノール性を兼ね備えた塗膜を得るための活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を提供することにある。また、本発明の課題は、薄膜で密着性、耐溶剤性、特に耐エタノール性を兼ね備えた塗膜を有する塗装金属材料およびその製造方法を提供することにある。また、本発明の課題は、塗装金属材料をその塗膜を有した状態で、溶接によって接合する方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の燐酸エステル基を有する水性樹脂、特定の燐酸エステル化合物および特定の水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物が上記課題を解決することを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、第一に、化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性樹脂{以下、水性樹脂(I)}、および/または、エチレン性不飽和二重結合を有する水性樹脂{以下、水性樹脂(II)}およびエチレン性不飽和二重結合を有する燐酸エステル化合物{以下、燐酸エステル化合物(III)}を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を提供する。
本発明は、第二に、金属材料表面上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料であって、該硬化塗膜が、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化塗膜厚が3μm以下である塗装金属材料を提供する。
本発明は、第三に、金属材料上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料の製造方法であって、金属材料上に、水性樹脂(I)、および/または、燐酸エステル化合物(III)および水性樹脂(II)を含有する水性塗料組成物を、硬化塗膜厚が3μm以下に塗布する工程および活性エネルギー線で該塗膜を硬化させる工程を含む塗装金属材料の製造方法を提供する。
本発明は、第四に、金属材料表面上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料の接合方法であって、該硬化塗膜が、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化塗膜厚が3μm以下である塗装金属材料を、該硬化塗膜を有した状態で溶接によって接合する塗装金属材料の接合方法を提供する。
これらにより、(1)耐溶剤性、金属材料表面に対する密着性に優れた活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物、(2)金属材料表面に、乾燥膜厚が3μm以下である、耐溶剤性、該金属材料との密着性に優れた硬化塗膜を有する塗装金属材料、(3)該塗装金属材料の製造方法、(4)該塗装金属材料表面の硬化塗膜を除去することなく、すなわち厚さが3μm以下の該硬化塗膜を有した状態で、溶接によって接合する塗装金属材料の接合方法を提供することができる。
第一に、本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物について詳細に説明する。本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物は、水性樹脂(I)、および/または、水性樹脂(II)および燐酸エステル化合物(III)を含有する。ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、可視光、電子線、X線等のエネルギー線を云う。
本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物に用いる、水性樹脂(I)、または水性樹脂(II)は、水に溶解させた、水に分散した、水に分散可能な、または水希釈性を保持した水性樹脂である。該水性樹脂としては、たとえば、分子中の塩の基を中和して、分子同士のイオンの反発を強めることによって水中に分子レベルの微小な粒子に分散した水性樹脂、または、塩の基を中和した分子を含む粒子同士がイオンの反発によって水に自己分散した樹脂粒子であって、水に分散可能な状態、水に分散した状態、あるいは水と必要に応じて有機溶剤を混合した溶剤に分散した状態の樹脂を挙げることができる。このような水性樹脂の具体例が、たとえば、特開平10−251360号公報、特開平10−251361号公報、特開平8−259888号公報、あるいは特開平9−31150号公報に開示されている。
樹脂の種類としては、水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの水性樹脂にエチレン性不飽和二重結合を導入するために使用する化合物として好ましいのは、エステルのα、β位に二重結合を持つ(メタ)アクリル酸エステルや、イタコン酸のモノエステル、ジエステル、あるいはビニルエーテル類、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸類、およびそのモノエステルあるいはジエステル類である。水性樹脂(I)、あるいは水性樹脂(II)としては、被膜を形成したときに可撓性に富み、金属材料表面との密着性に優れる水性ポリウレタン樹脂を使用するのが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物の硬化塗膜は、塗膜中の水性樹脂が架橋し、かつ該樹脂には燐酸エステル基が化学的に結合された構造をとる。水性樹脂(I)であれば、これを単独で使用しても上記構造をとり得る。これに対して、水性樹脂(II)を単独で使用した場合は、構造中に燐酸エステル基が存在しないこととなり、また燐酸エステル化合物(III)を単独で使用した場合は、塗膜形成能が低く塗膜としての機能に劣る。したがって、水性樹脂(II)と燐酸エステル化合物(III)は、それぞれを混合して、あるいは水性樹脂(I)と混合して使用する。水性樹脂(I)、水性樹脂(II)、燐酸エステル化合物(III)は、いずれも分子中にエチレン性不飽和二重結合を有しているので、2種類以上を混合した場合は、どの組合せであっても上記構造をとり得ることとなる。該水性塗料組成物中の不揮発分に対する燐酸エステル基の含有率は、高い密着性および耐溶剤性を得るためには、燐原子換算で0.1〜10.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物に用いる溶剤としては、水の他に、水性樹脂(I)、水性樹脂(II)、燐酸エステル化合物(III)を溶解し得る有機溶剤を任意に選ぶことができるが、活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物中の有機溶剤の含有量は、安全性、衛生性あるいは、環境汚染を少なくする意味から、5質量%以下が好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物に用いる、燐酸エステル化合物(III)は、一分子中に一個以上の、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、たとえば、同一分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する燐酸アルキルエステル、燐酸アリルエステル、燐酸アラルキルエステル等が例示される。さらに具体的には、下記一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレート、すなわち、燐酸モノエステル、燐酸ジエステルと、アルキルモノグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステルまたはポリエポキシ化合物との反応物、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基とエチレン性不飽和二重結合を併せ有する化合物と燐酸あるいは燐酸モノエステル、燐酸ジエステル等との反応物、あるいは下記一般式(2)で表される燐酸ポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。特に好ましいのは、一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートである。
Figure 0005348446
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一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートは、たとえば燐酸と2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを脱水縮合して得られる化合物、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートにε−カプロラクトンを開環付加して得られる化合物と燐酸の脱水縮合物等を代表として挙げることができる。
一般式(2)で表される燐酸ポリエーテル(メタ)アクリレートは、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等へのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の付加物と燐酸とを脱水縮合して得られる化合物を代表として挙げることができる。
燐酸エステル化合物(III)とエチレン性不飽和二重結合と塩の基を併せ有する水性樹脂(II)を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物は、上記した燐酸エステル化合物(III)を、水、親水性有機溶剤、あるいはそれらの混合溶剤に溶解または分散可能な、エチレン性不飽和二重結合と塩の基を併せ有する水性樹脂(II)と混合することによって得られる。上記した、燐酸エステル化合物(III)は、白濁、沈殿のない保存安定性の良い活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を得るために、塩基性化合物で中和することが好ましい。
水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基は、燐酸モノエステル、燐酸ジエステル、燐酸トリエステルで良い。水性樹脂と結合していない側は水素、アルキルエステル、アリルエステル、アラルキルエステルなどが挙げられる。水性樹脂(II)への燐酸エステル基の導入は、たとえば、水性樹脂(II)がアクリル樹脂の場合、燐酸(メタ)アクリレートを他のアクリル単量体類と共重合させることで、アクリル樹脂に、化学的に結合した燐酸エステル基を導入することができる。水性樹脂(II)がエポキシ樹脂の場合、エポキシ基に燐酸エステルまたは燐酸を反応させることで、エポキシ樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を導入することができる。水性樹脂(II)がポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂の場合は、それぞれの水酸基に五酸化二燐を反応させて、ポリエステル樹脂、あるいはポリウレタン樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を導入することができる。燐酸エステル基を導入する前、あるいは後にそれぞれの樹脂に公知の方法でエチレン性不飽和二重結合を導入することによって、水性樹脂(I)が得られる。
前記活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物中の燐酸エステル基はその一部または全部を塩基性化合物によって中和して用いることができる。
前記した、本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物には、水性樹脂(I)、および/または、水性樹脂(II)および燐酸エステル化合物(III)に、さらに公知慣用のシランカップリング剤を添加することにより、金属材料表面上に該活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を塗布して形成した硬化塗膜と、該金属材料表面との、なお一層高い密着力を得ることができる。
前記した、本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物には、水性樹脂(I)、水性樹脂(II)および燐酸エステル化合物(III)、またはシランカップリング剤に、さらに必要に応じて、活性エネルギー線硬化性単量体、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、公知の活性エネルギー線硬化用重合開始剤、公知の樹脂組成物、アミノプラスト、希釈剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、加水分解防止剤、乳化剤、レベリング剤、消泡剤、抗酸化剤、抗菌剤等、添加剤、助剤等を混合することができる。さらに必要に応じてシリカ粉末、アルミナ等の無機粉末、あるいは公知の染料、顔料等の着色料、防錆剤、防錆顔料を混合することができる。
(ポリウレタン樹脂)
エチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリウレタン樹脂{以下、水性ポリウレタン樹脂(II−U)}としては、エチレン性不飽和二重結合と塩の基を併せ有し、水に溶解あるいは分散してなる水性ポリウレタン樹脂を代表として挙げることができる。水性ポリウレタン樹脂(II−U)の代表的な製造方法として、まず、塩の基を有する化合物類(a)と、2官能以上のポリイソシアネート化合物類(b)と、ポリオール化合物類(c)とをイソシアネート基が過剰になるように配合してイソシアネート基末端ポリウレタンプレ重合体を得る。次いで、このイソシアネート基末端ポリウレタンプレ重合体に、水酸基1〜2個とエチレン性不飽和二重結合を1個以上有する活性エネルギー線硬化性化合物類(d)を反応させて、末端がエチレン性不飽和二重結合またはイソシアネート基である、活性エネルギー線硬化性エチレン性不飽和二重結合と塩の基を有するポリウレタンプレ重合体を得ることができる。次いで、この活性エネルギー線硬化性エチレン性不飽和二重結合と塩の基を有するポリウレタンプレ重合体中の塩の基を50℃以下で中和し、イオン化した中和溶液を水中に分散し、水・有機溶剤混合溶液を調製する。その後、必要に応じて、水あるいは有機溶剤に溶解させた架橋剤(e)を30℃以下で添加する。架橋剤(e)を用いて架橋あるいは鎖延長させる別の方法としては、架橋剤(e)をあらかじめ水相に溶解し、次いでイオン化した中和溶液を水中に分散し、水・有機溶剤混合溶液を調製する。最後に、水・有機溶剤混合溶液から有機溶剤を減圧留去することによって、活性エネルギー線硬化性を有する水性ポリウレタン樹脂(II−U)を得ることができる。
上記2官能以上のポリイソシアネート化合物類(b)の一部または全部をジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、水添MDI)を使用することで、水添MDIを用いた水性ポリウレタン樹脂{以下、水性ポリウレタン樹脂(II−U−H)}が得られ、特に、耐溶剤性の観点で好ましく用いられる。水添MDIの全ポリイソシアネートに対する配合比率は、25質量%以上であることが好ましい。
化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリウレタン樹脂{以下、水性ポリウレタン樹脂(I−U)}は、水性ポリウレタン樹脂(II−U)に関する上記説明箇所に記載した、塩の基を有する化合物類(a)とポリオール化合物類(c)の一部を、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類1モルに一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートを2モル付加した反応物に置き換えることで得ることができる。さらに、該水性ポリウレタン樹脂(I−U)、水性ポリウレタン樹脂(II−U)および水性ポリウレタン樹脂(II−U−H)のエチレン性不飽和二重結合濃度は1〜5当量/kgであることが好ましい。
水酸基とイソシアネート基の反応は、無溶媒で、あるいはイソシアネート基と反応しない溶媒中で、20〜120℃の範囲内において行うことができる。またこの時、公知の重合禁止剤、反応触媒を適当量任意に添加することができる。水酸基とイソシアネート基の反応終了後、必要に応じて、公知の活性エネルギー線硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化用重合開始剤、活性エネルギー線硬化性単量体、活性エネルギー線硬化性オリゴマー、公知の樹脂化合物、アミノプラスト、希釈剤、界面活性剤、可塑剤、ワックス、加水分解防止剤、乳化剤、レベリング剤、消泡剤、抗酸化剤、抗菌剤等の各種樹脂、添加剤、助剤等を混合することができる。
これらの添加剤は、塗料組成物を調製する際に添加することもできるが、特開平8−259888号公報に開示されているように、本発明に用いる水性樹脂を調製する際に、水に転相する前の段階で導入することにより非水溶性化合物でも容易に混合することができる。
前記した、塩の基、すなわち、塩を形成し得る基を有する化合物類(a)において、塩の基としては、たとえば、リン酸エステル基、スルホン酸基、N,N−ジ置換アミノ基、カルボキシル基、あるいは、中和されたリン酸エステル基、中和されたスルホン酸基、中和されたN,N−ジ置換アミノ基、中和されたカルボキシル基等の何れかを有するジオール類、およびジアミン類が適する。具体的例としては、トリメチロールプロパンモノリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノ硫酸エステル、二塩基酸成分の少なくとも一部がナトリウムスルホ琥珀酸、あるいはナトリウムスルホイソフタル酸であるポリエステルジオール、N−メチルジエタノールアミン、ジアミノカルボン酸類、たとえば、リシン、シスチンおよび3,5−ジアミノカルボン酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸ならびに3,5ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等のジヒドロキシアルキルアルカン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ジヒドロキシエチルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミド、あるいは、ジヒドロキシアルキルアルカン酸にε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたカルボキシル基含有ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。また、相溶性向上のため、オキシエチレンの繰り返し単位が3以上の親水性分子鎖を有するポリエチレングリコールを塩の基を有する化合物と併用することができる。
塩の基の必要量は、配合成分の種類と組成比に応じて適宜決定することができる。前記した例の中でも塩の基を有するものとして特に好ましいものは、分子中にカルボキシル基、スルホン酸塩基から選ばれる何れか一種あるいは二種を併せ有するか、またはこれらを有するものの混合物である。とりわけカルボキシル基を導入するのが種々の点でバランスが取り易く好ましい。水性ポリウレタン樹脂(II−U)および水性ポリウレタン樹脂(II−U−H)の酸価は、20〜100KOHmg/gの範囲が好ましく、25〜60KOHmg/gの範囲がより好ましい。
前記した、2官能以上のポリイソシアネート化合物類(b)としては、たとえば、1,6ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、前記脂肪族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂肪族イソシアネートのアダクト体等の脂肪族ポリイソシアネート、あるいはイソホロンジイソシアネート、水添MDI、水添トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、前記脂環族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記脂環族イソシアネートのアダクト体等の脂環族ポリイソシアネート、あるいはキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香脂肪族イソシアネートのアダクト体等の芳香脂環族ポリイソシアネート、あるいは4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、前記芳香族ジイソシアネートの三量体、低分子トリオールと前記芳香族イソシアネートのアダクト体等の芳香族ポリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の3官能以上のポリイソシアネート、あるいはコスモネートLL(三井化学(株)製:カルボジイミド化した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物)、あるいは、カルボジライトV−05(日清紡(株)製:ポリカルボジイミド基を有する末端脂肪族ポリイソシアネート化合物)等のカルボジイミド基を有するポリイソシアネート化合物類等が挙げられ、上記した二種類以上のポリイソシアネート化合物を混合して用いることができる。
前記した、ポリオール化合物類(c)としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール、ひまし油変性ポリオール等を挙げることができる。
さらに、高分子ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等を好ましい高分子ポリオール類として挙げることができる。分子量については特に好ましい範囲として数平均分子量500〜5000の範囲のものが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、前記したポリオール類の他、エチルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル等のアルキルモノグリシジルエーテル類、あるいは、アルキルグリシジルエステル(製品名カージュラE10:シェルジャパン製)等から選ばれる1種以上のモノエポキシ化合物と、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸等の脂肪族二塩基酸、または無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸等の芳香族多塩基酸またはその無水物、または無水ヒドロフタル酸、ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多塩基酸またはその無水物等から選ばれる1種以上の多塩基酸あるいは酸無水物{以下、多塩基酸(f)}との付加反応よって得られるポリオールが、さらに上記多塩基酸(f)と縮合反応することによって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。これらの他にも、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンの開環重合によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記ポリカーボネートポリオール類の例としては、1,6−ヘキサンジオールを原料とするヘキサメチレン系ポリカーボネートポリオール、1,4−ブチレングリコールからなるポリカーボネートジオール、ネオペンチルグリコールからなるポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなるポリカーボネートジオール、1,9−ノナンジオールからなるポリカーボネートジオールが挙げられる。
さらに、前記ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。
前記した、水酸基1〜2個とエチレン性不飽和二重結合を1個以上有する化合物類(d)としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートあるいは、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ライトエステルG−201P(共栄社化学製)の如きモノヒドロキシアクリルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のモノヒドロキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のモノヒドロキシペンタアクリレート類や、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等のジヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、およびこれらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランあるいはεカプロラクトンを付加重合した化合物等が挙げられる。
さらには、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレートと、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン等のジアルカノールアミンあるいは、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、メチルプロパノールアミン等のモノアルキルモノアルカノールアミンとをマイケル付加反応した生成物が挙げられる。また、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の反応性の異なる二つのイソシアネート基を持つジイソシアネート類と、モノヒドロキシモノアクリレート、モノヒドロキシジ(メタ)アクリレート等との反応によって得られるハーフウレタンが挙げられる。あるいはメタクリルイソシアネートと、上記ジアルカノールアミン類あるいは、上記モノアルキルモノアルカノールアミン類とを反応させて得られる生成物も挙げることができる。
水性樹脂にエチレン性不飽和二重結合を有する基を導入する反応、あるいはエチレン性不飽和二重結合を有する基を導入後のその他の反応時においても、ハイドロキノン、ターシャリーブチルハイドロキノン、メトキノン等の重合禁止剤を用いることが望ましい。
水性ポリウレタン樹脂(I−U)、水性ポリウレタン樹脂(II−U)を製造する際には、必要に応じて従来公知のウレタン化触媒、たとえば、ジラウリン酸ジブチル錫、オクチル酸第一錫、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、水酸化ナトリウム、ジエチル亜鉛テトラ(n−ブトキシ)チタン等を用いる。また反応溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶媒中で反応させることが好ましく、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノグライム、ジグライム、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらは、単独あるいは混合して用いることができる。
前記した、架橋剤(e)としては、たとえば、エチレンジアミン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトリアミン、トリエチルテトラミン、またはテトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、シクロヘキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミノメチル等の脂環族アミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、フェニレンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、2,6−ジアミノピリジン等の芳香族アミン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジアミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、または、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシランが挙げられる。さらにケチミン化合物としては、上記例示のジアミン、トリアミンの1級アミンとイソブチルケトンとの間で脱水生成されたケチミン化合物が挙げられる。
前記した、塩の基、燐酸エステル基、あるいは、燐酸エステル化合物(III)、一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートを中和する塩基性の化合物(g)としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリアルキルアミン類、ジメチルモノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールモノメチルアミン等のアルキルアルカノールアミン類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の塩基性ビニル単量体を挙げることができる。
(アクリル樹脂)
本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物に用いる水性アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸あるいはそのエステル等のアクリル単量体を必須成分とした水性樹脂をいい、ビニルエーテル、スチレン、無水マレイン酸等の不飽和二塩基酸あるいはそのエステル等との共重合体であってもよい。
化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性アクリル樹脂{以下、水性アクリル樹脂(I−A)}を得る代表的な方法としては、以下の方法が挙げられる。一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸を必須成分として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等の、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル、およびこれらと共重合可能な単量体を、公知の溶液重合あるいは懸濁重合方法によって共重合する。この場合、得られる重合体が、中和によって水溶性となるよう、一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレート、あるいは(メタ)アクリル酸などの塩の基を有する単量体の配合量を適宜調整する。また、共重合が完了した後は、得られたアクリル共重合体溶液を十分加熱して、共重合に使用した熱重合開始剤を完全に分解させておく。次いでアクリル共重合体溶液にメトキノン、ハイドロキノン等の重合禁止剤を1000ppm加え、必要に応じて公知任意の量の開環触媒を加え、エチレン性不飽和二重結合濃度が1〜5当量/kgとなるようグリシジル(メタ)アクリレートを80〜100℃で、該アクリル共重合体のカルボキシル基と反応させて、該アクリル共重合体に(メタ)アクリロイル基を導入する。アクリル共重合体中のカルボキシル基含有量は、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応後の酸価が最終的に20〜100KOHmg/g、好ましくは25〜60KOHmg/gとなるよう(メタ)アクリル酸の配合量を調整しておく。アクリロイル基を導入した該アクリル共重合体を、前記塩基性化合物(g)によって中和して目的の水性アクリル樹脂(I−A)を得る。
また、上記の単量体に加え、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体を共重合させて得られる、水酸基、カルボキシル基、燐酸エステル基を有するアクリル樹脂の水酸基に公知の方法によって(メタ)アクリロイル基を導入することができる。たとえば、共重合体の水酸基の一部あるいは全部に(メタ)アクリル酸クロライドを反応させ、副生物の塩酸を水洗除去して、あるいは無水(メタ)アクリル酸を反応させ、副生物の(メタ)アクリル酸を水洗除去することによっても、水性アクリル樹脂(I−A)を得ることができる。
エチレン性不飽和二重結合を有する水性アクリル樹脂{以下、水性アクリル樹脂(II−A)}を得る代表的な方法としては、一般式(1)で表される燐酸(メタ)アクリレートを配合しないこと以外は、上記水性アクリル樹脂(I−A)と同様の方法によって得ることができる。
水性アクリル樹脂(II−A)を得る他の方法としては、以下の方法が挙げられる。アクリル酸エステル−スチレン−無水マレイン酸3元共重合樹脂の酸無水物の一部あるいは全部に1級アミンを反応させる。この反応で得られるイミノ基に多官能ポリアクリレートをマイケル付加反応させて(メタ)アクリロイル基を導入することができ、アクリル樹脂を得る。該樹脂中のカルボキシル基を前記塩基性化合物(g)によって中和して水性アクリル樹脂(II−A)を得る。酸無水物の一部または全部に低級アルコールを反応させることによってカルボキシル基の量を調節できる。
(ポリエステル樹脂)
エチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリエステル樹脂{以下、水性ポリエステル樹脂(II−P)}を得る代表的な方法としては以下の方法が挙げられる。ジメチロールアルカン酸等のような塩を形成し得る基を有する化合物類(a)、ポリオール類(c)、多塩基酸(f)等の中からそれぞれ選ばれる1種以上を脱水縮合させて、側鎖にカルボキシル基等の塩の基を有し、分子鎖末端に水酸基を有するポリエステル樹脂を得る。上記で得られた該水酸基の一部に公知の方法にて(メタ)アクリロイル基を導入する。導入の方法としては、たとえば、(メタ)アクリル酸クロライドを反応させ、副生物の塩酸を水洗除去して得る方法、あるいは上記により得られた水酸基の一部あるいは全部に無水(メタ)アクリル酸を反応させ、副生物の(メタ)アクリル酸を水洗除去して得る方法、さらにはポリエステル樹脂の分子末端の水酸基に(メタ)アクリル酸用いてトルエン環流下において脱水エステル法で(メタ)アクリロイル基を導入する方法等が挙げられる。上記エチレン性不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂の塩の基がカルボキシル基の場合、その一部または全部を前記塩基性化合物(g)によって中和して水性ポリエステル樹脂(II−P)が得られる。これらの反応は公知の重合禁止剤を加え反応させることができる。水性ポリエステル樹脂(II−P)の酸価は、20〜100KOHmg/gの範囲が好ましい。
化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリエステル樹脂{以下、水性ポリエステル樹脂(I−P)}を得る代表的な方法は以下の通りである。先ず、分子鎖末端に水酸基を有するポリエステル樹脂に、(メタ)アクリロイル基を導入する。その際、後の燐酸エステル基導入に必要な量の水酸基を残しておく。ポリエステル樹脂中の残余の水酸基に五酸化二燐を用いて燐酸エステル基を導入する。次に、上記ポリエステル樹脂のカルボキシル基および燐酸エステル基の一部または全部を前記塩基性化合物(g)によって中和することによって水性ポリエステル樹脂(I−P)を得る。および水性ポリエステル樹脂(I−P)の酸価は、20〜100KOHmg/gの範囲が好ましい。
(エポキシ樹脂)
化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性エポキシ樹脂{以下、水性エポキシ樹脂(I−E)}を得る代表的な方法は以下の通りである。先ず、エポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加させた公知任意のエポキシアクリレートの水酸基に五酸化二燐を付加し、燐酸エステル基を導入してエポキシ樹脂を得、次いで、前記エポキシ樹脂の燐酸エステル基の一部または全部を前記塩基性化合物(g)によって中和することにより水性エポキシ樹脂(I−E)を得る。燐酸エステル基の導入量は燐原子換算で15〜60mg/gが好ましい。水性エポキシ樹脂(I−E)の酸価が20〜100KOHmg/gとなる量とするのが好ましい。より好ましくは25〜60KOHmg/gである。
エチレン性不飽和二重結合を有する水性エポキシ樹脂{以下、水性エポキシ樹脂(II−E)}を得る代表的な方法は以下の通りである。先ず、エポキシ樹脂のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加させた公知任意のエポキシアクリレートの水酸基に多塩基酸無水物を付加し、カルボキシル基を導入し、次いで、該エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部または全部を前記塩基性化合物(g)によって中和して水性エポキシ樹脂(II−E)を得る。カルボキシル基の導入量は、水性エポキシ樹脂(II−E)の酸価が20〜100KOHmg/gとなる量とするのが好ましい。より好ましくは25〜60KOHmg/gである。
(塗装金属材料)
本発明の、金属材料表面上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料であって、該硬化塗膜が、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化塗膜厚が3μm以下である塗装金属材料について説明する。
金属材料の例としては、鋼材、金属被覆鋼材、非金属被覆鋼材等の鉄鋼材料、チタン、銅、マグネシウム、アルミニウム、および、これらに金属や非金属を被覆した非鉄金属材料等が挙げられる。金属被覆鋼材の例としては、金属を溶射した鋼材、金属をメッキした鋼材等が挙げられる。金属中に無機物や有機物を分散したメッキや溶射を施した金属材料も含まれる。
特に、金属材料が、亜鉛、亜鉛と他の金属との合金、または、溶射またはメッキにより亜鉛で被覆された鋼材に対して、塗膜の表面硬度が高く、耐溶剤性に優れ、金属材料表面に対する密着性に優れ、さらには加工性に優れた塗装金属材料が得られる。金属材料は、その表面に無機被膜を有する金属材料であっても無機被膜を有さない金属材料であっても良いが、無機被膜を有さない金属材料の方が本発明の課題である金属材料に対する密着性と塗膜の耐溶剤性に対する効果が高く好ましい。ここでいう無機被膜は、クロメート処理等によって金属表面上に形成された無機皮膜を意味し、メッキ、溶射等の方法による金属被膜を意味しない。
本発明の塗装金属材料が有する塗膜は、活性エネルギー線を照射することによって架橋し、硬化した塗膜であって、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化後の塗膜厚が3μm以下である。金属材料表面上に該硬化塗膜を形成するための活性エネルギー線硬化性塗料組成物としては、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有したものであればよい。好ましくは、前記した、本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物であって、水性樹脂(I)、および/または、燐酸エステル化合物(III)および水性樹脂(II)を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を用いる場合に特に塗膜の耐溶剤性、金属材料表面に対する密着性に優れた塗膜を得ることができる。
本発明の塗装金属材料は、各種用途に用いられるが、表面の硬化塗膜は、たとえば、指紋跡付着防止用途、潤滑鋼板用途、プライマー用途、また上塗り塗装を不要とする塗膜用途等の各種の観点からの表面保護を目的として設けられる。
本発明の塗装金属材料は、硬化塗膜厚が3μm以下であることを特徴としている。好ましくは硬化塗膜厚0.5〜2μmであり、より好ましくは1〜1.5μmである。硬化塗膜の厚さは目的に応じて決めれば良いが、3μm以下の薄膜であることにより、経済性はもとより、後工程である成形加工に於ける密着性、溶接加工に於ける導電性の確保に優れた効果を奏する。
3μm以下の薄膜であることは、以下の観点からも優れた効果を奏している。すなわち、本発明の塗装金属材料上の硬化塗膜は、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基が金属材料表面に対する親和性あるいは化学的結合性を持ち、かつ、活性エネルギー線照射によるエチレン性不飽和二重結合の重合によって架橋されている。つまり形成された硬化塗膜は単にエチレン性不飽和二重結合の重合による硬化だけではなく、燐酸エステル基の金属材料表面に対する親和性や化学結合によって強固に密着することができる。従ってクロメート処理などの無機被膜を施した表面よりも燐酸エステル基に対し活性な未処理金属表面の方が親和性や化学結合によって強固に密着することができる。
(塗装金属材料の製造方法)
本発明の、金属材料表面上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料の製造方法について説明する。本発明の塗装金属材料の製造方法に用いる金属材料としては、特に限定はないが、前記した塗装金属材料の項に記載した各種の金属材料を用いることが好ましい。金属材料表面上に該硬化塗膜を形成するための活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物としては、水性樹脂(I)、および/または、燐酸エステル化合物(III)および水性樹脂(II)を含有する、本発明の各種活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物が用いられ、硬化塗膜の耐溶剤性、金属材料表面に対する密着性および成形加工性に優れた効果をもたらすことができる。
塗装金属材料の製造方法としては、通常、(1)金属表面の汚れを除去し、塗料組成物の濡れ性や密着性を向上するための工程、たとえば、アルカリ脱脂、酸洗、サンドブラスト、ショットブラスト、水洗、湯洗、溶剤洗浄、研磨等の公知の工程、(2)塗料組成物の濡れ性や密着性をさらに向上するための前処理工程、たとえば、クロメート処理、燐酸亜鉛処理、燐酸鉄処理、その他のリン酸塩処理、複合酸化被膜処理、NiやCo等の置換析出処理等の公知である処理、および、これらの処理を組み合わせた処理工程、(3)塗料組成物を金属材料表面に、塗布、あるいは付着させるための工程、(4)金属材料表面上の塗料組成物中の溶剤を揮発させる乾燥工程、(5)塗料組成物中の硬化反応を促進するための加熱工程、および/または(6)塗料組成物の硬化反応を促進するための活性エネルギー線の照射工程を含む。本発明の、塗装金属材料の製造方法では、前記(3)の工程および(6)の工程を必須の工程とし、その他の工程を適宜組み合わせて、金属材料の表面に活性エネルギー線硬化塗膜を形成することができる。
本発明の塗装金属材料の製造方法では、(3)の塗布工程を必須とし、水性樹脂(I)、および/または、燐酸エステル化合物(III)および水性樹脂(II)を含有する、本発明の各種活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を用いて、硬化塗膜厚が3μm以下となるよう塗布する。塗布方法としては、たとえば、ロールコーター、カーテンコーター、浸漬塗布、スプレー、刷毛塗り、静電塗装等の公知の方法によることができる。
特に、金属材料表面に酸化被膜が形成される前、すなわち、圧延、メッキ処理工程等の直後に該塗料組成物を塗布することによって、前記した、(1)金属表面の汚れを除去し、塗料組成物の濡れ性や密着性を向上するための工程、(2)塗料組成物の濡れ性や密着性をさらに向上するための前処理工程等を省略することが可能となる。
前記(4)の溶剤を揮発させる工程は、風乾、熱風加熱、誘導加熱、近赤外線・遠赤外線等の照射、超音波振動等の公知の方法によることができる。(5)の加熱工程は、たとえば前記(4)の工程で使用した金属材料を加熱する方法によることができる。
本発明の、塗装金属材料の製造方法では、(6)の活性エネルギー線照射工程を必須とし、(5)の加熱工程は省略することができる。活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物の塗膜は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線を照射することにより、該塗膜中の樹脂が架橋して硬化する。活性エネルギー線としては、一般に広く使用されている紫外線、または電子線が好ましい。
塗膜に電子線を照射して硬化させる場合は、特に重合開始剤は必要とせず、加速電圧20〜2000KeV、好ましくは150〜300KeVの電子線照射装置を用いて、全照射量が5〜200kGy、好ましくは10〜100kGyとなるように照射することによって、硬化塗膜を得ることができる。
塗膜に紫外線を照射する場合は、光源として一般に広く使用されている、水銀灯、キセノンランプ等を使用する。この場合は、活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物に光重合開始剤を添加する。光重合開始剤は公知の材料から任意に選ぶことができる。その添加量も任意に選ぶことができるが、たとえば、該塗料組成物の不揮発分に対して、0.2〜20%程度、好ましくは、0.5〜10%の範囲である。
本発明の塗装金属材料の製造方法に於ける硬化塗膜の厚さは3μm以下の範囲で、目的に応じて設定できる。たとえば、指紋防止や潤滑鋼板用途を目的とする場合は、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは1〜1.5μmである。薄膜でありながら、金属材料表面に対して密着性に優れ、かつ耐溶剤性に優れた塗膜が得られる。
(塗装金属材料の接合方法)
本発明の、金属材料表面上に活性エネルギー線硬化塗膜を有する塗装金属材料の接合方法であって、該硬化塗膜が、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化塗膜厚が3μm以下である塗装金属材料を、該硬化塗膜を有した状態で溶接によって接合する塗装金属材料の接合方法について説明する。
活性エネルギー線で硬化した塗膜を有し、溶接によって接合する金属材料としては、該硬化塗膜が、水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有し、硬化塗膜厚が3μm以下、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは1〜1.5μmの塗装金属材料を用いる。前記した本発明の塗装金属材料が好ましく用いられる。また、前記した本発明の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を用いた本発明の塗装金属材料が特に好ましく用いられる。溶接加工される塗装金属材料の形状は特定するものではないが、鋼板等の板状物あるいはその成型物、ダイキャスト成型物、棒状、H鋼等の形状に圧延された金属材料等を挙げることができる。
塗装金属板あるいは成型された塗装金属材料を溶接によって接合する方法として、電気溶接法がある。接合の形態は、接合部位に塗膜が存在する場合と、接合部位には塗膜は存在しないが、反対面、すなわち溶接用の電極が接触する面に塗膜が存在する場合がある。いずれの場合であっても、本発明の塗装金属材料の接合方法は、硬化塗膜を除去することなくそのまま接合ことができることが大きな特徴となっている。
たとえば、1mm厚の電気亜鉛メッキ鋼板の両面に膜厚1〜1.5μmに形成された硬化塗膜同士を重ねてスポット溶接することができる。あるいは、電気亜鉛メッキ鋼板の一方の面に膜厚1〜1.5μmに形成された硬化塗膜同士を重ね、未塗装面から電極を当ててスポット溶接することもできる。本発明は、このように塗装金属材料同士を、接合部位に該硬化塗膜を有した状態で接合する時に、特に効果を奏する。また、反対に未塗装面を重ねて、電気亜鉛メッキ鋼板の塗装面から電極を当ててスポット溶接することもできる。
活性エネルギー線で硬化した硬化塗膜は一般的に導電性が低いので、該硬化塗膜が形成されている塗装金属材料を電気溶接する場合、硬化塗膜が厚いと、高い電圧が必要となる。また、溶接加工によって加熱された硬化塗膜部分から煤が発生すること等の不都合が生じる。たとえばスポット溶接による接合方法において硬化塗膜から生じる煤、油煙等によって電極が汚れるために、塗膜厚が厚いほど溶接可能回数は低下する。従来の塗料組成物であっても、塗膜厚を薄くすればこのような不都合は生じないが、金属表面を保護する塗料としての機能は著しく低下してしまう。
本発明の塗装金属材料の接合方法で使用する塗装金属材料は、硬化塗膜が水性樹脂に化学的に結合した燐酸エステル基を有しており、硬化塗膜厚3μm以下の薄膜でありながら金属材料表面に対する密着性が高く、耐溶剤性に優れる塗膜を有する塗装金属材料である。硬化塗膜が薄膜であるため、電気溶接工程において、電極と塗装金属材料間の電圧降下が少なく、煤等の発生も最小限に抑制することが可能になる。その結果、本発明の塗装金属材料の接合方法によれば、硬化塗膜から生じる煤、油煙等によって電極が汚れることが少なく、1000回以上のスポット溶接も可能である。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に述べる。[実施例A]では本発明の各種水性樹脂を用いた燐酸エステル基を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物と、燐酸エステル基を含まない活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物について述べる。[実施例B]では本発明の中で特に優れた水性ポリウレタン塗料組成物についての具体例について述べる。特に断らない限り、「%」および「部」は、それぞれ「質量%」および「「質量部」を表す。
[実施例A]
{水性ポリウレタン樹脂(II−U)の製造例(1)}
還流冷却管、および窒素導入管、空気導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ポリオキシエチレングリコール(Mn=600)3.2部、ラクトンポリエステルジオール「OD−X−2155」(Mn=970大日本インキ化学工業(株)製)42.6部、2,2−ビス(ジヒドロキシメチル)ブタン酸21.14部、ブチルエチルプロパンジオール7.1部、ひまし油「LM−R」(豊国製油製)22.9部、水添MDI、47.4部、メチルエチルケトン170.9部、オクチル酸第一錫0.02部を撹拌しながら加えて70℃まで0.5時間で昇温し、70〜75℃で3時間反応後、水添XDI(タケネート600)28.8部、を加えて再度70〜75℃で1時間反応させた。その後メトキノン0.2部、ライトエステル「G−201P」(共栄社化学(株)製)40.3部、オクチル酸第一錫0.1部を加え、窒素導入管を空気導入管に替えて、再び70〜75℃で反応を続けた。4時間毎にtert−ブチルハイドロキノン0.04部およびオクチル酸第一錫0.04部を加えながら10時間反応させて、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。30℃に冷却して、この溶液に、トリエチルアミン14.4部を加え、純水530部を加え、「サーフィノールAK02」(日信化学工業(株)製)0.5部を加えた後、50℃でメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:30.0%、酸価39.3KOHmg/g、ガードナー粘度:U、不飽和基濃度が1.6当量/kgである透明液体のエチレンエチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリウレタン樹脂(II−U)を得た。これを、水性ポリウレタン樹脂(II−U−1)と称する。
{水性アクリル樹脂(II−A)の製造例}
還流冷却管、および酸素7〜10%含有窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、酢酸エチル62.24部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート62.24部、メトキノン0.01部を仕込み攪拌し、溶解させた。次いで25℃まで冷却し、あらかじめベンジルアミン6.93部を10.4部の酢酸エチルに混合した溶液を30分間で滴下した。30℃で3時間攪拌した後、質量平均分子量2000;酸価300KOHmg/gの、アクリル酸エチル−スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂{(株)岐阜セラック製造所製}30.83部を77部の酢酸に溶解させた溶液を加えて60℃に昇温して2時間反応させた。30℃まで冷却してトリエチルアミン6.53部を加え、イオン交換水233.6部を加えて30分間攪拌した。さらに30℃を保って、あらかじめピペラジン2.5部を17.5部のイオン交換水に溶かした水溶液を30分間で滴下して、2.5時間30℃で攪拌を続け、40℃で減圧蒸留して酢酸エチルを除去した。ガードナー粘度:M−N、不揮発分:29.8%、エチレン性不飽和二重結合濃度:4.8当量/kg、酸価:54.7KOHmg/g、半透明液体のエチレンエチレン性不飽和二重結合を有する水性アクリル樹脂(II−A)を得た。
{水性ポリエステル樹脂(I−P)の製造例}
グリコール用精溜管、縮合水デカンター、還流冷却管、窒素導入管および酸素7〜10%含有窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、エチレングリコール6.98部、1.6ヘキサンジオール13.59部、ジメチロールブタン酸16.3部、トリメチロールプロパン40.23部、無水フタル酸37.05部、セバチン酸50.56部、窒素を吹き込み、攪拌しながら2時間で180℃に昇温した。230℃まで3時間で昇温して、230℃で5時間反応させた。105℃まで冷却し酸素7〜10%含有窒素導入管に切り替えてトルエン30部、アクリル酸25.2部、メトキノン0.17部を加え、105〜110℃5時間トルエン還流しながら脱水縮合させた。1時間20mmHg減圧して得られたポリエステル樹脂を酢酸エチル73部で希釈し、50℃まで冷却した。50℃で保ちながら、酢酸エチル7.1部で希釈した五酸化二燐を7.1部添加した。50℃2時間保温した後、冷却しながらトリエチルアミン21部を加えてカルボキシル基と燐酸エステル基を中和した後、イオン交換水620部を加え転相溶解し、40〜50℃で減圧蒸留して化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリエステル樹脂(I−P)を得た。ガードナー粘度:U、不揮発分:30.8%、エチレン性不飽和二重結合濃度は2.0当量/kg、酸価64.2KOHmg/g、燐含有率1.8%であった。
{水性ポリエステル樹脂(II−P)の製造例}
グリコール用精溜管、縮合水デカンター、還流冷却管、窒素導入管および酸素7〜10%含有窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、エチレングリコール6.98部、1.6ヘキサンジオール13.59部、ジメチロールブタン酸16.3部、トリメチロールプロパン40.23部、無水フタル酸37.05部、セバチン酸50.56部、窒素を吹き込み、攪拌しながら2時間で180℃に昇温した。230℃まで3時間で昇温して、230℃において5時間反応させた。105℃まで冷却し酸素7〜10%含有窒素導入管に切り替えてトルエン30部、アクリル酸25.2部、メトキノン0.17部を加え、105〜110℃5時間トルエン還流しながら脱水縮合させた。1時間20mmHg減圧して得られたポリエステル樹脂を酢酸エチル73部で希釈し、冷却しながらトリエチルアミン11部加えてカルボキシル基を中和した後、イオン交換水600部を加え転相溶解し、40〜50℃で減圧蒸留してエチレン性不飽和二重結合を有する水性ポリエステル樹脂(II−P)を得た。ガードナー粘度:M、不揮発分:30.6%、エチレン性不飽和二重結合濃度は2.1当量/kg、酸価は41.0KOHmg/gであった。
{水性エポキシ樹脂(I−E)の製造例}
還流冷却管、および酸素7〜10%含有窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、エポキシアクリレート「UE−8400−M80」(大日本インキ化学工業(株)製・MEK含量20%)132.0部、酢酸エチル37.5部、メトキノン0.1部を仕込み、溶解させた。あらかじめ五酸化二燐5.6部を同量の酢酸エチルに混合した溶液を、50℃、30分間で滴下した。50℃3時間保温し、トリエチルアミンを20部加え中和した。イオン交換水260部を加え転相溶解させた。40〜50℃において減圧蒸留して化学的に結合した燐酸エステル基およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性エポキシ樹脂(I−E)を得た。ガードナー粘度:V、不揮発分:30.9%、エチレン性不飽和二重結合濃度は2.0当量/kg、酸価は50.0KOHmg/g、燐含有量6%であった。
{水性エポキシ樹脂(II−E)の製造例}
還流冷却管、デカンター、および酸素7〜10%含有窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、エポキシアクリレート「UE−8400−M80」(大日本インキ化学工業(株)製・MEK含量20%)112.5部、メトキノン0.1部、4塩基無水物「エピクロンB−4400」(大日本インキ化学工業(株)製)15.8部を仕込み、80℃に昇温した。80℃5時間反応し、酢酸エチル22.8部を加え溶解させた。50℃に冷却し、トリエチルアミンを12.1部加え中和した。イオン交換水370部を加え転相溶解させた。40〜50℃において減圧蒸留してエチレン性不飽和二重結合を有する水性エポキシ樹脂(II−E)を得た。ガードナー粘度:V、不揮発分:30.1%、エチレン性不飽和二重結合濃度は1.8当量/kg、酸価は63.6KOHmg/gであった。
(水性ポリウレタン)
活性エネルギー線硬化性不飽和基を持たず、分子中に塩の基を有する加工性の良い水性ポリウレタン樹脂として、大日本インキ化学工業(株)製の水性ウレタン樹脂「SPENSOL:L−512」(不揮発分30%)をそのまま「比較例」に使用した。表1には、「水性ポリウレタン」と記載した。
<活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物の調製>
表1に従い、(実施例A−1)〜(実施例A−8)に使用する、水性樹脂(I)、および/または水性樹脂(II)および燐酸エステル化合物(III)を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を調製した。また、表2に従い、(比較例A−1)〜(比較例A−5)に使用する、燐酸エステル基の入らない活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を調製した。表1および2には、(実施例A−1)を(実A−1)と表し、(比較例A−1)を(比A−1)と表した。以下、同様とする。
なお、表1および2に記載した、水性樹脂以外の各配合成分は下記の通りである。
カヤマーPM21:日本化薬(株)製、燐酸メタクリレート
ビスコート3PA:大阪有機(株)製、燐酸アクリレート
イルガキュア184:チバ・スペシャリティケミカルズ製、光重合開始剤
NUC−シリコンA−174:日本ユニカー(株)製、シランカップリング剤
FZ−3153:日本ユニカー(株)製、シリコーンエマルジョン
<塗装金属材料の作製>
表1〜4記載の(実施例A−1)〜(実施例A−8)、(比較例A−1)〜(比較例A−5)は、不揮発分を20%に調製した活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を、0.8mm厚亜鉛電気メッキ鋼板にドローダウンロッド#3を使用し、硬化塗膜厚が1μmとなるように塗布し、送風乾燥機により80℃で2分間乾燥した。次いで、120W高圧水銀灯を使用し、130mJ/cmの紫外線を照射して塗膜を硬化させた。(実施例A−8)は、前記(実施例A−1〜7)、(比較例A−1)〜(比較例A−5)と同様に塗布、乾燥後、岩崎電気製エレクトロカーテンにより、加速電圧165kV、線量30kGyの電子線を照射し、塗膜を硬化させた。
<塗装金属材料硬化塗膜の物性試験>
(耐溶剤性試験)
5×13cmの塗装金属材料の試験片を作成し、ラビングテスター:I型(太平理化工業株式会社製)のヘッドに、脱脂綿0.8gを4.5×3.5cmのガーゼで包む様に取り付け、溶剤を含ませ300gの荷重をかけて規定回数(5、10、20回)ラビングし、下地が露出しているか否かを、下記基準で判定した。なお、耐エタノール性試験には試薬1級のエタノールを、耐MEK試験には試薬1級のメチルエチルケトンを、それぞれ使用した。
◎:全く露出部分が無く、ラビング跡も目立たない。
○:全く露出部分はないが、ラビング跡がある。
△:痕跡程度下地露出している。
×:塗膜が剥がれ塗膜が露出している。
(密着性試験)
JIS 5400に準じて密着性試験を行った。すなわち、試験片の塗膜中央部に、カッターナイフを使用して、1mm間隔で縦横それぞれ11本の、塗膜を貫通する碁盤目状の切り傷をつけた後、エリクセン試験機を使用し、碁盤目を設けた塗膜面をダイス側に向け、鋼球を5cm押し出した。次いで、碁盤目の上にセロハン粘着テープを圧着して急激に剥離した。碁盤目上に残存する塗膜の面積を求め、百分率で表した。
[実施例A]に係る、塗装金属材料硬化塗膜の物性試験の結果を、表3〜4に示す。
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
[実施例B]
実施例Bでは、一般式(1)で表される燐酸エステル化合物(III)を使用した実施例、水添MDIを原料に用いた水性ポリウレタン樹脂(II−U−H)の実施例、シランカップリング剤を添加した実施例、クロメート処理亜鉛鋼板と未処理亜鉛鋼板との比較等によってさらに詳細に説明する。
{水性ポリウレタン樹脂(II−U)の製造例(2)}
還流冷却管、および窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ポリオキシエチレングリコール(Mn=600)2.4部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸19.6部、ポリエステルジオール(ネオペンチルグリコールアジペート:Mn=500)34.4部、トリメチロールプロパン4.4部、ブチルエチルプロパンジオール9.7部、「タケネート600」(武田薬品製:水添XDI)83.8部、メチルエチルケトン154.3部、ジブチル錫ラウリレート0.008部を入れて撹拌しながら70℃まで0.5時間で昇温し、70〜75℃で3時間反応後、tert−ブチルハイドロキノン0.05部、「ライトエステルG−201P」(共栄社化学(株)製)44.3部、MEK(メチルエチルケトン)88.5部を加え、窒素導入管を空気導入管に替えて、再び70〜75℃で4時間毎にtert−ブチルハイドロキノン0.04部加えながら10時間反応させて、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。この溶液に、トリエチルアミン14.7部、純水516.1部を徐々に加え、30℃で2時間保持後、「サーフィノールAK02」(日信化学工業(株)製)0.5部を加えて50℃でメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.3%、不揮発分の酸価40.5KOHmg/g、ガードナー粘度:U−V、不飽和基濃度が1.9当量/kgである透明液体の活性エネルギー線硬化性を有する水性ポリウレタン樹脂(II−U)を得た。これを、水性ポリウレタン樹脂(II−U−2)と称する。
{水性ポリウレタン樹脂(II−U)の製造例(3)}
還流冷却管、および窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、「ODX2376」(大日本インキ化学工業(株)製アジピン酸/ジエチレングリコール系ポリエステルジオール:Mw=1000)31.9部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸16.1部、ひまし油17.2部、水添MDI、59.2部、メチルエチルケトン124.4部、ジブチル錫ラウリレート0.012部を入れて撹拌しながら70℃まで0.5時間で昇温し、70〜75℃で5時間反応後、tert−ブチルハイドロキノン0.15部、「ライトエステルG−201P」(共栄社化学(株)製)29.4部、「スミジュールN3300」(住友バイエルウレタン製)13.8部、MEK86.3部、ジブチル錫ラウリレート0.15部を加え、窒素導入管を空気導入管に替えて、再び70〜75℃で4時間毎にtert−ブチルハイドロキノン0.04部加えながら10時間反応させて、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。30℃に冷却して、この溶液に、トリエチルアミン11部、純水582.1部を徐々に加え、30℃で0.5時間攪拌後、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン9.1部、アセトニトリル21部を0.5時間で滴下し、45℃に昇温し、45℃にて2時間後に、「サーフィノールAK02」(日信化学工業(株)製)0.50部を加えて50℃にてメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:31.6%、不揮発分の酸価35.1KOHmg/g、ガードナー粘度:O−N、不飽和基濃度が1.4当量/kgである透明液体の活性エネルギー線硬化性を有する水性ポリウレタン樹脂(II−U)を得た。これを、水性ポリウレタン樹脂(II−U−3)と称する。
{水性ポリウレタン樹脂(II−U)の製造例(4)}
還流冷却管、および窒素導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、ポリオキシエチレングリコール(Mn=600)2.2部、「ひまし油変性ジオールHS2G−160R」(Mw=760豊国製油(株)製)47.6部、2,2−ビス(ジヒドロキシメチル)ブタン酸19.6部、ブチルエチルプロパンジオール8.9部、トリメチロールプロパン3.95部、水添XDI(「タケネート600」)76.2部、メチルエチルケトン158.3部、ジブチル錫ラウリレート0.01部を入れて撹拌しながら70℃まで0.5時間で昇温し、70〜75℃で3時間反応後メトキノン0.2部、「ライトエステルG−201P」(共栄社化学(株)製)40.3部、ジブチル錫ラウリレート0.16部を加え、窒素導入管を空気導入管に替えて、再び70〜75℃で4時間毎にtert−ブチルハイドロキノン0.04部加えながら15時間反応させて、ポリウレタン樹脂の溶液を得た。30℃に冷却して、この溶液に、トリエチルアミン13.4部、純水517.6部を徐々に加え、30℃で2時間保持後、「サーフィノールAK02」(日信化学工業(株)製)0.5部を加えて50℃でメチルエチルケトンを減圧留去して、不揮発分:29.0%、不揮発分の酸価37.8KOHmg/g、ガードナー粘度:U、不飽和基濃度が1.7当量/kgである透明液体の活性エネルギー線硬化性を有する水性ポリウレタン組成物(II−U)を得た。これを、水性ポリウレタン樹脂(II−U−4)と称する。
{燐酸エステル化合物(III)の合成例}
還流冷却管、および乾燥空気導入管、温度計を備えた撹拌機付き反応器に、燐酸メタクリレート「カヤマーPM21」(日本化薬(株)製)187部、「カージュラE−10」(油化シェルエポキシ(株)製)102部、メトキノン0.15部を攪拌しながら加え、75℃まで昇温して、75℃で3時間保温して不揮発分の酸価52KOHmg/gの燐酸エステル化合物を得た。これを燐酸エステル化合物(III−G)と称する。
(水性ポリウレタン)
活性エネルギー線硬化性不飽和基を持たず、分子中に塩の基を有する加工性の良い水性ポリウレタン樹脂として、大日本インキ化学工業(株)製の水性ウレタン樹脂「SPENSOL:L−512」(不揮発分30%)をそのまま「比較例」に使用した。表6には、「水性ポリウレタン」と記載した
<活性エネルギー線硬化性塗料組成物の調製>
表5および6に従い、(実施例B−1)〜(実施例B−9)に使用する、水性樹脂(I)、および/または水性樹脂(II)および燐酸エステル化合物(III)を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を調製した。また、表6に従い、(比較例B−1)〜(比較例B−3)に使用する、燐酸エステル基の入らない活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を調製した。
表5〜10において、(実施例B−1)を(実B−1)と表し、(比較例B−1)を(比B−1)と表した。以下、同様とする。
なお、表5および6に記載の「Aquacer537」は、ビックケミー・ジャパン製、水分散性オレフィンワックスを表す。
<塗装金属材料の調製>
金属材料として、表7〜10の「原反」欄に記載したものを使用した以外は、実施例Aと同様にして、紫外線硬化によって(実施例B−1)〜(実施例B−7)、(比較例B−2)、および(比較例B−3)の塗装金属材料を、電子線硬化によって(実施例B−8)、および(比較例B−1)の塗装金属材料を作製した。
なお、表7〜10の「原反」欄に記載した金属材料は、下記の通りである。
「アルミ」:未処理0.5mm厚アルミニウム板
「Cr亜鉛鋼板」:クロム酸処理した0.8mm厚電気亜鉛メッキ鋼板
「未電亜鉛鋼板」:0.8mm厚、クロム酸処理を施していない電気亜鉛メッキ鋼板
「朱溶亜鉛銅板」:0.8mm厚でクロム酸処理を施していない溶融亜鉛メッキ鋼板
「TFS」:クロム酸処理0.26mm厚鋼板
「ブリキ板」:錫の等厚メッキ#50の0.26mm厚ブリキ板
<塗装金属材料硬化塗膜の物性試験>
(耐溶剤性試験)
ラビングの規定回数を、10、20、および50回とした以外は、実施例Aと同様にして行った。
(密着性試験)
実施例Aと同様にして行った。
(加工性試験1)
あらかじめ沸騰水中に3時間浸積した塗装金属材料試験片について、実施例Aの密着性試験と同様にして、加工性試験1を行った。ただし、「原反」が「TFS」および「アルミ」の場合のエリクセン押し出し距離は3.5mm、各種「鋼板」の押し出し距離は5mmとした。
(加工性試験2)
5×15cmの塗装金属材料試験片を用意し、塗装面を外側にして180度曲げ、試験片と同じ厚さのT設定板を用意し、万力で挟み圧し曲げた。挟み込む枚数0を0T、1枚を1T、2枚を2T、3枚を3Tとする。曲げ部をセロハン粘着テープ剥離試験し、剥離しない最大のT設定板枚数を加工性の指標とした。
[実施例B]に係る、塗装金属材料硬化塗膜の物性試験の結果を、表7〜10に示す。
表3および4、ならびに表7〜10に記載した塗装金属材料の耐溶剤性試験、密着性試験、および加工性試験結果から、硬化塗膜厚が3μm以下という薄膜でありながら、実施例はすべての試験項目において優れていることが明白である。
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
Figure 0005348446
発明の効果
本発明は、安全性が高く、作業環境を改善できる水性タイプであって、従来の塗料組成物ではなしえなかった高い耐溶剤性と、各種被塗装物に対する密着性を有し、塗料、コーティング剤、インキ、プライマーコーティング、アンカー剤等の用途に有用な、活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物を提供する。また本発明は、金属材料表面に活性エネルギー線硬化性塗料組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させることにより、硬化塗膜厚が3μm以下という薄膜でありながら、高い耐溶剤性を有し、金属材料表面に対する密着性が優れ、かつ成形加工性にも優れた塗装金属材料、およびその製造方法を提供する。さらに、本発明の塗装金属材料の硬化塗膜厚が3μmという薄膜であることから、硬化塗膜を有した状態のままで溶接によって接合する、塗装金属材料の接合方法を提供できることとなった。

Claims (6)

  1. エチレン性不飽和二重結合を有する燐酸エステル化合物およびエチレン性不飽和二重結合を有する水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物であって、エチレン性不飽和二重結合を有する燐酸エステル化合物が、一般式(1)で示される燐酸(メタ)アクリレートであることを特徴とする活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。

    【化1】
    Figure 0005348446
  2. 水性塗料組成物中の不揮発分に対する燐酸エステル基の含有率が、燐原子換算で0.1〜10.0質量%の範囲である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。
  3. 水性樹脂がエチレン性不飽和二重結合と塩の基を併せ有する水性ポリウレタン樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリエステル樹脂および水性エポキシ樹脂から選ばれる1種以上の水性樹脂である請求項1または2の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。
  4. 水性ポリウレタン樹脂が、エチレン性不飽和二重結合と塩の基を併せ有し、ポリイソシアネート成分の一部または全部がジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートである水性ポリウレタン樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。
  5. シランカップリング剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。
  6. エチレン性不飽和二重結合を有する燐酸エステル化合物が、塩基性化合物で中和されたものである請求項1〜5の何れかに記載の活性エネルギー線硬化性水性塗料組成物。
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