JP5347861B2 - 酢酸ビニル系重合体エマルジョン及びその選定方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、いずれの場合も低温での粘度安定性を改善するには不十分であった。
即ち、低温での粘度安定性が悪い原因は、乳化安定剤として使用したPVAの水酸基が他のPVA中の水酸基と擬似水素結合を行うためと推測し、PVA中の水酸基同士の距離をコントロールして、擬似水素結合の防止を図れば、低温での粘度が安定すると考えた。本発明者らは、このコントロール技術の因子として、得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンのPVAの使用量、PVAの重合度、蒸発残分及び平均粒子径に着目し、鋭意検討を行った結果、得られたエマルジョンの粒子1個あたりのPVAの分子数をコントロールすることにより、低温で良好な粘度安定性を得ることができることを見出した。この場合、下記に示す安定化指数Z(以下、単にZと記載する。)の式において、(A×100/B)はPVAの分子数に起因する因子であり、(C/D)は粒子数に起因する因子である。よって、Zを40以下にコントロールする条件下で酢酸ビニル系重合体エマルジョンの合成を行えば、低温での粘度安定性が良好な酢酸ビニル系重合体エマルジョンが得られることを見出したものである。
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部の存在下で乳化重合して得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1500〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが20〜35.7質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが15.7〜40である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを提供する。
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部の存在下で乳化重合して得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1500〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが20〜35.7質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが15.7〜40である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを紙加工用糊剤として選定することを特徴とする紙加工用糊剤に用いる酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法を提供する。
イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部を用いてなる酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが不飽和基含有単量体群の総量100質量部に対して5〜35質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1000〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが10〜40質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)
Z=(A×100/B)/(C/D) (1)
で示されるZが5以上40以下、好ましくは33以下、更に好ましくは20以下となる酢酸ビニル系重合体エマルジョンである。
従来の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの蒸発残分は、ほとんどが40%を超えていた。これは、エマルジョン中の水を効率よく蒸発させるために、蒸発残分を高くする必要があったためである。水の蒸発速度が遅いと、乾燥速度が遅くなり、生産性が悪くなると考えていたからである。ところが、この考え方では、エマルジョン粒子1個当たりのPVAをコントロールする、即ち、PVAの水酸基どうしの距離を制御することができなかった。
本発明者らの制御技術によって、初めてPVAの水酸基どうしの距離を制御でき、低温での粘度安定性が良好な酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得ることができるのである。
酢酸ビニル系重合体エマルジョン約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ、1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出する。
イ)酢酸ビニル単量体は60〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体は0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%、更に好ましくは0〜3質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体は0質量%を含む残部
である。
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有単量体類、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系単量体類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル等のエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル類が挙げられる。
ロール状の紙へ接着剤を塗布する際、特に低温時(冬季)に糊剤の粘度が上昇すると、コンテナからの紙管生産装置までの供給量が減少したり、また、供給できたとしても高粘度のために紙への塗布量が減少してしまい、紙管強度が極端に弱くなる不具合が生じる場合がある。紙管の生産速度が高速化してきている昨今では、特にこの傾向は顕著である。本発明の酢酸ビニル系重合体エマルジョンは、紙加工用に選択された酢酸ビニルエマルジョンとして糊剤(接着剤)等に用いることにより、上述したような不具合がなく、高速化にも充分対応するものである。
撹拌機、還流冷却器、温度計を取り付けた3Lガラス製容器を用意し、ガラス製容器にイオン交換水173部、ポリビニルアルコールJF−17(日本酢ビポバール社製、ケン化度98.5、重合度1700)を5部入れ、窒素で空気置換を充分行った後、撹拌を開始した。
ガラス製容器の内温を80℃まで上昇させ、酢酸ビニルモノマー100部及び10%過酸化水素水1部と10%酒石酸水溶液1.5部を、それぞれ4時間連続追加した。その後、80℃で1時間反応させ、30℃まで冷却した。重合後、CS−12を12部添加した。
蒸発残分40.0%で、平均粒子径が1030nmの酢酸ビニル系重合体エマルジョンが得られた。
表1に示したような組成で、参考例1と同様の乳化重合を実施して、各酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。ただし、ガラス製容器に初期に入れるイオン交換水は下記のとおりである。
実施例1:267部 比較例2:192部
実施例2:222部 比較例3:133部
実施例3:336部 比較例4:743部
実施例5:204部 比較例5:472部
比較例6:986部
表1に示したような組成で、ガラス製容器にイオン交換水430部、PVAとともにシードとしてスミカフレックス400HQ(住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、蒸発残分55%)を36.4部入れ、参考例1と同様に乳化重合を実施して、酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。
表1に示したような組成で、ガラス製容器にイオン交換水255部、PVAとともにシードとしてスミカフレックス400HQ(住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン、蒸発残分55%)を36.4部入れ、参考例1と同様に乳化重合を実施して、酢酸ビニル系重合体エマルジョンを得た。
JF−17 :日本酢ビポバール社製、ケン化度98.5、重合度1700
JM−17L :日本酢ビポバール社製、ケン化度96.0、重合度1700
JM−26 :日本酢ビポバール社製、ケン化度96.5、重合度2600
JP−05 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度 500
JP−10 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度1000
JP−18 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度1800
JP−33 :日本酢ビポバール社製、ケン化度88.0、重合度3300
PVA−420:クラレ社製、ケン化度79.5、重合度2000
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
H−4644:第一工業製薬社製
エチレングリコールモノフェニルエーテル
スミカフレックス400HQ:シードエマルジョン
住友化学社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂エマルジョン
JIS K6726に準拠。
PVAは一般に下記式で表される。
(CH2CHOH)l(CH2CHOCOCH3)m
重合度は、上記式のl+mである。
レーザー粒径解析装置(大塚電子社製粒子径測定機PAR−III)により下記条件にて測定した。
[測定条件]
測定温度 25±1℃
溶媒 イオン交換水
積算回数 100回
散乱強度 10000±2000cps
試料約1gをアルミ箔製の皿に正確に量り取り、約105℃に保った乾燥器に入れ1時間加熱後、乾燥器から取り出してデシケーターの中にて放冷し、試料の乾燥後の重さを量り、次式により蒸発残分を算出した。
W:乾燥前の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
L:アルミ箔皿の質量(g)
T:乾燥後の試料を入れたアルミ箔皿の質量(g)
アルミ箔皿の寸法:70φ×12h(mm)
5℃の環境下で1週間毎の粘度をBH型粘度計にて測定した。
(No.2 ローター、20rpm)
クラフト紙にエマルジョンを36g/m2で塗布し、クラフト紙をローラーで圧着して貼り合せ、紙が材料破壊を起こすまでの時間(秒)を測定した。
Claims (9)
- イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部の存在下で乳化重合して得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1500〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが20〜35.7質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)で示される安定化指数Zが15.7〜40である酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
Z=(A×100/B)/(C/D) (1) - 式(1)のBが1700〜2600である請求項1記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
- 式(1)のDが800〜1600nmである請求項1又は2記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
- 紙加工用である請求項1、2又は3記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョン。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョンからなる紙加工用糊剤。
- 請求項4記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョンを糊剤として用いるか、又は請求項5記載の紙加工用糊剤を用いて加工された紙ロール。
- イ)酢酸ビニル単量体 60〜100質量%、
ロ)官能基を有するエチレン性不飽和単量体 0〜10質量%、
ハ)イ)及びロ)以外のエチレン性不飽和単量体 0質量%を含む残部
からなる不飽和基含有単量体群100質量部に対し、ポリビニルアルコール5〜35質量部の存在下で乳化重合して得られた酢酸ビニル系重合体エマルジョンであって、
ポリビニルアルコールの使用量Aが5〜35質量部/不飽和基含有単量体群総量100質量部、
ポリビニルアルコールの重合度Bが1500〜3500、
上記エマルジョンの蒸発残分Cが20〜35.7質量%、
上記エマルジョンの平均粒子径Dが500〜2000nmであり、
下記式(1)で示される安定化指数Zが15.7〜40である酢酸ビニル系重合体エマルジョンを紙加工用糊剤として選定することを特徴とする紙加工用糊剤に用いる酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法。
Z=(A×100/B)/(C/D) (1) - 式(1)のBが1700〜2600である請求項7記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法。
- 式(1)のDが800〜1600nmである請求項7又は8記載の酢酸ビニル系重合体エマルジョンの選定方法。
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