JP5334052B2 - 構造部材およびその製造方法 - Google Patents
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このダイアモンドライクカーボン多層膜は、基体上に柔らかい膜と硬い膜を交互に積層してなるものである。
また、耐摩耗性に優れた摩擦摺動材として、第1の材料の表面にサンドブラストなどにより凹凸部を形成し、この凹凸部上に、第1の材料とは硬度が異なる第2の材料で被膜層を形成したものが知られている(以下、「従来技術2」という。例えば、特許文献2参照)。
さらにまた、裏金材上にベアリングメタルを積層したすべり軸受において、ベアリングメタル表面に円周方向の条痕溝を多数設けたものが知られている(以下、「従来技術4」という。例えば、特許文献4参照)。
また、従来技術2の摩擦摺動材は、耐摩耗性に優れているものの、どちらかといえば高摩擦を目的としたものであるため、低摩擦の必要とされる摺動面には適していなかった。
さらにまた、従来技術4のすべり軸受は、軸受全面積に亘って高い油膜圧力を保持することができるようにしたものであるが、条痕溝の凹凸が大きいと低速で直接接触が生じて流体潤滑が生成されず、また、小さすぎると条痕溝が摩耗したときに凹凸が無くなって油膜圧力を保持することができなくなるという問題があった。
(2)また、本発明の構造部材の製造方法は、上記(1)において、さらに、前記メッキ多層膜の表面を研磨することにより、前記金属基材の表面上に、前記メッキ多層膜からなる凹凸表面を形成する工程Cを有することを特徴としている。
(3)また、本発明の構造部材の製造方法は、上記(1)において、前記工程Aにて、前記溝を機械加工により形成することを特徴としている。
(4)また、本発明の構造部材の製造方法は、上記(1)ないし(3)のいずれか1つにおいて、前記工程Bにて、前記メッキ多層膜を、硬さの異なる金属からなる2種類以上の金属膜、あるいは、潤滑油に含まれる添加剤に対する腐食性の異なる金属からなる2種類以上の金属膜により形成することを特徴としている。
(5)また、本発明の構造部材の製造方法は、上記(1)ないし(4)のいずれか1つにおいて、前記工程Bにて、前記2種類以上の金属膜の1層当たりの厚みを1μm以上、100μm以下とすることを特徴としている。
(6)また、本発明の構造部材は、金属基材の表面に形成された断面形状が略三角形の連続する溝上に、前記溝の断面形状に沿って一様な厚みをなし、かつ、材質の異なる2種類以上の金属膜が交互に積層されてなるメッキ多層膜が設けられたことを特徴としている。
(7)また、本発明の構造部材は、上記(6)において、前記メッキ多層膜の表面を研磨することにより前記金属基材の表面上に形成されてなり、前記メッキ多層膜からなる凹凸表面を有することを特徴としている。
(8)また、本発明の構造部材は、上記(6)または(7)において、前記メッキ多層膜は、硬さの異なる金属からなる2種類以上の金属膜、あるいは、潤滑油に含まれる添加剤に対する腐食性の異なる金属からなる2種類以上の金属膜から構成されたことを特徴としている。
(9)また、本発明の構造部材は、上記(6)なしい(8)のいずれか1つにおいて、前記2種類以上の金属膜の1層当たりの厚みは、1μm以上、100μm以下であることを特徴としている。
(1)本発明の構造部材の製造方法は、金属基材の表面に、断面形状が略三角形の溝を連続して多数個形成し、その溝上に、メッキにより、溝の断面形状に沿って一様な厚みをなし、かつ、材質の異なる2種類以上の金属膜を交互に積層してメッキ多層膜を形成するだけで、得られた構造部材の摺動部などへの適用によって、メッキ多層膜の表面に微細なマイクロパターンを包含する凹凸表面が自然発生的に形成される。
(2)本発明の構造部材の製造方法は、上記(1)のメッキ多層膜の表面を研磨して凹凸表面を形成することにより、微細なマイクロパターンを包含する凹凸表面を広範囲に亘って容易に形成することができる。
(3)本発明の構造部材は、金属基材の表面に形成された断面形状が略三角形の連続する溝上に、その溝の断面形状に沿って一様な厚みをなし、かつ、材質の異なる2種類以上の金属膜が交互に積層されてなるメッキ多層膜を設けておくだけで、この構造部材を摺動部などへ適用することによって、自然発生的に新たな凹凸表面が次々と形成されるので、例え、メッキ多層膜の一層の厚みが1μm程度と小さい場合であっても、長期間に渡って凹凸表面を維持することができる。
(4)本発明の構造部材は、上記(3)のメッキ多層膜の表面を研磨することにより得られた凹凸表面を有することによって、メッキ多層膜が摩耗して、メッキ多層膜からなる凹凸表面が消滅しても、新たな凹凸表面が次々と形成されるので、例え、メッキ多層膜の一層の厚みが1μm程度と小さい場合であっても、長期間に渡って凹凸表面を維持することができる。したがって、メッキ多層膜からなる凹凸表面に流体潤滑剤を供給することにより、構造部材の良好な潤滑状態を保つことができる。
この実施形態の構造部材10は、金属基材11と、金属基材11の表面11aに設けられた溝12上に形成されたメッキ多層膜13とから概略構成されている。
なお、「金属基材」には、塊状部材、平板状部材、曲板状部材、円筒部材など、種々の形状の部材が含まれる。
また、「周期的に連続して」とは、複数の溝が大体同じ間隔を隔てて連続的に形成されているという意味であり、隣接する溝間に多少の距離を有する場合も包含する。
また、溝12の断面形状の幅および高さは、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜10mmの範囲が望ましい。
図3に示す例は、切削加工によりアルミ合金の表面に溝を形成したものであり、1mmの間に溝12が周期的に連続して5個形成されているのが分かる。
また、第一の金属膜14と第二の金属膜15は、溝12の断面形状に沿って一様な厚みをなすように設けられている。すなわち、メッキ多層膜13は、溝12の傾斜面と平行に積層されており、これを構成する第一の金属膜14および第二の金属膜15は一様な厚みをなしている。
また、第一の金属膜14と第二の金属膜15の組み合わせとしては、互いに硬さの異なる金属からなる金属膜、あるいは、互いに潤滑油に含まれる添加剤に対する腐食性の異なる金属からなる金属膜が好ましい。
なお、潤滑油に含まれる添加剤としては、例えば、自動車のエンジンオイルに含まれる酸性リン酸エステルなどが挙げられる。
第一の金属膜14と第二の金属膜15の厚みが1μm未満では、金属基材11の表面11aに設けられた溝12上に形成されたメッキ多層膜13を平面状に研磨した場合、メッキ多層膜13の表面13aに露出する第一の金属膜14と第二の金属膜15の幅(間隔)が狭すぎて、第二の金属膜15の表面に窪み15aを形成することが難しくなり、結果として、メッキ多層膜13の表面13aは凹凸表面をなさなくなることがある。一方、第一の金属膜14と第二の金属膜15の厚みが100μmを超えると、窪み15aに溜まっている潤滑油が、第一の金属膜14の表面に十分に供給され難くなり、その結果として摩擦力が増加しやすくなる。
すなわち、図1に示すメッキ多層膜13の形成された構造部材10を軸受などの摺動部に用いれば、構造部材10と、これに接する他の部材との摺動により、硬い第一の金属膜14に比べて、軟らかい第二の金属膜15がより多く除去され、自然発生的に第二の金属膜15に、ナノメートルからマイクロメートルスケールの小さな窪み15aが形成され、その結果として、摺動部にメッキ多層膜13からなるマイクロメートルスケールの凹凸表面(微細なマイクロパターン)が形成される。
まず、図6に示すように、研削または切削加工により、金属基材11の表面11aに、金属基材11の一端から他端に向けて、断面形状が略三角形の溝12を周期的に連続して多数個形成する(工程A)。
図6には、形削り盤による加工方法を例示する。この形削り盤による加工方法では、1本のバイトを一定の間隔で送りながら、バイトの刃31により金属基材11の表面11aを削ることによって、金属基材11の表面11aに溝12を周期的に連続して多数個形成する。この加工方法では、バイトの刃の形状を変えることにより、溝12の傾斜面の角度を調整することができる。
また、形削り盤による加工方法の代わりに、旋盤による加工方法または円筒研削盤による加工方法を用いれば、金属基材が円筒形であっても、その円筒の内外面にも容易に、周期的に連続した溝を形成できる。
また、メッキの前処理として、金属基材11に形成された溝12の傾斜面に、金属表面の活性化処理を施すことが好ましい。この金属表面の活性化処理は、主に塩酸を用いて、金属表面を活性化処理させて、金属基材11とメッキ多層膜13の密着性を向上させる処理である。
この例では、摩耗前のメッキ多層膜23の凸状の部分23aの高さが1μm〜10μmであるので、さらに1μm〜2μm程度摩耗しても、確実にマイクロメートルスケールの凹凸表面が維持される。
本発明において、構造部材10が他の部材との摺動に供されるとき、他の部材と見掛け上接触している面積全体にメッキ多層膜13が露出していることが好ましく、さらに摩耗が進行したときにも金属基材11が現れることがないように十分な層数を有していることがより好ましい。
Claims (9)
- 金属基材の表面に、研削または切削加工により、断面形状が略三角形の溝を連続して多数個形成する工程Aと、
前記溝上に、メッキにより、前記溝の断面形状に沿って一様な厚みをなし、かつ、材質の異なる2種類以上の金属膜を交互に積層してメッキ多層膜を形成する工程Bと、を有することを特徴とする構造部材の製造方法。 - さらに、前記メッキ多層膜の表面を研磨することにより、前記金属基材の表面上に、前記メッキ多層膜からなる凹凸表面を形成する工程Cを有することを特徴とする請求項1に記載の構造部材の製造方法。
- 前記工程Aにて、前記溝を機械加工により形成することを特徴とする請求項1に記載の構造部材の製造方法。
- 前記工程Bにて、前記メッキ多層膜を、硬さの異なる金属からなる2種類以上の金属膜、あるいは、潤滑油に含まれる添加剤に対する腐食性の異なる金属からなる2種類以上の金属膜により形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造部材の製造方法。
- 前記工程Bにて、前記2種類以上の金属膜の1層当たりの厚みを1μm以上、100μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構造部材の製造方法。
- 金属基材の表面に形成された断面形状が略三角形の連続する溝上に、前記溝の断面形状に沿って一様な厚みをなし、かつ、材質の異なる2種類以上の金属膜が交互に積層されてなるメッキ多層膜が設けられたことを特徴とする構造部材。
- 前記メッキ多層膜の表面を研磨することにより前記金属基材の表面上に形成されてなり、前記メッキ多層膜からなる凹凸表面を有することを特徴とする請求項6に記載の構造部材。
- 前記メッキ多層膜は、硬さの異なる金属からなる2種類以上の金属膜、あるいは、潤滑油に含まれる添加剤に対する腐食性の異なる金属からなる2種類以上の金属膜から構成されたことを特徴とする請求項6または7に記載の構造部材。
- 前記2種類以上の金属膜の1層当たりの厚みは、1μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の構造部材。
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