JP4128715B2 - 多層銅合金材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度、導電性、めっき性に優れる、電子機器部品に適した銅合金材料の安価な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体リードフレーム、コネクター、スイッチリレーなどの接点バネ、端子などの電子機器部品には導電性、伝熱性、機械的強度、加工性、耐食性などに優れるCu−Co−Ag−Be合金やCu−Ni−Si合金などの銅合金材料が多用されている。これらの銅合金材料の製造は、通常、電気銅に合金元素を添加して溶解鋳造し、得られる銅合金鋳塊に、熱間圧延、面削、冷間圧延(中間焼鈍を含む)、仕上圧延、低温焼鈍、スリッター加工、めっき処理を施して行われる。前記めっき処理により耐食性、半田付け性、ボンディング性、電気接続性などが改善される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
最近、電子機器の小型化に伴い、そこに用いられる銅合金材料には、強度或いは導電性の向上が強く求められるようになり、これに応じて、種々元素を添加した新しい銅合金材料が提案されている。しかしこれら新銅合金材料では電子機器部品に要求される強度或いは導電性が充分に得られず、また添加元素によっては不めっき、めっき層の密着不良、めっき表面での異常析出などが起き、めっき性に劣る。このため、より複雑なめっき前処理法が検討されている。さらにこれらの新銅合金材料は製造工程が従来材よりも複雑で製造コストが大幅に高くなるという問題がある。本発明は、強度、導電性、めっき性に優れる銅合金材料の安価な製造方法の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、銅箔の片面または両面に、銅以外の金属元素層を被覆する操作と、銅層を被覆する操作をこの順に交互に施して、最外層の少なくとも一方が銅層からなる5層(銅箔を含む)以上の積層体を作製し、前記積層体に熱処理および減面加工を施すことにより、銅層と銅合金層が交互に5層以上積層され、かつ最外層の少なくとも一方および内層の一部が銅層からなる、導電性、強度、めっき性に優れた多層銅合金材料を得ることを特徴とする多層銅合金材料の製造方法である。
【0005】
請求項2記載の発明は、前記銅合金層が、合金元素としてAg、Sn、Zn、Ni、Crのうちの1種または2種以上を含む銅合金である請求項1記載の多層銅合金材料の製造方法である。
【0006】
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で製造される銅合金材料は図1に示すように、銅層1と銅合金層2が交互に5層以上積層され、且つ最外層の少なくとも一方が銅層からなるものである。本発明で製造される銅合金材料は銅層1により導電性が確保され、銅合金層2により強度が確保される。銅層1は銅を99.9wt%以上含む純銅により形成される。銅合金層2は任意の銅合金により形成されるが、特にAg、Sn、Zn、Ni、Crのうちの1種または2種以上を含む銅合金で形成するのが高強度が得られ望ましい。
【0008】
本発明で製造される銅合金材料は最外層の少なくとも一方を銅層とし、この銅層の表面をめっき面とする。このため従来の簡単なめっき前処理法によっても良好なめっき性が得られる。銅合金材料の両表面にめっきする場合は最外層の両方を銅層とする。本発明において、銅層と銅合金層の積層数を5層以上とする理由は、5層未満では機械的性質などにおける均一性が充分に得られないためである。
【0009】
銅層と銅合金層の厚さの比率は特に限定しないが、銅層の合計厚さは、銅合金材料全体の厚さの2%〜50%にするのが望ましい。2%未満では十分な導電性が得られない上、めっき面となる銅層の表面にまで銅合金層の合金元素が拡散して良好なめっき性が得られなくなる恐れがあり、50%を超えると銅合金層が減少して十分な強度が得られなくなるためである。
【0010】
請求項記載の発明は、例えば、図2(イ)に示すように、銅箔3の片面に、銅以外の金属元素層4を被覆する操作と、銅層5を被覆する操作をこの順に交互に各2回施して5層(銅箔を1層と数える)の積層体6を作製し、積層体6に熱処理を施して、隣接する各層間で相互拡散を起こさせて銅合金層を形成し、次いで減面加工を施して所望の厚さに仕上げて銅合金材料を製造する方法である。
【0011】
或いは、図2(ロ)に示すように、銅箔3の両面に、銅以外の金属元素層4を被覆する操作と、銅層5を被覆する操作をこの順に交互に各2回施して5層(銅箔を1層と数える)の積層体7を作製し、以下図2(イ)に示した場合と同じようにして銅合金材料を製造する方法である。この発明では、被覆を両面に同時に行うことにより、図2(イ)に示した方法より高い生産性が得られる。
【0012】
請求項記載の発明において、前記銅箔には、電解銅箔、圧延銅箔など任意の銅箔が使用できるが、コストと品質の面から電解銅箔が望ましい。また前記2種の被覆操作を交互に施して層数を5層以上とする理由は、得られる銅合金材料の機械的性質を均一化するためである。また合金濃度が強度的に最適となる銅合金層と銅層との境界近傍部分を増やすためである。
【0013】
銅以外の金属元素層には、銅との間で合金を形成する任意の金属元素が使用できる。特に、Ag、Sn、Zn、Ni、Crは銅合金層が高強度となり望ましい。前記銅以外の金属元素層は複数の金属元素で形成しても良い。
【0014】
銅以外の金属元素層または銅層の被覆には、蒸着法、化学めっき法、電気めっき法などが適用される。特に電気めっき法はコスト的に有利である。熱処理条件は特に限定しないが、雰囲気は非酸化性、処理温度は150℃〜800℃、処理時間は30秒〜4時間が適当である。
【0015】
減面加工は、通常、圧延加工により施される。銅合金材料は減面加工により所望厚さに仕上げられ、また強度が向上する。減面加工率は5%〜80%が適当である。熱処理と減面加工は必要に応じ複数回施しても良い。熱処理前に軽く減面加工を施すと各層の密着性が向上して熱処理時における相互拡散が促進され、熱処理時間が短縮される。
【0016】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
厚さ10μmの電解銅箔の両面にめっき前処理を常法により施し、次いでその両面に表1に示す銅以外の金属元素層と銅層を交互に電気めっきして、合計層数が5〜25層で、厚さが約300μmの積層体を作製し、この積層体に熱処理および圧延加工をこの順に施して厚さ150μmの銅合金板を製造した。銅以外の金属元素層は種々の元素で形成した。
【0017】
電気めっき条件([a]電解液組成、 [b]めっき温度と電流密度) を下記に示す。
〔Cuめっき〕
[a]CuSO4 190g/リットル、H2 SO4 60g/リットル、NaCl0.1g/リットル。
[b]50℃、10A/dm2
〔Agめっき〕
[a]AgCN10g/リットル、KCN60g/リットル、K2 CO3 30g/リットル。
[b]30℃、0.2A/dm2
〔Snめっき〕
[a]SnSO4 40g/リットル 、H2 SO4 60g/リットル、クレゾールスルフォン酸40g/リットル、ゼラチン2g/リットル。
[b]20℃、1A/dm2
〔Znめっき〕
[a]ZnSO4 380g/リットル、NH2 SO4 30g/リットル。
[b]45℃、20A/dm2
〔Niめっき〕
[a]NiSO4 350g/リットル、NiCl2 30g/リットル、H3 BO3 30g/リットル。
[b]50℃、5A/dm2
〔Crめっき〕
[a]CrO3 250g/リットル、H2 SO4 1.5g/リットル。
[b]40℃、10A/dm2
【0018】
(実施例2)
厚さ10μmの電解銅箔の片面にめっき前処理を常法により施し、次いで前記電解銅箔の片面に表1に示す銅以外の金属元素(AgまたはSn)層と銅層を交互に電気めっきして、合計層数が25層または5層で、厚さが約300μmの積層体を作製した。次にこの積層体に熱処理および圧延加工をこの順に施して厚さ150μmの銅合金板を製造した。前記電解銅箔は、めっき前処理の際、他面(非めっき面)をマスクした。
【0019】
(比較例1)
積層体の層数を4とした他は、実施例1と同じ方法により銅合金板を製造した。
【0020】
(比較例2)
従来のCu−Co−Ag−Be合金板またはCu−Ni−Si合金板を常法により製造した。
【0021】
実施例1、2、比較例1、2で製造した各々の銅合金板について、引張強さと導電率を測定した。またAgを5μm厚さにめっきし、これを450℃で30分間、大気中で加熱して膨れの有無を顕微鏡(倍率100倍)により調べた。Agめっきは次の工程により行った。カソード脱脂(メルテックス製クリーナー#160を60g/リットル含む電解液使用、脱脂条件は50℃、5A/dm2 、30sec)・水洗・酸洗(10%H2 SO4 、室温、30sec)・水洗・Agストライクめっき(AgCN3g/リットルとKCN60g/リットル含む電解液使用、めっき条件は30℃、2A/dm2 、10sec)・Agめっき(AgCN50g/リットルとKCN60g/リットルを含む電解液使用、めっき条件は30℃、1A/dm2 、8.5min)・水洗・乾燥。なお比較例1のサンプルについては、銅合金層側表面はマスクしておき、銅層にのみAgめっきした。結果を表1に示す。表1には製造条件を併記した。
【0022】
【表1】
Figure 0004128715
【0023】
表1より明らかなように、本発明例のNo.1〜12はいずれも引張強さが620MPa以上、導電率が70%IACS以上であり、電子機器部品に要求される性能を満足した。まためっき面が銅層のため、めっき性にも優れた。これに対し、比較例のNo.13、14はいずれも引張強さが低かった。これは強度向上に大きく寄与する銅合金層内の銅層との境界近傍部分が少なかったためである。従来材(比較例2、No.15、16)はめっき面に合金元素が析出したため、めっき性が劣った。
【0024】
本発明の銅合金材料の製造工程は、銅箔の片面または両面に銅以外の金属元素を被覆(電気めっきなど)・熱処理・減面加工の工程からなり、従来の、溶解鋳造・熱間圧延・面削・冷間圧延(中間焼鈍含む)・仕上圧延・低温焼鈍・スリッター加工・めっき処理の工程よりも、工程数が大幅に少ない。従って本発明の製造方法は、生産性に優れる上、製造コストが安い。
【0025】
【発明の効果】
本発明で製造される銅合金材料は、電子機器部品に要求される性能(引張強さ、導電性など)を満足し、また銅層をめっき面とすることにより、従来の簡単なめっき前処理法によっても優れためっき性が得られる。また本発明の製造方法は、従来の製造方法に比べて工程数が大幅に少なく、生産性および製造コストの点で有利である。依って、工業上顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で製造される多層銅合金材料の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】(イ)、(ロ)は本発明の製造方法で用いる積層体の実施形態を示すそれぞれ縦断面図である。
【符号の説明】
1、5 銅層
2 銅合金層
3 銅箔
4 銅以外の金属元素層
6、7 積層体

Claims (2)

  1. 銅箔の片面または両面に、銅以外の金属元素層を被覆する操作と、銅層を被覆する操作をこの順に交互に施して、最外層の少なくとも一方が銅層からなる5層(銅箔を含む)以上の積層体を作製し、前記積層体に熱処理および減面加工を施すことにより、銅層と銅合金層が交互に5層以上積層され、かつ最外層の少なくとも一方および内層の一部が銅層からなる、導電性、強度、めっき性に優れた多層銅合金材料を得ることを特徴とする多層銅合金材料の製造方法。
  2. 前記銅合金層が、合金元素としてAg、Sn、Zn、Ni、Crのうちの1種または2種以上を含む銅合金である請求項1記載の多層銅合金材料の製造方法
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