JP2001239608A - 積層被膜およびその被覆摺動部品 - Google Patents

積層被膜およびその被覆摺動部品

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JP2001239608A
JP2001239608A JP2000051584A JP2000051584A JP2001239608A JP 2001239608 A JP2001239608 A JP 2001239608A JP 2000051584 A JP2000051584 A JP 2000051584A JP 2000051584 A JP2000051584 A JP 2000051584A JP 2001239608 A JP2001239608 A JP 2001239608A
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friction
coating
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Yoshinori Irie
美紀 入江
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑油下の摺動において、セラミック被膜の
耐摩耗性を大きく損なうことなく摩擦係数の低減を図
り、摺動性を向上させた被膜とその被覆部品を提供す
る。 【解決手段】 周期律表IVa、Va、VIa族金属元
素から選択される1種以上の元素の窒化物、炭窒化物、
および炭化物のうち少なくとも1種からなる化合物層
と、Al、Zn、W、Fe、Moから選択される1種以
上を含む金属層を交互に積層する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械部品、摺動部
品など耐摩耗性とともに、低摩擦係数が要求される被
膜、及び部品に適用される。
【0002】
【従来の技術】従来、各種内燃機関、燃料ポンプ、各種
機械などの摺動部に利用される部品に、その摺動性を高
めるための表面処理が施されてきた。摺動性は、耐摩耗
性、耐焼き付き性、摩擦係数によって決定される。これ
ら性質を向上するために、部材表面を窒化処理、メッキ
処理、溶射処理、物理的蒸着法によって改質または被覆
することが試みられてきた。特に、ドライプロセスによ
る表面被覆は、優れた摺動性を示すということが、特開
昭57−57868号公報、特開昭62−120471
号公報により知られている。しかし、現在、摺動部材の
使用条件がさらに過酷になっており、ドライプロセスに
よる表面被覆をさらに強化することが必要となってい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、ドライプロセス
による耐摩耗性被膜を摺動部品に用いた例として、ピス
トンリングの耐摩耗性向上を目的として被膜の配向性を
決定した特開平6−248425号公報、特開平6−2
93954号公報がある。
【0004】また、工具分野においても、耐摩耗性向上
に対して同様な試みがなされており、例えば、特開平9
−291353号公報、特開平10−330914号公
報、特開平10−317123号公報、特開平10−7
6407号公報、特開平9−323205号公報、特開
平9−125230号公報、特開平5−295517号
公報がある。しかし、摩擦係数については、更なる低減
が望まれている。
【0005】また、耐摩耗性向上のために、被膜と基材
との密着力を高めることを考えて特開平6−26421
4号公報、特開平7−18414号公報、特開平9−2
41825号公報には、金属とセラミックの複合層をセ
ラミック層と基材との中間層として用いた例がある。し
かし、これらも耐摩耗性の向上には効果が期待される
が、摩擦係数を低減するものではない。
【0006】この他、被膜の靭性を向上させる目的とし
て、特開平5−78821号公報、特開平11−809
33号公報、特開平11−100656号公報、特開平
10−158818号公報、特開平10−130820
号公報、特開平10−176260号公報、特開平10
−121226号公報では、セラミックの中に第3元素
を添加しているが、耐摩耗性の向上を目的としたもので
あり摩擦係数を低減する目的ではない。
【0007】また、金属の耐摩耗性を向上する目的とし
て、特開平2−173265号公報、特開平2−173
266号公報、特開平2−173267号公報、特開平
5−78821号公報では、金属を主成分とした被膜に
セラミックを複合させたものがあるが、これらも摩擦係
数を低減させるためのものではない。
【0008】従って、本発明の目的は、潤滑油下の摺動
において、セラミック被膜の耐摩耗性を大きく損なうこ
となく摩擦係数の低減を図り、摺動性を向上させた被膜
とその被覆部品を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】これらの課題を解決する
ために以下の手段を用いる。すなわち、周期律表IV
a、Va、VIa族金属元素から選択される1種以上の
元素の窒化物、炭窒化物、および炭化物のうち少なくと
も1種からなる化合物層と、Al、Zn、W、Fe、M
oから選択される1種以上を含む金属層を交互に積層し
た被膜を所定の部品上に形成する。
【0010】化合物粒に金属粒を複合させることによる
摩擦係数の低減機構は次のように説明できる。潤滑油下
の摩擦力は、(1)のように固体−固体の接触で発生す
る摩擦力と潤滑油同士を引き離すのに必要なせん断力の
和で決定される。 F=A{αSm+(1−α)Sl} (1) ここでFは摩擦力、Aは荷重、αは摺動面のうち固体−
固体接触の割合、Smは固体−固体接触の摩擦係数、Sl
は潤滑油同士の摩擦係数である。従って、潤滑油下の摩
擦係数を低減させるためには、第1の方法は固体−固体
の摩擦係数を減らすことであり、第2の方法は固体−固
体接触の割合を減らす、すなわち潤滑油での潤滑割合を
増やすこと、である。
【0011】金属層と化合物層の積層構造を形成する
と、摺動時の摩耗及び、表面の凹凸による積層構造のう
ねりによって、図1の様に摺動面に金属層の部分と化合
物層のの部分が存在することになる。摺動面に表れた金
属自体が自己潤滑作用によって第1の方法、すなわち固
体−固体の摩擦係数を減らすという効果を発揮すること
や、または潤滑油中に含まれる摩擦調整剤や極圧剤など
の添加剤と金属が反応することで硫化物などの潤滑物質
が生成され第1の方法の効果を発揮し、潤滑油下の摩擦
係数が低減する。あるいは金属と極圧剤が反応しない場
合でも、摺動表面に対する摩擦調整剤の吸着量が多くな
り、強固な油膜が形成されることで第2の方法、すなわ
ち固体−固体接触の割合を減らすという効果が発揮さ
れ、潤滑油下の摩擦係数が低減する。
【0012】以上のような機構により、金属層と化合物
層を積層することで摩擦係数が低減されるが、金属層の
それぞれ1層の厚さが0.2nm以上、150nm以下
の方が摩擦係数低減にはより望ましい。金属層の1層の
厚さが150nmより大きい場合、金属の摺動特性とな
ってしまい、摩耗量が多くなることがある。また、金属
層の厚さが、0.2nmより小さいと、積層構造を維持
できなくなることが多い。これら金属層の厚さは、小角
散乱X線回折で観察される金属層と化合物層の積層周期
依存のピークと金属層を構成している金属元素の存在す
る比率から算出してもよいし、透過型電子顕微鏡による
断面観察で観察し、金属層の厚さを10点測定した平均
値でもよい。
【0013】また、より摺動特性を高めるためには、化
合物層の配向性が、X線回折による(111)面に起因
するピークの積分強度と、(200)面に起因するピー
クの積分強度比I(111)/I(200)が、3以上
10以下であることがより有効である。I(111)/
I(200)が3より小さいと摩耗量が大きくなること
がある。また、I(111)/I(200)が10より
大きい被膜を形成することは困難である。この様な化合
物層は耐摩耗性が高く、金属層と積層することで、より
摩擦係数を低減することができる。
【0014】また、金属層が被膜全体に占める割合は、
0.1原子%以上50原子%以下である方が耐摩耗性は
より優れている。積層被膜中の金属層の原子の割合が5
0原子%以上になると、被膜全体に対する金属の割合が
多すぎて、積層被膜の硬度の低下を引き起こし、摺動時
の摩耗が大きくなる傾向がある。また、積層被膜中の金
属層の原子の割合が0.1原子%以下では積層被膜とし
て摩擦係数を低減する効果が得られにくい。
【0015】これらの被膜は、潤滑油下での摺動に効果
を発揮する。以下の実施例では、基材は、平板の片面を
鏡面仕上げした鉄系合金、超硬合金、Al合金を用いた
が、特にこれらに限定されるものでもなく、セラミック
焼結体などでも効果が発揮されると期待される。
【0016】潤滑油は、エンジン油、軽油、ガソリン
油、ギヤ油、タービン油、航空潤滑油、等いかなる潤滑
油でもよく、あるいは各種グリースなどでも本発明によ
る積層被膜において摩擦係数の低減効果が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例により説明する。
【0018】(実施例1)まず、基材をアルコールおよ
びアセトンで超音波洗浄をした。被膜の形成には、図2
に示す真空アーク放電蒸着装置(装置1)、図3に示す
スパッタリング装置(装置2)、および真空アーク放電
蒸着法とスパッタリング法を複合した図4に示す装置
(装置3)、図5に示すイオンプレーティング装置(装
置4)を使用した。基材を洗浄後、装置1〜4のそれぞ
れの真空槽の中に基材を入れ、槽内の真空排気を行っ
た。基板に−500Vから−1500V程度の電圧を印
加し、アルゴンガスを導入することでArイオンによる
基材表面のクリーニングを行った。
【0019】続いて装置1〜4により成膜を行ったが、
化合物粒と金属粒との複合にあたっては、雰囲気ガスを
ArとN2、CH4、またはC22として、ArとN2
CH4,またはC22の分圧を制御しながら、2つの蒸
発源の間で基材を回転させること、または電子ビーム照
射位置を移動させてるつぼからの蒸発物質を変化させる
ことにより、積層被膜を形成した。基板の回転速度を大
きすぎないように、あるいは電子ビームのそれぞれの蒸
発源への1回あたりの照射時間が短すぎないようにする
ことにより、被膜が化合物粒と金属粒の粒状構造となら
ないようにして、化合物層、金属層の積層構造の被膜を
得るようにした。すなわち金属層と化合物層の積層構造
とするために、金属層、化合物層それぞれの成膜におい
て、金属、化合物が島状に析出せずに膜構造となるよう
にそれぞれの成膜時間を十分にとった。
【0020】X線の回折ピークは、CuKα線を入射X
線とした回折であり、化合物のピークから積分強度比I
(111)/I(200)比を求め、金属層の厚さは小
角散乱X線回折により求めた。被膜の組成は、EPMA
分析(電子プローブ微小部分分析)、XPS分析(X線
光電子分光分析)により求めた。EPMA分析により積
層被膜中の元素の割合を求めることができる。同一元素
が化合物層と金属層の両方に存在する場合は、XPS分
析によりその元素の結合状態、すなわちその元素の金属
または化合物ととしての存在状態によって、ピーク位置
が異なるために、各ピークの積分強度の比率によって金
属層中と化合物層中に存在する比率を求めることができ
る。図6に示すように津谷式トライボメーターによって
被膜の耐摩耗性、摩擦係数を評価した。相手材は、直径
20mmのSUS304円柱片として、回転速度1m/
s、荷重490N、総滑り距離3600mとして、室
温、エンジンオイル中で試験した。
【0021】試験結果を表1に示す。摩耗量は、試験機
で評価した後の摩耗痕の断面を表面粗さ計で測定して幾
何学的に求めた断面積を、比較例1の摩耗痕の断面積を
1としたときの値である。
【0022】
【表1】
【0023】(実施例2)内燃機関のヘッド部モータリ
ング試験において、実施例2、4、11の被膜をシム面
に形成して試験したところ、比較例1に比較して、2〜
3割のトルク低減が確認された。
【0024】
【発明の効果】本発明により、耐摩耗性を大きく損なう
ことなく低い摩擦係数を示す被膜を提供することがで
き、内燃機関、各種機械の摩擦損失を低減することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層被膜の摺動面近傍の断面の概略図である。
【図2】真空アーク蒸着放電蒸着装置の概略図である。
【図3】スパッタリング装置の概略図である。
【図4】真空アーク放電蒸着法とスパッタリング法を複
合した装置の概略図である。
【図5】イオンプレーティング装置の概略図である。
【図6】津谷式トライボメーターによる耐摩耗性、摩擦
係数を評価する装置の概略図である。
【符号の説明】
1 化合物層 2 金属層 3 摺動面 4 基材 5 基材ホルダー 6 回転テーブル 7 ガス導入口 8 ガス排出口 9 第1のアーク蒸発源 10 第2のアーク蒸発源 11 直流電源 12 直流電源 13 直流電源 14 基材 15 基材ホルダー 16 回転テーブル 17 ガス導入口 18 ガス排出口 19 第1のスパッタ蒸発源 20 第2のスパッタ蒸発源 21 高周波電源 22 高周波電源 23 基材 24 基材ホルダー 25 回転テーブル 26 ガス導入口 27 ガス排出口 28 第1のアーク蒸発源 29 第2のスパッタ蒸発源 30 直流電源 31 高周波電源 32 直流電源 33 基材 34 基材ホルダー 35 RFコイル 36 シャッター 37 電子銃 38 るつぼ 39 電子 40 ガス導入口 41 ガス排出口 42 第1の蒸発源 43 第2の蒸発源 44 相手材 45 試験片 46 相手材の回転方向 47 負荷重の方向 48 負荷重の方向 49 摩擦力の方向
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3J011 JA02 QA03 SB02 SB04 SB05 SB14 SB20 4F100 AA12A AA15A AA16A AA40A AB02B AB10B AB18B AB20B AB40B AT00C BA03 BA07 BA10A BA10B EG00A EG00B EH66 GB31 GB32 GB51 JK10 JK16 YY00A YY00B 4K029 BA01 BA03 BA09 BA11 BA18 BA54 BA55 BA58 BB02 BB07 BD04 CA01 CA02 CA03 CA04 CA05 CA06 FA04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 周期律表IVa、Va、VIa族金属元
    素から選択される1種以上の元素の窒化物、炭窒化物、
    および炭化物のうち少なくとも1種からなる化合物層
    と、Al、Zn、W、Fe、Moから選択される1種以
    上の元素を含む金属層を交互に積層することを特徴とす
    る積層被膜。
  2. 【請求項2】 前記金属層の1層の厚さが0.2nm以
    上150nm以下であることを特徴とする請求項1に記
    載の被膜。
  3. 【請求項3】 前記化合物層の(111)面および(2
    00)面のX線回折ピークの積分強度の比I(111)
    /I(200)が3以上10以下であることを特徴とす
    る請求項1、請求項2のいずれかに記載の積層被膜。
  4. 【請求項4】 積層被膜中の前記金属層を構成する元素
    は0.1原子%以上50原子%以下であることを特徴と
    する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の積層被膜。
  5. 【請求項5】 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の
    積層被膜が基材の表面の少なくとも一部に被覆された潤
    滑油中の摺動部に使用される被覆摺動部品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010285653A (ja) * 2009-06-11 2010-12-24 National Institute Of Advanced Industrial Science & Technology 構造部材およびその製造方法
JP2012523500A (ja) * 2009-04-07 2012-10-04 ナショナル・マテリアル・エルピー 耐久性を有し変色しにくい多層セラミックコーティングを有するプレーンな銅製のフードウェアおよび金属製物品およびその製造方法
JP2013513027A (ja) * 2009-12-06 2013-04-18 イスカーリミテッド 被覆物品および被覆物品を作るための方法

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