本発明のポリ乳酸発泡体は、ポリ乳酸系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂25質量部〜400質量部を含有するポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体である。そして 該ポリ乳酸系樹脂組成物中のポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量が50質量%以上100質量%以下であることが重要である。そして本発明のポリ乳酸発泡体は、発泡体の密度が30kg/m3〜150kg/m3であることを特徴とする。以下、各要件ごとに本発明のポリ乳酸発泡体を説明する。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸ユニットを主たる構成成分とするポリマーである。ここで主たる構成成分とは、ポリ乳酸系樹脂中の単量体ユニット全体100mol%中において、乳酸ユニットの割合が最大であることを意味し、好ましくはポリ乳酸系樹脂中の全単量体ユニット100mol%中において乳酸ユニットが70mol%〜100mol%である。
本発明でいうポリL−乳酸とは、ポリ乳酸重合体中の全乳酸ユニット100mol%中において、L−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいい、一方、本発明でいうポリD−乳酸とは、ポリ乳酸重合体中の全乳酸ユニット100mol%中においてD−乳酸ユニットの含有割合が50mol%を超え100mol%以下のものをいう。
ポリL−乳酸は、D−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリL−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリL−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリL−乳酸の結晶性は高くなっていく。同様に、ポリD−乳酸は、L−乳酸ユニットの含有割合によって、樹脂自体の結晶性が変化する。つまり、ポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が多くなれば、ポリD−乳酸の結晶性は低くなり非晶に近づき、逆にポリD−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合が少なくなれば、ポリD−乳酸の結晶性は高くなっていく。本発明で用いられるポリL−乳酸中のL−乳酸ユニットの含有割合、あるいは、本発明で用いられるポリD−乳酸中のD−乳酸ユニットの含有割合は、ポリ乳酸発泡体の機械強度を維持する観点から全乳酸ユニット100mol%中において80mol%〜100mol%が好ましく、より好ましくは85mol%〜100mol%である。
本発明で用いられるポリ乳酸系樹脂は、乳酸以外の他の単量体ユニットを含んでいてもよい。他の単量体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記の他の単量体ユニットの共重合量は、ポリ乳酸系樹脂の単量体ユニット全体100mol%に対し、0mol%〜30mol%であることが好ましく、0mol%〜10mol%であることがより好ましい。
このようなポリ乳酸系樹脂は、従来より公知の方法、すなわち、乳酸から直接重合する方法、およびラクチドを開環重合させる方法、などにより合成されたものを用いることができる。ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量については特に制限はないが、8万以上であることが好ましく、より好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万以上である。重量平均分子量が8万を下回る場合、得られた発泡体の強度が不十分となる場合があり好ましくない。また、ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は特に上限はないが、50万を超えると製造が困難になり、経済的でなくなる可能性があるため、50万以下であることが好ましい。
本発明で使用するポリスチレン系樹脂とは、スチレンユニットを主たる構成成分とした重合体であれば特に限定されない。ポリスチレン系樹脂におけるスチレンユニットの割合の好ましい値は、ポリスチレン系樹脂の全単量体ユニット合計100mol%に対して、スチレンユニットを50mol%以上100mol%以下である。そして本発明で使用するポリスチレン系樹脂は、スチレンユニット以外の他の単量体ユニットを、ポリスチレン系樹脂の全単量体ユニット合計100mol%に対して、0mol%以上50mol%以下含有することができる。
ポリスチレン系樹脂は、好ましくはポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体(AES樹脂)、グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂、酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂、及びアクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂の少なくとも1つを含有する態様である。
このようなポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂としてPSジャパン製 グレードG9504、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)としてPSジャパン製 グレードHT478、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)としてテクノポリマー製 グレード SANREAX、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(ABS樹脂)として東レ製 グレードTH10、アクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体(AES樹脂)としてテクノポリマー製 グレード W270、グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂としては東レ製 グレード AS−3G、アクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂としては、新日鐵化学製 エスチレン MS600などが挙げられる。
グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂における、共重合に用いられるグリシジル化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類およびそれらの誘導体(例えば2−メチルグリシジルメタクリレートなど)が挙げられ、これらは単独ないし2種以上を組み合わせて使用することができる。共重合に用いられるグリシジル化合物は、より好ましくはアクリル酸グリシジル、及び/又はメタクリル酸グリシジルである。
グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂における、グリシジル化合物の共重合割合は、グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂の全単量体ユニット100mol%に対して0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましい。
酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂における、共重合に用いられる酸無水物としては特に限定されないが、好ましくは無水マレイン酸が挙げられる。
酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂における、酸無水物の共重合割合は、酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂の全単量体ユニット100mol%に対して0.1mol%以上10mol%以下であることが好ましい。
アクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂における、共重合に用いられるアクリル樹脂は(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合して、又は(メタ)アクリル酸エステル単量体とこれと共重合可能な単量体とを共重合して得られる重合体を挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜12のアルコールとのエステルが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等10を挙げることができる。共重合に用いられるアクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル単独(以下、PMMAと略する。)、またはメタクリル酸メチルと他の共重合体性ビニルまたはビニリデン系単量体の混合物を重合して得られるものが好ましく、さらに好ましくは共重合に用いられるアクリル樹脂100質量%に対して80質量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものである。他の共重合体性ビニルまたはビニリデン系単量体としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。アクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂中に導入されるメタクリル樹脂は、一種に限らず、複数種でも可能である。アクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂における、アクリル樹脂の共重合割合は、アクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂100質量%に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂として、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)、及びアクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体(AES樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する場合(この群を群Aとする)、群Aから選ばれるポリスチレン系樹脂の合計量は、全てのポリスチレン系樹脂の合計100質量%において50重量%以上99質量%以下であることが好ましい。群Aから選ばれるポリスチレン系樹脂の合計量を、全てのポリスチレン系樹脂の全量100質量%において50重量%以上99質量%以下とすることで、ポリ乳酸発泡体に耐熱性を付与することができるために好ましい。
本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂として、グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂、酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂、及びアクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する場合(この群を群Bとする)、群Bから選ばれるポリスチレン系樹脂の合計量は、全てのポリスチレン系樹脂の合計100質量%において1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。群Bから選ばれるポリスチレン系樹脂の合計量を、全てのポリスチレン系樹脂の全量100質量%において1質量%以上50質量%以下とすることで、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の相溶性を向上することができるために好ましい。
本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(ハイインパクトポリスチレン樹脂)、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、アクリレート/スチレン/アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)、及びアクリロニトリル/エチレン/スチレン共重合体(AES樹脂)からなる群(群A)より選ばれる少なくとも1つを含有し、さらに同時に、グリシジル化合物を共重合したポリスチレン系樹脂、酸無水物を共重合したポリスチレン系樹脂、及びアクリル樹脂を共重合したポリスチレン系樹脂からなる群(群B)より選ばれる少なくとも1つを含有することが、さらに好ましい。
このようにポリスチレン系樹脂が、群Aより選ばれる少なくとも1つを含有し、さらに群Bより選ばれる少なくとも1つを含有する場合、群Aより選ばれるポリスチレン系樹脂の合計が、全てのポリスチレン系樹脂の全量100質量%において50質量%以上99質量%以下であり、かつ群Bより選ばれるポリスチレン系樹脂の合計が、ポリスチレン系樹脂の全量100質量%において1質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。このように、群Aより選ばれるポリスチレン系樹脂と群Bより選ばれるポリスチレン系樹脂を併用し、さらにこれらの含有量を特定することで、群Bより選ばれるポリスチレン系樹脂の効果によって、群Aより選ばれるポリスチレン系樹脂とポリ乳酸系樹脂との相溶性が向上し、耐熱性を付与したポリ乳酸発泡体が作成できるからである。
群Aより選ばれるポリスチレン系樹脂や群Bより選ばれるポリスチレン系樹脂などを含めた、本発明のポリ乳酸発泡体に用いられるポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、8万〜50万であることが好まく、この範囲においては、発泡時のガス保持性および押出特性が特に良好である。
前述のように、本発明のポリ乳酸発泡体は、ポリ乳酸系樹脂100質量部とポリスチレン系樹脂25質量部〜400質量部を含有するポリ乳酸系樹脂組成物からなるポリ乳酸発泡体である。本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物中の、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の量関係は、ポリ乳酸系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂25質量部〜400質量部を含有することが重要であり、より好ましくはポリ乳酸系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂50質量部〜400質量部を含有する態様であり、さらに好ましくはポリ乳酸系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂100質量部〜400質量部を含有する態様である。
ポリ乳酸系樹脂100質量部に対してポリスチレン系樹脂が25質量未満の場合、発泡に必要な伸張粘度が得られがたくなるため好ましくなく、400質量部以上の場合、ポリ乳酸を使用する目的、つまり炭酸ガス固定化という言う観点から好ましくない。
また本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量が50質量%以上100質量%以下であることが重要である。ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%における、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量のより好ましい量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量が70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましい量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量が80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましい量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計量が95質量%以上99.8質量%以下である。
本発明のポリ乳酸発泡体の密度は、30kg/m3〜150kg/m3であることが好ましい。より好ましくは30kg/m3〜130kg/m3、さらに好ましくは40kg/m3〜120kg/m3、特に好ましくは45kg/m3〜85kg/m3の範囲である。発泡体密度が150kg/m3を上回ると強度は十分であるものの軽量性、断熱性に劣るため好ましくなく、発泡体密度が30kg/m3を下回ると軽量性には優れるが強度が不十分であったり、成形時に破れが生じるため好ましくない。本発明においては、ポリ乳酸系樹脂にポリスチレン系樹脂を添加することで、本願の発明である発泡体密度が30kg/m3〜150kg/m3のポリ乳酸発泡体を作成することが容易となる。
本発明のポリ乳酸発泡体は、シート形状を有し、少なくとも一方の面の表面粗さRaが、0.5μm〜20μmであることが好ましい。ポリ乳酸発泡体をシート形状として、少なくとも一方の面の表面粗さRaを0.5μm〜20μmの範囲に制御することにより、ポリ乳酸発泡体の外観がよくなるために好ましい。少なくとも一方の面の表面粗さRaが0.5μm〜20μmの範囲であれば、例えば印刷を施す用途において使用する場合には、その印刷鮮明性に優れるなどの効果を有する。より好ましくは少なくとも一方の面の表面粗さRaが0.5μm〜15μm、さらに好ましくは0.5μm〜10μmである。特に好ましくは本発明のポリ乳酸発泡体の両面について、Raを上述の数値範囲に制御した態様である。本発明においては、ポリ乳酸系樹脂にポリスチレン系樹脂を添加することで、また後述するダイ出口部分を通過するポリ乳酸系樹脂組成物の流速を調整することで、ポリ乳酸発泡体の表面粗さRaを0.5μm〜20μmに制御することが容易となる。
本発明のポリ乳酸発泡体の独立気泡率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。独立気泡率が70%を下回ると表面性が低下する可能性があり、断熱性や二次成形性が低下する可能性があるため好ましくない。なお、独立気泡率の上限は100%である。
ポリ乳酸発泡体の独立気泡率を70%以上にするためには、後述するように(III)工程において、ポリ乳酸樹脂組成物を押出発泡させる時の樹脂温度を、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度+10℃以上、ポリ乳酸系樹脂の融点以下で発泡させる方法、後述する(IV)工程においてダイ出口部分におけるポリ乳酸系樹脂組成物の流速を10m/分〜40m/分の範囲に制御する方法が挙げられる。
本発明のポリ乳酸発泡体の平均気泡径は特に限定はされないが、20μm〜400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30μm〜200μmの範囲である。また平均気泡径が100μmを下回ると頗る表面性が向上し、顔料等の特別な添加剤を入れずとも表面の白色度が向上するため、平均気泡径は30μm以上100μm未満が特に好ましい。平均気泡径は小さい方が表面が平滑になりやすく好ましいが、平均気泡径20μm未満の気泡径で、発泡倍率5倍以上の高発泡倍率の発泡体を作成することは困難であり、平均気泡径400μmを超えると発泡体の表面性が低下するため好ましくない。
ポリ乳酸発泡体の平均気泡径を20μm〜400μmの範囲に制御するためには、後述するようにタルクなどの発泡核剤を特定の量範囲で含有させる方法、後述するように(IV)工程において、二酸化炭素を用いた押出発泡において、その減圧速度を0.7GPa/s以上にする方法が挙げられる。
本発明のポリ乳酸発泡体の熱伝導率は特に限定はされず、低い方が断熱性に優れるため好ましいが、他の物性との兼ね合いで決定される。熱伝導率は0.03W/(m・K)〜0.05W/(m・K)の範囲であることが好ましい。0.05W/(m・K)を超えると発泡倍率が低いか、独立気泡率が低いために、緩衝性や断熱性が低下するため好ましくなく、0.03W/(m・K)を下回ると発泡倍率が高すぎて強度が不十分となる可能性があるため好ましくない。ポリ乳酸発泡体の熱伝導率を低くするためには、ポリ乳酸発泡体の密度を30kg/m3〜150kg/m3に制御することで達成可能である。
本発明のポリ乳酸発泡体を構成するポリ乳酸系樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で後述する各種添加剤を含有することができる。詳細には、ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、触媒失活剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核材、発泡核剤などの添加剤を、0質量%以上50質量%以下含有することができ、好ましくはポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において0質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上5質量%以下含有する態様である。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが挙げられる。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤などが使用できるが、非ハロゲン系難燃剤の使用が望ましい。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、水和金属化合物(水酸化アルミ、水酸化マグネシウム)、N含有化合物(メラミン系、グアニジン系)、無機系化合物(硼酸塩、Mo化合物)などが挙げられる。
触媒失活剤としては、アルキルホスフェートおよび/またはアルキルホスホネート化合物などが挙げられ、モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、モノエチルヘキシルホスフェート、ジエチルヘキシルホスフェート、モノステアリルホスフェート、ジステアリルホスフェートなどが挙げられる。
本発明で使用する発泡核剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウムなどの無機フィラーが挙げられ、これらの中でも特にタルクが好ましい。
上記発泡核剤は、その平均粒径が1μmより大きく30μmより小さいものである。発泡核剤は発泡体の気泡の安定形成を目的とすることに加え、注入した発泡剤がガス化する時のガス保持性を付与することを目的として用いる。1μmより小さい場合は樹脂が押出され発泡する際に発泡ガスが気泡膜から漏れ、発泡体が収縮してしまうため好ましくない。一方、30μmより大きいと押出発泡時の口金部分に付着する発泡核剤により、樹脂流路が塞がれ、発泡が安定しないので好ましくない。より好ましくは3μm〜15μmである。平均粒径はレーザー回折法により得られた粒度分布から算出することができる。
発泡核剤の好ましい含有量は、前述の各種添加剤の好ましい含有量の通りであるが、発泡核剤の特に好ましい含有量は、ポリ乳酸系樹脂組成物の全量100質量%において、発泡核剤を2質量%以上5質量%以下含有する態様である。
次に本発明のポリ乳酸発泡体の製造方法について説明する。
本発明のポリ乳酸発泡体の製造方法は特に限定されないが、ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対し、揮発性発泡剤を1質量部〜10質量部注入して発泡させることを特徴とするポリ乳酸発泡体の製造方法であることが好ましい。
本発明で使用する揮発性発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、水、およびエタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチル、モノクロルトリフルオロメタン、ジクロルフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素などが用いられる。これらの揮発性発泡剤は単独で用いても良いし、2種類上を組み合わせて用いても良い。ブタンなどの炭化水素系はポリ乳酸系樹脂組成物との相溶性に富み、かつ蒸発潜熱が大きいため、押し出しされた樹脂を短期間に冷却でき高い倍率の発泡体を作成できるが、安全性、環境負荷の面から二酸化炭素と窒素が最も好ましく、特に超臨界状態の二酸化炭素や窒素を揮発性発泡剤として用いることにより、発泡体密度が30kg/m3〜150kg/m3である発泡体を作成できるために好ましい。
ここで、超臨界状態について簡単に説明する。一般に物質は、温度や圧力などの変化により、気体・液体・固体の異なる三つの状態をとることができる。横軸に温度、縦軸に圧力をとって物質の状態図を考えると、固体と液体の境界が存在する限界は実験的に得られていないが、液体と気体の境界は臨界点が限界である。温度、圧力を上げていき、臨界点を超えると一相の流体となり、それ以上に加圧圧縮しても液体とならず、昇温しても気体にはならない。この状態を超臨界状態とよび、この状態の流体を超臨界流体という。
超臨界流体の有する溶媒特性の一つとして、その溶解能力が挙げられる。二酸化炭素や窒素は超臨界状態が比較的得やすいことが知られており、例えば二酸化炭素は、臨界温度31.0℃、臨界圧力7.4MPa、窒素は、臨界温度−147.0℃、臨界圧力3.4MPaである。
本発明に使用する揮発性発泡剤を用いて発泡させる発泡方法として、好ましくは減圧発泡法があり、密閉したオートクレーブ中にガスおよび/または超臨界流体を封入し、一定時間含浸させたのちオートクレーブの圧力を開放して発泡させる方法、樹脂組成物を溶融押出機に投入し、シリンダの途中からガスおよび/または超臨界流体を注入し、シリンダー内の圧力を利用してガスおよび/または超臨界流体を含浸させ、押出機のダイ出口において発泡させる押出発泡法が挙げられる。この中でも、発泡体密度が30kg/m3〜150kg/m3である発泡体を製造するときは減圧速度を大きくできるため、後者のほうが好ましく用いられる。
本発明のポリ乳酸発泡体に好適な製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリ乳酸発泡体に好適な製造方法は、(I)ポリ乳酸系樹脂組成物を溶融する溶融工程、(II)溶融されたポリ乳酸系樹脂組成物と超臨界状態の揮発性発泡剤を混合する混合工程、(III)超臨界状態の揮発性発泡剤が混合され且つ溶融されたポリ乳酸系樹脂組成物を冷却する冷却工程、(IV)冷却されたポリ乳酸系樹脂組成物をダイにて発泡成形する発泡工程、(V)発泡成形された発泡体を冷却する冷却工程、を有する製造方法である。そして(IV)において、ダイ出口部分を通過するポリ乳酸系樹脂組成物の流速が10m/分〜40m/分であることが好ましい。
(I)〜(IV)の工程を満足することが可能な装置として、単軸押出機、二軸押出機や、単軸押出機と単軸押出機、または二軸押出機と単軸押出機のタンデム型押出機が挙げられる。この中でも上記(III)工程において発泡温度をコントロールしやすいタンデム型押出機を用いることが、ポリ乳酸発泡体の場合、最も好ましい。
タンデム押出機を用いる場合、(I)、(II)工程を一段目押出機で、(III)工程を二段目押出機で行うことが好ましい。ポリ乳酸発泡体を製造するときの一段目押出機のシリンダ温度は、ポリ乳酸系樹脂組成物を溶融させるためにシリンダ温度を160℃〜230℃で設定する。その後ポリ乳酸系樹脂組成物を冷却させるために、二段目押出機のシリンダ温度を後述する樹脂温度となるように設定する。
(IV)の工程に使用するダイには、Tダイ、サーキュラーダイなどの各種形状のダイを用いることができるが、本願の発明である発泡体密度が30kg/m3〜150kg/m3であるポリ乳酸発泡体を得るためには、サーキュラーダイを用いることが好ましい。前記サーキュラーダイとしては一般的にはスパイダータイプが主である。ポリ乳酸系樹脂組成物がダイ流路通過時にスパイダー部での流速低下により発泡体にスパイダーマークが現れることがある。この場合、スパイダー部を温調できる設備にすることは好ましい態様である。
(V)の工程に使用する冷却装置にサーキュラーダイを用いる場合、マンドレルを用いることが好ましい。そしてマンドレルの設定温度は100℃以下に設定することが好ましい。ポリ乳酸系樹脂組成物の場合、(IV)工程で発泡する際、同時に出来た発泡体からガスが抜けていくため、マンドレルの設定温度も重要であり、より好ましくは10℃以上、60℃以下である。また、発泡体のマンドレルに接しない側の面を冷却するために、エアーや水などを吹き付ける事は好ましい態様の一つである。このマンドレルとサーキュラーダイの口径の比率は、目的とする発泡倍率に応じて適時設定することが出来るが、一般的にはマンドレル外径/サーキュラーダイ口径の比は1.5〜5の範囲である。
(III)工程について、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂を特定量含むポリ乳酸樹脂組成物を押出発泡させる時の樹脂温度としては、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度+10℃以上、ポリ乳酸系樹脂の融点以下で発泡させることが好ましく、より好ましくはポリスチレン系樹脂のガラス転移温度+15℃以上、ポリ乳酸系樹脂の融点−5℃以下、さらに好ましくはポリスチレン系樹脂のガラス転移温度+20℃以上、ポリ乳酸系樹脂の融点−10℃以下である。
樹脂温度がポリスチレン系樹脂のガラス転移温度+10℃を下回ると、(IV)の発泡工程において好ましくなく、樹脂温度がポリ乳酸系樹脂の融点を上回ると、(IV)の発泡工程において発泡時のガス抜けが生じやすく好ましくない。
また(IV)の発泡工程において、ダイの温度は、上記冷却後の樹脂温度((III)の冷却工程後の樹脂温度)と、樹脂温度より30℃程高い温度の間に設定することで、表面性の良好な発泡体を得ることが可能となる。
(IV)の工程における、押出発泡時のダイ部分の圧力はダイクリアランスに依存するが、二酸化炭素を用いる場合は10MPa以上であることが好ましく、この圧力を下回ると、揮発性発泡剤である二酸化炭素とポリ乳酸系樹脂が分離し、発泡に適した粘度に調整する際、ポリ乳酸系樹脂の揮発性発泡剤による可塑化効果が得られにくく、押出機に負荷がかかり押出できなくなる。かかる理由により好ましくは12MPa以上、さらに好ましくは16MPa以上である。ダイ部分の圧力は高いほうが、得られるポリ乳酸発泡体の表面性が良好となりやすく、本願の発明である表面粗さが0.5μm〜20μmの発泡体を作成することができる。ダイ部分の圧力には特に上限はないが、50MPaを超えると製造設備の経費が高くなり好ましくなく、通常40MPa程度までとするのが好ましい。
本発明において、(IV)の発泡工程におけるダイ出口部分におけるポリ乳酸系樹脂組成物の流速を10m/分〜40m/分の範囲として、シート状に押出すことが好ましい。流速が10m/分より低いと、ダイの内部で発泡しやすく、ポリ乳酸発泡体の表面性が悪くなるため好ましくなく、40m/分を超えると、ポリ乳酸系樹脂組成物とダイ先端部での剪断発熱が大きく発泡と同時に収縮が起きてしまうため、本願の発明である発泡体密度が30kgm3〜150kgm3のポリ乳酸発泡体が得られにくくなることや、表面性が悪くなることがあるため好ましくない。
なお、ダイ出口部分におけるポリ乳酸系樹脂組成物の流速は、ダイがサーキュラダイの場合には、次の(A)式、すなわち、以下によって算出される値を意味する。
流速[m /分]={Q/(L1+t0/2)×0.1×π×t0×0.1}・・(A)式
この(A)式において、Qは1秒あたりの体積押出量[cm3/秒]、L1 は(r0 −t0 /2)[cm]、L2 は(r0 +t0 /2)[cm]、r0 は(サーキュラーダイの外側口金の出口部分における内径+サーキュラーダイの内側口金の出口部分における外径)/4[cm]、t0 はサーキュラーダイの口金出口部分の間隔[cm]を、それぞれ示す。
(IV)工程における押出発泡時の減圧速度は、二酸化炭素を用いる場合は0.7GPa/s以上、これらの減圧速度を下回ると、ダイ出口直前での発泡剤である二酸化炭素のガス化が難しく、出来た発泡体のセルが破泡しやすくなる。かかる理由により、より好ましくは1GPa/s以上、さらに好ましくは2GPa/s以上である。
本発明のポリ乳酸発泡体は、軽量性、機械的物性、表面性に優れるため、例えば、生鮮食品用包装容器、菓子または食品用トレイ、パッキンなどの食品用途、コンテナー、コンテナーのあて材、通函、函の仕切り板、緩衝材などの包装・梱包用途、デスクマット、バインダー、カットファイル、カットボックスなどの文具、パーテーション用芯材、畳芯材、表示板、緩衝壁材、長尺屋根材、キャンプ時の敷板などの土木・建築用途、苗床、水耕栽培時の種苗基材ケースなどに、漁業網用浮き、釣り用浮き、オイルフェンス用浮きなどの農業資材・水産資材用途、パイプカバー、クーラーボックスなどの断熱用途、粘着テープ用基材、紙管巻芯などの産業資材用途などの幅広い用途に用いることができる。
以下、本発明のポリ乳酸発泡体について実施例を挙げ、より具体的に説明する。実施例および比較例で使用した原料を下記に示す。
<ポリ乳酸系樹脂>
A・・・ポリ乳酸(Nature Works製 グレード4042D)
B・・・ポリ乳酸(Nature Works製 グレード4032D)
<ポリスチレン系樹脂>
A群
C・・・ポリスチレン樹脂(DIC製 グレードXK315)
D・・・ハイインパクトポリスチレン樹脂
(PSジャパン製 グレードHT478)
B群
E・・・アクリロニトリル/メタクリル酸メチル/スチレン共重合体
(東レ製 グレード1900B)
F・・・アクリロニトリル/グリシジジルメタクリレート/スチレン共重合体
(東レ製 グレードAS−3G)
<添加剤>
G・・・タルク(日本タルク製 グレードK−1)
次に、実施例における各種特性の評価は以下の方法および基準で行った。
(1)重量平均分子量
東ソー(株)製HLC8220GPCにて、カラムとしてTSKゲルスーパーHN−H(H−0028および0029)、ガードカラムとしてTSKガードカラムスーパーH−H(K−0008)を用いて測定した。カラム温度は40℃、クロロホルムを溶媒としPMMAを標準に算出した。
(2)発泡体密度の測定
浮力式比重測定装置(Electronic densimetor:型式「MD−300S」;MIRAGE社製)により発泡体密度を測定した。
(3)独立気泡率の測定
独立気泡率は以下の式により算出した。
独立気泡率(%)=100−連続気泡率(%)
連続気泡率(%)={(Va−Vx)/Va}×100
ここで、Vx(実容積)は空気比較式比重計(型式「1000型」;東京サイエンス株式社)により測定された発泡体の容積であり、Va(見かけの容積)は発泡体表面をテープでシールし、同様に測定された容積である。
(4)熱伝導率の測定
熱伝導率はJISA1412−2(1999年制定)に従い測定を行った。測定温度は25℃、測定装置はホロメトリックス社製Rapid−Kを使用した。
(5)平均気泡径の測定
発泡体の平均気泡径は、発泡体を発泡体押出方向に対して、厚み方向に平行にカットし、その断面を走査型電子顕微鏡で観察(Hitachi−570)し、得られた画像を二値化処理し、円相当径を平均気泡径とした。
(6)発泡体の表面性の評価
発泡体の表面粗さは、表面粗さ測定器(型式:SE-2300株式会社小坂研究所製)により測定し、算術平均粗さRaを求めた。ただし、測定場所は発泡体の両面を測定した。また測定方向は、発泡体の面内において、押出方向および押出方向に対して垂直な方向の2方向であり、測定回数はそれぞれにつき1回である。これら測定値の中で最も高い値を発泡体の表面粗さとした。
(7)発泡体の連続生産性
発泡体の製造を、2時間以上連続運転で行い、5秒毎に運転条件を記録した際、運転条件を固定しているにもかかわらずダイ部分の圧力変動が見られることがあり、発泡体の押出方向に厚みムラが発生しやすくなる。発泡体の2時間以上の連続生産において、ダイ部分の圧力の最大値と最小値の差で圧力変動有無を判断した。なお、圧力計はサーキュラーダイと押出機とを接続するフランジ部分に設置した。
連続生産性○・・・圧力変動が1MPa未満である。
連続生産性×・・・圧力変動が1MPa以上である。
(8)耐熱性評価
耐熱性の評価として、発泡体の熱収縮率を測定した。作成した発泡体を15cm×15cmに打ち抜き、発泡体の押出方向、押出方向に対して垂直な方向に10cm間隔の標線を引き、所定温度の恒温槽に1時間静置し熱処理を実施した。
発泡体の熱収縮率を下記式で算出し、各方向ともに熱収縮率が2%以下となる温度を耐熱温度とした。なお測定温度は50℃〜100℃の範囲で5℃刻みに実施した。
熱収縮率(%)=(熱処理前の標線の間隔−熱処理後の標線の間隔)/(熱処理前の標線の間隔)×100
(9)成形性評価
真空成形を行い、それぞれ外観及び成形絞り比を評価した。
外観は、発泡体を真空成形した成形体について、目視により膨れや皺の有無で判断した。
成形絞り比は、直径D、深さHの垂直円筒状の雌型上において発泡体を加熱し、真空成形機を用いてストレート成形したときに、発泡体が破れることなく、円筒状に展開、伸長される限界での、H/Dの値のことである。なお、ここにおいて直径Dは50mmであり、深さHは30mmの雌型でテスト実施した。
発泡体の表面温度が120℃について成形絞り比(H/D)を測定し、その値について以下の基準で判断した。
成形性○:発泡体が破れることなく成形できた。
成形性×:発泡体が破れた。
実施例1
ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量%に対してそれぞれ、重量平均分子量23万、融点155℃の結晶性ポリ乳酸(Nature Works製)を30質量%、A群より選ばれるポリスチレン系樹脂であるポリスチレン樹脂(DIC製)を60質量%、B群より選ばれるポリスチレン系樹脂であるアクリロニトリル/メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(東レ製)を10質量%、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対して、タルク0.5質量部をタンブラーミキサーにより均一に混合し、L/D(スクリュー長さ(L)とシリンダー内径(D)の比率)=30の二軸押出機へ連続的に供給し樹脂温度を200℃になるようシリンダ温度を設定し、ポリ乳酸系樹脂組成物を得た。
作成したポリ乳酸系樹脂組成物を第一段押出機がL/D=32、スクリュー径65mmφ、第二段押出機がL/D=34、スクリュー径90mmφのタンデム型押出機((株)日本製鋼所製)に連続的に投入し、第一段押出機のシリンダの途中から、ポリ乳酸系樹脂組成物100質量部に対して二酸化炭素を7質量部添加しながら、口径42mmφ、ダイクリアランス0.4mmのサーキュラーダイから押し出し、直径140mmφのマンドレルで冷却しながら切開し、幅約440mmのシート状発泡体を作成した。
第一段押出機の温度はシリンダ6ゾーンに対して、シリンダ1を150℃、シリンダー2〜6を200℃とし、第二段押出機の温度はシリンダ6ゾーンに対し、シリンダ1を100℃、シリンダ2を170℃に設定、シリンダ3からシリンダ6は125℃、ダイ温度を140℃とした。第二段押出機とダイとをつなぐフランジに温度計を設置し、樹脂温度を測定したところ、樹脂温度は135度、ダイ部分での圧力は18MPa、樹脂組成物の吐出量は54kg、ダイ出口部分を通過するポリ乳酸系樹脂組成物の流速が15m/分、 発泡体の密度は55kg/cm3、厚み5.2mmであり、表面性が良好で連続生産性に優れるものであった。
実施例2〜7および比較例1〜3
実施例2〜7および比較例1〜3は表1に示した原料組成とした以外は、実施例1と同様な条件で発泡体を作成した。結果とともに表1に示す。
なお、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計が100質量部となるように、表1に従ってポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂を添加した。さらに相溶化剤やタルクなどのその他添加剤を添加する場合は、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂の合計100質量部に対して、その他添加剤を表1に従って添加した。
実施例8、9
実施例8について、口径42mm、ダイクリアランス0.7mmのサーキュラーダイを用いて、ダイ出口部分を通過するポリ乳酸系樹脂組成物の流速が5m/分となるように押出量を調整したこと以外は実施例1と同様な方法で発泡体を作成した。
実施例9について、口径36mm、ダイクリアランスを0.15mmのサーキュラーダイを、用いてダイ出口部分を通過するポリ乳酸系樹脂組成物の流速が45m/分となるように押出量を調整したこと以外は実施例1と同様な方法で発泡体を作成した。
比較例1では、ポリスチレン系樹脂を添加しなかったため発泡後の収縮が大きいため発泡倍率が低いものしか得られなかった。
比較例2では、ポリ乳酸系樹脂とポリスチレン系樹脂を含有するポリ乳酸樹脂組成物を作成するため樹脂温度を200℃になるようにシリンダ温度を設定し、コンパウンド実施したが、押出機の負荷が大きく押出できなかった。樹脂温度を230℃になるようにシリンダ温度を設定し、ポリ乳酸系樹脂組成物を作成し、実施例1と同様に発泡体を作成した。
しかし得られた発泡体は収縮がひどく、発泡体の密度は200kg/cm3であり表面状態も良くなかった。これは押出機の負荷を軽減させるため樹脂温度を230℃でコンパウンドしたためポリ乳酸の劣化がひどくポリ乳酸系樹脂組成物の発泡に必要な溶融粘度が不足したためと考えられる。
比較例3では、低密度の発泡体を作成することができたが、発泡体の成形絞り比が0.4しかなく成形性を満足できなかった。
比較例4では、タルクの含有量が多いため、L/D(スクリュー長さ(L)とシリンダー内径(D)の比率)=30の二軸押出機へ連続的に安定供給することができず、ポリ乳酸系樹脂組成物を得ることができなかった。