JP5755987B2 - 発泡体及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

発泡体及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Description

本発明は、建築物や家具などの硬質な凸部又は角部をカバー又は保護するために有用な発泡体及びその製造方法並びにその用途に関する。
建築物又は建造物、車両、家具などの表面における凸部又は角部(縁部やコーナーなど)が硬質である場合、転倒時に前記凸部又は角部と衝突することなどによる事故を防止するために、前記凸部又は角部を柔軟な発泡成形体(発泡シートなど)で保護又はカバーする方法が知られている。このような発泡成形体は、例えば、家具などをカバーする場合、通常、両面テープなどの面状テープを用いて家具の凸部又は角部に装着されるが、面状テープでは成形体と面状テープとが面接触する。そのため、発泡成形体の表面平滑性が低い場合には、面状テープが発泡成形体から剥離し易く、家具などの被保護部材に強固にかつ長期間に亘り安定して固定できない。さらに、家具などに取り付ける場合、室内のインテリアとしての機能も要求されるため、装飾性も必要であり、例えば、表面が平滑で光沢などに優れていることも必要となる。
このような特性を充足する発泡体として、ゴム系発泡体(例えば、クロロプレンゴム、天然スポンジゴム、エチレン−プロピレンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム発泡体など)が汎用されている。しかし、ゴム系発泡体では、ゴムが架橋されているため、リサイクルができない。さらに、原料価格が高い上に、発泡倍率が2〜10倍(通常、2〜3倍)と低いため、経済性も低い。
一方、発泡倍率が10〜80倍と高く、安価な発泡体としては、オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂(又はエラストマー)で形成された発泡体が知られている。
特開2008−221705号公報(特許文献1)には、柱などの棒状支持体をカバーするための保護カバーとして、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を20〜50倍程度で押出発泡し、断面が環状であり、かつ壁部が軸方向に切断された筒状発泡体を成形する成形工程と、内外壁の収縮差を利用して、切断部に隣接する一方の側壁を他方の側壁側に曲げる折曲工程とを経ることにより、周方向に延びる厚肉部と薄肉部とで形成された周期的な肉厚差の発生を抑制した発泡体を製法する方法が開示されている。
また、特開2010−24714号公報(特許文献2)には、柱や壁などの角部を損傷から守るための保護材(養生テープ)として、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を20〜50倍程度で押出発泡して得られた発泡部材であって、頂部からL字状に延出した側壁部の端部を薄肉に形成するとともに、頂部および側壁部の少なくともいずれかに凹部を形成することにより、長手方向の反りが抑制され、確実に被保護部材に固定できる部材が開示されている。
しかし、オレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂で形成された発泡体では、表面平滑性が低く、面状テープを用いて家具などの被保護部材に強固に固定できず、光沢などの外観も十分でない。
なお、熱可塑性樹脂で形成され、かつ高発泡倍率の発泡体における表面平滑性が低い原因は、発泡倍率を上げることにより、不可避的に表面が気泡の影響を受けることにあり、表面を平滑にする方法としては、表面が平滑なスキン層を形成する方法が考えられる。表面にスキン層を形成する方法としては、共押出法やラミネート法(個別に成形したフィルム同士を溶着する方法)が考えられるが、いずれの方法でも生産性が低下し、構造も複雑となる上に、ラミネート法では、成形体の形状も限定される。
特開2008−221705号公報(請求項1及び7、段落[0001]、実施例) 特開2010−24714号公報(請求項1、段落[0013][0025])
従って、本発明の目的は、発泡倍率が高く、かつ表面平滑性にも優れた発泡体及びその製造方法並びにその用途(家具などの保護材)を提供することにある。
本発明の他の目的は、リサイクルでき、かつ経済性にも優れた発泡体及びその製造方法並びにその用途(家具などの保護材)を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、面状テープを用いて強固かつ安定して被保護材に固定でき、かつ光沢などの外観にも優れた発泡体及びその製造方法並びにその用途(家具などの保護材)を提供することにある。
本発明の別の目的は、発泡倍率が高く、かつ表面平滑性にも優れるとともに、生産性も高い発泡体及びその製造方法並びにその用途(家具などの保護材)を提供することにある。
図2は、従来の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。図2に示されるように、タンデム押出機21で溶融混練された発泡性樹脂組成物は、金型(口金)22から吐出され、大気中で発泡しながら膨張して発泡体23を生成する。すなわち、組成物中の気泡23aは、金型から吐出された後、成長することにより、発泡倍率が上昇し、高発泡倍率の発泡体となる。さらに、生成した発泡体23は、形状を固定化するために、冷却器24によって圧縮エアー、冷却水、ブロアなどの流体を噴射して冷却するが、従来の方法では、気泡を充分に成長させるとともに、金型の冷却により成形性が低下しないように、冷却器24は、金型と冷却器24の噴出口との距離L2を大きくし、金型から充分に離れた位置に配設される。この場合、冷却器24は、充分に気泡23aが成長した状態の発泡体を冷却するため、得られる発泡体23は、高い発泡倍率を有する反面、大きな気泡径を有する気泡の形状が表面にも反映され、表面平滑性が低下する。
そこで、本発明者らは、発泡倍率が高い熱可塑性樹脂発泡体の表面平滑性が低下する原因となる表面の気泡径に着目し、気泡の成長を抑制して平滑なスキン層を形成するため試行錯誤した結果、前記冷却器24と金型22との距離L2を短くし、金型22の近辺で発泡体を冷却することにより、発泡体の表面平滑性を向上することに成功した。なお、当業者であれば、気泡の成長を抑制すれば、表面平滑性が向上する反面、同時に発泡体全体の発泡倍率も上昇しないことが想定されるが、思いがけないことに、金型の近傍で発泡体を冷却しても、表面における気泡の成長のみ抑制され、気泡による影響が小さい平滑なスキン層が表面に形成されるためか、表面平滑性が向上するにも拘わらず、発泡体の発泡倍率は低下しない(見掛密度が上昇しない)ことが判明した。
さらに、本発明者らは、製造条件を詳細に検討し、熱可塑性樹脂を高い発泡倍率で押出発泡成形した発泡体であっても、表面平滑性に優れた発泡体を安定して調製することに成功し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の発泡体は、熱可塑性樹脂を押出発泡成形した発泡体であって、見掛密度が0.1g/cm以下であり、かつ表面の平均粗さが5μm以下である。本発明の発泡体において、表面に位置する気泡の平均気泡径(φ1)と、厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径(φ2)との比は、φ1/φ2=1/2〜1/100程度であってもよい。本発明の発泡体は、表面における断面曲線の最大深さは50μm以下であってもよい。また、表面の平均粗さは0.1〜3μm程度であってもよい。本発明の発泡体において、表面に位置する気泡の平均気泡径(φ1)は0.1〜0.5mm程度であり、かつ厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径は1〜3mm程度であってもよい。本発明の発泡体の見掛密度は0.01〜0.05g/cm程度である。本発明の発泡体の光沢度は10%以上であってもよく、JIS Z0237に準拠した粘着力は7N/10mm以上であってもよい。本発明の発泡体は、独立気泡を含んでいてもよい。前記熱可塑性樹脂はオレフィン系樹脂であってもよい。本発明の発泡体は、他の層が積層されていない単層構造であってもよい。本発明の発泡体は、被保護材における硬質の凸部又は角部をカバーするための保護材として適している。
本発明には、熱可塑性樹脂を押出発泡する成形工程、押出発泡された発泡体を冷却する冷却工程を含む前記発泡体の製造方法であって、冷却工程において、金型の近傍で発泡体を冷却する方法も含まれる。
本発明では、熱可塑性樹脂を高い発泡倍率で押出発泡成形した発泡体であるにも拘わらず、表面の平均粗さが5μm以下である表面平滑な発泡体が得られる。この発泡体は、熱可塑性樹脂で形成されているため、リサイクルでき、かつ経済性にも優れている。さらに、表面が平滑であるため、面状テープを用いて強固かつ安定して被保護材に固定でき、かつ光沢などの外観にも優れている。本発明では、このような発泡体を高い生産性で製造できる。
図1は、本発明の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。 図2は、従来の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。 図3は、実施例1及び比較例1で得られた発泡体の断面形状の概略模式図である。
[発泡体]
本発明の発泡体は、熱可塑性樹脂を押出発泡成形することにより得られ、高発泡倍率であるにも拘わらず、高い表面平滑性を有している。特に、表面では、気泡径が小さく、平滑なスキン層を形成するためか、表面が高い平滑性を有しているのに対して、内部では、従来の熱可塑性樹脂発泡体と同様に、大きい気泡径が形成されており、発泡体全体としての発泡倍率は低下していない。
本発明の発泡体において、表面平滑性は、平均粗さ及び断面曲線の最大深さで表すことができる。
平均粗さは、本発明の発泡体は5μm以下であり、例えば、0.5〜5μm、好ましくは0.8〜4μm、さらに好ましくは1〜3.5μm(特に1〜2μm)程度である。平均粗さは、両面テープなどの面状テープに対する粘着性が高く、かつ光沢が強く、外観に優れる点から、3μm以下(例えば、1〜3μm程度)であってもよい。
最大粗さ(断面曲線の最大深さ)は、例えば、110μm以下(例えば、1〜100μm)であってもよいが、被保護材に対する接着性又は粘着性と外観とを向上できる点から、50μm以下であってもよく、例えば、1〜50μm、好ましくは5〜45μm、さらに好ましくは10〜40μm(特に20〜40μm)程度である。
平均粗さ及び最大粗さが大きすぎると、表面平滑性が低下し、両面テープなどの面状テープに対する粘着性や外観が低下する。
なお、本明細書において、平均粗さ及び最大粗さは、三次元表面構造解析顕微鏡に基づいて算出でき、詳細は後述の実施例に記載の方法で測定できる。
本発明の発泡体は、前述のように、気泡径の分布が厚み方向で異なり、表面における気泡径が内部の気泡径よりも小さい。
詳細には、気泡の分布状態は、中央部における気泡が最大の気泡径を有し、中央部から表面に向かって徐々に気泡径が小さくなるように分布している。さらに、気泡の断面形状は、略円状又は略楕円状であり、中央部に位置する気泡の形状は真円状に近く、表面に向かうにつれて、より楕円状(長軸が押出方向に沿った楕円状)になる傾向を有している。
さらに、表面に位置する気泡の平均気泡径(φ1)は、例えば、0.05〜0.6mm、好ましくは0.1〜0.5mm、さらに好ましくは0.15〜0.4mm(特に0.2〜0.3mm程度である。平均気泡径(φ1)が小さすぎると、発泡倍率を高めるのが困難であり、大きすぎると、表面平滑性が低下する。なお、本明細書において、「表面に位置する気泡」とは、表面から厚み方向に垂直な線を引いたとき、最初に横切る気泡を意味し、2番目以降に横切る気泡を除く意味である。
厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径(φ2)は、例えば、1〜3mm、好ましくは1.2〜2.8mm、さらに好ましくは1.5〜2.5mm(特に1.8〜2.3mm)程度である。平均気泡径(φ1)が小さすぎると、発泡倍率を高めるのが困難であり、大きすぎると、機械的特性が低下する。
さらに、両者の比率も特定の範囲にあるのが好ましく、具体的に、表面に位置する気泡の平均気泡径(φ1)と、厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径(φ2)との比は、φ1/φ2=1/2〜1/50程度の範囲から選択でき、例えば、φ1/φ2=1/3〜1/30、好ましくは1/5〜1/20、さらに好ましくは1/6〜1/15(特に1/7〜1/10)程度である。この比率が小さすぎると、表面平滑性又は発泡倍率のいずれかが低下し、逆にこの比率が大きすぎると、発泡倍率を大きくするのが困難である。
発泡体全体における平均気泡径は、例えば、例えば、0.3〜2mm、好ましくは0.4〜1.8mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mm(特に0.8〜1.3mm)程度である。
なお、本明細書では、楕円形状の気泡における気泡径は、長径と短径との平均径を意味する。
さらに、本明細書では、平均粗さ、断面曲線の最大深さ及び平均気泡径は、三次元表面構造解析顕微鏡を用いて測定することにより算出できる。
本発明の発泡体の発泡倍率は、10倍以上の高発泡倍率であり、例えば、10〜100倍程度の範囲から選択でき、例えば、15〜80倍、好ましくは18〜50倍、さらに好ましくは20〜40倍(特に25〜35倍)程度である。発泡倍率が小さすぎると、柔軟性及び経済性が低下し、大きすぎると、機械的特性が低下する。
本発明の発泡体の密度(見掛密度)は0.1g/cm以下(例えば、0.005〜0.1g/cm程度)の範囲から選択でき、例えば、0.008〜0.08g/cm、好ましくは0.009〜0.06g/cm、さらに好ましくは0.01〜0.05g/cm(特に0.02〜0.04g/cm)程度である。密度が小さすぎると、機械的特性が低下し、密度が大きすぎると、発泡倍率が低下する。
本発明の発泡体は、連続気泡構造であってもよいが、少なくとも独立気泡を含む構造が好ましく、独立気泡体が特に好ましい。独立気泡率は、例えば、例えば、85〜100%、好ましくは90〜100%(例えば、90〜99%)、さらに好ましくは93〜100%(例えば、93〜99%)程度であってもよい。
発泡体表面の光沢度は、例えば、10%以上であり、例えば、10〜50%、好ましくは15〜40%、さらに好ましくは18〜30%(特に20〜25%)程度である。光沢度が低すぎると、装飾的な効果が低下し、光沢度が15%以上(特に20%以上)であれば、装飾的な効果が大きくなる。
本発明の発泡体は表面が平滑であるため、面状テープに対する粘着性も優れており、JIS Z0237の粘着テープ試験において、粘着力が、例えば、7N/10mm以上であってもよく、好ましくは8〜20N/10mm、さらに好ましくは10〜18N/10mm(特に12〜15N/10mm)程度である。
本発明の発泡体の形状は、特に限定されず、用途に応じて選択できるが、被保護材の硬質な凸部又は角部をカバー又は保護するための保護材として利用する場合、前記凸部又は角部の形状に応じて選択できる。具体的な形状としては、例えば、シート状、フィルム状、二次元網目(ネット)状などの二次元的形状、ブロック状、板状、パイプ状などの三次元的形状であってもよい。これらの形状のうち、表面が平滑で両面テープとの粘着性に優れる点から、平面形状を有する形状が好ましく、例えば、テーブルなどの家具の縁部などをカバーし易い点から、シート状又は板状、テープ状又は長尺形状、断面L字状の長尺形状、断面コ字状の長尺形状、断面V字状の長尺形状などであってもよい。
本発明の発泡体には、さらに他の層を積層してもよいが、少なくとも一方の面は表面平滑な面が露出している必要があり、通常、他の層を積層していない単層構造である。
本発明の発泡体の厚みは、例えば、被保護材の種類に応じて、十分な保護性能を有する範囲から選択でき、例えば、3〜50mm、好ましくは5〜30mm、さらに好ましくは7〜20mm(特に8〜15mm)程度であってもよい。
本発明の発泡体は、表面に平滑なスキン層を有していてもよく、スキン層の平均厚みは、例えば、20〜1000μm、好ましくは50〜500μm、さらに好ましくは80〜200μm程度であってもよい。
発泡体は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡することにより得られ、熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂、これらの樹脂の構成成分を含む熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの樹脂は単独又は二種以上組み合わせてもよい。
これらの樹脂のうち、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、スチレン系樹脂(例えば、ポリスチレンなど)、熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーなど)が好ましく、高い発泡倍率が可能であり、かつ柔軟性や弾性などの機械的特性にも優れる点から、オレフィン系樹脂が特に好ましい。
オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのα−C2−4鎖状オレフィン単独又は共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)などが挙げられ、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が汎用される。
発泡性樹脂組成物は発泡剤を含んでいてもよい。発泡剤としては、慣用の発泡剤を使用でき、分解性発泡剤(化学発泡剤)であってもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、揮発性発泡剤(物理発泡剤)が好ましい。揮発性発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤(窒素、二酸化炭素、酸素、空気、水など)、有機系発泡剤(脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、塩化炭化水素、フッ化炭化水素、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類など)などが挙げられる。これらのうち、安価で毒性が低い点から、ブタン(n−ブタン、イソブタン)やペンタン(n−ペンタン、イソペンタンなど)などの低級脂肪族炭化水素が汎用される。
発泡剤の割合は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜25重量部、さらに好ましくは1〜20重量部(特に5〜15重量部)程度である。
発泡性樹脂組成物は発泡核剤を含んでいてもよい。発泡核剤としては、例えば、ケイ素化合物(タルク、シリカ、ゼオライトなど)、無機酸塩(重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩又は炭酸水素塩など)、有機酸又はその塩(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)などが挙げられる。これらの発泡核剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
発泡核剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部(特に0.5〜2重量部)程度である。
発泡性樹脂組成物は収縮防止剤を含んでいてもよい。収縮防止剤としては、例えば、脂肪酸エステル(パルミチン酸モノ乃至トリグリセリド、ステアリン酸モノ乃至トリグリセリドなどのC8−24脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、脂肪酸アミド(パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどのC8−24脂肪酸アミドなど)などが挙げられる。これらの収縮防止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
収縮防止剤の割合は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(特に1〜5重量部)程度である。
発泡性樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤(染料や顔料など)、表面平滑剤、気泡調整剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤など)、粘度調節剤、相溶化剤、分散剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、充填剤(炭酸カルシウム、炭素繊維など)、滑剤、離型剤、潤滑剤、衝撃改良剤、可塑剤、難燃剤、バイオサイド(殺菌剤、静菌剤、抗かび剤、防腐剤、防虫剤など)、消臭剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
[発泡体の製造方法]
本発明の発泡体の製造方法は、熱可塑性樹脂を押出発泡する成形工程、押出発泡された発泡体を冷却する冷却工程を含み、冷却工程において金型の近傍で発泡体を冷却する。以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明の製造方法を説明する。
図1は、本発明の発泡体の製造工程を説明するための概略図である。
図1に示されるように、成形工程において、タンデム押出機1で溶融混練された発泡性樹脂組成物は、金型(口金)2から吐出され、大気中で発泡しながら膨張して発泡体3を生成する。
さらに、生成した発泡体3は、冷却工程において、形状を固定化するために、冷却器4により圧縮エアー、冷却水、ブロアなどの流体を噴射して冷却するが、表面における気泡の成長を抑制し、表面平滑性を向上させるために、冷却器4は、従来の装置よりも金型に近接した距離L1の位置に配設される。そのため、気泡3aは、特に表面近傍において、従来の装置に比べて、気泡の成長が抑制される。
圧縮エアーなどの流体は、金型(口金)2の先端部が過冷却されないように、金型(口金)2から押出発泡された発泡性樹脂組成物に対して垂直方向、又は垂直方向から押出方向に傾斜させた方向に噴射するのが好ましい。噴射方向を調整しても金型(口金)の過冷却が起こる場合、金型(口金)2と冷却器4との間に遮熱板を配設してもよい。
本発明の方法では、成形工程において、押出機としては、例えば、単軸押出機(例えば、ベント式押出機など)、二軸押出機(例えば、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機など)などが利用でき、発泡条件を調整し易く、高発泡率を実現できる点から、タンデム押出機などの多段押出機が好ましい。タンデム押出機は、単軸押出機を2台直列に配置してもよく、下流側の第2押出機のスクリュー径は、上流側の第1押出機のスクリュー径に対して、例えば、1.1〜1.5倍、好ましくは1.2〜1.4倍程度であってもよい。
成形工程において、発泡剤を導入する方法は特に限定されず、分解性発泡剤(化学発泡剤)を予め発泡性樹脂組成物に配合してもよいが、簡便な方法で、発泡倍率を向上できる点から、押出機において揮発性発泡剤(物理発泡剤)を導入するのが好ましい。
口金の吐出口(ダイのリップ)の形状は、保護材の形状に応じて、スリット状、L字状、コ字状などの形状であってもよい。
溶融混練及び押出発泡の製造条件としては、慣用の発泡体の製造方法における製造条件を利用できる。
冷却工程では、従来の方法に比べて、金型の近傍で発泡体を冷却するが、具体的には、図1の距離L1(金型の先端部と冷却器の噴出口との押出機の軸方向における距離)は、冷却能に応じて適宜選択できるものの、120mm以下程度に調整してもよく、例えば、0〜120mm、好ましくは10〜100mm、さらに好ましくは30〜80mm(特に40〜60mm)程度である。本発明では、従来の方法に比べて、距離L1が短いため、口金から押し出された発泡体の表面における気泡が大きく成長する前に、冷却して気泡の成長を抑制するため、発泡体の表面近傍の気泡径が小さく抑制されることにより、表面が均一なスキン層が形成されるためか、発泡体の表面は平滑に調製される。距離L1が大きすぎると、気泡が成長しすぎて、表面平滑性が低下し、小さすぎると、金型が過冷却されて成形性が低下する。
冷却器を用いた冷却方法において、冷却媒体としては、圧縮エアーの他、空気(ブロア)、水などが挙げられる。冷却方法としては、圧縮エアーを噴射する方法の他、ブロアで冷却する方法、水を噴霧して冷却する方法、冷却ジャケットを用いて冷却する方法などが挙げられる。冷却媒体の温度は、例えば、0〜60℃、好ましくは5〜55℃、さらに好ましくは10〜50℃程度であってもよい。
圧縮エアーを噴射する方法において、エアーの圧力は、例えば、0.1〜10MPa、好ましくは0.2〜5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度であってもよい。圧縮エアーの噴射量は、例えば、100〜1000リットル/分、好ましくは200〜500リットル/分、さらに好ましくは250〜400リットル/分程度であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で得られた発泡シートの特性は、下記の方法に従って評価した。
[最大粗さ及び平均粗さ]
発泡体表面の最大粗さ(断面曲線の最大深さ)、平均粗さを、三次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製「New View 5000」)を用いて、倍率20倍で面積(0.36mm(X方向)×0.27mm(Y方向))について測定し、n=5の平均値で表した。
[平均気泡径]
断面曲線の最大深さ及び平均粗さと同様の方法で、表面に位置する気泡の気泡径(φ1)と、厚み方向の中央線を横切る気泡の気泡径(φ2)とを測定し、n=5の平均値で表した。
[見掛密度]
電子比重計(ミラージュ貿易(株)製「MD−200S」)を使用して測定した。
[粘着力]
両面テープ(日東電工(株)製「ND−250」、巾12mm)を用いて、JIS Z0237の粘着テープ試験に準拠して、粘着力を引張試験機(安田精機製作所(株)製「LR10K」)で測定した。
[光沢度]
グロスチェッカー((株)堀場製作所製「IG−200」)を用いて測定した。
[総合評価]
得られた発泡体について、表面の平滑性と外観とを触った感触及び目視で観察し、評価した結果を以下の基準で評価した。
○:触った感触が滑らかであり、かつ光沢が非常に高く、外観にも優れる
△:触った感触がややざらつき、皺状の筋は見られないものの、光沢がない
×:触った感触がざらつき、皺状の筋が見られる。
実施例1
タンデム押出機(1段目:スクリュー径φ50mm、2段目:スクリュー径φ65mm)に下記処方の樹脂組成物を投入し、1段目の押出機の途中からブタンガス8重量部をポンプで加圧注入し、2段目の押出機内で発泡領域まで冷却し、口金温度105℃の温度でL型のリップ形状を有する口金から発泡性樹脂組成物を押出発泡した。なお、金型と冷却器との距離L1を50mmとして、圧縮エアーを噴射するための冷却装置を配設した。この冷却装置からは、冷却量として、圧力0.5MPa、噴射量300リットル/分の冷却量で、圧縮エアーを押出発泡して得られる発泡体の表面に対して噴射し、発泡体を冷却し、幅50mm(L字の一辺の幅)及び厚み11mmで、見掛密度0.0329g/cmの発泡体を得た。
(樹脂組成物)
LDPE(東ソー(株)製「ペトロセン173R」)100重量部
収縮防止剤(ステアリン酸モノグリセライド、ベーリンガーインゲルハイムケミカルズ(株)製「アクティベックス325」)3重量部
核剤(永和化成(株)製「ポリスレンEE275」)1.2重量部。
実施例2
金型の厚みを変える以外は実施例1と同様にして、幅50mm及び厚み20mmで、見掛密度0.0325g/cmの発泡体を得た。
実施例3
金型と冷却器との距離L1を100mmに変える以外は実施例1と同様にして、幅50mm及び厚み11mmで、見掛密度0.0318g/cmの発泡体を得た。
比較例1
金型と冷却器との距離L1を150mmに変える以外は実施例1と同様にして、幅50mm及び厚み11mmで、見掛密度0.0320g/cmの発泡体を得た。
比較例2
金型と冷却器との距離L1を200mmに変える以外は実施例1と同様にして、幅50mm及び厚み11mmで、見掛密度0.0327g/cmの発泡体を得た。
比較例3
金型と冷却器との距離L1を200mmに変える以外は実施例2と同様にして、幅50mm及び厚み20mmで、見掛密度0.0320g/cmの発泡体を得た。
Figure 0005755987
表1の結果から明らかなように、実施例の発泡体は、表面平滑性が高いのに対して、比較例の発泡体は、表面平滑性が低い。
図3は、実施例1及び比較例1で得られた発泡体の断面形状の概略模式図である。図3の(a)図は、実施例1の発泡体を示し、厚み方向Xの中央線付近の気泡径が大きく、表面に位置する気泡は、長軸方向が押出方向に向いた楕円形状であり、中央の気泡よりも気泡径は小さい。これに対して、図3の(b)図は、比較例1の発泡体を示し、気泡径は全体的に均一である。
本発明の発泡体は、建築物又は建造物、車両、家具などの被保護材の表面における硬質な凸部又は角部(縁部やコーナーなど)をカバー又は保護するための保護材として利用でき、特に、前記凸部又は角部に対して、両面テープなどの面状テープを用いて固定する保護材や、テーブルや家具などの室内インテリアの保護材として有用である。
1,21…タンデム押出機
2,22…金型
3,23…発泡体
3a,23a…気泡
4,24…冷却器

Claims (12)

  1. オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種の熱可塑性樹脂を押出発泡成形した発泡体であって、見掛密度が0.1g/cm以下であり、かつ表面の平均粗さが5μm以下であり;独立気泡率が85〜100%であり;表面に位置する気泡の平均気泡径をφ1、厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径をφ2としたとき、φ2が1.5〜3mm、φ1/φ2が1/3〜1/100である発泡体。
  2. φ2が1.5〜2.5mmであり、φ1/φ2が1/3〜1/50である請求項1記載の発泡体。
  3. 表面における断面曲線の最大深さが50μm以下である請求項1又は2記載の発泡体。
  4. 表面の平均粗さが0.1〜μmである請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体。
  5. 表面に位置する気泡の平均気泡径(φ1)が0.1〜0.4mmであり、かつ厚み方向の中央線を横切る気泡の平均気泡径(φ2)が1.5〜2.5mmであり、φ1/φ2が1/5〜1/20である請求項1〜4のいずれかに記載の発泡体。
  6. 見掛密度が0.01〜0.05g/cmである請求項1〜5のいずれかに記載の発泡体。
  7. 光沢度が10%以上であり、かつJIS Z0237に準拠した粘着力が7N/10mm以上である請求項1〜6のいずれかに記載の発泡体。
  8. 熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項1〜のいずれかに記載の発泡体。
  9. 他の層が積層されていない単層構造である請求項1〜のいずれかに記載の発泡体。
  10. 被保護材における硬質の凸部又は角部をカバーするための保護材である請求項1〜のいずれかに記載の発泡体。
  11. 熱可塑性樹脂を押出発泡する成形工程、押出発泡された発泡体を冷却する冷却工程を含む請求項1〜10のいずれかに記載の発泡体の製造方法であって、冷却工程において、金型の先端部と冷却器の噴出口との距離0〜120mmで、圧力0.2〜5MPa、噴射量100〜1000リットル/分の圧縮エアーを噴射して発泡体を冷却する方法。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の発泡体で形成された保護材であって、被保護材における硬質の凸部又は角部をカバーするための保護材。
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