JP6995600B2 - 熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂発泡体は、その緩衝性が活かされた緩衝材や梱包材等として、種々の分野に利用されている。
下記特許文献1、2に示されるように、熱可塑性樹脂発泡体は、一般的に、物理発泡剤としてブタン等の脂肪族炭化水素を含有させた樹脂溶融物を押出装置から押出し、発泡させることで製造される。例えば環状ダイを備えた押出装置から樹脂溶融物を押出して形成された、筒状の発泡体を引き取りながらシート状に形成することで、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を得ることができる。シート状に形成された熱可塑性樹脂発泡体は、一般的にはロール状に巻き取られてなるロール状物として保管され出荷される。また近年、熱可塑性樹脂発泡体は、輸出製品として、ロール状物の形態で出荷されるケースが増加している。
特開2007-238779号公報 特開2009-62442号公報
脂肪族炭化水素として、通常、可燃性ガスであるブタン等が用いられるが、製造直後の熱可塑性樹脂発泡体には、物理発泡剤として用いたブタンが残存している。発泡体に残存するブタンは、時間経過とともに徐々に熱可塑性樹脂発泡体から外部に逸散する。その一方で、周囲のガス(一般的には空気)が発泡体内に流入することでガス置換が進行する。
例えば熱可塑組性樹脂発泡体を保管または運搬等するためにコンテナ等の密閉空間に収容した場合、熱可塑性樹脂発泡体に残存するブタンは、当該熱可塑性樹脂発泡体から逸散して当該密閉空間内に蓄積し、密閉空間内のブタン濃度が上昇する。特に、輸出製品として出荷される熱可塑性樹脂発泡体は、船などで長時間かけて運搬される場合、密閉容器内の製品量によっては、輸送中に密閉空間内のブタン濃度が爆発限界濃度に達する虞があった。
熱可塑性樹脂発泡体を密閉空間に収容する前に、熱可塑性樹脂発泡体に残存しているブタンを逸散させる養生工程を充分に実施すれば、上述のような問題は改善される。しかし、養生工程が長時間実施されることで、熱可塑性樹脂発泡体を出荷するまでの期間が長くなり、また養生スペースを確保する必要があるため、生産性が悪化するという問題があった。
また、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂、または、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂等のポリスチレン系樹脂を多く含む樹脂を用いて熱可塑性樹脂発泡体を製造する場合、ブタンが熱可塑性樹脂発泡体により残存しやすい。そのため、ガス置換のための養生期間がさらに長期化する虞があると共に、長期間の養生を行ったとしても、ブタンの残存量を十分に低減させることができない虞があった。
これに対し、ブタンの代替として、不燃性の物理発泡剤として一般的な二酸化炭素等を用いることが考えられる。しかし、二酸化炭素等の従来用いられてきた不燃性の発泡剤を用いてシート状の熱可塑性樹脂発泡体(以下、単にシート状の発泡体と呼ぶ場合がある)を製造した場合、得られるシート状の発泡体の表面性状が悪化する傾向があった。
特に、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂等を用いて熱可塑性樹脂発泡体を製造する場合、単体の樹脂を用いる場合と比較して押出時に発泡させにくくなると共に、引取時にシート状の発泡体の伸びムラが生じやすくなる傾向があり、表面性状がより悪化しやすくなる虞があった。
本発明は上記課題に鑑みなされたものである。即ち、本発明は、可燃性の発泡剤を使用した場合と同等の製造条件で、可燃性の物理発泡剤を使用して製造されたシート状の発泡体と同等の物性、表面性状を有すると共に、可燃性発泡剤の残存量を低下させるための養生工程が不要であるか短縮可能な熱可塑性樹脂発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法は、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上3mm以下であり、見掛け密度が30kg/m 3 以上300kg/m 3 以下であり、前記熱可塑性樹脂発泡体がガラス板用間紙であり、前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下であり、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用い、物理発泡剤として、炭素数3~6の飽和炭化水素の配合量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部以下(0を含む)であることを特徴とする。
また本発明の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法は、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上3mm以下であり、見掛け密度が30kg/m 3 以上300kg/m 3 以下であり、前記熱可塑性樹脂発泡体がガラス板用間紙であり、前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを用い、前記物理発泡剤における前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合が10mol%以上99mol%以下であり、前記二酸化炭素の配合割合が1mol%以上90mol%以下であ(ただし、前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと前記二酸化炭素との配合割合の合計を100mol%とする)、物理発泡剤として、炭素数3~6の飽和炭化水素の配合量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部以下(0を含む)であることを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法は、物理発泡剤として不燃性の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いる。そのため本発明は、製造された発泡体における物理発泡剤の残存量を低下させるための養生工程を省略、または短縮することができる。加えて本発明は、可燃性の発泡剤を使用した場合と同等の製造条件で、可燃性の物理発泡剤を用いて製造された熱可塑性樹脂発泡体と同等の良好な物性、表面性状を有する熱可塑性樹脂発泡体を製造可能である。
本発明で用いる熱可塑性樹脂発泡体成形用押出装置の一例を示す概略図である。
(第一実施形態)
以下に、本発明の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法(以下、単に本発明、または本発明の製造方法ともいう)の第一実施形態について説明する。
本発明の第一実施形態は、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、上記ポリスチレン系樹脂と上記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体(以下、シート状の発泡体ともいう)を製造する製造方法である。本実施形態は、ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下であり、ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いることを特徴とする。
本発明の第一実施形態は、物理発泡剤として不燃性の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが用いられる。そのため、得られた熱可塑性樹脂発泡体を密閉容器に収容する前に、物理発泡剤のガス置換を目的とした養生工程を省略または短縮することができる。また本発明の第一実施形態により形成されたシート状の発泡体は、同様の押出製造方法において物理発泡剤としてブタン等の脂肪族炭化水素を用いて形成されたシート状の発泡体と同等の物性、表面性状を示す。そのため、本発明の第一実施形態によれば、表面性状の良好なシート状の熱可塑性樹脂発泡体を速やかに輸出することが可能である。さらに、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂を多く含む樹脂を用いた場合であっても表面性状の良好なシート状の熱可塑性樹脂発泡体を速やかに輸出することができる。
以下に本発明の第一実施形態について詳細に説明する。説明には、適宜、図1に示す熱可塑性樹脂発泡体成形用押出装置の概略図を用いる。
まず、熱可塑性樹脂を供給口12から押出機10に供給する。このとき、気泡調整剤等の他の成分を適宜、添加してもよい。また物理発泡剤は、発泡剤注入口14から押出機10に注入される。そして、押出機10で熱可塑性樹脂を溶融させると共に、当該熱可塑性樹脂と、物理発泡剤およびその他の成分とを混練し、混合樹脂溶融物を得る。
続いて、押出機10の先端に取り付けられた環状ダイ16から混合樹脂溶融物を押出して形成された筒状の発泡体20を引き取りつつ、環状ダイ16の下流側に配置されたマンドレル17上を通過させ、マンドレル17に設置されたカッター刃等の切開手段18により切り開くことで、シート状の発泡体30を得ることができる。
上記説明では、筒状の発泡体20を切り開いてシート状の発泡体30を製造する態様を説明したが、本発明の製造方法はこれに限定されず、たとえば、筒状の発泡体20を引き取りながら図示省略するピンチロールに通過させて、筒状の発泡体20の内面同士を融着させてなるシート状の発泡体を形成することもできる。
また、シート状の発泡体30を、図示省略する巻き取り機にて巻き取ることで、シート状の発泡体30のロール状物を得ることができる。
なお、従来のように、ブタン等の脂肪族炭化水素を用いて発泡体を製造した場合、ガス置換に時間がかかる等の課題があり、特に上記発泡体としてロール状物を得た場合、ロール状物の厚み方向中央(即ち、ロール状物の芯側と最表面側との間)部分に位置する発泡体のガス置換がより起こりにくく、ブタンの残存量を低減することが難しかった。
本実施形態により得られるシート状の発泡体30は、物理発泡剤として不燃性の1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いて製造されるため、ロール状物の形態としても、製造後の養生工程を省略あるいは短縮して輸出することができる。
ロール状物である発泡体30は、通常、ロール幅は700mm~4000mm、シート状の発泡体の全長は100m~2000m、ロール径は200mm~2000mmである。ただし、ロール径については巻芯に3インチ巻き芯管(外径80mm)を使用した際の径を表記している。
本実施形態の製造方法により形成されるシート状の熱可塑性樹脂発泡体の用途は特に限定されないが、液晶パネル用ガラス板等の板状物用間紙、梱包材、緩衝材等として好適に使用される。例えば板状物用間紙として使用される発泡体シートには、ガラス板等の被包装物を保護するための緩衝性に加え、片持ち時の垂れ下がり量が小さく(コシが強い)ガラス間に介装する際の取り扱い性にも優れていることが要求される。また、近年、液晶パネル用ガラス板等の大型薄肉化が進み、その間紙として使用される発泡体シートも、より厚みの薄いものが求められている。
本実施形態の製造方法により形成されるシート状の熱可塑性樹脂発泡体(発泡体30)の平均厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上3.0mm以下の範囲に調整することができる。被包装物に対する緩衝性、表面保護の観点からその下限は0.1mmが好ましい。一方、上述のガラス板等の大型薄肉化を考慮するとその上限は3.0mmが好ましく、より好ましくは2.0mm、さらに好ましくは1.0mm以下である。
本発明におけるシート状の発泡体の厚みは、発泡体に対して、押出方向に沿って無作為に選択された3箇所について、全幅にわたって幅方向に沿って等間隔に測定される厚み(mm)の算術平均により前記3箇所の平均厚みをそれぞれ算出し、算出した前記3箇所の平均厚みの値を算術平均することにより求めることができる。
上記シート状の発泡体の厚みは、主に押出時の引取速度、吐出量、ブローアップ比(拡径比)等を調整することにより調整することができる。特に、上記範囲の平均厚みのシート状の発泡体30を形成する場合には、押出機10より押し出された筒状の発泡体20の引取速度を5m/分以上75m/分以下に調整するとよく、特に平均厚みを1.0mm以下に調整する場合、好ましくは引取速度を10m/分以上75m/分以下、より好ましくは15m/分以上60m/分以下の範囲に調整するとよい。
従来、不燃性の物理発泡剤として用いられてきた二酸化炭素等を用いて、このような速い引取速度で引き取られて形成された発泡体シートは、一般的に表面性状が不良になる傾向にある。具体的には、シート状に形成された発泡体の表面は、伸びムラ、または気泡の破泡による凹凸が発生し表面性状が不良となる傾向にあった。これは、二酸化炭素の熱可塑性樹脂に対する可塑化効果が低いため、物理発泡剤として二酸化炭素を使用した場合、環状ダイから押出され引き取られる樹脂の延展性が充分でないことが原因の一つとして考えられる。特に、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂等を用いた場合、引取時にシート状の発泡体の伸びムラや気泡の破泡が生じやすく、表面性状が悪化しやすい傾向がある。このような傾向は、特に引取速度を大きくして薄厚みの発泡体シートを得ようとした場合に、より顕著となる。
これに対し、本実施形態は、物理発泡剤として、ポリスチレン系樹脂に対して可塑化効果の高い1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いる。そのため、引取速度が上述の範囲に調整された場合であっても、熱可塑性樹脂に延展性が付与され、表面性状が良好であって、かつ不燃性の物理発泡剤が残存しないか、あるいは残存量が少ない薄厚みのシート状の発泡体30を得ることができると考えられる。さらに、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂を用いた場合であっても表面性状の良好なシート状の発泡体30を得ることが可能である。
本実施形態の製造方法により形成されるシート状のポリスチレン系樹脂発泡体(発泡体30)は、平均厚みが上述する数値範囲であって、かつ見掛け密度が30kg/m3以上300kg/m3以下の範囲に形成され得る。見掛け密度が30kg/m3以上であることにより、発泡体30の剛性や強度が維持されるため好ましい。また見掛け密度が300kg/m3以下であることにより、発泡体30の軽量性が維持されるため好ましい。
本発明におけるシート状の発泡体の見掛け密度(kg/m3)は、発泡体から切り出した複数の試験片の質量(kg)と、外見寸法から求められる体積(m3)とを測定し、上記質量(kg)を上記体積(m3)で除して各試験片の見掛け密度(kg/m3)を求め、得られた値を算術平均値することにより求めることができる。
発泡体30の独立気泡率(%)は、優れた剛性、耐衝撃性等の物性を得るという観点からは、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上である。
発泡体30の坪量は、優れた耐曲げ割れ性、耐衝撃性等の物性を得るという観点からは、40g/m2以上300g/m2以下であることが好ましい。
発泡体30の押出方向(MD)の平均気泡径に対する厚み方向(VD)の平均気泡径の比(VD/MD)は、コシ強度の担保による取り扱い性の向上および緩衝性の向上による被包装物の保護の観点から1.0未満であることが好ましく、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下である。同様に、幅方向(TD)の平均気泡径に対する厚み方向(VD)の平均気泡径の比(VD/TD)は、1.0未満であることが好ましく、より好ましくは0.8以下である。これらの比が1.0未満であることは、気泡が扁平であることを示している。一般に、発泡体30を比較的早い引取速度で引き取り、薄厚みのシート状の発泡体30とした場合、気泡が扁平となりやすい。
上記平均気泡径の比VD/MDおよびVD/TDは、引取速度のほか、吐出量、ブローアップ比(拡径比)等を調整することにより上記範囲内に調整することができる。例えば、押出方向の平均気泡径に対する厚み方向の平均気泡径の比(VD/MD)を1.0未満にする場合には引取速度を上げる等の方法で調整することができる。幅方向の平均気泡径に対する厚み方向の平均気泡径の比(VD/TD)を1.0未満にする場合にはブローアップ比を大きくすることで調整することができる。
上記説明では、単層であるシート状の発泡体30を製造する方法について説明したが、本発明の製造方法はこれに限定されず、多層のシート状の発泡体を製造することもできる。図示省略するが、例えば発泡層形成用押出機の出口に共押出用環状ダイを取り付け、該共押出用環状ダイに表面層形成用押出機を連結させた装置を用いて共押出することで発泡層と表面層とを備える筒状の多層発泡体を得、当該筒状の多層発泡体を、上述したとおり切り開き、またはピンチロールに通過させる等して、多層のシート状の発泡体を製造することもできる。なお、表面層は非発泡状態であっても発泡状態であってもよい。
以下に、本実施形態の製造方法に用いる材料について説明する。
(熱可塑性樹脂)
本実施形態は、熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用いる。ポリスチレン系樹脂の配合割合は、50質量%以上95質量%以下であり、ポリエチレン系樹脂の配合割合は5質量%以上50質量%以下である(ただし、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)。
上記ポリスチレン系樹脂は、通常、ポリスチレン系樹脂発泡体に用いられるポリスチレン系樹脂であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。また、これらのポリスチレン系樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
なお、上記熱可塑性樹脂において、ポリスチレン系樹脂は、スチレン成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
上記ポリエチレン系樹脂は、例えば、通常、ポリエチレン系樹脂発泡体に用いられるポリエチレン系樹脂であれば特に制限なく用いることができ、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル等が挙げられる。これらの中でも、発泡体製造時の押出発泡性、発泡体の耐衝撃性と剛性のバランス、コスト性の観点から、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。
低密度ポリエチレンを用いる場合、押出発泡性や発泡体の物性バランスの観点から、JIS K 7210-1:2014(試験温度:190℃、荷重2.16kg)に基づいて測定される低密度ポリエチレン樹脂のMFRが、5g/10min以下であることが好ましい。また、その下限は、概ね0.1g/10min以上である。
なお、一般に、低密度ポリエチレンとは、長鎖分岐構造を有する密度0.91g/cm3以上0.93g/cm3未満のポリエチレン系樹脂をいう。また、本発明におけるポリエチレン系樹脂は、エチレン成分が50モル%以上のものであり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
(物理発泡剤)
上記物理発泡剤としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO1233zd)が用いられる。本実施形態では、物理発泡剤として実質的に1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのみを用いてもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに加えて二酸化炭素等の他の物理発泡剤を用いてもよい。本実施形態において、使用する物理発泡剤の一部を1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンにすることで、上述するガス置換を目的とした養生工程を省略あるいは短縮することが可能であると共に、ポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂を用いた場合であっても物性、表面性状が良好なシート状の発泡体を得ることができる。得られた熱可塑性樹脂発泡体を密閉容器に収容した場合に、当該密閉容器内に発泡体由来の可燃性ガスが溜まることを完全に回避できるという観点からは、物理発泡剤として、実質的に1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンのみを用いることが好ましい。
1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと組み合わせて用い得る上記他の物理発泡剤としては、発泡樹脂成形体の押出成形に用いられる一般的な物理発泡剤から適宜選択可能である。例えば二酸化炭素、窒素、空気、水等の無機系物理発泡剤等から選択される1種または2種以上の組合せが挙げられる。
なお、他の物理発泡剤として、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、炭素数3~6の脂肪族炭化水素等の可燃性ガスを用いることもできるが、その場合、ガス置換のための養生工程を省略あるいは短縮する観点から製造直後の熱可塑性樹脂発泡体中に残存する可燃性ガスの含有量が0.1質量%以下となるよう配合することが好ましく、0.05質量%以下となるよう配合することがより好ましい。特に、炭素数3~6の飽和炭化水素を用いる場合、その配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部以下であることが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1質量部以下であり、特に好ましくは熱可塑性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以下である。
なお、上記観点から、物理発泡剤として、可燃性ガスを用いないことが最も好ましい。
本実施形態において、熱可塑性樹脂に対する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合量は、特に限定されないが、安定して押出発泡成形を行えるという観点から、熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下の範囲であることが好ましく、0.2mol以上2.0mol以下の範囲であることがより好ましい。
(その他の材料)
本実施形態では、上述する熱可塑性樹脂および物理発泡剤に加え、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、押出成形に必要な適宜の材料を1種または2種以上使用することができる。
その他の材料としては、たとえば、気泡調整剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。
上記気泡調整剤としては、無機系のもの、有機系のもの、いずれも使用することができる。無機系の気泡調整剤としては、例えば、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
有機系の気泡調整剤としては、例えば、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることができる。
気泡調整剤の添加量は、シート状の発泡体に形成させる気泡に応じて適宜設定することができるが、通常、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下の範囲であり、好ましくは0.2質量部以上5質量部以下の範囲である。
(第二実施形態)
以下に、本発明の製造方法の第二実施形態について説明する。
本発明の製造方法の第二実施形態は、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを用いると共に、物理発泡剤における1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合が10mol%以上99mol%以下、二酸化炭素の配合割合が1mol%以上90mol%以下である(ただし、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の配合割合の合計を100mol%とする)ことを特徴とする。第二実施形態の製造方法は、かかる特徴以外については、適宜、上述する第一実施形態と同様に実施することができ、したがって第一実施形態に関する説明を適宜参照することができる。
第二実施形態に用いられる物理発泡剤は、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを含み、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、さらなる他の発泡剤を含んでもよい。好ましくは、第二実施形態の製造方法の物理発泡剤として、実質的に1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素のみを用いるとよい。
第二実施形態において、物理発泡剤における1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合は、10mol%以上99mol%以下の範囲であり、二酸化炭素の配合割合は、1mol%以上90mol%以下の範囲である(ただし、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の配合割合の合計を100mol%とする)。表面性状、見掛け密度及び独立気泡率が良好なシート状の発泡体が得られる観点からは、上記物理発泡剤において、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合は、20mol%以上であることが好ましく、35mol%以上であることがより好ましく、50mol%以上であることがさらに好ましい(ただし、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の配合割合の合計を100mol%とする)。
本実施形態では、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを含むことにより、得られるシート状の熱可塑性樹脂発泡体における可燃性の物理発泡剤の残存量を実質的にゼロとするか、あるいは少なくすることができる。また、物理発泡剤として二酸化炭素のみを用いた場合には、製造されるシート状の熱可塑性樹脂発泡体の表面性状が悪化する傾向や、独立気泡率が低下する傾向にあるところ、二酸化炭素に加え1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを併用する本実施形態は、上記表面性状の悪化や、独立気泡率の低下を抑制することができる。
上述のように、物理発泡剤として二酸化炭素のみを用い、押出された筒状の発泡体を引き取る引取速度を5m/分以上75m/分以下の範囲に調整した場合、得られるシート状の発泡体の表面は、伸びムラや破泡が発生しやすく、特に、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂等を用いた場合、表面性状が悪化しやすい傾向がある。この傾向は引取速度を大きくして薄厚みの発泡体を得ようとした場合、より顕著となる。これに対し本実施形態は、物理発泡剤に上述の割合で1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含むことにより、薄厚みの発泡体を得ようとした場合であっても、上述する伸びムラや破泡の発生を良好に防止する。さらに、熱可塑性樹脂としてポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂を用いた場合であっても表面性状の悪化を良好に防止する。
また、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを併用した場合、形成されるシート状の発泡体の発泡倍率を高く調整し易くなると共に、発泡剤のコストを安価なものとすることができる。特に、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の合計100質量%において、二酸化炭素を40質量%以上60質量%以下の範囲で配合し、かつ1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを40質量%以上60質量%以下で配合することで、見掛け密度が100kg/m3以下のシート状の熱可塑性樹脂発泡体を安定して製造することが可能である。
本実施形態において、熱可塑性樹脂に対する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の配合量の合計は、特に限定されないが、安定して押出発泡成形を行えるという観点から、熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下であることが好ましく、0.2mol以上2.0mol以下の範囲であることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂に対する1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合量は、熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下であることが好ましく、0.2mol以上2.0mol以下の範囲であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂に対し、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合量が上記範囲であることにより、物理発泡剤として併用される二酸化炭素に起因するシート状の発泡体の表面性状の不良を有意に改善することができる。
熱可塑性樹脂に対する二酸化炭素の配合量は、熱可塑性樹脂1kgあたり0.001mol以上2.7mol以下であることが好ましく、0.002mоl以上1.8mоl以下であることがより好ましい。熱可塑性樹脂に対し、二酸化炭素の配合量が上記範囲であることにより、形成されるシート状の発泡体の発泡倍率を高く調整し易いと共に、発泡剤のコストをより安価とすることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造装置として、バレル内径65mmの押出機と、該押出機に接続されたバレル内径90mmの押出機とからなる押出装置を用いた。上記押出機の出口に環状ダイ(リップ径60mm)を取り付けるとともに、環状ダイの下流側に直径150mmのマンドレルを設置した。上記マンドレルはカッター刃が設けられたものを用いた。
各実施例および各比較例を実施するために用いた熱可塑性材料は以下のとおりである。
・ポリスチレン系樹脂(PS樹脂):PSジャパン株式会社製、ポリスチレンGX154
・ポリエチレン系樹脂(PE樹脂):住友化学株式会社製、低密度ポリエチレンF102
・スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS):旭化成株式会社製、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、タフテックH1041
上記熱可塑性材料100質量%において、上記PS樹脂を76質量%、上記PE樹脂を20質量%、上記SEBSを4質量%の割合で用いた。
各実施例および各比較例を実施するために用いた発泡剤は以下のとおりである。尚、用いた発泡剤の種類および配合量は、表1に示す。
・1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO1233zd)
・二酸化炭素(CO2
・シルバーブタン(s-Bu)
尚、シルバーブタンとしては、イソブタン:ノルマルブタン=30:70に調整されたものを用いた。
PS樹脂、PE樹脂およびSEBSを上述の割合で押出機に供給し、気泡調整剤としてタルク35%マスターバッチを、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.8質量部添加し、加熱、溶融、混練するとともに、発泡剤を注入し、適度な樹脂温度(℃)に調整して、熱可塑性樹脂溶融物を得た。上記熱可塑性樹脂溶融物を適度な吐出量で吐出し環状ダイに導入した。
尚、各実施例および各比較例における発泡剤の種類と分類(可燃または不燃)およびその配合量、ならびに樹脂温度(℃)および吐出量(kg/hr)は、表1に示す。
続いて、環状ダイに導入した熱可塑性樹脂溶融物をマンドレルの外面に沿って筒状に押出し、筒状の発泡体を形成した。ブローアップ比(拡径比)は2.5とした。上記筒状の発泡体をマンドレルに設けられたカッター刃で切り開くとともに、適度な引取速度(m/min)で引き取ってロール状に巻き取り、シート状の発泡体を得た。
各実施例および各比較例における環状ダイのダイ圧(G:ゲージ圧)(MPa)および引取速度(m/min)は、表1に示す。
上述の各実施例および各比較例にて形成されたシート状の発泡体を以下のとおり評価または測定した。評価結果は、表2に示す。
<見掛け密度(kg/m3)>
シート状の発泡体の押出方向において無作為に5箇所選択し、各箇所について全幅にわたり切り出して5つの試験片を準備した。そして各試験片の質量(kg)および外見寸法から求められる体積(m3)を測定し、上記質量(kg)を上記体積(m3)で除して各試験片の見掛け密度(kg/m3)を求め、得られた値の算術平均値を見掛け密度(kg/m3)とした。
<発泡倍率>
使用した樹脂組成物の密度(kg/m3)を上記方法により算出された見掛け密度(kg/m3)で除した値を発泡倍率として算出した。樹脂組成物の密度(kg/m3)は、樹脂組成物中のポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の配合割合(ただし、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100%とする)と、それぞれの樹脂固有の密度から計算により求めた。
<平均厚み(mm)>
シート状の発泡体の全幅にわたって幅方向に沿って等間隔で15箇所の発泡体の厚み(mm)を測定し、それらの算術平均による平均厚みを算出した。前記測定をシート状の発泡体の無作為に選択された3箇所に対して行い、算出した前記3箇所の平均厚みの値の算術平均値をシート状の発泡体の平均厚み(mm)とした。
<坪量(g/m2)>
シート状の発泡体を適宜寸法に切り出して試験片を作製し、当該試験片の面積(m2)および当該試験片の質量(kg)を測定し、上記質量(kg)を上記面積(m2)で除して坪量(g/m2)を求めた。
<独立気泡率(%)>
シート状の発泡体の独立気泡率(%)を、ASTMD2856-70(1976再認定)に記載されている手順Cに準拠し、以下のとおり求めた。シート状の発泡体から適宜寸法に切り出した試験片を用い、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型等を使用して測定される上記試験片の実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和):Vx(cm3)から、下記式(1)により独立気泡率(%)を算出した。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
但し、上記式中の、Va、W、ρは以下の通りである。
Va: 測定に使用した試験片の見かけ容積(cm3
W: 試験片の質量(g)
ρ: 試験片を構成する樹脂組成物の密度(g/cm3
なお、樹脂組成物の密度ρ(g/cm3)は、試験片の質量W(g)及び測定に使用した試験片を加熱プレスにより気泡を脱泡させてから冷却する操作を行い、得られたサンプルの体積(cm3)から求めた。
<シート幅(mm)>
シート状の発泡体の押出方向と直交する方向(幅方向)における長さ寸法を無作為に10箇所測定し、その算術平均値を求め、シート幅(mm)とした。
<シートの表面性状の評価>
シート状の発泡体の一方側の表面を室内灯下において1mの距離から目視により観察し以下のとおり評価した。
○:平滑性があり外観が良好であった
△:やや伸びムラが確認される箇所があった
×:伸びムラがあって、気泡の破泡による凹凸や外観不良が見られた
<発泡体中の可燃性ガス残存量(wt%)>
ロール状に巻き取られた直後のシート状の発泡体において、ロール物の芯と外面との中間であってシートの幅方向中心部分から、1gの試験片を切り出した。この試験片を密閉容器内で、既知量のシクロペンタンをトルエンに加えた50ccの溶媒中に常温で24時間浸漬して、試験片中に残存する発泡剤の炭素数3~6の脂肪族炭化水素を溶媒中に抽出した。
そして溶媒中に抽出した炭素数3~6の脂肪族炭化水素の量を、ガスクロマトグラフを用いて内部標準法により定量し、予め測定しておいた試験片の質量から、試験片中に残存する発泡剤の量を求めた。
<平均気泡径>
押出方向(MD)の平均気泡径は、以下の方法により求めた。まず、シート状の発泡体を押出方向に適度な長さに切断した切断シートを準備し、当該切断シートを押出方向に平行かつ幅方向に10等分するように切断し、試験片Aを形成し、上記試験片Aの片側一方の垂直断面(計10面)の断面写真を撮影した。次に、上記断面写真における、厚み方向の中心部において、押出方向に長さ30mmの線分を引き、この線分と交わる全ての気泡の数を測定し、線分の長さ(即ち30mm)を測定した気泡の数で割った値を押出方向における気泡径とし、10面それぞれで得られた気泡径の平均を押出方向の平均気泡径(μm)として採用した。
同様に、幅方向(TD)の平均気泡径は、以下の方法により求めた。まず、発泡体の幅方向において、当該幅方向と平行かつ押出方向に等間隔に10箇所、発泡体を切断して試験片Bを形成し、上記試験片Bの片側一方の垂直断面(計10面)の断面写真を撮影した。次に、上記断面写真における、厚み方向の中心部において、幅方向に長さ30mmの線分を引き、この線分と交わる全ての気泡の数を測定し、線分の長さ(即ち30mm)を測定した気泡の数で割った値を幅方向における気泡径とし、10面それぞれで得られた気泡径の平均を幅方向の平均気泡径(μm)として採用した。
また、厚み方向(VD)の平均気泡径は、上述する押出方向の平均気泡径の測定と同様に試験片Aを作製し、10面の垂直断面の断面写真を撮影した。次に、上記断面写真において、発泡体の全厚み方向に線分を引き、この線分上にある気泡の数を測定し、線分の長さを気泡数で割った値を厚み方向の気泡径とし、10面それぞれで得られた気泡径の平均を厚み方向の平均気泡径(μm)として採用した。
なお、これらの線分の始点は気泡壁の外側の端から引くこととした。
表2に示すとおり、各実施例は、物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン単独、または二酸化炭素との組み合わせを用い、製造されるシート状の発泡体に可燃性の物理発泡剤が残存しない条件で実施された。したがって、各実施例において得られたシート状の発泡体は、いずれもガス置換のための養生工程を省略して、速やかにコンテナ等の密閉容器に収容しても、当該密閉容器内に可燃性の物理発泡剤が蓄積する虞がない。
実施例はいずれも、物理発泡剤としてシルバーブタンを用いた比較例1、2と同程度の良好な表面性状を示すことが確認された。
物理発泡剤として、二酸化炭素のみを用いた比較例3、4はシート状の発泡体の表面性状がやや不良、または不良であることが確認された。これに対し、物理発泡剤100mol%において1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが25mol%であり二酸化炭素が75mol%であった実施例2~4、及び1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが75mol%であり二酸化炭素が25mol%であった実施例6はシート状の発泡体の表面性状が良好であり、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの存在により表面性状が改善されることが確認された。
実施例1と比較例1とを対比すると、両者の平均厚みおよび発泡倍率は同程度であるところ、実施例1の方が、樹脂温度、ダイ圧が低く、緩やかな条件で押出成形が実施されたことが確認された。また実施例3と比較例3との対比、および実施例4と比較例4との対比でも同様の傾向が確認された。このことから物理発泡剤として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いた場合、可塑化効果が発揮され熱可塑性樹脂に延展性が付与されることが推察された。
また、実施例1と比較例1、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4とをそれぞれ対比すると、いずれも実施例の方が独立気泡率が高く、しかも平均厚みが小さいほど、独立気泡率の差異が大きいことが確認された。したがって、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを物理発泡剤として用いる本発明の製造方法によれば、薄厚みで、かつ独立気泡率の高いシート状の発泡体が作製されることが推察された。
実施例2と実施例5とを比較すると、熱可塑性樹脂1kgに対する物理発泡剤の配合量(mol)は同程度であるが、実施例5は1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンが100mol%であるのに対し、実施例2は二酸化炭素が75mol%配合されており、作製された発泡体の倍率が有意に高かった。これにより、本発明に用いられる物理発泡剤として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンに加え二酸化炭素を配合することで、高発泡倍率のシート状の発泡体を得られ易いということが確認された。さらに、実施例2と実施例6とを比較すると、二酸化炭素が25mol%配合された実施例6においても作製された発泡体の倍率が有意に高かった。これにより、二酸化炭素の配合量が少量である場合においても、高発泡倍率のシート状の発泡体が得られ易くなることが確認された。
Figure 0006995600000001
Figure 0006995600000002
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、
前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下であり、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、
物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用いることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
(2)熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、
前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、
物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを用い、
前記物理発泡剤における前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合が10mol%以上99mol%以下であり、前記二酸化炭素の配合割合が1mol%以上90mol%以下である(ただし、前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと前記二酸化炭素との配合割合の合計を100mol%とする)ことを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
(3)前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合量が、前記熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下である上記(1)に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
(4)前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと前記二酸化炭素との配合量の合計が、前記熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下である上記(2)に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
(5)前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上3mm以下であり、見掛け密度が30kg/m3以上300kg/m3以下である上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。
10・・・押出機
12・・・供給口
14・・・発泡剤注入口
16・・・環状ダイ
17・・・マンドレル
18・・・切開手段
20・・・筒状の発泡体
30・・・シート状の発泡体

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、
    前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、
    前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上3mm以下であり、見掛け密度が30kg/m 3 以上300kg/m 3 以下であり、
    前記熱可塑性樹脂発泡体がガラス板用間紙であり、
    前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下であり、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量% 以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、
    物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを用い
    物理発泡剤として、炭素数3~6の飽和炭化水素の配合量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部以下(0を含む)であることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を用い、
    前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリエチレン系樹脂と物理発泡剤とを混練してなる熱可塑性樹脂溶融物を環状ダイから押出して形成された筒状の発泡体を引き取り、シート状の熱可塑性樹脂発泡体を製造する方法であって、
    前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上3mm以下であり、見掛け密度が30kg/m 3 以上300kg/m 3 以下であり、
    前記熱可塑性樹脂発泡体がガラス板用間紙であり、
    前記ポリスチレン系樹脂の配合割合が50質量%以上95質量%以下、前記ポリエチレン系樹脂の配合割合が5質量%以上50質量%以下であり(ただし、前記ポリスチレン系樹脂および前記ポリエチレン系樹脂の配合割合の合計を100質量%とする)、
    物理発泡剤として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと二酸化炭素とを用い、
    前記物理発泡剤における前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合割合が10mol%以上99mol%以下であり、前記二酸化炭素の配合割合が1mol%以上90mol%以下であ(ただし、前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと前記二酸化炭素との配合割合の合計を100mol%とする)
    物理発泡剤として、炭素数3~6の飽和炭化水素の配合量が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部以下(0を含む)であることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
  3. 前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの配合量が、前記熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下である請求項1に記載の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
  4. 前記1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンと前記二酸化炭素との配合量の合計が、前記熱可塑性樹脂1kgあたり0.1mol以上3.0mol以下であり、
    1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンおよび二酸化炭素の合計100質量%において、二酸化炭素を40質量%以上60質量%以下の範囲で配合し、かつ1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを40質量%以上60質量%以下で配合し、
    前記熱可塑性樹脂発泡体の見掛け密度が100kg/m 3 以下である請求項2に記載の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂発泡体の平均厚みが0.1mm以上1mm以下であり、独立気泡率が60%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
  6. 製造直後の前記熱可塑性樹脂発泡体中に残存する可燃性ガスの含有量が0.05質量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂発泡体からなるガラス板用間紙の製造方法。
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