JP4011512B2 - 結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸系樹脂は、天然に存在する乳酸を重合させて得られた樹脂である。ポリ乳酸系樹脂は、自然界に存在する微生物によって分解される、いわゆる遺棄分解性を備えた樹脂として注目されている。しかも、ポリ乳酸系樹脂は、その組成によって常温での機械的特性のすぐれたものとなる。従って、ポリ乳酸系樹脂は環境に優しい実用性を備えた樹脂として注目されている。
【0003】
乳酸は分子中に不斉炭素原子を含んでいる。このために乳酸は光学的活性を示す。従って、乳酸にはD−体、L−体及びラセミ体(D−体とL−体との等量混合物)の3種のものが存在する。そのため、乳酸を重合させて得られたポリ乳酸は、これら3種のものの混合割合と重合方法の相違などによって、色々と性質の異なった重合体を生じる。事実、ポリ乳酸には結晶性のものから非晶性のものまで、色々と異なった性質のものがあり、融点又は軟化点も区々である。
【0004】
一般に、ポリ乳酸系樹脂は、これを加熱すると、軟化又は溶融してすぐに粘度の低い液体となる。粘度が低い液体はその中に気泡を保持することができない。従って、ポリ乳酸系樹脂は、これを加熱したとき発泡に適した溶融粘度を示す温度範囲が極めて狭い。このために、ポリ乳酸系樹脂は、これを加熱して発泡に適した状態を発現させることが困難であり、従って発泡させにくい樹脂とされている。その中でも結晶性のポリ乳酸系樹脂は、明確な融点を持ち融点以下では急激に粘度を低下させるからとくに発泡させにくい樹脂とされている。
【0005】
そこで、ポリ乳酸系樹脂を変性して発泡させ易くしようとの試みがなされた。例えば特開2000−44716号公報は、乳酸をアセチルセルロースのような多糖類と共重合させてポリ乳酸系樹脂とすることを提案している。しかし、このような樹脂は、乳酸を多糖類と共重合させるのに複雑な工程と特殊な設備が必要とされるだけでなく、得られた樹脂はポリ乳酸系樹脂が本来持っている遺棄分解性の損なわれたものとなってしまうという問題がある。
【0006】
また、特開2002−155197号公報は、生分解性樹脂組成物中に架橋剤としてイソシアネート化合物を含ませることによって、樹脂の融点付近における粘度の急激な減少を緩和させる方法を提案している。しかし、イソシアネート化合物を含ませると、矢張り得られた樹脂はポリ乳酸系樹脂が本来持っている遺棄分解性が損なわれたものとなる、という問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、遺棄すると自然に分解して無害なものになるという特性を維持したポリ乳酸系樹脂からなり、均一で微細な気泡を持った発泡体が得られるような、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題解決のための手段】
この発明者は、結晶性ポリ乳酸系樹脂に種々の添加剤を加えて押出発泡を試みた。その結果、特定組成の結晶性ポリ乳酸系樹脂を選択し、発泡剤としてジメチルエーテルと炭化水素とを併用して押出発泡させると、ポリ乳酸系樹脂が持つ遺棄分解性を損なわないで、良質の発泡体が得られることを見出した。
【0009】
結晶性ポリ乳酸系樹脂は、既に述べたように、溶融粘度が低くて発泡させにくい樹脂とされてきたため、これまでは専ら溶融粘度を改善しようとの試みがなされて来て、発泡剤については殆ど検討されなかった。ところが、この発明者は、結晶性ポリ乳酸系樹脂の組成と発泡剤との関係を検討した結果、D−体とL−体とが特定の割合で共重合してなる結晶性ポリ乳酸系樹脂に対しては、発泡剤としてジメチルエーテルと炭化水素とが特定の割合で混合されてなる混合物を用いて、押出発泡を行うと、意外にも発泡に適した溶融粘度が得られ、容易に良質の発泡体の得られることが判明した。この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
さらに実験を重ねた結果、この発明者は、上述の押出発泡を行うにあたり、押出機の先に取り付けた金型から樹脂を特定の剪断速度で押し出すと、一層容易且つ確実に良質の発泡体の得られることを見出した。また、上述の結晶性ポリ乳酸系樹脂にステアリン酸モノグリセライドのような高級脂肪酸アルコール性エステルを添加して押出発泡を行うと、一層容易に良質の発泡体の得られることを見出した。この発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
この発明は、D−体とL−体とが、重量でそれぞれ2〜13%及び98〜87%の割合で共重合してなる結晶性ポリ乳酸系樹脂を押出機内で加熱し、溶融された樹脂に発泡剤としてジメチルエーテルと炭化水素とが重量比で95/5ないし5/95の割合で混合されてなる混合物を圧入し、得られた溶融樹脂を押出機から押し出して発泡させることを特徴とする結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【0012】
発泡体のうち、シート状の発泡体は一般に均一微細に発泡したものを得ることが困難であるが、この発明は良質のシート状発泡体を容易に得ることができる、という点で有用なものである。すなわち、発泡体のうちで、シート状以外のもの例えば棒状の発泡体は、高倍率に発泡した良質のものを比較的容易に作ることができる。しかし、シート状の発泡体は高倍率に発泡した良質のものを得ることは困難であるところ、この発明方法によれば容易にそのようなシート状の発泡体を得ることができる。
【0013】
一般にポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸及び/又はD−乳酸を重合させて作られるか、又はL−ラクチド及び/又はD−ラクチド及び又はDL−ラクチドを開環重合させることによって作られる。この発明では、そのうちのどの方法によって作られたポリ乳酸系樹脂でもこれを用いることができる。
【0014】
また、この発明で用いることのできるポリ乳酸系樹脂は、D−体とL−体とが重量でそれぞれ2〜13%及び98〜87%の割合で共重合して得られた結晶性ポリ乳酸系樹脂である。その樹脂は、D−乳酸とL−乳酸とだけからなるもののほかに、これにさらに他のヒドロキシカルボン酸が共重合しているものをも用いることができる。要するに、その樹脂は式
で表わされるD−乳酸及びL−乳酸を上記の割合で含んだものである。
【0015】
ポリ乳酸系樹脂は、上述のように、D−体とL−体との比率によって非晶性のものと結晶性のものとがある。一般にD−体又はL−体が100%近くを占めている樹脂は結晶性であり、D−体及びL−体のうちの一方が増すに従って樹脂は次第に非晶化となる傾向を示し、一方が20%を越えると樹脂は完全に非晶性となる。また、結晶性のポリ乳酸系樹脂は、一般に融点が高く、普通100℃以上の融点を示し、その融点は非晶性の樹脂の軟化点(ガラス転移点)よりも50℃以上高い。従って、結晶性ポリ乳酸系樹脂は耐熱性の樹脂として使用することができる。
【0016】
D−乳酸とL−乳酸とからなる共重合体のうち、両者がどのような割合で含まれている共重合体が、押出発泡を行うのに適しているかは知られていない。この発明者は、この点について検討した結果、D−体が2〜13重量%、L−体が98〜87重量%含まれている共重合体が押出発泡を行うに適していることを見出した。そこで、この発明では、結晶性ポリ乳酸系樹脂として、D−体が2〜13重量%でL−体が98〜87重量%の共重合体を用いることとしたのである。
【0017】
上述のD−体とL−体との共重合割合は、ポリ乳酸系樹脂の製造時における原料の仕込量から特定することができる。また、得られたポリ乳酸系樹脂からも決定することができる。それは単量体のD−体又はL−体の場合と同様に、共重合体の比旋光度を測定することによって定めることができる。それは例えば、次のようにして測定することができる。
【0018】
まず、問題のポリ乳酸系樹脂0.2gをクロロホルムに溶解し、20mlとする。旋光計(日本分光社製 DIP−370)を使用して25℃、セルの層長100mmでナトリウムスペクトルD線を照射して上記溶液の旋光度を測定し、この旋光度から下記(1)式にて比旋光度を求める。得られた比旋光度から下記(2)式又は(3)式によりD−体及びL−体の割合を算出する。
比旋光度(度)=100×α/〔l×c〕 (式1)
α:試料の旋光度測定値(度)
l:セルの層長(mm)
c:試料溶液の濃度(g/ml)
D−体割合(%)=(比旋光度+156)×100/312 (式2)
L−体割合(%)=100−(D−体割合) (式3)
【0019】
この発明では、こうして決定された含有割合を基準にして、D−体が2〜13重量%、L−体が98〜87重量%の割合で、共重合したポリ乳酸系樹脂を選んで使用する。その理由は、上述のように種々の組成のポリ乳酸系樹脂について押出発泡の実験を行って得られた結果に基づいている。すなわち、D−体が2重量%より少ないか又はL−体が98重量%より多くなると、ポリ乳酸系樹脂は溶融状態から急激に結晶化するために、発泡に適した溶融粘度を樹脂に保持させることが困難となり、かりに発泡体ができても、得られた発泡体は脆性が強く、実使用する際に問題が生じるからである。また逆にD−体が13重量%より多いか又はL−体が87重量%より少なくなると、ポリ乳酸系樹脂は非晶化の傾向を示し、融点が低くなり実用に適したものとならないからである。そのうちでは、含有割合として2〜10重量%のD−体と、98〜90重量%のL−体とを含むものが好ましく、さらに3〜9重量%のD−体と97〜91重量%のL−体を含むものが最も好ましい。
【0020】
この発明では、上述の共重合割合のものの中で、とくにメルトマスフローレートが1〜15g/10分のポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。その中では5〜10g/10分のメルトマスフローレートを示すものを用いることが好ましい。この場合、メルトマスフローレートはJIS K 7210が規定する方法に従い、190℃で2.16kgfの荷重をかけて測定した値である。
【0021】
結晶性ポリ乳酸系樹脂におけるD−体の含有割合と、メルトマスフローレートとは、何れも結晶性ポリ乳酸系樹脂の押出発泡の容易さに大きな影響を及ぼすものである。従って、結晶性ポリ乳酸系樹脂のメルトマスフローレートとD−体含有比率との比W、すなわち
の値を採ると、Wが0.33〜3の範囲内にあるようにし、とりわけ0.5〜2の範囲内にあるようにすると、押出発泡がし易くなる。Wが0.33より小さくなると、押出発泡時の負荷が大きくなり、良好な発泡体が安定して得られにくくなる。また、逆にWが3より大きくなると、結晶性ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度が温度に敏感になり過ぎて、発泡に適した溶融粘度をコントロールすることが困難になる。
【0022】
この発明では、結晶性ポリ乳酸系樹脂を押出機に入れ、溶融した樹脂に発泡剤を含ませる。発泡剤としてはジメチルエーテルと炭化水素とを用いる。炭化水素は、例えばプロパン、ブタン、ペンタンを用いることができる。そのうちではブタンを用いることが好ましい。それは押出発泡させ易く、また気泡を均一に微細化することができるからである。ブタンとしては、ノルマルブタン、イソブタン、及びこれらの混合物の何れをも用いることができる。その中ではイソブタンが30〜100重量%でノルマルブタンが0〜70重量%の混合物、とりわけイソブタンが50〜100重量%でノルマルブタンが0〜50重量%の混合物を用いることが好ましい。それは、とくに気泡を微細化することができるからである。
【0023】
ジメチルエーテルは押出機中で溶融した結晶性ポリ乳酸系樹脂に対し、優れた相溶性を示し、顕著な可塑化効果をもたらし、押出発泡において発泡性を著しく改善する。しかし、ジメチルエーテルは結晶性ポリ乳酸系樹脂に対して相溶性が良好過ぎるために気泡を大きくする傾向を示す。これに対し、炭化水素は結晶性ポリ乳酸系樹脂との相溶性があまり良好でないので、逆に発泡核剤として働き、気泡を微細化するように働く。また炭化水素は、結晶性ポリ乳酸系樹脂との相溶性が余り良くないので、炭化水素だけを発泡剤として使用すると、発泡体中の気泡膜が破れてスが発生する。ところが、ジメチルエーテルと炭化水素とを組み合わせて使用すると、上述の欠点が抑えられ長所が発揮されて良好な発泡体を得ることができる。
【0024】
この発明では、ジメチルエーテルと炭化水素とを重量比で、95/5ないし5/95の割合で混合して用いる。このうちで好ましいのは90/10ないし10/90の割合であり、さらに好ましいのは85/15ないし15/85の割合である。ジメチルエーテル/炭化水素の割合が大きいと、すなわち炭化水素に比べてジメチルエーテルが多いと、炭化水素による気泡微細化の効果が充分に発揮されないで、気泡が粗く外観の劣った発泡体が得られる。逆に上記の割合が小さいと、樹脂が発泡に適した粘度を示す領域が狭くなり、従って高倍率に発泡させることが困難になるとともに、発泡体中にスが発生しやすくなる。ジメチルエーテルと炭化水素の合計使用量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し0.5〜15重量部であり、1〜10重量部が好ましく、2〜8重量部がさらに好ましい。
【0025】
ジメチルエーテルと炭化水素の混合物を注入するには、従来から発泡剤を注入する方法を採用することができる。すなわち、押出機のシリンダーに穿設した孔から溶融された樹脂中に混合物をポンプ等により圧入する。ジメチルエーテルと炭化水素とは、別々の孔から注入してもよいが、予め所定の割合に混合してのち1つの孔から注入することが好ましい。
【0026】
結晶性ポリ乳酸系樹脂中に上述の混合物を能率よく均一に分散させるためには、上述のようにジメチルエーテルと炭化水素とを予め混合したのち樹脂中に注入するか、別々に注入する場合はジメチルエーテルを注入し、その後に炭化水素を注入するのが好ましい。また、樹脂中に上記の混合物を能率よく均一に分散させるには、ジメチルエーテルと炭化水素とを何れもそれぞれの臨界温度以上に加熱され且つ臨界圧力以上に加圧した状態で溶融された樹脂中に注入することが好ましい。
【0027】
具体的に云えば、ジメチルエーテルは127℃の臨界温度と5.3MPaの臨界圧力を示すから、127℃以上で5.3MPa以上の圧力下に溶融樹脂中に注入することが好ましい。また、炭化水素としてイソブタンを用いる場合には、イソブタンは135℃の臨界温度と3.6MPaの臨界圧力を示すから、135℃以上で3.6MPa以上の圧力下に溶融樹脂中に注入することが好ましく、また炭化水素としてノルマルブタンを使用する場合には、ノルマルブタンは152℃の臨界温度と3.8MPaの臨界圧力を示すから、152℃以上で3.8MPa以上の圧力下に溶融樹脂中に注入することが好ましい。従って、上記3種の混合発泡剤を使用する場合には、それぞれの臨界温度、臨界圧力のうちで最大の組合せである温度152℃、圧力5.3MPa以上で、溶融樹脂中に注入することが好ましい。
【0028】
この発明で用いる押出機は、どのような形のものであってもよい。例えば、単軸押出機でも、二軸押出機でも、またこれらを連結したタンデム型の押出機でも用いることができる。押出機としては、結晶性ポリ乳酸系樹脂をよく混合するとともに溶融し、発泡剤を均一に含ませることができて、引き続き所定の温度に冷却して維持し、押し出すことができる能力を持ったものを用いる必要がある。
【0029】
押出機としてタンデム型の押出機を用いる場合には、一段目の押出機で発泡剤を圧入後、発泡剤含有の溶融樹脂を二段目の押出機に連続的に供給するようにする。このとき、一段目の押出機と二段目の押出機とを接続している接続管内で、樹脂を融点以上の温度に維持するとともに、ジメチルエーテルと炭化水素との臨界温度及び臨界圧力のうち、高い方の温度及び圧力以上に維持して、発泡剤を樹脂中に分散させる。こうして発泡剤が分散された樹脂は、二段目の押出機内で全体が均一な組成及び温度を持つように攪拌される。
【0030】
この発明では、発泡剤としてジメチルエーテルと炭化水素とを混合して用いることが必要とされるが、それ以外にこれに公知の発泡剤を混合して用いることができる。この場合に、公知の発泡剤はジメチルエーテルと炭化水素との合計量よりも少なくする。公知の発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミンのような樹脂の融点以上で分解してガスを発生する固体化合物や、塩化メチルのような加熱すると樹脂中で気化する液体や、二酸化炭素や窒素のような加圧下に樹脂に溶解される不活性な気体など、その何れをも使用することができる。
【0031】
この発明では押出機内で上述の発泡剤を溶融樹脂に含有させたあとで、これを樹脂の融点以上の温度に保持したまま押し出すことができる。しかし、有利なのは、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機内で引き続き冷却して、もとの樹脂の融点以下の温度にして、しかも発泡剤含有樹脂がまだ流動性を保っている間に、樹脂を押出機から押し出すことである。後者の温度での押し出しは、押出成形においては異常なことであるから、以下に説明する。
【0032】
一般に、樹脂を押出発泡させる場合には、結晶性の樹脂では樹脂の融点以上の温度で押し出し、非晶性の樹脂では、樹脂のガラス転移点以上の温度で押し出すのが、常識に適っている。なぜならば、融点又はガラス転移点以下の温度で押し出そうとすると、樹脂が固化して押し出すことができなくなるからである。
【0033】
事実、これまでは、例えば樹脂として融点が255℃の結晶性のポリエチレンテレフタレートを用いて、これを押出発泡させる場合には、樹脂温度を270〜290℃として押し出し、また樹脂として融点が160℃のポリプロピレンを押出発泡させる場合には、樹脂温度を170℃として押し出して来た。また、樹脂としてガラス転移点が90〜95℃の非晶性のポリスチレンを押出発泡させる場合には、樹脂温度を120〜160℃として来た。何れも、押出時の樹脂温度は、樹脂の融点又はガラス転移点よりも高い温度とされて来た。
【0034】
ところが、この発明では、前述のように結晶性ポリ乳酸系樹脂を融点以下の温度として押し出すのであるから、これは異常なことである。融点以下の温度の中では、融点と融点より40℃だけ低い温度との間で、押し出すこととなる。また、その中では、融点より1℃だけ低い温度と、融点より30℃だけ低い温度との間にすることがさらに好ましく、また融点より2℃だけ低い温度と、融点より20℃だけ低い温度との間にすることが最も好ましい。このような温度で押し出すことができる理由は、ジメチルエーテルと炭化水素とを含んだ結晶性ポリ乳酸系樹脂が、その融点以下に冷却されたとき、過冷却された状態に留まっていて、なお暫らくは流動性を保持しているからである。
【0035】
溶融したジメチルエーテルと炭化水素含有のポリ乳酸系樹脂を一様に樹脂の融点以下に冷却するには、色々な方法を採ることができる。その方法は、例えば多数のピンを持ったスクリュー又は多数の切欠を持ったスクリューフライト付きのスクリューのような高い混練機能を持ったスクリューを使用して樹脂を混練しながら、押出機のバレルを冷却水などで冷却する方法である。
【0036】
この発明は、こうして発泡剤含有の溶融樹脂を発泡に適した温度まで冷却する。そして、発泡剤含有樹脂がまだ流動性を保持している間に、樹脂を押出機の先端に付設した金型から押し出して発泡させる。このとき、金型を通る樹脂は、結晶性ポリ乳酸系樹脂の融点以上の温度であってもよいが、通常は融点と、融点より40℃だけ低い温度との間の温度にされる。このとき樹脂は発泡を行うに適した溶融粘度を持っている。
【0037】
この発明では、結晶性ポリ乳酸系樹脂の押出発泡成形性をさらに良くするために、結晶性ポリ乳酸系樹脂に高級脂肪酸アルコール性エステルを添加して使用することが好ましい。高級脂肪性エステルは、結晶性ポリ乳酸系樹脂の可塑剤として有効に作用し、押出発泡成形時の条件幅を広げるとともに、結晶性ポリ乳酸系樹脂と発泡剤、特に炭化水素との相溶化剤として有効に働き、発泡体中にスが発生することを抑える効果がある。また、高級脂肪酸アルコール性エステルは帯電防止剤としても有効に作用し、ジメチルエーテルや炭化水素の如き可燃性発泡剤を使用した際の発火事故等を防ぐ効果がある。
【0038】
高級脂肪酸アルコール性エステルとは、高級脂肪酸と多価アルコールにより形成されるエステルを意味し、そのエステル1分子中に遊離の水酸基を1個以上含むものをいう。そして、分子中にエーテル結合を有しないものが特に好ましい。
【0039】
上記多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリット、ソルビット、ソルビタン、マンニット、マンニタン、ジペンタエリスリット、ジグリセリン等を用いることができる。
【0040】
上記高級脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸等の飽和若しくは不飽和で炭素数が10〜30の1価の高級脂肪酸、又は、これらの高級脂肪酸が混在する牛脂肪酸、糠油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等を用いることができる。
【0041】
上記高級脂肪酸アルコール性エステルとしては、例えば、ラウリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ペンタエリスリットモノラウレート、ジペンタエリスリットジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキ糠油脂肪酸エステル、ソルビタンモノパリミテート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、マンニタンモノオレエート、マンニタンモノラウレート等を用いることができる。その中ではステアリン酸モノグリセライドが好ましい。
【0042】
高級脂肪酸アルコール性エステルの添加量は、少ないと、上述した効果が得られず、逆に多すぎると高級脂肪酸アルコール性エステル発泡体の表面に多く出てくるためベトツキが生じて好ましくなく、結晶性ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜1.0重量部が好ましく、0.02〜0.5重量部がより好ましく、0.03〜0・3重量部が特に好ましい。
【0043】
この発明では、ポリ乳酸系樹脂を押出発泡させるにあたって、これまで他の樹脂を押出発泡させるにあたって用いられてきた種々の添加剤を使用することができる。例えば、これまで気泡調整剤として、タルク、炭酸カルシウム、硼砂、硼酸亜鉛、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、弗素樹脂粉末等を添加して来たが、この発明でもこれらを添加することができる。気泡調整剤としての添加量は、その種類によって異なるが、一般には結晶性ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲内にするのが適している。タルク、炭酸カルシウムなどを充填剤として使用する場合には、20重量部程度まで添加することができる。
【0044】
そのほか、添加剤としては、帯電防止剤、難燃剤、着色剤を用いることができる。帯電防止剤としては、例えば第4級アンモニウム塩化合物、脂肪酸エステル化合物及び脂肪酸アマイド化合物のような脂肪酸化好物を用いることができる。脂肪酸エステル化合物及び脂肪酸アマイド化合物の如き脂肪酸化合物を用いた場合にはポリ乳酸系樹脂の押出発泡成形性を一層良くすることができる。脂肪酸化合物の中では、分子量が150〜1000、特には200〜800のものが好ましい。一般的な使用量は、結晶性ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.03〜3.0重量部であり、好ましくは0.05〜2.0重量部、さらに好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0045】
金型としては、得ようとする発泡体の形状に対応した形のオリフィスを持ったものを用いることができる。シート状の発泡体を得る際にはサーキュラダイを使用し、ボード状の発泡体を得る際にはフラットダイ、或いはTダイを使用する。発泡シートは熱成形により色々な形状に成形することができるので、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の形態としては好適である。
【0046】
金型のオリフィスから押し出された後の結晶性ポリ乳酸系樹脂は、発泡した後で、従来のポリスチレンやポリオレフィン押出発泡成形時と同じような操作により、冷却しながら形を整えて発泡体とされる。発泡したシートを得ようとする場合には環状のオリフィスから樹脂を円筒状で押出発泡させ、押し出した筒状発泡体を冷却したマンドレルに沿って進行させつつ冷却し、その後冷却した筒状発泡体を軸線方向に切り開いて発泡したシートとする。
【0047】
この発明では、結晶性ポリ乳酸系樹脂が融点と融点より40℃だけ低い温度との間の温度で押し出される場合には、金型出口剪断速度を300秒- 1 以上で押し出すことが望ましい。剪断速度が300秒- 1 より低いと、金型内で部分的に結晶化が進んで外観の悪い発泡体になってしまったり、金型内部で発泡が生じて外観や品質の悪い発泡体となってしまう。但し、剪断速度があまりにも速すぎると、具体的には10000秒- 1 より速いと溶融樹脂にフラクチャーが生じ外観及び品質の悪い発泡体となってしまう。品質及び外観ともに優れた発泡体を得るための好ましい剪断速度は400〜8000秒- 1 であり、特に好ましくは500〜6000秒- 1 である。本発明における剪断速度とは金型先端出口における剪断速度のことであり、一般に押出成形で用いられる数式を用いて算出する。
【0048】
なお、上記の場合、サーキュラ金型の口金出口部分における剪断速度は、下記二重管での計算式により算出されたものである。
剪断速度(秒- 1 )=6Q/〔π(L2 2 −L1 2 )(L2 −L1 )〕
但し、Qは、体積押出量(cm3 /秒)であり、L1 (cm)は(r0 −t0 /2)であり、L2 (cm)は(r0 +t0 /2)である。ここで云うr0 とは(金型出口部における外側金型の内径+金型出口部における内側金型の外径)/2であり、t0 とは金型出口間隙のことである。
【0049】
その際、質量押出量(g/秒)から体積押出量(cm3 /秒)への変換に使用する結晶性ポリ乳酸系樹脂の密度は1.0g/cm3 とする。また、Tダイ又はフラットダイの場合は、平行溝の計算式を用いる。
剪断速度(秒- 1 )=6Q/Wt2
但し、Qは、体積押出量(cm3 /秒)であり、W(cm)は金型出口平行溝の幅であり、t(cm)は金型出口平行溝の間隔である。
【0050】
3倍以上の高い倍率に発泡したシートを安定的につくるためには、結晶性ポリ乳酸系樹脂の発泡に適した金型を用いることが好ましい。具体的に云えば、金型は出口に向かってラッパ状に開いている押出孔(オリフィス)を持ったものを使用することが好ましい。このような形状の金型を使用することによって、流れ方向の波打ちが少なく、高い倍率に発泡した結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡シートを安定的に得ることができる。また、熱成形に適した良好な結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡シートを安定的に得るためには、金型口径と冷却したマンドレル外径との比率、マンドレル外径/金型口径は2〜5、更には2.5〜4.5とするのが好ましい。
【0051】
この発明方法によれば、密度0.03〜0.60g/cm3 の一様に発泡した結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体が得られる。得られた結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体は、断熱材、緩衝材、工業用部材、建材、土木資材、農業用資材、食品包装材として使用することができる。特に、発泡シートとすると、熱成形機によってトレー等のいろいろな形状に熱成形することができ、食品容器、果実用トレー、梱包材等としてより広く使用することができる。成形用の発泡シートとしては、厚すぎると熱成形が困難であり、薄いとクッション性や断熱性に劣り、密度が大きすぎると断熱性に劣り、小さすぎると強度に劣るため、好ましい厚みは0.5〜5mm、更に好ましい厚みは0.7〜4mm、特に好ましい厚みは0.8〜3mmである。また好ましい密度は0.02〜0.4g/cm3 、更に好ましい密度は0.03〜0.3g/cm3 、特に好ましい密度は0.04〜0.2g/cm3 である。
【0052】
【発明の効果】
この発明によれば、樹脂としてD−体とL−体とが、重量でそれぞれ2〜13%及び98〜87%の割合で共重合してなる結晶性ポリ乳酸系樹脂を用いるので、遺棄分解性がよくて良好な機械的性質を持って実用に適した製品を得ることができる。また、この発明では、ジメチルエーテルと炭化水素とが重量比で95/5ないし5/95の割合で混合されてなる混合物を発泡剤として上記の樹脂に圧入し、得られた溶融樹脂を押出機から押し出して発泡させるので、発泡が容易であって、均一微細に発泡した発泡体を容易に得ることができる。また、発泡剤含有の溶融樹脂を押出機先端に取り付けた金型から、剪断速度300秒- 1 以上で押し出すと、ジメチルエーテルと炭化水素とからなる発泡剤が結晶性ポリ乳酸系樹脂に対して有効に働くとともに、結晶性ポリ乳酸系樹脂に発泡に適した溶融粘度を与えることとなって、押し出された結晶性ポリ乳酸系樹脂は、3倍以上というような高い倍率で一様に発泡した良質の結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体を得ることができる。
【0053】
【発明実施の態様】
以下に実施例と比較例とを挙げて、この発明のすぐれている所以を具体的に明らかにする。以下で単に部というのは重量部を表わしている。また、押出時の樹脂温度は、押出機樹脂出口部に設置したブレーカープレートの樹脂流路の中心に熱電対を固定して、この熱電対の示す温度をもって、これを示した。
【0054】
なお、この発明でいう結晶性ポリ乳酸系樹脂の融点は、JIS K7121:1987(プラスチックの転移温度測定方法)により測定した融解ピーク温度を基準にしている。
【0055】
また、平均気泡径はASTM D2842−69の試験方法に準拠し測定した。すなわち試験体を押出方向(MD)、押出方向に直交する方向(VD)に沿って切断し、それぞれの切断面のカット面外側(外周)より1/10〜9/10以上内側を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−3000N)で20倍(場合により200倍)に拡大して撮影する。撮影した画像をA4用紙上に4画像づつ印刷し、夫々の方向に平行な任意の一直線上(長さ60mm)にある気泡数から気泡の平均弦長(t)を下記式により算出した。但し任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにした(接してしまう場合は気泡数に含める)。計測は6ヶ所とした。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)
そして次式により各方向における気泡径を算出した。
D=t/0.616
押出方向に沿って切断した面で、押出方向の気泡径と厚み方向(VD)の気泡径を測定し、押出方向に直交する方向に沿って切断した面で幅方向の気泡径と厚み方向の気泡径を測定する。
押出方向と幅方向は、6ヶ所の測定値を平均したものを押出方向の平均気泡径(DM D )、幅方向の平均気泡径(DT D )とし、厚み方向は12ヶ所の平均を厚み方向の平均気泡径(DV D )とした。
さらにそれらの算術平均を平均気泡径とした。
平均気泡径(mm)=(DM D +DT D +DV D )/3
また、試験片厚みが薄く、VD方向に60mm長さ分の気泡数を数えられない場合は、測定可能な長さ分の気泡数を数えて60mm分の気泡数に換算した。
【0056】
また発泡シートの外観判定(気泡径の判定)として平均気泡径が大きいものは外観が良くないので平均気泡径が0.5mm未満のものを外観○、0.5mmより大きいものを外観×とした。
【0057】
密度についてはJIS K7222:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
【0058】
発泡体におけるスの発生状況については、発泡体をTD方向にカッターでカットし、その断面を目視により判定した。
【0059】
【実施例1】
結晶性ポリ乳酸系樹脂として融点が132.9℃(JIS K 7121)で、D−体割合が8.4重量%、L−体割合が91.6重量%で、メルトマスフローレートが6.3g/10分、メルトマスフローレート(g/10分)/D−体割合(%)が0.75のものを使用した。
【0060】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク1部、ステアリン酸モノグリセライドのマスターバッチ(前記ポリ乳酸系樹脂/ステアリン酸モノグリセライド(モノグリセライド含量:95重量%以上)(重量比)=4)3重量部(高級脂肪酸アルコール性エステル成分0.75重量部)を混合し、この混合物を、一段目押出機の口径が50mm、二段目押出機の口径が65mmであるタンデム式押出機に投入した。
【0061】
押出機内で樹脂を初め135℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を175℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを3重量部、ブタン(イソブタン)を3重量部の割合で圧入した。その際の圧入順序はジメチルエーテルをブタンより先に圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を116℃としてサーキュラ金型(出口口径60mm、出口間隙0.7mm、外側金型開き角度30度、内側金型開き角度35度)から筒状の発泡体を30kg/時、剪断速度5.4×102 秒- 1 (押出量(Q)=8.33cm3 /秒、r0 =2.971cm、出口間隙(t0 )=0.07cm、L2 =3.006cm、L1 =2.936cm)で押し出した。
【0062】
筒状の発泡体は、冷却水で冷却された外形170mmのマンドレルで冷却された後、カッターで切断し、シート状の発泡体とし、巻取機によりロール状に巻き取った。得られた発泡シートは均一に発泡しており、密度が0.064g/cm3 、厚みが2.0mm、平均気泡径が0.36mmで均一微細な気泡を有し、スの発生がなく、外観に優れていた。
【0063】
【実施例2】
結晶性ポリ乳酸系樹脂として融点が142.4℃で、D−体割合が4.4重量%、L−体割合が95.6重量%で、メルトマスフローレートが7.5g/10分、メルトマスフローレート(g/10分)/D−体割合(%)が1.7のものを使用した。
【0064】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク1重量部、実施例1で使用したものと同じステアリン酸モノグリセライドのマスターバッチ3重量部を混合し、この混合物を実施例1で使用した押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め165℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を180℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを4重量部、ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=35/65)を1重量部の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を129℃とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを製造した。
【0065】
得られた発泡体は均一に発泡しており、密度が0.079g/cm3 、厚みが1.6mm、平均気泡径が0.40mmで均一微細な気泡を有し、スの発生がなく、外観に優れていた。
【0066】
【実施例3】
ジメチルエーテルを2重量部、ブタン(イソブタン)を4重量部の割合で圧入し、樹脂温度を117℃とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを製造した。
【0067】
得られた発泡体は均一に発泡しており、密度が0.067g/cm3 、厚みが1.9mm、平均気泡径が0.32mmで均一微細な気泡を有し、スの発生がなく、外観に優れていた。
【0068】
【実施例4】
ジメチルエーテルを5重量部、ブタン(イソブタン)を1重量部の割合で圧入し、樹脂温度を114℃とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを製造した。
【0069】
得られた発泡シートは均一に発泡しており、密度が0.062g/cm3 、厚みが2.05mm、平均気泡径が0.44mmで均一微細な気泡を有し、スの発生がなく、外観に優れていた。
【0070】
【比較例1】
ジメチルエーテルを6重量部圧入し、樹脂温度を113℃とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを製造した。
【0071】
得られた発泡シートは密度が0.060g/cm3 、厚みが2.1mm、平均気泡径が0.56mmで、スの発生はないが、外観に劣っていた。
【0072】
【比較例2】
ブタン(イソブタン)を5重量部圧入し、樹脂温度を123℃とした以外は実施例1と同様にして発泡シートを製造した。
【0073】
得られた発泡シートは密度が0.12g/cm3 、厚みが1.3mmでスが多数発生していた。
【0074】
【比較例3】
サーキュラ金型の出口間隙を1.0mm(剪断速度2.7×102 秒- 1 )とした以外は実施例2と同様にして発泡シートを製造しようとしたが、金型内で内部発泡が生じ良好な発泡シートが得られなかった。また内部発泡をなくそうと金型温度を下げている途中で溶融樹脂が結晶化し、押出圧力が急上昇し、インターロックにより押出機が停止したためサンプルが得られなかった。
【0075】
【比較例4】
172.2℃で、D−体割合が1.6重量%、L−体割合が98.4重量%で、メルトマスフローレートが5.4g/10分、メルトマスフローレート(g/10分)/D−体割合(%)が3.4のものを使用した。
【0076】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク1重量部、実施例1で使用したものと同じステアリン酸モノグリセライドのマスターバッチ3重量部を混合し、この混合物を実施例1で使用した押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め175℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を210℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを4重量部、ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=35/65)を1重量部の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を153℃として実施例1で使用した金型から押し出したが、金型から溶融樹脂が断続的に噴出し、安定した状態で発泡シートをつくることができなかった。
【0077】
以上の実施例及び比較例で得られた結果を表にまとめると、表1のとおりとなる。
【0078】
【表1】
Claims (3)
- D−体とL−体とが、重量でそれぞれ2〜13%及び98〜87%の割合で共重合してなる結晶性ポリ乳酸系樹脂を押出機内で加熱し、溶融された樹脂に発泡剤として、ジメチルエーテルと炭化水素とが重量比で95/5ないし5/95の割合で混合されてなる混合物を圧入し、得られた溶融樹脂を押出機の先端に取り付けた金型から300〜10000秒 - 1 の剪断速度で押し出して発泡させることを特徴とする、結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。
- 結晶性ポリ乳酸系樹脂に高級脂肪酸アルコール性エステルを加えることを特徴とする、請求項1に記載の結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。
- 溶融樹脂を押出機からシートの形状にして押し出すことを特徴とする、請求項1−2の何れか1つの項に記載の熱成形用結晶性ポリ乳酸系樹脂発泡シートの製造方法。
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