JP3892745B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸系樹脂は、云うまでもなく、乳酸が重合又は共重合して得られた樹脂である。乳酸は、まれにβ−ヒドロキシプロピオン酸を意味することもあるが、普通はα−ヒドロキシプロピオン酸を指している。α−ヒドロキシプロピオン酸は分子中に不斉炭素原子を含んでいるために光学的活性を示し、従ってこの酸にはD−体、L−体及びラセミ体(D−体及びL−体の等量混合物)の3種のものが存在する。従って、乳酸を重合させて得られたポリ乳酸は、これら3種のものの混合割合と重合方法などの相違によって、色々と性質の異なったものとなる。事実、ポリ乳酸には結晶性のものから非晶性のものまで、色々と異なったグレードのものが存在している。
【0003】
ポリ乳酸系樹脂は生分解し易い樹脂として知られている。すなわち、ポリ乳酸系樹脂は、例えばこれを地下に埋めておくと、1年足らずの間に自然に分解されて、主として水と二酸化炭素のような無害なものになる、と云われている。このために、ポリ乳酸系樹脂は、従来のポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(ペット)のように、いつまでもゴミとなって残ることがなく、従って環境を汚染しない樹脂として、近頃俄かに脚光を浴びるに至っている。
【0004】
特開平6−287347号公報は、ポリ乳酸系樹脂が自然環境下で分解する特性を持っているとしながら、耐熱性に問題があるとして、ポリ乳酸系樹脂を発泡させて得られた発泡体の表層部に、L−ポリ乳酸系樹脂の10〜2000μmの厚みの非発泡層を形成することを提案している。ところが、この公報は、肝心な発泡体の製法、すなわちポリ乳酸系樹脂を発泡させる方法については、何も教示していない。実施例では、タンデム押出機を用いて発泡体を製造したように記載しているが、発泡剤として具体的に何をどのような量だけ用い、樹脂をどのような温度で押し出したかを全く記載していないし、また得られた発泡体がどの程度に発泡したものかも全く記載していない。
【0005】
また、特開平8−198992号公報は、ポリ乳酸系樹脂が高い安全性を持ち、また生分解性にすぐれていることを利点としているが、他方でこの樹脂は弾性、復元力に乏しく、耐衝撃性に劣るという欠点を持っているとして、この欠点を改良するために、乳酸を脱水縮合した構造単位と、他のポリエステルの構造単位とからなる共重合体とすることを提案している。他のポリエステル構造単位としては、例えばコハク酸、アジピン酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール等のようなジオールとの脱水縮合した構造単位を用いることとしている。そして、この公報は上記の共重合体を押出発泡により発泡体とすることを提案している。
【0006】
上記の特開平8−198992号公報は、実施例では得られた発泡体が良好な生分解性を示したと記載しているが、乳酸の構造単位だけからなるポリ乳酸系樹脂の発泡体に比べると、生分解が良い筈がない。なぜならば上記共重合体は、ポリエステル構造単位が加わった分だけ、生分解性が悪くされていることは明らかだからである。その上に、得られた発泡体は、最高で8倍の発泡倍率を持つに過ぎないから、発泡体としては良好なものではない。
【0007】
ポリ乳酸系樹脂は、溶融時の粘度が低いために、発泡させにくい樹脂であるとされている。特開2000−7815号公報は、ポリ乳酸系樹脂が発泡させにくい樹脂であることを認めた上で、発泡し易くするために、増粘剤をポリ乳酸に加えて押出発泡させることを記載している。増粘剤としては色々な有機化合物が使用でき、また発泡剤としても色々な有機化合物が使用できると説明しているが、実施例では増粘剤としてホウ酸等の無機化合物を使用し、発泡剤として二酸化炭素を使用した例を挙げるに過ぎない。この公報は、実施例では17〜22倍に発泡させることができたと記載しているが、上述のような増粘剤と発泡剤とを使用したのでは、20倍近くに発泡させることは極めて困難である。
【0008】
そのほか、ポリ乳酸系樹脂を発泡させ易くするために色々な化合物や材料を加えて、これを押出発泡させて、ポリ乳酸系樹脂の発泡体を得ようとする試みがなされているが、何れも高い倍率に発泡させるに至っていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、ポリ乳酸系樹脂を用い、その樹脂が持つ良好な生分解性を全く低下させないで、押出発泡法により高い倍率に発泡させて、良質のポリ乳酸系樹脂発泡体を容易に製造できる方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題解決のための手段】
この発明者は、上述の課題を解決するために、色々なグレードのポリ乳酸系樹脂を押出機に入れ、押出機内で種々の発泡剤を圧入し、色々な押出条件の下で押出発泡を行ない、ポリ乳酸系樹脂の組成と、押出条件と、得られた樹脂発泡体の性質との関係を総合的に検討した。その結果、これまでは押出発泡に際し、ポリ乳酸系樹脂中のD−体とL−体との組成に余り注意が払われなかったが、この発明者は、ポリ乳酸系樹脂を組成するD−体とL−体との共重合割合が押出発泡の容易さに大きな影響を持つことを見出した。すなわち、押出発泡によって良好なポリ乳酸系樹脂の発泡体を得るためには、D−体とL−体との共重合割合が2〜10対98〜90の範囲内にあることが肝要であることを見出した。
【0011】
また、この発明者は、実用に供し得る発泡体を得るためには、D−体とL−体との共重合割合が特定の範囲内にあるだけでは足りず、その融点がまた一定の範囲内になければならないことに気付いた。
【0012】
さらに、この発明者は実験を重ねた結果、ポリ乳酸系樹脂を首尾よく押出発泡させるには、押出機内で樹脂を溶融してこれに発泡剤を圧入し、得られた発泡剤含有の溶融樹脂を樹脂の融点より低い温度にまで冷却し、溶融樹脂がまだ流動性を持っている間に、樹脂を押出機から押し出すことが必要であることを見出した。またこの押出温度は、樹脂の融点と融点より約40℃だけ低い温度との間にしなければならない、ことを見出した。この発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
この発明は、乳酸のD−体とL−体とが、そのうちの一方が2〜10%で、他方が98〜90%の割合で共重合したものであって、110〜170℃の融点を持つポリ乳酸系樹脂を押出機内で溶融し、これに発泡剤を含ませ、得られた発泡剤含有の溶融樹脂を、樹脂の融点と融点より40℃だけ低い温度との間の温度で、押出機から押出発泡させることを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【0014】
一般にポリ乳酸系樹脂のうち、D−体又はL−体が100%近くを占めている樹脂は、結晶性のものであり、D−体及びL−体のうちの一方の含有量が増すに従い、樹脂は次第に非晶化の傾向を示し、一方が12%を越えると、樹脂は非晶性のものとなる、と云われている。また、結晶性のポリ乳酸系樹脂は一般に融点が高く、通常100℃以上の融点を示すが、非晶性のポリ乳酸系樹脂は融点がなく、ガラス転移点も約50℃と低く、従って耐熱性に乏しい、と云われている。
【0015】
しかし、D−体とL−体との比がどのような割合で含まれているポリ乳酸系樹脂が、押出発泡を行うのに適しているかは知られていない。この発明者は、この点を解明したのであって、D−体とL−体とは、そのうちの一方が2〜10%で、他方が98〜90%の割合で共重合しているポリ乳酸系樹脂が、押出発泡をするのに適していることを解明したのである。詳しく云えば、D−体が2〜10%で、L−体が98〜90%のポリ乳酸系樹脂を用いるか、又はL−体が2〜10%で、D−体が98〜90%のポリ乳酸系樹脂を用いるべきことを明らかにしたのである。
【0016】
上述のD−体とL−体との共重合割合は、ポリ乳酸系樹脂の製造時における原料の仕込量から特定することができるが、また得られたポリ乳酸系樹脂からも測定することができる。それは、D−体又はL−体の場合と同様に、比旋光度を測定することによって定めることができる。それは例えば、次のようにして測定することができる。
【0017】
まず、問題のポリ乳酸系樹脂をクロロホルムに溶解し、濃度が10mg/mlのクロロホルム溶液を調製する。旋光計(JASCO DIP−140)を使用して、25℃で上記溶液の比旋光度を測定する(測定波長589nm)。また、比較のために、D−体100%(又はL−体100%)からなるポリ乳酸系樹脂について、上と同様にして比旋光度を測定してもよいが、通常はこの比旋光度は、既に測定されていて、+又は−156度とされている。そこで、上記問題の樹脂の比旋光度が156度からどの程度ズレているかを測定し、そのズレの程度をもって(1)及び(2)式によりD−体又はL−体の含有量を決定する。
D−体割合(%)={比旋光度−(−156)}÷{156−(−156)}×100 (1)
L−体割合(%)=100−(D−体割合) (2)
【0018】
この発明では、こうして決定された含有割合を基準にして、D−体とL−体のうち、一方が2〜10%で、他方が98〜90%の割合で、共重合したポリ乳酸系樹脂を選んで使用する。その理由は押出発泡の実験の集積結果に由来することである。すなわち、D−体及びL−体の共重合体の中で一方が2%より少ないと、ポリ乳酸系樹脂は溶融状態から急激に結晶化するために、発泡に適した溶融粘度を樹脂に保持させることが困難となるからである。また、逆に10%より多くなると、樹脂は非晶化の傾向を示し、融点又は軟化点が低くなり、実用に適したものとならないからである。
【0019】
この発明では、ポリ乳酸系樹脂として、上記の共重合割合を持つと同時に、110〜170℃の融点を持つものを選んで用いる。ポリ乳酸系樹脂の中には融点が170℃以上のもの、例えば融点が180℃のものもあるが、融点が170℃以上のものは、結晶性に富むために、上述のように発泡に適した粘度を示さないことが多いので、これを避けることとした。融点は、JIS K 7121に定める方法によって測定した値を用いる。110〜170℃の融点範囲内では、120〜160℃の範囲内のものが好ましく、さらには125〜155℃の範囲内のものが最も好ましい。
【0020】
共重合割合と融点とが上述の範囲内にあるポリ乳酸系樹脂の中でも、とくにメルトマスフローレートが1〜15g/10分のポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。その中では、5〜10g/10分のメルトマスフローレートを示すものを用いることがとくに好ましい。この場合、メルトマスフローレートは、JISK 7210が規定する方法に従い、190℃で2.16kgの荷重をかけて測定した値である。
【0021】
この発明では、押出機として色々な形式のものを用いることができる。例えば、単軸押出機でも、二軸押出機でも、またこれらを連結したタンデム押出機でも用いることができる。押出機としては、ポリ乳酸系樹脂を溶融し、よく混練できるとともに、これに発泡剤を均一に含ませることができて、そのあとで引き続き樹脂を或る温度まで冷却して、押し出すことができるものを用いることが好ましい。
【0022】
この発明では、押出機内で溶融されたポリ乳酸系樹脂に発泡剤を含ませる。発泡剤としては、色々なものを用いることができる。大きく分けると、樹脂中で気化して樹脂に気泡を生成する揮発性化合物、溶融樹脂中で分解されて気体を発生する固体化合物、不活性ガス等を用いることができる。
【0023】
発泡剤として用いることができる揮発性化合物は、例えばプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサンのような脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテルのようなエーテル類、塩化メチル、フレオン(登録商標)のようなハロゲン化炭化水素類である。上記の固体化合物は、アゾジカーボンアミド、ヘキサメチレンテトラミン等である。また不活性ガスは空気、窒素、二酸化炭素等である。これらのものは単独で又は混合して用いることができる。
【0024】
これらの中では、揮発性化合物を用いることが好ましく、中でも脂肪族炭化水素又はエーテル類を用いることが好ましい。とりわけ、エーテル類、とくにジメチルエーテルを用いることが最も好ましい。また、不活性ガスは、環境を汚さない点で好ましいが、大きく発泡させることができないという欠点を持っている。
【0025】
この発明では、上述のように発泡剤としてエーテル類、とくにジメチルエーテルを用いることが最も好ましいが、その理由は次のとおりである。すなわち、エーテル類とくにジメチルエーテルは、ポリ乳酸系樹脂との相溶性に富み、また蒸発の潜熱が大きいために、押し出された樹脂を短時間のうちに一様に冷却することができ、従って高い倍率に一様に樹脂を発泡させることができるからである。この場合、ジメチルエーテルの使用量は、樹脂に対して0.5〜25%というような、広い範囲で変化させることができる。そのうちでは、1.0〜22%が好ましく、1.5〜19%が最も好ましい。
【0026】
この発明では、押出機内でポリ乳酸系樹脂に上述の発泡剤を均一に混合する。このためには樹脂を溶融し、これに発泡剤を圧入してよく混練することが必要である。良く混合するには混合能力の大きいスクリュー、例えば多数のピンを備えたスクリューを用いたり、スクリューフライトに多数の切り込みを設けたスクリューを用いて溶融樹脂と発泡剤とをよく混合する。発泡剤が圧入された樹脂は、当然樹脂の融点より高い温度にあり、通常は30〜70℃だけ高い温度になっている。
【0027】
この発明では、上述の発泡剤を含んだポリ乳酸系樹脂を引き続き冷却する。この冷却には色々な方法を採ることができる。例えば押出機のバレルを空気或いは冷却水で冷却する。発泡剤を含んだポリ乳酸系樹脂は押出機のバレルから冷却されつつ、押出機のスクリューにより十分に混練される。こうして発泡剤含有樹脂を一様に樹脂の融点以下に冷却する。発泡剤含有樹脂は前述したように、樹脂の融点とその融点より約40℃だけ低い温度とするが、更には樹脂の融点より約35℃だけ低い温度からその融点より約10℃だけ低い温度が好ましく、特には樹脂の融点より約30℃だけ低い温度からその融点より約20℃だけ低い温度との間とすることが好ましい。
【0028】
押出機中で溶融状態にある発泡剤含有のポリ乳酸系樹脂は、押出機内で冷却され始めて暫らくの間は融点以下に冷却されても、なお暫らくは流動性を持っている。このために、融点よりも数拾度低い温度にして、押出機から押し出すことができる。すなわち、押出機の直後(タンデム型押出機の場合は最後段の押出機の直後)に付設されたブレーカープレートの位置で、樹脂の温度を測定すると、発泡剤含有樹脂の温度が、樹脂の融点と融点より40℃だけ低い温度との間にある間は、樹脂が云わば過冷却された状態にあって、なお流動性を持っているため、押出機から押し出すことができる。
【0029】
そこで、この発明では、発泡剤含有のポリ乳酸系樹脂が、樹脂の融点と融点より40℃だけ低い温度との間にある間に、樹脂を押出機から押し出すこととする。それは、この状態にあるとき、発泡剤含有のポリ乳酸系樹脂が発泡するに適した溶融粘度を示すからである。このような状態で押し出すことは、この発明における大きな特徴である。その理由は次のとおりである。
【0030】
一般に熱可塑性合成樹脂を押出発泡させる場合には、結晶性の樹脂では結晶融点以上の温度で押し出し、非晶性の樹脂ではガラス転移点以上の温度で押し出すのが普通である。なぜならば融点以下の温度やガラス転移点以下の温度で押し出そうとすると、樹脂が金型の中で固化して押し出すことができなくなるからである。
【0031】
事実これまでは、例えば樹脂として融点が255℃の結晶性のポリエチレンテレフタレートを用いて、これを押出発泡させるには、樹脂の温度を270〜290℃として押し出して来たし、また樹脂として融点が160℃のポリプロピレンを押出発泡させるには、樹脂の温度を165〜175℃として押し出して来た。また、樹脂としてガラス転移点が90〜95℃の非晶性のポリスチレンを押出発泡させるには、樹脂の温度を120〜160℃として押し出して来た。何れも押出時の樹脂の温度は、樹脂の融点又はガラス転移点よりも高い温度とされて来た。ところが、この発明では、上述のように樹脂の融点又はガラス転移点よりも低い温度で押し出すので、この点で従来の技術と大きく異なり、この発明の特徴事項が構成されている。
【0032】
この発明では、押出機からポリ乳酸系樹脂を押し出すに際し、押出機の先端に付設した金型に樹脂を通して押し出す。このとき樹脂は、融点と融点より40℃だけ低い温度との間の温度になっていて、押し出しを行うに充分な流動性を持っており、また発泡を行うに適した溶融粘度を持っている。
【0033】
金型としては、得ようとする発泡体の断面形状のオリフィスを持ったものを用いる。金型のオリフィスから押し出されたあとの樹脂は、従来の押出発泡の操作と全く同様に、外形を整えられるとともに空気或いは水で直接又は間接的に冷却されて発泡体となる。
【0034】
なお、この発明では、従来技術で行われて来たように、ポリ乳酸系樹脂に種々の添加剤を加えて、得られる発泡体の性質に変化を与えることができる。例えば、タルク、炭酸カルシウム、弗素樹脂粉末等の気泡調整剤を加えて、発生する気泡を調整することができる。そのほか、難燃剤、帯電防止剤、着色剤などを加えることができる。
【0035】
【発明の効果】
この発明によれば、ポリ乳酸系樹脂として、乳酸のD−体とL−体とが、そのうちの一方が2〜10%で他方が98〜90%の割合で共重合したものを用いるので、押出機内で溶融したとき、樹脂が発泡に適した溶融粘度を示すこととなる。また、発泡剤含有の溶融樹脂を、樹脂の融点と融点より40℃だけ低い温度との間の温度で押し出すこととしたので、樹脂は押出時に発泡に適した溶融粘度を持って押し出される。このために、この発明方法によれば、所望通りに高い倍率で均一に発泡した発泡体を得ることができる。しかも、ポリ乳酸系樹脂として110〜170℃の融点を持つものを用いたので、得られた発泡体は実用に適したものとなっている。
【0036】
さらに、この発明では、押出機を用いて押出発泡によることとしたので、連続して能率よく発泡体を得ることができる。また、この発明では増粘剤を用いないので、ポリ乳酸系樹脂は生分解性をそのまま保持するので、環境に優しい発泡体として種々の用途に向けることができる。
【0037】
なお、この発明方法によれば、得られた発泡体は微細な気泡を持ち均一に発泡したものとなる。また、気泡調整剤の添加や発泡条件の調整により、得られる発泡体の密度を0.02〜0.45g/cm3 の広い範囲内で所望通りに調整することができる。この発明はこのような利益を与えるものである。
【0038】
【発明の態様】
以下に実施例と比較例とを挙げて、この発明のすぐれている所以を具体的に明らかにする。以下で、単に部と云うのは、重量部を表わしている。また、押出機から発泡剤を含有した溶融樹脂を押し出す時の樹脂の温度は、押出機の直後(押出機先端と金型との間)にある、ブレーカープレートの中心に熱電対を固定して、この熱電対の示す温度をもって示した。
【0039】
【実施例1】
ポリ乳酸系樹脂として融点が132.9℃(JIS K 7121)で、D−体含有率が8.4%、L−体含有率が91.6%で、メルトマスフローレートが6.3g/10分のものを使用した。
【0040】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク2.0部を混合し、この混合物を、一段目押出機の口径が40mm、二段目押出機の口径が50mmであるタンデム式押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め155℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を175℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを16%の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を105℃として金型から押し出した。金型には直径5mmのオリフィスが穿設してあり、棒状の発泡体を得た。
【0041】
得られた発泡体は図1として示した発泡体断面の拡大写真から判かるように、均一に発泡しており、密度が0.029g/cm3 で約43倍に発泡していた。
【0042】
【実施例2】
ポリ乳酸系樹脂として融点が142.4℃で、D−体含有率が4.4%、L−体含有率が95.6%で、メルトマスフローレートが7.5g/10分のものを使用した。
【0043】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク2.0部を混合し、この混合物を、実施例1で使用した押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め165℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を180℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを8%の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を128℃として金型から押し出した。金型には直径5mmのオリフィスが穿設してあり、棒状の発泡体を得た。
【0044】
得られた発泡体は図2として示した発泡体断面の拡大写真から判かるように、均一に発泡しており、密度が0.056g/cm3 で約22倍に発泡していた。
【0045】
【実施例3】
樹脂温度を120℃とし、ジメチルエーテルの注入量を10%とした以外は実施例1と同様にして発泡体を製造した。
【0046】
得られた発泡体は均一に発泡しており、密度が0.039g/cm3 で約32倍に発泡していた。
【0047】
【実施例4】
ポリ乳酸系樹脂として実施例1で使用したのと同じポリ乳酸系樹脂を用いた。
【0048】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤としてタルク2.0部を混合し、この混合物を、一段目押出機の口径が40mm、二段目押出機の口径が50mmであるタンデム式押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め155℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を175℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを7%の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を119℃として金型から押し出した。金型には直径70mmで間隙が0.7mmの開口部を有するサーキュラー金型を用い、筒状の発泡体が押し出された。押し出された発泡体は発泡しつつ直径が205mmの冷却マンドレルを移動し、十分に冷却された後、円筒形発泡体の1箇所をカッターで切断して平板状に広げ、巻き取り機によって引き取り発泡シートを得た。
【0049】
得られた発泡体は均一に発泡しており、密度が0.017g/cm3 で約7倍に発泡していた。
【0050】
【比較例1】
ポリ乳酸系樹脂として融点が171.0℃で、D−体含有率が1.6%、L−体含有率が1.6%、メルトマスフローレートが8.4g/10分のものを使用した。
【0051】
上記樹脂100重量部に気泡調整剤として四弗化エチレン樹脂0.4部を混合し、この混合物を、実施例1で使用した押出機に投入した。押出機内で樹脂を初め170℃に加熱して樹脂を溶融し、その後樹脂温度を190℃まで上昇させ、この状態で、押出機のバレルの途中から溶融樹脂にジメチルエーテルを10%の割合で圧入した。引き続き、押出機内で溶融樹脂を冷却し、樹脂温度を150℃として直径5mmのオリフィスが穿設してある金型から押し出したが、金型から溶融樹脂が断続的に噴出し、安定した状態で発泡体をつくることができなかった。
【0052】
さらに溶融樹脂の溶融粘度を上昇させようと樹脂温度を下げ始めたところ、148℃で押出機の負荷を超え、押出機が停止した。
【0053】
【比較例2】
樹脂温度を135℃とし、実施例3と同じ方法で発泡体を製造したが、溶融粘度不足により、最初ジメチルエーテルの注入量を10%としたが、金型から溶融樹脂が断続的に噴出し、安定した状態で発泡体を製造することができなかった。そこでさらにジメチルエーテルの注入量を2%まで下げてサンプルを試作したが、発泡直後の収縮が大きく、密度が0.52g/cm3 で発泡倍率が約2.4倍と発泡倍率の低い発泡体しか得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた発泡体断面の拡大写真である。
【図2】実施例2で得られた発泡体断面の拡大写真である。
Claims (3)
- 乳酸のD−体とL−体とが、そのうちの一方が2〜10%で他方が98〜90%の割合で共重合したものであって、110〜170℃の融点を持つポリ乳酸系樹脂を押出機内で溶融し、これに発泡剤を含ませ、得られた発泡剤含有の溶融樹脂を、樹脂の融点と融点より40℃だけ低い温度との間の温度で、押出機から押出発泡させることを特徴とする、ポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。
- メルトマスフローレートが1〜15g/10分のポリ乳酸系樹脂を用いることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。
- 発泡剤としてジメチルエーテルを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリ乳酸系樹脂発泡体の製造方法。
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