JP3631940B2 - 芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子とそれを用いた発泡成形体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、型内発泡成形時の発泡融着性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子と、それを用いた発泡成形体とに関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
芳香族ポリエステル系樹脂は剛性が大きく、形状安定性がよく、また耐熱性や耐薬品性などにも優れるという、ポリスチレンやポリオレフィンには見られない優れた性質を有している。
そこで芳香族ポリエステル系樹脂を発泡させて、軽量で、しかも耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れた発泡成形体を製造することが企図されている。
【0003】
従来、使用されてきた汎用の芳香族ポリエステル系樹脂(汎用PET)は、主にジカルボン酸としてのテレフ夕ル酸と、ジオールとしてのエチレングリコールとを重縮合反応させて合成される。
この汎用PETから発泡成形体を製造する方法の1つとして、ポリスチレンやポリオレフィンの場合と同様に、まず粒子状の樹脂に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を製造し(含浸工程)、次いで加熱により予備発泡して予備発泡粒子を製造し(予備発泡工程)、この予備発泡粒子を多数、キャビティ内に充てんし、加熱して発泡させるとともに粒子同士を融着させて発泡成形体を製造する(型内発泡成形工程)方法が考えられる。
【0004】
しかし汎用PETを含む芳香族ポリエステル系樹脂は、一般にガスバリヤー性が高く、発泡剤を含浸するのに多大な時間を要するため、上記の方法では時間、コストおよび手間がかかるという問題がある。
また、汎用PETは結晶化速度が非常に速いため、発泡剤の含浸時、および次工程である予備発泡粒子の予備発泡時に加熱されるとその結晶化が進みやすく、結晶化度が過度に高くなってしまう。
【0005】
そして、特にその結晶化度が25%を超えるような予備発泡粒子は、キャビティ内で型内発泡成形しても粒子同士が全く融着しないために、発泡成形体が得られないという問題を生じる。
特開昭51−50365号公報には、汎用PETを湿式紡糸もしくは乾式紡糸した未延伸繊維に、当該汎用PETに対して非溶媒または難溶媒である低沸点液体を含浸させたポリエステル系潜在発泡性繊維について記載されており、この潜在発泡性繊維を可塑化温度以上に加熱することによって発泡体が得られたことが報告されている。
【0006】
またこの公報には、汎用PETを使用するにもかかわらず、低沸点液体を含浸させるための時間は長いほど好ましい旨の記載があり、実際にも90〜150℃の加熱下にて4〜5時間以上含浸させていることから、その結晶化度が25%を超えることは容易に推測できる。加えてこの方法では、時間、コストおよび手間がかかることが明らかである。
また上記の公報には、潜在発泡性繊維を使用して、型内発泡成形法によって発泡成形体を成形することについて記載されていないし、その成形に使用できる予備発泡粒子についても何ら記載されていない。
【0007】
これは、上述したような長時間の加熱によって汎用PETの結晶化度が過度に高くなるので、上記公報に記載の方法を応用して予備発泡粒子を製造したとしても、型内発泡成形時に粒子同士の融着がほとんど期待できず、発泡成形体が得られないからである。
それゆえ上記公報の構成では、型内発泡成形法によって良好な発泡成形体を製造できないという問題がある。
【0008】
発明者らのうち平井は先に、汎用PETを、押出機での高圧溶融下で発泡剤と混合し、大気圧中に押し出して予備発泡したのち、この発泡体を切断することで、結晶化度が25%以下に抑えられた予備発泡粒子を製造する方法を提案した(特開平8−174590号公報)。
この方法によれば、芳香族ポリエステル系樹脂に発泡剤を含浸させる工程を省略できるため、時間、コストおよび手間を省くことができる。
【0009】
また芳香族ポリエステル系樹脂が、従来法のように長時間に亘って高温にさらされないため、製造される予備発泡粒子の結晶化度を、上記のように25%以下に抑えることができる。
このため、この方法によって製造された予備発泡粒子は、型内発泡成形時の発泡融着性が著しく低くなることが防止され、型内発泡成形することが可能となり、その結果、軽量で耐熱性に優れた発泡成形体が得られる。
【0010】
しかし上記予備発泡粒子も、その結晶化速度が非常に速い汎用PETにて形成されているので、ある程度(融着率30%程度まで)まで融着性を向上して発泡成形体を製造することは可能となるものの、融着率を40%以上、好ましくは60%以上にまで向上させた、機械的強度などに優れた発泡成形体を製造することはできない。
この理由は、汎用PETを使用しているので、下記(1)(2)の二つの工程での加熱により結晶化が促進されるためである。特に(2)の工程での結晶化の促進が粒子同士の融着性に大きく影響することが、その後の研究によって明らかになっている。
(1) 予備発泡粒子を製造するために押出発泡して押出発泡体を製造する工程(この発泡体が切断されて予備発泡粒子となる)。
(2) 予備発泡粒子をキャビティ内に充てんして型内発泡成形する工程(型内発泡成形時の加熱により、発泡と同時に樹脂の結晶化が急速に進むため、粒子同士の融着を阻害するように作用する)。
【0011】
型内発泡成形法による芳香族ポリエステル系樹脂の発泡成形体は、上記の問題が解決すれば、前述した優れた特性を活かして、従来の、ポリスチレンやポリオレフィンの発泡成形体よりも高機能な素材として、例えば建築資材、土木資材、工業用部材、自動車用部材などの各種分野への応用が期待される。
本発明の主たる目的は、軽量で、しかも耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れる上、型内発泡成形時に粒子間の融着性を向上して、外観や機械的強度などにも優れた良好な発泡成形体を、容易かつ効率的に製造することができる、新規な、芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を提供することにある。
【0012】
また本発明の他の目的は、かかる芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を用いることで、上記の各特性に優れた、良好な発泡成形体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子は、型内発泡成形に使用できる芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子であって、前記予備発泡粒子は、ビスフェノールAおよびその誘導体から誘導される少なくとも1種のユニットを、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算して、総量で0.5〜10重量%の範囲で含有する芳香族ポリエステル系樹脂にて形成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、芳香族ポリエステル系樹脂中に、ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〕およびその誘導体から誘導される少なくとも1種のユニット(以下「BPA系ユニット」と総称する)を導入することで、樹脂の結晶化速度を、汎用PETより低下させている。
上記BPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合は、ビスフェノールAから誘導されるユニットに換算した総量で、すなわちBPA系ユニットがビスフェノールAおよびその誘導体の1種から誘導される1種単独のユニットである場合は当該ユニットの、またBPA系ユニットがビスフェノールAおよびその誘導体の2種以上から誘導される2種以上のユニットである場合は各ユニットの合計の、それぞれビスフェノールAから誘導されるユニットに換算した含有割合が、0.5〜10重量%である必要がある。
【0015】
BPA系ユニットの含有割合が0.5重量%未満である場合には、樹脂の結晶化を抑制する効果が得られない。また、逆にBPA系ユニットの含有割合が10重量%を超えた場合には、樹脂の結晶化速度が極端に遅くなりすぎるため、型内発泡成形時に成形品が収縮するおそれがある。
なおビスフェノールAの誘導体とは、Waters(ウォーターズ)社製のデータ処理装置991Jを用いて、ビスフェノールA標準液のスペクトルデータの規格化したものと対比して求められるマッチ度Mが900以上の範囲に含まれるものを指す。
【0016】
具体的には、まず試料のスペクトルデータを測定し、上記データ処理装置を用いて、下記式:
Ni=Ai/ΣA
〔式中のΣAは、測定したスペクトルデータの、規格化する全波長範囲における面積、Aiは、上記スペクトルデータの全波長範囲を分解能n(nm)ごとに細分した、波長i(nm)〜i+n(nm)の範囲における吸光度、Niは、上記細分した波長範囲での規格化したデータを示す。〕
に基づき、細分した波長範囲ごとに規格化する。
【0017】
そしてこの規格化を全波長範囲(190〜340nm)に亘って行い、試料の規格化したデータSiと、ビスフェノールA標準液の、同じ波長範囲での規格化したデータRiとから、数1により、試料のマッチ度Mを求める。なお式中のnは、前記と同様に、スペクトルデータの全波長範囲を細分する基準となる分解能(nm)を示す。
【0018】
【数1】
Figure 0003631940
【0019】
試料が、式(1):
【0020】
【化1】
Figure 0003631940
【0021】
で表されるビスフェノールAと同一であれば、理論上、上記式で求められるマッチ度Mは1000である。
またマッチ度Mが900以上の範囲に含まれる、ビスフェノールAの誘導体としては、これに限定されないが例えば、式(2):
【0022】
【化2】
Figure 0003631940
【0023】
で表される2,2−ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンや、式(3):
【0024】
【化3】
Figure 0003631940
【0025】
で表される2−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−〔4−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}フェニル〕プロパン等の、ビスフェノールAの両末端の水酸基の部分にそれぞれ1つまたは2つの、エチレンオキサイドから誘導されるユニットを付加した、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
上記予備発泡粒子は、芳香族ポリエステル系樹脂を押出発泡した押出発泡体を切断して製造するのが、余分な加熱工程を省略して粒子の結晶化度を低い範囲に制限し、融着率を向上するために有効である。また上記の製造方法によれば、予備発泡粒子の生産性も向上する。
【0026】
予備発泡粒子の結晶化度は、1〜8%が好ましい。
結晶化度が8%を超えた場合には粒子の融着性が低下して、発泡成形体の強度が低下するおそれがあり、1%未満では、型内発泡成形時に発泡成形体のひけが生じやすく好ましくない。
結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)を使用して、日本工業規格JIS K7121所載の測定方法に準じて測定した冷結晶化熱量と融解熱量とから、数2によって求められる。
【0027】
【数2】
Figure 0003631940
【0028】
なお式中の、完全結晶PETのモルあたりの融解熱量は、高分子データハンドブック〔培風館発行〕の記載から26.9kJとする。
具体的には、測定試料としての所定量の予備発泡粒子をDSCの測定容器に充てんして、10℃/分の昇温速度で昇温しながら冷結晶化熱量と融解熱量とを測定し、その測定結果から、上記式に基づいて予備発泡粒子の結晶化度が求められる。
【0029】
本発明の発泡成形体は、上記予備発泡粒子を型内発泡成形して形成される。
したがってかかる発泡成形体は、粒子同士の融着性が高く、外観や機械的強度に優れる上、芳香族ポリエステル系樹脂の発泡成形体に特有の、軽量で、しかも耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れるという特性を併せ持つ、良好なものとなる。
粒子の融着性を示す発泡成形体の融着率は、請求項5に記載したように40〜100%であるのが好ましい。
【0030】
融着率が40%未満では、先に述べたように発泡成形体の機械的強度が十分に得られないおそれがある。
融着率の上限は100%まで限定されない。融着率が100%のものは、機械的強度に優れた、良好な発泡成形体である。
融着率は、発泡成形体を折り曲げて厚み方向に破断させたのち、破断面に存在する全ての発泡粒子の個数と、そのうち粒子自体が材料破壊した発泡粒子の個数とを計数した結果から、数3によって求められる。
【0031】
【数3】
Figure 0003631940
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〈芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子〉
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂は、前記のようにBPA系ユニットを含有するものである。
芳香族ポリエステル系樹脂におけるBPA系ユニットの含有割合は、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算して、総量で0.5〜10重量%に調整される。この理由は先に述べたとおりである。
【0033】
なお、芳香族ポリエステル系樹脂中にBPA系ユニットを含有させることによる、樹脂の結晶化を抑制する効果をさらに高め、それによってより良好な発泡成形体を製造することを考慮すると、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した、BPA系ユニットの含有割合の総量は、上記の範囲内でも特に0.6〜9.0重量部程度であるのが好ましく、0.7〜8.0重量部程度であるのがさらに好ましい。
【0034】
上記BPA系ユニットのもとになるビスフェノールAおよびその誘導体とともに、芳香族ポリエステル系樹脂を構成する他の成分としては、ジカルボン酸成分、およびジオール成分があり、このうち、ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸やイソフタル酸などが挙げられる。
またジオール成分としては、例えばエチレングリコール、α−ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、β−ブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、2,3−ブチレングリコール(2,3−ブタンジオール)、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
【0035】
また、芳香族ポリエステル系樹脂の原料には、上記の各成分に加えて、例えば酸成分として、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの、三価以上の多価カルボン酸やその無水物、あるいはアルコール成分として、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの、三価以上の多価アルコールなどを、前述した、芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化速度に影響を与えない範囲で少量、含有させてもよい。
【0036】
芳香族ポリエステル系樹脂は、上記ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させる際に、重合後の樹脂中でのBPA系ユニットの、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量が0.5〜10重量部の範囲となるように、その原料であるビスフェノールAおよびその誘導体の1種または2種以上の仕込み量を、所定の範囲に調整することで製造される。
また上記芳香族ポリエステル系樹脂は、BPA系ユニットを含有しないかあるいは低濃度で含有する芳香族ポリエステル系樹脂と、BPA系ユニットをより高い濃度で含有する芳香族ポリエステル系樹脂とを、その全樹脂中におけるBPA系ユニットの含有割合が上記の範囲となるように配合し、例えば押出機などを用いて、加熱下で溶融、混練することによっても製造できる。
【0037】
後者の製造方法によれば、予備発泡粒子の製造段階で、BPA系ユニットの含有割合の異なる2種以上の芳香族ポリエステル系樹脂の配合割合を変更するだけで、芳香族ポリエステル系樹脂におけるBPA系ユニットの含有割合を調整できるため、仕様の変更などに柔軟に対応できるという利点がある。
また、例えば配合する芳香族ポリエステル系樹脂の1種として、ペットボトルなどからのリサイクル原料を使用することもでき、その場合には、資源を有効に再利用できるという利点がある。
【0038】
なお上記方法においては、2種以上の芳香族ポリエステル系樹脂の間でのエステル交換反応により、各樹脂がアロイ化して均一な芳香族ポリエステル系樹脂となるように、加熱下で十分に溶融、混練するのが好ましい。
また、押出機などを用いて高圧溶融下、芳香族ポリエステル系樹脂に発泡剤を混合させた後、押出発泡した発泡体を切断して予備発泡粒子を製造するに際して、上述した、2種以上の樹脂の溶融、混練による均一な芳香族ポリエステル系樹脂の作製を、同じ押出機中で行うことは効率的であり、好ましい。
【0039】
ただし、2種以上の樹脂の溶融、混練による均一な芳香族ポリエステル系樹脂の作製と、押出発泡および切断による予備発泡粒子の製造とを、別の装置を用いて行ってもよい。
ちなみに特開平7−258396号公報には、ジオール成分としてビスフェノールAの誘導体を含む原材料から合成された共重合ポリエステル(芳香族ポリエステル系樹脂)について記載されている。
【0040】
しかし、この公報は押出ブロー成形性に優れた共重合ポリエステルおよびそれからなる中空成形体に関するものであり、芳香族ポリエステル系樹脂の発泡成形体を製造するための予備発泡粒子に関しては、何ら言及していない。
また予備発泡粒子の良好な発泡融着性を確保するために、上記ビスフェノールAの誘導体から誘導されるBPA系ユニットの含有割合を0.5〜10重量%に特定することについても何ら言及していない。
【0041】
本発明で使用する芳香族ポリエステル系樹脂は、予備発泡粒子を製造する際の溶融、混錬性や、製造された予備発泡粒子を用いて発泡成形体を成形する際の成形性などを考慮すると、その固有粘度(測定温度:35℃、溶媒:オルソクロロフェノール)が0.6〜1.5程度であるのが好ましい。
本発明の予備発泡粒子には、次のような添加剤を添加することができる。
すなわち添加剤としては、芳香族ポリエステル系樹脂を発泡させる発泡剤の他に、例えば溶融張力改質剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、気泡調整剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0042】
溶融張力改質剤としては、グリシジルフタレートのようなエポキシ化合物、ピロメリット酸二無水物のような酸無水物、炭酸ナトリウムのようなIa、IIa族の金属化合物、炭酸エステル化合物などがあげられ、これらを単体で、もしくは2種以上、混合して使用することができる。
発泡剤としては化学発泡剤、物理発泡剤のいずれを使用することもできる。
このうち芳香族ポリエステル系樹脂の軟化点以上の温度で分解してガスを発生する化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、ジニトロソぺン夕メチレンテトラミン、ヒドラゾルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0043】
また物理発泡剤としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ぺンタン、シクロぺンタン、イソぺンタン、へキサンのような飽和炭化水素や、塩化メチル、フレオン(登録商標)のようハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルのようなエーテル化合物などが挙げられる。
さらに二酸化炭素、窒素などの不活性ガスを発泡剤として使用することもできる。
【0044】
中でも飽和炭化水素、二酸化炭素および窒素が、発泡剤として特に好ましい。気泡調整剤としてはポリ四フッ化エチレン樹脂が好適である。
かかるポリ四フッ化エチレン樹脂は、少量の添加において優れた気泡微細化効果を発揮し、しかも芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化をほとんど促進しない特性を有するため、気泡が微細で外観に優れた発泡成形体を製造できるという効果を奏する。
【0045】
上記ポリ四フッ化エチレン樹脂は、ポリエチレンの水素原子をすべてフッ素で置換した熱可塑性樹脂である。
ポリ四フッ化エチレシ樹脂の中でも、ルブリカント用として市販されているポリ四フッ化エチレン樹脂が、芳香族ポリエステル系樹脂の押出発泡における気泡調整剤として効果的である。
その理由は、ルブリカント用のポリ四フツ化エチレン樹脂が、成形用とは異なった下記の特性を持っているからである。
【0046】
その特性の1つは溶融粘度である。すなわち、内径が2.1mmで長さが8.0mmの孔から、340℃の温度に加熱したポリ四フッ化エチレン樹脂をゲージ圧2.0MPaで10分間押し出す、いわゆるメルトインデツクス試験を行った際に、成形用ポリ四フッ化エチレン樹脂は孔から全く流出せず、したがってメルトインデツクスは0である。これに対し、ルブリカント用ポリ四フッ化エチレン樹脂は、上記の条件下に押し出すと孔から流出して、メルトインデックスは0を超える値を示す。
【0047】
その値は特に限定されないが、上記の条件下に押し出すと1.0g以上の流出量を示すもの、すなわちメルトインデックスが1.0以上となる特性を有するものが、気泡調整剤として最も好ましい。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の添加量は、芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.005〜0.1重量部程度であるのが好ましい。この範囲内において、先に述べたようにポリ四フッ化エチレン樹脂は、芳香族ポリエステル系樹脂の気泡調整剤として有効に働き、芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化にほとんど影響を与えないという特性を顕著に発揮する。
【0048】
しかもポリ四フッ化エチレン樹脂は、上記添加量の範囲で芳香族ポリエステル系樹脂に加えた場合、予備発泡粒子製造のための押出発泡時に、芳香族ポリエステル系樹脂の溶融張力を向上させる効果を発揮して、押出発泡成形の安定性を向上させるだけでなく、気泡が微細化される際に気泡膜が薄くなり過ぎることによる気泡破れを防止して、微細でかつ良好な気泡を形成できるという優れた効果をも奏する。
【0049】
なおポリ四フッ化エチレン樹脂の添加量は、前記の範囲内でも特に、芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.007〜0.08重量部程度であるのが好ましく、0.009〜0.06重量部程度であるのがさらに好ましい。
芳香族ポリエステル系樹脂にポリ四フッ化エチレン樹脂を添加する方法としては、両者を単にドライブレンドするだけでもよい。
しかし、さらにその分散性を向上させるために、芳香族ポリエステル系樹脂を使用したマスターバッチの状態で使用することも好ましい態様である。
【0050】
マスターバッチは、予備発泡粒子の主体である芳香族ポリエステル系樹脂と同じ樹脂、および/またはこれと相溶性を有する他の芳香族ポリエステル系樹脂と、ポリ四フッ化エチレン樹脂とを、押出機などを用いて溶融、混練した後、ぺレタイザーなどを用いてぺレツト化して製造される。
また本発明においては、その結晶性や結晶化の速度に大きな影響を及ぼさない範囲で、芳香族ポリエステル系樹脂に、例えばポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂などの熱可塑性エラストマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー樹脂などの他の樹脂を添加してもよい。
【0051】
予備発泡粒子は、前述したように芳香族ポリエステル系樹脂の押出発泡体を粒子状に切断して製造するのが好ましい。
この方法によれば、芳香族ポリエステル系樹脂に発泡剤を含浸させる工程を省略して時間、コストおよび手間を省くとともに、予備発泡粒子の結晶化度をより低くして、型内発泡成形時の粒子同士の融着性を改善することができる。
本発明では、前述したBPA系ユニットを含む特殊な芳香族ポリエステル系樹脂を高圧溶融下、発泡剤と混合し、押出発泡した後、この押出発泡体を切断して予備発泡粒子を製造するのである。
【0052】
上記のための押出機は特に限定されず、通常この種の押出発泡成形に使用される単軸押出機、2軸押出機や、さらにはこれらを連結したタンデム型押出機が使用できる。要するに十分な溶融、混練能力を有する押出機が好ましい。
押出機のダイとしてはいろいろなものを使用することができる。例えば円環状のダイ、フラットダイ、ノズルダイ、さらには複数のノズルが配置されたマルチノズルダイなどが挙げられる。これらのダイを使用して、シート状、板状、ストランド状などの、種々の形状の押出発泡体を作ることができる。
【0053】
押出発泡体を所定の形状とするためには、つぎのような方法を採用できる。
例えば円環状のダイから円筒状の押出発泡体を押し出し、冷却されたもしくは温度調整されたマンドレル上を進行させて冷却後、切断展開してシート状押出発泡体を製造する。
他の方法として、ノズルダイやマルチノズルダイからストランド状に押し出して押出発泡体を製造する。このストランド状の押出発泡体を空冷や水冷のほか、温度調整された冷却装置等を使用して冷却することが好ましい。
【0054】
いずれの方法においても押出発泡体を押し出した後、できる限り速やかに冷却して、不用意に結晶化が進行するのを避けるべきである。
このようにして製造したシート状押出発泡体を切断した予備発泡粒子は、角状あるいはチップ状を呈する。またストランド状の押出発泡体を切断したものは、略円柱状の予備発泡粒子となる。
上記押出発泡体の冷却と切断は、適宜のタイミングで行うことができる。
【0055】
例えばダイより押し出された押出発泡体を、発泡中ないし発泡完了後の任意の時点で水冷した後、ぺレタイザーなどを用いて所定の形状、大きさに切断する。またダイから押し出された、発泡完了直前もしくは発泡完了直後でかつ冷却前の押出発泡体をすぐさま切断した後、冷却することも可能である。
シート状に押し出された押出発泡体は、一旦巻き取り機などによってロール状に巻き取った後、粉砕機や切断機にて切断してもよい。
【0056】
かくして製造される予備発泡粒子は、その結晶化ピーク温度が130〜160℃であるのが好ましい。
結晶化ピーク温度は、加熱によって結晶化が最大となる温度を示すことから、結晶化ピーク温度が高いほど、結晶化を促進させるのに多量の熱を必要とする、つまり結晶化速度が遅いといえる。
前述したように結晶化速度が非常に速い汎用PETから形成される予備発泡粒子は、その結晶化ピーク温度が130℃未満である。
【0057】
これに対し、BPA系ユニットを前記含有割合の範囲内で含有させた芳香族ポリエステル系樹脂から形成することで、その結晶化ピーク温度を130℃以上とした予備発泡粒子は、型内発泡成形時の粒子同士の融着性を改善して、外観や強度に優れた発泡成形体を製造する効果にさらに優れたものとなる。
一方、結晶化ピーク温度が160℃を超える予備発泡粒子は結晶化速度が遅くなりすぎて殆ど結晶化せず、それゆえ発泡成形体に耐熱性を付与できないおそれがある。加えて、型内発泡成形の条件幅が狭くなって成形が容易でなくなったり、あるいは型内発泡成形時に殆ど結晶化しないので、結果として成形体が収縮したり外観の不良を生じたりしやすくなる。
【0058】
なお予備発泡粒子の結晶化ピーク温度は、上記の範囲内でも特に132〜155℃程度であるのが好ましく、133〜150℃程度であるのがさらに好ましい。
結晶化ピーク温度は、先に述べた結晶化度の測定と同様に、示差走査熱量計(DSC)を使用して、日本工業規格JIS K7121所載の測定方法によって測定することができる。
【0059】
具体的には、測定試料としての所定量の予備発泡粒子をDSCの測定容器に充てんして、10℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、その温度で10分間保持したのち、室温(23℃)まで放冷し、その後再び10℃/分の昇温速度で昇温しながら、上記結晶化ピーク温度が測定される。
予備発泡粒子の大きさは、平均粒径で表しておよそ0.5〜5mm程度が好ましい。
【0060】
予備発泡粒子の形状は、前記した略円柱状、角状、チップ状の中でも特に略円柱状が好ましい。この理由は、型内発泡成形するに際して、後述する雄型と雌型とを閉鎖して形成したキャビティ内に、より均一に予備発泡粒子を充てんできるからである。また、予備発泡粒子を均一に充てんして製造した発泡成形体は、優れた機械的強度を発現できるからである。
上記略円柱状の予備発泡粒子の平均気泡径は、およそ0.05〜0.8mm程度にすることが好ましい。
【0061】
平均気泡径が上記の範囲未満では気泡壁が薄くなり過ぎて、型内発泡成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。
一方、平均気泡径が上記の範囲を超えるものは気泡径が大きくなり過ぎて、発泡成形体の外観に悪影響を及ぼすおそれが生じる。
なお予備発泡粒子の平均気泡径は、上記の範囲内でも特に0.1〜0.7mm程度であるのが好ましく、0.15〜0.6mm程度であるのがさらに好ましい。
【0062】
また、本発明の予備発泡粒子の結晶化度は、型内発泡成形した際に、発泡粒子同士の融着性に優れた高強度の発泡成形体を得るために、前述したように1〜8%とすることが好ましい。
なお予備発泡粒子の結晶化度は、上記の範囲内でも特に1〜7%程度であるのが好ましく、約1〜6%程度であるのがさらに好ましい。
予備発泡粒子の嵩密度は、軽量で、しかも機械的強度、耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れた発泡成形体を得るために、0.01〜1.0g/cm程度であるのが好ましい。
【0063】
予備発泡粒子の嵩密度が上記の範囲未満では、製造される発泡成形体の見かけ密度が小さくなりすぎて、機械的強度や耐熱性、緩衝性が不十分となるおそれがある。また逆に嵩密度が上記の範囲を超えた場合には、軽量な発泡成形体を得ることができず、その断熱性や緩衝性が不十分となるおそれがある。
〈発泡成形体〉
本発明の発泡成形体は、上記芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を、型内発泡成形することで形成される。
【0064】
具体的には、発泡成形用の雄型と雌型とを閉鎖して形成された、密閉し得ないキャビティ内に上記の予備発泡粒子を充てんし、さらに加熱媒体としてスチーム等を導入して型内発泡成形することで、上記キャビティに対応した外形を有する発泡成形体が形成される。
このときの加熱媒体としては、スチーム以外にも熱風などを使用することができるが、効率的に成形を行う上ではスチームが最も有効である。
【0065】
スチームで型内発泡成形する場合には、汎用の型内発泡成形機を使用して発泡成形すればよい。
具体的には、前記の予備発泡粒子をキャビティ内へ充てんした後、まず一方の金型から、例えばゲージ圧0.01〜0.15MPa程度のスチームを一定時間、キャビティ内へ吹き込んで、粒子間のエアーを外部へ排出するとともに予備発泡粒子を発泡させつつ、ある程度、粒子同士を融着させる(この際、他方の金型から真空引き操作を行ってもよい)。
【0066】
次いで両方の金型から、例えばゲージ圧0.02〜0.15MPa程度のスチームを吹き込んで発泡成形する、すなわち予備発泡粒子を発泡させるとともに粒子同士の融着を促進して、発泡成形体を製造する。
かくして製造される本発明の発泡成形体の融着率は、前記のように40〜100%であるのが好ましい。上記の発泡成形体は、外観および機械的強度に特に優れたものとなる。
【0067】
なお発泡成形体の融着率は、上記の範囲内でも特に、60〜100%程度であるのがさらに好ましい。
さらに結晶化度を15%以上、特に20〜40%にまで向上させた発泡成形体は耐熱性にも優れたものとなり、寸法安定性にも優れている。
本発明の発泡成形体は、前述したような各種の用途で使用した後、リサイクルして再利用することが可能である。使用済みの発泡成形体を再利用することにより、資源の有効な再利用化とゴミの減量化にも貢献することができる。
【0068】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて、この発明の優れている点を具体的に説明する。
なお、製造された予備発泡粒子の結晶化ピーク温度、および結晶化度は、いずれも前述したようにJIS K7121所載の測定方法に準じて測定した結果より求めた。また発泡成形体の融着率も、前述した測定方法によって測定した。
【0069】
芳香族ポリエステル系樹脂におけるBPA系ユニットの含有割合は、下記の方法で測定した。
(BPA系ユニットの同定、並びに含有割合の測定)
試料約100mgを耐圧テフロン容器中に秤量後、和光純薬工業社製の吸光分析用ジメチルスルホキシド10mlと、5N水酸化ナトリウム−メタノール溶液6mlとを加えたのち、上記耐圧テフロン容器をSUS製の耐圧加熱容器に入れて確実に密閉後、100℃で15時間加熱した。
【0070】
つぎに、加熱後の耐圧加熱容器を室温冷却し、完全に冷却した状態で、耐圧テフロン容器を取り出し、内容物を200mlビーカーに移して150ml程度まで蒸留水を加えた。
つぎに、内容物が完全に溶解したことを確認後、塩酸にてpH6.5〜7.5に中和し、中和後200mlまでメスアップしたものをさらに蒸留水で20倍に希釈して試料溶液とした。
【0071】
つぎにこの試料溶液と、ビスフェノールA標準溶液とを用いて、高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置にて下記の条件で測定を行った。ビスフェノールA標準溶液としては、東京化成工業社製のビスフェノールA試薬をメタノールで溶解後、蒸留水で希釈したものを使用した。
装置:Waters(ウォーターズ)社製 HPLC LC−module1
カラム:GL社製 Inertsil ODS−2 5μm(4.6x250)
カラム温度:23±2℃
ポンプ温度:23±2℃
移動相:0.1%リン酸/アセトニトリル=50/50
流速:0.5ml/min
分析時間:35分
注入量:50μl
検出波長:212nm
つぎに、上記検出波長212nmの成分について、HLPC装置に接続した前記データ処理装置991Jを用いて、分解能n=2nm、波長範囲190〜340nmの条件で、前述した方法によってマッチ度Mを求めた。
【0072】
一方、標準溶液から得たビスフェノールAのピーク面積をX軸に、濃度をY軸にとって検量線を作成した。
そして、上記マッチ度Mが900以上であったものについては、得られた検量線を使用して、試料溶液中の、ビスフェノールAとその誘導体の合計の濃度(ビスフェノールA換算、μg/ml)を算出し、この濃度から、数4を使用して、芳香族ポリエステル系樹脂中のBPA系ユニットの、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した含有割合(重量%)を計算した。
【0073】
【数4】
Figure 0003631940
【0074】
一方、マッチ度Mが900未満であったものは、ビスフェノールAとその誘導体が含まれていない、すなわち含有割合が0重量%であると判断して、上記の計算を行わなかった。
発泡成形体の曲げ強度およびたわみ量は、下記の方法で測定した。
(曲げ強度およびたわみ量の測定)
発泡成形体を、50mm×100×13mmの大きさに切り出したものを試験片として、下記の条件で曲げ試験を行い、最大曲げ強度(MPa)と、そのときのたわみ量(mm)を求めた。
【0075】
装置:テンシロン万能試験機
曲げ速度:50mm/分
先端治具:加圧くさび3.2R
支持台:3.2R
スパン間距離:50mm
予備発泡粒子の嵩密度、および発泡成形体の密度は、下記の方法で測定した。
【0076】
(密度の測定)
日本工業規格JIS K 6767に準拠して、数5により、予備発泡粒子の嵩密度、および発泡成形体の密度を求めた。
【0077】
【数5】
Figure 0003631940
【0078】
実施例1
BPA系ユニットを含有する芳香族ポリエステル系樹脂として、クラレ社製のダイレクトブロー用PET樹脂(クラペットKS−710B)を使用し、このダイレクトブロー用PET樹脂50重量部と、ペットボトルをリサイクルした回収ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット50重量部と、ポリ四沸化エチレン樹脂を2重量%の割合で含有するポリエチレンテレフタレート樹脂マスターバッチ1重量部と、改質剤としてのピロメリット酸二無水物0.18重量部と、改質助剤としての炭酸ナトリウム0.03重量部とを押出機〔口径:65mm、L/D比:35〕に投入し、スクリューの回転数50rpm、バレル温度270〜290℃の条件で溶融、混合しながら、バレルの途中に接続した圧入管から、発泡剤としてのブタンを、混合物に対して1.1重量%の割合で圧入した。
【0079】
つぎに、溶融状態の混合物を、バレルの先端に接続したマルチノズルダイ〔直線上に、直径0.8mmのノズルが15個、配置されたもの〕の、各ノズルを通して押し出して予備発泡させたのち、直ちに冷却水槽で冷却した。
そして、冷却されたストランド状の発泡体を十分に水切りしたのち、ぺレタイザーを用いて小粒状に切断して予備発泡粒子を製造した。
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.13g/cm、粒径は2.0〜2.5mm、結晶化度は3.6%、結晶化ピーク温度は139.1℃であった。
【0080】
波長212nmの成分のマッチ度Mは955であり、ビスフェノールAの誘導体であることが確認された。
そしてこの誘導体に起因するBPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合の、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量は3.0重量%であった。
上記の予備発泡粒子を、内法寸法300mm×400mm×20mmの発泡成形型内に充てんし、この型内に、1.2MPaのスチームを20秒間、次いで0.6MPaのスチームを10秒間、導入して予備発泡粒子を加熱膨張させると同時に融着させた。
【0081】
そして、この状態で120秒間、保熱したのち水冷して、上記型の内法寸法と同じ300mm×400mm×20mmの外形寸法を有する発泡成形体を製造した。
得られた発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.13g/cm、融着率は90%と良好な融着性を示した。また、この発泡成形体の曲げ強度は1.02MPa、たわみ量は18.2mmであった。
【0082】
実施例2
ダイレクトブロー用PET樹脂の量を25重量部、ペットボトルをリサイクルした回収ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの量を75重量部、ピロメリット酸二無水物の量を0.20重量部としたこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.13g/cm、粒径は2.0〜2.5mm、結晶化度は4.8%、結晶化ピーク温度は133.4℃であった。
【0083】
また波長212nmの成分のマッチ度Mは955であり、ビスフェノールAの誘導体であることが確認された。
そしてこの誘導体に起因するBPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合の、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量は1.5重量%であった。
さらに発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.13g/cm、融着率は80%と良好な融着性を示した。また、この発泡成形体の曲げ強度は1.08MPa、たわみ量は15.4mmであった。
【0084】
実施例3
BPA系ユニットを含有する芳香族ポリエステル系樹脂として、ポリアリレート樹脂(ユニチカ社製のU−100)を使用し、このポリアリレート樹脂7重量部と、三井化学社製のペットボトル用PET樹脂(SA−145)93重量部と、ポリ四沸化エチレン樹脂を2重量%の割合で含有するポリエチレンテレフタレート樹脂マスターバッチ1重量部と、改質剤としてのピロメリット酸二無水物0.20重量部と、改質助剤としての炭酸ナトリウム0.03重量部とを配合したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0085】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.13g/cm、粒径は2.0〜2.5mm、結晶化度は2.7%、結晶化ピーク温度は143.5℃であった。
また波長212nmの成分のマッチ度Mは995であり、ビスフェノールAの誘導体であることが確認された。
そしてこの誘導体に起因するBPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合の、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量は4.2重量%であった。
【0086】
さらに発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.13g/cm、融着率は95%と良好な融着性を示した。また、この発泡成形体の曲げ強度は1.03MPa、たわみ量は18.8mmであった。
比較例1
ダイレクトブロー用PET樹脂を使用せず、かつペットボトルをリサイクルした回収ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの量を100重量部、ピロメリット酸二無水物の量を0.30重量部としたこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0087】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.13g/cm、粒径は2.0〜2.5mm、結晶化度は8.6%、結晶化ピーク温度は127.0℃であった。
また波長212nmの成分のマッチ度Mは559であり、ビスフェノールAの誘導体ではないことが確認された。
そしてそれゆえに、BPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合の、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量は0重量%、すなわちBPA系ユニットを含有しないものと判定された。
【0088】
さらに発泡成形体の密度は0.13g/cm、融着率は35%と融着性が不十分であった。また、この発泡成形体の曲げ強度は0.75MPa、たわみ量は1.4mmであり、機械的物性に劣っていた。
比較例2
ポリアリレート樹脂の量を20重量部、ペットボトル用PET樹脂の量を80重量部、ピロメリット酸二無水物の量を0.22重量部としたこと以外は実施例3と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0089】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.13g/cm、粒径は2.0〜2.5mm、結晶化度は0.9%、結晶化ピーク温度は164.9℃であった。
また波長212nmの成分のマッチ度Mは995であり、ビスフェノールAの誘導体であることが確認された。
そしてこの誘導体に起因するBPA系ユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合の、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算した総量は11.9重量%であった。
【0090】
さらに発泡成形体は、その密度が0.13g/cm、融着率が90%と良好な融着性を示したが、収縮が大きく外観が悪いものであった。また、この発泡成形体の曲げ強度は0.78MPa、たわみ量は17.8mmであり、機械的物性に劣っていた。
以上の結果を表1にまとめた。
【0091】
【表1】
Figure 0003631940
【0092】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明の予備発泡粒子は、BPA系ユニットを導入することで結晶化速度を下げた芳香族ポリエステル樹脂にて形成されているため、型内発泡成形時に粒子間の融着性を向上して、外観や機械的強度に優れる上、芳香族ポリエステル系樹脂の発泡成形体に特有の、軽量で、しかも耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れるという特性を併せ持つ良好な発泡成形体を、容易かつ効率的に製造することが可能となる。
【0093】
また本発明の発泡成形体は、上記の予備発泡粒子を型内発泡成形したものゆえ、上記の各特性に優れており、これらの優れた特性を活かして、従来の、ポリスチレンやポリオレフィンの発泡成形体よりも高機能な素材として、例えば建築資材、土木資材、工業用部材、自動車用部材などの各種分野への応用が可能となる。

Claims (5)

  1. 型内発泡成形に使用できる芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子であって、前記予備発泡粒子は、ビスフェノールAおよびその誘導体から誘導される少なくとも1種のユニットを、ビスフェノールAから誘導されるユニットの量に換算して、総量で0.5〜10重量%の範囲で含有する芳香族ポリエステル系樹脂にて形成されたことを特徴とする芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子。
  2. 芳香族ポリエステル系樹脂の押出発泡体を切断して製造されたことを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子。
  3. 結晶化度が1〜8%であることを特徴とする請求項2記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を、型内発泡成形して形成されたことを特徴とする発泡成形体。
  5. 融着率が40〜100%であることを特徴とする請求項4記載の発泡成形体。
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