JP3631942B2 - 芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、型内発泡成形に使用される芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の、新規な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリエステル系樹脂は剛性が大きく、形状安定性がよく、また耐熱性や耐薬品性などにも優れるという、ポリスチレンやポリオレフィンには見られない優れた性質を有している。
そこで芳香族ポリエステル系樹脂を発泡させて、軽量で、しかも耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れた発泡成形体を製造することが企図されている。
【0003】
発明者らのうち平井は先に、従来、使用されてきた汎用の芳香族ポリエステル系樹脂(汎用PET)を、押出機での高圧溶融下で発泡剤と混合し、大気圧中に押し出して予備発泡し、さらに冷却したのち、この発泡体を切断することで、結晶化度が25%以下に抑えられた予備発泡粒子を製造し、次いでこの予備発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を製造する方法を提案した(特開平8−174590号公報)。
【0004】
この方法によれば、高い結晶性を有し、高温にさらされると結晶化が急速に進行して、型内発泡成形時に粒子同士の発泡融着性が著しく低下するため発泡成形体が得られないおそれのある汎用PETを、長時間に亘って高温にさらすことなく、予備発泡粒子化して、その結晶化度を、上記のように25%以下に抑えることができる。
このため、この方法によって製造された予備発泡粒子は、型内発泡成形時の発泡融着性が著しく低くなることが防止され、型内発泡成形することが可能となり、その結果、軽量で耐熱性に優れた発泡成形体が得られる。
【0005】
特に上記公報に記載された種々の形状の予備発泡粒子のうち略円柱状の予備発泡粒子は、型内発泡成形時に雄型と雌型とを閉鎖して形成されるキャビティ内への充てん性が良く、良好な発泡成形体を安定して製造できるという利点がある。かかる略円柱状の予備発泡粒子を製造する方法としては、前記のように芳香族ポリエステル系樹脂と発泡剤とを押出機を使用して溶融、混合したものを、この押出機に接続したノズル金型(複数のノズルを備えたマルチノズル金型を含む)の先端からストランド状に押し出して発泡させた後、このストランド状発泡体を水中に水没させて冷却し、そして所定の長さに切断することが考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記の製造方法では、外観および型内発泡成形性などに優れた略円柱状の予備発泡粒子を、安定して製造するのが非常に難しいことが明らかとなった。すなわち型内発泡成形時の融着性に優れた予備発泡粒子を得るには、当該予備発泡粒子、およびその元になるストランド状発泡体の結晶化度を、前記の範囲でも特に8%以下に抑制する必要がある(切断工程では結晶化がほとんど進行しないため、ストランド状発泡体の結晶化度が、そのまま予備発泡粒子の結晶化度となる)。
【0007】
汎用PETを含む芳香族ポリエステル系樹脂は、溶融状態から急冷することにより、結晶化度を抑制できる。
ストランド状発泡体を急冷する方法としては、前記のようにノズル金型の先端からストランド状に押し出して発泡させた後、水中に水没させて冷却する方法が一般によく用いられる。
しかし芳香族ポリエステル系樹脂は、ポリスチレンやポリエチレン等の汎用樹脂に比べて、押出発泡成形時の加工温度が非常に高く、通常は、260℃より高い温度で押出成形加工する必要がある。
【0008】
このため、ノズル金型の先端からストランド状に押し出して発泡させた後の、高温のストランド状発泡体を水中に水没させると、両者の温度差によって、ストランド状発泡体の気泡内が急激に減圧状態となり、気泡壁がこの減圧状態に耐え切れずに発泡体の全体が収縮して、表面状態および気泡状態が悪化する。そしてこのストランド状発泡体を切断して製造される予備発泡粒子は、外観および型内発泡成形性の悪いものとなる。
【0009】
また汎用PETは結晶化の速度が著しく速いため、型内発泡成形時に予備発泡粒子の結晶化度が急速に上昇してしまい、粒子同士の融着性に優れた、高強度でかつ粒子間に隙間のない外観の良好な発泡成形体を形成できないという問題も生じる。
本発明の目的は、結晶化度の上昇を抑制した、表面状態および気泡状態が良好で、外観および型内発泡成形性に優れる上、型内発泡成形によって高強度でかつ外観の良好な発泡成形体を形成することが可能な略円柱状の予備発泡粒子を、安定して製造することができる、新規な芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法は、型内発泡成形に使用できる、結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲にある芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を、次の(1)〜(3)の各工程を経て製造することを特徴とするものである。
工程(1):ノズル金型を備えた押出機を使用して、芳香族ポリエステル系樹脂と発泡剤とを溶融混合した後、上記ノズル金型からストランド状に押出発泡する工程
工程(2):押し出されたストランド状発泡体を、発泡の途中にある段階で水中に水没させて冷却することで、その結晶化度を1〜8%に制御する工程
工程(3):冷却されたストランド状発泡体を切断する工程
前述した従来の製造方法では、ノズル金型から押し出されたストランド状発泡体を、その発泡が完了した後に、水中に水没させて冷却していたため、前記のような収縮が発生していた。
【0011】
これに対し本発明によれば、ノズル金型から押し出された、発泡の途中にあるストランド状発泡体を水中に水没させることで、まだストランド状発泡体に残っている発泡力による膨張と、温度差による収縮とのバランスをとって、ストランド状発泡体の収縮と、それに伴う表面状態および気泡状態の悪化とを防止しており、外観および型内発泡成形性に優れた予備発泡粒子を製造することが可能となる。
【0012】
また本発明では、予備発泡粒子の結晶化速度を示す結晶化ピーク温度が130℃以上となるように、当該予備発泡粒子を形成する芳香族ポリエステル系樹脂を調整している。
結晶化ピーク温度は、加熱によって結晶化が最大となる温度を示すことから、結晶化ピーク温度が高いほど、結晶化を促進させるのに多量の熱を必要とする、つまり結晶化速度が遅いといえる。
【0013】
前述したように結晶化速度が非常に速い汎用PETから形成される予備発泡粒子は、その結晶化ピーク温度が130℃未満である。
これに対し、前記のように結晶化ピーク温度が130℃以上に調整された予備発泡粒子は結晶化速度が遅いため、押し出されたストランド状発泡体を、発泡の途中にある段階で水中に水没させて冷却しても、その結晶化度を8%以下に制御することができる。
【0014】
したがって、かかるストランド状発泡体から製造された予備発泡粒子を使用すれば、型内発泡成形時における粒子の融着性を著しく改善して、これまでよりも高強度で、しかも粒子間に隙間のない外観も良好な発泡成形体を製造することが可能となる。
なお結晶化ピーク温度が180℃を超える予備発泡粒子は結晶化度が遅くなりすぎて殆ど結晶化せず、それゆえ発泡成形体に耐熱性を付与できない。加えて、型内発泡成形の条件幅が狭くなって成形が容易でなくなったり、あるいは型内発泡成形時に殆ど結晶化しないので、結果として成形体が収縮したり外観の不良を生じたりする。
【0015】
それゆえ予備発泡粒子を形成する芳香族ポリエステル系樹脂は、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が180℃以下となるように調整される。
結晶化ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)を使用して、日本工業規格JIS K7121所載の測定方法によって測定することができる。
具体的には、測定試料としての所定量の予備発泡粒子をDSCの測定容器に充てんして、10℃/分の昇温速度で280℃まで昇温し、その温度で10分間保持したのち、室温(23℃)まで放冷し、その後再び10℃/分の昇温速度で昇温しながら、上記結晶化ピーク温度が測定される。
【0016】
また本発明では、前記のようにストランド状発泡体の結晶化度が1〜8%とされる。
結晶化度が8%を超えた場合には、前記のように型内発泡成形こそ可能であるものの、粒子同士の融着性に優れた、高強度の発泡成形体を形成できない。
一方、結晶化度が1%未満では、型内発泡成形時に発泡成形体のひけが生じやすくなって発泡成形体の外観が悪化する。
【0017】
結晶化度は、先に述べた結晶化ピーク温度の測定と同様に、示差走査熱量計(DSC)を使用して、日本工業規格JIS K7121所載の測定方法に準じて測定した冷結晶化熱量と融解熱量とから、次式によって求められる。
【0018】
【数1】
【0019】
なお式中の、完全結晶PETのモルあたりの融解熱量は、高分子データハンドブック〔培風館発行〕の記載から26.9kJとする。
具体的には、測定試料としての所定量の予備発泡粒子をDSCの測定容器に充てんして、10℃/分の昇温速度で昇温しながら冷結晶化熱量と融解熱量とを測定し、その測定結果から、上記式に基づいて予備発泡粒子の結晶化度が求められる。
【0020】
上記本発明の製造方法においては、ノズル金型の先端から押し出されて水中に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長を3〜7mmの範囲に設定するのが好ましい。
露出長が3mm未満では、ストランド状発泡体の発泡が十分に行われない状態で冷却が開始されることになるため、十分に低密度で軽量の予備発泡粒子、並びに発泡成形体を製造できないおそれがある。
【0021】
また逆に露出長が7mmを超えた場合には、ストランド状発泡体の発泡が殆ど完了してから冷却されることになるため、水中に水没させた際の、発泡力による膨張と、温度差による収縮とのバランスが取れなくなって、予備発泡粒子の収縮による表面状態および気泡状態の悪化、並びに外観および型内発泡成形性の悪化を生じるおそれがある。
なお、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度を130〜180℃の範囲に調整する方法としては、次の2法が、好適に採用される。
(a) 予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲となるようにあらかじめ調整された芳香族ポリエステル系樹脂を、押出発泡に使用する。
(b) 予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130℃未満となる結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂と、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130℃以上となる結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂および非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂のうちの少なくとも一方とを、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲となるように、押出機中で溶融混合する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〈芳香族ポリエステル系樹脂〉
本発明において予備発泡粒子の製造に使用する芳香族ポリエステル系樹脂としては、前記のように製造される予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃となるように調整されたものが使用される。
【0023】
なお予備発泡粒子の結晶化ピーク温度は、上記の範囲内でも特に132〜175℃程度であるのが好ましく、135〜160℃程度であるのがさらに好ましい。
予備発泡粒子の結晶化ピーク温度を上記の範囲内とするためには、芳香族ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸成分、およびジオール成分の組成を変更して、樹脂の分子構造をモディファイする方法が挙げられる。
【0024】
具体的には例えば、ジカルボン酸成分として式(1):
【0025】
【化1】
【0026】
で表されるイソフタル酸を使用するか、ジオール成分として式(2):
【0027】
【化2】
【0028】
で表される1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(ビスフェノールAの両末端の水酸基の部分に、それぞれ1つまたは2つの、エチレンオキサイドから誘導されるユニットを付加したもの)、およびネオペンチルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種を使用するか、あるいは上記イソフタル酸と、上記4種のジオールのうちの少なくとも1種とを併用するとともに、これらの成分から誘導されるユニットの、芳香族ポリエステル系樹脂中における含有割合を所定の範囲に調整することで、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲内とされる。
【0029】
イソフタル酸および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールを使用する場合を例にとると、上記イソフタル酸から誘導されるユニット(以下「IPAユニット」と称する)および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導されるユニット(以下「CHDMユニット」と称する)の、芳香族ポリエステル系樹脂中での含有割合(いずれか一方を単独で使用する場合はその単独での含有割合、両者を併用する場合はその合計の含有割合)を0.5〜10重量%の範囲に調整して、結晶化ピーク温度を前記の範囲に調整する。含有割合が0.5重量%未満では結晶化の抑制効果が期待できない。一方、含有割合が10重量%を超えた場合には結晶化速度が極端に遅くなる。よって、このいずれの場合にも、前記のように外観、強度、耐熱性等に優れた発泡成形体を製造できない。
【0030】
なおIPAユニットおよび/またはCHDMユニットの含有割合は、より良好な発泡成形体を製造するため、上記の範囲内でも特に0.6〜9.0重量%程度であるのが好ましく、0.7〜8.0重量%程度であるのがさらに好ましい。
イソフタル酸や1,4−シクロヘキサンジメタノールなどとともに芳香族ポリエステル系樹脂を構成する他の成分のうちジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸やフタル酸などが挙げられる。
【0031】
またジオール成分としては、例えばエチレングリコール、α−ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、β−ブチレングリコール(1,3−ブタンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、2,3−ブチレングリコール(2,3−ブタンジオール)などが挙げられる。
また、芳香族ポリエステル系樹脂の原料には、上記の各成分に加えて、例えば酸成分として、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの、三価以上の多価カルボン酸やその無水物、あるいはアルコール成分として、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの、三価以上の多価アルコールなどを、前述した、芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化速度に影響を与えない範囲で、すなわち予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が前記の範囲を外れない範囲で、少量、含有させてもよい。
【0032】
予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃となるように調整された芳香族ポリエステル系樹脂は、上記ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させる際に、前述した特定の成分を、重縮合後の樹脂中での、当該成分から誘導されるユニットの含有割合が所定の範囲となるように配合した原料を、従来同様に重縮合反応させることで製造される。
例えば前記イソフタル酸および/または1,4−シクロヘキサンジメタノールの場合は、重縮合後の樹脂中での、IPAユニットおよび/またはCHDMユニットの含有割合が前記0.5〜10重量%の範囲となるように仕込み量を調整した原料を重縮合反応させることで、芳香族ポリエステル系樹脂が製造される。
【0033】
また、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃となるように調整された芳香族ポリエステル系樹脂は、先に述べた(b)の方法により、2種以上の芳香族ポリエステル系樹脂を溶融混練することでも製造できる。
この(b)の方法によれば、予備発泡粒子の製造段階で、特定ユニットの含有割合の異なる2種以上の芳香族ポリエステル系樹脂の配合割合を変更するだけで、製造される予備発泡粒子の結晶化ピーク温度を調整できるため、仕様の変更などに柔軟に対応できるという利点がある。
【0034】
また、例えば配合する芳香族ポリエステル系樹脂の1種として、ペットボトルなどからのリサイクル原料を使用することもでき、その場合には、資源を有効に再利用できるという利点がある。
なお上記方法においては、2種以上の芳香族ポリエステル系樹脂の間でのエステル交換反応により、各樹脂がアロイ化して均一な芳香族ポリエステル系樹脂となるように、加熱下で十分に溶融、混練するのが好ましい。
【0035】
また、押出機などを用いて高圧溶融下、芳香族ポリエステル系樹脂に発泡剤を混合させた後、押出発泡し、冷却した発泡体を切断して予備発泡粒子を製造するに際して、上述した、2種以上の樹脂の溶融、混練による均一な芳香族ポリエステル系樹脂の作製を、同じ押出機中で行うことは効率的であり、好ましい。
ただし、2種以上の樹脂の溶融、混練による均一な芳香族ポリエステル系樹脂の作製と、押出発泡、冷却、並びに切断による予備発泡粒子の製造とを、別の装置を用いて行ってもよい。
【0036】
本発明で使用する芳香族ポリエステル系樹脂は、予備発泡粒子を製造する際の溶融、混錬性や、製造された予備発泡粒子を用いて発泡成形体を成形する際の成形性などを考慮すると、その固有粘度(測定温度:35℃、溶媒:オルソクロロフェノール)が0.6〜1.5程度であるのが好ましい。
芳香族ポリエステル系樹脂には、次のような添加剤を添加することができる。すなわち添加剤としては、芳香族ポリエステル系樹脂を発泡させる発泡剤の他に、例えば溶融張力改質剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、気泡調整剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0037】
溶融張力改質剤としては、グリシジルフタレートのようなエポキシ化合物、ピロメリット酸二無水物のような酸無水物、炭酸ナトリウムのようなIa、IIa族の金属化合物、炭酸エステル化合物などがあげられ、これらを単体で、もしくは2種以上、混合して使用することができる。
発泡剤としては化学発泡剤、物理発泡剤のいずれを使用することもできる。
このうち芳香族ポリエステル系樹脂の軟化点以上の温度で分解してガスを発生する化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、ジニトロソぺン夕メチレンテトラミン、ヒドラゾルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
また物理発泡剤としては、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ぺンタン、シクロぺンタン、イソぺンタン、へキサンのような飽和炭化水素や、塩化メチル、フレオン(登録商標)のようハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルのようなエーテル化合物などが挙げられる。
さらに二酸化炭素、窒素などの不活性ガスを発泡剤として使用することもできる。
【0039】
中でも飽和炭化水素、二酸化炭素および窒素が、発泡剤として特に好ましい。
気泡調整剤としてはポリ四フッ化エチレン樹脂が好適である。
かかるポリ四フッ化エチレン樹脂は、少量の添加において優れた気泡微細化効果を発揮し、しかも芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化をほとんど促進しない特性を有するため、気泡が微細で外観に優れた発泡成形体を製造できるという効果を奏する。
【0040】
上記ポリ四フッ化エチレン樹脂は、ポリエチレンの水素原子をすべてフッ素で置換した熱可塑性樹脂である。
ポリ四フッ化エチレシ樹脂の中でも、ルブリカント用として市販されているポリ四フッ化エチレン樹脂が、芳香族ポリエステル系樹脂の押出発泡における気泡調整剤として効果的である。
その理由は、ルブリカント用のポリ四フツ化エチレン樹脂が、成形用とは異なった下記の特性を持っているからである。
【0041】
その特性の1つは溶融粘度である。すなわち、内径が2.1mmで長さが8.0mmの孔から、340℃の温度に加熱したポリ四フッ化エチレン樹脂をゲージ圧2.0MPaで10分間押し出す、いわゆるメルトインデツクス試験を行った際に、成形用ポリ四フッ化エチレン樹脂は孔から全く流出せず、したがってメルトインデツクスは0である。これに対し、ルブリカント用ポリ四フッ化エチレン樹脂は、上記の条件下に押し出すと孔から流出して、メルトインデックスは0を超える値を示す。
【0042】
その値は特に限定されないが、上記の条件下に押し出すと1.0g以上の流出量を示すもの、すなわちメルトインデックスが1.0以上となる特性を有するものが、気泡調整剤として最も好ましい。
ポリ四フッ化エチレン樹脂の添加量は、芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.005〜0.1重量部程度であるのが好ましい。この範囲内において、先に述べたようにポリ四フッ化エチレン樹脂は、芳香族ポリエステル系樹脂の気泡調整剤として有効に働き、芳香族ポリエステル系樹脂の結晶化にほとんど影響を与えないという特性を顕著に発揮する。
【0043】
しかもポリ四フッ化エチレン樹脂は、上記添加量の範囲で芳香族ポリエステル系樹脂に加えた場合、予備発泡粒子製造のための押出発泡時に、芳香族ポリエステル系樹脂の溶融張力を向上させる効果を発揮して、押出発泡成形の安定性を向上させるだけでなく、気泡が微細化される際に気泡壁が薄くなり過ぎることによる気泡破れを防止して、微細でかつ良好な気泡を形成できるという優れた効果をも奏する。
【0044】
なおポリ四フッ化エチレン樹脂の添加量は、前記の範囲内でも特に、芳香族ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.007〜0.08重量部程度であるのが好ましく、0.009〜0.06重量部程度であるのがさらに好ましい。
芳香族ポリエステル系樹脂にポリ四フッ化エチレン樹脂を添加する方法としては、両者を単にドライブレンドするだけでもよい。
しかし、さらにその分散性を向上させるために、芳香族ポリエステル系樹脂を使用したマスターバッチの状態で使用することも好ましい態様である。
【0045】
マスターバッチは、予備発泡粒子の主体である芳香族ポリエステル系樹脂と同じ樹脂、および/またはこれと相溶性を有する他の芳香族ポリエステル系樹脂と、ポリ四フッ化エチレン樹脂とを、押出機などを用いて溶融、混練した後、ぺレタイザーなどを用いてぺレツト化して製造される。
また本発明においては、その結晶性や結晶化の速度に大きな影響を及ぼさない範囲で、芳香族ポリエステル系樹脂に、例えばポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂などの熱可塑性エラストマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、アイオノマー樹脂などの他の樹脂を添加してもよい。
【0046】
〈予備発泡粒子の製造〉
本発明の製造方法においては、まずノズル金型を備えた押出機を使用して、芳香族ポリエステル系樹脂と発泡剤とを溶融混合した後、上記ノズル金型からストランド状に押出発泡する〔工程(1)〕。
使用する押出機は特に限定されず、通常この種の押出発泡成形に使用される単軸押出機、2軸押出機や、さらにはこれらを連結したタンデム型押出機が使用できる。要するに十分な溶融、混練能力を有する押出機が好ましい。
【0047】
ノズル金型としては、ストランド状発泡体、並びに予備発泡粒子の製造効率、生産性等を考慮すると、複数のノズルが配置され、一度に複数本のストランド状発泡体を押出発泡できるマルチノズル金型を使用するのが好ましい。
次に、押し出されたストランド状発泡体を、発泡の途中にある段階で水中に水没させて冷却する〔工程(2)〕。
具体的には、ノズル金型の先端から押し出されたストランド状発泡体を、作業雰囲気中等で発泡させつつ、その発泡が完了する前の、発泡の途中にある段階で、所定の温度に設定された恒温水槽等の水中に、連続的に水没させて冷却する。
【0048】
この工程を経ることにより、前述したようにまだストランド状発泡体に残っている発泡力による膨張と、温度差による収縮とのバランスをとって、ストランド状発泡体の収縮と、それに伴う表面状態および気泡状態の悪化とを防止しつつ、結晶化度を1〜8%の範囲に制御することができる。なお結晶化度は、上記の範囲内でも特に1〜7%程度であるのが好ましく、約1〜6%程度であるのがさらに好ましい。
【0049】
この際、ノズル金型の先端から押し出されて水中に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長は、前述したように3〜7mm程度であるのが好ましい。その理由は前述したとおりである。
なお、より良好なストランド状発泡体、並びに予備発泡粒子を製造することを考慮すると、上記露出長は、上記の範囲内でも特に4〜6mm程度であるのがさらに好ましい。
【0050】
冷却のための水温は特に限定されないが、効率的な冷却を行うことを考慮すると、およそ5〜40℃程度であるのが好ましく、7〜35℃程度であるのがさらに好ましい。
冷却によって、上述した発泡力による膨張、ならびに温度差による収縮がいずれも発生しなくなってサイズが固定されたストランド状発泡体は、十分に水切りしたのち、次工程である切断工程に送られる。
【0051】
ストランド状発泡体のサイズは特に限定されないが、その長径が、およそ0.5〜5mm程度であるのが好ましい。
ストランド状発泡体の長径が5mmを超えた場合には、当該ストランド状発泡体から製造される予備発泡粒子の、型内発泡成形時における、雄型と雌型とを閉鎖して形成したキャビティ内への充てん性に問題を生じるおそれがある。
一方、ストランド状発泡体の長径が0.5mm未満では気泡壁が薄くなることから、連続気泡率が高くなって、予備発泡粒子の型内発泡成形性が悪くなるおそれがある。
【0052】
次に、上記の工程で冷却され、十分に水切りされたストランド状発泡体を所定の長さに切断することで、予備発泡粒子が製造される〔工程(3)〕。
ストランド状発泡体の切断には、ペレタイザー等の切断装置が使用できる。
ストランド状発泡体を切断する長さは、製造する予備発泡粒子の粒径等に応じて適宜設定されるが、およそ0.5〜5mm程度であるのが好ましい。
ストランド状発泡体を切断する長さが5mmを超えた場合には、やはり製造される予備発泡粒子の、キャビティ内への充てん性に問題を生じるおそれがある。
【0053】
一方、ストランド状発泡体を切断する長さが0.5mm未満では、切断時に潰れる気泡の割合が大きくなって、予備発泡粒子の型内発泡成形性が悪くなるおそれがある。
〈予備発泡粒子〉
かくして製造される予備発泡粒子の大きさは、キャビティ内への充てん性や型内発泡成形性等を考慮すると、平均粒径で表しておよそ0.5〜5mm程度が好ましい。
【0054】
また予備発泡粒子の平均気泡径は、およそ0.05〜0.8mm程度が好ましい。平均気泡径が上記の範囲未満では気泡壁が薄くなり過ぎて、型内発泡成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。一方、平均気泡径が上記の範囲を超えるものは気泡径が大きくなり過ぎて、発泡成形体の外観に悪影響を及ぼすおそれが生じる。なお予備発泡粒子の平均気泡径は、上記の範囲内でも特に0.1〜0.7mm程度であるのが好ましく、0.15〜0.6mm程度であるのがさらに好ましい。
【0055】
予備発泡粒子の嵩密度は、軽量で、しかも機械的強度、耐熱性、断熱性、緩衝性、耐薬品性などに優れた発泡成形体を得るために、0.01〜1.0g/cm3程度であるのが好ましい。
〈発泡成形体〉
上記予備発泡粒子を型内発泡成形することで、発泡成形体が製造される。
具体的には、型内発泡成形機を使用して、発泡成形用の雄型と雌型とを閉鎖して形成されたキャビティ内に上記の予備発泡粒子を充てんし、さらに加熱媒体としてスチーム等を導入して型内発泡成形することで、上記キャビティに対応した外形を有する発泡成形体が製造される。
【0056】
このときの加熱媒体としては、スチーム以外にも熱風などを使用することができるが、効率的に成形を行う上ではスチームが最も有効である。
具体的には、前記の予備発泡粒子をキャビティ内へ充てんした後、まず一方の金型から、例えばゲージ圧0.01〜0.15MPa程度のスチームを一定時間、キャビティ内へ吹き込んで、粒子間のエアーを外部へ排出するとともに予備発泡粒子を発泡させつつ、ある程度、粒子同士を融着させる(この際、他方の金型から真空引き操作を行ってもよい)。
【0057】
次いで両方の金型から、例えばゲージ圧0.02〜0.15MPa程度のスチームを吹き込んで発泡成形する、すなわち予備発泡粒子を発泡させるとともに粒子同士の融着を促進して、発泡成形体を製造する。
かくして製造される発泡成形体の融着率は、40〜100%であるのが好ましい。
融着率が40%未満では、発泡成形体の機械的強度が十分に得られないおそれがある。また粒子間に隙間を生じて、外観が悪化するおそれもある。
【0058】
融着率の上限は100%まで限定されない。融着率が100%のものは、外観や機械的強度などに最も優れた、良好な発泡成形体であるといえる。
融着率は、発泡成形体を折り曲げて厚み方向に破断させたのち、破断面に存在する全ての発泡粒子の個数と、そのうち粒子自体が材料破壊した発泡粒子の個数とを計数した結果から、次式によって求められる。
【0059】
【数2】
【0060】
なお発泡成形体の融着率は、上記の範囲内でも特に、60〜100%程度であるのがさらに好ましい。
さらに結晶化度を15%以上、特に20〜40%にまで向上させた発泡成形体は耐熱性にも優れたものとなり、寸法安定性にも優れている。
本発明の発泡成形体は、前述したような各種の用途で使用した後、リサイクルして再利用することが可能である。使用済みの発泡成形体を再利用することにより、資源の有効な再利用化とゴミの減量化にも貢献することができる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて、この発明の優れている点を具体的に説明する。
なお、製造された予備発泡粒子の結晶化ピーク温度、および結晶化度は、いずれも前述したようにJIS K7121所載の測定方法に準じて測定した結果より求めた。また発泡成形体の融着率も、前述した測定方法によって測定した。
【0062】
芳香族ポリエステル系樹脂におけるIPAユニット、およびCHDMユニットの含有割合は、それぞれ下記の方法で測定した。
(IPAユニットの含有割合の測定)
試料約100mgを耐圧テフロンカップ中に秤量後、和光純薬工業社製の吸光分析用ジメチルスルホキシド10mlと、5N水酸化ナトリウム−メタノール溶液6mlとを加えた後、上記耐圧テフロンカップをSUS製の耐圧加熱カップに入れて確実に密閉後、100℃で15時間加熱した。
【0063】
つぎに、加熱後の耐圧加熱カップを室温冷却し、完全に冷却した状態で、耐圧テフロンカップを取り出し、内容物を200mlビーカーに移して150ml程度まで蒸留水を加えた。
つぎに、内容物が完全に溶解したことを確認後、塩酸にてpH6.5〜7.5に中和し、中和後200mlまでメスアップしたものをさらに蒸留水で10倍に希釈して試料溶液とした。
【0064】
つぎにこの試料溶液と、イソフタル酸標準溶液とを用いて、高速液体クロマトグラフ(HPLC)装置にて下記の条件で測定を行った。イソフタル酸標準溶液としては、東京化成工業社製のイソフタル酸試薬を蒸留水で溶解したものを使用した。
装置:Waters HPLC LC−module1
カラム:GL社製 Inertsil ODS−2 5μm(4.6×250)
カラム温度:23±2℃
ポンプ温度:23±2℃
移動相:0.1%リン酸/アセトニトリル=80/20
流速:0.5ml/min
分析時間:50分
注入量:50μl
検出:UV−210nm
つぎに、標準溶液から得たイソフタル酸のピーク面積をX軸に、濃度をY軸にとって検量線を作成し、得られた検量線を使用して、試料溶液中のイソフタル酸の濃度(μg/ml)を算出した。
【0065】
そして上記濃度から、次式を使用して芳香族ポリエステル系樹脂中のIPAユニットの含有割合(重量%)を計算した。
【0066】
【数3】
【0067】
(CHDMユニットの含有割合の測定)
試料約100mgを耐圧テフロンカップ中に秤量後、和光純薬工業社製の吸光分析用ジメチルスルホキシド10mlと、5N水酸化ナトリウム−メタノール溶液6mlとを加えた後、上記耐圧テフロンカップをSUS製の耐圧加熱カップに入れて確実に密閉後、100℃で15時間加熱した。
つぎに、加熱後の耐圧加熱カップを室温冷却し、完全に冷却した状態で、耐圧テフロンカップを取り出し、内容物を100mlビーカーに移して70ml程度まで特級試薬メタノールを加えた。
【0068】
つぎに、内容物が完全に溶解したことを確認後、塩酸にてpH6.5〜7.5に中和し、中和後100mlまでメスアップしたものを特級試薬アセトンで10倍に希釈して試料溶液とした。
つぎにこの試料溶液と、1,4−シクロヘキサンジメタノール標準溶液とを、それぞれ別個に10ml遠沈管中に採取し、遠心分離しながら溶媒を蒸発乾固させた後、東京化成工業社製のTMS化剤0.2mlを加えて60℃で1時間、加熱した。
【0069】
そして加熱後の液を、ガスクロマトグラフ(GC)装置を用いて、下記の条件で測定した。
装置:Perkin Elmer GC AutoSystem
カラム:DB−5(0.25mmφ×30m×0.25μm)
オーブン温度:100℃(2分間)〜R1〜200℃〜R2〜320℃(5分間)
昇温速度:R1=10℃/分、R2=40℃/分
分析時間:20分間
注入温度:300℃
検出器:FID(300℃)
ガス圧力:18psi
つぎに、標準溶液から得た1,4−シクロヘキサンジメタノールのTMS化物のピーク面積をX軸に、濃度をY軸にとって検量線を作成し、得られた検量線を使用して、試料溶液中の1,4−シクロヘキサンジメタノールの濃度(μg/ml)を算出した。
【0070】
そして上記濃度から、次式を使用して芳香族ポリエステル系樹脂中のCHDMユニットの含有割合(重量%)を計算した。
【0071】
【数4】
【0072】
予備発泡粒子の嵩密度、および発泡成形体の密度は、下記の方法で測定した。
(密度の測定)
日本工業規格JIS K 6767に準拠して、次式により、予備発泡粒子の嵩密度、および発泡成形体の密度を求めた。
【0073】
【数5】
【0074】
下記の各実施例、比較例で使用した芳香族ポリエステル系樹脂の一覧を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1
芳香族ポリエステル系樹脂として、上記表1に記載のNo.1の樹脂25重量部、およびNo.2の樹脂75重量部と、ポリ四沸化エチレン樹脂を2重量%の割合で含有するポリエチレンテレフタレート樹脂マスターバッチ1重量部と、改質剤としてのピロメリット酸二無水物0.23重量部と、改質助剤としての炭酸ナトリウム0.03重量部とを押出機〔口径:65mm、L/D比:35〕に投入し、スクリューの回転数50rpm、バレル温度270〜290℃の条件で溶融、混合しながら、バレルの途中に接続した圧入管から、発泡剤としてのブタンを、混合物に対して1重量%の割合で圧入した。
【0077】
つぎに、溶融状態の混合物を、バレルの先端に接続したマルチノズルダイ〔直線上に、直径0.8mmのノズルが21個、配置されたもの〕の、各ノズルを通して押し出して発泡させながら、その発泡の途中にある段階で、水温を35℃に維持した水中に水没させて冷却した。ノズル金型の先端から押し出されて水中に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長は6mmに設定した。
そして、冷却されたストランド状発泡体(長径2.4mm)を十分に水切りしたのち、ぺレタイザーを用いて略円柱状に切断して予備発泡粒子を製造した。
【0078】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.15g/cm3、粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は4.0%、IPAユニットの含有割合は1.5重量%、結晶化ピーク温度は135.1℃であった。
上記の予備発泡粒子を、内法寸法300mm×400mm×20mmの発泡成形型内に充てんし、この型内に、1.2MPaのスチームを20秒間、次いで0.6MPaのスチームを10秒間、導入して予備発泡粒子を加熱膨張させると同時に融着させた。
【0079】
そして、この状態で120秒間、保熱したのち水冷して、上記型の内法寸法と同じ300mm×400mm×20mmの外形寸法を有する発泡成形体を製造した。
得られた発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.15g/cm3、融着率は70%と良好な融着性を示した。
実施例2
芳香族ポリエステル系樹脂として、前記No.2の樹脂を使用せず、かつNo.1の樹脂の量を100重量部、ピロメリット酸二無水物の量を0.25重量部とするとともに、水温を25℃、ノズル金型の先端から押し出されて水中に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長を4mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0080】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.16g/cm3、粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は2.7%、IPAユニットの含有割合は5.8重量%、結晶化ピーク温度は153.9℃であった。
また発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.16g/cm3、融着率は85%と良好な融着性を示した。
実施例3
芳香族ポリエステル系樹脂として前記No.3の樹脂100重量部を使用し、かつピロメリット酸二無水物の量を0.17重量部としたこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0081】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.15g/cm3、粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は1.8%、CHDMユニットの含有割合は0.9重量%、結晶化ピーク温度は136.7℃であった。
また発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.15g/cm3、融着率は80%と良好な融着性を示した。
実施例4
芳香族ポリエステル系樹脂として前記No.1の樹脂50重量部と、No.3の樹脂50重量部とを使用し、かつピロメリット酸二無水物の量を0.17重量部としたこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0082】
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.15g/cm3、粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は1.2%、IPAユニットの含有割合は2.9重量%、CHDMユニットの含有割合は0.5重量%、結晶化ピーク温度は145.5℃であった。
また発泡成形体は美麗な外観を有し、その密度は0.15g/cm3、融着率は85%と良好な融着性を示した。
【0083】
比較例1
芳香族ポリエステル系樹脂として前記No.2の樹脂100重量部を使用し、かつピロメリット酸二無水物の量を0.23重量部としたこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
得られた予備発泡粒子の嵩密度は0.15g/cm3、粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は9.7%、結晶化ピーク温度は127.4℃であった。
【0084】
また発泡成形体の密度は0.15g/cm3、融着率は35%と融着性に劣るものであった。
比較例2
ストランド状発泡体が発泡完了した後に水中に水没するように、ノズル金型の先端から押し出されて水中(水温35℃)に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長を10mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子、および発泡成形体を製造した。
【0085】
得られた予備発泡粒子は収縮が大きく、その嵩密度は0.18g/cm3であった。また粒径は1.8〜2.4mm、結晶化度は4.0%、IPAユニットの含有割合は1.5重量%、結晶化ピーク温度は135.2℃であった。
また発泡成形体は外観が悪く、その密度は0.18g/cm3、融着率は0%と融着性に劣るものであった。
比較例3
ストランド状発泡体が直ちに水中に水没するように、ノズル金型の先端から押し出されて水中(水温35℃)に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長を0mmに変更したこと以外は実施例1と同様にして予備発泡粒子を製造しようとしたが、発泡させることはできなかった。またそれゆえに、発泡成形体の製造は断念した。なお押出物の密度は1.3g/cm3、結晶化ピーク温度は135.3℃であった。
【0086】
以上の結果を表2にまとめた。
【0087】
【表2】
【0088】
【発明の効果】
以上、詳述したように本発明の予備発泡粒子の製造方法においては、所定の結晶化ピーク温度を有する芳香族ポリエステル系樹脂をノズル金型から押出発泡してストランド状発泡体を形成し、このストランド状発泡体を、発泡の途中にある段階で水中に水没させて冷却して、その結晶化度を1〜8%に制御している。
このため本発明の製造方法によれば、表面状態および気泡状態が良好で、外観および型内発泡成形性に優れる上、結晶化度が小さいために、型内発泡成形によって高強度でかつ外観の良好な発泡成形体を形成できる略円柱状の予備発泡粒子を、安定して製造することが可能となる。
Claims (4)
- 型内発泡成形に使用できる、結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲にある芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子を、次の(1)〜(3)の各工程を経て製造することを特徴とする芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
工程(1):ノズル金型を備えた押出機を使用して、芳香族ポリエステル系樹脂と発泡剤とを溶融混合した後、上記ノズル金型からストランド状に押出発泡する工程
工程(2):押し出されたストランド状発泡体を、発泡の途中にある段階で水中に水没させて冷却することで、その結晶化度を1〜8%に制御する工程
工程(3):冷却されたストランド状発泡体を切断する工程 - ノズル金型の先端から押し出されて水中に水没するまでの、ストランド状発泡体の露出長を3〜7mmの範囲に設定することを特徴とする請求項1記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
- 予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲となるようにあらかじめ調整された芳香族ポリエステル系樹脂を、押出発泡に使用することを特徴とする請求項1または2記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
- 予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130℃未満となる結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂と、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130℃以上となる結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂および非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂のうちの少なくとも一方とを、予備発泡粒子の結晶化ピーク温度が130〜180℃の範囲となるように、押出機中で溶融混合することを特徴とする請求項1または2記載の芳香族ポリエステル系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
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