以下、この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、この発明の実施形態であるデジタルミキサを含むミキサシステムの構成について説明する。
図1はそのミキサシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、このミキサシステム1は、3台のデジタルミキサを接続して構成したものである。そして、そのうち1台は操作パネル100を有するデジタルミキサ10であり、残りの2台は、操作パネルを有しないデジタルミキサ30である。これらの各デジタルミキサ10,30は、それぞれ単独でデジタルミキサとして動作させるに十分な信号処理機能を持っているが、互いに接続してミキサシステム1を形成させることにより、連携して動作させ、協同的に、単体の場合よりも大規模な信号処理を行わせることができる。
ここで、まずデジタルミキサ10の構成について説明する。
図1に示すように、デジタルミキサ10は、CPU11,フラッシュメモリ12,RAM13,外部機器入出力部(I/O)14,波形I/O15,信号処理部(DSP)16,カスケードI/O17,操作パネル100を備え、これらがシステムバス18によって接続されている。そして、複数の入力ポートから入力する音響信号に対し、複数の入力チャンネル(ch)を始めとする信号処理要素で種々の信号処理を施して出力する機能を有する。
そして、CPU11は、このデジタルミキサ10の動作を統括制御する制御手段であり、フラッシュメモリ12に記憶された所要の制御プログラムを実行することにより、外部機器I/O14,波形I/O15及びカスケードI/O17における通信の制御、操作パネル100における操作検出や表示の制御、DSP16における信号処理に使用するパラメータの値の設定/変更といった処理を行う。
フラッシュメモリ12は、CPU11が実行する制御プログラム等を記憶する書き換え可能な不揮発性記憶手段である。
RAM13は、一時的に記憶すべきデータを記憶したり、CPU11のワークメモリとして使用したりする記憶手段である。
外部機器I/O14は、種々の外部機器を接続し入出力を行うためのインタフェースであり、例えば外部のディスプレイ、マウス、文字入力用のキーボード、操作パネル等を接続するためのインタフェースが用意される。そして、本体の表示器や操作子をごく単純な構成にしたとしても、これらの外部機器を活用することによりパラメータの変更/設定や動作指示を行うことができるようにすることも考えられる。
さらに、パーソナルコンピュータ(PC)等の制御装置と通信を行うためのインタフェースとして、USB(Universal Serial Bus)方式のインタフェースや、イーサネット(登録商標)による通信を行うためのインタフェース等を設けてもよい。
波形I/O15は、DSP16で処理すべき音響信号の入力を受け付け、また処理後の音響信号を出力するためのインタフェースである。そして、この波形I/O15には、A/D変換回路を備えたアナログ入力端子,D/A変換回路を備えたアナログ出力端子,デジタル入出力用のデジタル入力端子及びデジタル出力端子を適宜組み合わせて複数設けている。拡張用のボードにより、端子数を増加させることも可能である。また、図示はしていないが、波形I/O15には、デジタルミキサ10の操作者がDSP16で処理中の信号をモニタするために用いる操作者用モニタ出力端子も設けている。
DSP16は、信号処理回路を含み、波形I/O15から入力する音響信号に対し、カレントメモリに記憶してある各種パラメータの値に従って、ミキシング、イコライジング等の各種信号処理を施して波形I/O15に出力する信号処理手段である。カレントメモリの記憶領域は、RAM13あるいはDSP16自身に備えるメモリに用意することが考えられる。信号処理の具体的な内容については、後に詳述する。
カスケードI/O17は、デジタルミキサを複数カスケード接続して使用する際に、他のデジタルミキサとの間で、音響信号や制御信号の授受を行うためのインタフェースであり、カスケード接続手段である。
このカスケードI/O17には、上流側のデジタルミキサと接続するための端子と、下流側のデジタルミキサと接続するための端子を設けており、複数のデジタルミキサをカスケード接続する場合、その接続は、方向性を有する直線的な接続となる。そして、直接接続されている装置間では、複数ch(ここでは32ch)の音響信号と、コマンドやレスポンス等の制御信号の、双方向の送受信を行うことができる。直接接続されていない装置に対してこれらの信号を送信する場合には、直接は送信できないため、間に接続されている装置に順に送信を中継させる。
操作パネル100は、表示器101,電動フェーダ102,操作子103を有し、パラメータの設定やモードの変更等に関するユーザからの指示を受け付けたり、ミキサシステム1を構成する各デジタルミキサの動作状況や設定内容、あるいは操作を受け付けるためのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)等を表示するためのユーザインタフェースである。
このうち、表示器101は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や発光ダイオード(LED)等によって構成することができる。操作子の裏側にLEDを配置したり、LCDにタッチパネルを積層したりして、表示器101と操作子103を兼ねるような構成とすることも可能である。
電動フェーダ102は、つまみの位置を移動させる駆動手段を設けたスライダ操作子であり、CPU11からの制御により、ユーザの操作がなくてもつまみを操作可能範囲中の任意の位置に移動させることができる。
操作子103は、ユーザの操作を受け付けるため電動フェーダ102以外の操作子であり、種々のキー、ボタン、ダイヤル、スライダ等によって構成することができる。また、表示器101を構成するLCDにタッチパネルを積層して構成してもよい。
以上がデジタルミキサ10の構成である。
これに対し、デジタルミキサ30には、操作パネル100を設けておらず、代わりに電源ON/OFFやごく基本的な操作を受け付けるための簡単な構成の操作子31及び表示器32を設けている点が、デジタルミキサ10と異なる。そして、これに伴い、筐体のサイズや端子等の配置もデジタルミキサ10と異なるが、それ以外の、DSP16が備える信号処理機能や、各種I/Oが備える端子数、CPU11の処理能力等は、デジタルミキサ10と同じである。
すなわち、ミキサシステム1においては、デジタルミキサ30をデジタルミキサ10とカスケード接続して使用しているが、デジタルミキサ30は1つの独立したミキサであり、単独でユーザの操作を受け付け、それに従って信号処理を実行することができる。操作については、外部機器I/O14に他の機器を接続し、その機器からリモート制御すればよい。例えば、外部機器I/O14にPCを接続して、PCからのリモート制御によりデジタルミキサ30を操作したり、外部機器I/O14に、シーンリコール用の表示器やスイッチを備えるスイッチパネル、数チャンネル分の音量制御用フェーダを備えたフェーダパネル等の目的に応じた各種操作パネルを接続して、その操作パネルをデジタルミキサ30の操作に使用することが考えられる。
従って、信号処理の内容について説明する場合には、デジタルミキサ10とデジタルミキサ30を区別する必要はないので、以降の説明では基本的に、各デジタルミキサについて、図1にカッコ付きで示した#1〜#3の符号を用いる。
なお、ミキサシステム1においては、デジタルミキサ#1の操作パネル100を操作することにより、3台のデジタルミキサが信号処理に使用するパラメータの値を全て設定できるようにしている。そしてこのため、他の2台のデジタルミキサ#2,#3は、細かな操作を行うための多数の操作子や表示器は必要ないので、極めて簡単な操作子31や表示器32のみを設ければよく、サイズ、重量及びコストの低減を図ることができる。なお、DSP16における信号処理の構成については、全てのデジタルミキサで一致させることが、デジタルミキサ10とデジタルミキサ30との制御プログラムの共通化および簡単化、制御対象又は編集対象のデジタルミキサを切り替えた時の動作の継続性などの点で好ましいが、これに限られることはない。
次に、図2に、図1に示したミキサシステム1が実行する信号処理の概略構成を示す。
図2に示す信号処理は、基本的にはDSP16によって実現されるものであり、データの入出力に関する部分は、波形I/O15又はカスケードI/O17によって実現される。また、操作パネル100から延びる矢印は、デジタルミキサ#1に備える操作パネルから、3台のデジタルミキサでの信号処理に使用するパラメータの値を全て制御可能であることを示している。
各デジタルミキサは、図2に示すように、入力ポート41,入力パッチ42,入力ch43,ミキシングバス44,可変遅延45,カスケードONスイッチ46,カスケードバス51,52,加算器53,折り返しスイッチ54,セレクタ61,可変遅延62,出力ch63,出力パッチ64,出力ポート65を有する。
このうち、入力ポート41は、波形I/O15に、音響信号入力端子と対応させて設けられ、端子に接続されたケーブルから供給される音響信号を受け取るポートである。アナログ信号を受け取るアナログ入力ポートとデジタル信号を受け取るデジタル入力ポートとがあるが、ここではその違いは重要ではないので、まとめて入力ポート41として示している。
入力パッチ42は、入力ポート41で受け取った音響信号を、入力パッチデータによって指定された対応関係に従い、その音響信号の処理に用いる入力ch43に供給し、その入力ch43での信号処理を行わせる機能を有する。
入力ch43は、48ch設けられ、入力パッチ42によってパッチされたポートから入力する信号に対してリミッタ、コンプレッサ、イコライザ,フェーダ、パン等の信号処理要素により信号処理を行った後、24本のミキシングバス44それぞれに対して、処理後の信号をセンドレベル調整した上で送出する機能を有する。各入力ch43においては、ミキシングバス44の一本毎に、そのバスへの出力ON/OFFを設定可能である。
そして、各ミキシングバス44は、各入力ch43から入力する音響信号を混合して出力する機能を有する。
可変遅延45は、ミキシングバス44からの出力音響信号に対し、後述する所定時間の遅延を行う機能を有する。
カスケードONスイッチ46は、対応するミキシングバス44からカスケードバス51への出力ON/OFFを設定するスイッチであり、ミキシングバス毎にON/OFFを切り換えることができる。そして、これがONであれば、ミキシングバス44が出力した音響信号は、加算器53により、カスケードバス51に上流側(図で上側)のデジタルミキサから供給される音響信号に加算される。
カスケードバス51は、カスケードI/O17を介して接続される上流側のデジタルミキサから供給される音響信号に、加算器53での加算処理を行って、同じくカスケードI/O17を介して接続される下流側のデジタルミキサに送信するためのバスである。なお、カスケードバス51,52は、ミキシングバス44と同数の24系統設け、上流側のデジタルミキサの同系統のカスケードバス51から音響信号の供給を受けるが、何番目のミキシングバス44から出力された音響信号を何系統目のカスケードバス51に加算するかは、後述するように、ユーザが行った設定の内容に従って定める。また、最上流のデジタルミキサにおいては、カスケードバス51には上流側からの信号として無音の信号を入力する。
これらのカスケードバス51及び加算器53が、カスケードミックス手段である。
一方、カスケードバス52は、カスケードバス51とは逆向きに、下流側のデジタルミキサから供給される音響信号を、上流側のデジタルミキサに送信するためのバスである。このバスでは、特に信号の加工は行わない。またここでも、各デジタルミキサにおいて、カスケードバス52は、下流側の同系統のカスケードバス52から音響信号の供給を受ける。
このカスケードバス52が、カスケード出力手段である。
そして、折り返しスイッチ54は、カスケードバス51で処理中の音響信号を、同系統のカスケードバス52に供給するためのスイッチである。このスイッチは、カスケード接続の最下流のデジタルミキサ(ここではデジタルミキサ#1)でのみONされる。最下流のデジタルミキサでは、カスケードバス52に音響信号を供給してくるデジタルミキサはないため、カスケードバス52には、カスケードバス51からのみ音響信号が供給される。従って、カスケードバス52には、最上流のデジタルミキサ(ここではデジタルミキサ#3)から最下流のデジタルミキサまで、ミキシングバス44が出力する音響信号を順次加算器53で加算して得られた音響信号が供給され、この音響信号を最上流のデジタルミキサに向かって戻していくことになる。
また、カスケードバス52を通る音響信号は、セレクタ61に供給される。
セレクタ61は、各ミキシングバス44と対応させて24ユニット設けられ、ここには、対応するミキシングバス44から出力され、可変遅延45で遅延されただけの音響信号も供給される。なお、各系統のカスケードバス52を通る音響信号をどのセレクタ61に供給するかは、カスケードバス51への加算時とは逆の対応関係により、あるミキシングバス44から出力された信号が加算されている音響信号が、そのミキシングバス44と対応するセレクタ61に入力されるように定める。例えば、1番目のミキシングバス44の出力を3番目の系統のカスケードバス51に加算したのであれば、3番目の系統のカスケードバス52の音響信号を、1番目のミキシングバス44と対応する1番目のセレクタ61に入力する。
そして、セレクタ61は、カスケードONスイッチ46と連動し、これがONであればカスケードバス52から入力した信号を、OFFであればミキシングバス44から可変遅延45を介して入力した信号を選択する。前者の選択は、対応するミキシングバス44に関して、カスケードバス51,52を用いて他のデジタルミキサとの間でのミキシングを行う機能(「カスケードリンク」と呼ぶ)が有効である場合に行うものであり、そのミキシングがなされた信号を選択するものである。後者の選択は、カスケードリンク機能が無効である場合に行うものであり、ミキシングバス44から出力された状態のままの信号を選択するものである。
いずれの場合も、セレクタ61が選択した音響信号は、可変遅延62で遅延を行った後、対応する出力ch63へ供給される。可変遅延62での遅延は、可変遅延45での遅延と合わせ、後述するように、カスケードリンクの際に生じる伝送遅延を調整するためのものである。
また、出力ch63は、24本のミキシングバス44に対応して24ch設けられ、各出力ch63は、対応するバスから入力する音響信号に対してリミッタ、コンプレッサ、イコライザ、フェーダ等の信号処理要素により信号処理を行い、その処理後の音響信号を、出力パッチ64に出力する機能を有する。
出力パッチ64は、出力パッチデータによって指定された対応関係に従い、各出力ch63から出力される音響信号を、その音響信号の出力に用いる出力ポートに供給する機能を有する。
出力ポート65は、波形I/O15に、音響信号出力端子と対応させて設けられ、波形I/O15は、出力ポート65に供給される音響信号を、対応する音響信号出力端子に接続されたケーブルに対して出力する。そして、出力した音響信号は、ケーブルの反対側の接続相手がスピーカであれば発音に、レコーダであれば録音に、というように、接続相手の機器に応じた用途で利用される。
以上がミキサシステム1が実行する信号処理の概略構成である。ただし、ここでは、説明を簡単にするため、複数設けたバスやch間での機能の違いは問題にしなかった。しかし、機能の異なるバスやchを設けてもよい。例えば、入力ch43として、ST入力chや、図示しない内蔵エフェクタにより処理した音響信号を入力するためのchを設けることや、ミキシングバス44として、STバス、AUXバス、CUEバス等を設けることが考えられる。なお、この場合、可変遅延45,62,セレクタ61及び出力ch63も、各ミキシングバスに対応させて設ける。カスケードバス51,52は、ミキシングバスの種類毎に、ミキシングバスと同数設け、対応する種類のカスケードバスを1対1対応でミキシングバスに割り当てられるようにする。
また、図2に示した各部の機能は、ソフトウェアによって実現しても、ハードウェアによって実現してもよい。
次に、可変遅延45,62の機能について、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、カスケードバスに供給される音響信号の流れを示す図であり、図4は、カスケードリンクにより実現される機能を示す図である。
図2に示した各部の機能により、ミキサシステム1においては、図3に示すように、ミキシングバス44でミキシングした音響信号をカスケードバス51に供給し、カスケード接続の上流から下流まで順に、その供給される音響信号をカスケードバス51で加算することができる。そして、その加算後の音響信号を、カスケードバス52から各デジタルミキサの出力ch63に供給することができる。
そしてこのことにより、図4に示すように、ミキサシステム1を構成する各デジタルミキサ#1〜#3について、ミキシングバスを全て接続し、各ミキサの入力ch43で処理した音響信号を共通のミキシングバス44′に入力してミキシングしたかのような出力を得ることができる。
なお、図3に示した通り、カスケードバス51,52で処理中の音響信号を、隣接するデジタルミキサ間で伝送する際には、一定の伝送遅延が生じる。従って、各装置において、ミキシングバス44でミキシングした音響信号を単にカスケードバス51に供給してしまうと、タイミングのずれた信号を加算してしまうことになる。そこで、カスケードバス51への供給前に、可変遅延45により、最上流のデジタルミキサから自機までに生じる伝送遅延と同じだけの遅延を加えることにより、加算時のタイミングを合わせることができる。
また、出力時にも、単にカスケードバス52から供給される音響信号を出力してしまうと、伝送遅延分だけタイミングのずれた音響信号を出力してしまうことになる。そこで、可変遅延62により、カスケードバス52から供給される音響信号に、自機から最上流のデジタルミキサまでに生じる伝送遅延と同じだけの遅延を加えることにより、各デジタルミキサが出力する音響信号のタイミングを合わせることができる。
また、ミキシングバス44のうち任意のバスでミキシングした音響信号を、破線で示すように、カスケードバスを介さずに出力ch63に出力することも可能である。そして、この場合、出力音響信号には、伝送遅延が起こらないため、カスケードリンクを行った音響信号とは、タイミングがずれてしまうことも考えられる。そこで、図2には示していないが、このタイミングずれを調整するための可変遅延を、可変遅延45とセレクタ61の間に挿入してもよい。
次に、図5に、デジタルミキサ10が備える操作パネル100の構成を示す。
図5に示すとおり、操作パネル100には、種々の表示器や操作子を設けている。
このうち、入力chストリップ部110は、入力ch43における信号処理に用いるパラメータの値を編集するためのchストリップを設けた部分である。
なお、chストリップとは、1つのchに関するパラメータの値を編集するための操作子を集めた操作子群である。しかし、chストリップの操作子だけで1つのchの全てのパラメータを編集できる必要はないし、編集するパラメータの項目を割り当て可能なアサイナブル操作子を含んでいてもよい。
入力chストリップ部110には、このようなchストリップを16ch分設けてあり、そのそれぞれに入力chを割り当てることにより、その割り当てた入力chのパラメータを編集するための操作子として機能させることができる。
また、この割り当ての内容、すなわちchストリップと入力chとの対応関係は、入力chレイヤとして予め複数用意しておく。そして、その各入力chレイヤと対応するレイヤ選択スイッチ111を設け、レイヤ選択スイッチ111を操作することにより、操作したスイッチと対応する入力chレイヤを選択し、その入力chレイヤの内容に沿って、入力chストリップ部110の各chストリップに、入力chを割り当てることができる。
ここでは、16のchストリップに対し、それぞれ1〜16番目の入力chを割り当てる入力chレイヤと、17〜32番目の入力chを割り当てる入力chレイヤと、33〜48番目の入力chを割り当てる入力chレイヤとの、3つの入力chレイヤを用意している。そして、これらを適宜選択することにより、16のchストリップにより、48chの入力ch43に関するパラメータの値を編集することができる。
次に、出力chストリップ部120は、出力ch63における信号処理に用いるパラメータの値を編集するためのchストリップを8ch分設けた部分である。そして、この8つのchストリップに対し、それぞれ1〜8番目の出力chを割り当てる出力chレイヤと、9〜16番目の出力chを割り当てる出力chレイヤと、17〜24番目の出力chを割り当てる出力chレイヤとの、3つのレイヤを用意し、これらと対応するレイヤ選択スイッチ121により、出力chレイヤを選択できるようにしている。従って、8のchストリップにより、24chの出力ch63に関するパラメータの値を編集することができる。
なお、これらの入力chストリップ部110と出力chストリップ部120に関するレイヤの内容は固定であり、デジタルミキサ10のフラッシュメモリ12に記憶させておく。
一方、多用途chストリップ部130も、8ch分のchストリップを設けた部分であるが、そのchストリップに割り当てるchを定める多用途レイヤの内容は、ユーザが自由に編集することができる。
図6に、多用途chストリップ部130におけるchストリップの構成を示した。
この図に示すように、chストリップ160は、表示器161,ロータリーエンコーダ162,選択スイッチ163,オンスイッチ164,フェーダ操作子165,キュースイッチ166を有する。
このうち、表示器161は、複数色のバックライトを有する小型の液晶パネルであり、対応するchストリップに割り当てたch等を示す文字列を表示する表示手段である。この表示に使用する文字列は、後述するようにユーザが多用途レイヤの情報の一部として設定する。
また、表示器161においては、点灯させるバックライトの色により、chストリップ160にどのデジタルミキサのchが割り当てられているか、すなわち、chストリップ160の操作子を用いてどのデジタルミキサのパラメータを編集するかを表示することができる。例えば、デジタルミキサ#1が割り当てられていれば青色、#2であれば緑色、#3であれば赤色、特定のミキサでない場合には白色の点灯をバックライトに行わせることが考えられる。
ロータリーエンコーダ162及びフェーダ操作子165は、アサイナブル操作子であり、例えばパンをロータリーエンコーダ162に、フェーダをフェーダ操作子165に割り当てることが考えられる。そして、これらの割り当ては、図5に示したSW群145,148の操作子により行うことができる。また、フェーダ操作子165は図1の電動フェーダ102に相当する。
選択スイッチ163は、対応するchを選択し、選択ch操作部141の操作子による操作対象としたり、表示パネル143にそのchに関する情報を表示する画面を表示させたりするための操作子である。
オンスイッチ164は、対応するchにおける出力オンオフを設定するための操作子である。
キュースイッチ166は、対応するchで処理した音響信号の、モニタ用の信号を生成するためのCUEバスへの出力オンオフを設定するための操作子である。
なお、入力chストリップ部110や出力chストリップ部120等の他のchストリップ部に設けるchストリップの構成は、必ずしもこれと一致している必要はない。すなわち、chストリップ部毎に、chストリップに設ける操作子の数や種類が異なっていてもよい。
図5の説明に戻ると、レイヤ選択スイッチ131は、多用途chストリップ部130におけるchの割り当てに使用する多用途レイヤを選択するためのスイッチである。ここでは、ユーザが定義可能な6種類の多用途レイヤを選択するためのスイッチと、固定のDCAレイヤを選択するためのスイッチの、計7つのスイッチを設けている。
なお、多用途レイヤにより多用途chストリップ部130に割り当て可能なchや、多用途レイヤが含む情報は、入力chレイヤや出力chレイヤの場合よりも広範囲である。そして、それに伴って、レイヤ選択スイッチ131の操作に応じてデジタルミキサ10が行う処理は、多用途chストリップ部130のchストリップに対するchの割り当てだけではないが、この点については後に詳述する。
また、操作パネル100上の他の部分につき、選択ch操作部141は、図6に示した選択スイッチ163等により選択されたchに関する種々のパラメータの値を編集するための操作子を集めた部分である。
レベルメータ142は、DSP16のうちユーザが選択した部分において処理中の音響信号のレベルを表示する表示器である。
表示パネル143は、デジタルミキサ10の動作内容や、各デジタルミキサにおける設定内容を表示する画面や、ユーザからの指示を受け付けるためのGUI等を表示する表示器である。
機器選択スイッチ144は、操作パネル100上の操作子によりパラメータの値を編集したり、表示器により設定内容を表示したりするデジタルミキサ(以下、「編集対象機器」と呼ぶ)を、ミキサシステム1を構成するデジタルミキサ#1〜#3の中から選択するためのスイッチである。ここでは、各デジタルミキサ#1〜#3において、信号処理の構成は全く同じとしているため、設定可能なパラメータの項目も同じである。従って、機器選択スイッチ144の操作に応じ、各操作子により編集するchやパラメータの項目を変えずに、編集対象機器のみを変更することができる。
なお、多用途chストリップ部130及びST入力chストリップ部147の操作子については、機器選択スイッチ144の操作に応じた編集対象機器の切り替えは適用しないようにしている(多用途chストリップ部130においてDCAレイヤが選択されている場合には、例外的に適用するが、説明を簡単にするため、以下の説明では、特に記載のない限り、このケースは考慮しない)。また、カスケード接続可能なミキサは、機器選択スイッチ144の数には必ずしも制限されない。例えば、機器選択スイッチ144に一部のミキサを割り当て、残りのミキサは、SW群145,148の操作子で選択するようにしてもよい。
SW群145,148は、アサイナブル操作子への設定項目の割り当て、ST入力chストリップ部147やマスタストリップ部149に備えるchストリップへのchの割り当て、表示パネル143に表示させる画面の切り替え、表示パネル143に表示させるGUIに対する操作、及びその他デジタルミキサ10の全体的な設定を行うための操作子を集めた部分である。
シーン制御部146は、シーンの選択を行うためのアップダウンキー,選択したシーンのストア(保存)やリコール(読み出し)を指示するためのストアキーやリコールキーといった操作子を集めた部分である。ミキサシステム1においては、各デジタルミキサ毎に、そのデジタルミキサにおける信号処理に使用するパラメータの値のセットをシーンとして番号を付して保存するようにしており、ユーザの操作により、随時ストアやリコールを行うことができる。そして、ユーザの操作があった場合に、これらのストアやリコールを機器選択スイッチ144により選択されているミキサについて行うモードと、ミキサシステム1を構成する全てのデジタルミキサについて同時に行うモードとを設けている。
ST(ステレオ)入力chストリップ部147には、図2では図示を省略した、ステレオの音響信号を入力するためのST入力chにおける信号処理に用いるパラメータの値を編集するためのchストリップを2ch分設けている。また、デジタルミキサ10にはST入力chを4ch設けており、入力chストリップ部110等の場合と同様、レイヤ(ST入力レイヤ)により、各chストリップに、そのchストリップの操作子により編集するST入力chを割り当てることができる。
ただし、レイヤの選択を、専用のレイヤ選択操作子ではなく、表示パネル143に表示させるGUI上で行う点と、各レイヤにおいて、chストリップに割り当てるch番号だけでなく、編集対象機器も指定している点が、入力chストリップ部110の場合と異なる。ST入力chストリップ部147に関して用意してあるレイヤは、2つのchストリップに、デジタルミキサ#1の1,2番目のST入力chを割り当てるレイヤと、デジタルミキサ#1の3,4番目のST入力chを割り当てるレイヤと、デジタルミキサ#2の1,2番目のST入力chを割り当てるレイヤと、デジタルミキサ#2の3,4番目のST入力chを割り当てるレイヤと、デジタルミキサ#3の1,2番目のST入力chを割り当てるレイヤと、デジタルミキサ#3の3,4番目のST入力chを割り当てるレイヤとの、6つのレイヤである。
また、マスタストリップ部149には、図2では図示を省略した、STミキシングバスと対応するST出力chにおける信号処理に用いるパラメータの値を編集するためのchストリップを2ch分設けている。ST出力chの数は、2chであり、マスタストリップ部149のchストリップ数と同じであるので、レイヤによる割り当ては行う必要がない。ただし、chストリップによりどのミキサのパラメータを編集するかは、機器選択スイッチ144の操作に従って定められる。また、ST出力chには、LRに加えてCの出力chもあるため、各chストリップにつき、対応するST出力chのうち、LRとCのどちらのパラメータを編集するかも、別途選択することができる。
ミキサシステム1及びデジタルミキサ10において特徴的な点の1つは、以上のような操作パネル100に設けた操作子のうち、多用途chストリップ部130の機能及び、レイヤ選択スイッチ131により選択できる多用途レイヤの内容である。
図7に、この多用途レイヤの内容を設定するためのレイヤ設定画面の表示例を示す。
このレイヤ設定画面200は、GUIであり、操作パネル100上の所定の画面選択スイッチの操作に応じ表示パネル143に表示させる複数の画面のうちの1つである。そして、表示パネル143に表示されるそれら複数の画面では、それぞれ画面に応じたパラメータの値等を表示するが、以下に説明する各表示部201〜203,251〜256の表示については、画面間で共通のものとしている。
そして、レイヤ設定画面200において、画面表示部201は、デジタルミキサ10が有する階層的なGUIのうち、この画面の位置づけを表示する部分である。図の例は、この画面が、「UTILITY」カテゴリの「FADER ASSIGN」という名前の画面であることを示している。
また、接続機器表示部202には、現在デジタルミキサ10にカスケード接続されてミキサシステム1を構成している機器を表示する部分である。図の例は、#1〜#3の3台の機器がミキサシステム1を構成していることを示している。なお、どの機器にどの番号を割り当てるかは、ユーザが選択できるようにしても、自動で決定するようにしてもよい。ただし、ミキサシステム1全体を制御できる操作パネルを有するデジタルミキサを#1(第1番目)とすることが望ましい。
操作対象機器表示部203は、機器選択スイッチ144により選択されている編集対象機器を表示する部分である。図の例は、デジタルミキサ#1が選択されていることを示している。なお、この編集対象機器は、表示パネル143に表示される各種画面(もちろんレイヤ設定画面200も含む)の背景色としても表示し、ユーザに視認できるようにしている。例えば、編集対象機器がデジタルミキサ#1であれば背景色を青系のグレーにし、#2であれば緑系のグレー、#3であれば赤系のグレーにすることが考えられる。
シーン表示部204は、機器選択スイッチ144により選択されている編集対象機器において、現在編集中のシーンの番号及び名称を表示する部分である。図の例は、002番の、「Initial Data」という名称のシーンを編集中であることを示している。
レイヤ表示部210は、操作パネル100上のレイヤ選択スイッチ131と対応するボタンを表示する部分であり、また、レイヤ選択スイッチ131によりどの多用途レイヤが選択されているかの表示も行う。図の例は、ハッチングを付したボタンと対応する多用途レイヤAが選択されていることを示している。なお、レイヤ表示部210は、隣接する割り当て内容表示部220において、各行(図で横方向のセルの並び)の内容がどのレイヤに関する設定内容であるかを示す行見出しとしても機能している。また、選択されているレイヤの表示を、色,模様,濃度,枠囲い等の任意の方法で行ってよいことは、もちろんである。
割り当て内容表示部220は、各レイヤ選択スイッチ131と対応する多用途レイヤの内容を表示すると共に、その編集操作を受け付ける部分である。そして、項目表示部221が、多用途レイヤ中で設定可能な項目を示す列見出しであり、内容表示部222が、レイヤの設定内容を表示する部分である。列は、図で縦方向のセルの並びである。
多用途レイヤ中で設定可能な項目には、まず、多用途chストリップ部130の8ch分のchストリップへのch等の割り当ての指定がある。これは、項目表示部221に「1」〜「8」で示す列に設定する内容であり、割り当て可能なものには、例えば、図2に示した入力ch43及び出力ch63,それ以外のchであるST入力ch,ST出力ch及びモニタ出力chが挙げられる。さらには、ch以外にも、複数のフェーダをグループ化して信号レベルを調整するための8つのDCAグループのように、直接対応する信号処理要素がないような設定項目を割り当てることもできる。また、これ以外にも、デジタルミキサ10においてレベル調整が可能なあらゆる信号処理要素を割り当てることができる。
なお、以下の説明においては、説明を簡単にするため、特に断らない限り、chストリップに割り当てる要素はchであるとして説明するが、他の要素を割り当てる場合でも、以下の説明は同様に当てはまるものである。
また、多用途レイヤによるchの割り当ては、ch番号だけでなく、ミキサシステム1を構成する機器の機器番号も指定して行うことができる。すなわち、多用途chストリップ部130のchストリップには、ミキサシステム1を構成する機器が有する、任意の機器の任意のchを割り当てることができる。そして、この割り当ては、機器選択スイッチ144の操作によって変更されることはない。
図7においては、「1」〜「8」で示す列には、chの割り当て内容を2段で表記しており、上段のうち、「#1」〜「#3」が、chストリップに割り当てるchを含む機器を、その右側の文字列がchストリップに割り当てるchの名称を示している。例えば、「#1 CH1」であれば、デジタルミキサ#1の1番目の入力chを割り当てることを示し、「#2 MIX5」であれば、デジタルミキサ#2の5番目の出力chを割り当てることを示す。また、「STx」はx番目のST入力chを、「DCAx」はx番目のDCAグループを示す。これらのchの名称については、固定的に定められたものであり、ユーザは変更できない。
また、「1」〜「8」で示す列の下段に示すのは、レイヤに従ってchを割り当てたchストリップの表示器161において、割り当て内容の表示に用いる文字列である。この文字列は、ユーザが自由に設定することができ、例えば、割り当てたchの名称や用途がわかるような内容とするとよい。文字数は、表示器のサイズの制約により、この例では4文字までとしている。
また、多用途レイヤの情報として、多用途レイヤの選択時に同時に指定する編集対象機器(M_ID),入力chレイヤ(IN),出力chレイヤ(OUT),およびST入力レイヤ(STIN)も設定することができる。
デジタルミキサ10においては、ユーザがレイヤ選択スイッチ131において多用途レイヤを選択した場合、割り当て内容表示部220に「1」〜「8」で示される内容に従ってchを多用途chストリップ部130のchストリップに割り当てる他、この割り当てと同時に、「M_ID」,「IN」,「OUT」で示す内容に従って、編集対象機器,入力chレイヤ及び出力chレイヤを選択することができる。
この選択は、機器選択スイッチ144や、レイヤ選択スイッチ111,121を操作して行う選択と同等のものである。
また、「STIN」で示す内容に従って、ST入力レイヤを選択することができる。この選択は、表示パネル143に表示させるGUIを操作して行う選択と同等のものである。
しかし、多用途レイヤの選択に応じて行われる編集対象機器や他のレイヤの選択は、多用途レイヤの選択後、機器選択スイッチ144やレイヤ選択スイッチ111,121等を操作することにより、多用途レイヤと関係なく変更可能である。
「M_ID」,「IN」,「OUT」,「STIN」の項目に設定するのは、この機能により選択する機器又はレイヤの指定である。そして、「M_ID」の列には、選択すべき機器名により設定内容を表示している。「IN」,「OUT」,「STIN」の列には、選択すべきレイヤで割り当てるchの番号により設定内容を表示している。
また、以上の、項目表示部221に示される各項目については、何らかの具体的な割り当て内容だけでなく、「現状維持」を指定することも可能である。図では、この指定を行った箇所を、「―――」で示している。そして、デジタルミキサ10は、多用途レイヤが選択されても、選択された多用途レイヤで「現状維持」が指定されている項目については、chストリップへのchの割り当て内容や、操作対象機器及び入力chレイヤ等の状態について、多用途レイヤの選択前の内容を維持する。
さらに、「1」〜「8」については、chストリップにchを割り当てない旨の指定を行うことも可能である。図では、この指定を行っている箇所を、「N/A」で示している。そして、デジタルミキサ10は、多用途レイヤが選択された場合、chを割り当てない旨の指定がなされているchストリップには、どのchも割り当てない。そして、chの割り当てがないchストリップの操作子が操作された場合には、当然ながら、その操作に応じては何らかのパラメータの値を変化させることはない。
以上のような割り当て内容表示部220に表示する設定内容は全て、SW群145,148により編集可能である。なお、「DCA」のボタンと対応するDCAレイヤは、多用途chストリップ部130を、DCAグループのレベルを設定するための操作子として使用する場合に選択すべきレイヤである。このレイヤは、多用途レイヤの1つであるものの、他の多用途レイヤとは性格が異なるものである。そして、このレイヤは、8つのchストリップにそれぞれ1番目から8番目のDCAグループを割り当て、その他の項目は「現状維持」とする内容で固定としているため、内容表示部222には、このレイヤの内容を表示及び設定するためのセルは用意していない。
また、内容表示部222にも、レイヤ表示部210と同様、現在選択されているレイヤを示す表示を行っており、図の例は、ハッチングを付した行と対応する多用途レイヤAが選択されていることを示している。
また、レイヤ設定画面200のうち、フェーダ表示部231は、項目表示部221の「1」〜「8」の列と対応して設けられたものである。そして、多用途chストリップ部130の、各列と対応するchストリップにつき、そのchストリップに含まれるフェーダ操作子165におけるつまみの位置を表示する。この表示は、フェーダ操作子165の操作に応じて更新される。また、フェーダ表示部231の下側には、割り当てch表示部232を設け、対応するchストリップに割り当てられたchを示す情報を、内容表示部222において設定されている表示用の文字列を用いて表示している。
マスタ機能表示部240は、マスタストリップ部149の2つのchストリップにより、各ST出力chについてLRとCのどちらのパラメータを編集するかを表示する部分である。
また、選択ch表示部251は、chストリップに備える選択スイッチ等により選択されているchの情報を表示する部分である。
ノブ&フェーダ機能表示部252は、多用途chストリップ部130のchストリップに備えるロータリーエンコーダ162及びフェーダ操作子165に割り当てられている機能を表示する部分である。図で上側が、ロータリーエンコーダ162の機能、下側が、フェーダ操作子165の機能を示す。図の例は、ロータリーエンコーダ162に、1番目のミキシングバス44へにセンドレベル、フェーダ操作子165に、chフェーダが割り当てられていることを示している。
入力chレイヤ表示部253は、現在選択されている入力chレイヤを、入力chストリップ部110に割り当てる入力chの番号により表示する部分である。図の例は、33〜48番目の入力chを割り当てる入力chレイヤが選択されていることを示している。
出力chレイヤ表示部254は、現在選択されている出力chレイヤを、出力chストリップ部120に割り当てる出力chの番号により表示する部分である。図の例は、9〜16番目の出力chを割り当てる出力chレイヤが選択されていることを示している。
多用途レイヤ表示部255は、現在選択されている多用途レイヤを表示する部分である。図の例は、多用途レイヤAが選択されていることを示している。
ST入力レイヤ表示部256は、現在選択されているST入力レイヤを、ST入力chストリップ部147に割り当てる機器及びST入力chの番号により表示する部分である。図の例は、デジタルミキサ#1の1,2番目のST入力chを割り当てるST入力レイヤが選択されていることを示している。
各レイヤ表示部253〜256の表示は、対応するレイヤが新たに選択された場合には変更する。多用途レイヤの選択に応じて入力chレイヤ等の選択が行われた場合にも、この変更は行う。
ミキサシステム1のユーザは、以上のようなレイヤ設定画面200により、種々の設定内容を参照しながら、多用途レイヤの内容を設定することができる。その設定内容であるレイヤ情報は、カレントデータの一部としてカレントメモリに記憶され、シーンが保存される際には、シーンの一部として保存される。
また、レイヤ情報は、操作パネル100を有するデジタルミキサ#1のカレントメモリにのみ記憶されていれば足りる。しかしここでは、他のデジタルミキサでも、デジタルミキサ#1とカスケード接続せずに単独で信号処理を実行できるようにしている。そしてこのため、ミキサシステム1を構成する全てのデジタルミキサ#1〜#3に、同じ形式のカレントメモリを設けて。従って、レイヤ情報も全てのデジタルミキサ#1〜#3に記憶させるようにしている。従って、ミキサ毎に異なるシーンをリコールした場合には、ミキサ間でレイヤ情報が相違することも考えられる。
しかし、例えば、ミキサシステム1を動作させる場合に、操作パネル100を有するミキサをマスタ装置に指定し、各ミキサが記憶するレイヤ情報を、常にそのマスタ装置が記憶するレイヤ情報に合わせることにより、相違による不具合が起こらないようにすることができる。
ところで、ミキサシステム1及びデジタルミキサ10において特徴的な点の別の1つは、図2乃至図4を用いて説明したカスケードリンク機能及び、そのカスケードリンクを行う場合に、同系統のカスケードバス52から音響信号が供給される出力ch間でパラメータをリンクさせる出力chリンク機能である。
図8に、このカスケードリンク及び出力chリンクに関する設定を受け付けるためのカスケードリンク設定画面の表示例を示す。
この図に示すカスケードリンク設定画面300は、表示パネル143に表示させるGUIである。ただし、図には、表示パネル143に表示される画面のうち、図7に示した表示部201〜203及び251〜256に相当する表示に挟まれた部分の表示内容のみを示している。
このカスケードリンク設定画面300は、カスケード系統表示部310,出力chリンク設定ボタン320,バス設定部330,カスケードリンク設定ボタン340,機器選択ボタン350を備えている。
そして、カスケード系統表示部310は、図2に示したカスケードバス51,52の系統を示しており、カスケードリンク設定画面300では、その系統毎に、出力chリンク設定ボタン320,バス設定部330,カスケードリンク設定ボタン340による設定を受け付ける。
このうち、バス設定部330は、各系統のカスケードバス51,52につき、そのバスに出力音響信号を加算させるミキシングバス44を設定する部分である。1つの系統には、1つのミキシングバス44しか設定できないし、1つのミキシングバス44は、1つの系統にしか設定できない。従って、系統とミキシングバス44とは、基本的には1対1対応となる。また、この設定は、カスケードバス51,52の各系統に対して出力元のミキシングバス44を設定すると考えることも、各ミキシングバス44に対して出力先のカスケードバス51,52の系統を設定すると考えることもできる。
なお、必ずしも全ての系統についてミキシングバス44を設定する必要はない(図のMX11とMX12の系統を参照)。そして、どの系統にも設定されていないミキシングバス44でミキシングした音響信号は、カスケードバス51には加算せず、そのまま対応する出力ch63に供給することになる。
カスケードリンク設定ボタン340は、バス設定部330に設定したミキシングバス44と対応するカスケードONスイッチ46のオンオフ、すなわち、ミキシングバス44からカスケードバス51への音響信号の加算を行うか否かを設定するためのボタンである。ミキシングバス44が設定されていない系統については、カスケードリンクは常にオフとする。
なお、バス設定部330及びカスケードリンク設定ボタン340による設定は、ミキサ毎に行うことができる。機器選択ボタン350が、設定を行うミキサを選択するためのボタンであり、このボタンが操作された場合、バス設定部330及びカスケードリンク設定ボタン340の表示は、新たに選択されたミキサにおける設定内容を示すものに更新される。図の例は、ハッチングを付したボタンにより選択したデジタルミキサ#2に関するパラメータの設定を行っていることを示している。
また、出力chリンク設定ボタン320は、各系統のカスケードバス52につき、ミキサシステム1内でそのカスケードバス52から音響信号が供給される出力ch63同士のパラメータの値を互いに同一の値に保つ(リンクさせる)出力chリンクを行うか否かを設定するためのボタンである。なお、出力chリンクのオンオフは、全てのミキサについて共通の設定であり、機器選択ボタン350によりミキサの選択が変更されても、出力chリンク設定ボタン320の表示は変化しない。
ミキサシステム1においては、このように、同じカスケードバス52から音響信号が供給されるという基準でパラメータの値をリンクさせる出力chを設定することができるようにしているため、1つのカスケードバス52から、同じ音響信号が、ミキサによって異なる番号の出力chに供給される場合でも、それらの出力chのパラメータを簡単な操作でリンクさせることができる。そして、このようなリンクを行うと、同じ音響信号が供給される出力ch63が、同じパラメータの値を用いて信号処理を行うため、これらの出力ch63から、全く同じ出力音響信号を得ることができる。
ミキサシステム1においては、ミキサ毎に、異なる番号のミキシングバス44が出力した音響信号を1系統のカスケードバス51で加算することができるようにし、カスケードリンクの自由度を高めている。しかし一方で、加算結果も、ミキサ毎に異なる番号の出力chに供給される場合があり、これらの出力ch間の対応関係が若干分かりづらい。
しかし、上記のように、同じカスケードバス52から音響信号が供給される出力chの範囲という基準でパラメータの値をリンクさせる出力chを設定することができるようにしているため、1系統のカスケードバス52が出力する音響信号がミキサ毎に異なる番号の出力chに供給される場合でも、同じ音響信号が供給される出力ch間のリンクを容易かつ適切に設定することができる。
なお、以上の趣旨から、出力chリンクがオンの系統を設定したミキシングバス44と対応する出力ch63であっても、カスケードリンクがオフに設定されているミキシングバス44と対応する出力ch63については、パラメータの値のリンクを行わない。このような出力ch63には、カスケードバス52からの音響信号は供給されないため、リンクさせる意味がないからである。
また、図8に示したのは、モノラルの24本のミキシングバス44でミキシングした音響信号に関するカスケードリンクや出力chリンクの設定を受け付けるための画面である。STバスやAUXバス等の、他のバスについてもカスケードリンクや出力chリンクを行えるようにする場合には、これらのバスに関する設定を受け付けるための画面を用意し、バスの種類毎に、同じように設定を受け、ここで受け付けた設定内容に従って、カスケードリンクや出力chリンクを実現するための処理を行えばよい。
ここで、図9に、カスケードリンク設定画面300で設定するデータの例を示す。
この図に示すように、カスケードリンク及び出力chリンクに関する設定内容としては、まず、カスケードバス51,52の各系統のID(LINE ID)に関しての、全ミキサに共通の設定である出力chリンクオンオフ(OUTPUT CH LINK)がある。また、ミキサ毎の設定として、その系統のカスケードバス51に音響信号を供給するミキシングバス44(BUS)のIDと、実際にカスケードバス51への音響信号の供給を行うか否か(CASCADE LINK)の設定がある。
これらのデータは、各デジタルミキサに共通のデータとしてカレントメモリに記憶させるが、シーンのストアやリコールの際に、シーンに含めて読み書きするのではなく、シーンとは別にストアやリコールができるようにしている。
また、例えば図9に示したデータがカレントメモリに記憶されている場合、MX1系統のカスケードバスに関する出力chリンクとしては、デジタルミキサ#1の5番目の出力chと、デジタルミキサ#2の3番目の出力chと、デジタルミキサ#3の1番目の出力chとをリンクさせることになる。この場合、これらのうち1つの出力chのパラメータの値が変更されると、他の2つの出力chのパラメータについても、自動的に同じ変更を行う。
また、MX2系統のカスケードバスに関する出力chリンクとしては、デジタルミキサ#2ではカスケードリンクがオフになっているため、デジタルミキサ#1の4番目の出力chと、デジタルミキサ#3の2番目の出力chのみをリンクさせる。MX3系統のカスケードバスについては、出力chリンクがオフになっているため、どの出力chについてもリンクは行わない。
また、出力chリンクを新たに開始する場合には、リンクする出力chのうちいずれかのchのパラメータを、リンク対象とする出力chにコピーしてからリンクを開始すればよい。例えば、最も番号の若いデジタルミキサの出力chのパラメータをコピーすることが考えられる。既に実行中のリンクに新たにリンク対象の出力chを追加する場合には、リンク実行中のいずれかの出力chのパラメータを、新たに追加する出力chにコピーすればよい。
ところで、ここまでの説明から明らかなように、ミキサシステム1においては、ユーザは、デジタルミキサ#1の操作パネル100を操作することにより、ミキサシステム1を構成する全てのデジタルミキサについて、そのデジタルミキサが信号処理に使用するパラメータの値を設定したり、シーンのストアやリコールを行わせたりすることができる。すなわち、ユーザは、デジタルミキサ#1を用いて、他のデジタルミキサ#2,#3をリモート制御することができる。
次に、このリモート制御を実現するための構成及び各デジタルミキサの動作について説明する。
図10は、このリモート制御機能について説明するための図である。
この図に示すように、ミキサシステム1において、デジタルミキサ#1には、まず、デジタルミキサ#1が信号処理に用いるパラメータの値を記憶するカレントメモリ81(81A)を設け、その内容を、フラッシュメモリ12に設けたシーンメモリ82にストアしたり、シーンメモリ82にストアしたシーンの内容をカレントメモリ81Aにリコールしたりすることができる。
また、カレントメモリ81Aの内容が変更された場合、デジタルミキサ#1はその内容を直ちに信号処理制御部83に供給し、信号処理制御部83が、変更後のパラメータの値に基づいてDSP16に設定すべき係数を求め、その係数を、DSP16の適当なレジスタに設定して、信号処理の内容に反映させる。従って、カレントメモリ81Aの内容は、リアルタイムでDSP16における信号処理に反映される。
図11に、カレントメモリ81Aの内容が変化した場合にCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
CPU11は、カレントメモリ81Aの内容が変化した場合にこのステップS11,S12の処理を実行することにより、信号処理制御部83として機能する。
ここで、カレントメモリ81Aの内容をそのままDSP16に設定しないのは、DCAグループのレベルのように、他のパラメータの値に影響を与えるようなパラメータが存在するためである。
ミキサシステム1においては、各デジタルミキサが、以上のようなカレントメモリ81,シーンメモリ82及び信号処理制御部83を有し、単体で、シーンのストアやリコールを行うと共に、カレントメモリ81の内容をDSP16における信号処理に反映させることができる。
また、デジタルミキサ#1においては、操作パネル100からの操作により、カレントメモリ81の内容を変更したり、カレントメモリの81の内容を操作パネル100に表示させたりする機能を設けている。そして、自機のカレントメモリについては、このような動作を十分速やかに行うことができる。
しかしながら、デジタルミキサ#1から他のデジタルミキサ#2,#3のカレントメモリにアクセスする際には、データの伝送遅延が発生してしまう。そしてこのため、操作パネル100の操作に応じたデジタルミキサ#2,#3のカレントメモリ81の変更内容を、十分速やかに表示に反映させることが難しい。
そこで、デジタルミキサ#1にも、デジタルミキサ#2,#3が信号処理に用いるパラメータの値を記憶するカレントメモリ81B′,81C′を設け、操作パネル100の操作に応じたカレントメモリの内容変更は、一旦カレントメモリ81B′,81C′に対して行うようにした。そして、操作パネル100の表示も、カレントメモリ81B′,81C′の内容に基づいて行うようにした。
このような、デジタルミキサ#1によるカレントメモリ81B′,81C′へのアクセスは、カレントメモリ81Aへのアクセスの場合と単にメモリアドレスが異なるのみであるので、共通のプログラムを用いて行うことができる。従って、ユーザから見た操作感も、カレントメモリ81Aの内容を編集する場合と、カレントメモリ81B′,81C′の内容を編集する場合とで、同じものが得られる。
一方、カレントメモリ81B′,81C′に対してなされた変更は、デジタルミキサ#1側のカレント同期処理部85と、デジタルミキサ#2,#3側のカレント同期処理部86とにより、速やかにデジタルミキサ#2,#3に設けたカレントメモリ81B,81Cに反映させ、カレントメモリ81B′,81C′の内容と、カレントメモリ81B,81Cの内容とを一致させ、これらのメモリ間で記憶内容の同期を取るようにしている。そして、これに応じて、カレントメモリ81B′,81C′に対してなされた変更が、デジタルミキサ#2,#3における信号処理にも反映される。この反映には、伝送遅延分の遅れが生じることになるが、操作のリアルタイム性という観点では、表示の遅れほどには気にならないものである。
図12に、カレントメモリ81B′又は81C′の内容が変化した場合にデジタルミキサ#1及びデジタルミキサ#2又は#3のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、カレントメモリ81B′又81C′の内容が変化した場合に、図12の左側のフローチャートに示す処理を開始し、パラメータの変化内容を、変化のあったカレントメモリと対応するデジタルミキサと対応するデジタルミキサに通知する(S21)。
そして、この通知を受けたデジタルミキサ#2又は#3のCPU11は、図12の右側のフローチャートに示す処理を開始し、通知された変化を自機のカレントメモリに反映させて(S31)、通知元にレスポンスを送信する(S32)。そして、図11の処理の場合と同様、変化後のパラメータの値に応じた信号処理係数を求めて、DSP16に設定し(S33,S34)、処理を終了する。
一方、デジタルミキサ#1側では、ステップS21での通知先からレスポンスを受信するまで待機し(S22)、その後、受信したレスポンスがエラーレスポンスでなければ(S23)、処理を終了する。エラーレスポンスであった場合には、エラー処理を行って(S24)処理を終了する。
デジタルミキサ#1のCPU11は、以上の処理によりカレント同期処理部85として機能する。また、デジタルミキサ#2及び#3のCPU11は、以上の処理によりカレント同期処理部86及び信号処理制御部83として機能する。
次に、シーンのストア/リコールに関する処理について説明する。
例えば、デジタルミキサ#2でシーンをストアする場合には、単にデジタルミキサ#2側のカレントメモリ81Bの内容をデジタルミキサ#2のシーンメモリ82にストアすればよい。従って、デジタルミキサ#1側のカレントメモリ81B′の内容に手を加える必要はない。
しかし、デジタルミキサ#2でシーンをリコールする場合には、デジタルミキサ#1側のカレントメモリ81B′にも、リコールするシーンの内容をコピーする必要がある。そしてこの場合、リコールが指示された後でデジタルミキサ#2からデジタルミキサ#1へシーンのデータを転送するのでは、転送に時間がかかってしまう。
そこで、デジタルミキサ#1は、アップダウンボタン等により選択されたリコール候補のシーンを操作パネル100に表示する際に、その情報をデジタルミキサ#2に送信し、デジタルミキサ#2のシーンメモリ82からその表示したシーンのデータを読み出させてデジタルミキサ#1に転送させ、シーンバッファ84に格納することを行っている。そして、実際にリコール指示があった時点で、シーンバッファ84からカレントメモリ81B′にデータをコピーすれば、シーンのリコールを速やかに行うことができる。デジタルミキサ#2側のリコールは、リコール指示をデジタルミキサ#2に送信し、その指示に応じて行わせればよい。また、シーンバッファ84は、RAM13に設けることができる。
ミキサシステム1においては、各デジタルミキサに以上のような機能を設けたことにより、デジタルミキサ#1に備える操作パネル100を用いて、他のデジタルミキサ#2,#3の動作を快適にリモート制御することができる。
次に、以上説明してきた操作対象機器の選択、レイヤ選択、多用途レイヤの選択、レイヤを利用したパラメータの編集、出力chリンク等の機能を実現するためにCPU11が実行する処理について説明する。
表1に、以下に説明する処理で用いるレジスタ及びパラメータのうち、主要なもののリストを記載した。この表に示したレジスタ及びパラメータは、カレントメモリに記憶させるものであり、「機器毎独立」が「○」のものは、デジタルミキサ#1〜#3のそれぞれに関する値を、各機器のカレントメモリに別々に値を記憶させ、別々に参照する。「×」のものは、デジタルミキサ#1〜#3について共通の値をデジタルミキサ#1のカレントメモリに記憶させ、これを参照するが、カレントメモリの形式を共通にするため、デジタルミキサ#2,#3のカレントメモリにも、デジタルミキサ#1と同じ値を記憶させる。
まず、図13に、機器選択スイッチ144の操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、操作パネル100において機器選択スイッチ144の操作があると、図13のフローチャートに示す処理を開始する。そしてまず、対象機器レジスタTMに、操作されたスイッチと対応する操作対象機器の番号を設定する(S41)。その後、新たに設定したTMの値と、各ストリップ部において現在選択されているレイヤを示すレジスタの値とに基づき、入力chストリップ部110,出力chストリップ部120,マスタストリップ部149における表示及び操作子の位置と、表示パネル143における表示とを、TM番目の機器に関する内容に変更して(S42)、処理を終了する。
chストリップには、小型の表示器や、LED等により、割り当てられたch及び操作対象機器の情報や、パラメータの値を表示するものがあり、ステップS42で変更するのは、これらの表示器の表示である。また、ステップS42で位置を変更する操作子は、例えば電動フェーダ102のように、駆動手段を有し、つまみの位置をパラメータの値に合わせるべきものである。他のフローチャートに示す処理についても、chストリップ部における表示や操作子の位置の変更は、同様な意味合いのものである。
以上の図13の処理により、機器選択スイッチ144の操作に応じて操作対象機器を切り換えることができ、この処理において、CPU11はミキサ選択手段として機能する。
次に、図14に、入力chレイヤを選択するレイヤ選択スイッチ111の操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、レイヤ選択スイッチ111の操作があると、図14のフローチャートに示す処理を開始する。そしてまず、入力chレイヤレジスタILに、操作されたスイッチと対応する入力chレイヤの番号を設定する(S51)。
その後、新たに設定したILの値に基づき、入力chストリップ部110における表示及び操作子の位置と、表示パネル143における表示とを、新たに選択されたレイヤに関する内容に変更して(S52)、処理を終了する。
以上の処理により、レイヤ選択スイッチ111の操作に応じて第1のレイヤである入力chレイヤを切り換えることができ、この処理において、CPU11は第1のレイヤ選択手段として機能する。
次に、図15に、入力chストリップ部110のフェーダの操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、入力chストリップ部110においていずれかのchストリップのフェーダ(又はフェーダパラメータが割り当てられた操作子)が操作されると、図15のフローチャートに示す処理を開始する。
そしてまず、現在選択されているIL番目の入力chレイヤのレイヤ情報を参照し、そのレイヤにおいて、操作されたフェーダを含むchストリップに割り当てられている入力chの番号を、変数icに設定する(S61)。
その後、TM番目の機器用のカレントメモリにおける、ic番目の入力chのフェーダレベルIFL(ic)を、操作後のフェーダの位置をデシベルに換算した値Fvolに変更する(S62)。また、これに応じ、入力chストリップ部110及び表示パネル143における表示を、変更後のカレントメモリの内容に応じたものに変更する(S63)。
さらに、多用途chストリップ部130に、TM番目の機器のic番目の入力chが割り当てられているchストリップがある場合(S64)、このchストリップにおいても、ステップS62で変更したフェーダレベルが表示されていることが考えられるため、該当chストリップにおけるフェーダ操作子の位置を、変更後のカレントメモリの内容に応じたものに変更して(S65)、処理を終了する。ステップS64でNOであれば、そのまま処理を終了する。
以上の処理により、入力chストリップ部110のフェーダの操作に従い、選択されている入力chレイヤによりそのフェーダを含むchストリップに割り当てられる入力chのパラメータを編集することができる。フェーダ以外の操作子が操作された場合にも同様な編集が可能であることは、もちろんである。そして、この処理においては、CPU11がパラメータ編集手段として機能する。
なお、多用途chストリップ部130において、フェーダ操作子165にchフェーダ以外のパラメータが割り当てられており、操作子の位置や表示器等により、フェーダレベルの値の表示を行っていない場合には、ステップS64,S65の処理は行わなくてよい。以降のフローチャートに示す処理においても、同様なことが言える。
ところで、図15のステップS62の処理を行うと、その結果、カレントメモリの内容が変化するため、既に述べたように、CPU11は、これをトリガに図11又は図12の処理を実行し、変化後のカレントメモリの内容をDSP16における信号処理に反映させる。
ここで、図16に、図11のステップS11,S12及び図12のステップS33,S34に示した処理の具体例として、入力chのフェーダレベルの変化をDSP16における信号処理に反映させる処理のフローチャートを示す。
この処理は、パラメータの値を変更されたTM番目のデジタルミキサのCPU11が実行するものである。このCPU11は、自機のカレントメモリにおいて入力chのフェーダレベルIFL(ic)が変化したことを検出すると、図16のフローチャートに示す処理を開始する。
そして、まずIFL(ic)の値を音量レジスタvolに格納する(S71)と共に、カウンタdに1を設定する(S72)。その後、ic番目の入力chがd番目のDCAグループに属する場合に、volに、そのd番目のDCAグループのフェーダレベルDL(d)を加算する処理を、dを1ずつ増加させながら、d=1から8まで繰り返す(S73〜S76)。
なお、DL(d)は、デシベル値であり、マイナスの値も有り得る。また、DCAグループは、ミキサ毎に定義されるものである。そして、ステップS73〜S76の処理により、volの値を、入力chのフェーダレベルに各DCAグループのフェーダレベルを加味した値とすることができる。
そこで、次に、volの値に応じた乗算係数を求め、ic番目の入力chの信号処理に用いる値としてDSP16に設定し(S77)、処理を終了する。
以上の処理により、CPU11は、変化後のカレントメモリの内容をDSP16における信号処理に反映させることができる。
次に、図17に、出力chレイヤを選択するレイヤ選択スイッチ121の操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、レイヤ選択スイッチ121の操作があると、図17のフローチャートに示す処理を開始する。そしてまず、出力chレイヤレジスタOLに、操作されたスイッチと対応する出力chレイヤの番号を設定する(S81)。
その後、新たに設定したOLの値に基づき、出力chストリップ部120における表示及び操作子の位置と、表示パネル143における表示とを、新たに選択されたレイヤに関する内容に変更して(S82)、処理を終了する。
以上の処理により、レイヤ選択スイッチ121の操作に応じて第1のレイヤである出力chレイヤを切り換えることができ、この処理においても、CPU11は第1のレイヤ選択手段として機能する。
次に、図18及び図19に、出力chストリップ部110のフェーダの操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、出力chストリップ部120においていずれかのchストリップのフェーダ(又はフェーダパラメータが割り当てられた操作子)が操作されると、図18のフローチャートに示す処理を開始する。
そしてまず、現在選択されているOL番目の出力chレイヤのレイヤ情報を参照し、そのレイヤにおいて、操作されたフェーダを含むchストリップに割り当てられている出力chの番号を、変数ocに設定する(S91)。
その後、TM番目の機器用のカレントメモリにおける、oc番目の出力chのフェーダレベルOFL(oc)を、操作後のフェーダの位置をデシベルに換算した値Fvolに変更する(S92)。また、これに応じ、出力chストリップ部120及び表示パネル143における表示を、変更後のカレントメモリの内容に応じたものに変更する(S93)。
さらに、多用途chストリップ部130に、TM番目の機器のoc番目の出力chが割り当てられているchストリップがある場合(S94)、該当chストリップにおけるフェーダ操作子の位置を、変更後のカレントメモリの内容に応じたものに変更する(S95)。
ここまでの処理は、入力chと出力chとの違いはあるが、図15に示したものと同趣旨の処理である。そして、ステップS96以下の処理が、出力chリンク機能を実現するための処理である。
この部分の処理においては、まず、TM番目の機器のoc番目の出力chと対応するミキシングバスに設定された系統のカスケードバスにおいて、図8に示した画面で設定される出力chリンクがONであれば(S96)、変数LNに、その系統の番号を設定する(S97)。また、その後、TM番目の機器のoc番目の出力chと対応するミキシングバスについて、図8に示した画面で設定されるカスケードリンクがONであれば(S98)、ステップS92でのOFL(oc)の値の変更を、リンク対象の他の出力chにも反映させるべく、図19のステップS99の処理に進む。
一方、ステップS96でNOであれば、出力chリンクを行わない設定がなされているため、そのまま処理を終了する。また、ステップS98でNOであれば、今回フェーダレベルを変更した出力chには、カスケードリンクがされていない音響信号が入力していることがわかる。この場合も出力chリンクを行う必要がないため、そのまま処理を終了する。
次に、図19に示す部分の処理では、まず、変数TM′に、ミキサシステムを構成するデジタルミキサのうち、TMが示す編集対象機器以外の機器のいずれか1つの番号を設定する(S99)。後のステップS108で、編集対象機器以外の全ての機器の番号を順次TM′に設定することになるので、ここで設定するのは、どの機器の番号でもよい。例えば、候補の中で最も番号の小さいものとすればよい。
そして、TM′番目の機器において、ステップS97で設定したLN番目の系統が設定されているミキシングバスがあり(S100)、かつ、そのミキシングバスのカスケードリンクがONである場合(S101)、変数oc′に、そのミキシングバスと対応する出力chの番号を設定する(S102)。
この場合、TM番目の機器のoc番目の出力chと、TM′番目の機器のoc′番目の出力chとは、同じカスケードバスから同じ音響信号が供給される関係にあることになる。そこで、図18のステップS92で行った変更をTM′番目の機器のoc′番目の出力chのフェーダレベルOFL(oc′)にも反映して、これらのchにおけるパラメータの値を同一に保つべく、TM′番目の機器のカレントメモリにおいて、OFL(oc′)の値をステップS92と同じFvolに変更する(S103)。
その後、表示や操作子の位置について図18のステップS93乃至S95と同趣旨の変更を行う(S104〜S106)。そして、まだTM′の候補があれば、TM′に次の候補を設定し(S107,S108)、ステップS100に戻って処理を繰り返す。ステップS107でNOであれば、そのまま処理を終了する。
また、ステップS100又はS101でNOの場合には、TM′番目の機器においては、LN番目の系統のカスケードバスから出力chに音響信号が供給されることはないため、リンク対象の出力chもないことになる。そこで、直ちにステップS107に進み、まだTM′の候補があれば、TM′に次の候補を設定する。
以上の処理により、出力chストリップ部120のフェーダの操作に従い、選択されている出力chレイヤに応じた対応関係の出力chのパラメータを編集することができる。そして、このためのステップS91,S92の処理においては、CPU11がパラメータ編集手段として機能する。
また、あるデジタルミキサにおいてある出力chのパラメータの値を変更した場合に、他のデジタルミキサの出力chであって、上記ある出力chと同じカスケードバスから音響信号が供給される出力chのパラメータの値にも、同じ変更を行い、これらの出力chで信号処理内容を規定するパラメータを互いに同一の値に保つことができる。すなわち、図8及び図9を用いて説明した出力chリンク機能を実現できる。そして、このためのステップS96〜S103の処理においては、CPU11がパラメータリンク手段として機能する。
なお、ステップS92やS101の処理によりカレントメモリの内容が変化した場合、対応するデジタルミキサのCPU11は、図16と同趣旨の処理を行って、変化後の出力chのフェーダレベルにDCAグループの設定内容を加味した値をDSP16における信号処理に反映させるが、この処理の図示は省略する。
次に、図20,図21に、多用途レイヤを選択するレイヤ選択スイッチ131の操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、レイヤ選択スイッチ131の操作があると、図20のフローチャートに示す処理を開始する。
そしてまず、多用途レイヤレジスタfmに、操作されたスイッチと対応する多用途レイヤの番号を設定する(S111)。その後、図7に示したレイヤ設定画面200で設定された多用途レイヤのレイヤ情報を参照し、fm番目の多用途レイヤにおいて、操作対象機器の指定が現状維持でなければ(S112)、対象機器レジスタTMに、fm番目の多用途レイヤにおいて指定されている操作対象機器の番号を設定して(S113)、その番号の操作対象機器を選択する。また、ステップS112で操作対象機器の指定が現状維持であれば、対象機器レジスタTMの値、すなわ操作対象機器の選択内容を、変更せずに維持する。
どちらの場合も、次の処理に進む。そして、入力chレイヤ,出力chレイヤ,ST入力chレイヤのそれぞれの項目につき、fm番目の多用途レイヤにおいて現状維持が指定されていなければ、多用途レイヤでの指定内容に従って、入力chレイヤレジスタIL,出力chレイヤレジスタOL,ST入力chレイヤレジスタSILの値を設定し、各レイヤの選択を行う。また、現状維持が指定されていた場合には、その項目については、レイヤの選択を変更せずに維持する(S114〜S119)。
その後、図21のステップS121の処理に進み、変数iに1を設定する(S121)と共に、fm=7か否か判断する(S122)。なお、fm=7であるということは、レイヤ選択スイッチ131によりDCAレイヤが選択されたことを意味する。
そして、fm=7であれば、多用途chストリップ部130のi番目のフェーダによる操作対象機器を示すレジスタTM(i)に、現在設定されている操作対象機器を示すTMの値を設定すると共に、i番目のフェーダに対する割り当てchを示すレジスタTF(i)に、i番目のDCAグループのフェーダを示すID(識別情報)を設定する(S123)。
一方、fm=7でなければ、選択された多用途レイヤのレイヤ情報を参照し、fm番目の多用途レイヤにおいてi番目のフェーダに対するchの割り当てが現状維持であるか否か判断する(S124)。そして、現状維持でなければ、多用途chストリップ部130のi番目のフェーダによる操作対象機器を示すレジスタTM(i)と、i番目のフェーダに対する割り当てchを示すレジスタTF(i)に、それぞれfm番目の多用途レイヤにおいてi番目のフェーダ対して指定されている操作対象機器及び割り当てchのIDを設定する(S125)。また、現状維持であれば、i番目のフェーダにおける操作対象機器と割り当てchの設定内容を変更せずに維持する。
なお、ステップS123及びS125においてレジスタTF(i)に設定するIDとしては、多用途chストリップ部130のchストリップに割り当て可能なchやDCAグループ等の要素を全て一意に識別可能なものを用いる。レイヤ情報にも、割り当てchはこのIDにより記載しておくとよい。また、割り当てなしを示すIDも用意しておき、多用途レイヤでchを割り当てない旨が設定されている場合には、割り当てなしのIDをTF(i)に設定する。また、このTF(i)の内容が割当情報である。
そして、ステップS123及びS125の後は、iを1インクリメントし(S126)、iが8以下であれば(S127)、ステップS122に戻って処理を繰り返す。従って、ステップS121〜S127の処理により、多用途chストリップ部130の8つのchストリップについてそれぞれ、選択された多用途レイヤのレイヤ情報に基づき操作対象機器及びchの割り当てを設定することができる。
その後、ステップS127でNOになると、fmの値と、ここまでの処理で設定してきたレイヤ、操作対象機器及び割り当てchの情報とに基づき、入力chストリップ部110,出力chストリップ部120,多用途chストリップ部130,ST入力chストリップ部147,マスタストリップ部149における表示及び操作子の位置と、表示パネル143における表示とを更新し(S128)、処理を終了する。
以上の処理により、レイヤ選択スイッチ131の操作に応じて第2のレイヤである多用途レイヤを切り換えることができ、この処理において、CPU11は第2のレイヤ選択手段として機能する。また、CPU11は、操作対象機器の指定を行うステップS113においてはミキサ選択手段として機能し、他のchストリップ部におけるレイヤの選択を行うステップS115,S117,S119においてはレイヤ選択手段として機能する。
この場合において、レイヤ情報にて現状維持が指定されているchストリップについては、多用途レイヤを切り換えた場合でも、切り替え前のchの割り当てを維持することができる。また、レイヤ情報にてchを割り当てない旨が指定されているchストリップについては、いかなるchも割り当てないことができる。従って、レイヤを用いたchの割り当てに高い自由度を得ることができる。
また、多用途chストリップ部130のchストリップには、操作パネル100を有するデジタルミキサ#1が備えるchだけでなく、ミキサシステム1を構成する任意の機器の任意のchを割り当てることができる。従って、複数のミキサのパラメータを同時に編集する場合にも、高い操作性を得ることができる。
さらに、chの割り当てと同時に、操作パネル100による操作対象機器や、他のchストリップ部へのchの割り当てを示すレイヤの選択も行うことができる。もちろん、この選択についても現状維持が可能である。従って、多用途chストリップ部130に割り当てるchと関連の深いchを他のchストリップ部に割り当てる場合等、複数のセクションの操作子に対して同時にchの割り当てを行う場合に、高い操作性を得ることができる。
次に、図22及び図23に、多用途chストリップ部130のフェーダの操作があった場合にデジタルミキサ#1のCPU11が実行する処理のフローチャートを示す。
デジタルミキサ#1のCPU11は、多用途chストリップ部130においていずれかのchストリップのフェーダ(又はフェーダパラメータが割り当てられた操作子)が操作されると、図22のフローチャートに示す処理を開始する。
そしてまず、変数iに操作されたフェーダの番号を設定する(S131)。その後、TF(i)が示す対象、すなわち操作されたフェーダにより操作する対象を判定し(S132)、その対象の種類に応じた処理を行う。
まず、対象が入力chであった場合、変数icに、TF(i)が示す入力chの番号を設定する(S133)と共に、図15のステップS62乃至S65に示した入力フェーダレベル設定処理を行い(S134)、処理を終了する。この処理により、操作されたフェーダに割り当てられている入力chのフェーダレベルを、フェーダの操作に応じて変更すると共に、表示内容や操作子の位置を更新することができる。なお、i番目のフェーダによる操作対象機器は、レジスタTM(i)に設定してあるため、入力フェーダレベル設定処理では、TMに代えてTM(i)の値を用いる。
また、ステップS132で対象が出力chであった場合、変数ocに、TF(i)が示す出力chの番号を設定する(S135)と共に、図18,図19のステップS92乃至S108に示した出力フェーダレベル設定処理を行い(S136)、処理を終了する。この処理により、操作されたフェーダに割り当てられている出力ch及びこれとリンクする出力chのフェーダレベルを、フェーダの操作に応じて変更すると共に、表示内容や操作子の位置を更新することができる。なお、出力フェーダレベル設定処理においても、TMに代えてTM(i)の値を用いる。
また、ステップS132で割り当てなしであった場合は、フェーダの操作に応じたパラメータの値の変更は行わずに、処理を終了する。
また、ステップS132で対象がDCAグループであった場合には、図23のステップS141以下の処理を行う。
そして、まず変数dに、TF(i)が示すDCAグループの番号を設定する(S141)。その後、TM(i)番目の機器用のカレントメモリにおけるd番目のDCAグループのフェーダレベルDL(d)を、操作後のフェーダの位置をデシベルに換算した値Fvolに変更する(S142)と共に、多用途chストリップ部130及び表示パネル143における表示を、変更後のカレントメモリの内容に応じたものに変更する(S143)。
次に、d番目のDCAグループのカスケードリンクがONであるか否か判断する(S144)。ミキサシステム1において、DCAグループを機器毎に設けることは既に説明した通りであるが、DCAグループのカスケードリンクは、全ての機器で同じ番号のDCAグループのフェーダレベルを同じ値とする機能である。そして、カスケードリンクは、全ての機器について共通の設定であり、DCAグループ1つ毎にオンオフを設定することができる。
ステップS144でカスケードリンクONでなければ、他の項目についてパラメータの値を変更する必要はないため、図22に戻ってそのまま処理を終了する。しかし、ONであれば、ステップS145以下の、他の機器のDCAグループに関する設定の処理を行う。
この処理は、TM(i)が示す機器以外の機器を順次選択し(S145,S150,S151)、その各機器用のカレントメモリにおいて、d番目のDCAグループのフェーダレベルDL(d)の値を、ステップS142と同じFvolに設定するものである(S146)。また、表示パネルにおける表示の更新を行う(S147)と共に、多用途chストリップ部130のchストリップに、フェーダレベルを変更したDCAグループが割り当てられていた場合には、該当chストリップにおけるDCA操作子の位置の更新も行う(S148,S149)。
全ての機器についてこれらの処理が完了すると、処理はステップS150から図22に戻り、終了する。
また、図22のステップS132でその他の対象であった場合には、その対象に応じた処理を行って(S137)、操作されたフェーダに割り当てられている対象のフェーダレベルの変更や、それに応じた表示の更新等を行う。例えば、ST入力chや、ST出力ch、モニタ出力ch等が割り当てられている場合が、このケースに該当する。
以上の処理により、多用途chストリップ部130のフェーダの操作に従い、多用途レイヤに従ってそのフェーダを含むchストリップに割り当てられた対象のパラメータを編集することができる。そして、この処理においても、CPU11がパラメータ編集手段として機能する。
なお、ステップS142やS146の処理によりDCAグループのフェーダレベルを変化させた場合、そのDCAグループに属する全てのchについて、DSP16の信号処理に反映させるべき係数が変化することになる。従って、この場合、DCAグループのフェーダレベルを変化させた各デジタルミキサのCPU11は、そのDCAグループに属する全てのchについて、図16等に示した処理を行い、変更後のフェーダレベルの値に従った係数をDSPに設定し直す。
以上でこの実施形態の説明を終了するが、システムの構成、装置の構成、データの構成、具体的な処理内容等が、上述の実施形態で説明したものに限られないことはもちろんである。
例えば、各デジタルミキサに設けるchやバスの数,種類,機能等が、上述した実施形態のものに限定されないことは、もちろんである。操作パネルに設けるchストリップ部の数及び機能や、各chストリップ部に設けるchストリップの数についても、同様である。カスケードバスの本数についても、ミキシングバスの種類毎に、ミキシングバスと同じ本数だけ設ける例について説明したが、これに限られることはなく、ミキシングバスの本数より多かったり、少なかったりしてもよい。
また、ミキシングバスとカスケードバスの対応関係として、図8の画面等でユーザに設定させたものではなく、予め固定的に定めておいたものを使用してもよい。
また、入力chや出力chの数は、ミキサシステムを構成する必ずしも各デジタルミキサ間で全て共通である必要はない。
なお、あるミキサと別のミキサでch数が異なっていると、編集対象機器を切り替えた場合に、chストリップに割り当てられているchが切り替え後のミキサに存在しなかったり、選択中のレイヤが切り替え後のミキサに存在しなかったりすることも考えられる。しかし、存在しないchが割り当てられることになったり、存在しないレイヤが選択されることになったりしたchストリップ部については、chを割り当てない場合と同様、操作子の操作に応じたパラメータの値の変更を行わないようにすれば、特に動作に問題は生じない。また、存在しないchやレイヤの代わりに、編集対象機器に存在する別のchやレイヤを自動で選択したり、切り替え前のchやレイヤの選択を維持したりすることも考えられる。
また、同様な状況は、機器選択スイッチ144と対応する2台目や3台目のデジタルミキサが、操作パネル100を有するデジタルミキサとカスケード接続されていない場合にも起こり得る。しかし、この場合にも、編集対象機器の選択により、存在しないミキサのパラメータを操作に用いられることになった操作子について、操作子の操作に応じたパラメータの値を変更を行わないようにしたり、存在しない機器の代わりに、存在する別のミキサを編集対象機器として選択したり、存在しない機器が選択された場合に、編集対象機器を変更せずに元のまま維持したりすることが考えられる。
また、実施形態の説明において、ch等の番号という表現を用いたが、この「番号」は、特定のch等を、他の同機能のch等と識別できるものであればどのようなものでもよい。従って、「番号」に代えて、文字や記号等を含め、任意の識別情報を用いても、上述した実施形態で説明したものと同趣旨の処理が可能である。
また、出力chリンク機能につき、上述の実施形態では、出力chリンクのオンオフを、1系統毎に設定する例について説明した。しかし、複数系統を単位として、その複数の系統毎に出力chリンクを設定できるようにし、そのうちいずれかの系統のカスケードバスから音響信号を供給する出力chを、全てリンクさせるようにしてもよい。このような機能は、2つのモノラルバスをセットにしてステレオのLの信号とRの信号を処理させるような場合に、有効に活用することができる。
また、上述した実施形態で説明した種々の機能は、全て同時に設けず、1つずつ設けたとしても、その機能に特有の効果を発揮できるものである。
また、上述した実施形態では、デジタルミキサ3台を接続したミキサシステムについて説明したが、デジタルミキサを接続する台数は、これに限られない。また、ミキサシステムを構成するデジタルミキサ中に、操作パネルを有するものが複数あってもよい。また、例えば、ミキサシステムの操作に使用するデジタルミキサには大型で操作子の数が多い操作パネルを設け、その他のデジタルミキサには、単独で動作させる際に使用する、シーンリコール用操作子とパラメータ設定用の少数の増減操作子とを設けた簡単な操作パネルを設けることが考えられる。
また、単体のデジタルミキサ以外にも、ハードディスクレコーダ、電子楽器、カラオケ装置、音源装置、MIDI(Musical Instruments Digital Interface:登録商標)シーケンサ等の音響信号処理装置にミキサの機能を持たせたような装置を用いて上述したようなミキサシステムを構成してもよい。さらにミキサ間の接続も、カスケード接続でなく、イーサネット,IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)1394,USB等を用いたネットワーク接続であってもよい。
また、レイヤ情報は、デジタルミキサそのものを用いて編集する必要はなく、PC(パーソナルコンピュータ)等により編集して、デジタルミキサに設定できるようにすることも考えられる。
1…ミキサシステム、10,30(#1〜#3)…デジタルミキサ、11…CPU、12…フラッシュメモリ、13…RAM、14…外部機器I/O、15…波形I/O、16…DSP、17…カスケードI/O、44,44′…ミキシングバス、51,52…カスケードバス、63…出力ch、100…操作パネル、110…入力chストリップ部、111,121,131…レイヤ選択スイッチ、120…出力chストリップ部、130…多用途chストリップ部、143…表示パネル、144…機器選択スイッチ、160…chストリップ、200…レイヤ設定画面、300…カスケードリンク設定画面