以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の実施の形態であるディジタルミキサのハードウエア構成を示すブロック図である。中央処理装置(CPU)101は、このミキサ全体の動作を制御する処理装置である。フラッシュメモリ102は、CPU101が実行する各種のプログラムや各種のデータなどを格納した不揮発性メモリである。ランダムアクセスメモリ(RAM)103は、CPU101が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。表示器104は、このミキサの操作パネル上に設けられた各種の情報を表示するためのディスプレイである。電動フェーダ105は、操作パネル上に設けられたレベル設定用の操作子である。操作子106は、操作パネル上に設けられたユーザが操作するための各種の操作子(電動フェーダ以外のもの)である。波形入出力インターフェース(I/O)107は、外部機器との間で波形信号をやり取りするためのインターフェースである。信号処理部(DSP)108は、CPU101の指示に基づいて各種のマイクロプログラムを実行することにより、波形I/O107経由で入力した波形信号のミキシング処理、効果付与処理、および音量レベル制御処理などを行い、処理後の波形信号を波形I/O107経由で出力する。レコーダ109は、DSP108から入力した楽音信号を記録し、また、記録してある楽音信号を再生する。その他I/O110は、その他の機器を接続するためのインターフェースである。バス111は、これら各部を接続するバスラインであり、コントロールバス、データバス、およびアドレスバスを総称したものである。
図2は、図1のディジタルミキサの機能構成を示すブロック図である。201はマイクなどで入力したアナログ音響信号をディジタル信号に変換した入力を示す。202はディジタル音響信号の入力を示す。これらの入力は、それぞれ複数本(その本数は装置構成に応じた上限がある)設けることができる。入力パッチ203は、上述した入力のラインから、入力チャンネル(ch)204への任意結線を行う。その結線の設定は、ユーザが所定の画面を見ながら任意に行うことができる。入力ch204は、シングルで96chが設けられている。各入力ch204の信号は、16本のMIXバス205へ選択的に出力することができ、その送出レベルをそれぞれ独立に設定することができる。
MIXバス205の16本の各バスは、入力ch204から入力する信号をミキシングする。ミキシングされた信号は、そのMIXバスに対応する出力ch206(1〜16ch)に出力される。MIXバス205と出力ch206とは1対1の対応で各chが対応づけられている。出力ch206の出力は、出力パッチ207に入力する。出力パッチ207は、出力ch206からアナログ出力208またはディジタル出力209への任意の結線を行う。その結線の設定は、ユーザが所定の画面を見ながら任意に行うことができる。
図3(a)は、本実施形態のディジタルミキサの外部パネルの外観(一部)を示す。301,302は、各種の情報を表示するディスプレイ(図1の104)である。各ディスプレイ301,302の下側にchストリップ部(図1の105,106)が設けられている。左側のchストリップ部は8本のchストリップ303−1〜303−8からなり、右側のchストリップ部は8本のchストリップ304−1〜304−8からなる。1本のchストリップ、例えば303−1は、ロータリエンコーダ311,312、ONスイッチ313、SELスイッチ314、CUEスイッチ316、表示部317、および電動フェーダ318を備える。ロータリエンコーダ311は、上側の画面301に表示される内容に応じて機能が切り替わる操作子である。ロータリエンコーダ312は、各種のパラメータ調整用のロータリエンコーダであり、その外側にレベルメータとなるLEDを備えている。ONスイッチ313は、当該chストリップ303−1が割り当てられているchをオン/オフするスイッチである。SELスイッチ314は、当該chストリップ303−1に割り当てられているchを選択するときに使用するスイッチである。電動フェーダ318は、割り当てられているchのレベル調整用のフェーダである。
図1のRAM103には、カレントメモリが設けられている。カレントメモリは、本ディジタルミキサにおける各種のパラメータ(各信号処理チャンネルのパラメータも当然含まれる)の現在値を記録している。カレントメモリ上のパラメータのうち、DSP108における信号処理に関わるパラメータの現在値は、DSP108にも係数データとして設定されており、DSP108はそれらの現在値に基づいて各種の信号処理(ミキシング)を制御している。カレントメモリ上のパラメータ現在値は、電動フェーダやその他の操作子を使って変更することができる。すなわち、図3の各chストリップの操作子を操作すると、その操作子に該当するパラメータのカレントメモリ上の現在値がその操作内容に応じて書き替えられ、書き替えられた後の新しい現在値がDSP108へセットされ、DSP108における信号処理に反映される。また、カレントメモリには、chストリップごとに、割り当て情報記録領域と表ch記録領域が設けられている。割り当て情報記録領域は、現時点で実際に各chストリップに割り当てられているchを示す割り当て情報を記録する。表ch記録領域は、現時点で実際に各chストリップに表chとして設定されているchを示す表ch情報を記録する。表chについては後に詳しく説明する。
図3(b)は、本実施形態のディジタルミキサの外部パネル上に設けられているチャンネルキーおよびカスタムキーを示す。341は、1−16chを割り当てるためのチャンネルキーである。このキー341がオンされると、図3(a)の16本のchストリップ303−1〜303−8,304−1〜304−8は、左側から順に、入力chのうちのch1〜ch16が順に割り当てられる。具体的には、カレントメモリの割り当て情報記録領域に、chストリップ303−1〜303−8,304−1〜304−8にch1〜ch16が順に割り当てられた旨を示す割り当て情報が設定される。これにより、例えばchストリップ303−1のフェーダ318を操作すると、入力チャンネルch1のレベルが調整できる。チャンネルキー342〜346も同様のものであり、順に入力チャンネルのうちch17〜ch32、ch33〜ch48、ch49〜ch64、ch65〜ch80、およびch81〜ch96を割り当てるためのスイッチとなっている。チャンネルキー341〜346の操作による割り当てでは、1本のchストリップに1つのchが割り当てられる。
カスタムキー347,348(以下、カスタムキー1,2と呼ぶ)は、それぞれ、カスタムファイル1または2を読み出し、読み出したカスタムファイルに応じたchストリップの割り当てを行うためのキーである。カスタムファイルは、各chストリップにどのchを割り当てるかを示す割り当て情報を格納したファイルであり、フラッシュメモリ102にカスタムファイル1と2が格納されている。カスタムキー1または2のいずれかがオンされたとき、対応するカスタムファイル1または2が読み出され、カレントメモリの割り当て情報記録領域には、読み出したカスタムファイルに応じた割り当て情報が設定される。詳しくは後述するが、カスタムファイルを用いた割り当てでは、1本のchストリップに複数chを割り当てることが可能である。その場合、その1本のchストリップのフェーダを操作することで、割り当てられている複数chのレベルを一括して制御できることとなる。
図4および図5を参照して、カスタムファイルのエディット例について説明する。まず、カスタムファイルをエディットする前提としてのch定義の設定について説明する。
予め、入力ch1〜96は、8ch毎のブロック(ch1から順に8chずつ区切るものとする)に分けられている。ユーザは、各ブロック単位でch定義を指定することで、そのブロックに含まれる各chにch定義を設定することができる。設定できるch定義としては、「ノーマル」、「ステレオ」、および「サラウンド」がある。例えば、入力ch1〜8のブロックは「ノーマル」に、入力ch9〜16のブロックは「ステレオ」に、…というように8ch毎のブロックにch定義を指定する。なお、各chのch定義の設定の仕方は、任意である。ここでは、8chのブロック毎に指定しているが、個々のchに対して個別にch定義を設定する方式でもよい。設定した各chのch定義は、フラッシュメモリ102に格納する。ch定義として「サラウンド」が設定された場合は、後述する割当規則も設定されるが、その割当規則もch定義とともにフラッシュメモリ102に格納する。
「ノーマル」は、そのブロックの各chを通常の個別のchとして取り扱うことを意味する。「ステレオ」は、そのブロックの各chをch番号の昇順に2chずつのペアに分け、各ペアの2chをステレオLRのchとして使用することを意味する。「サラウンド」は、そのブロックの8chの先頭の6chを5.1chサラウンドに割り当てることを意味する。
例えば、図4では、ch1〜8のブロックが「ノーマル」に、ch9〜16のブロックが「ステレオ」に設定されている。付番401に示す縦線は、96chある各入力chの系列を示し、それらの縦線の上の数字がそれぞれのch番号を示している。ch9〜16のブロックのch定義が「ステレオ」であるので、ch9,10がステレオLRのペアに、ch11,12がステレオLRのペアに、…というように定義されている。また、図5では、ch1〜8、ch9〜16、およびch17〜24の各ブロックが「サラウンド」に設定されている。付番501に示す縦線は、96chある各入力chの系列を示し、それらの縦線の上の数字がそれぞれのch番号を示している。ch1〜8のブロックのch定義が「サラウンド」であるので、その8chのうちの先頭の6chが順に、サラウンドのL,R,C,Ls,Rs,LFEに設定されている。ch9〜16とch17〜24のブロックも同様である。なお、L,R,C,Ls,Rs,LFEは、5.1chサラウンドの前側左(L)、前側右(R)、センタ(C)、後側左(Ls)、後側右(Rs)、および重低音出力のウーハ(LFE)の各信号を表す。
ch定義が「ステレオ」に設定されているステレオLRのペアの2chのまとまり、および、ch定義が「サラウンド」に設定されている5.1chサラウンドのL,R,C,Ls,Rs,LFEの6chのまとまりを、それぞれ「グループ」と呼ぶ。また、「グループ」に属する各chを「グループ化」されたchと呼ぶ。例えば、図4のch9とch10が1つの「グループ」を構成し、ch11とch12が1つの「グループ」を構成している。また、図5のch1〜6、ch9〜14、およびch17〜22の各6chのまとまりはそれぞれが1つの「グループ」である。「ノーマル」が設定されたchは、グループを構成しない。
図5に示すようにch定義として「サラウンド」が設定された場合は、そのブロックに対する割当規則として「タイプ1」、「タイプ2」、または「タイプ3」の何れかをユーザに選択させるものとする。この割当規則については、後に詳しく説明する。
ユーザは、上述したように、全入力chにそれぞれch定義を設定し、その後、カスタムファイルをエディットする。カスタムファイルのエディットは、所定の操作でエディットモードに入り、16本のchストリップ303−1〜303−8と304−1〜304−8の中から1本を選択し、選択したchストリップに割り当てるchを選択することにより行う。エディットする対象のカスタムファイルは、カスタムキー1をオンしたときに使用するカスタムファイル1、およびカスタムキー2をオンしたときに使用するカスタムファイル2であり、これらはフラッシュメモリ102に格納されている。
図4において、点線の矢印411は、エディットモードにおいて、chストリップ303−1を選択し、割り当てるchとしてch1を選択した場合を示す。この場合、当該ch1のch定義は「ノーマル」であるので、そのchを個別にchストリップに割り当てる。従って、ch1がchストリップ303−1に割り当てられる。同様に、点線の矢印412のように、ch2がchストリップ303−2に割り当てられる。点線の矢印413は、chストリップ303−7を選択し、割り当てるchとしてch9またはch10の何れか1つを選択した場合を示す。いまch9を選択したとする。この場合、選択したch9のch定義は「ステレオ」であり、グループ化されたchであるので、そのグループに属するch、すなわち選択したchおよびそれとペアを組むchを一括して当該chストリップに割り当てる。従って、ch9とch10がchストリップ303−7に割り当てられる。ch9の代わりにch10が選択された場合も同様である。また、同様に点線の矢印414のように、ch11またはch12の何れかが選択されたときは、それらのch11とch12が一括してchストリップ303−8に割り当てられる。
いまカスタムファイル1をエディット対象として選択して、上記図4で説明した割り当てを行い、エディットモードを終了したとする。これにより、カスタムファイル1には、上記図4で説明した割り当ての情報が格納される。次に、ユーザがカスタムキー1をオンすると、カスタムファイル1に応じたchストリップの割り当てが実行される。これにより、カレントメモリの割り当て情報記録領域にはカスタムファイル1から読み出された割り当て情報が展開され、chストリップ303−1はch1に、chストリップ303−2はch2に、chストリップ303−7はch9,10に、chストリップ303−8はch11,12に、それぞれ割り当てられる。従って、chストリップ303−1のフェーダを操作することによりch1のレベルが変更でき、chストリップ303−7のフェーダを操作することによりch9,10のレベルが連動して変更できる。
図5において、点線の矢印511は、エディットモードにおいて、chストリップ303−1を選択し、割り当てるchとしてch1〜6の何れか1つを選択した場合を示す。いまch1を選択したとする。この場合、選択したch1のch定義は「サラウンド」であり、割当規則には「タイプ1」が設定されている。「タイプ1」は、5.1chサラウンドを構成するグループ化された6chを一括して1本のchストリップに割り当てることを指定する規則である。従って、選択したch1が属するグループの5.1chサラウンドの6chを一括して当該chストリップに割り当てる。これにより、ch1〜6がchストリップ303−1に割り当てられる。ch1の代わりにch2〜6の中の1つが選択された場合も同様である。
点線の矢印512,513は、chストリップ303−7を選択し、割り当てるchとしてch9〜14の何れか1つを選択した場合を示す。いまch9を選択したとする。この場合、選択したch9のch定義は「サラウンド」であり、割当規則には「タイプ2」が設定されている。「タイプ2」は、5.1chサラウンドを構成するグループ化された6chのうち、始めの5ch(すなわち、L,R,C,Ls,Rs)を一括して1本のchストリップに割り当て、残りの1ch(すなわち、LFE)を1本のchストリップに割り当てることを指定する規則である。従って、選択されたch9が属するグループの5.1chサラウンドの6chのうち、始めのch9〜13を一括してchストリップ303−7に割り当て(矢印512)、残りのch14をchストリップ303−8に割り当てる(矢印513)。ch9の代わりにch10〜14の中の1つが選択された場合も同様である。なお、タイプ2ではchストリップが2本必要であるから、選択されたchストリップが303−1〜303−7のときは、該選択されたchストリップとその右隣のchストリップを用いて、該選択されたchストリップに5.1chサラウンドの6chのうちの始めの5chを割り当て、その右隣のchストリップに残りの1chを割り当てるものとする。選択されたchストリップが303−8のときは、その左隣のchストリップに5.1chサラウンドの6chのうちの始めの5chを割り当て、選択されたchストリップ303−8に残りの1chを割り当てるものとする。chストリップ304側に割り当てる場合も同様である。
点線の矢印514〜517は、chストリップ304−1を選択し、割り当てるchとしてch17〜22の何れか1つを選択した場合を示す。いまch17を選択したとする。この場合、選択したch17のch定義は「サラウンド」であり、割当規則には「タイプ3」が設定されている。「タイプ3」は、5.1chサラウンドを構成するグループ化された6chのうち、始めの2ch(すなわち、L,R)を一括して1本のchストリップに割り当て、次の1ch(すなわち、C)を1本のchストリップに割り当て、次の2ch(すなわち、Ls,Rs)を一括して1本のchストリップに割り当て、最後の1ch(すなわち、LFE)を1本のchストリップに割り当てることを指定する規則である。従って、選択されたch17が属するグループの5.1chサラウンドの6chのうち、始めの2ch(L,R)を一括してchストリップ304−1に割り当て(矢印514)、次の1ch(C)をchストリップ304−2に割り当て(矢印515)、次の2ch(Ls,Rs)を一括してchストリップ304−3に割り当て(矢印516)、最後の1ch(LFE)をchストリップ304−4に割り当てる(矢印517)。ch17の代わりにch18〜22の中の1つが選択された場合も同様である。なお、タイプ3の割り当てでは、chストリップが4本必要であるから、選択されたchストリップが304−1〜304−5のときは、該選択されたchストリップとその右隣の3本のchストリップの合わせて4本に、上述した順番で各chを割り当てるものとする。選択されたchストリップが304−6〜304−8のときは、右側の4本のchストリップ304−5〜304−8に、上述した順番で各chを割り当てるものとする。chストリップ303側に割り当てる場合も同様である。
いまカスタムファイル1をエディット対象として選択して、上記図5で説明した割り当てを行い、エディットモードを終了したとする。これにより、カスタムファイル1には、上記図5で説明した割り当ての情報が格納される。次に、ユーザがカスタムキー1をオンすると、カスタムファイル1に応じたchストリップの割り当てが実行される。これにより、カレントメモリの割り当て情報記録領域にはカスタムファイル1から読み出された割り当て情報が展開され、chストリップ303−1はch1〜6に、chストリップ303−7はch9〜13に、chストリップ303−8はch14に、chストリップ304−1はch17,18に、chストリップ304−2はch19に、chストリップ304−3はch20,21に、chストリップ304−4はch22に、それぞれ割り当てられる。複数chが割り当てられているchストリップについては、そのchストリップのフェーダを操作することにより、それらの割り当てられている複数chのレベルが連動して変更できる。
「連動して」とは、1つの操作に基づいて複数のchのパラメータ値を同時に変更することを言う。すなわち、複数のchにおける同じ種類のパラメータの値を同時に変更するということであり、1つの操作に基づく操作量を複数のchで共用するということである。変更の仕方には、操作量に基づいて絶対値で変更する方法と、相対値で変更する方法がある。絶対値で変更(絶対値で連動)する方法とは、操作量で決まる値を新しい現在値とし、その新しい現在値を複数すべてのchのパラメータ現在値として上書きする方法である。相対値で変更(相対値で連動)する方法とは、操作量で決まる値とchのパラメータ現在値との両方から、新しいパラメータ現在値を求め(例えば2つの値を加減算する)、複数あるch毎に、自己の現在値と、操作量で決まる値とから新しい現在値を求める方法である。相対値で連動する方法は、例えば、複数のchのレベルを、現状での相対的なバランスを保った状態で、chストリップのフェーダの操作に応じて増減するような方法である。
図6は、カスタムファイルエディット処理のフローチャートを示す。エディット対象のカスタムファイルを選択し、エディットモードに入る所定の操作を行うと、図6の処理が開始される。ステップ601〜603は、ユーザの選択操作に応じて、選択されたchストリップの番号と選択されたch番号を保持する処理である。ステップ604では、選択されたchのch定義と割当規則に従って、選択された1つのchと共に割り当てる他のchを特定し、ステップ605で、他のchがあるか否か判定する。選択されたchのch定義が「ノーマル」なら、共に割り当てる他のchは無いので、ステップ610に進む。「ステレオ」または「サラウンド」なら、共に割り当てる他のchが有るので(「ステレオ」なら当該chとペアを組むchがあり、「サラウンド」なら当該chを含む5.1chサラウンドの残りの5chがある)、ステップ606に進む。
ステップ606で、当該他のchを、共に割り当てるか否かの指示がユーザからあるか否か検出し、あればステップ607から608に進み、なければステップ607から610に進む。この処理は、選択したch以外のchについて自動的に割り当てをしてよいか、ユーザの確認を取るものである。ステップ608では、選択されたchと、ステップ604で特定した他のchを、割当規則に従って、選ばれている1つのchストリップおよび連続する他のchストリップへ割り当てる割当情報を生成し、処理対象のカスタムファイルへ書き込む。割り当ての仕方については、図4および図5で説明した通りである。次に、ステップ609で、chストリップの割当を確定し、終了する。ステップ605で他のchが無いとき、およびステップ607で他のchを共に割り当てる指示が無いときは、ステップ610で、選択されたchを選択された1つのchストリップへ割り当てる割当情報を生成し、処理対象のカスタムファイルへ書き込み、ステップ609へ進む。
なお、図6の処理は、あくまでもカスタムファイルの内容である各chストリップの割り当て情報を作成して、フラッシュメモリ102内のカスタムファイルに書き込む処理である。カスタムファイルに割り当て情報を書き込むと、実際のchストリップのchの割り当て状態が変更になるわけではない。カスタムファイルの割り当て情報を、実際のchストリップのchの割り当て状態に反映させるためには、ユーザのカスタムキー1または2の何れかの押下操作により後述する図7(b)の処理が実行され、これによりカスタムファイル内の割り当て情報を読み出し、カレントメモリの割り当て情報記録領域に展開する必要がある。
図7(a)は、図3(b)で説明したチャンネルキー341〜346の何れかがオンされたときに実行されるチャンネルキー押下処理のフローチャートである。ステップ701では、操作されたチャンネルキーに該当する16chを1つずつ順にchストリップ303−1〜303−8,304−1〜304−8へ割り当てる割り当て情報を、カレントメモリの割り当て情報記録領域に設定して割り当てを行い、終了する。
図7(b)は、図3(b)で説明したカスタムキー1,2の何れかがオンされたときに実行されるカスタムキー押下処理のフローチャートである。ステップ711では、操作されたカスタムキーに該当するカスタムファイルを読み出す。ステップ712では、読み出したカスタムファイルの割り当て情報をカレントメモリの割り当て情報記録領域に設定して、chストリップ303−1〜303−8,304−1〜304−8へchを割り当てる。
次に、1本のchストリップに複数chを割り当てたとき、該chストリップの操作子をそれら複数ch間で切り替えて使用する機能について説明する。図3(a)に示したように、1本のchストリップは種々の操作子を含む。1本のchストリップに1つのchが割り当てられていたとすると、(各操作子の機能は所定の選択操作により切り替えることができるが、基本的には、)エンコーダ312は当該入力chからMIXバス205−1〜205−16へのセンドレベルを調節する操作子、ONスイッチ313は当該入力chのオン/オフを切り替える操作子、SELスイッチ314は当該入力chを操作対象として選択するための操作子、CUEスイッチ316は当該入力chの信号をキューモニターするための操作子、フェーダ318は当該入力chの入力レベルを調節するための操作子として、それぞれ機能する。一方、1本のchストリップに複数chを割り当てた場合、例えばフェーダは、割り当てられた複数chについて現状のバランスを保持しつつ連動してレベルを増減する操作子として、すなわち割り当てられた複数chを制御対象として共用する操作子として、機能するのが望ましい。これに対し、エンコーダ312やONスイッチ313やCUEスイッチ316は、複数chを制御対象として共用することも可能だが、1つのchを制御対象とする個別の操作子として機能するのが有用である。
そこで、本実施形態では、chストリップ内の各操作子を共用操作子と個別操作子に分けている。共用操作子は、割り当てられた複数のchで制御を共用できるパラメータの設定変更に使用する操作子である。共用操作子が操作されたときは、当該chストリップに割り当てられている複数のchの、該共用操作子に対応するパラメータが、該操作に応じて同時に設定変更される。共用操作子としては、例えば、フェーダ318がある。個別操作子は、割り当てられた複数のchのそれぞれで個別に制御するパラメータの設定変更に使用する操作子である。すなわち、個別操作子は、複数のchで共用できないパラメータ、各ch個別でしか制御できない(若しくは個別に制御することが望ましい)パラメータの、設定変更に使用する操作子である。個別操作子としては、例えば、エンコーダ312やONスイッチ313やCUEスイッチ316がある。もちろん共用操作子と個別操作子のどちらにもなり得る操作子もある。例えば、CUEスイッチ316は、共用操作子として、割り当てられた複数chの全てをモニタすることを指示するスイッチとしてもよいし、個別操作子として、割り当てられた複数chのうちの1つのchをモニタすることを指示するスイッチとしてもよいから、共用操作子と個別操作子のどちらにもなり得る操作子であると言える。このような操作子については、共用操作子と個別操作子のどちらにした方が使い勝手がよくなるかを判断して、共用操作子が個別操作子かを決めるようにすればよい。本実施形態では、フェーダ318を共用操作子とし、エンコーダ312、ONスイッチ313、およびCUEスイッチ316を個別操作子とした。
chストリップ内にある個別操作子を操作したとき、その操作に応じて、複数chのうちのどのchのパラメータを設定変更するか、その操作対象chを設定するための個別操作ch設定手段として、SELスイッチ314を用いる。説明の便宜のため、表chと裏chという概念を導入する。表chとは、1つのchストリップに割り当てられている複数chのうち個別操作子の操作対象とされているchであり、裏chとは、個別操作子の操作対象とされていないchである。表chは、割り当てられている複数chのうち、複数chで制御を共有することができず個別に制御するしかないパラメータについてその値を操作できるchと言える。裏chは、そのような操作ができないchと言える。
1本のchストリップに複数chが割り当てられている場合、そのchストリップのSELスイッチ314を押下する毎に、割り当てられている複数chの中から順に表chが切り替わる。表chの初期値は、割り当てた複数chのうちch番号が一番若いchとすればよい(上述の図7(b)のステップ712で、1本のchストリップに複数chを割り当てた場合、それら複数chのうちのch番号が一番若いchを表chとすればよい)。
例えば、図4の例では、ステレオLRのch9,10が1本のchストリップの303−7に割り当てられているので、初期値では、該chストリップの303−7の表chはch9となり、該chストリップのSELスイッチ314をオンすると表chはch10に切り替わる。以下、該SELスイッチ314をオンする毎に、ch9とch10が交互に表chとなる。このとき、該chストリップ303−7のエンコーダ312、ONスイッチ313、およびCUEスイッチ316は、表chを制御するためのスイッチとして働く。フェーダ318は、共用操作子であるので、表chにかかわらず、ch9,10の両方のレベルを連動して調整する操作子として働く。図5の「サラウンド」の場合も同様である。例えば、図5の割当規則「タイプ1」の例では、1つのchストリップにch1〜6が割り当てられているので、表chの初期値はch1となり、以降、SELスイッチがオンされる毎に、ch2→ch3→ch4→ch5→ch6→ch1→…と表chが切り替わる。
なお、1本のchストリップに1つのchが割り当てられている場合は、共用操作子および個別操作子のどちらであっても、そのchストリップ内の操作子の操作に応じて、割り当てられているchのみのパラメータ(要するに、操作対象である1つのchのパラメータ)が設定変更される。
図8は、個別操作ch設定手段であるSELスイッチ314がオンされたときに実行されるch切替操作子処理のフローチャートを示す。ステップ801,802で、当該chストリップに割り当てられているchの状態を調べ、複数chか判定する。複数chでないときは、ステップ805で通常のSELスイッチ処理を行い、終了する。複数chのときは、ステップ803で、次に表chとするchを特定する。ステップ804で、特定されたchを当該chストリップの表chとして設定し(具体的には、カレントメモリの表ch記録領域に設定する)、終了する。なお、表chが切り替えられたときには、新たに表chに選ばれたchのパラメータを、そのchストリップの各種表示部や、ディスプレイ内の当該chストリップに対応する表示領域に表示するものとする。
図8のステップ801,802で、chストリップに割り当てられているchが1つか複数かを調べるのは、カレントメモリの割り当て情報記録領域を参照すればよい。また、以下のように行ってもよい。まず、chの割り当てが図3(b)のチャンネルキー341〜346で行われている場合は、複数のchが割り当てられていることは無いと判定できる。chの割り当てが図3(b)のカスタムキー1,2で行われている場合は、1本のchストリップに複数のchが割り当てられている可能性があるため、カスタムファイルを参照して、当該chストリップに割り当てられているch数を調べる。なお、後述する図9のステップ901,902および図10のステップ1001,1002でも同様の処理を行えばよい。
図9は、個別操作子処理のフローチャートを示す。任意のchストリップ内の個別操作子が操作されたとき、本処理が実行される。ステップ901,902で、カレントメモリの割り当て情報記録領域を参照して、当該chストリップに割り当てられているchの状態を調べ、複数chか判定する。複数chでないときは、ステップ905で、割り当てられている1つのchの当該個別操作子に対応するパラメータの値を、操作された量だけ変更し、終了する。複数chのときは、ステップ903で、カレントメモリの表ch記録領域を参照して、当該chストリップの現時点の表chを特定する。ステップ904で、該表chの当該個別操作子に対応するパラメータの値を、操作された量だけ変更し、終了する。
図10は、共用操作子処理のフローチャートを示す。任意のchストリップ内の共用操作子が操作されたとき、本処理が実行される。ステップ1001,1002で、カレントメモリの割り当て情報記録領域を参照して、当該chストリップに割り当てられているchの状態を調べ、複数chか判定する。複数chでないときは、ステップ1005で、割り当てられている1つのchの当該共用操作子に対応するパラメータの値を、操作された量だけ変更し、終了する。複数chのときは、ステップ1003で、カレントメモリの割り当て情報記録領域を参照して、割り当てられているchを全て特定する。ステップ1004で、特定した全てのchの当該共用操作子に対応するパラメータの値を、操作された量だけ連動して変更し、終了する。
なお、図8の処理で表chを切り替え、個別操作子が操作されたときは図9のように処理し、共用操作子が操作されたときは図10のように処理する方式は、カスタムファイルに応じてchストリップに複数chを割り当てる場合に限られるものではない。例えば、従来より知られているDCA機能によりDCAストリップに複数chを割り当てることができるが、そのような場合でも表chなどの概念を導入し、図8〜図10のように処理することが可能である。
なお、上記実施形態では、フェーダ318を共用操作子とし、エンコーダ312、ONスイッチ313、およびCUEスイッチ316を個別操作子とする例を説明したが、物理的な操作子とその操作子で制御するパラメータとの対応関係をユーザが指定できるようにしたもの(すなわち、各操作子で制御できるパラメータを切り替え可能としたもの)の場合は、その時点で操作子に割り当てられているパラメータに応じてその操作子を共用操作子とするか個別操作子とするかを決定すればよい。共用操作子で複数chを連動制御可能なパラメータとしては、EQ、コンプレッサ、音量レベル、チャンネルオンオフ、および、パンなどがある。これらのパラメータは、主に、入力chから出力するオーディオ信号の音特性の調整を主な目的とするパラメータである。個別操作子で個別に制御した方がよいパラメータとしては、ヘッドアンプゲイン、アッテネータ、ディレイ、および、フェーズ切り替えなどがある。これらのパラメータは、主に、入力chに入力されるオーディオ信号の音特性の調整を主な目的とするパラメータである。
上記実施形態では、chストリップに入力chを割り当てる場合を説明したが、本発明は、入力chに限ることはなく、chストリップに、ミキシング用chや出力chなどを割り当ててもよい。出力chを割り当てる場合、出力chが扱うバスの種類(ミックスバス、ステレオバス、サラウンドバス)をグループとして、入力chの場合と同様に構成することができる。
上記実施形態では、5.1chサラウンドを例として説明したが、本発明は、他のch数のサラウンド(6.1chサラウンドや7.1chサラウンド)にも適用可能である。
上記実施形態では、ノーマル、ステレオ、サラウンドというch定義を使ってグループの関係を規定したが、そのようなch定義を使わずにグループの関係を規定してもよい。すなわち、1つのchストリップに、全chから任意に選択した複数のchを割り当てて、割り当てた複数のchがグループの関係を構成するものとしてもよい。