以下、添付図面を参照して、本発明のデジタルオーディオミキシング装置の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に従うデジタルオーディオミキシング装置1(以下「ミキサ」という)の構成概要を説明するブロック図である。また、図2は、ミキサ1の外観と、入力チャンネルと入力グループの階層構造を説明する図である。なお、「チャンネル」を「ch」と省略表記する。また、本明細書で「モジュール」はミキサ1の構成要素を機能毎にまとめた単位を指す。
図1に示す通り、ミキサ1は、複数(N個)の入力ch100と、グループパッチ105と、複数(M個、なおM<N)の入力グループ110と、複数(M個)のグループストリップ120とを具備する。入力ch100は、それぞれ、マイク等の入力源125から入力された1系統(1ch分)のオーディオ信号を処理するモジュールである。各入力ch100は、グループパッチ105を介して複数(M個)の入力グループ110のいずれか1つに接続(グループ化)される。入力グループ110は、それぞれ、グループパッチ105を介してグループ化された1又は複数の入力ch100の出力信号を処理するモジュールである。
複数のグループストリップ120は、図2に示す通り、ミキサ1の操作パネル上に設けられたグループ操作部であり、それぞれ、1つのフェーダ操作子を含む複数の物理的操作子を備える。複数のグループストリップ120には、それぞれ、1つの入力グループ110が操作対象として割り当てられる。本実施例では、複数M個のグループストリップ120と複数M個の入力グループ110とが、1対1で固定的に対応付けられるものとする(図1参照)。また、各入力グループ110及び各グループストリップ120は、ユニークなグループ番号により管理される。
図2において、各入力グループ110は、1モジュール分の操作部(グループストリップ)の絵柄により表されており、入力グループ110に備わる複数のパラメータが、操作子や表示物の絵柄により表されている。ユーザは、グループストリップ120内の操作子を用いて、それぞれ対応する入力グループ110のパラメータの値を調整できる。
1つの入力グループ110に含まれる1又は複数の入力ch100も、それぞれ各種パラメータを具備する。図2において、1ch分の操作部(chストリップ)の絵柄により1つの入力ch100が表されており、操作部中の操作子や表示物の絵柄により1入力ch100の各種パラメータが表されている。これら入力ch100の各種パラメータは、基本的には、グループストリップ120の操作対象としない。
すなわち、ミキサ1は、1又は複数の入力chをまとめた入力グループ100を管理単位として具備しており、グループストリップ120を用いて入力グループ100毎に音量調整やイコライジング等を調整できる。各入力ch100においてもch毎に音量調整やイコライジング等の処理をしているが、ミキサ1の操作者(ユーザ)は、基本的には、ch単位での処理に用いるパラメータを手動調整する必要はない。
図2に示す例では、「Ch1」、「Ch2」及び「Ch3」の各入力ch100がグループ番号「1」の入力グループ110にグループ化され、このグループ番号「1」の入力グループ110をグループ番号「1」に対応付けられたグループストリップ120にて制御し、また、「Ch4」、「Ch5」及び「Ch6」の各入力ch100がグループ番号「2」の入力グループ110にグループ化され、このグループ番号「2」の入力グループ110をグループ番号「2」に対応付けられたグループストリップ120にて制御し、また、「Ch7」、「Ch8」の2本の入力ch100がグループ番号「3」の入力グループ110にグループ化され、このグループ番号「3」の入力グループ110を、グループ番号「3」に対応付けられたグループストリップ120にて制御する。
1つの入力グループ110にグループ化される1又は複数の入力ch100は、例えば、1組のドラムセットに対して設置された複数のマイクに対応付けられた複数の入力chなど、何らかの意味のあるまとまり(例えば楽器種類単位、演奏者単位など)を成すch群である。このため、ミキサ1の使い方として、1番のグループストリップ120にはドラムセット(ドラム奏者)の入力グループを操作対象に割り当てし、2番のグループストリップ120にはギター(ギター奏者))の入力グループを操作対象に割り当て・・・という具合に、グループストリップ120毎に楽器種類乃至演奏者単位での制御を行うことができる。
図3は、ミキサ1のハードウェア構成を示すブロック図である。ミキサ1は、中央処理装置(CPU)10、リードオンリーメモリ(ROM)11、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、表示インターフェース13(表示I/F)、操作検出インターフェース14(検出I/F)、通信インターフェース15(通信I/F)、信号処理部16(DSP部)、効果処理部17(EFX)、アナログデジタル変換部(AD)18、デジタルアナログ変換部(DA)19、デジタル・デジタル変換部(DD)20を備える。
CPU10、ROM11、RAM12、表示I/F13、検出I/F14、通信I/F15、DSP部16及びEFX17は、通信バス21を介して接続され、CPU10と各部11〜17との間で各種制御信号を通信できる。また、DSP部16、EFX17、AD変換部18、DA変換部19及びDD変換部20は音声バス22を介して互いに接続さ、各部16〜20の間でデジタルオーディオ信号を通信できる。
CPU10は、ROM11又はRAM12に記憶された各種のプログラムを実行して、ミキサ1の全体動作を制御する。ROM11は、CPU10が実行する各種のプログラムや各種のデータなどを格納した不揮発性メモリである。RAM12は、CPU10が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用されるとともに、ミキサ1の処理に関する全てのパラメータの現在値を記憶するカレントメモリを含む。
表示I/F13には表示部2が接続される。表示部2は、CPU10から与えられた表示制御信号に基づく各種情報を、各種画像や文字列等により表示する。検出I/F14には操作部3が接続される。操作部3は、グループストリップ120を含む操作パネル上に配置された操作子群である。CPU10は、ユーザによる操作部3の操作イベントに応じた検出信号を取得して、カレントメモリに記憶された各種パラメータの値を更新し、その更新結果をDSP部16、EFX17の信号処理動作、或いは、表示部2の表示に反映する。
また、通信I/F15には通信入出力部(通信I/O)4が接続されている。通信I/O4は、例えばUSB(Universal Serial Bus)端子など、他の周辺機器と接続するための汎用インターフェースであり、周辺機器(例えば、ミキサ1をリモート制御するコンピュータ等)を接続する。
AD変換部18は複数の入力ポートを含み、入力ポートから入力したアナログオーディオ信号をデジタルオーディオ信号に変換して音声バス22に供給する。DA変換部19は、複数の出力ポートを含み、音声バス22から供給されたデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換して出力ポートへ供給する。DD変換部20は、複数のデジタル入出力ポートと、デジタル変換(フォーマット変換)部を含み、外部機器とミキサ1の間で1又は複数のデジタルーディオ信号を入出力する。
DSP部16及びEFX17は、それぞれ1つのDSP(Digital Signal Processor)で構成してもよいし、バスで相互接続された複数のDSPで構成し、複数のDSPで信号処理を分散処理するようにしてもよい。DSP部16は、CPU10の指示に基づいてマイクロプログラムを実行することにより、音声バス22から供給された1又は複数のオーディオ信号をデジタル信号処理して、音声バス22へ出力する。DSP部16が実行するデジタル信号処理は、オーディオ信号のルーティングや、音特性(音量レベルや音質)の調整や、複数のオーディオ信号を混合するミキシング処理等である。また、EFX17は、オーディオ信号に対するエフェクト処理(効果付与)用のDSPであり、CPU10の指示に基づいて、音声バス22から供給されたオーディオ信号を効果付与処理して、音声バス22へ出力する。
図4は、ミキサ1の機能構成を示すブロック図である。図4の各モジュールの動作は、専らDSP部16及びEFX17によるデジタル信号処理により実現される。入力ポート23((「In.1」〜「In.N」)はAD変換部18に含まれる入力端子であり、それぞれ1系統のオーディオ信号源(1つのマイクなど)からオーディオ信号を入力する。複数N個の入力ch100は、それぞれ、1つの入力ポート23に対応付けられている。
入力ch100は、それぞれ対応する1つの入力ポート23が入力したオーディオ信号を、当該入力ch用の各種パラメータの値に応じて処理する。入力ch100の出力信号は、グループパッチ(図1の符号105)を介して、M個のグループバス24のうち1つに供給される。
M個のグループバス24は、それぞれ、後段のM個のグループ110と1対1で対応付けられている。グループバス24は、グループパッチ(図1の符号105)を介して接続された1又は複数の入力ch100の出力信号を混合して、対応する1つの入力グループ110に供給する。すなわち、1つのグループバス24に1又は複数の入力ch100を接続することにより、そのグループバス24に対応する入力グループ110に対する、1又は複数の入力ch100の割り当て(グループ化)が実現される。
入力グループ110は、対応するグループバス24から供給されたオーディオ信号を、当該入力グループ用の各種パラメータの値に応じて処理する。入力グループ110の出力信号は、ステレオ出力バス(ST)25を介して出力chモジュール130に供給され、この出力chモジュール130にて処理され、ステレオ出力ポート27から出力される。
更に、ミキサ1は、出力バスの1つとしてサブバス26を備えており、入力ch100の出力信号をサブバス(Sub)26に供給できる。サブバス26のオーディオ信号は、出力ch130にて処理され、サブバス出力ポート27から出力される。
図5〜図7は、入力ch100、入力グループ110、出力ch130の詳細構成例を示す。図5〜図7に示す通り、入力ch100、入力グループ110、出力ch130は、それぞれ、複数の制御モジュールを備えている。制御モジュールは、それぞれ、音特性(例えば音量や音質など)の調整に関する機能単位のモジュールである。
図5において、入力ch100は、例えばヘッドアンプ(H/A)30、AD変換部(AD)31、ハイパスフィルタ(HPF)32、アッテネータ(ATT)33、パラメトリックイコライザ(PEQ)34、ゲート(Gate)35、パン(Pan)36及びグループパッチ(Patch)37を備える。グループパッチ37は、図1のグループパッチ105に対応しており、後述する「アサイン情報」に基づいて、当該入力ch100の出力を、M個のグループバス24のいずれか1つに接続する。その他のパラメータモジュール30〜36は、それぞれの機能に該当する処理を行う。なお、H/A30とAD変換部31の動作は、図2のAD変換部18により行われる。入力ch100に含まれる各モジュール30〜37を制御する各種パラメータの値は、基本的には、操作パネル上のグループストリップ120に呼び出されず、ユーザによる手動調整を受けない。
また、入力ch100は、挿入エフェクタ(Insert)60と、挿入エフェクタ60のオンオフを切り替えるスイッチ61を備え、スイッチ61がオンのとき、入力ch100のオーディオ信号に挿入エフェクタ60による効果を付与するように構成される。また、入力ch100は、サブバス26への出力レベルを調整するサブレベル(Sub Level)62と、サブバス26への出力オンオフを切り替えるスイッチ63を具備する。
図6において、入力グループ110は、例えばアッテネータ40、パラメトリックイコライザ41、コンプレッサ(Comp.)42、ハウリング抑制機能(FBS、フィードバックサプレッション)43、レベル制御(Level)44、バランス制御(BAL)45、エフェクタ(Effect)46を備える。ユーザは、入力グループ110に含まれる各モジュール40〜46を制御する各種パラメータの値を、操作パネル上のグループストリップ120を用いて調整できる。
また、図7において、出力chモジュール130は、例えば、アッテネータ50、パラメトリックイコライザ51、グラフィカルイコライザ(GEQ)52、コンプレッサ53、レベル制御54、バランス制御55、DD変換部56を備える。出力chモジュール130の各モジュール50〜56の各種パラメータの値は、操作パネル上の出力ch用のchストリップを用いて調整できてよい。
次に、「グループプリセット」について説明する。グループプリセットは、1つの入力グループ110に関するセットアップに必要な全てのパラメータの値を、プリセットとして保存したデータである。ミキサ1のメモリ(ROM11又はRAM12)には、複数のグループプリセットが記憶される。
図8(a)〜(b)は、グループプリセットのデータ構成例を説明する図である。(a)に示す通り、1つのグループプリセット70は、1又は複数の入力ch用パラメータセット71、入力グループ用パラメータセット72、アサイン情報73、エフェクト情報74及びグループ属性情報75を含む。各グループプリセット70はそれぞれ1グループ分のプリセットに対応している。
1つのグループプリセット70に含まれる入力ch用パラメータセット71の数は、そのグループに含まれる(グループ化すべき)入力ch数に対応する。前述の通り、1グループに含まれる1又は複数の入力chとは、例えば楽器種類乃至演奏者単位など、何らかの意味のある1まとまりを成す複数個の入力chでさえあればよい。したがって、複数のグループプリセット70それぞれに含まれる入力ch用パラメータセット71の数は不定である。
1つのグループプリセット70中の各入力ch用パラメータセット71には、当該グループ中での相対的なch番号が設定されてよい。図の例では、3つの入力ch用パラメータ71に対して、ch番号「ch.k」、「ch.k+1」、「ch.k+2」が付与されており、当該グループ内での入力ch用パラメータ71の順番を識別できる。
1つの入力ch用パラメータセット71は、図8(b)に示す通り、「Dynamics」、「EQ」、「AUX」、「PAN」、「Level」など、1つの入力ch100で用いる全てのパラメータの値を含む入力ch用パラメータ値710と、Subバス使用情報711と、マイク情報712を含む。また、各入力ch用パラメータセット71には、その入力chの名前等を示す属性情報も含まれてよい。
各入力ch用パラメータの値710に含まれる各種パラメータの値は、その入力chに予定されている用途、役割などにふさわしい値をプリセットとして持つ。例えば、ドラムス(ドラム奏者)用の3本の入力ch(バスドラム用ch、スネアドラム用ch、シンバル類用ch)を含むグループプリセット70があるとすると、そのグループプリセット70に含まれる3つの入力ch用パラメータセット71は、それぞれ、入力ch用パラメータの値710として、バスドラムにふさわしい各種パラメータの値、スネアドラムにふさわしい各種パラメータの値、及び、シンバル類にふさわしい各種パラメータの値を、プリセットとして持つ。
Subバス使用情報711は、入力chのサブバスレベル62の値と、サブバスへの出力オンオフ(スイッチ63)の設定とを含む。マイク情報712は、入力chに使用するマイクを指定する情報であり、例えば、マイクの製造元及び機種名を特定する情報である。マイクは、製造元や機種に応じて特性が異なるので、各入力ch用パラメータ71の入力ch用パラメータの値710として、使用するマイクの特性を考慮したプリセットを用意しておくことが考えられる。その場合、当該入力ch用パラメータ71の入力ch用パラメータの値710(或るマイクの特性を考慮した設定)にふさわしいマイクの製造元や種類等を、マイク情報712により指示できる。
入力グループ用パラメータセット72は、図8(c)に示す通り、「Dynamics」、「EQ」、「AUX」、「PAN」、「Level」など、1つの入力グループ110で用いる全てのパラメータ値(図6参照)を含む入力グループ用パラメータ値720を持つ。入力グループ用パラメータの値720には、当該入力グループのカテゴリー、目的、用途などにふさわしい値がプリセットとして保存される。
アサイン情報73は、グループ化すべき1又は複数の入力ch100を1つの入力グループ110にグループ化する(割り当てる)ためのグループ化情報である。具体的には、グループプリセット70の適用先となる入力グループ110に対応する1本のグループバス24に入力ch100の出力を接続するように、入力ch100のグループパッチ37を制御する情報である。アサイン情報73に基づく1ch分のグループパッチ37の動作は、例えば、M個のグループバス24のうち、適用先に対応するグループバス24への出力のみオンにして、その他のグループバス24への出力をオフにする、というものである。
エフェクト情報74は、1グループに含まれる各入力ch100及び/又は入力グループ110におけるエフェクタの使用に関する情報である。例えば、エフェクト情報74として、1グループに含まれる全ての入力ch100に対するエフェクト挿入(スイッチ61)のオンオフの一括設定や、挿入エフェクタ60の種類やそのパラメータ値の一括設定や、或いは、入力グループ110で使用するエフェクタの種類やパラメータ値の設定などの情報を持つことが考えられる。
属性情報75は、例えば名前、カテゴリー、入力ch数、ジャンル、評価、使用回数などを含む。名前は、当該グループプリセットの名前である。複数のグループプリセット70のそれぞれはユニークな名前を持つ。カテゴリーは、例えばドラムス、ギター、ベース、ボーカル、MC(司会進行)など、楽器の種類や用途などを表す分類である。入力ch数は、当該グループプリセットに含まれる入力chの個数を示す。ジャンルは、例えばロック、ジャズ、ポップス、会議・・・など、当該グループプリセットに適した音楽ジャンルや使用場面を表す分類である。評価は、当該グループプリセットに対してユーザが与えた評価を表す。使用回数は、当該グループプリセットを使用した回数である。属性情報75を持つことで、複数のグループプリセット70を属性情報75(例えばカテゴリー、入力ch数、ジャンルなど)によりグループ分けできる。
ミキサ1は、グループプリセット70として、例えば、ドラムス用の3本の入力chを含むグループプリセット、ギター用の2本の入力chを含むグループプリセット、或いは、会議用の8本の入力chを含むグループプリセットなどといった具合に、楽器種類、用途、入力ch数、音楽ジャンルなどに応じた複数のグループプリセット70を用意しておく。ユーザは、複数のグループプリセット70の中から、楽器種類、用途、音楽ジャンル、入力ch数などの条件に応じた所望のグループプリセットを選択して、入力グループ110に適用するだけで、その条件にふさわしい入力グループ110に関するセットアップを行うことができる。
図9は、入力グループ110にグループプリセット70を適用する(割り当てる)ためのユーザインターフェースの一例として、グループプリセット適用画面80を示す。CPU10は、例えばユーザ操作に応じて表示部2にグループプリセット適用画面80を表示する。グループプリセット適用画面80は、図9に示す通り、グループプリセット選択部81と、グループ表示部82とを備える。
グループプリセット選択部81は、メモリ(ROM11又はRAM12)に記憶された複数のグループプリセット70(図8参照)を表示するリストであり、各行に1つずつグループプリセット70の属性情報を表示する。各行に表示する属性情報は、例えば、名前810、カテゴリー811、ch数812、ジャンル813、評価(「お気に入り」)814、使用回数815である。CPU10は、グループ属性情報75に基づいてグループプリセット70毎の属性情報を表示できる。各欄810〜815には、それぞれ該当する属性情報を示す文字列や数字等が表示される。評価814に関しては、「星印」の数により評価の高低を表している。
グループプリセット選択部81にはフィルタ条件指定部816が設けられている。フィルタ条件指定部816は、グループプリセット70の属性情報(名前、カテゴリー、ch数、ジャンル、評価及び使用回数)810〜815毎に条件を指定できるように構成されており、指定されたフィルタ条件に応じてグループプリセット選択部81に表示するグループプリセット群をフィルタ(絞込み)できる。例えば、カテゴリーのフィルタ条件として「Drums」を指定すれば、「Drums」のカテゴリーに該当するグループプリセット70のみが、グループプリセット選択部81に表示される。図8に示す例では、全ての属性情報のフィルタ条件として「All」が指定されており、この場合、グループプリセット選択部81は全てのグループプリセット70を表示する。
グループ表示部82は、ミキサ1に備わる複数の入力グループ110のうち、現在グループプリセットが適用されている入力グループ110の情報を表示するリストである。グループ表示部82の各行は、対応する入力グループ110に適用中のグループプリセットの名前820と、そのグループプリセットに含まれる入力ch数821とを表示する。グループ表示部82における入力グループの表示順は、例えばグループ番号順に並べるとよい。
グループプリセット選択部81において、ユーザは操作子3を用いてカーソル817を所望の行に位置させることにより、その行に対応するグループプリセットを選択できる。また、グループ表示部82において、カーソル822を所望の行に位置させることにより、その行に対応する入力グループ110を選択できる。これらグループプリセットの選択はOKボタン83を押すことにより確定する。
本実施例では、グループプリセット選択部81においてグループプリセットの選択のみを行った場合、ミキサ1に備わる複数(M個)の入力グループ110のうち、未だ何れのグループプリセットも適用されていない入力グループ110(未アサイングループ)に対して、当該選択されたグループプリセットが適用される。
図10は、未アサイングループにグループプリセットを適用する処理のフローチャートである。CPU10は、グループプリセット適用画面80にてグループプリセットの選択のみ行われた場合に、図10の処理を起動する。ステップS1において、CPU10は、グループプリセット選択部81においてユーザにより選択された1つのグループプリセットを特定し、グループプリセット群を記憶したメモリ(ROM3又はRAM2)から、特定した1つのグループプリセット70を読み出す。
CPU1は、ステップS2において、選択されたグループプリセット70に含まれる入力ch数と、ミキサ1に備わる全入力ch100のうち、未だ何れの入力グループ110にもグループ化されていない入力ch100(未アサインch)の個数とを比較する。である。未アサインchの数が、選択されたグループプリセット70に含まれるch数よりも多い場合(ステップS2のYES)、CPU10は、ステップS3において、未アサインch群のうちから必要な数の入力ch100を確保して、該確保した1又は複数の入力ch100に対して、選択されたグループプリセット70を適用する。なお、適用先の入力グループ110の決定は、例えばグループ番号の若い順など、所定のルールに従って自動的に決定できる。また、未アサインchの確保は、例えば、ch番号の若い順など所定のルールに従って行う。
前記ステップS3により、選択されたグループプリセット70に基づいて、1つの入力グループ110に関する全てのセットアップ(初期設定)を行うことができる。セットアップの詳細内容は、例えば次の通りである。(1)確保した1又は複数の入力ch100それぞれの全パラメータのカレントデータとして、グループプリセット70に含まれる1又は複数の入力ch用パラメータセット71を設定する。(2)グループプリセット70に含まれるアサイン情報73に基づいて、確保した1又は複数の入力ch100それぞれの出力を、グループプリセット70の適用先となる1つの入力グループ110に接続する。(3)適用先となる1つの入力グループ110の全パラメータのカレントデータとして、グループプリセット70に含まれる入力グループ用パラメータセット72を設定する。(4)適用先の入力グループ100に、属性情報75に含まれるグループの名前を設定する。(5)エフェクト情報74に基づいて、グループ化された1又は複数の入力ch100におけるエフェクト使用に関する設定を行う。(6)グループ化された個々の入力ch100に、マイク情報712や、Subバス使用情報711を設定される。(7)更に、各入力ch用パラメータセット71に、その入力chの名前等を示す属性情報が含まれている場合には、グループ化された個々の入力ch100にch名を設定する。
一方、未アサインchの数が選択したグループプリセットに含まれるch数よりも少ない場合(ステップS2のYES)、CPU10は、グループプリセットの適用を行わずに処理を終了する。
前記図10の処理により、新たな入力グループ110にグループプリセットが適用されたとき、CPU10は、その入力グループ110の情報を、グループ表示部82に追加する。
ユーザは、グループプリセット選択部81において1つのグループプリセットを選択し、且つ、グループ表示部82において1つの入力グループ110を選択することにより、グループ表示部82にて選択した入力グループ110に適用中のグループプリセットを、グループプリセット選択部81にて新たに選択したグループプリセットに変更できる。
図11は、入力グループ110に適用中のグループプリセットを変更(更新)する処理のフローチャートである。ステップS4において、CPU10は、グループプリセット選択部81において選択されたグループプリセット(変更先のグループプリセット)を特定する。
このとき、CPU1は、グループ表示部82において、特定した変更先のグループプリセット70を適用可能な入力グループ110のみを通常の表示状態で表示して、その他の入力グループ110をグレーアウト表示する。「適用可能な入力グループ」とは、現在適用中のグループプリセット70(変更元のグループプリセット)が変更先のグループプリセット70と共通する属性を持ち、例えばch数やカテゴリー等の属性を変更することなくそのまま、変更先のグループプリセット70を適用(上書き)できる入力グループである。図8の例では、グループプリセット選択部81においてch数が「3」のグループプリセット「Pop_Gt」が選択されているので、グループ表示部82では、ch数が「3」の入力グループ(一番上の「Drums」と、一番下の「Vocal」)のみが通常表示され、ch数の異なる入力グループ(上から2番目の「Bass」と、3番目の「Gt」)はグレーアウト表示される。
ユーザは、グループ表示部82から1つの入力グループ110を適用先として選択して、OKボタン83を押して選択を確定する。CPU10は、ステップS5において、グループ表示部82にて選択された入力グループ110を特定するとともに、該特定した入力グループ110に適用中のグループプリセット70(変更元のグループプリセット)を特定する。
ステップS6において、CPU10は、前記ステップS4で特定した変更先のグループプリセットと、前記ステップS5で特定した変更元グループプリセットとのそれぞれの属性情報75に含まれるカテゴリーを比較する。また、ステップS7において、CPU10は、前記ステップS4で特定した変更先のグループプリセットと、前記ステップS5で特定した変更元グループプリセットとのそれぞれの属性情報75に含まれるch数を比較する。なお、ステップS6、S7の順番は、図示の例に限らず、ch数を先に比較し、それからカテゴリーを比較するようにしてもよい。
変更先のグループプリセットと変更元のグループプリセットとで、カテゴリー及びch数が一致する場合(ステップS6、S7のYES)、CPU10は、ステップS8において、変更元のグループプリセットを変更先のグループプリセットに更新する。すなわち、グループ表示部82にて選択された入力グループ110に、グループプリセット選択部81にて選択されたグループプリセットを適用する。これにより、選択されたグループプリセット70に基づいて、選択された入力グループ110に関する全てのセットアップ(入力ch100毎のパラメータの値、入力グループ110のパラメータの値、入力ch100のエフェクト使用に関する設定を含む)が一括して更新される。なお、この場合、入力ch数に変更がないので、各入力ch100のグループパッチ37の設定は変更しなくてよい。
一方、変更先のグループプリセットと変更元のグループプリセットとで、カテゴリー及び/又はch数が一致しない場合(ステップS6及び/又はS7のNO)、CPU10は、例えば表示部2に「確認ダイアログ」ウィンドウを表示することにより、属性が変更される旨をユーザに確認する(ステップS9及び/又はS10)。ユーザは、表示された確認ダイアログに対して変更を認める(OKボタン83を押す)か、又は、変更を認めない(キャンセルボタン84を押す)か、いずれかの応答をする。ユーザが属性の変更を認めない場合(ステップS9及び/又はS10のNO)、CPU10は、グループプリセットの更新を行わずに、処理を終了する。
ユーザが変更を認めた場合には(ステップS9及び/又はS10のYES)、CPU10は、ステップS8において、変更元のグループプリセットを変更先のグループプリセットに更新する。なお、ch数が変更される場合には、当該ステップS8において、変更先のグループプリセットに基づいて、各入力ch100のグループパッチ37の設定(入力chのグループ化設定)を変更する。ch数が増える場合には、前述した未アサイン入力ch確保処理を行い、新たに入力chを確保する。未アサイン入力ch確保できない場合は、グループプリセットの更新を行わない。
前記ステップS8により、ユーザは、所望のグループプリセット70と、入力グループ110とを選択するだけで簡単に、1つの入力グループ110に関する全てのセットアップを一括して変更できる。
すなわち、前記ステップS3又は前記ステップS8が適用部の動作に相当しており、これにより、ユーザは、所望のグループプリセット70を選択するだけで簡単に、1つの入力グループ110に必要な全てのセットアップを行うことができる。例えば、ユーザが、入力ch数が「3」のドラムス用グループプリセットを選択すると、確保された3本の入力ch100には、それぞれのchにふさわしい入力ch用パラメータの値(例えば、バスドラムにふさわしい各種パラメータの値、スネアドラムにふさわしい各種パラメータの値、及び、シンバル類にふさわしい各種パラメータの値)が設定され、適用先の入力グループ100にはドラムスにふさわしいグループ用パラメータの値が設定され、更に、3本の入力chを適用先の入力グループ100に接続(グループ化)する設定までもが完了する。
楽器種類や用途などに応じて1又は複数の入力ch100をまとめたグループプリセット70を用意しているので、ミキサの操作に不慣れなユーザにとっても、適用先の入力グループ110(グループストリップ120)と、制御対象となる楽器種類(演奏者)や用途などとの対応関係わかりやすい。例えば、1番のグループストリップには、3ch分の「ドラム」を操作対象に割り当て、2番のグループストリップ120には、3ch分の「ベース」を操作対象に割り当て、3番のグループストリップには、2ch分のボーカルを操作対象に割り当て・・・という具合に、楽器種類(演奏者)や用途単位で複数の入力chをグループ化するセットアップを、直感的にわかりやすく簡単な操作で行うことができる。
前述のステップS3又はS8により、入力グループ110に対してグループプリセット70を適用する際、エフェクト情報74にエフェクト使用に関する情報が設定されている場合には、1グループ内の各入力ch100及び/又は入力グループ110におけるエフェクタの使用に関する情報が、グループ単位で一括設定される。エフェクト情報74に基づく挿入エフェクト60の使用に関する情報の設定の動作について、図12を参照して、説明する。
図12は、図4に示す入力ch100、グループバス24、入力グループ110、ステレオ出力バス25、Subバス26を抽出して示すブロック図である。図12において、「ch1」の入力ch100aと「ch2」の入力ch100bとは、1番のグループバス24に接続され、グループ番号「1」の入力グループ110aにグループ化されている。「ch2」の入力ch100cは、2番のグループバス24に接続され、グループ番号「2」の入力グループ110bにグループ化される。
例えば、或るグループプリセット70のエフェクト情報74として挿入エフェクト60のオンオフを切り替える情報が入っており、そのグループプリセット70をグループ番号「1」に適用した場合には、そのグループに含まれる入力ch100aの挿入エフェクタスイッチ61aと入力ch100bの挿入エフェクタスイッチ61aを一括して切り替えることができる。1つのグループプリセット70に1つのエフェクト情報74を持つので、エフェクト情報74に基づいて、1グループに含まれる複数の入力chでのエフェクト60の使用に関する情報を一括設定できる。
これに対して、1つのグループプリセット70に含まれるSubバス使用情報711は、そのグループに含まれる複数の入力ch用パラメータセット71毎に用意されているので、1グループに含まれる各入力ch100でのサブバス26に関する設定は、グループ単位ではなく、入力ch100毎に行われる。例えば、グループ番号「1」の入力グループ110aに含まれる入力ch100aのサブバススイッチ61aと入力ch100bのサブバススイッチ61bとは、それぞれ別のSubバス使用情報711に基づいて、サブバスレベル62の値とスイッチ63のオンオフ設定とが設定される。
次に、グループプリセット変更方法の1実施形態として、ジャンルの選択に応じて複数の入力グループ110に適用するグループプリセットを一括して切り替える方法について説明する。図13は、ジャンルを選択するためのユーザインターフェース(ジャンル変更画面85)の一例を示す。CPU10は、ユーザの操作に応じて、表示部2にジャンル変更画面85を表示する。ジャンル選択部86には、例えば「ロック」、「ジャズ」・・・など選択可能なジャンル名がリスト表示される。「選択可能なジャンル」は、例えばグループプリセット70のジャンルとして用意された全てのジャンルである。優先順位設定部87は、評価(「お気に入り」)及び使用回数のいずれかを選択するラジオボタンを表示しており、グループプリセットの属性情報(図の例では評価及び使用回数)に優先順位を設定できるようになっている。
ユーザは、ジャンル選択部86において、所望の1つのジャンルを選択して、変更ボタン88を押すことにより、複数の入力グループ110に適用中のグループプリセットのそれぞれを、ジャンル選択部86にて選択したジャンルに属するグループプリセットに一括変更できる。
図14は、グループプリセットのジャンル変更処理のフローチャートである。CPU10は、ステップS11において、ジャンル選択部86にて選択された変更先のジャンルを特定し、ステップS12において、現在各入力グループ110に適用中のグループプリセット70の情報を取得する。取得する情報は、例えば現在使用中(グループプリセット適用中)の各入力グループ110を特定する情報、各入力グループ110に適用中のグループプリセットのカテゴリーを含む。
ステップS13において、現在使用中の入力グループ110の1つを処理対象として、その入力グループ110に適用中のグループプリセットのカテゴリーに該当するグループプリセット70が、前記ステップS11において特定した変更先のジャンルのなかにあるかどうか調べる。
変更先のジャンル中に前記カテゴリーに該当するグループプリセット70が存在している場合(ステップS13のNO)、CPU10は、ステップS14において、処理対象の入力グループ110に適用中のグループプリセットを、変更先のジャンル中に前記カテゴリーに該当するグループプリセット70に更新する。グループプリセットの更新自体は、前記ステップS3,S8と同様の処理である。ここで、変更先のジャンル中に同じカテゴリーの複数のグループプリセットが存在する場合など、複数グループプリセットから1つを決定するときには、優先順位設定部87にて優先順位の高い属性情報として選択された属性(評価又は使用回数)に基づいて、1つのグループパラメータを決定する。例えば、優先順位設定欄87にて評価(「お気に入り」)が選択されているときは、複数のグループプリセットのうちで、もっとも評価の高いグループプリセット70を変更先として決定する。変更元のグループプリセットと変更先のグループプリセット70とで入力ch数が異なる場合は、必要な数の入力chをグループ化する処理も行う。なお、必要なch数が確保できない場合、CPU10は、当該処理対象の入力グループ110に関するグループプリセットの更新を行わずにステップS15に進む。
そして、CPU10は、現在使用中の入力グループ110の全てに対して処理し終えるまで、前記ステップS13及びS14をループする(ステップS15のNO)。CPU10は、現在使用中の入力グループ110の全てに対して処理し終えた場合(ステップS15のYES)、当該処理を終了する。前記ステップS13〜S15により、複数の入力グループ110に適用するグループプリセットのジャンルを一括して切り替えて、該複数の入力グループ110に関する全パラメータの値(各入力chの入力ch用パラメータ、各入力グループ110の入力グループ用パラメータ)を、そのジャンルに該当するグループプリセットに応じて一括して変更できる。
この実施形態によれば、ジャンルを切り替えるだけで、ミキサ1の複数の入力グループ110それぞれに設定される各種パラメータの値(プリセットの値)を、ジャンル変更前後で現在使用中の入力ch数や楽器種類を維持しつつ、現在適用中のジャンルとは別のジャンルにふさわしいプリセットの値に一括変更できる。したがって、ミキサ1全体の出音を、例えばロック系の音、ジャズ系の音などとジャンルに合わせて簡単に変更できる。このジャンル切り替えによるグループプリセットの一括変更は、例えば演奏曲のジャンル毎にミキサ1の出音を変更する場合に有効である。
以上の通り、この発明によれば、例えば演奏者単位など複数のオーディオ信号を1グループにまとめたグループモジュールのセットアップ作業を、ミキサの操作に不慣れなユーザなどにとって極めて簡単に行うことができる。楽器種類や用途などに応じて1又は複数の入力ch100をまとめたグループプリセット70を用意したので、グループストリップ120と楽器種類(演奏者)や用途などとの対応関係がわかりやすい。また、グループモジュール単位でセットアップを行うので、チャンネルモジュール毎の詳細なパラメータの値をユーザは意識しなくてよい。
なお、前記ステップS3では、適用先の入力グループ110の決定及び未アサインchの確保を所定のルールに従い自動的に行ったが、適用先の入力グループ110の決定及び/又は未アサインchの確保を、ユーザが手動で行ってもよい。
なお、図9に示すグループ表示部82は、ミキサ1に備わる全ての入力グループ110のうち、現在グループプリセットを適用中(割り当て中)の入力グループ110のみを表示するように構成されていたが、別の構成例として、ミキサ1に備わる全ての入力グループ110を表示し、グループプリセットが未割り当ての入力グループに関しては、名前820と入力ch数821の各欄を空欄にする構成を採用してもよい。
なお、前記グループプリセット選択部81でグループプリセットが選択されたときに、前記グループ表示部82において、特定した変更先のグループプリセット70を適用可能な入力グループ110のみを通常の表示状態で表示して、その他の入力グループ110をグレーアウト表示することを説明したが、ここでグレーアウト表示された入力グループ110は適用先に選択できないようにしてもよい。つまり、グループ表示部82は、選択されたグループプリセット70が適用不可能な入力グループ110を選択不可能な表示状態で表示するように構成されてもよい。
なお、ユーザが、既存のグループプリセット70を編集(変更)して、編集結果を新たなグループプリセット70として保存したり、或いは、新たなグループプリセット70を自ら作成して保存したりできてもよい。
なお、上述の実施例では、入力ch100のパラメータを操作パネルで制御しないものとして説明したが、個々の入力ch100をグループストリップ120に割り当てて、入力ch単位でパラメータの値を調整してもよい。
また、上記の実施例では、入力グループ110とグループストリップ120が1対1で対応している構成を説明したが、操作パネル上に設けたグループストリップ120の数よりも、多数の入力グループ110(モジュール)を具備し、レイヤ切り替えなどによりグループストリップ120の操作対象となる入力グループ110を切り替えるように構成してもよい。
この発明は、デジタルミキシング装置の発明として構成及び実施することに限らず、プログラムの発明として構成及び実施することもできる。