JP5325332B1 - 電池用電極塗膜の乾燥方法及び乾燥炉 - Google Patents

電池用電極塗膜の乾燥方法及び乾燥炉 Download PDF

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Abstract

【課題】電極の厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化する。
【解決手段】塗膜の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜を乾燥するため、乾燥後の塗膜すなわち電極の、厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化することができる。また、赤外線ヒーター及び送風装置からの熱風を用いて塗膜を乾燥するため、比較的容易に塗膜温度一定期間を有し且つ溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように乾燥を行うことができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、電池用電極塗膜の乾燥方法及び乾燥炉に関する。
従来、電池用の電極の製造方法として、正極材または負極材である活物質(電極材ともいう)とバインダーと導電材と溶剤とを混合して電極材ペーストとし、これをシート上に塗布して電極塗膜とし、この塗膜を乾燥させて電池用の電極とする方法が知られている。このような電極塗膜の乾燥においては、塗膜の表面から溶剤が乾燥するため、塗膜中のバインダーが溶剤と共に塗膜表面側に移動し、塗膜表面側のバインダー濃度が高まるという現象が生じる。バインダーは電極材同士や導電材同士を接着する役割を果たすため、電極中のバインダーの分布はできるだけ均一であることが好ましい。この課題を解決するため、例えば特許文献1には、初期段階では塗膜温度を速やかに上昇させ、溶剤が蒸発して電極材が塗膜の表面に露出した以降は、中期段階としてシート温度より低い温度の熱風と赤外線照射により塗膜全体を加熱することが記載されている。これにより、電極の厚さ方向におけるバインダーの分布が均一化され、電極の剥離やひび割れの発生を防止できるとしている。
特許第4801233号公報
特許文献1に記載の乾燥方法では、電極の厚さ方向におけるバインダーの分布が均一化される。これをさらに改良して、バインダーの分布をより均一化することが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、電池用電極塗膜を乾燥するにあたり、電極の厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化することを主目的とする。
本発明者らは、電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストをシート上に塗布した電池用電極塗膜を乾燥するにあたり、塗膜からの溶剤の蒸発速度及び塗膜温度がバインダーの分布と関連があることを見いだした。そして、さらに検討した結果、溶剤の蒸発速度及び塗膜温度を共に適切に制御することでバインダーの分布をより均一にできることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法は、
電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストをシート上に塗布した電池用電極塗膜の乾燥方法であって、
塗膜温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、該塗膜温度一定期間中に該塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように前記塗膜を乾燥する工程、
を含むものである。
この本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法では、塗膜温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜を乾燥する。こうすることで、乾燥後の塗膜すなわち電極の、厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化することができる。なお、バインダーの分布をより均一化することができる理由は次のように考えられる。加熱により塗膜表層から溶剤が蒸発すると、溶剤の塗膜表層への移動に伴ってバインダーも表層へ移動する。バインダーは蒸発できないため、この移動により、塗膜の表層側のバインダー濃度は一時的に上昇する。しかし、塗膜の表層側のバインダー濃度が高まることにより、塗膜の表層側と下層側とでバインダーの濃度差が生じ、この濃度差が駆動力となって、表層から下層へバインダーの拡散が生じる(以下、これを逆拡散とも表記する)。本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法では、塗膜温度一定期間に蒸発速度のピークを少なくとも2つ有しており、このうち1つ目のピークでは蒸発速度が急激に高まることで塗膜の表層側のバインダー濃度が急激に上昇し、逆拡散の駆動力がより高いものとなると考えられる。そして、逆拡散の駆動力がより高いものとなることで、1つ目のピークから2つ目のピークまでの間において逆拡散の駆動力によりバインダーが塗膜の下層側に移動して、バインダーの分布をより均一化できていると考えられる。このように、厚み方向のバインダー濃度分布は、溶剤蒸発に伴う随伴と逆拡散とのバランスによって決定される。ここで、逆拡散の駆動力が高まった後も引き続き蒸発速度が高い状態とすると、逆拡散の効果を上回る速度で蒸発が進行した結果バインダーが表層付近に集中してしまったり、あるいは、逆拡散の効果が現れる前にバインダーが析出固化した結果、同様に表層付近に定着してしまったりする。本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法では、溶剤の蒸発速度のピークを2つ有する、すなわち1つ目のピークと2つ目のピークとの間で蒸発速度を一端低下させることで、その間、逆拡散による駆動を支配的にすることができ、これによりバインダーの分布をより均一化できていると考えられる。しかも、この2つのピークは塗膜温度一定期間中に存在している。すなわち、2つのピーク間で溶剤の蒸発速度を一端低下させる場合には通常は塗膜温度も低下しやすいが、塗膜温度は低下させず一定の状態を保っている。このため、2つのピークの間で蒸発速度が低下するが塗膜温度も低下するような乾燥を行う場合と比較して、2つのピーク間での塗膜温度をより高い温度に保つことができる。逆拡散の駆動力は塗膜温度が高いほど高まるため、このように2つのピークの間で塗膜温度を一定に保つことで、バインダーの分布を均一化する効果がより高くなっていると考えられる。なお、塗膜温度一定期間中には溶剤の蒸発速度のピークが少なくとも2つ存在すれば良く、3つ以上存在してもよい。また、塗膜温度一定期間中以外にも、溶剤の蒸発速度のピークが存在してもよい。ただし、塗膜温度一定期間中の最初のピークが、乾燥工程における最初のピークであることが好ましい。ここで、「塗膜温度が一定」とは、塗膜温度の変動幅が、乾燥開始から終了までの期間における塗膜温度の最大値の5%以下に収まっていることをいうものとする。また、シートは例えばアルミニウムや銅などの金属であるものとしてもよい。また、電池用電極塗膜は、正極,負極いずれの電極塗膜であってもよい。また、電池用電極塗膜は、例えばリチウムイオン電池用の電極塗膜としてもよい。
本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法において、前記工程では、ヒーター及び熱風を用いて前記塗膜を乾燥するものとしてもよい。こうすれば、例えばヒーターの出力と熱風の温度,風量などを調整することで、比較的容易に塗膜温度一定期間を有し且つ溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように乾燥を行うことができる。この場合において、ヒーターは赤外線ヒーターとしてもよい。赤外線ヒーター及び熱風を用いることで、例えば熱風のみにより塗膜を乾燥する場合と比べて、赤外線も併用することで塗膜表面だけでなく塗膜内部の溶剤を速やかに加熱して蒸発させることができる。また、蒸発した溶剤を熱風により速やかに除去することができる。なお、赤外線のうち近赤外線(例えば、波長が0.7〜3.5μmの電磁波)により前記塗膜の加熱を行うことが好ましい。近赤外線は、被加熱物中の水,溶剤などの分子中の水素結合を効率よく切断できるため、被加熱物の加熱や乾燥を効率よく行うことができる。例えば、ピーク波長が近赤外線領域(例えば、波長が0.7〜3.5μmの領域)にある電磁波を用いて加熱を行うものとしてもよい。また、2つのピークの間で蒸発速度を低下させる場合、熱風のみを用いて乾燥を行うと、前述のように塗膜温度も同時に低下してしまう傾向が強いが、赤外線ヒーターを適度に併用することで、蒸発速度を低くした状態でも、塗膜温度のみを両ピーク時の温度と同等に維持することがはるかに容易になる。
この場合において、前記工程は、前記塗膜温度一定期間より前の期間を含む期間である第1乾燥期間と、該塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含む期間である第2乾燥期間と、該塗膜温度一定期間より後の期間を含む期間である第3乾燥期間と、を有しており、前記第2乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を前記第1乾燥期間における該投入エネルギーの平均値以下とし、前記熱風の温度を前記第1乾燥期間における該熱風の温度以上として前記塗膜の乾燥を行い、前記第3乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を前記第2乾燥期間における該投入エネルギーの平均値以上とし、前記熱風の温度を前記第2乾燥期間における該熱風の温度以下として前記塗膜の乾燥を行うものとしてもよい。ヒーターからの塗膜への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値及び熱風の温度がこのような条件を満たすようにヒーターの出力と熱風の温度とを調整することで、比較的容易に塗膜温度一定期間を有し且つ溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように乾燥を行うことができる。
本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法において、前記工程は、前記塗膜温度一定期間より前の期間を含む期間である第1乾燥期間と、該塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含む期間である第2乾燥期間と、該塗膜温度一定期間より後の期間を含む期間である第3乾燥期間と、を有しており、前記第1乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値を4kW/m2〜10kW/m2、前記熱風の温度を90℃〜130℃とし、前記第2乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2kW/m2〜6kW/m2、前記熱風の温度を90℃〜140℃とし、前記第3乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2kW/m2〜7kW/m2、前記熱風の温度を50℃〜140℃としてもよい。なお、前記第1乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値を5kW/m2〜8kW/m2とすることが好ましく、また、前記熱風の温度を100℃〜120℃とすることが好ましい。前記第2乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2.5kW/m2〜5kW/m2とすることが好ましく、また、前記熱風の温度を100℃〜130℃とすることが好ましい。前記第3乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2.5kW/m2〜6kW/m2とすることが好ましく、また、前記熱風の温度を90℃〜110℃とすることが好ましい。
なお、上述した第1乾燥期間は、塗膜温度一定期間より前の期間を含んでいればよく、例えば塗膜温度一定期間の一部を含んでいてもよい。同様に、第3乾燥期間は、塗膜温度一定期間より後の期間を含んでいればよく、例えば塗膜温度一定期間の一部を含んでいてもよい。また、第2乾燥期間は、塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含んでいればよく、例えば塗膜温度一定期間と同じ期間としてもよいし、塗膜温度一定期間より前の期間や後の期間を含んでいてもよい。ただし、第2乾燥期間は、塗膜温度一定期間のうち、溶剤の蒸発速度の2つのピークの間の期間の少なくとも一部を含む期間とすることが好ましい。
本発明の電池用電極塗膜の乾燥炉は、
電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストをシート上に塗布した電池用電極塗膜の乾燥炉であって、
前記塗膜の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、該塗膜温度一定期間中に該塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように前記塗膜を乾燥する乾燥手段、
を備えたものである。
この本発明の電池用電極塗膜の乾燥炉では、上述した本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法により乾燥が行われる。そのため、上述した本発明の電池用電極塗膜の乾燥方法と同様の効果、例えばバインダーの分布をより均一化することができる効果が得られる。なお、この本発明の電池用電極塗膜の乾燥炉において、上述した本発明の乾燥方法の種々の態様を採用してもよいし、上述した本発明の乾燥方法の工程を実現するような構成を追加してもよい。例えば、前記乾燥手段は、上述した第1乾燥期間〜第3乾燥期間のそれぞれにおける乾燥を行う第1〜第3ヒーター及び第1〜第3熱風供給装置を有するものとしてもよい。この場合、第1乾燥期間では第1ヒーター及び第1熱風供給装置による乾燥が行われ、第2乾燥期間では第2ヒーター及び第2熱風供給装置による乾燥が行われ、第3乾燥期間では第3ヒーター及び第3熱風供給装置による乾燥が行われるように電池用電極塗膜を移動させる移動手段をさらに備えるものとしてもよい。あるいは、前記乾燥手段は、ヒーターの出力を制御するヒーター制御手段及び熱風の温度などを制御する熱風制御手段を有するものとし、これらの制御手段が時間の経過に伴いヒーターの出力や熱風の温度などを適宜変更させて(電池用電極塗膜を移動させずに)前記工程を行うよう制御するものとしてもよい。
乾燥炉10の縦断面図である。 赤外線ヒーター30の縦断面図である。 図2のA−A断面図である。 各加熱領域(各乾燥期間)と塗膜52の温度及び塗膜52からの溶剤の蒸発速度との関係を示す説明図である。 実施例1の乾燥工程における蒸発曲線及び塗膜温度曲線のグラフである。 比較例1の乾燥工程における蒸発曲線及び塗膜温度曲線のグラフである。 実施例2の乾燥工程における蒸発曲線及び塗膜温度曲線のグラフである。 比較例2の乾燥工程における蒸発曲線及び塗膜温度曲線のグラフである。
次に、本発明の好適な一実施形態について、図面を用いて説明する。図1は乾燥炉10の縦断面図である。乾燥炉10は、シート50上に塗布された塗膜52の加熱及び乾燥を赤外線及び熱風を用いて行うものであり、炉体14と、搬送通路19と、送風装置20と、赤外線ヒーター30と、コントローラー60と、を備えている。また、乾燥炉10は、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13を有する。
炉体14は、略直方体に形成された断熱構造体であり、前端面15及び後端面16にそれぞれ開口17,18を有している。この炉体14は、前端面15から後端面16までの長さが例えば4〜10mである。
搬送通路19は、開口17から開口18に至る通路であり、炉体14を水平方向に貫通している。片面に塗膜52が塗布されたシート50は、この搬送通路19を通過していく。シート50は、塗膜52が塗布された面を上にして、開口17から搬入され、炉体14の内部を水平方向に進行し、開口18から搬出される。
送風装置20は、熱風を送風して乾燥炉10内を通過する塗膜52を乾燥させる装置である。送風装置20は、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13の上側にそれぞれ配置された送風装置20a,20b,20cと、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13の下側にそれぞれ配置された送風装置20d,20e,20fと、を有している。送風装置20a〜20fはそれぞれ、熱風発生器22a〜22fと、パイプ構造体24a〜24fと、通気口26a〜26fとを備えている。以下、送風装置20aを用いて説明する。送風装置20aは、熱風発生器22aと、パイプ構造体24aと、通気口26aとを備えている。熱風発生器22aは、パイプ構造体24aに取り付けられており、熱風をパイプ構造体24aの内部へ供給するものである。熱風は、例えば空気を加熱したものである。この熱風発生機22aは、発生させる熱風の風量や温度の調節が可能となっている。熱風の風量は、特に限定するものではないが、例えば100Nm3/h〜2000Nm3/hの範囲で調節可能である。熱風の温度は、特に限定するものではないが、例えば40〜200℃の範囲で調節可能である。パイプ構造体24aは、熱風発生器22aからの熱風の通路となるものであり、熱風発生器22aから炉体14内に向かって分岐した複数の通路を有している。パイプ構造体24aは、分岐した通路の部分で炉体14の天井を貫通しており、分岐した通路は鉛直下方向を向いている。この分岐した通路の下端が通気口26aとなっており、通気口26aも鉛直下方向を向いている。本実施形態では、パイプ構造体24aは分岐した通路を7つ有してをおり、通気口26aも7つ形成されているものとした。これにより、送風装置20aの熱風発生器22aからの熱風は、7つの通気口26aから鉛直下方向に送風され、第1加熱領域11において塗膜52の表面に垂直に当たるようになっている。また、通気口26aは、第1加熱領域11の前端面15側から後端面16側にわたって略均等に設けられている。熱風発生器22b〜22f,パイプ構造体24b〜24f,通気口26b〜26fについても、それぞれ熱風発生器22a,パイプ構造体24a,通気口26aと同様の構成である。ただし、送風装置20d〜20fは、それぞれ送風装置20a〜20cを図1における上下に逆転させた構成をしており、鉛直上方向の熱風を発生させる。すなわち、熱風発生器22d〜22fからの熱風は、それぞれ通気口26d〜26fから鉛直上方向に送風され、シート50の裏面(塗膜52が形成された面とは反対側の面)に垂直に当たるようになっている。なお、以下では、熱風発生器22a〜22fを熱風発生器22と総称し、パイプ構造体24a〜24fをパイプ構造体24と総称し、通気口26a〜26fを通気口26と総称する。
赤外線ヒーター30は、赤外線を照射して乾燥炉10内を通過する塗膜52を乾燥させる装置であり、炉体14の天井近くに複数取り付けられている。赤外線ヒーター30は、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13にそれぞれ配置された赤外線ヒーター30a,30b,30cを有している。特に限定するものではないが、本実施形態では、赤外線ヒーター30aは第1加熱領域11の前端面15側から後端面16側にわたって略均等に6本配置され、赤外線ヒーター30bは、第2加熱領域12の前端面15側に1本,後端面16側に1本配置され、赤外線ヒーター30cは、第3加熱領域13の前端面15側に2本,後端面16側に2本配置されている。これらの各赤外線ヒーター30は、同様の構成を有しており、いずれも長手方向が搬送方向と直交するように取り付けられている。
図2は、赤外線ヒーター30の縦断面図であり、図3は図2のA−A断面図である。赤外線ヒーター30は、図2及び図3に示すように、フィラメント32を内管36が囲むように形成されたヒーター本体38と、このヒーター本体38を囲むように形成された外管40と、外管40の両端に気密に嵌め込まれた有底筒状のキャップ42と、ヒーター本体38と外管40との間に形成され冷却流体が流通可能な流路48と、外管40の表面温度を検出する温度センサ37と、を備えている。フィラメント32は、電力供給源80から電力が供給されて、例えば700〜1500℃に通電加熱され(例えば1700℃など、1500℃以上に通電加熱可能であってもよい)、波長が3μm付近にピークを持つ赤外線を放射する。このフィラメント32に接続された電気配線34は、キャップ42に設けられた配線引出部44を介して気密に外部へ引き出され、電力供給源80に接続されている。内管36は、石英ガラスやホウ珪酸クラウンガラスなどで作製されており、3.5μm以下の波長の赤外線を通過し、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する。ヒーター本体38は、両端がキャップ42の内部に配置されたホルダー49に支持されている。外管40は、内管36と同様、石英ガラスやホウ珪酸クラウンガラスなどで作製されており、3.5μm以下の波長の赤外線を通過し、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する。各キャップ42は、流体出入口46を有している。流路48は、冷却流体供給源70から供給された冷却流体が、一方の流体出入口46から他方の流体出入口46へ冷却流体が流れるようになっている。流路48を流れる冷却流体は、例えば空気や不活性ガスなどであり、内管36と外管40に接触して熱を奪うことにより各管36,40を冷却する。こうした赤外線ヒーター30は、フィラメント32から波長が3μm付近にピークを持つ赤外線が放射されると、そのうち3.5μm以下の波長の赤外線は内管36や外管40を通過して搬送通路を通過するシート50の塗膜52に照射される。これにより、赤外線ヒーター30は、塗膜52に対してピーク波長が3.5μm以下である赤外線を照射することになる。3.5μm以下の波長の赤外線は、シート50の塗膜52に含まれる溶剤の水素結合を切断する能力に優れるといわれており、効率的に溶剤を蒸発させることができる。一方、内管36や外管40は、3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するが、流路48を流れる冷却流体によって冷却されるため、塗膜52から蒸発する溶剤の着火点未満の温度(例えば200℃以下など)に維持することが可能である。
コントローラー60は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。このコントローラー60は、送風装置20の熱風発生器22a〜22fに制御信号を出力して、熱風発生器22a〜22fで発生させる熱風の温度及び風量を個別に制御する。また、コントローラー60は、熱電対である温度センサ37が検出した外管40の温度を入力したり、冷却流体供給源70と流体出入口46とを接続する配管の途中に設けられた開閉弁72及び流量調整弁74に制御信号を出力したりして、赤外線ヒーター30a〜30cの流路48を流れる冷却流体の流量を個別に制御する。更に、コントローラー60は、電力供給源80からフィラメント32へ供給される電力の大きさを調整するための制御信号を電力供給源80へ出力して、赤外線ヒーター30a〜30cのフィラメント温度を個別に制御する。また、コントローラー60は、ロール54,56の回転速度を制御することで炉体14内の塗膜52の通過時間を調整することができる。
シート50は、特に限定するものではないが、例えば、アルミニウムや銅等の金属シートである。また、シート上の塗膜52は、乾燥後に電池用の電極として用いられるものであり、特に限定するものではないが、例えばリチウムイオン二次電池要の電極となる塗膜である。塗膜52としては、例えば、電極材(正極活物質又は負極活物質)とバインダーと導電材と溶剤とを共に混練した電極材ペーストを、シート50上に塗布したもの等が上げられる。電極材は、正極活物質としてはコバルト酸リチウムなどが挙げられ、負極活物質としてはグラファイトなどの炭素材が挙げられる。バインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。導電材としては、カーボン粉末などが挙げられる。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが挙げられる。塗膜52の厚みは、特に限定するものではないが、例えば50〜1000μmである。塗膜の厚みは50μm以下としてもよい。
次に、こうして構成された乾燥炉10を用いて塗膜52を乾燥する様子について説明する。まず、乾燥炉10の左端に配置されたロール54からシート50が巻き外され、乾燥炉10に搬入される直前に図示しないコーターによって上面に塗膜52が塗布され、乾燥炉10の開口17を通って乾燥炉10内へ搬入される。続いて、シート50は、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13を通過し、その間に送風装置20及び赤外線ヒーター30により加熱されることにより塗膜52から溶剤が蒸発する。より具体的には、塗膜52は、第1加熱領域11を通過する際に送風装置20a,20d及び赤外線ヒーター30aにより加熱され、第2加熱領域12を通過する際に送風装置20b,20e及び赤外線ヒーター30bにより加熱され、第3加熱領域13を通過する際に送風装置20c,20f及び赤外線ヒーター30cにより加熱される。なお、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13における塗膜52の加熱をそれぞれ第1加熱,第2加熱,第3加熱とも称する。また、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13において塗膜52を乾燥する期間(=塗膜52が各領域を通過する期間)をそれぞれ第1乾燥期間,第2乾燥期間,第3乾燥期間とも称する。塗膜52から加熱により蒸発した溶剤は図示しない排気口から例えばブロワによって外部へ排出される。塗膜52は、最終的に乾燥炉10の開口18から搬出され、乾燥炉10の右端に設置されたロール56にシート50とともに巻き取られる。塗膜52から溶剤が蒸発するのは、赤外線ヒーター30から照射される赤外線と送風装置20から供給される熱風の作用による。
本実施形態の乾燥炉10は、このように第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13において塗膜52を乾燥する際に、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥するよう構成されている。図4は、各加熱領域(各乾燥期間)と、塗膜52の温度及び塗膜52からの溶剤の蒸発速度との関係を示す説明図である。図4において、時刻0〜時刻T1は塗膜52が第1加熱領域11を通過する期間(第1乾燥期間)を示し、時刻T1〜時刻T2は塗膜52が第2加熱領域12を通過する期間(第2乾燥期間)を示し、時刻T2〜時刻T3は塗膜52が第3加熱領域13を通過する期間(第3乾燥期間)を示している。なお、図4において蒸発速度の単位として示したmg/(s・cm2)は、塗膜52の表面積1cm2あたりの1秒間の溶剤の蒸発量(mg)を意味する。
塗膜温度は、図4に示すように、第1乾燥期間において上昇し、その後に一定となる。そして、第2乾燥期間中は塗膜温度が一定のままであり、第3乾燥期間中において塗膜温度が一定状態から温度が低下していく。すなわち、乾燥工程における塗膜温度には塗膜温度一定期間を有する。なお、「塗膜温度が一定」とは、図示するように、乾燥開始から終了までの期間における塗膜温度の最大値をTsmaxとして、塗膜温度の変動幅が最大値Tsmaxの5%以下に収まっていることをいうものとする。なお、図4では、塗膜温度一定期間は第2乾燥期間を全て含んでおり、第1乾燥期間及び第3乾燥期間の一部も含んでいる。
溶剤の蒸発速度は、図4に示すように、第1乾燥期間においては、時刻0から時刻T1に向けて時間の経過とともに上昇していき、第1乾燥期間と第2乾燥期間との境界である時刻T1付近でピークP1となる。続いて、第2乾燥期間においては、時刻T1から蒸発速度が急激に減少していき、その後、略一定の蒸発速度が保たれる。そして、第3乾燥期間においては、時刻T2から蒸発速度が急激に上昇し、ピークP2となった後、徐々に減少していく。第3乾燥期間により塗膜52の溶剤がほぼ全て(例えば溶剤が1000ppm以下)蒸発するため、第3乾燥期間の終了時である時刻T3では、蒸発速度はほぼ値0になる。このように、蒸発速度は、乾燥工程において2つのピークP1,P2を有している。そして、このピークP1,P2はいずれも塗膜温度一定期間中に含まれている。なお、溶剤の蒸発速度には、3つ以上のピークが存在していてもよい。また、塗膜温度一定期間中以外にも、溶剤の蒸発速度のピークが存在してもよい。ただし、塗膜温度一定期間中の最初のピーク(図4ではピークP1)が、乾燥工程における最初のピークであることが好ましい。
本実施形態の乾燥炉10は、図4に示した塗膜温度及び蒸発速度が得られるように、送風装置20の熱風の風量及び温度、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び冷却流体の流量が例えば実験により予め定められているものとした。本実施形態では、第1〜第3乾燥期間における赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値(kW/m2)をそれぞれ平均投入エネルギーE1,E2,E3とし、第1〜第3乾燥期間における熱風の温度(℃)をそれぞれ熱風温度Th1,Th2,Th3としたとき、E1≧E2≦E3,且つTh1≦Th2≧Th3となるように赤外線ヒーター30のフィラメント温度や熱風の温度を定めるものとした。
ここで、4kW/m2≦E1≦10kW/m2,2kW/m2≦E2≦6kW/m2,2kW/m2≦E3≦7kW/m2,90℃≦Th1≦130℃,90℃≦Th2≦140℃,50℃≦Th3≦140℃とすることが好ましい。さらに、平均投入エネルギーE1は5kW/m2≦E1≦8kW/m2とすることがより好ましい。平均投入エネルギーE2は2.5kW/m2≦E2≦5kW/m2とすることがより好ましい。平均投入エネルギーE3は2.5kW/m2≦E3≦6kW/m2とすることがより好ましい。また、熱風温度Th1は100℃≦Th1≦120℃とすることがより好ましい。熱風温度Th2は100℃≦Th2≦130℃とすることがより好ましい。熱風温度Th3は90℃≦Th3≦110℃とすることがより好ましい。
なお、時刻T1,T2,T3は、第1加熱領域11〜第3加熱領域13の長さ(図1の左右方向長さ)や、シート50の移動速度(搬送速度)などにより定まる。本実施形態の乾燥炉10は、図4に示した塗膜温度及び蒸発曲線が得られるように、第1加熱領域11〜第3加熱領域13の長さや、シート50の移動速度についても例えば実験により予め定められているものとした。
このように、塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥することで、乾燥後の塗膜52すなわち電極の、厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化することができる。この理由は次のように考えられる。まず、塗膜温度一定期間中の2つのピークP1,P2のうち1つ目のピークP1では、蒸発速度が急激に高まることで塗膜52の表層側のバインダー濃度が急激に上昇し、逆拡散の駆動力がより高いものとなると考えられる。そして、逆拡散の駆動力がより高いものとなることで、ピークP1からピークP2までの間において逆拡散の駆動力によりバインダーが塗膜52の下層側に移動して、バインダーの分布をより均一化できていると考えられる。このように、厚み方向のバインダー濃度分布は、溶剤蒸発に伴う随伴と逆拡散とのバランスによって決定される。ここで、逆拡散の駆動力が高まった後も引き続き蒸発速度が高い状態とすると、逆拡散の効果を上回る速度で蒸発が進行した結果バインダーが表層付近に集中してしまったり、あるいは、逆拡散の効果が現れる前にバインダーが析出固化した結果、同様に表層付近に定着してしまったりする。本実施形態では、溶剤の蒸発速度のピークを2つ有する、すなわち1つ目のピークと2つ目のピークとの間で蒸発速度を一端低下させることで、その間、逆拡散による駆動を支配的にすることができ、これによりバインダーの分布をより均一化できていると考えられる。しかも、このピークP1,P2は塗膜温度一定期間中に存在している。すなわち、ピークP1,P2間で溶剤の蒸発速度を一端低下させる場合には通常は塗膜温度も低下しやすいが、塗膜温度は低下させず一定の状態を保っている。このため、ピークP1,P2間で蒸発速度が低下するが塗膜温度も低下するような乾燥を行う場合と比較して、ピークP1,P2間での塗膜温度をより高い温度に保つことができる。逆拡散の駆動力は塗膜温度が高いほど高まるため、このようにピークP1,P2間で塗膜温度を一定に保つことで、バインダーの分布を均一化する効果がより高くなっていると考えられる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の塗膜52が電池用電極塗膜に相当し、送風装置20及び赤外線ヒーター30が乾燥手段に相当する。
以上説明した本実施形態の乾燥炉10によれば、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥するため、乾燥後の塗膜52すなわち電極の、厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化することができる。また、赤外線ヒーター30及び送風装置20からの熱風を用いて塗膜52を乾燥するため、比較的容易に塗膜温度一定期間を有し且つ溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように乾燥を行うことができる。
また、乾燥工程は、塗膜温度一定期間より前の期間を含む期間である第1乾燥期間と、塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含む期間である第2乾燥期間と、塗膜温度一定期間より後の期間を含む期間である第3乾燥期間と、を有している。そして、第2乾燥期間では、赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を第1乾燥期間における塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値以下とし、熱風の温度を第1乾燥期間における熱風の温度以上として塗膜52の乾燥を行う。第3乾燥期間では、赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を第2乾燥期間における塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値以上とし、熱風の温度を第2乾燥期間における熱風の温度以下として塗膜52の乾燥を行う。赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値及び熱風の温度がこのような条件を満たすように赤外線ヒーター30の出力と熱風の温度とを調整することで、比較的容易に塗膜温度一定期間を有し且つ溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように乾燥を行うことができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、図4に示した塗膜温度及び蒸発曲線となるように塗膜52の乾燥を行うものとしたが、これに限られない。塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥するものであればよい。例えば、図4においてピークP1は時刻T1付近に位置するものとし、ピークP2は第3乾燥期間に含まれるものとしたが、ピークP1,P2は第1〜第3乾燥期間のいずれにあってもよい。ただし、ピークP1は第1乾燥期間又は第2乾燥期間に存在することが好ましく、ピークP2は第2乾燥期間又は第3乾燥期間に存在することが好ましい。また、図4では、塗膜温度一定期間中に塗膜温度が最大値Tsmaxとなっているが、塗膜温度一定期間以外の期間で塗膜温度が最大となってもいい。さらに、複数の塗膜温度一定期間を有するように塗膜52の乾燥を行うものとしてもよい。この場合、複数の塗膜温度一定期間のうちの少なくともいずれか1つの塗膜温度一定期間中に、塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有していればよい。なお、塗膜温度一定期間(ピークを少なくとも2つ有する塗膜温度一定期間)は、乾燥工程の全期間(図4の場合は時刻0〜T3)のうち30%〜70%を占める期間とするのが好ましい。また、塗膜温度一定期間に含まれる蒸発速度の2つのピークの間の期間において、1つ目のピークの蒸発速度の値(ピーク値)の80%以下まで蒸発速度が低下することが好ましい。
上述した実施形態では、第1乾燥期間及び第3乾燥期間が塗膜温度一定期間の一部を含むものとしたが、含まないものとしてもよい。また、塗膜温度一定期間は第2乾燥期間を全て含んでいるものとしたが、第2乾燥期間が塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含んでいればよい。ただし、第2乾燥期間は、塗膜温度一定期間のうち、溶剤の蒸発速度の2つのピークの間の期間の少なくとも一部を含む期間とすることが好ましい。
上述した実施形態では、第1〜第3乾燥期間を有するものとしたが、特にこれに限られない。4つ以上の乾燥期間を有するものとしてもよいし、2つの乾燥期間のみ有するものとしてもよい。例えば、第3乾燥期間を省略するものとしてもよい。この場合、第1〜第2乾燥期間の間に、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥すればよい。また、第2乾燥期間の終了時に溶剤をほぼ全て蒸発させるようにすればよい。第1〜第3乾燥期間のような期間の区分が存在しなくともよい。
上述した実施形態では、図4のピークP1とピークP2とでは、ピークP1の方が蒸発速度が大きいものとしたが、特にこれに限らず、ピークP1の方が蒸発速度が小さいものとしてもよいし、ピークP1とピークP2とで蒸発速度が同じとしてもよい。ただし、ピークP1の方が蒸発速度が大きいものとすることが好ましい。
上述した実施形態では、第1〜第3乾燥期間における赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値(kW/m2)をそれぞれ平均投入エネルギーE1,E2,E3とし、第1〜第3乾燥期間における熱風の温度(℃)をそれぞれ熱風温度Th1,Th2,Th3としたとき、E1≧E2≦E3,且つTh1≦Th2≧Th3となるように赤外線ヒーターの出力や熱風の温度を定めるものとしたが、これに限られない。例えば、E1>E2≦E3としてもよいし、E1≧E2<E3としてもよいし、E1>E2<E3としてもよい。また、E3≦E1としてもよいし、E3<E1としてもよい。Th1<Th2≧Th3としてもよいし、Th1≦Th2>Th3としてもよいし、Th1<Th2>Th3としてもよい。また、Th3≦Th1としてもよいし、Th3<Th1としてもよい。これらに限らず、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥するものであればよい。
上述した実施形態では、赤外線ヒーター30を用いるものとしたが、他のヒーターを用いてもよい。
上述した実施形態において、第1乾燥期間と第2乾燥期間との境界である時刻T1は、乾燥により塗膜52の電極材が塗膜52の表面に露出する時刻として定められているものとしてもよい。ここで、塗膜52から溶剤が蒸発して塗膜52が薄くなるにつれて、塗膜52の表面の反射率が変化する。一方、さらに溶剤の蒸発が進行して塗膜52の表面に電極材が現れると、塗膜52の表面の反射率はほとんど変化しなくなる。そこで、予め乾燥炉10を通過する際の塗膜52の表面の反射率を測定しておき、第1乾燥期間と第2乾燥期間との境界で塗膜52の表面に電極材が現れるように、第1乾燥期間における送風装置20a,20d及び赤外線ヒーター30aの出力や第1乾燥期間の長さ(図1の左右方向長さ)、シート50の移動速度などを定めておくものとしてもよい。なお、第1乾燥期間を、塗膜52の電極材が塗膜52の表面に露出するまでの期間よりも長く又は短くなるように定めてもよい。
上述した実施形態では、送風装置20及び赤外線ヒーター30により乾燥を行うものとしたが、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥できればよく、送風装置20の構成や赤外線ヒーター30の構成はこれに限られない。例えば、通気口26の数や、赤外線ヒーター30a,30b,30cの配置位置,本数などは適宜変更可能である。例えば、赤外線ヒーター30a,30b,30cの配置や本数を同一としてもよい。送風装置20d,20e,20fを省略するものとしたり、赤外線ヒーター30を図1におけるシート50の下側にも配置するものとしたりしてもよい。また、送風装置20と赤外線ヒーター30の一方を備えない構成としたり、送風装置20や赤外線ヒーター30以外の加熱手段により塗膜52を乾燥させるものとしたりしてもよい。
上述した実施形態では、乾燥炉10が1つの炉体14を備えており、炉体14の中に第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13を備えるものとしたが、これに限られない。例えば、乾燥炉10が第1乾燥期間の乾燥を行うユニットと、第2乾燥期間の乾燥を行うユニットと、第3乾燥期間の乾燥を行うユニットとを連ねて構成したものであるなど、乾燥炉10が複数のユニットからなるものであってもよい。この場合、各ユニットで塗膜52の通過時間(塗膜52の搬送速度)を変えてもよい。
上述した実施形態では、乾燥炉10は、ロール54,56が回転することによりシート50及び塗膜52を搬送することで、ロール54,56が第1加熱領域11〜第3加熱領域13を順次移動するものとしたが、これに限られない。例えば、塗膜52を搬送せずに、赤外線ヒーター及び送風装置の出力を時間の経過に伴い調整することにより、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52を乾燥するものであってもよい。例えば、塗膜52を乾燥炉内に固定しておき、コントローラーが、時刻0〜時刻T1の間は上述した第1乾燥期間の乾燥を行うように赤外線ヒーター及び送風装置の出力を制御し、時刻T1から時刻T2の間は上述した第2乾燥期間の乾燥を行うように赤外線ヒーター及び送風装置の出力を制御し、時刻T2から時刻T3の間は上述した第3乾燥期間の乾燥を行うように赤外線ヒーター及び送風装置の出力を制御するものとしてもよい。
上述した実施形態では、送風装置20や赤外線ヒーター30の出力は予め実験により定められているものとしたが、可変としてもよい。この場合、例えば、塗膜52から蒸発した溶剤の蒸発量を検出する蒸発量センサ及び塗膜52の温度を検出する温度センサを炉体14内の各加熱領域に複数取り付け、これに基づいてコントローラー60が送風装置20及び赤外線ヒーター30の出力を制御するものとしてもよい。より具体的には、この蒸発量センサ及び温度センサからの検出信号を入力したコントローラー60が、蒸発量センサ及び温度センサからの検出信号に基づく蒸発速度及び塗膜温度が予め定めた蒸発速度及び塗膜温度の曲線(例えば図4の蒸発速度や塗膜温度)に近づくように駆動信号を出力して、送風装置20及び赤外線ヒーター30の出力を制御するものとしてもよい。
上述した実施形態において、搬送通路19には、シート50を下方から支える支持ローラを数個設けてもよい。こうすれば、重力によってシート50が撓むのを防止することができる。
上述した実施形態では、赤外線ヒーター30として、フィラメント32の外周が3.5μmを超える波長の赤外線を吸収するフィルタとして機能する複数の管36,40によって同心円状に覆われ、これらの複数の管36,40の間に赤外線ヒーター30の表面温度の上昇を抑制する冷却流体の流路48を形成したものを用いたが、その他の赤外線ヒーターを用いても構わない。
上述した実施形態では、各乾燥炉10の雰囲気ガスとして空気を用いたが、空気の代わりに窒素などの不活性ガスを用いてもよい。
[実施例1]
図1〜3に示した構成の乾燥炉10を実施例1とした。なお、炉体14のうち第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13の長さ(図1の左右方向長さ)はそれぞれ2mとし、乾燥時間は80s(シート50の搬送速度が4.5m/min)とした。また、赤外線ヒーター30b,30cはいずれも赤外線ヒーター30aと同様に各領域に均等に6本配置した。塗膜52を塗布するシート50は幅約600mm、厚み20μmのアルミニウムとし、炉体14に入る前のシート50上の初期塗膜厚みは200μm(wet),乾燥重量130g/m2相当とした。また、塗膜52は、リチウム二次電池の電極用塗膜とし、電極材としてのコバルト酸リチウムと、バインダーとしてのPVDFと、導電材としてのカーボン粉末と、溶剤としてのNMPとを混練した電極材ペーストからなるものとした。なお、第1加熱開始時の電極材ペースト中の溶剤の質量割合(初期溶剤質量割合ともいう)は60.0%であった。塗膜52を乾燥する(乾燥後の塗膜52中の溶剤の質量割合が1000ppm以下となるようにする)にあたり、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを2つ有するように、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量を調整した。具体的には、熱風発生器22aからの熱風の風量は700Nm3/h、温度は100℃とした。熱風発生器22bからの熱風の風量は200Nm3/h、温度は120℃とした。熱風発生器22cからの熱風の風量は600Nm3/h、温度は115℃とした。熱風発生器22dからの熱風の風量は100Nm3/h、温度は100℃とした。熱風発生器22eからの熱風の風量は100Nm3/h、温度は120℃とした。熱風発生器22fからの熱風の風量は600Nm3/h、温度は115℃とした。これらにより、熱風温度Th1=100℃,Th2=120℃,Th3=115℃となった。赤外線ヒーター30については、1100℃〜1500℃の範囲でフィラメント温度を適宜調整し、第1〜第3加熱領域11のそれぞれについて、赤外線ヒーター30からの塗膜52への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値である平均投入エネルギーE1〜E3が、E1=6kW/m2、E2=2.5kW/m2、E3=4kW/m2となるようにした。赤外線ヒーター30の流路48には冷却流体として所定流量の空気を流すものとし、外管40の外周面温度が200℃以下に維持されるようにした。
なお、平均投入エネルギーE1〜E3は、「各乾燥期間中における各ヒーターの消費電力の平均値の合計値」を、「各乾燥期間に対応する炉体14の底面積(=炉体14の各乾燥期間に対応する部分のうち塗膜52に平行な断面の面積)」で除することで算出した。具体的には、平均投入エネルギーE1は、以下のようにして求めた。まず、第1加熱領域11の6本の赤外線ヒーター30aの各々について、調整したフィラメント温度で発熱させる際の消費電力の平均値(=第1乾燥期間中の消費電力の平均値)を算出し、6本の合計値を算出した。そして、その合計値を第1加熱領域11の底面積(図1における下面の面積で除すことで、平均投入エネルギーE1を算出した。同様に、第2加熱領域12の6本の赤外線ヒーター30bの消費電力の平均値の合計値と第2加熱領域12の底面積とから平均投入エネルギーE2を算出した。第3加熱領域13の6本の赤外線ヒーター30cの消費電力の平均値の合計値と第3加熱領域13の底面積とから平均投入エネルギーE3を算出した。
[実施例2]
炉体14に入る前のシート50上の塗膜52を乾燥重量170g/m2相当とし、塗膜52の初期溶剤質量割合を50.0%とした点以外は、実施例1と同様の構成の乾燥炉10を実施例2とした。なお、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを2つ有するように、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量を調整した。具体的には、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量は、E3=2.5kW/m2となるように赤外線ヒーター30cのフィラメント温度を1100℃〜1500℃の範囲で適宜調整し、熱風発生器22aからの熱風の風量を600Nm3/hとした点以外は、実施例1と同じとした。
[比較例1]
塗膜52の温度が第2乾燥期間で一旦低下し、蒸発速度のピークを2つ有する塗膜温度一定期間が存在しなくなるように、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量を調整した点以外は実施例1と同様の構成の乾燥炉10を比較例1とした。具体的には、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量は、熱風発生器22b,22eからの熱風の温度をそれぞれ90℃(熱風温度Th2=90℃)とし、熱風発生器22c,22fからの熱風の温度をそれぞれ130℃(熱風温度Th3=130℃)とした点以外は、実施例1と同じとした。
[比較例2]
塗膜52の温度が第2乾燥期間で一旦低下し、蒸発速度のピークを2つ有する塗膜温度一定期間が存在しなくなるように、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量を調整した点以外は実施例2と同様の構成の乾燥炉10を比較例2とした。具体的には、赤外線ヒーター30のフィラメント温度及び送風装置20の熱風の温度,風量は、熱風発生器22b,22eからの熱風の温度をそれぞれ90℃(熱風温度Th2=90℃)とし、熱風発生器22c,22fからの熱風の温度をそれぞれ130℃(熱風温度Th3=130℃)とした点以外は、実施例2と同じとした。
[評価試験1]
実施例1,2及び比較例1,2の乾燥炉10について、塗膜52を乾燥させたときの蒸発速度,塗膜温度及びバインダーの分布を調べた。バインダー分布の評価は以下のように行った。第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13を通過したあとの塗膜52を厚さ方向に3分割して上層,中層,下層とし、バインダー分布比=(上層のバインダー質量/下層のバインダー質量)を算出した。そして、比較例1のバインダー分布比を基準(値1)として、実施例1,2及び比較例1,2のバインダー分布比の相対値を求めた。この値を相対偏析指数と称する。
なお、塗膜の蒸発速度(蒸発曲線)は以下のようにして求めた。まず、塗膜の蒸発速度を以下のようにして算出した。シートに塗膜を塗布した際の塗膜の質量を測定し、第1加熱時の電極材ペ−スト質量(初期質量)とした。次に、塗膜を塗布したシートが開口17から炉体14に入り、蒸発速度を測定したいポイントに塗膜が到達するまで加熱・送風を行った。測定ポイントに到達後は加熱・送風を停止し、炉体14の開口18から出た塗膜を取り出して、塗膜の質量を測定した。これを、測定ポイントを変えて複数のポイントについて行い、各測定ポイントでの塗膜の質量を測定した。続いて、隣接する測定ポイント間における塗膜の質量の差を求め(最も開口17側の測定ポイントについては初期質量との差を求めた)、これを測定ポイント間の溶剤の蒸発量とした。そして、測定ポイント間の溶剤の蒸発量を、測定ポイント間の塗膜の移動時間で除した値を、測定ポイント間の塗膜の蒸発速度として算出した。このようにして塗膜の蒸発速度を複数算出し、横軸を時刻としたグラフ(炉体14内に塗膜が入ったときを時刻0とする)にプロットして蒸発曲線を求めた。
実施例1,2及び比較例1,2における、第1加熱領域11,第2加熱領域12,第3加熱領域13の乾燥条件、相対偏析指数を表1にまとめて示す。なお、表1では、送風装置20a,20b,20cからの熱風を上側熱風と表記し、送風装置20d,20e,20fからの熱風を下側熱風と表記した。また、実施例1,比較例1,実施例2,及び比較例2の乾燥工程における蒸発曲線及び塗膜温度曲線を図5〜8に示す。
Figure 0005325332
図5〜8に示すように、実施例1,2及び比較例1,2の乾燥工程では、時刻0sから時刻26.7s(=80/3秒)までが第1乾燥期間、時刻26.7s(=80/3秒)から時刻53.3s(=80×2/3秒)までが第2乾燥期間、時刻53.3s(=80×2/3秒)から時刻80sまでが第3乾燥期間となっている。図5に示すように、実施例1では、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間(時刻18s〜時刻71s)を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを2つ(時刻20s,時刻55s)有していることが確認できた。図7に示すように、実施例2では、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間(時刻18s〜時刻71s)を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを2つ(時刻20〜23s,時刻55s)有していることが確認できた。一方、図6,8に示すように、比較例1,2では、蒸発速度のピークは2つ存在するものの、塗膜52の温度が第2乾燥期間で一旦低下しており、蒸発速度のピークを少なくとも2つ有する塗膜温度一定期間が存在しなかった。
表1から明らかなように、相対偏析指数は、実施例1が値0.78、実施例2が値0.85、比較例1が値1,比較例2が値0.99であった。初期溶剤質量割合が同じ値である実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1は比較例1に比べて相対偏析指数が22%小さくなっており、乾燥後のバインダーの分布がより均一になっていることが確認できた。同様に実施例2と比較例2とを比較すると、実施例2は比較例2に比べて相対偏析指数が約15%小さくなっており、乾燥後のバインダーの分布がより均一になっていることが確認できた。実施例1,2では、塗膜52の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、塗膜温度一定期間中に塗膜52の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように塗膜52の乾燥を行うことで、塗膜52の厚さ方向におけるバインダーの分布をより均一化できているものと考えられる。
また、実施例1,2のいずれも、比較例1,2よりも相対偏析指数が小さくなっていた。なお、乾燥後の塗膜52内部ではいずれも上層側へのバインダーの偏析が認められ、実施例1,2及び比較例1,2のいずれの場合もバインダー分布比の値は1以上であったが、相対偏析指数からもわかるように実施例1,2は比較例1,2と比べてバインダー分布比が十分小さい値(1に近い値)になっていた。
本発明は、電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストが塗布されたシートを乾燥する必要のある産業、例えば塗膜を乾燥させてリチウムイオン二次電池の電極を製造する電池産業などに利用可能である。
10 乾燥炉、11 第1加熱領域、12 第2加熱領域、13 第3加熱領域、14 炉体、15 前端面、16 後端面、17,18 開口、19 搬送通路、20,20a〜20f 送風装置、22,22a〜22f 熱風発生器、24,24a〜24f パイプ構造体、26,26a〜26f 通気口、30,30a〜30c 赤外線ヒーター、32 フィラメント、34 電気配線、36 内管、37 温度センサ、38 ヒーター本体、40 外管、42 キャップ、44 配線引出部、46 流体出入口、48 流路、49 ホルダー、50 シート、52 塗膜、54,56 ロール、60 コントローラー、70 冷却流体供給源、72 開閉弁、74 流量調整弁、80 電力供給源。

Claims (6)

  1. 電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストをシート上に塗布した電池用電極塗膜の乾燥方法であって、
    塗膜温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、該塗膜温度一定期間中に該塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように前記塗膜を乾燥する工程、
    を含む電池用電極塗膜の乾燥方法。
  2. 前記工程では、ヒーター及び熱風を用いて前記塗膜を乾燥する、
    請求項1に記載の電池用電極塗膜の乾燥方法。
  3. 前記工程は、前記塗膜温度一定期間より前の期間を含む期間である第1乾燥期間と、該塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含む期間である第2乾燥期間と、該塗膜温度一定期間より後の期間を含む期間である第3乾燥期間と、を有しており、
    前記第2乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を前記第1乾燥期間における該投入エネルギーの平均値以下とし、前記熱風の温度を前記第1乾燥期間における該熱風の温度以上として前記塗膜の乾燥を行い、
    前記第3乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギー(kW/m2)の平均値を前記第2乾燥期間における該投入エネルギーの平均値以上とし、前記熱風の温度を前記第2乾燥期間における該熱風の温度以下として前記塗膜の乾燥を行う、
    請求項2に記載の電池用電極塗膜の乾燥方法。
  4. 前記工程は、前記塗膜温度一定期間より前の期間を含む期間である第1乾燥期間と、該塗膜温度一定期間の少なくとも一部を含む期間である第2乾燥期間と、該塗膜温度一定期間より後の期間を含む期間である第3乾燥期間と、を有しており、
    前記第1乾燥期間では、前記ヒーターからの前記塗膜への単位面積当たりの投入エネルギーの平均値を4kW/m2〜10kW/m2、前記熱風の温度を90℃〜130℃とし、
    前記第2乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2kW/m2〜6kW/m2、前記熱風の温度を90℃〜140℃とし、
    前記第3乾燥期間では、前記投入エネルギーの平均値を2kW/m2〜7kW/m2、前記熱風の温度を50℃〜140℃とする、
    請求項2又は3に記載の電池用電極塗膜の乾燥方法。
  5. 前記工程では、前記ヒーターとして、赤外線ヒーターを用いる、
    請求項2〜4のいずれか1項に記載の電池用電極塗膜の乾燥方法。
  6. 電極材とバインダーと導電材と溶剤とを含む電極材ペーストをシート上に塗布した電池用電極塗膜の乾燥炉であって、
    前記塗膜の温度が一定となる塗膜温度一定期間を有し、且つ、該塗膜温度一定期間中に該塗膜の溶剤の蒸発速度のピークを少なくとも2つ有するように前記塗膜を乾燥する乾燥手段、
    を備えた電池用電極塗膜の乾燥炉。
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