JP5292942B2 - 回路基板用樹脂組成物、プリプレグおよび積層板 - Google Patents

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本発明は、回路基板用樹脂組成物、プリプレグおよび積層板に関する。
ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話等の情報処理機器は高速化が要求されておりCPUクロック周波数が高くなっている。そのため信号伝搬速度の高速化が要求されており、高速化に誘電率および誘電正接の低いプリント板であることが必要とされる。
誘電率および誘電正接を低減するために、エポキシ樹脂および硬化剤の当量が大きいものを使用し、エポキシ樹脂の反応によって生じる水酸基を減らすことが一般に行われている。しかし、この手法では、架橋密度が低下し、十分なガラス転移点が得られず、耐熱性に劣る結果となっていた。また、水酸基の減少により密着性が劣る結果となっていた。
特開平8−20710 号公報 特開平8−169936 号公報 特開平11−35659 号公報 特開平11−181052 号公報
本発明は、誘電率、誘電正接が低く、優れた耐熱性および密着性を有する回路基板用樹脂組成物、及び、これを用いたプリプレグと積層板を提供するものである。
このような目的は、下記(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1) 分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を有する回路基板用樹脂組成物であって、前記分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と、前記2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体との当量比は0.8以上、1.2以下の範囲であり、前記分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂はビフェニルアラルキルエポキシ樹脂及びナフタレンアラルキルエポキシ樹脂から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする回路基板用樹脂組成物。
(2) 前記回路基板用樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電正接が、0.0
05以上、0.020以下である請求項1に記載の回路基板用樹脂組成物。
(3) (1)ないし(2)のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
(4) (3)に記載のプリプレグを1枚以上成形してなることを特徴とする積層板。
誘電率、誘電正接が低く、優れた耐熱性および密着性を有する回路基板用樹脂組成物、及び、これを用いたプリプレグと積層板を提供することができる。
以下、本発明の回路基板用樹脂組成物、プリプレグおよび積層板について説明する。
本発明の回路板用樹脂組成物は、基材として金属箔に直接樹脂組成物を形成し、樹脂付き銅箔として用いたり、基材としてガラス繊維基材に樹脂組成物を含浸させプリプレグとして、多層基板の層間絶縁材として用いたり、プリプレグと金属箔を積層し加熱加圧して積層板として用いることができる。
本発明の回路基板用樹脂組成物は、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体とを含有することを特徴とするものである。
また、本発明のプリプレグは、上述の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするものである。
また、本発明の積層板は、上述のプリプレグを1枚以上成形してなることを特徴とするものである。
まず、本発明の回路基板用樹脂組成物について説明する。
本発明の回路基板用樹脂組成物は、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂を含む。
上記、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、フェノールアラルキルエポキシ樹脂、ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性エポキシ樹脂、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)メタン、1,1−ビス(2−グリシジルオキシ−1−ナフチル)メタン、1,1−(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)−1−(2−グリシジルオキシ−1−ナフチル)メタンなどがあげられる。耐熱性などを考慮すると、クレゾールノボラックエポキシ樹脂が好ましく、更なる低誘電正接化を考慮すると、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂が好ましい。
上記、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂は、1種類もしくは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の回路基板用樹脂組成物は、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を含む。これにより、低誘電正接を維持したままガラス転移点を向上させることができ、高い密着性を発現させることができる。
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体は、エポキシに対する反応当量が170程度と大きく、エポキシとの反応によって生じる水酸基が少ないため、誘電正接に悪影響を及ぼさない。また、ジヒドロキノリン構造は剛直な構造のため、分子運動が抑制され、低誘電正接を発現する。
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体は、分子内に2つ以上の2級アミノ基を有するため、エポキシ樹脂と反応したときに、網目構造を形成する。また、ジヒドロキノリン構造は剛直な構造のため、ガラス転移点を向上させることができる。
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体は、分子内に窒素原子を有するため、エポキシと反応したとき、高い密着性を有する。
分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体の当量比は0.8〜1.2が好ましい。この当量比が0.8未満もしくは1.2を超えると、未反応の化合物が残存し、耐熱性が低下し好ましくない。
2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体は、様々な重合度、純度のものを用いることができる。2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体は市販品を用いることもできるし、特開平10−139938の方法で合成することもできる。
本発明の回路基板用樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電正接が、0.005以上、0.020以下であることが好ましい。

上記回路基板用樹脂組成物の硬化物とは、回路基板用樹脂組成物を構成する硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂成分が有する官能基の反応が実質的に完結した状態を意味し、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置により発熱量を測定することにより評価することができ、具体的には、この発熱量がほとんど検出されない状態を指すものである。
このような樹脂材料の硬化物を得る条件としては、例えば、120〜220℃で、30〜180分間処理することが好ましく、特に、150〜200℃で、45〜120分間処理することが好ましい。
本発明の回路基板用樹脂組成物は、上述した分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を必須成分として含有するが、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、フィラー、その他の成分を添加することは差し支えない。
次に、プリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、上述の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、耐熱性等の各種特性に優れたプリプレグを得ることができる。
本発明のプリプレグで用いる基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
本発明で得られる回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させる方法には、例えば、回路基板用樹脂組成物を溶媒に溶解して樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーター装置により樹脂ワニスを基材に塗布する方法、樹脂ワニスをスプレー装置により基材に吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する回路基板用樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布装置を使用することができる。
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記回路基板用樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばN、N−ジチルホルムアミド等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されないが、前記回路基板用樹脂組成物の固形分40〜80重量%が好ましく、特に50〜65重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。
前記基材に前記回路基板用樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。これにより、優れた耐熱性と密着性を有し、誘電率や誘電正接が低い積層板を得ることができる。
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。
また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。
次に、プリプレグと金属箔等とを重ねたものを加熱、加圧して成形することで積層板を得ることができる。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、150〜240℃が好ましく、特に180〜220℃が好ましい。
また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、特に2.5〜4MPaが好ましい。
以下、本発明を参考例、実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
参考例1)
(1)樹脂ワニスの調製
クレゾールノボラックエポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製N−690、エポキシ当量220)を56.0重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(大内新興化学製ノクラック224)を43.9重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部にN、N−ジメチルホルムアミドを加え不揮発分60%となるように調整し、樹脂ワニスを得た。
(2)プリプレグの製造
上述の樹脂ワニスを用いて、ガラス繊布(厚さ0.18mm、日東紡績社製)100重量部に対して、樹脂ワニスを固形分で80重量部含浸させて、190℃の乾燥炉で7分間乾燥させ、樹脂含有量44.4重量%のプリプレグを作製した。
(3)積層板の製造
上記プリプレグを6枚重ね、上下に厚さ35μmの電解銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で150分間加熱加圧成形を行い、厚さ1.2mmの両面銅張積層板を得た。
参考例2)
クレゾールノボラックエポキシ樹脂を61.4重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を38.5重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
参考例3)
クレゾールノボラックエポキシ樹脂を51.4重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を48.5重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び
積層板を得た。
(実施例4)
ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(日本化薬製NC−3000H、エポキシ当量275)を61.4重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を38.5重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
(実施例5)
ナフタレンアラルキルエポキシ樹脂(東都化成製ESN−175、エポキシ当量255)を59.5重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を40.4重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
参考例6)
1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)メタン(大日本インキ化学工業製HP−4700、エポキシ当量168)を49.3重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を50.6重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
参考例7)
ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製HP−7200H、エポキシ当量275)を61.4重量部、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を38.5重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
(比較例1)
クレゾールノボラックエポキシ樹脂を56.0重量部、フェノールアラルキル樹脂(三井化学社製XLC−LL)を43.9重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
(比較例2)
クレゾールノボラックエポキシ樹脂を78.0重量部、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホンを21.9重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.1重量部とした以外は、参考例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ及び積層板を得た。
各参考例、各実施例および比較例により得られた積層板について、次の各評価を行った。各評価を、評価方法と共に以下に示す。得られた結果を表1に示す。
(表の注)
1)大日本インキ化学工業製N−690、エポキシ当量220
2)日本化薬製NC−3000H、エポキシ当量275
3)東都化成製ESN−175、エポキシ当量255
4)大日本インキ化学工業製HP−4700、エポキシ当量168
5)大日本インキ化学工業製HP−7200H、エポキシ当量275
6)大内新興化学製ノクラック224
7)三井化学製XLC−LL、水酸基当量175
1.評価方法
(1)樹脂の1GHzでの誘電特性測定
樹脂の1GHzでの誘電特性測定は、回路基板用樹脂組成物をキャリアフィルムに塗工し、加熱し、プレスした後にキャリアフィルムを除去したものを、トリプレート共振器法で測定した。
(2)積層板の1GHzでの誘電特性測定
積層板の1GHzでの誘電特性測定は、トリプレート共振器法で測定した。
(3)ガラス転移温度
ガラス転移温度は、TMAにて熱膨張係数を測定し、熱膨張係数の変移点をガラス転移温度とした。
(4)ピール強度
ピール強度は、JIS C 6481に準拠して測定した。
表から明らかなように、実施例4、5は、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を含有し、両者の当量比が0.8以上、1.2以下の範囲であり、分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂がビフェニルアラルキルエポキシ樹脂及びナフタレンアラルキルエポキシ樹脂から選ばれる1種以上を含む、本発明の回路基板用樹脂組成物を用いた積層板であり、誘電率十分低く、誘電正接が特に低い値であり、ガラス転移温度も高く、密着性に優れていた。
これに対して比較例1は、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体の代わりに、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体とほぼ同じ当量であるフェノールアラルキル樹脂を、エポキシの硬化剤として用いたが、密着性およびガ
ラス転移温度が悪化し、また誘電正接も十分低くならなかった。また、比較例2は2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体の代わりに、アミン化合物として、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホンを用いたので、十分に誘電率、誘電正接が低くならなかった。
本発明の回路基板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板は、小型軽量化に対応でき、高度な耐熱性、密着性および信号伝搬速度の高速化に必要なプリント配線板に適する。

Claims (4)

  1. 分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体を有する回路基板用樹脂組成物であって、
    前記分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂と、前記2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体との当量比は0.8以上、1.2以下の範囲であり、
    前記分子内に2つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ樹脂はビフェニルアラルキルエポキシ樹脂及びナフタレンアラルキルエポキシ樹脂から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする回路基板用樹脂組成物。
  2. 前記回路基板用樹脂組成物の硬化物の、1GHzにおける誘電正接が、0.005以上、0.020以下である請求項1に記載の回路基板用樹脂組成物。
  3. 請求項1ないし2のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなることを特徴とするプリプレグ。
  4. 請求項3に記載のプリプレグを1枚以上成形してなることを特徴とする積層板。
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