JP5280383B2 - 印刷用紙シーズニング装置及び方法並びにインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
図1は本発明の第1実施形態に係るシーズニング装置の斜視図である。図1に示すように、本例のシーズニング装置10は、複数枚の印刷用紙(図1において不図示、図4、図8、図16中符号30として記載、以下単に「用紙」という場合がある。)を積載可能な載置台12と、載置台12の上に積層された用紙束の外周側面から送風を行うブロア14a、15a〜15fを備える。図1では、下段のブロア14b〜14fが見えていないが、ブロア15aの下段にブロア14aが配置されている関係と同様の配置関係で、上段の各ブロア15b〜15fの下にブロア14b〜14fが配置される。
少なくとも用紙の片面にインクが付与された印刷後の用紙内における水分量を均一化する(環境温湿度に馴染ませる)ことを主目的とする本実施形態のシーズニング装置10では、過乾燥を防止する観点から、送風手段は周囲空気を送風する(周囲環境の温度及び湿度の風を送る)構成が好ましい。仮に、ヒーターなどによって加熱された空気(温風)や、圧縮空気、ドライエアなど、低湿度風を送風する手段を採用すると、用紙の残水量が環境飽和点を下回り、紙の収縮が発生する。例えば、低湿度風を用いると、用紙内において多量にインクが付与されている領域については短時間の乾燥が可能となる一方で、用紙内における非インク付与部やインク量が非常に少ない領域については過度な乾燥状態となる。このような水分量の差によって用紙の伸縮(変形)が生じる可能性がある。
図3は第2実施形態に係るシーズニング装置40の要部を示す斜視図である。図1で説明した第1実施形態との相違点は、載置台12と天板28とが湾曲形状となっている点である。なお、図3中、図1に示した例と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図4(a)は、印刷後の用紙のカール状態を例示したものである。同図(a)のように印刷後の用紙30の短辺方向にカールが発生しているとする(当初のカール方向という)。この用紙をシーズニング装置40でシーズニングする際、当該シーズニング装置40では、図4(b)に示すように、その当初のカール方向と直交する方向(用紙の長辺方向)に用紙30を湾曲させるように用紙収容空間34の形状を構成する。こうして、用紙30の姿勢(カール状態)を規制し、湾曲させた用紙30の辺(アーチ形の辺)に略垂直な方向から(図中の白抜き矢印Aの方向から)送風を行う。
Lc:11.1°
Lp:197.2mm
H:50.8mm
曲率半径r1=r2=62.1mm
なお、上記寸法は一例であり、本発明の実施に際しては様々な設計態様が可能である。
図6は第3実施形態に係るシーズニング装置50の要部を示す斜視図である。図5中、図1に示した例と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図5に示したシーズニング装置50は、矩形の枚葉紙の長辺に相当する2辺の両端面側から、用紙束に向けて送風する構成であり、用紙長辺に面して3箇所に複数個のブロア14,15が上下2段に設置される。図6の左側の下段にブロア14a〜14cが用紙長辺方向に沿って略等間隔で配列され、これら各ブロア14a〜14cの上部に近接して上段のブロア15a〜15cが同様に略等間隔で配列されている。
図8は、排気部における開口率を上下方向で変化させた場合の用紙の挙動を横から見た模式図である。図8(a)は、本発明の実施例であり、排気部の上側開口率=0.36、下側の開口率=0.09とした場合の挙動を示す。図8(b)は、比較例Aであり、排気部の上側開口率=0.36、下側開口率=0.36とした場合(排気部の開口率が一定値)の挙動を示す。図8(c)は、比較例Bであり、排気部の上側開口率=0.09、下側の開口率=0.36とした場合の挙動を示す。
実施例(図8(a))と比較例A(図8(b))の違いを考察すると、実施例は、比較例Aと比べて下側の開口率が低いため、流量については、実施例の下側流量(QL_1)が比較例Aの下側流量(QL_2)よりも少ない。
一方、ベルヌーイの定理より、エアー圧力については、実施例の下側圧力(PL_1)が比較例Aの下側圧力(PL_2)よりも高くなる。
よって、図示のように、実施例(図8(a))の方が下側における用紙間隔は広くなる。
上記と同様の理由から、比較例Bの上側流量(QU_3)は比較例Aの上側流量(QU_2)よりも少ない。
よって、エアー圧力については、比較例Bの上側圧力(PU_3)が比較例Aの上側圧力(PU_2)よりも高くなる。
したがって、比較例Aに比べて比較例Bでは上側の用紙間隔が広くなり、下側の用紙間隔は更に狭くなる。このため、シーズニング性能は比較例Bの方が悪い。
図9は比較のために、排気部の開口率が上下方向について一定(開口率=0.36)である開口パターンの例(以下、「開口条件A」という。)を示した。図9の例は、直径R=8mmの開口56が縦方向にa=10mmピッチで等間隔に一列に並び、かつ横方向に列間距離b=14mmで千鳥状に配置された開口パターンとなっている。なお、排気部の高さ方向の寸法hは110mmとした。
第1実施形態(図1)で説明した装置構成を「実施例1」、第2実施形態(図4)で説明した装置構成を「実施例2」とし、第1実施形態(図1)で説明した装置構成における排気部の開口率を上下で均一なものに置き換えた構成を「比較例1」、第2実施形態(図4)で説明した装置構成における排気部の開口率を上下で均一なものに置き換えた構成を「比較例2」として区別し、これら実施例1,2、比較例1,2のシーズニング装置において、印刷用紙のシーズニング性能を評価した。
(1)用紙印刷条件
・使用した用紙の条件:王子製紙製 OKトップコート(商品名)、157gsm 菊半裁(636mm×469mm)
・使用した印刷装置:インクジェット印刷装置
・印刷画像の条件:全面ベタ画像 インク付与量 5g/m2および10g/m2の2種類の画像について評価した。
(2)シーズニング装置の条件
・排気部の開口条件:実施例1,2は開口条件B、比較例1,2は開口条件A
・ブロア:山洋電機製ブロア San Ace B97(9BMB24P2K01)静圧1280Pa、12個
回転数制御信号(矩形波のDuty)にて回転数制御を実施。
(3)評価の方法
23℃50%RHの環境にて、前記インクジェット印刷装置で印刷された用紙束に対して、5分間のシーズニングを実施し、シーズニング後の用紙に残存する水分量を測定した。シーズニング後の用紙束に対し、4枚ごとに測定サンプルを抜き取り、測定を行った。水分量測定は重量法で行った。この水分量が初期の用紙が含水する水分量に対して0.3g/m2以下である場合にシーズニング性能OKと判断した。印刷用紙枚数は10枚から評価を開始し、用紙枚数を10枚ずつ増やしてゆき、性能OKとなる限界枚数をもってシーズニング能力を評価した。評価結果を表1にまとめた。
第1実施形態〜第3実施形態で説明した側板20〜23のうち少なくとも1つ、好ましくは隣接する2つ以上の側板についてスライド移動可能な構造とし、用紙収容空間34のx方向及び/又はy方向における幅を自在に調整可能な構成とすることも可能である。例えば、図1における側板21〜23をそれぞれ前後に進退自在な構成とし、側板20〜23で画成される用紙収容領域の面積を拡縮できる構成とする。かかる構成により、異なるサイズの用紙に対応可能となる。使用する用紙のサイズに合わせて側板をスライドさせることで、用紙に適合した用紙収容空間34のサイズ調整が可能である。なお、用紙のサイズが特定の種類に限定されている場合(例えばA4サイズとA3サイズのみの場合)には、側板20〜23のうちの1つのみ、例えば、側板21のみを移動可能に構成してもよい。
図15は、シーズニング装置の制御系に関する要部構成を示すブロック図である。ここでは、用紙サイズ調整機能を有したシーズニング装置70を例に説明する。シーズニング装置70は、下段のブロア14を駆動するための駆動回路72と、上段のブロア15を駆動するための駆動回路73と、側板21等の駆動に必要な駆動機構74と、該駆動機構74を駆動する動力源となるモータ75及びその駆動回路76と、制御部78と、を備える。
図16は本発明の更に他の実施形態を示す構成図である。図16は送風時の様子を模式的に示した側面図である。図16中、図6で説明した構成と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
〔風量の条件について〕
多数枚の印刷物(印刷後の用紙束)について迅速にシーズニングを行うためには、用紙間に一定以上の風量で常時送風を行うことが必要になる。以下に示す評価実験により、シーズニングに好適な風量の条件を明らかにした。
(手順1):図17に示すように、印刷用紙210に対し、左右の余白部212,213と上下の余白部214,215をそれぞれ適宜の量だけ確保して、インクジェット記録装置によりベタ画像(符号218で示す画像部)を印刷する。ここで、印刷後の画像部218が含有する残水量は約2.5[g/m2]であった。なお、印刷用紙210として、三菱製紙製のA1グレード・グロス塗工紙「特菱アート両面N」(商品名)を用いた。
印刷用紙210が含む水分量は、用紙の測定部分を3cm×3cmサイズで打ち抜き、微量水分測定装置(ここでは、株式会社三菱化学アナリテック製「CA-200」(商品名)を使用)を用いて測定する。測定された水分量[g]を打ち抜き面積で除算し、単位面積当たり水分量[g/m2]を算出する。
図19から明らかなように、用紙単位長さ当たり風量qが0.02[m2/min]以上となる条件において、15分以内の迅速なシーズニングが達成できることが判明した。
また、多数枚の印刷物(印刷後の用紙束)の用紙間に通風を行うためには、圧力損失に打ち勝つだけの送風静圧が必要である。一般に、平行板間を流れる流体の場合、圧力損失Plossは以下の式で表される。
以下の条件で送風ユニットの能力とシーズニング性能の関係を調べた。
・最大用紙処理枚数M=200枚
・用紙の1辺(長辺)の長さ 636mm(用紙サイズ:菊半裁)
・必要風量Q=200×0.636×0.02=2.54[m3/min]
・必要静圧P=500[Pa]
使用する送風ユニットとして以下の構成を比較した。
送風ユニットB:松下電器製 EH5402
送風ユニットC:山洋電機製 San Ace 92 (9G0924A2011)
図21は、送風ユニットA〜Cの種類と個数を変えた場合の風量と静圧の関係を示す特性である。図21中、黒塗り正方形で示した点が良好なシーズニングを実現するために必要な「必要風量Q=200×0.636×0.02=2.54[m3/min]」かつ「必要静圧P=500[Pa]」の点である。なお、必要風量Qは、最大処理枚数M[枚]、送風方向から見た用紙の一辺の長さWp[m]として、Q=M×Wp×0.02[m3/min]から計算される。
シーズニングを実施するタイミングとしては、特に限定されないが、例えば、以下のタイミングで実施する。
図1〜3、図5〜7等で説明した本発明の実施形態に係るシーズニング装置をインクジェット印刷機と組み合わせた印刷システムの例を説明する。
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図22に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
図22に示すように、定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
両面印刷を行う場合には、図22のインクジェット記録装置100において、用紙の片面(表面)が印刷された後にシーズニング装置10で所定時間のシーズニングを行う。そして、シーズニング処理された用紙の束を給紙部112に戻して、裏面の印刷を行う。
本発明の実施に用いられるインクは、水を溶媒として含んだ水性インクであり、例えば、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
本発明の実施に際して用いる処理液(凝集処理液)として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。
Claims (10)
- 複数枚の印刷用紙を積み重ねて載置する載置台と、
前記載置台の上部に当該載置台と対向して配置され、前記載置台上に置かれた前記印刷用紙の束の上方を覆う天板と、
前記対向配置される前記載置台と前記天板との間に形成される用紙収容領域に対して側面側から送風を行う送風手段と、
前記用紙収容領域の側面部に配置される側板と、
前記側板に形成された開口によって構成される排気部と、
を備え、
前記排気部の開口率が前記用紙収容領域の上下方向で異なり、当該排気部の下側の開口率が上側の開口率よりも小さくなっていることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1において、
前記排気部の開口率は、前記用紙収容領域の上から下に向かって段階的に又は連続的に小さくなっていることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1又は2において、
前記下側の開口率の最小値は、前記上側の開口率の最大値に対し1/20以上2/3以下であることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記排気部は、前記用紙収容領域の前記側面部を覆う前記側板のうち、前記送風手段が設置されていない面の側板に形成されていることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記載置台の用紙載置面及び当該用紙載置面と対面する前記天板の用紙抑え面は、前記送風手段の送風方向と直交する方向に曲率を有することを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記送風手段から送風される空気の静圧が500[Pa]以上であることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至6のいずれか1項において、
当該シーズニング装置で一度に処理できる最大処理枚数をM[枚]、前記送風手段の送風側から見た用紙の幅方向の一辺の長さをWp[m]とすると、
前記送風手段の風量−静圧特性が、必要風量値Q=M×Wp×0.02[m3/min]かつ必要静圧値P=500[Pa]の点を包含していることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至7のいずれか1項において、
少なくとも1つの棚板を有し、前記棚板によって仕切られた複数段の構造により、前記印刷用紙を複数束に分割して収容する構成であることを特徴とする印刷用紙シーズニング装置。 - 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の印刷用紙シーズニング装置が用紙排紙部に搭載されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
- 複数枚の印刷用紙を載置台の上に積層し、前記載置台上に置かれた前記印刷用紙の束の上方を天板で覆い、前記対向配置される前記載置台と前記天板との間に形成される用紙収容領域に対して側面側から送風手段によって送風を行うことにより、当該束の各用紙間に空気を供給する印刷用紙のシーズニングを行う方法であって、
前記用紙収容領域の側面部に配置する側板に排気用の開口を形成し、当該開口によって構成される排気部の開口率を前記用紙収容領域の上下方向で異ならせ、上側の開口率よりも下側の開口率を小さくし、前記送風手段による送風時に前記用紙収容領域の下側を流れる空気の圧力が上側を流れる空気の圧力よりも高い状態で送風を行うことを特徴とする印刷用紙シーズニング方法。
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