JP5261876B2 - 光反射体用ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)30〜80重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)10〜40重量%、平均粒子径1.2μm以下の焼成カオリン(C)と、非繊維状無機充填材(D)から構成された無機フィラー0.1〜40重量%からなるポリエステル樹脂組成物であって、窒素雰囲気下270℃で10分間放置したときの重量減少率が5重量%未満のポリエチレン系ワックスである離型剤(E)を(A)〜(D)の合計100重量部に対して0.01〜1.0重量部含む光反射体用ポリエステル樹脂組成物、
(2)非繊維状充填材(D)が硫酸バリウム(D−1)および/または酸化チタン(D−2)である(1)に記載の光反射体用ポリエステル樹脂組成物、
(3)(1)〜(2)のいずれかに記載の光反射体用ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品、
(4)(3)に記載の成形品を直接金属蒸着することを特徴とする、光反射体の製造方法、
を提供するものである。
また、本発明の光反射体用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品の表面の一部または全体に金属蒸着膜が形成され、該金属蒸着膜と該成形品の表面が接している光反射体は、高鏡面性、高輝度感を有し、更に高温暴露後の曇りによる輝度感低下が著しく少ない。加えて、上記の光反射体は、自動車用ランプにおけるハウジング、リフレクター、エクステンションや家電照明器具等などとして好適に用いることができる。
本発明において使用される平均粒子径1.2μmの焼成カオリン(C)は、基本化学式Al2OSi2O5(OH)4・nH2Oで表される含水ケイ酸アルミニウムを、高温で焼成したものである。未焼成のカオリンを用いると樹脂組成物の機械的特性が不良となる傾向があり、好ましくない。また、焼成カオリン(C)の平均粒子径は1.2μm以下であることが必須であり、1.2μmを越えると本発明の光反射体に求められる鏡面精度が発現せず、そのまま蒸着を施すと蒸着膜の輝度が低下するので好ましくない。焼成カオリン(C)の平均粒子径の下限については特に制限はないが、0.1μm以上であることが好ましい。
一方、モンタン酸金属塩は、モンタン酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩であり、270℃×10分間放置時の重量減少が5重量%を満たせば使用することが可能である。具体的に使用可能なものは、モンタン酸リチウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウムが挙げられ、これらは1種または2種以上で使用される。また、本発明で使用するモンタン酸金属塩の酸価は、20mgKOH/g以下が好ましい。酸価が20mgKOH/gを超えると、金属と反応していない未反応モンタン酸が多く混合された状態にあることから、270℃×10分間放置時の重量減少が5重量%を超え、また高温環境下における蒸着膜の輝度が劣化するので好ましくない。モンタン酸金属塩の酸価の下限については特に限定はないが、0.01mgKOH/g以上であることが好ましい。なお、モンタン酸金属塩の酸価については、試料0.1gをクロロホルムに溶解し、0.1N水酸化カリウム滴定することによって測定することができる。
さらに炭素数が15以上のアルキル基を有する高級脂肪酸と炭素数が15以上のアルキル基を有する高級アルコールから形成されるエステル化合物は、270℃×10分間放置時の重量減少率が5重量%未満であれば使用することが可能である。炭素数が15未満のアルキル基である場合には、エステル形成時に脂肪酸またはアルコールが残存した場合、上記270℃×10分間放置時の重量減少が5重量%を超えるため、高温環境下における蒸着膜の輝度が劣化するので好ましくない。また炭素数の上限としては特に制限はないが、40以下であることが好ましい。炭素数40を超えるアルキル基を有する高級脂肪酸、および炭素数が40を超えるアルキル基を有する高級アルコールは、実質的に入手困難なためである。上記の観点から、高級脂肪酸および高級アルコールのアルキル基の炭素数は、15以上40以下が好ましく、より好ましくは16以上40以下であり、更に好ましくは17以上40以下である。
炭素数が15以上のアルキル基を有する高級脂肪酸は、例えばパルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、ペンタコサン酸、セロチン酸、モンタン酸などが挙げられる。また、炭素数が15以上のアルキル基を有する高級アルコールの具体例としては、パルミチルアルコール、マルガリルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデカニルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンイコサニルアルコール、ベヘニルアルコール、トリコサニルアルコール、ミリシルアルコールなどが挙げられる。これら例示した高級脂肪酸と高級アルコールからなるエステル化合物は、いかなる組合せでも使用することができるが、具体的に使用できるエステル化合物を例示すると、パルミチン酸ミリシルアルコール、セロチン酸ミリシルアルコール、リグノセリン酸ミリシルアルコール、ステアリン酸ステアリルアルコールなどが挙げられる。更に好ましくは、リグノセリン酸ミリシルアルコール、ステアリン酸ステアリルアルコールが、特に好ましくはステアリン酸ステアリルアルコールが挙げられる。
酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系化合物等が挙げられる。
シリンダー温度270℃、金型温度80℃、金型鏡面の部分の面粗度0.03sの条件で射出成形した鏡面角板を日立(株)製真空蒸着装置にて、アルミを直接蒸着し、目視で確認して、表面に全く曇りがなく非常に輝度感に優れているものを◎◎、表面に全く曇りのないものを◎、一部に曇りがあるものを○、全体が曇っているものを×とした。
上記の光反射体を160℃×72時間高温暴露したあと、直接金属蒸着性と同様に目視評価した。
シリンダー温度270℃、金型温度80℃、金型の鏡面部分の面粗度0.03sの条件で鏡面角板を形成し、得られた鏡面角板の写像性を評価した。
装置 : スガ試験機株式会社製 写像性測定機 型式 ICM−1DP
得られた数値は、スリット(0.125mm,0.5mm,1mm,2.0mm)間を通過した光が、サンプル(この場合鏡面角板)に反射し、受光部で何%受光したかを表す。当然表面平滑性が足りない物は数値が低下する。
図1に記載した形状の金型を使用し、シリンダー温度270℃、金型温度80℃でその離型力を測定し、比較した。離型力測定には、テクノプラス社製ロードセル1C−1Bを金型内に挿入し、歪み増幅器には、東洋ボールドウィン社製MD−1031、記録装置には、日置電機製メモリーハイコーダ8840を用いて、離型力を測定した。
(A−1) ポリブチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製 ” トレコン 1100S”
(B−1) ポリエチレンテレフタレート樹脂:東レ(株)製”TSB900”
(C−1) 焼成カオリン:林化成(株)製”トランスリンク555”、平均粒子径=0.8μm
(C−2) 焼成カオリン:林化成(株)製”ウルトレックス98”、平均粒子径=0.8μm
(C−3) 焼成カオリン:林化成(株)製”トランスリンク445”、平均粒子径=1.4μm
(D−1) 硫酸バリウム:堺化学(株)製”B−55”、平均粒子径=0.66μm
(D−2) 酸化チタン:石原産業(株)製”CR−63”、平均粒子径=0.21μm、塩素法により製造した、アルミナ水和物およびケイ酸水和物の2種類を処理剤として使用したルチル形の酸化チタン。
(E−1) ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン(株)製”リコワックスPED191”、270℃×10分放置後の重量減少は、1重量%。
(E−2) ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン(株)製”リコワックスPED190”、270℃×10分放置後の重量減少は、1重量%。
(E−3) モンタン酸カルシウム:クラリアントジャパン(株)製”リコモントCaV102”、270℃×10分放置後の重量減少は、3重量%。
(E−4) モンタン酸ナトリウム:クラリアントジャパン(株)製”リコモントNaV101”、270℃×10分放置後の重量減少は、2重量%。
(E−5) ステアリン酸ステアリルアルコール:理研ビタミン(株)製“リケマールSL−800”、270℃×10分放置後の重量減少は4重量%。
(E−6) リグノセリン酸ミリシルアルコール:川研ファインケミカル(株)製“カワワックスL”、270℃×10分放置後の重量減少は3重量%。
(E−7) ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン(株)製”リコルブH12”、270℃×10分放置後の重量減少は、6重量%。
(E−8) ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン(株)製”リコワックスPED522”、270℃×10分放置後の重量減少は、7重量%。
(E−9) グリセリンモノステアレート:コグニスジャパン(株)製“ロキシオールG129”、270℃×10分放置後の重量減少は20重量%。
実施例1〜9および比較例1〜13
(A)から(E)を表1(実施例)、表2(比較例)に示した原料の組合せで配合した。
各実施例、比較例に記載した材料の製造方法は次の通りである。すなわち、シリンダー温度250℃に設定したスクリュー径57mmφの2軸押出機を用いて製造した。(A)〜(E)、並びにその他添加剤全てを元込め部から供給して溶融混練を行い、ダイスから吐出されたストランドを冷却バス内で冷却した後、ストランドカッターにてペレット化した。得られた各ペレットは、130℃の熱風乾燥機で3時間以上乾燥した後、前記評価方法記載の方法を用いて成形し、評価を行なった。
実施例の評価結果を表1に併記した。得られた樹脂組成物は何れも、直接蒸着性、高温処理後のアルミ蒸着膜の輝度が低下せず、表面平滑性(写像性)、離型性に優れたものであった。
比較例の評価結果を表2に記した。表2に示したように樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例と同様にペレット化および成形を行い、各種評価を行った。得られた組成物は、直接蒸着性、表面平滑性、写像性、離型性、耐衝撃性の何れかが劣るものであった。
比較例1,2と実施例1〜9の比較によって、樹脂分がPBT樹脂単独である場合には、樹脂の固化が速いため、鏡面となりにくく、蒸着膜表面の輝度感が若干劣る物であった。一方、PETの比率が高い場合には、表面平滑性が実施例の組成物に比較して劣る物であった。
比較例3のように、平均粒子径が大きい焼成カオリン使用の場合には表面平滑性が若干劣る物であった。
比較例6、7、13では、270℃×10分の熱処理したときの重量減少が5重量%以上である離型剤を使用した場合には、離型には問題がないが、鏡面成形品表面に離型剤がブリードして表面平滑性を悪化させたり、アルミ蒸着膜が部分的に曇が発生することが分かった。
比較例8では、離型剤を全く使用していないので、離型せず成形品が挫屈した。また、冷却時間を延ばしても短縮しても全く離型しなかった。離型力を示したが、これは、エアで金型を冷却し、無理やり抜いたときの数値である。一方、比較例9〜12は、離型剤量を1重量%以上使用した場合であるが、使用量が多すぎて、クリアなアルミ蒸着膜を形成することができなかった。
Claims (4)
- ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)30〜80重量%、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)10〜40重量%、平均粒子径1.2μm以下の焼成カオリン(C)と非繊維状無機充填材(D)から構成された無機フィラー0.1〜40重量%からなるポリエステル樹脂組成物であって、窒素雰囲気下270℃で10分間放置したときの重量減少率が5重量%未満のポリエチレン系ワックスである離型剤(E)を(A)〜(D)の合計100重量部に対して0.01〜1.0重量部含む光反射体用ポリエステル樹脂組成物。
- 非繊維状充填材(D)が硫酸バリウム(D−1)および/または酸化チタン(D−2)である請求項1に記載の光反射体用ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の光反射体用ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品。
- 請求項3記載の成形品を直接金属蒸着することを特徴とする、光反射体の製造方法。
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