JP5256773B2 - 多孔性ポリプロピレンフィルム - Google Patents

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本発明は、高い空孔率とフィルム幅方向の寸法安定性に優れた多孔性ポリプロピレンフィルムに関する。さらに詳しくは、透気抵抗が低く、透過性に優れなおかつ寸法安定性にも優れる蓄電デバイス用セパレータ用途に好適な多孔性ポリプロピレンフィルムに関する。
ポリプロピレンフィルムは優れた機械特性、熱特性、電気特性、光学特性により、工業材料用途、包装材料用途、光学材料用途、電機材料用途など多様な用途で使われている。このポリプロピレンフィルムに空隙を設け、多孔化した多孔性ポリプロピレンフィルムについても、ポリプロピレンフィルムとしての特性に加えて、透過性や低比重などの優れた特性を併せ持つことから、電池や電解コンデンサーのセパレータや各種分離膜、衣料、医療用途における透湿防水膜、フラットパネルディスプレイの反射板や感熱転写記録シートなど多岐にわたる用途に対して種々の提案が行われている。
ポリプロピレンフィルムを多孔化する手法としては、大別すると湿式法と乾式法の2つが存在する。湿式法とは、ポリプロピレンをマトリックス樹脂としてシート化する際、抽出する被抽出物を添加、混合し、被抽出物の良溶媒を用いて添加物のみを抽出することで、マトリックス樹脂中に空隙を生成せしめる方法を挙げることができ、様々な提案がなされている(たとえば、特許文献1参照)。一方、乾式法としては、たとえば、溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のラメラ構造を制御し、これを一軸延伸することでラメラ界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法(いわゆる、ラメラ延伸法)が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。また、乾式法として、無機粒子またはマトリックス樹脂であるポリプロピレンなどに非相溶な樹脂を粒子として多量添加し、シートを形成して延伸することにより粒子とポリプロピレン樹脂界面で開裂を発生させ、空隙を形成する方法も提案されている(たとえば、特許文献3参照)。さらには、ポリプロピレンの結晶多形であるα型結晶(α晶)とβ型結晶(β晶)の結晶密度の差と結晶転移を利用してフィルム中に空隙を形成させる、いわゆるβ晶法という方法の提案も数多くなされている(たとえば、特許文献4〜7参照)。
このように、多孔化したフィルムを電池のセパレータとして用いる場合、電池の組立工程での加熱や、電気反応に伴う発熱など、雰囲気温度が高温になることが多々ある。そのような時にセパレータとして使用しているポリプロピレンフィルムの寸法変化が大きいと、正極と負極が短絡してしまい、電池としての機能が喪失する可能性がある。したがって、多孔性フィルムにおいて熱寸法安定性を向上させることは重要な課題である。特に最近では、ハイブリッドカーや電気自動車などへのリチウムイオン二次電池の搭載が検討されるに至って、120℃以上の高温域での熱寸法安定性が要求されるようになってきた。
熱寸法安定性を向上させる提案としては、たとえば、110℃の熱収縮率が10%以下である多孔性ポリオレフィンフィルムがある(たとえば、特許文献8参照)。しかしながら、この提案ではポリエチレン樹脂をマトリックス樹脂とした抽出法による多孔性フィルムであることから120℃を超えると、フィルム自体が融解し、孔が閉塞してしまうことから、使用できる用途が限定されるという問題がある。また、乾式法においても、ラメラ延伸法に対して、150℃、10分間のフィルム幅方向の熱収縮率が15%以下とする提案がある(たとえば、特許文献9参照)。しかしながらこの提案のフィルムは長手方向への一軸延伸で製造されるフィルムであり、幅方向の寸法安定性が問題とはなりにくい製造法である。しかしながら、長手方向にのみ延伸することから、製造効率が悪くコストが高く、かつ多孔化したフィルムの空孔率が高々50%程度にしかできず、セパレータとしてイオン電導性を向上させにくいという課題がある。
二軸延伸を行う多孔フィルムの製造方法であるβ晶法では製造コストが低く、空孔率も高くすることが可能であるという利点があるが、幅方向への延伸配向が起こってしまうため、これまでに提案されていたフィルムでは120℃、40分間での熱収縮率が10%を超えることもあるなど、熱寸法安定性の点からは大きな問題があった。
特開昭55−131028号公報 特公昭55−32531号公報 特開昭57−203520号公報 特開昭63−199742号公報 特開平6−100720号公報 特開平9−255804号公報 特開2005−171230号公報 特開2000−348706号公報 特開2001−6739号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、多孔性フィルムの製造コストを低く抑え、高空孔率を達成しつつ、幅方向の熱寸法安定性に優れる多孔性ポリプロピレンフィルムを提供することであり、それにより優れた電気特性を発現し得る電池などを製造可能な蓄電デバイス用セパレータを提供することにある。
上記した課題は、ポリプロピレン樹脂99.9〜90質量%とエチレン・α−オレフィン共重合体0.1〜10質量%とからなるポリオレフィン樹脂を含み、空孔率が60〜90%であり、フィルム幅方向の120℃、40分間の熱収縮率が0〜%である多孔性ポリプロピレンフィルムによって達成することができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは高い空孔率を有していることから、透過性に優れており、セパレータとして使用した際に電池の内部抵抗を低減できるだけでなく、フィルム幅方向の熱寸法安定性に優れることから、電池の製造効率を高めることも可能であり、蓄電デバイス用セパレータとして好適に使用することができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムはポリプロピレン樹脂を99.9〜90質量%含むポリオレフィン樹脂を含んでいる。耐熱性の観点から99〜92質量%がポリプロピレン樹脂であればより好ましい。ここでポリプロピレン樹脂とはプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンはもちろんのこと、コモノマー残基を含むポリプロピレン共重合体であってもよい。コモノマーとしては、不飽和炭化水素が好ましく、たとえばエチレンやα−オレフィンである1−ブテンや1−ペンテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテンを挙げることができる。ポリプロピレンへのこれらコモノマーの共重合率は好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
本発明で使用するポリプロピレン樹脂はメルトフローレート(MFR、条件230℃、2.16kg)が2〜30g/10分の範囲のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であることが好ましい。MFRが5〜20g/10分であれば高空孔率と製膜安定性が両立できるという点でより好ましい。ここで、MFRはJIS K 7210(1995)で規定されている樹脂の溶融粘度を示す指標であり、ポリオレフィン樹脂の特徴を示す物性値として広く用いられているものである。ポリプロピレン樹脂の場合はJIS K 7210の条件M、温度230℃、荷重2.16kgで測定を行う。
また、アイソタクチックポリプロピレン樹脂のアイソタクチックインデックスが90〜99.9%であれば結晶性が高いために効率よく空隙をフィルム中に形成することができるので好ましい。アイソタクチックインデックスが90%未満であると高透気性の多孔フィルムを得ることが困難な場合がある。用いるアイソタクチックポリプロピレン樹脂は市販されている樹脂を用いることができる。
また、本発明のポリプロピレン樹脂は0.1〜5質量%の範囲で高溶融張力ポリプロピレンを含有することが製膜性の向上の観点から好ましい。より好ましくは0.1〜3質量%、0.1〜1質量%であれば特に好ましい。ここで、高溶融張力ポリプロピレンとは高分子量成分や分岐構造を有する成分をポリプロピレン樹脂に混合したり、ポリプロピレンに長鎖分岐成分を共重合させたりすることで溶融状態での張力を高めたポリプロピレン樹脂であるが、中でも長鎖分岐成分を共重合させたポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。この高溶融張力ポリプロピレンは市販されている樹脂を用いることができる。市販の高溶融張力ポリプロピレンとしては、Basell社製ポリプロピレン樹脂 Pro−fax PF814、PF633、PF611やBorealis社製ポリプロピレン樹脂 WB130HMS、Dow社製ポリプロピレン樹脂D114、D206などを挙げることができる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムはエチレン・α−オレフィン共重合体を0.1〜10質量%含んでなるポリオレフィン樹脂を含んでいる。透気性の観点からは2〜10質量%であるとより好ましく、3〜8質量%であれば特に好ましい。ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体としては直鎖状低密度ポリエチレンや超低密度ポリエチレンを挙げることができ、中でも、オクテン−1を共重合したエチレン・オクテン−1共重合体を好ましく用いることができる。これらエチレン・α−オレフィン共重合体は市販されている樹脂を用いることができる。市販のエチレン・α−オレフィン共重合体としては、たとえばダウ・ケミカル製“Engage(エンゲージ)(登録商標)”(タイプ名:8411、8452、8100など)を挙げることができる。
本発明においては、フィルム幅方向の熱収縮率を低減させる必要があり、その方法は下記に詳述するが、140℃以上の温度領域でフィルム幅方向に延伸する際に、エチレン・α−オレフィン共重合体を0.1〜10質量%含んでいないと、空隙が形成されにくく、貫通孔を有したフィルムとなり難いことから、高透気性と優れた熱寸法安定性を両立させるための重要な成分である。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは空隙を効率よく形成する観点から、ポリオレフィン樹脂のβ晶形成能が50〜100%であることが好ましい。β晶形成能が50%未満ではフィルム製造時にβ晶量が少ないためにα晶への転移を利用してフィルム中に形成される空隙数が少なくなり、その結果透過性に劣るフィルムとなる場合がある。β晶形成能はより好ましくは60〜100%、65〜100%であれば特に好ましい。
ここで、β晶形成能とは、以下の条件で測定される一定条件下におけるポリオレフィン樹脂中のβ晶の存在比率を示しており、β晶をどれだけ形成する能力があるのかを示す値として定義する。また、β晶形成能に対して、β晶分率という用語を使用する場合があるが、この用語はある時点でのポリオレフィン樹脂中のβ晶の存在比率を示す値である。すなわち、同じβ晶形成能を有する樹脂を使用してフィルムを製造しても、溶融押出時の条件や延伸前後でβ晶の存在比率は変化することから、その時々のβ晶の存在比率を示すときにβ晶分率を使用することとする。
β晶形成能の測定は、ポリオレフィン樹脂あるいはフィルムを5mg採取し、示差走査熱量計を用いて窒素雰囲気下で室温から240℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持後、30℃まで10℃/分で冷却する。5分間保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観察される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、それぞれの融解熱量を求める。α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とする。
β晶形成能(%) = 〔ΔHβ / (ΔHα + ΔHβ)〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出したものが、そのポリオレフィンのβ晶分率を示している。
本発明のポリプロピレンフィルムにおいて、β晶形成能を上記した好ましい範囲内とするために、ポリオレフィン樹脂中にβ晶の形成を効率よく形成させる目的で、β晶核剤とよばれる化合物を添加することが好ましい。β晶核剤としては、1,2−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどのカルボン酸アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドなどのアミド系化合物、ベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸化合物、γ−キナクリドンなどのキナクリドン径化合物などを挙げることができるが、中でも、アミド系化合物を用いるとβ晶を効率よく形成するだけでなく、空隙形成効率が高い点からも好ましい。
ポリプロピレンのβ晶を形成させるβ晶核剤として作用するアミド系化合物としては、下記一般式で示すアミド系化合物が好ましい。
−NHCO−R−CONH−R
ここで、Rは芳香環、脂肪族環あるいは炭素数2〜24の脂肪族炭化水素残基を示す。R、Rは芳香環あるいは脂肪族環残基を示す。
具体的には、アジピン酸ジアニリド、テレフタル酸ジ(シクロヘキシルアミド)、テレフタル酸ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド、N,N’−ジ(2−メチルシクロヘキシル)−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドなどを好ましく用いることができ、特にN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミドが好ましく用いることができる。
また、これらβ晶核剤は複数を混合して使用してもよい。ポリオレフィン樹脂中のβ晶核剤の含有量は、0.1〜1質量%であれば好ましく、0.1〜0.5質量%であればより好ましい。フィルム欠点の原因となることを排除する観点で、特に好ましくは0.2〜0.4質量%である。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、優れた透気性と機械特性を両立させる観点で、空孔率が60〜90%であることが好ましい。空孔率が60%未満であれば、高い透気性を実現することが困難となり、電池のセパレータとして使用した場合に電池の内部抵抗が高くなる。逆に空孔率が90%を超えると機械強度が実用レベルを維持できなくなる。空孔率はより好ましくは65〜90%であり、70〜85%であれば特に好ましい。
空孔率を60〜90%の範囲内に制御する方法としては、β晶形成能の高い樹脂を使用して、溶融押出、キャストする際にキャストロール温度を105〜130℃とすることで、β晶分率が60%以上の未延伸フィルムを得ることが望ましい。また、延伸温度や延伸速度を制御して、延伸時のフィルムの抗張力を低くしてやると高い空孔率を実現することが可能となる。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは蓄電デバイスのセパレータなどに用いる際の耐熱性、寸法安定性の観点から、フィルム幅方向の120℃、40分間の熱収縮率が0〜5%であることが好ましい。熱収縮率を0%未満、すなわち熱膨張させようとすると、フィルムの幅方向の斑が大きくなりすぎてしまう。また、5%を超える熱収縮率だと電池組立工程時の乾燥工程で幅縮みによる正極と負極の短絡が発生する場合がある。熱収縮率はより好ましくは0〜4.5%であり、0〜4%であれば特に好ましい。
本発明において、フィルム幅方向の熱収縮率を0〜5%の範囲内とする方法としては特に限定されるものではないが、特に横延伸温度を140〜155℃の温度範囲で行い、なおかつ150〜160℃の温度範囲で熱固定を行い、さらに140〜160℃の温度範囲で3〜12%のリラックスを与えながら熱処理を行うことが好ましい。その際、熱固定、リラックス熱処理は各々1〜30秒間、より好ましくは1〜20秒間行うことが好ましい。特に熱固定温度より5〜20℃低温でリラックス熱処理を施すことが、幅方向の熱収縮率を低減する方法として好ましく採用することができる。また、リラックス熱処理の際のリラックス率としては、5〜10%であればより好ましく、8〜10%であれば特に好ましい。さらに、幅方向に延伸配向した分子鎖を再び長手方向に配向させるために、横延伸後に再縦延伸を施すことは極めて有用な手法である。再縦延伸では、後述する長手方向の熱収縮率が大幅に悪化しない程度に、具体的には120〜150℃で1.5〜3倍延伸することが好ましい。
また、本発明のフィルムの長手方向の熱収縮率は0〜3%であれば好ましい。長手方向の熱収縮率が3%を超えると、電池組立工程時の乾燥工程で寸法変化による電池の不良発生の原因となる場合がある。長手方向の熱収縮率はより好ましくは0〜2.5%である。フィルム長手方向の熱収縮率を掛かる好ましい範囲内とする方法としては、特に限定されるものではないが、縦横延伸後の熱固定を150〜160℃の温度範囲で1〜30秒間行うことが好ましい。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、優れた透過性能とフィルム機械特性を両立させ、セパレータとして用いる観点から、フィルム厚みが10〜50μmであることが好ましい。より好ましくは15〜35μmである。
以下に本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムの製造方法を具体的に説明する。なお、本発明のフィルムの製造方法はこれに限定されるものではない。
以下、ポリオレフィン樹脂として、MFR(230℃、2.16kg)が8g/10分の市販のホモポリプロピレン樹脂94質量部と、同じく市販のMFR(230℃、2.16kg)が2.5g/10分の高溶融張力ポリプロピレン樹脂1質量部、さらにメルトインデックスが18g/10分の超低密度ポリエチレン樹脂5質量部を混合して使用する場合について説明する。このポリオレフィン樹脂に、N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド0.2質量部を混合し、二軸押出機を使用して予めポリオレフィン樹脂とβ晶核剤を均一に混合した原料を準備する。なお、混合原料作製時に、酸化防止剤としてリン酸系酸化防止剤やフェノール系酸化防止剤などを0.01〜0.2質量部添加して混合原料を調整してもよい。
次に、混合原料を単軸の溶融押出機に供給し、220℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性物を除去し、Tダイよりキャストドラム上に吐出し、未延伸シートを得る。この際、キャストドラムは表面温度が105〜130℃であることが未延伸シート中のβ晶分率を高く制御する観点から好ましい。この際、特にシート端部の成形が後の延伸性に影響するので、端部にスポットエアーを吹き付けてドラムに密着させることが好ましい。また、シート全体のドラム上への密着状態から必要に応じて全面にエアナイフを用いて空気を吹き付けてもよい。
次に得られた未延伸シートを二軸配向させ、フィルム中に空孔を形成する。二軸配向させる方法としては、フィルム長手方向に延伸後、幅方向に延伸、あるいは幅方向に延伸後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸法、またはフィルムの長手方向と幅方向をほぼ同時に延伸する同時二軸延伸法などを用いることができるが、高透気性フィルムが得やすいという点で逐次二軸延伸法を採用することが好ましく、特にフィルム長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましい。
具体的な延伸条件としては、まず未延伸シートを長手方向に延伸する温度に制御する。温度制御の方法は、温度制御した回転ロールを用いる方法、熱風オーブンを用いる方法などを採用することでできる。長手方向の延伸温度としては90〜120℃が好ましく、95〜110℃であればより好ましい。長手方向への延伸倍率は3〜6倍が好ましく、3.5〜5倍であればより好ましい。次に一旦冷却後、ステンター式延伸機にフィルム端部を把持させて導入する。そして、好ましくは140〜155℃に加熱して幅方向に5〜12倍、より好ましくは6〜10倍延伸を行う。なお、この時の横延伸速度としては100〜3,000%/分で行うことが好ましく、100〜1,000%/分であればより好ましい。ついで、そのままステンター内で熱固定を行うが、150〜160℃の温度範囲で熱固定を行い、さらに140〜160℃の温度範囲で3〜12%、より好ましくは5〜10%、特に好ましくは8〜10%のリラックスを与えながら熱処理を行うことが好ましい。その際、熱固定、リラックス熱処理は各々1〜30秒間、より好ましくは1〜20秒間行うことが好ましい。また、リラックス熱処理温度は熱固定温度より5〜20℃低温であることが好ましい。
なお、熱固定、リラックス熱処理の前、あるいはその後であっても、フィルム長手方向に再度延伸することは、本発明のフィルム幅方向の熱収縮を低減する観点で好ましいことである。再縦延伸の好ましい条件としては、延伸温度120〜150℃で、1.5〜3倍、より好ましくは1.8〜2.5倍延伸である。再縦延伸の条件が厳しすぎると、分子鎖が過度に長手方向に配向してしまい、長手方向の寸法安定性が悪化してしまう場合がある。
本発明の多孔性ポリプロピレンフィルムは、優れた透気性を有するだけでなく、十分な機械特性を保持できることから、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど、蓄電デバイスの正極と負極を隔離し、かつ伝導性物質であるイオンなどが自由に移動できる蓄電デバイス用セパレータとして好ましく用いることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)β晶形成能
樹脂またはフィルムを5mg採取し、試料としてアルミニウム製のパンに装填し、示差走査熱量計(DSC、セイコー電子工業(株)製RDC220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気下で室温から240℃まで10℃/分で昇温(ファーストラン)し、10分間保持した後、30℃まで10℃/分で冷却する。5分保持後、再度10℃/分で昇温(セカンドラン)した際に観察される融解ピークについて、145〜157℃の温度領域にピークが存在する融解をβ晶の融解ピーク、158℃以上にピークが観察される融解をα晶の融解ピークとして、DSC曲線の高温側平坦部を基準に引いたベースラインとピークに囲まれた領域の面積から、それぞれの融解熱量を求める。α晶の融解熱量をΔHα、β晶の融解熱量をΔHβとしたとき、以下の式で計算される値をβ晶形成能とした。なお、融解熱量の較正はインジウムを用いて行った。
β晶形成能(%) = 〔 ΔHβ / ( ΔHα + ΔHβ )〕 × 100
なお、ファーストランで観察される融解ピークから同様にβ晶の存在比率を算出した値は、その試料の状態でのβ晶分率を示している。
(2)空孔率
フィルムを30mm×40mmの大きさに切取り試料とした。電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて比重の測定を行った。測定を3回行い、平均値をそのフィルムの比重ρとした。
次に、測定したフィルムを280℃、5MPaで熱プレスを行い、その後、25℃の水で急冷して、空孔を完全に消去したシートを作成した。このシートの比重を上記した方法で同様に測定し、平均値を樹脂の比重(d)とした。なお、後述する実施例において、樹脂の比重dはいずれも0.91であった。フィルムの比重と樹脂の比重から、以下の式により空孔率を算出した。
空孔率(%) = 〔( d − ρ ) / d 〕 × 100
(3)透気抵抗度(ガーレー)
フィルムから100mm×100mmの大きさの正方形を切取り試料とした。JIS P 8117(1998)のB形ガーレー試験器を用いて、23℃、相対湿度65%にて、100mlの空気の透過時間を測定を行った。測定は3回行い、透過時間の平均値をそのフィルムの透気抵抗度(ガーレー)とした。
(4)フィルム厚み
フィルム厚みはダイヤルゲージを用い、JIS K 7130(1992)A−2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚みを測定した。その5ヶ所の値の平均値を10で割り、1枚あたりのフィルム厚みを算出した。
(5)熱収縮率
フィルムを長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔で標線を描き、3gの錘を吊して120℃に加熱した熱風オーブン内に40分間設置し加熱処理を行った。熱処理後、放冷し、標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から熱収縮率を算出し、寸法安定性の指標とした。測定は各フィルムとも長手方向および幅方向に5サンプル実施して平均値で評価を行った。
(6)セパレータ耐熱性
以下の通りリチウムイオン電池を作成し、評価を行った。
・正極材料
LiCoO(セイミケミカル製C−012):89.5質量部
アセチレンブラック(電気化学工業製75%プレス品):4.5質量部
ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業製):6質量部
N−メチル−2−ピロリドン:40質量部
上記物質を混合し、スラリーを作成した。得られたスラリーを集電体であるアルミニウム箔上に塗着、乾燥後、打抜き加工を行った。
・負極材料
メソカーボンマイクロビーズ(MCMB:大阪ガスケミカル製25−28):93質量部
アセチレンブラック:2質量部
ポリフッ化ビニリデン:5質量部
N−メチル−2−ピロリドン:50質量部
上記物質を混合し、スラリーを作成した。得られたスラリーを集電体である銅箔上に塗着、乾燥後、打抜き加工を行った。
プロピレンカーボネートとメチルカーボネートを質量比3:7で混合した溶媒に、LiPFを濃度が1mol/Lとなるように溶解させ、これを電解液として用いた。正極と負極の間に、フィルムをセパレータとして挟み、打ち抜き加工後、正極、負極各短詩を取り出し、アルミラミネートタイプの外装体に挿入した。当該外装体の3方をシール後、120℃で1時間乾燥を行い、電解液を注入し、減圧下で4方目をシールした。このようにして、各フィルム10個ずつリチウムイオン電池を作成し、以下の基準で評価を行った。
A級:正負極の短絡なく、全て正常に作動した。
B級:フィルムが熱収縮し、正負極が短絡した電池が1〜3個あった。
C級:4個以上の電池で正負極が短絡する不良品であった。
(7)イオン電導性
プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの等容量混合溶媒中、LiPF6 を1モル/Lの割合で溶解した電解液を作製した。この電解液中にニッケル製正・負極および該正・負極間に多孔性ポリオレフィンフィルムを配置し、LCRメーターを用いて、複素インピーダンス法にてコール・コールプロットを測定し、20,000Hzでのインピーダンスの実部を求めイオン電導性の指標とした。測定は、アルゴン雰囲気のグローブボックス中、25℃において行った。
A級:インピーダンス(実部)が0.12Ω未満であった。
B級:インピーダンス(実部)が0.12Ω以上0.15Ω未満であった。
C級:インピーダンス(実部)が0.15Ω以上であった。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を94質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を1質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を5質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、95℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて145℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで140℃、リラックス率10%で5秒間弛緩処理を行い、厚み28μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例2)
ポリプロピレン樹脂として、(株)プライムポリマー製ホモポリプロピレン F107BV(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:98%)を98.5質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を0.5質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を1質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.1質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて140℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで140℃、リラックス率8%で5秒間弛緩処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例3)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を95質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を2質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を3質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.25質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に6倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて150℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行い、そのまま160℃で5秒間熱固定を行い、ついで150℃、リラックス率10%で5秒間弛緩処理を行い、厚み22μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例4)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を94質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を3質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を3質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.05質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて145℃で幅方向に延伸速度900%/分で6.5倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで140℃、リラックス率8%で5秒間弛緩処理を行い、厚み28μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例5)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を91質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を1質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8401(メルトインデックス:30g/10分)を8質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4.5倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて145℃で幅方向に延伸速度1,200%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで155℃、リラックス率9%で5秒間弛緩処理を行い、厚み25μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を94質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を3質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を3質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、95℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて140℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で3秒間熱固定を行い、ついで140℃、リラックス率5%で3秒間弛緩処理を行い、厚み28μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を99質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を1質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、95℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて145℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで140℃、リラックス率10%で5秒間弛緩処理を行い、厚み15μmの二軸配向ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例3)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を88質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を1質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を11質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.05質量部加えて2軸押出機に供給し、220℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に2.5倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて145℃で幅方向に延伸速度900%/分で6倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで155℃、リラックス率8%で5秒間弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例6)
ポリプロピレン多孔フィルムの原料樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレンFSX80E4を94質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF−814を1質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体であるダウ・ケミカル社製 Engage8411を5質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010を0.15質量部、IRGAFOS168を0.1質量部の比率で混合し、2軸押出機に供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃で溶融押出を行い、焼結フィルターで異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、100℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に5倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて150℃で幅方向に延伸速度1,300%/分で6.5倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで、145℃、リラックス率11%で5秒間弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
参考例7)
ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製ホモポリプロピレン WF836DG3(MFR:7g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を94質量部、Basell社製高溶融張力ホモポリプロピレン Pro−fax PF814(MFR:2.5g/10分、アイソタクチックインデックス:97%)を3質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体である、ダウ・ケミカル社製 Engage8411(メルトインデックス:18g/10分)を3質量部混合したところに、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製Nu−100)を0.2質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX1010を0.15質量部、IRGAFOS168を0.1質量部の比率で混合し、2軸押出機に供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状に押出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリオレフィン樹脂原料を得た。
このポリオレフィン樹脂を単軸押出機に供給して220℃にて溶融押出を行い、焼結フィルターにて異物を除去後、Tダイから120℃に表面温度を制御したキャストドラム上に吐出し、ドラムに15秒間接するようにキャストして、未延伸シートを得た。ついで、95℃に加熱したロールを用いて未延伸シートを加熱し、長手方向に4倍延伸を行った。一旦冷却後、ステンター式横延伸機にて140℃で幅方向に延伸速度1,500%/分で6倍延伸を行った。ついで、再縦延伸ロールで140℃に加熱し、長手方向に2倍延伸し、ステンター熱処理機に導入し、155℃で5秒間熱固定を行い、ついでリラックス率5%で3秒間弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
(比較例4)
実施例6において、フィルム長手方向の延伸までは同様に行った。冷却したフィルムをステンター式横延伸機にて150℃で幅方向に延伸速度1,300%/分で6.5倍延伸を行い、そのまま155℃で5秒間熱固定を行い、ついで、155℃、リラックス率5%で5秒間弛緩処理を行い、厚み20μmの多孔性ポリプロピレンフィルムを得た。
Figure 0005256773
Figure 0005256773
Figure 0005256773
本発明の要件を満たす実施例ではセパレータ評価時に正極と負極の短絡発生が少なく、蓄電デバイス用セパレータとして優れていた。一方、比較例1では寸法安定性に劣ることから、正極と負極の短絡が多数発生し、電池を組み立てても、不良品ばかりで実用上大きな問題である。また、比較例2では、エチレン・α−オレフィン共重合体を使用していないため、透気性を有しておらず、セパレータとして実用上価値のないものであった。さらに、比較例3では、低融点であるエチレン・α−オレフィン共重合体の使用量が多いために、熱寸法安定性に劣ってしまい、セパレータとして実用上大きな問題があった。
本発明による多孔性ポリプロピレンフィルムは、優れた熱寸法安定性を有していることから、蓄電デバイスのセパレータ用途に好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. ポリプロピレン樹脂99.9〜90質量%とエチレン・α−オレフィン共重合体0.1〜10質量%とからなるポリオレフィン樹脂を含み、空孔率が60〜90%であり、フィルム幅方向の120℃、40分間の熱収縮率が0〜%である多孔性ポリプロピレンフィルム。
  2. ポリオレフィン樹脂のβ晶形成能が50〜100%である、請求項1に記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
  3. フィルム長手方向の120℃、40分間の熱収縮率が0〜3%である、請求項1または2に記載の多孔性ポリプロピレンフィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性ポリプロピレンフィルムを用いてなる蓄電デバイス用セパレータ。
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