JP5239302B2 - リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Description
その中で、高容量化の手法として、使用充電上限電圧の増大が注目されている。従来のリチウムイオン二次電池は、正極にコバルト酸リチウム、負極に炭素材料を用い、充電終止電圧は4.1V〜4.2Vとされている。このように充電終止電圧を設計したリチウムイオン二次電池では、正極に用いられるコバルト酸リチウムなどの正極活物質は、その理論容量に対して50%〜60%程度の容量を活用しているに過ぎない。このため、更に充電電圧を上げることにより、残存容量を活用することが原理的には可能であり、実際に充電時の電圧を4.30V以上にすることにより高エネルギー密度化を図れることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような正極活物質の安定性を向上させる手法として、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、あるいはチタンなどの異種元素を固溶させること(特許文献2参照)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物などを少量混合させて用いること(特許文献3参照)、また、コバルト酸リチウムの表面をスピネル構造有するマンガン酸リチウムあるいはニッケルコバルト複合酸化物で被覆すること(特許文献4,5参照)などが報告されている。
そこで、4−フルオロエチレンカーボネートの添加剤を加えるなど、電解液に種々の添加剤を添加することにより、その反応を抑制することが検討されている。その一つに、4−フルオロエチレンカーボネートを添加することが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
具体的には、ニッケル(Ni)及び/又はマンガン(Mn)から成る酸化物を被覆したコバルト酸リチウムを正極活物質として用いて充電終止電圧を高く設定できるようにするとともに、負極表面での電解液の分解を抑制するため、フルオロエチレンカーボネート系の添加剤を多量に添加したリチウムイオン二次電池では、高い室温サイクル特性が得られるものの、非水電解液中に存在する多量の添加剤によって、高温サイクル特性が低下するという問題が生じた。
上記正極が、ニッケル及び/又はマンガンの酸化物でコバルト酸リチウムの表面を被覆した正極活物質を含み、且つ
上記非水電解液が、4−フロオロエチレンカーボネートと炭酸ビニレンを含み、
上記4−フルオロエチレンカーボネートの含有量が、1質量%〜15質量%であり、
上記炭酸ビニレンの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
上記セパレータが、ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の片面又は両面に形成された耐熱絶縁層を備え、
この耐熱絶縁層が、耐酸化性セラミックス粒子と耐熱性樹脂を含み、この耐酸化性セラミックス粒子の含有量が60質量%〜95質量%であり、
上記正極及び上記負極に形成された合剤層の合剤の面積密度比が、正極/負極=1.90〜2.15の範囲であることを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウム複合酸化物を有する正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に介在し多孔性ポリオレフィンを有するセパレータと、非水電解液とを備え、且つ一対の上記正極及び上記負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.25V〜4.55Vの範囲内であるリチウムイオン二次電池であって、
上記正極が、ニッケル及び/又はマンガンの酸化物でコバルト酸リチウムの表面を被覆した正極活物質を含み、且つ
上記非水電解液が、4−フロオロエチレンカーボネートと炭酸ビニレンを含み、
上記4−フルオロエチレンカーボネートの含有量が、1質量%〜15質量%であり、
上記炭酸ビニレンの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
上記セパレータは、ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の上記正極側に形成された表面層を備え、
この表面層が、ポリフッ化ビニリデン、及びポリプロピレンから成る群より選ばれた少なくとも1種を含み、
上記正極及び上記負極に形成された合剤層の合剤の面積密度比が、正極/負極=1.90〜2.15の範囲であることを特徴とする。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の一実施形態を示す断面図である。この図に示す二次電池は、電極反応物質としてリチウム(Li)を用いるものである。
この二次電池は、いわゆる円筒型電池と称されるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶1の内部に、一対の帯状の正極2と帯状の負極3とセパレータ4とが巻回された巻回電極体20を有し、正極2及び負極3は、セパレータ4を介して対向配置されている。
電池缶1は、例えばニッケル(Ni)のめっきが施された鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶1の内部には、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板5及び絶縁板6がそれぞれ配置されている。
電池蓋7は、例えば、電池缶1と同様の材料により構成されている。安全弁機構8は、熱感抵抗素子9を介して電池蓋7と電気的に接続されており、内部短絡又は外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合に、ディスク板11が反転して電池蓋7と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。
熱感抵抗素子9は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット10は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
正極リード13は、安全弁機構8に溶接されることにより電池蓋7と電気的に接続されており、負極リード14は、電池缶1に溶接され電気的に接続されている。
図2に示すように、正極2は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体2Aの両面に正極合剤層2Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体2Aの片面のみに正極合剤層2Bが設けられた領域を備えるようにしてもよい。
正極集電体2Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極合剤層2Bは、例えば、正極活物質として、リチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な正極材料を含んでいる。
負極集電体3Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。負極合剤層3Bは、負極活物質として、リチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な負極材料のいずれか1種又は2種以上を含んで構成されている。
また、この二次電池は、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.30V以上4.55V以下の範囲内になるように設計されている。よって、完全充電時における開回路電圧が4.20Vの電池よりも、同じ正極活物質であっても、単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるので、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されており、これにより高いエネルギー密度が得られるようになっている。特に、完全充電時における開回路電圧が4.35V以上4.45V以下の範囲内とした場合に、実際上利用できる効果が高くなっている。
[正極]
正極2は、正極活物質、導電材及び結着剤等を正極集電体2Aの表面に塗布して得ることができる。具体的には、正極2は、粉末状の正極活物質と、導電材と、結着剤と、結着剤の溶媒又は分散楳から成る正極合剤スラリーを、例えばアルミニウム箔等の正極集電体2Aに塗工・乾燥及びプレス圧延せしめて、正極集電体2A上に正極合剤層2Bを形成することによって作製できる。
正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料を用いることができる。具体的に、正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物及びリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。
エネルギー密度を高くするには、リチウム(Li)と遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co),ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)又は鉄(Fe)、及びこれらの任意の混合物を含むものであればより好ましい。
(式中のM1はバナジウム(V)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)から成る群より選ばれた少なくとも1種を示し、a、b及びcの値は、0.9≦a≦1.1、0≦b≦0.3、−0.1≦c≦0.1の範囲内である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、aの値は完全放電状態における値を表している。)
(式中のM2はバナジウム(V)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)及び鉄(Fe)から成る群より選ばれた少なくとも1種を示し、v、w、x、y及びzの値は、−0.1≦v≦0.1、0.9≦w≦1.1、0<x<1、0<y<1、0<z<0.5、0≦1−x−y−zの範囲内である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、wの値は完全放電状態における値を表している。)
(式中のM4はコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びタングステン(W)から成る群より選ばれた少なくとも1種を示す。p、q、r及びsは0.9≦p≦1.1、0≦q≦0.6、3.7≦r≦4.1、0≦s≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、pの値は完全放電状態における値を表している。)
(式中M5はコバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)及びジルコニウム(Zr)から成る群より選ばれた少なくとも1種を示す。tは0.9≦t≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、tの値は完全放電状態における値を表している。)
具体的には、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、あるいはチタンなどの異種元素を固溶させること(特許文献2参照)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物などを少量混合させて用いること(特許文献3参照)、コバルト酸リチウムの表面をスピネル構造有するマンガン酸リチウムあるいはニッケルコバルト複合酸化物で被覆すること(特許文献4、5参照)などが報告されているが、これらの正極活物質を用いることができる。 これらの先行技術におけるリチウムイオン二次電池の正極活物質は、高い充電圧域における構造安定性を向上させるようにされたものである。この正極活物質を使用した正極と炭素材料を負極活物質とする負極と組み合わせると、充電電圧が4.30V以上4.50V以下の高電圧で充電可能なリチウムイオン二次電池が得られる。
正極合剤層2Bには、さらに、結着剤として、例えば、ポリフッ化ビニリデン又はフッ化ビニリデンの共重合体若しくはこれらの変性物、ポリテトラフルオロエチレン又は共重合体、ポリアクリロニトリル及びポリアクリル酸エステル等を主成分とするアクリル系樹脂等が用いられる。特に、ポリフッ化ビニリデンは、耐久性、特に耐膨潤性に優れているので好ましい。
なお、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、より具体的には、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン、ブタジエン、スチレン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート及びメチルビニルエーテルなどを挙げることができる。
これらの重合体は、その1種を単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよく、さらには、このような固有粘度の範囲外にある重合体又は他の結着剤を混合して用いてもよい。なお、固有粘度は、ジメチルホルムアミドに一定量を溶解させた際の所定の室温における相対粘度として、B型粘度計を用いて得ることができる。
0.5%未満では、結着性が十分ではなく、正極活物質などを正極集電体2Aに結着させるのが難しくなる。また、7%を超えると、電子伝導性及びイオン伝導性の低い重合体が正極活物質を被覆してしまい、充放電効率が低下してしまうことがある。
負極3は、負極活物質、導電材及び結着剤などを混合して得られた負極合剤を、負極集電体3Aの表面に塗布し、負極合剤層3Bを設けて得ることができる。
負極活物質としては、リチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な負極材料を用いることができる。リチウム(Li)を吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、繊維状炭素及び活性炭などの炭素材料を挙げることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークス又は石油コークスなどを挙げることができる。
正極合剤層2B及び負極合剤層3Bの厚みを厚くした方がエネルギー密度を向上させることができるが、あまり厚くしすぎるとリチウムの受け入れ性が低下して重負荷特性及びサイクル特性などの電池特性が低下してしまうことがある。
更に、負極活物質層3Bの体積密度は、1.65g/cm3〜1.85g/cm3の範囲内とすることが好ましい。体積密度が1.65g/cm3よりも低いと電池内に充填できる活物質量が減少し、エネルギー密度を十分に向上させることができず、体積密度が1.85g/cm3よりも高いとリチウムの受け入れ性が低下して重負荷特性及びサイクル特性などの電池特性が低下してしまうことがある。
このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料とともに用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができるとともに、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。
この負極材料は、金属元素又は半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、合金には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素又は半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)及びスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)及びスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)及びクロム(Cr)から成る群より選ばれた少なくとも1種を含むものを挙げることができる。
スズ(Sn)の化合物又はケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)又は炭素(C)を含むものを挙げることができ、スズ(Sn)又はケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
結着剤として使用可能な熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、及びエチレン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらはNaイオンなどによる架橋体であってもよい。
導電材の添加量は、特に限定されないが、負極合剤に含まれる活物質粒子に対して、1〜30%が好ましく、1〜10%が更に好ましい。
箔又はシートの表面には、カーボン、チタン及びニッケルなどの層を付与したり、酸化物層を形成したりすることもできる。また、箔又はシートの表面に凹凸を付与することもでき、ネット、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体及び繊維群成形体などを用いることもできる。負極集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば1〜500μmの範囲内である。
セパレータ4は、例えば、基材層と、表面層とを有している。表面層は、正極2に対向する側の面の少なくとも一部、より好ましくは、正極2に対向する側の全面、さらに好ましくは両面に設けられている。
基材層としては、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は、ショート防止効果に優れ、且つシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、且つ電気化学的安定性にも優れているので、基材層を構成する材料として好ましい。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂であればポリエチレン又はポリプロピレンと共重合させたり、又はブレンド化することで用いることができる。
セパレータ4の孔径は、正極2又は負極3からの溶出物などが透過しない範囲とするのが好ましく、具体的には、0.01μm〜1μmの範囲内が好ましい。また、セパレータ4の厚みは、例えば、10μm〜300μmの範囲内が好ましく、15μm〜30μmの範囲内がより好ましい。セパレータ4の厚みが薄いと、ショートが発生してしまうことがあり、厚みが厚いと、正極材料の充填量が低下してしまうことがある。
セパレータ4の空孔率は、電子及びイオンの透過性、素材又は厚みにより決定されるが、一般には、30%〜80%の範囲内であり、より好ましくは35%〜50%の範囲内である。空孔率が低いとイオン伝導性が低下してしまい、空孔率が高いとショートが発生することがあるからである。
この耐熱絶縁層は、耐熱性樹脂と耐酸化性セラミックとを含有する。なお、耐熱絶縁層は、正極と基材層(ポリオレフィン層)との間に少なくとも配設されていればよく、このような耐熱絶縁層としては、耐熱性樹脂と耐酸化性セラミック粒子との混合物を層状に形成したのものや、それぞれを層状に形成させたものを挙げることができる。
具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等のパラ配向型又はパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドを例示することができる。
固有粘度が1.0dl/g未満では、十分なフィルム強度が得られない場合がある。また、固有粘度が2.8dl/gを超えると安定なパラアラミド溶液となりにくく、パラアラミドが析出しフィルム化が困難となる場合がある。
上記極性有機溶媒としては、例えば極性アミド系溶媒又は極性尿素系溶媒を挙げることができ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、パラアラミドは、多孔質であり、フィブリル状ポリマーであることが好ましい。このようなフィブリル状ポリマーは、微視的には、不織布状であり、層状で多孔状の空隙を有するものであり、いわゆるパラアラミド多孔質樹脂を形成している。
上記二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
また、上記ジアミンの具体例としては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3,3’−メチレンヂアニリン、3,3’−ジアミノベンソフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5’―ナフタレンジアミンなどを挙げることができる。
ポリイミドに用いる極性有機溶媒としては、上記アラミドの場合で例示したもののほか、ジメチルスルホキサイド、クレゾール又はo−クロロフェノール等が好適に使用できる。
また、耐酸化性セラミック粒子の含有量が、60%未満のときは、高充電域での劣化が抑制できない可能性があり、95%を超えるときは、セパレータが脆くなり、取り扱いが難しくなる場合がある。
また、耐酸化性セラミックス粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状のものでもランダムな形状のものでも使用できる。
更に、耐酸化性セラミックス粒子は、セパレータの強度に与える影響、塗工面の平滑性の観点から、一次粒子の平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。このような一次粒子の平均粒径は、電子顕微鏡により得た写真を、粒子径計測器で解析する方法により測定することができる。
耐酸化性セラミック粒子の一次粒子の平均粒径が1.0μmを超えると、セパレータが脆くなり、塗工面も粗くなる場合がある。
このような耐酸化性セラミック粒子は、例えば耐熱性樹脂と耐酸化性セラミック粒子との混合物を層状に形成した場合には、耐熱性樹脂と絡まって、捕捉され、セパレータ中の全体又は部分的に分散して含まれる。
具体的には、有機繊維として、レーヨン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリスチレン、ナイロン等の熱可塑性ポリマーから成る繊維や、マニラ麻などの天然繊維などを挙げることができる。また、無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維などを挙げることができる。
更に、耐熱絶縁層付きセパレータの空隙率は、電子及びイオンの透過性、素材又は厚みにより決定されるが、一般には、30〜80%の範囲内であり、より好ましくは35〜50%の範囲内である。空孔率が低いとイオン伝導性が低下してしまい、空孔率が高いとショートが発生することがあるからである。
更にまた、耐熱絶縁層付きセパレータの厚みは、例えば10〜300μmの範囲内が好ましく、15〜70μmの範囲内がより好ましく、15〜25μmの範囲内が更に好ましい。耐熱絶縁層付きセパレータ厚みが薄いと、ショートが発生してしまうことがあり、厚みが厚いと、正極材料の充填量が低下してしまうからである。
このような熱可塑性ポリマーが、温度上昇時に溶融し、耐熱絶縁層付きセパレータの空隙を閉塞することができる。このような熱可塑性ポリマーは、リチウムイオン二次電池のセパレーターとして使用する場合、シャットダウン機能の観点から、260℃以下で溶融するポリマーであることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。また、溶融温度は、シャットダウン温度として適当なので、100℃程度以上であることが好ましい。
特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレン、もしくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が溶融温度が適当で、入手が容易なので好適に用いられる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
セパレータ4には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩を含んでいる。
溶媒は、炭酸ビニレン及び4−フルオロエチレンカーボネートを含んでいる。適切な量が含まれていることで、負極3に強固で高いリチウムイオン伝導性を有する良好な被膜を形成することができ、高い充電電圧にさらされた正極表面上及び負極での電解液の過剰な分解を抑制することで、サイクル特性を向上させるからである。
一方、4−フルオロエチレンカーボネートの含有量は、電解液において0.5%〜15%の範囲内であることが好ましい。0.5%未満であるとサイクル特性の向上効果が少なくなる虞があり、また15%を超えると負極上で過剰に分解され充放電効率が低下してしまう虞があるからである。
さらに、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド及びリン酸トリメチルなどを挙げることができる。
また、電解質塩としては、これらの電解質塩に加えて、他の電解質塩を混合して用いてもよい。他の電解質塩としては、例えば、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C2F5)、LiN(SO2CF3)(SO2C3F7)、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、及びLiBrなどが挙げられる。他の電解質塩は、1種を単独で混合して用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
すなわち、ホウ素(B)は、原子量が10.8と小さい上に、有機物に含まれる元素としては酸素(O)やチッ素(N)よりも多い4本の結合が可能であり、酸素原子を介して多くの電子求引性を有する有機置換基と結合できる能力を持っているからである。
アニオン中心の原子と電子求引性の有機置換基とを直接結合させずに、その間に酸素原子を介在させているのは、酸素原子の電気陰性度が高く、酸素原子がアニオン中心の原子を安定化させる上に、2本しか結合を持たないため、立体障害が少ない状態で電子求引性の有機置換基を結合させ得るからである。そして、電子求引性の有機置換基はアニオン中心の原子に対して酸素原子を介して電子を求引し、アニオン中心の原子の電子密度を低下させて、アニオン中心から電子を取り出しにくくすることによって、アニオンが酸化されるのを防止する。
電子求引性の有機置換基としては、たとえばカルボニル基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基などがあるが、特にカルボニル基、スルホニル基が容易に合成できることから適している。
さらに好ましいものとしては、以下の(5)式、(6)式で表される化合物が挙げられる。
このリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、正極活物質と、導電材、且つフッ化ビニリデンを成分として含む重合体を混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体2Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機などにより圧縮成型することにより正極合剤層2Bを形成し、正極2を形成する。
正極2及び負極3を電池缶1の内部に収納した後、電解液を電池缶1の内部に注入し、セパレータ4に含浸させる。その後、電池缶1の開口端部に電池蓋7、安全弁機構8及び熱感抵抗素子9をガスケット10を介してかしめることにより固定する。以上により、図1に示すこの発明の一実施形態によるリチウムイオン二次電池が製造される。
また、正極2、負極3及びセパレータ4を備えた巻回電極体20の空間体積に対して適切に電解液量を調整し、且つ電解液中にビニレンカーボネートを含むので、充放電サイクルの容量維持率の低下を抑制できる。さらに、正極2と負極3とを帯状のセパレータ4を介して巻回することによって構成された渦巻き型の巻回電極体20からなり、この巻回電極体20の正極2、負極3、及びセパレータ4の幅が、セパレータ幅>負極幅>正極幅の関係にあるため、より良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
表1〜表8は、サンプル1−1〜サンプル8−4の充電電圧、正極活物質、セパレータ、電解液への添加Li塩及び添加量、初回定格容量、高温サイクル後の容量維持率、高温保存後の復帰維持率を示す。以下、表1〜表8を参照して、サンプル1−1〜サンプル8−4について説明する。
(正極活物質Iの合成)
LiOH及びCo0.98Al0.01Mg0.01(OH)2で表される共沈水酸化物を、Li:遷移金属合計のモル比が1:1となるように乳鉢にて混合した。この混合物を、空気雰囲気通に800℃で12時間熱処理した後に粉砕し、BET比表面積0.44m2/g、平均粒子径6.2μmのリチウム−コバルト複合酸化物(A)[LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2]、及びBET比表面積0.20m2/g、平均粒子径16.7μmのリチウム−コバルト複合酸化物(B)[LiCo0.98Al0.01Mg0.01O2]を得た。この(A)及び(B)を85:15(重量比)で混ぜ合わせることで、正極活物質Iを得た。正極活物質IをCuKαによるX線回折分析したところR−3菱面体層状岩塩方構造であることがわかった。
正極活物質I及び平均粒子径が1μmの粒子径を持つ酸化ニッケル及び酸化マンガンを、96%:2%:2%で混合し、ホソカワミクロン社製メカノフュージョンシステムを利用して、乾式混合を行い、ニッケル酸化物、マンガン酸化物を、正極活物質Iに被覆した。ついで、空気中950℃で10hr焼成した。これにより、ニッケル酸化物及びマンガン酸化物を正極活物質の表面を覆った構造を持つ正極活物質IIを得た。なお、平均粒子径は、正極活物質Iと大きな違いが見られなかった。
炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化コバルト(Co3O4)、酸化ジルコニウム(ZrO2)及び酸化マグネシウム(MgO)を、Li:Co:Zr:Mgのモル比が1:0.99:0.005:0.005となるように混合した後、空気雰囲気中、900℃で24時間熱処理し、その後、粉砕することにより、BET比表面積が0.38m2/g、平均粒子径13.9μmである正極活物質IIIを得た。
正極活物質と、導電剤としてケッチェンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを混合して正極合剤を調製した。
次に、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み15μmの帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体2Aの両面に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層2Bを形成し正極2を作製した。次に、正極集電体21Aにニッケル製の正極リード25を取り付けた。
負極材料として、BETによる比表面積が3.0m2/gの粒状人造黒鉛粉末と、導電剤として気相成長繊維状炭素(昭和電工製VGCF)と、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を、イオン交換水とともに混合して負極合剤を調製し、負極合剤スラリーとし、厚み8μmの帯状銅箔よりなる負極集電体3Aの両面に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型して負極活物質層3Bを形成し負極3を作製した。
負極活物質層3Bについて体積密度を調べたところ、1.70g/cm3であった。次に、負極集電体3Aにニッケル製の負極リード14を取り付けた。その際、正極材料と負極材料の量を調節し、完全充電時における開回路電圧が表1に示すものであり、負極3の容量がリチウムの吸蔵及び放出による容量成分により表されるように設計した。
セパレータは、総厚みが20μmであり、ポリエチレン層の両面にポリプロピレン層を設けた3層構造のものを用いた。
電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)及び4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)及び炭酸ビニレン(VC)を、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:メチルエチルカーボネート:4−フルオロエチレンカーボネート:炭酸ビニレン=23:65:6:3:3の質量比で混合した溶媒に、さらに電解質塩として、LiPF6を溶解させたものを用いた。LiPF6を質量モル濃度は、1.5mol/kgとなるように溶解させたものを用いた。
正極2、負極3、耐熱性樹脂及びセラミック粉末を塗布したセパレータを円筒状に巻くことで、巻回電極体20を作製した。具体的には、以下に説明するようにして作製した。
正極2及び負極3をそれぞれ作製した後、微多孔質膜のセパレータ4を用意し、負極3、セパレータ4、正極2、セパレータ4の順に積層してこの積層体を渦巻状に多数回巻回し、ジェリーロール型の巻回電極体20を作製した。セパレータ4には、厚みが20μmであり、ポリエチレン層の両面にポリプロピレン層を設けた3層構造のものを用いた。
帯状のセパレータ4、負極3及び正極2の幅はセパレータ幅>負極幅>正極幅の関係にあるように巻回した。このために、充電時に正極2中のリチウムが負極3に回りこんで負極3においてデンドライト状に結晶成長したり、また、このデンドライト状の結晶が正極2に到達して内部短絡にいたるのをさらに効果的に防止できるので、さらに良好な充放電サイクル特性が得られる。3.5φの巻き芯を用い、素子径17.20mmになるように、正・負極の電極長を調整した。
作製した巻回電極体20を一対の絶縁板5,6で挟み、負極リード14を電池缶11に溶接するとともに、正極リード13を安全弁機構8に溶接して、巻回電極体20を電池缶1の内部に収納した。その後、電池缶1の内部に、表1に示す実電解液量の電解液を注入し、ガスケット10を介して電池蓋7を電池缶1にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型二次電池を得た。
1)初期充放電
作製したサンプル1〜サンプル28の二次電池について、25℃で、0.1Cに相当する電流で、表1に示す充電上限電圧で定電流−定電圧充電(CCCV充電)を行った後、45℃で2日間充電保管を行い、さらに23℃で1日間保管を行った後、0.2Cに相当する電流で、3.0Vになるまで放電を行った。次いで、0.5C相当の電流で表1に示す充電上限電圧と3.0Vの範囲で充放電を5回繰り返した。そして5サイクル目の放電容量を、定格放電容量とした。
上記1)で初期充放電を行ったサンプル1〜サンプル35の二次電池について25℃にて、表1に示す充電上限電圧で定電流−定電圧充電(CCCV充電)を行った後、0.5C放電を行い、初期容量とした。ついで、再度、表1に得られた二次電池について25℃で充放電を行い、5サイクル目の放電容量、並びに200サイクル目の放電容量維持率を調べた。その際、充電は0.7Cで上限電圧まで定電圧定電流充電をした後、上限電圧で充電電流が50mAに減衰するまで行い、放電は0.5Cの一定電流で端子電圧が3.0Vに達するまで行った。
300サイクル目の容量維持率は、3サイクル目の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の比率(300サイクル目の放電容量/3サイクル目の放電容量)×100(%)として求めた。
これに対して、添加剤(A)である4−フルオロエチレンカーボネートが単独に添加された比較例1−2は、高温サイクルが悪くなる。また、添加剤(B)が単独に添加された比較例1−3は、室温サイクルが悪くなることがわかる。
またさらに、添加剤(A)としてのジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)と添加剤(B)の双方の組み合わせ、及び添加剤(A)4−フルオロエチレンカーボネートと(B)ビニルエチルカーボネート(VEC)の双方の組み合わせを示したが、同様に、高い室温サイクル、高温サイクルが得られていることがわかる。これは、添加剤(A)及び添加剤(B)が、正極及び負極において、競争的にかつ相互的に分解反応を起こし、安定な被膜を形成することができたためと考えられる。
しかしながら、充電終止電圧が4.30Vから4.50Vの範囲において、添加剤(A)及び添加剤(B)の双方を含む電解液を有する電池においては、室温サイクル及び高温サイクルともに、高い容量維持率を持つことがわかった。
また、充電終止電圧を4.60Vとした場合では、添加剤(A)及び添加剤(B)の量に関係なく、低い容量維持率を示した。これは、高充電圧仕様の正極活物質においても、金属イオンの溶出や電解液の分解が顕著になり、添加剤(A)及び(B)の効果だけでは、インピーダンスの上昇を抑えることができなかったため、サイクル特性が一様に低下してしまったと考えられる。従って、高充電圧工程において、充電電圧は4.30Vから4.50Vの範囲が好ましいことがわかる。
一方、添加剤(A)と添加剤(B)がそれぞれお10%以上超えてくると、室温サイクル、高温サイクルがそれぞれ低下する傾向にある。以上の結果から、添加剤(A)の好ましい添加量は1%から15%の範囲であり、添加剤(B)の好ましい添加量は1%から5%の範囲であることがわかる。
一方で、面積密度比が2.20を超えてしまうと、高い定格容量が得られるものの、サイクル特性が大きく低下してしまうことがわかる。これは、正極に対して負極が少なくなりすぎてしまい、サイクル中に負極に金属Liが析出してしまうことで、サイクルの劣化が起き易くなったためと考えられる。従って、好ましい面積密度比は、1.90〜2.15の範囲であることがわかる。
一方で、正極活物質(I)及びLiCoO2は、低いサイクル特性を示した。正極活物質(I)及びLiCoO2は、高充電圧仕様でないため、高い充電電圧にさらされることで、Co溶出が著しく、高いインピーダンスの抑制ができなくなったと考えられる。
例えば、正極活物質としては、中心粒や被覆系ともに上記の組成に限定されるものではなく、更にはスピネル系との混合も可能である。また、電解質は必ずしも電解液である必要はなく、ポリマー系であってもよい。また、電池の外装は缶である必要はなく、ラミネート包装でも可能である。
Claims (6)
- リチウム複合酸化物を有する正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に介在し多孔性ポリオレフィンを有するセパレータと、非水電解液とを備え、且つ一対の上記正極及び上記負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.30V〜4.50Vの範囲内であるリチウムイオン二次電池であって、
上記正極が、ニッケル及び/又はマンガンの酸化物でコバルト酸リチウムの表面を被覆した正極活物質を含み、且つ
上記非水電解液が、4−フロオロエチレンカーボネートと炭酸ビニレンを含み、
上記4−フルオロエチレンカーボネートの含有量が、1質量%〜15質量%であり、
上記炭酸ビニレンの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
上記セパレータが、ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の片面又は両面に形成された耐熱絶縁層を備え、
この耐熱絶縁層が、耐酸化性セラミックス粒子と耐熱性樹脂を含み、この耐酸化性セラミックス粒子の含有量が60質量%〜95質量%であり、
上記正極及び上記負極に形成された合剤層の合剤の面積密度比が、正極/負極=1.90〜2.15の範囲であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - リチウム複合酸化物を有する正極と、負極と、上記正極と上記負極との間に介在し多孔性ポリオレフィンを有するセパレータと、非水電解液とを備え、且つ一対の上記正極及び上記負極当たりの完全充電状態における開回路電圧が4.30V〜4.50Vの範囲内であるリチウムイオン二次電池であって、
上記正極が、ニッケル及び/又はマンガンの酸化物でコバルト酸リチウムの表面を被覆した正極活物質を含み、且つ
上記非水電解液が、4−フロオロエチレンカーボネートと炭酸ビニレンを含み、
上記4−フルオロエチレンカーボネートの含有量が、1質量%〜15質量%であり、
上記炭酸ビニレンの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
上記セパレータは、ポリオレフィン多孔質膜から成る基材層と、この基材層の上記正極側に形成された表面層を備え、
この表面層が、ポリフッ化ビニリデン、及びポリプロピレンから成る群より選ばれた少なくとも1種を含み、
上記正極及び上記負極に形成された合剤層の合剤の面積密度比が、正極/負極=1.90〜2.15の範囲であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。 - 上記負極が帯状の負極集電体とその両面に形成された負極合剤層を有し、この負極合剤層の体積密度が1.65g/ml〜1.85g/mlであり、且つこの負極合剤層の厚みが両面の合計で160μm〜220μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 上記負極が繊維状炭素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- 上記ニッケル及び/又はマンガンの酸化物は、酸化ニッケルの粒子および/または酸化マンガンの粒子として上記コバルト酸リチウムの表面に被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
- B(ホウ素)原子に対して酸素原子を介してカルボニル基又はスルホニル基が結合した有機リチウム塩を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
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