JP5233745B2 - 素子成形用部材および素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラスレンズなどの光学素子を成形するための素子成形用部材、当該素子成形用部材を用いた素子の製造方法および素子に関するものであり、より特定的には、複数個の素子の成形を一時に可能とし、かつ、素子成形用部材の各構成要素の傾きを抑制する素子成形用部材、および当該素子成形用部材を用いた素子の製造方法、当該素子成形用部材を用いた素子に関するものである。
たとえばデジタルカメラ、遠赤外線カメラや携帯電話など、各種光学機器や光学通信機器などに用いる光学素子としてのレンズとしては、高性能化の要請に応えるため、非球面レンズや回折レンズが用いられている。非球面レンズや回折レンズを研磨加工により製造することは非常にコストがかかるため、素子成形用部材を用いて成形加工を行なうことが主流である。
成形加工により光学素子などの素子を成形する技術においては、素子成形用部材のうち、成形を行なうための1対の型の内部に素子となるべき素材を配置した状態で当該型および素材を加熱し、所定の温度となった状態で型を加圧することで素材を変形加工している。たとえば特開平1−176240号公報(以下、「特許文献1」という)においては、上下1対の型に挟まれた領域に、成形したい素子(レンズ)の形状を素材に転写するための面を備える中間型を配置しており、円筒形状を有する胴型の長軸方向において、胴型の内周面に沿って摺動する上下1対の型および中間型を備える、素子を成形するための素子成形用部材が開示されている。
また、中間型を素子成形用部材の長軸方向(上下方向)に複数台積層配置し、各中間型に挟まれた領域、および最上位の中間型と、上下1対の型のうち上側の型(上型)とに挟まれた領域、および最下位の中間型と、上下1対のうち下側の型(下型)とに挟まれた領域に、それぞれ素子を成形するための素材を配置することにより、1度に複数個の素子を成形できる素子成形用部材が開示されている。
特開平1−176240号公報
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている素子成形用部材では、以下のような問題があることを発明者は見出した。すなわち、上述した従来の素子成形用部材では、中間型の両面に存在する、成形したい素子(レンズ)の形状を素材に転写するための面(転写面)の軸方向(転写面の中央部における、当該転写面に垂直に延びる法線方向)が、素子成形用部材全体の長軸方向(胴型の長軸方向)に対して傾きを生じることがある。特に当該中間型は、胴型の長軸方向に対して交差する2つの面(上下面)に、成形したい素子(レンズ)の形状を素材に転写するための転写面を有しているため、胴型の長軸方向に対する当該転写面の軸方向の傾きの制御が困難である。
そして、中間型が上下1対の型や胴型の長軸方向に対して傾きを生じた状態で成形加工を行なうと、中間型の転写面の形状を転写された素子においては、当該中間型の傾きに起因して形状が設計時の形状と異なる(中間型の傾きに応じて、素子の表面形状が設計時の形状に対して傾いた状態となる)。このため、成形した素子の形状精度が悪化し、素子の形状不良などの問題が発生する可能性がある。
そこで、上述した傾きの制御を行なうために、たとえば中間型の、素子成形用部材全体の長軸方向(上下方向)に沿った方向の長さ(厚み)を厚くして、胴型の内周面に対する中間型の接触面積を大きくすることが考えられる。このようにすれば、中間型が胴型などの素子成形用部材の他の構成要素の長軸方向に対して傾くことを抑制するとも考えられる。しかし、この方法により中間型の胴型に対する傾きを抑制するためには、中間型の厚みを非常に厚くする必要がある。その結果、素子成形用部材の上記長軸方向におけるサイズが大きくなり、結果的に素子成形用部材の設備全体がコスト高になることが考えられる。また、成形加工を行なう際に上下1対の型を加熱する場合、設備全体が大きいために型などの構成要素全体を均一に加熱することが難しくなる(いわゆる均熱性の問題が発生する)ことがある。
また、中間型の傾きが制御できないまま、すなわち中間型の上記軸方向が、胴型の長軸方向に対して傾きを生じたまま成形加工を進めると、以下のような問題が発生することが考えられる。すなわち、中間型において成形したい素子(レンズ)の形状を転写するための転写面が胴型の長軸に対して傾いた状態で、成形加工のため1対の型や中間型の押圧を行なうと、当該押圧時に中間型の傾いた転写面のエッジ部分が胴型の内周面と干渉してカジリ現象を起こし、胴型の内周面が損傷する場合がある。また、中間型の傾いた転写面のエッジ部分も損傷する可能性もある。このような損傷の発生は、素子成形用部材の構成要素の耐久性を劣化させる。したがって、中間型の軸方向が胴型の長軸方向に対して傾かないよう制御した上で、成形加工を行なうことが必要であると考えられる。
本発明は、上述した各問題に鑑みなされたものであり、その目的は、中間型などの構成要素の損傷の発生を抑制でき、かつ一時に複数個の素子が成形できる素子成形用部材および、当該素子成形用部材を用いた素子の製造方法、当該素子成形用部材を用いて形成した素子を提供することである。
本発明に係る、素子を成形する素子成形用部材は、積層配置される積層要素を複数備える。積層要素は、成形を行なうための1対の型と、型の外周面を囲むように配置した中空の胴型と、1対の型のうちの一方の型に連接し、一方の型を、胴型の長軸方向において胴型の内周面に沿って押圧する押圧部材とを含む。そして、積層要素は胴型の長軸方向に沿って積層される。また、押圧部材は、上記胴型の外周側面より外側に延在するフランジ部を有していてもよい。積層された積層要素において、1の積層要素におけるフランジ部は、当該1の積層要素の上記押圧部材が配置された側に積層された他の積層要素を構成する胴型の端面(外周側面と交差する面)と接触してもよい。
このようにすれば、複数の積層要素を積層した時に、1対の型の一方を、押圧部材により長軸方向から(胴型の長軸方向において胴型の内周面に沿って)押圧できるので、従来のように素子を構成する素材を介して型(中間型)に応力が加わることに起因して型が胴型に対して傾く、といった問題の発生を抑制できる。
また、1対の型(上型および下型)と胴型と押圧部材とを含む積層要素が複数台、長軸方向(すなわち上下方向)に沿った方向に積層されているため、1回の処理により、積層要素のそれぞれで素子を成形加工することができる。つまり、本発明に係る素子成形用部材を用いれば、1回の処理により複数個の素子を、型の傾きを抑制しながら高効率かつ高品質に成形することができる。
また、上記素子成形用部材において、押圧部材は、胴型の長軸方向において胴型の内周面に沿って延在し、胴型の内周面が規定する空洞部分に挿入する挿入部分を含むことが好ましい。また、押圧部材は、胴型の長軸方向において胴型の外周面に沿って延在し、胴型の外周面の少なくとも一部を囲む拘束部分を含むことがより好ましい。このようにすれば、押圧部材の移動方向を同型の長軸方向に沿った方向へと確実に規定することができる。
押圧部材は、1対の型のうちの一方の型(たとえば上型)と連接するとともに、胴型の内周が形成する空洞部分に挿入する挿入部分を含むことにより、当該挿入部分の表面が押圧部材の胴型に対する拘束部分(押圧部材拘束部)となる。したがって、胴型の内周面と対向する押圧部材拘束部は、押圧部材が胴型の長軸方向に沿った方向に摺動するためのガイド部としての役割を有する。また、もし押圧部材が胴型の長軸方向に対して傾くような場合、押圧部材拘束部は胴型の内周と干渉する。そのため、押圧部材拘束部によって胴型の長軸方向に沿った方向に対する押圧部材の傾きを抑制しながら、押圧部材は胴型の内周面に沿った方向に摺動することができる。
また押圧部材は、胴型の外周面の少なくとも一部を囲む拘束部分(押圧部材拘束部)を含むことにより、胴型の外周面側からも胴型に対しても拘束される。この状態で押圧部材が胴型の長軸方向に沿った方向に摺動すれば、胴型の外周面と対向する押圧部材拘束部は、押圧部材が胴型の長軸方向に沿った方向に摺動するためのガイド部としての役割を有する。また、もし押圧部材が胴型の長軸方向に対して傾こうとする場合、当該押圧部材拘束部が胴型(の外周面)に対して干渉する。そのため、押圧部材拘束部によって胴型の長軸方向に沿った方向に対する押圧部材の傾きを抑制しながら、押圧部材を摺動することができる。このため、押圧部材により押圧される型の傾きを抑制できるので、型のエッジ部分が胴型の内表面と干渉してカジリ現象が発生したり、胴型の内表面や型のエッジ部分が損傷したりすることを抑制できる。
本発明に係る、素子を成形する素子成形用部材においては、少なくとも胴型の平面外形および押圧部材の拘束部分の平面内形は円形状であることが好ましい。そして、胴型の外周面に対向する押圧部材の拘束部分、すなわち押圧部材拘束部が、胴型の外周面と重なる部分の長軸方向に沿った方向の長さをL(mm)、押圧部材の拘束部分(押圧部材拘束部)の、長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径(平面内形の径)をDsi(mm)、胴型の長軸方向に交差する断面がなす円形の外側の径(平面外形の径)をD(mm)、胴型の熱膨張係数をα(/℃)、押圧部材の熱膨張係数をα(/℃)、素材を成形する際に素材を加熱する温度(すなわち素子成形用部材の加熱温度)と、素材を1対の型の間に配置した室温との差をΔT(℃)とすれば、
0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
の関係を満たすことが好ましい。上述した数式を満たせば、素材を成形するときに素材を加熱したことにより、胴型や押圧部材が熱膨張した状態であっても、上型と連接した押圧部材の、押圧部材拘束部(スリーブ拘束部)の延在方向が、胴型の外周面に対してなす角度を、所望の範囲(0.5°以下)に保つことができる。このため、押圧部材が胴型の長軸方向に対して傾く程度を小さくでき、結果的に胴型の長軸方向に対する型の傾きを小さくできる。
また同様に、本発明に係る、素子を成形する素子成形用部材においては、胴型の平面内形および型の平面外形はそれぞれ円形状であることが好ましい。また、胴型の、長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径(平面内形の径)をD(mm)、型の、長軸方向に交差する断面がなす円形の径(平面外形の径)をD(mm)、胴型の熱膨張係数をα(/℃)、型の熱膨張係数をα(/℃)、素材を成形する際に素材を加熱する温度と、素材を1対の型の間に配置した室温との差をΔT(℃)とすれば、
α<αであり、かつ、
0.030≧(α−α)ΔT+(D−D)≧0.003
の関係を満たすことが好ましい。
上述した数式を満たすことにより、成形加工を行なう際に素子成形用部材の加熱を行ったときに、1対の型と胴型とが熱膨張した状態において、1対の型と胴型との隙間を室温での当該隙間より小さくするとともに、加熱状態での当該隙間を所定の大きさにすることができる。このため、1対の型を形成する2つの型(上型と下型)が、胴型の内部において、胴型の長軸方向に対して垂直な方向(径方向)に互いに位置ずれする量(変位量)を極めて小さくすることができる。また、加熱を行なっているときにおいても、具体的な1対の型と胴型との隙間の量を、0.003mm以上0.030mm以下(3μm以上30μm以下)にすることができる。
本発明に係る素子成形用部材の各構成要素を構成する材質に関して、まず押圧部材の材質は、石英ガラス、ガラス状カーボン、グラファイト、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタル、モリブデン、タングステンからなる群から選択されるいずれか1つを含むことが好ましい。
この場合、素子の成形工程において素子となるべき素材と共に素子整形用部材を加熱したときに、押圧部材において胴型の表面(内周面または外周面)と対向する部分の、胴型の表面に対する摺動性を維持することができる。また、押圧部材が上述した拘束部分を含む場合には、上述した材料よりも熱膨張係数の大きい材料を胴型の材料として用いることで、加熱時の拘束部分と胴型との間の隙間を室温での当該隙間より小さくできる。この結果、胴型の長軸方向に対する押圧部材の傾きを抑制することができる。
また、押圧部材として高強度(高いヤング率)の材質を用いることにより、欧圧部材の弾性変形が少なくなり、結果的に押圧部材が胴型の長軸方向に対して傾きにくくなる(傾きに対する抵抗力が強くなる)。その結果、胴型の長軸方向に対する押圧部材の傾きを小さくすることができる。以上の条件を満たす材質として、上述した群から選択されるいずれか1つを含む材質を押圧部材の材質として用いることが好ましい。
次に胴型に関して、先述した数式を満足するためには、熱膨張係数が1.0×10−7(/℃)以上3.5×10−6(/℃)以下の材料を少なくとも90質量%以上含むことが好ましく、たとえば石英ガラスを少なくとも90質量%以上含むことが好ましい。この場合、上述した数式により示される条件を満たすことができる。なお、胴型の材料としては一般的に、石英ガラスを用いることが多い。また、熱膨張係数の値が上述した範囲内に存在する他の材質として、たとえばガラス状カーボンや、窒化珪素などを挙げることができ、これらの材質を胴型の材料として用いてもよい。
また、1対の型の外周面のうち、少なくとも胴型の内周面と対向する摺動面は、炭素を含む材料により構成されていることが好ましい。ここで、炭素を含む材料とは、グラファイト、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドからなる群から選択されるいずれか1つを含むことが好ましい。
1対の型の材料としては一般的に、胴型の内周面と対向する摺動面のみでなく、型全体を含め、炭素を含む材料で形成されていることが好ましい。上述のような炭素を含む材料を用いることで、型の耐熱性を向上させることができる。また、特に少なくとも胴型の内周面と対向する摺動面を、炭素を含む材料により構成することにより、当該型と胴型との摺動性を向上させることができる。なお、ここで、炭素の同素体として、黒鉛、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドなどを挙げることができ、上述した1対の型の、少なくとも胴型の内周面と対向する摺動面は、これらを含む材料にて形成されていてもよい。
本発明に係る素子成形用部材において、上下1対の型の、摺動面と、素材を押圧する押圧面とが交差するエッジ部には、0.2mm以上1.0mm以下のR面取り加工またはC面取り加工が施されていることが好ましい。ここでR面取り加工とは、2つの面の境界部がある半径(R)を有する曲面状の形状(R面部分)を形成する加工をいい、C面取り加工とは、2つの交差する面の境界部において、2つの当該面に所定角度(通常45°)で交差するよう面(C面部分)を形成する加工をいう。R面取り加工の場合、上述した半径(R)が0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましく、C面取り加工の場合、2つの交差する面の境界部の延在方向に垂直な方向におけるC面部分の幅が0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
このようなR面取り加工またはC面取り加工を行なうことにより、型の胴型に対するカジリや噛み込みを抑制することができる。また、R面部分やC面部分といった面取り部は、上述したカジリや噛み込みを抑制するので、型と胴型との摺動性を向上させることもできる。
本発明に係る素子成形用部材において、積層要素は、1対の型の間において、素子を構成する素材の位置を調整する枠型をさらに含んでいてもよい。枠型は、曲げ強度300MPa以上のセラミックスにて構成されることが好ましい。より具体的には、枠型は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタルからなる群から選択されるいずれか1つを含む材料にて構成されることが好ましい。
枠型は1対の型の間において、素子を構成する素材の位置を調整するために用いるものであり、成形時に押圧する圧力が側圧として枠型に直接的に負荷される。このため、枠型は高強度な(高曲げ強度を示す)材料を用いて形成されることが好ましい。したがって、枠型は上述したような材料群から選択されるいずれか1つを含む材料にて構成されることが好ましい。また、一般的には上述した強度の材質を含むことが好ましい。
以上に述べた素子成形用部材を用いた素子の製造方法は、素子を構成する素材を準備する工程と、上記素子整形用部材の複数の積層要素における一対の型の間に素材を配置する工程と、複数の積層要素を積層配置する工程と、素材を加熱する工程と、素材を押圧する工程とを備える。素材を押圧する工程では、積層方向に沿って積層要素の集合体に応力を加えることにより、上記素材を押圧する。このようにすれば、上述したように素子成形用部材を用いて、型の傾きを抑制しながら1回の処理により複数個の素子を成形することができる。このため、当該工程により、高効率かつ高品質に、素子を成形することができる。
本発明に係る素子は、上記素子成形用部材を用いて製造される。また、異なる観点から言えば、本発明に係る素子は、上記素子の製造方法を用いて製造される。この場合、素子整形用部材の損傷などなく、傾きなど形状不良のない素子を効率的に製造できるので、製造コストの抑制された素子を実現できる。
本発明の素子成形用部材によれば、1回の処理により複数個の素子を、型の傾きを抑制しながら高効率かつ高品質に成形することができる。また、本発明の素子成形用部材を用いて形成した素子は、軸の傾きや偏芯の少ない、高品質な素子とすることができる。
本発明の実施の形態に係る、一の局面における素子成形用部材の構成を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態に係る、他の局面における素子成形用部材の構成を示す概略断面図である。 図2の素子成形用部材の1組(積層要素)の各構成要素、および各構成要素の寸法や熱膨張係数を示す概略断面図である。 図3の点線で囲んだ要部「IV」を拡大した概略図である。 図2の素子成形用部材の1組の各構成要素、および各構成要素の寸法や熱膨張係数を示す簡略断面図である。 図5の各構成要素のうち1対の型と胴型の、熱膨張係数および加熱前の寸法のみを示した簡略断面図である。 図5の各構成要素のうち1対の型と胴型の、熱膨張係数および加熱時の寸法のみを示した簡略断面図である。 図3の点線「VIII,IX」で囲まれた領域のエッジ部にR面取り加工が施された場合における、上型の外周面と、上型の押圧面とが交差するエッジ部の状態を示す概略図である。 図3の点線「VIII,IX」で囲まれた領域のエッジ部にC面取り加工が施された場合における、上型の外周面と、上型の押圧面とが交差するエッジ部の状態を示す概略図である。 本発明に係る素子成形用部材を用いた素子の製造方法を示すフローチャートである。 成形した素子を示す概略断面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る、一の局面における素子成形用部材10は、たとえばデジタルカメラ、遠赤外線カメラや携帯電話など、各種光学機器や光学通信機器などに用いる光学素子(としてのレンズ)を成形するための、素子成形用部材である。この素子成形用部材10は、図1の断面図に示すように、積層配置される積層要素を複数(図1では3個)備える。積層要素は、成形を行なうための1対の型(上型1および下型2)と、上型1および下型2の外周面を囲むように配置した中空の胴型4と、1対の型のうちの一方の型である上型1に連接し、当該上型1を、胴型4の長軸方向において胴型4の内周面に沿って押圧する押圧部材5と、上型1および下型2の間において、素子を構成する素材3の位置を調整する枠型6とを含む。そして、積層要素は胴型4の長軸方向に沿って積層される。また、押圧部材5は、上記胴型4の外周側面より外側に延在するフランジ部を有している。積層された積層要素において、1の積層要素における上記フランジ部は、当該1の積層要素の上記押圧部材5が配置された側(図1における上側)に積層された他の積層要素を構成する胴型4の端面(外周側面と交差する面であって、たとえば図1では胴型4の底面)と接触する。上述した胴型4は、上型1および下型2を収納し、当該胴型4の内周面の内部にて上型1および下型2を摺動させるために設けられる。たとえば上型1を胴型4の内周面の内部(空洞部分)にて胴型4の長軸方向(図の上下方向)に沿った方向に摺動させることにより、上型1と下型2とにより素材3挟み込んだ状態(押圧した状態)を実現できる。
また、押圧部材5は、胴型4の長軸方向(すなわち図1の上下方向)において胴型4がなす円筒形状の内周面に沿った方向に延在し、胴型4の内周面が規定する空洞部分に挿入する挿入部分を含む。より具体的には、図1に示すように、押圧部材5はその下方(上型1側)において、直径方向(図の左右方向)での幅が、押圧部材5の上方(胴型4の端面に接触するフランジ部が形成された部分)の上記直径方向での幅に比べて狭くなっている。押圧部材5における上記幅の狭くなった領域が、胴型4の内周面が形成する空洞部分に挿入される挿入部分である。この挿入部分が、図1に示すように、胴型4の内周面と対向し、胴型4の内周面に沿って押圧部材5の移動方向を規制する部分となる。つまり、挿入部分は胴型4の内周面に沿って移動することにより押圧部材5の動きを胴型4の長軸方向において内周面に沿った方向に拘束する拘束部5aである。この拘束部5aが存在することにより、押圧部材5が胴型4の長軸方向に沿った方向(図の上下方向)に摺動する際に、胴型4の長軸方向に対して押圧部材5が傾くことを抑制できる。また、押圧部材5は上型1に連接しているため、押圧部材5により胴型4の長軸方向に沿った方向から上型1は押圧される。このため、胴型4の長軸方向に対して傾いた方向から押圧部材5により上型1が押圧され、結果的に上型1が胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制できる。つまり、上型1が胴型4の内周面が形成する空洞部分を上下方向(胴型4の長軸方向)に摺動する際に、胴型4の内周面の長軸方向に対して上型1が傾いていると、上型1の端部と胴型4の内周面とが接触しカジリ現象やカミコミ現象が発生する。しかし、上述のように本発明による素子成形用部材10においては、従来のように素子を構成する素材を介して型(中間型)に応力が加わるのではなく、積層要素に含まれる、傾きが抑制された押圧部材5を介して上型1に応力が加わる。このため、上型1が胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制できるため、上述のようなカジリ現象やカミコミ現象の発生を抑制できる。その結果、胴型4の内表面や上型1の端部(エッジ部分)が損傷する可能性を小さくすることができ、かつ成形される素子における偏芯(シフト、チルト)の発生を抑制することができる。
また、上下1対の型のうち、成形しようとする素子を構成する素材3をその上面上に搭載する下型2上には、図1に示すように、1対の型の間において、素子を構成する素材3の位置を調整するための枠型6(リング)を配置することが好ましい。
この枠型6が存在することにより、素材3を下型2の上面上に配置する際に、枠型6で囲まれた領域内に素材3を配置することができる。そのため、素材3を正確な位置にセットすることができる。また、素材3を加熱する際に、枠型6から素材3の側面に対して熱を効率よく伝播させることにより、素材3の側面の焼結性を向上させることができる。
なお、図1(以下の各図においても同じ)において、素材3は加熱による焼結を行なう前の粉末成形体の状態であってもよいし、加熱による焼結を行なった後の素子(素子30:図11参照)であってもよい。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る素子成形用部材10は、上述した1対の型(上型1および下型2)、胴型4、押圧部材5からなる、1個の素子を成形する組み合わせである積層要素が複数台、胴型4の長軸方向(図の上下方向)に沿った方向に積層されている。このようにすれば、複数台積層された下型2の上面上に配置された枠型6に囲まれた領域のそれぞれに、素子を成形するための素材3を正確に位置決めして配置することができる。そして、素材3を押圧、加熱すれば、配置したそれぞれの素材3が成形されて素子を形成する。したがって、1回の処理により複数個の素子を成形することができる。そのため、素子の成形を効率よく行なうことができる。
図2に示す素子成形用部材10は、基本的には図1に示す素子成形用部材10と同様の態様を有している。しかし、図2に示すように、図2の素子成形用部材10の押圧部材5は、胴型4の外周面の長軸方向に沿った方向に延在し、胴型4の外周面の少なくとも一部を囲む拘束部分であるスリーブ5bを含む。以上の点においてのみ、図2の断面図に示す素子成形用部材10は、先述した図1の断面図に示す素子成形用部材10と異なる。
図2の素子成形用部材10の押圧部材5が備えるスリーブ5bは、胴型4の長軸方向である、図の上下方向において胴型4の外周面に沿って延在している。スリーブ5bの延在部分が、胴型4の外周面に対向する配置となっている。このスリーブ5bは、胴型4の外周面に沿って摺動する。したがって、スリーブ5bは胴型4の外周面に沿って移動することになるため、スリーブ5b(すなわち押圧部材5)の動きは胴型4の外周面に沿った方向により確実に拘束される。したがって、スリーブ5bが存在することにより、押圧部材5および上型1が胴型4の長軸方向に沿った、図の上下方向に摺動する際に、当該押圧部材5および上型1が胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制することができる。
また、図2における素子成形用部材10の押圧部材5には、図1における素子成形用部材10の押圧部材5と同様に胴型4の内周面に対向する拘束部5aも存在する。このため、図2における押圧部材5の動作は、胴型4の外周面と内周面との両方に拘束されることになる。したがって、図2における押圧部材5は、図1における押圧部材5よりもさらに、胴型4の形状(内周面および外周面)にその動作が拘束される。したがって、図2の上下方向に押圧部材5が摺動する際に、当該押圧部材5が胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制する効果をさらに大きくすることができる。したがって、押圧部材5に連接した上型1についても、胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制する効果をさらに大きくすることができる。このため、胴型4の内周面が形成する空洞部分を上型1が上下方向に摺動する際に、胴型4の内表面の長軸方向に対して上型1が傾くことにより、カジリ現象やカミコミ現象が発生する可能性を小さくできる。この結果、胴型4の内表面や上型1のエッジ部分が上述したカジリ現象などにより損傷する可能性を、図1における上型1よりもさらに小さくすることができ、かつ成形される素子における偏芯(シフト、チルト)の発生をさらに抑制することができる。
また、図2に示す素子成形用部材10についても、上述した1対の型(上型1および下型2)、胴型4、押圧部材5からなる、1個の素子を成形する組み合わせである積層要素が複数台、胴型4の長軸方向(図の上下方向)に沿った方向に積層されている。このようにすれば、先述した図1に示す素子成形用部材10と同様に、1回の処理により複数個の素子を成形することができる。そのため、素子の成形を効率よく行なうことができる。
先述したように、図1に示す素子成形用部材10は、たとえばデジタルカメラ、遠赤外線カメラや携帯電話など、各種光学機器や光学通信機器などに用いる光学素子としてのレンズの成形に用いる。したがって、レンズの主面が円形である場合、リング状である枠型6の内周面の内側の領域に、素子を構成する素材3を配置するが、素子の外面が円形状となるよう成形する場合には、少なくとも1対の型の平面外形、胴型4の平面内形、押圧部材5の挿入部分(図1における拘束部5a)の平面外形、および枠型6の平面内形は円形状となるように準備することが好ましい。それ以外の部分については、平面形状(長軸方向(図の上下方向)に交差する断面の形状)が必ずしも円形状である必要はなく、たとえば四角形など任意の形状を取り得る。
図3において、1対の型(上型1および下型2)および胴型4および押圧部材5の平面外形は円形状として、胴型4の外周面の押圧部材5への拘束部分であるスリーブ5bの、胴型4の外周面を囲む部分の長軸方向に沿った方向の長さをL(mm)、スリーブ5bの、長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径をDsi(mm)、胴型4の長軸方向に交差する断面がなす円形の外側の径をD(mm)、胴型4の熱膨張係数をα(/℃)、押圧部材5の熱膨張係数をα(/℃)とする。
いま、α<αであり、素子成形用部材10を成形のために加熱する前の状態において、胴型4の外周面と、スリーブ5bにおいて胴型4の外周部と対向する面との間の距離がほとんどゼロであったと仮定する。このとき、素子を成形するために素材3を加熱するときに焼結する温度(すなわち素子成形用部材10の加熱温度)と、当該素材3を押圧するための1対の型の間に配置したときの室温との差をΔT(℃)とすれば、1対の型を室温から加熱温度まで、ΔT(℃)だけ昇温させる間に、図3の要部を拡大した図4におけるスリーブ5bは、DsiαΔT(mm)だけスリーブ5bの平面外形の外方向(図の右側)へ膨張する。また、型をΔT(℃)だけ昇温させる間に、図4における胴型4は、DαΔT(mm)だけ胴型4の平面外形の外方向(図の右側)へ膨張する。したがって、加熱する前においてスリーブ5bが胴型4の外周部と対向する面と胴型4の外周面との間の距離がほとんどゼロであったため、図4に示すように、加熱した際におけるスリーブ5bの内周面と胴型4の外周面との間の距離は、
siαΔT−DαΔT=(Dsiα−Dα)ΔT(mm)
となる。したがって、図4に示すように、スリーブ5bの延在方向が、胴型4の延在方向(図の上下方向)に対してなす角度をθとすれば、近似的に、
tanθ=(Dsiα−Dα)×ΔT/L
となる。図4に示す角度θが、胴型4の延在方向(長軸方向)に対するスリーブ5bの傾きとなる。先述したカジリ現象やカミコミ、および成形される素子における偏芯(シフト、チルト)を抑制するためには、θは0.5°以下であることが好ましい。したがって、
0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
の関係を満たすことが好ましい。
なお、α<αである場合においても、上記と同様に
0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
の関係を満たすことが好ましい。したがってこの場合は、素子成形用部材10を成形のために加熱する前の状態において、DsiがDより相当大きい、すなわち胴型4の外周面と、スリーブ5bにおいて胴型4の外周部と対向する面との間に相当の隙間を有することが好ましい。
図5〜図7は、上述したように各構成要素間の寸法や熱膨張係数を示す簡略図である。このため、図5〜図7に示す各構成要素の形状は実際のものより簡略化されている。この図5および図6においても、1対の型(上型1および下型2)および胴型4および押圧部材5の平面外形は円形状として、図2に示した本発明に係る素子成形用部材10のうち、胴型4の長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径をD(mm)、1対の型(上型1および下型2)の長軸方向に交差する断面がなす円形の外側の径をD(mm)、胴型4の熱膨張係数をα(/℃)、1対の型の熱膨張係数をα(/℃)とする。
この場合、素子成形用部材10を成形のために加熱する前の状態において、1対の型(上型1および下型2)の外周面と胴型4の内周面との径の差はD−D(mm)である。そして、このとき、素子を成形するために素材3を加熱するときに焼結する温度(すなわち素子成形用部材10の加熱温度)と、当該素材3を押圧するときにおける素材3を配置した室温との差をΔT(℃)とする。この場合、型をΔT(℃)だけ加熱した後における胴型4の長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径は、図7に示すように、D+αΔT(mm)であり、1対の型(上型1および下型2)の長軸方向に交差する断面がなす円形の外側の径は、図7に示すように、D+αΔT(mm)となる。
ここで、型をΔT(℃)だけ加熱を行なった際に、1対の型の外周面と胴型4の内周面との隙間を少なくすれば、1対の型を構成する上型1と下型2とが配置される位置の範囲がより狭くなる。そのため、上型1と下型2との長軸の位置のズレを少なくすることができる。そのためには、α<αとすることが好ましい。α<αとすれば、加熱時において、熱膨張に起因して1対の型と胴型4との間の隙間が温度上昇に伴って小さくなる。
また、具体的には、上述した隙間の量(ここでは胴型4の長軸方向に交差する断面がなす内周面の径と1対の型の長軸方向に交差する断面がなす外周面の径との差を隙間の量ということにする)は、0.003mm以上0.030mm以下(3μm以上30μm以下)であることが好ましい。すなわち、
0.030≧(α−α)ΔT+(D−D)≧0.003
であることが好ましい。なお、上述した隙間の量は、0.003mm以上0.010mm以下(3μm以上10μm以下)であることがより好ましい。たとえば隙間の量が3μm以下であれば、隙間の量が小さすぎるため、上型1および下型2の外周面(摺動面)と、胴型4の内周面とが干渉し、カジリ現象やカミコミ現象が発生して上型1および下型2の外周面や胴型4の内周面が損傷する可能性がある。また、隙間の量を少なくとも3μm程度残しておくことにより、いわゆる焼き嵌め状態(素子成形用部材10を加熱した際に、加工誤差や成型時の温度ムラの影響によって、成形を行なった後に、たとえば1対の型の断面がなす円形の外側の径よりも、胴型4の断面がなす円形の内側の径の方が小さくなる状態)の発生を回避することができる。
また逆に隙間の量が30μmを超えると、1対の型を構成する上型1と下型2とが配置され得る位置の範囲が広くなるため、両者の長軸の位置のズレが大きくなり、成形加工を行なう際に上型1または下型2が胴型4の長軸方向に対して傾いたり、成形される素子に偏芯を生じたりする可能性がある。以上より、隙間の量は、0.003mm以上0.030mm以下であることが好ましい。
なお、押圧部材5の熱膨張係数α(/℃)と胴型4の熱膨張係数α(/℃)との間の関係については、たとえば図2に示すように押圧部材5にスリーブ5bが存在する場合には、α<αとすることが好ましい。このようにすれば、型についてΔT(℃)だけ加熱を行なった際に、押圧部材5のスリーブ5bが胴型4と対向する面と胴型4の外周面との隙間を少なくすることができる。このため、1対の型を構成する上型1と下型2とが配置される位置の範囲がより狭くなる。そのため、上型1と下型2との長軸の位置のズレを最小にすることができる。つまり、α<αとすれば、加熱時の押圧部材5のスリーブ5bと胴型4の外周面との隙間を小さくすることができる。
また、たとえば図1に示すように押圧部材5にスリーブ5bが存在しない場合には、α<αとすれば、型をΔT(℃)だけ加熱した際に、押圧部材5の、胴型4の内周面と対向する拘束部5aにおいて胴型4の内周面と対向する面と、胴型4の内周面との隙間を少なくすることができる。また、図2に示すスリーブ5bが存在する押圧部材5に関しては、α<αとすることにより、押圧部材5のスリーブ5bにおいて胴型4と対向する面と胴型4の外周面との隙間が大きくなり、このことが押圧部材5の胴型4に対する傾きなどの発生する原因となり得る。しかし、たとえば図2に示すスリーブ5bの長軸方向の長さL(図3、図4参照)を長くすることにより、スリーブ5bが胴型4の外周面に対して拘束される程度を高めることができる。その結果、胴型4の外周面の長軸方向に対する押圧部材5の傾きの発生を抑制することができる。
以上より押圧部材5は、たとえば図2に示すようにスリーブ5bが存在する場合にはα<αとなるよう材質を選定することが好ましく、たとえば図1に示すようにスリーブ5bが存在しない場合にはα<αとなるように材質を選定することが好ましい。なお、スリーブ5bが存在する押圧部材5において、α<αとなるように材質を選定した場合は、Lを長くすることが好ましい。
また、特に押圧部材5としては、高強度(高いヤング率)の材質を用いることが好ましい。このようにすれば、たとえ配置や外力などの影響により押圧部材5の長軸方向が胴型4の長軸方向に対して傾きを生じそうな状況になっても、押圧部材5においては弾性変形が少なく、傾きに対する抵抗力が強くなる。この結果、胴型4の長軸方向に対する押圧部材5の傾きを小さくすることができる。
以上の理由により、押圧部材5としては、石英ガラス、ガラス状カーボン、グラファイト、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタル、モリブデン、タングステンからなる群から選択されるいずれか1つを含む材質を用いることが好ましい。
続けて、素子成形用部材10の押圧部材5以外の各構成要素について、それらを形成する具体的な材質について述べる。まず胴型4は、熱膨張係数が1.0×10−7(/℃)以上3.5×10−6(/℃)以下の材料を少なくとも90質量%以上含む材料を用いて形成することが好ましい。中でも特に、熱膨張係数が5.0×10−7(/℃)である石英ガラスを少なくとも90質量%以上含む材料を用いることが好ましい。また、上述した石英ガラスからなる(石英ガラスを100質量%含む)材料を、胴型4の材料として用いることがより好ましい。
上述したように、胴型4として石英ガラスを用いることにより、上型1および下型2の素材選定の自由度が増す。また、石英ガラスの熱膨張係数が小さいため、たとえば室温中で素材を型に配置する処理を行なう際に、上記上型1および下型2と胴型4との隙間が大きくなり、当該処理を容易に行なうことができるという効果を奏する。さらに石英ガラスは輻射熱の熱伝導性が高いという利点をも有する。なお、胴型4中に石英ガラスを90質量%以上含めることにより、上述した各効果や利点の影響が顕著に現れる。
なお、胴型4として石英ガラスの代わりに、たとえば窒化珪素を用いてもよい。ここで、上述した石英ガラスを用いた場合と同様の、たとえば上記上型1および下型2と胴型4との隙間が大きくなり、当該処理を容易に行なうことができるという効果を奏するためには、少なくとも90質量%以上の窒化珪素を含む胴型4を用いることがより好ましい。
また、上型1および下型2からなる1対の型については、炭素を含む材料にて形成されていることが好ましい。ここで、炭素を含む材料とは、グラファイト、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドからなる群から選択されるいずれか1つを含むことが好ましい。
1対の型の材料としては一般的に、上型1と下型2との長軸方向に延在する外周面である摺動面のみでなく、型全体が、上述したような炭素を含む材料で形成されていることが好ましい。このようにすれば、上記摺動面のみを炭素を含む材料で構成する場合より、型全体を当該材料で一体成形することができるので、型の製造工程を簡略化できる。また、たとえばガラス状カーボンの熱膨張係数は2.8×10−6(/℃)、ダイヤモンドの熱膨張係数は1.1×10−6(/℃)であるため、1対の型の熱膨張係数を、上述したα<αといった条件を満足することが容易となる。
ただし、特に少なくとも胴型4の内周面と対向する摺動面を優先的に炭素を含む材料にて形成することにより、当該1対の型と胴型4との摺動性を向上させることができる。なお、ここで、炭素の同素体として、黒鉛、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドを挙げることができ、上述した1対の型の、少なくとも胴型4の内周面と対向する摺動面は、これらを含む材料にて形成されていれば、胴型4に対して充分な摺動性を確保することができる。
成形時に素材を押圧する工程において、上型1における下型2と対向する面が枠型6に接触することにより、リングである枠型6には大きな圧力(側圧)が加えられる。このため枠型6には強度、特に側方より大きな応力が加わった場合を想定して曲げ強度が高い材料を用いることが好ましい。具体的には、曲げ強度300MPa以上のセラミックスにて形成されていることが好ましく、少なくとも90質量%以上のセラミックスを含むことがより好ましい。このような材料を用いて枠型6を形成すれば、成形時(押圧時)に大きな圧力が加わっても高い耐久性を維持することができる。
具体的には、枠型6は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタルからなる群から選択されるいずれか1つを含む材料にて構成されることが好ましい。
特に上型1および下型2と、胴型4との摺動性をさらに向上させるためには、図8および図9に示すように、たとえば上型1の、胴型4の内周面と対向する摺動面である上型外周面1cと、素材3を押圧する押圧面とが交差するエッジ部には、0.2mm以上1.0mm以下のR面7(R面取り加工が施された部位)またはC面8(C面取り加工が施された部位)を備えることがより好ましい。エッジ部がR面7やC面8が加工されていない鋭利な角部となっていれば、上型1が長軸方向に沿った方向に摺動する際に、上型1のエッジ部が胴型4の内周面と干渉したり、当該エッジ部と胴型4の内周面との間に異物が入り込む結果、カジリやカミコミといわれる現象を誘発する可能性がある。この現象を抑制するため、R面7やC面8を施した構造とすることが好ましい。
このようにすれば、たとえ上型外周面1cが胴型4の内周面と接触したとしても、エッジ部には胴型4の内周面に対して逃げが発生するため、エッジ部が胴型4の内周面と干渉してカジリやカミコミが発生する可能性を小さくすることができる。
なお、図8中における、エッジ部のR面7の半径Aは0.2mm以上、図9中における、エッジ部のCカット部分の寸法Bは0.2mm以上とすることが好ましい。ただし当該R面7およびC面8が大きくなりすぎると、上型1や下型2が胴型4に対して傾きを発生する可能性がある。このため、当該R面7の半径Aは1.0mm以下、当該C面8の寸法Bについても1.0mm以下とすることが好ましい。
以上の説明により、本発明の実施の形態における素子成形用部材10は、1対の型が上下方向に摺動する際に、胴型4の内表面の長軸方向に対してたとえば上型1が傾くことにより、カジリ現象やカミコミ現象が発生して、胴型4の内表面や上型1のエッジ部分が損傷する可能性を小さくしながら、複数個の素子を1回の処理で高効率に成形することができる。
次に、上述した本発明の実施の形態における素子成形用部材10を用いた素子の製造方法を、図10を参照して説明する。
図10に示すように、まず素材を準備する工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、具体的には素子を成形する素材3として、たとえばZnS(硫化亜鉛)粉末を準備する。
次に、素材を型に配置する工程(S20)を実施する。この工程(S20)においては、具体的には、下型2のうち、上型1と対向する面である上面に配置した、平面形状が円環状の枠型6の内周側の領域に、上述した素材3を配置する。そして図1または図2に示すように上型1を下型2上にセットし、上下1対の型が噛み合うように配置する。さらに、上型1上に押圧部材5を配置する。そして、素材3が配置された下型2、上型1、枠型6、および押圧部材5を胴型4の内部に配置することで、積層要素を準備する。そして、当該積層要素を図1や図2に示すように複数個積層する。
次に、型を加熱する工程(S30)を実施する。具体的には、先の工程(S20)にて1対の型に配置した素材3を含む素子成形用部材10全体を980℃に加熱する。
次に、素材を押圧する工程(S40)を実施する。具体的には、図2において図示しない加圧部材を用いて、最上部の積層要素における押圧部材5に上方から応力を加えることで、上型1側から下型2側へ圧力を印加する。このようにして、先の工程(S30)にて加熱された素材3に圧力を印加する。すると当該素材3の成形加工を行なうことができる。なお、先の工程(S30)を行ないながら工程(S40)による圧力印加を徐々に開始してもよい。成形が完了した後、素子成形用部材10から素子30(図11参照)を取出す。このようにして、本発明に従った素子成形用部材10を用いて素子30を製造することができる。
本発明の効果を確認するため、以下のような試験を行なった。具体的には、上述した本発明の実施の形態に係る素子成形用部材10を用いて成形した素子と、先述した特許文献1において開示されている、従来から用いられる素子成形用部材を用いて成形した素子との傾きを評価する試験を行なった。
(試料の準備)
先述した図1に示す、押圧部材5にスリーブ5bが存在しない素子成形用部材10と、先述した図2に示す、押圧部材5にスリーブ5bが存在する素子成形用部材10と、先述した特許文献1において第4図に開示されている素子成形用部材(光学素子成形型)とを用いて試料としての素子の成形を行なった。なお、表1は、実施例1において用いた各種素子成形用部材の各構成要素に用いた材質を示す表である。表1に示すように、本実施例1において用いた素子成形用部材はすべて、1対の型すなわち上型1および下型2はガラス状カーボンで形成されたものを用いた。また胴型4は石英ガラス、押圧部材5および枠型6は窒化珪素で形成されたものを用いた。
Figure 0005233745
試料の種類としては、表2および表3に示すように、ID1A〜1Fという6種類の試料を準備した。これらのID1A〜1Fの試料は、それぞれ表2および表3に示すような異なる条件の素子成形用部材を用いて製造された。
Figure 0005233745
Figure 0005233745
表2は、試料の製造に用いた、スリーブ5bが存在しない素子成形用部材(図1参照)の条件および製造された試料についての傾き評価の結果を示す。また、表3は、試料の製造に用いた、スリーブ5bが存在する素子成形用部材(図2参照)の条件および製造された試料についての傾き評価の結果を示す。
表2および表3に示すように、ID1A〜1Fの試料については、製造に用いられた素子成形用部材10の構造および各構成要素(上型1、下型2、胴型4など)の寸法が異なっている。具体的には、表2に示すように、ID1Aにおける素子成形用部材10の上型1および下型2の外径Dp(mm)(図5参照:上型1および下型2の、胴型4の長軸方向に交差する断面がなす円形の外径)は30.000mmとした。また、当該素子成形用部材10の胴型4の内径Di(mm)(図5参照:胴型4の、長軸方向に交差する断面がなす円形の内径)は30.020mmとした。また、表2に示すように、比較例としてのID1Fにおける素子成形用部材の上型1および下型2の外径Dp(mm)は30.000mmとした。また、当該素子成形用部材の胴型4の内径Di(mm)は30.020mmとした。
また、ID1B〜1Eはいずれも表3に示すように、本発明の実施の形態に係る図2に示す素子成形用部材10を、表1に示す各材質を用いて形成した場合のデータである。表3に示すように、ID1B〜1Eにおける素子成形用部材10は、それぞれ寸法のみが異なる。具体的には、胴型4の外径D(mm)(図3参照:胴型4の、長軸方向に交差する断面がなす円形の外径)については、ID1Bの素子成形用部材10は30.000mm、ID1Cの素子成形用部材10は20.000mm、ID1Dの素子成形用部材10は15.000mm、そしてID1Eの素子成形用部材10は30.000mmとした。また、スリーブ5bの内径Dsi(mm)(図3参照:スリーブ5bの、長軸方向に交差する断面がなす円形の内径)については、ID1Bの素子成形用部材10は30.050mm、以下、ID1Cの素子成形用部材10は20.020mm、ID1Dの素子成形用部材10は15.020mm、ID1Eの素子成形用部材10は30.030mmとした。スリーブ5bの長さ(mm)(図3参照:スリーブ5bが、胴型4の外周面を囲む部分の長軸方向に沿った方向の長さ)については、ID1Bが10mm、ID1Cが20mm、ID1Dが15mm、そしてID1Eが5mmであった。なお、これらはすべて室温下における寸法値である。
ID1A〜1Fの試料(素子)は、それぞれの素子成形用部材10を用いて、それぞれ100個ずつ成形した。なお、各素子形成用部材では、一度に3つの素子を形成できるように、各要素を積層した状態で素子の成形を行なった。
以下、試料の製造方法を具体的に説明する。図10に示すように、まず素材を準備する工程(S10)を実施する。本実施例1において具体的には、素子を成形する素材3として、ZnS(硫化亜鉛)粉末を準備した。
そして図10に示すように、素材を型に配置する工程(S20)を実施する。本実施例1において具体的には、下型2のうち、上型1と対向する面である上面に配置した、平面形状が円環状の枠型6の内周側の領域に、上述した素材3を配置した。そして図1または図2に示すように上型1を下型2上にセットし、上下1対の型が噛み合うように配置した。さらに、上型1上に押圧部材5を配置した。そして、素材3が配置された下型2、上型1、枠型6、および押圧部材5を胴型4の内部に配置することで、積層要素を準備した。そして、当該積層要素を図1や図2に示すように複数個(ここでは4個)積層した。
続いて図10に示すように、型を加熱する工程(S30)を実施する。実施例1においては具体的に、先の工程(S20)にて配置した素材3を含む素子成形用部材を980℃に加熱した。
そして図10に示すように、素材を押圧する工程(S40)を実施する。本実施例1においては具体的に、図2において図示しない装置の加圧部材を用いて、最上部の積層要素における押圧部材5に上方から応力を加えることで、上型1側から下型2側へ圧力を50MPa印加した。このようにして、先の工程(S20)にて下型2の上面に配置した素材3(ZnS)に圧力を50MPa印加した。
以上の手順で素材3を焼結することにより、素材3の成形加工を行なった。この結果、図11に示すような素子30を得ることができた。
図11を参照して、得られた素子30は、中央部に位置するレンズ部と、当該レンズ部を囲むように配置された縁部とを備える。素子30の傾きを評価するため、縁部の主表面であるコバ面3cについて、後述するように平面度を測定した。
(試験内容)
図11に示す成形した素子30としてのレンズに対して、その傾きの測定を行なった。測定には三鷹光器製の三次元測定装置(NH−3SP)を使用した。具体的には、平面度が3μm以下に保証されている治具に成形した素子30(レンズ)を固定した。そして、素子30の主表面の外縁近傍の、主表面に沿った面であるコバ面3c上において、素子30の主表面の円周に沿った方向にほぼ等間隔に決定した、異なる12点に関して座標を測定することにより、コバ面3cの平面度を算出した。治具の表面に対する、このコバ面3cの各面の平面度から演算される角度を、素子30の傾き角度として評価を行なった。
(結果)
評価結果を、表2および表3の「傾き評価」の欄に示す。なお、当該「傾き評価」の欄において、測定した100個の素子30の傾き角度のうち、0.5°を超えるものが1個でも存在する場合は「傾き評価」を「×」とした。また、測定した100個全数の傾き角度が0.5°以下である場合は、「傾き評価」を「○」とした。さらに、その中でも特に、測定した100個全数の傾き角度が0.2°以下である場合は「◎」と表示した。さらにその中でも特に、測定した100個全数の傾き角度が0.05°以下である場合は「☆」と表示した。
表2に示すように、ID1A、すなわち本発明の実施の形態に係る図1に示す素子成形用部材10を用いて形成した素子30については傾き評価は○となったのに対し、ID1F、すなわち従来より用いられる素子成形用部材を用いて形成した素子30については傾き評価は×となった。このことから、本発明の実施の形態に係る図1に示す素子成形用部材10は、押圧部材5の拘束部5aが、押圧部材5および1対の型(上型1および下型2)が胴型4の長軸方向に対して傾くことを抑制することから、図1の素子成形用部材10を用いて形成する素子30については傾き角度が小さくなるという効果を示している。対して特許文献1の第4図の素子成形用部材は、傾きを抑制するためのスリーブが存在しない。このため、たとえば中間型が胴型の長軸方向に対して傾いたまま成形加工を行なう可能性がある。したがって、形成される素子30の傾き角度が大きくなる可能性が高くなるといえる。
また、表3に示すように、ID1B〜1Eは、すべて本発明の実施の形態に係る図2に示す素子成形用部材10を用いて素子30を形成したものであるが、ID1Bにおいては「傾き評価」が「○」、ID1Cおよび1Dにおいては「傾き評価」が「◎」であるのに対し、ID1Eにおいては「傾き評価」が「×」となった。
ここで、ID1B〜1Dにおける、先述した図2に係る構造を有する素子成形用部材10は、表3に示す各寸法が、先述した数式
0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
を満たしている。しかし、ID1Eにおける素子成形用部材10は、先述した本発明の実施の形態に係る図2の構造を有しているが、表3に示す各寸法が、上述した数式を満足しない。このため、スリーブ5bを備える押圧部材5を有する素子成形用部材10においては特に、上述した数式を満足することにより、傾きを抑制する効果が大きくなるといえる。
なお、表3中のID1Eにおける素子成形用部材10は、他の各IDにおける素子成形用部材10に比べて、DやDsiの値に比してLの値が小さい。すなわち、スリーブ5bの、胴型4の長軸方向に関する長さが短い。Lが短いために、スリーブ5bが傾いても、胴型4の外周面にスリーブ5bの動きが拘束されて傾きを矯正する確率が低くなる。また、Lが小さいと上述した数式から図4における押圧部材5の傾き角度を表わすθの値が大きくなる。
したがって、Lの値は極力大きくすることが好ましいといえる。特に表3中のID1BおよびID1Cにおける素子成形用部材10は、DやDsiの値に比してLの値が大きい。すなわち、スリーブ5bの、胴型4の長軸方向に関する長さが長い。Lが長いために、スリーブ5bが傾いても、胴型4の外周面に押圧部材5の移動が拘束されて、押圧部材5の傾きを矯正する確率が高くなる。また、Lが大きいと上述した数式から図4における押圧部材5の傾き角度を表わすθの値が小さくなる。
実施例2においては、本発明の実施の形態に係る図2に示す構造を有する素子成形用部材10の各構成要素の材質や寸法を様々に変更した場合の、傾きの程度を確認する試験を行なった。
(試料の準備)
図2に示した構造の素子成形用部材について、様々な材料および寸法の部材を準備した。具体的には、表4に示すように、ID2A〜2Jという10種類の素子成形用部材を準備した。表4に示す各ID2A〜2Jの試料はすべて、先述した図2に示す構造を有する素子成形用部材10、すなわちスリーブ5bを備える素子成形用部材10を用いて製造された素子であり、各IDの素子成形用部材についてはその各構成要素(上型1、下型2、胴型4など)の材質および寸法を様々に変えている。表4に示す各ID(2A〜2J)の試料は、先述した実施例1と同様に、準備した素子成形用部材10を用いて100個ずつ形成された。なお、試料(素子)の製造方法は、基本的に実施例1における試料の製造方法と同様である。
Figure 0005233745
(試験内容)
実施例1と同様の手法を用いて、素子の傾きを評価した。
(結果)
傾きの評価結果は、表4の「傾き評価」の欄に示されている。すなわち、表4に示すように、ID2A〜2Jまで10種類の素子成形用部材10を用いて成形した素子30のすべてにおいて、「傾き評価」が「○」「◎」「☆」のいずれかとなっている。すなわち、10種類のそれぞれの素子成形用部材10で100個ずつ形成した素子30のすべて(900個すべて)において、傾き角度が0.5°以下となった。したがって、ID2A〜2Jまでの10種類の素子成形用部材10の各構成要素の材質や寸法の条件はいずれも好ましい条件であるといえる。
具体的には表4に示すように、たとえば上型1および下型2の材質としてはガラス状カーボン、DLCコートSiC、DLCコート超硬(タングステン・カーバイト)、グラファイトを用いることができる。上型1および下型2のうち、特に胴型4の内周面と対向しながら摺動する外周面(摺動面)については、上述したようにたとえばDLCをコーティングし、少なくとも上型1および下型2の摺動面を優先的にDLCでコーティングすることが好ましい。ここでは、DLCの薄膜のコーティングを行なう厚みは3μmとしたが、摺動面として成膜される薄膜は、その厚みを1μm以上5μm以下とすることが好ましい。このように、上型1および下型2の摺動面を優先的にDLCにて構成すれば、より摺動抵抗を小さくすることができる。
また、胴型4の材質としては、表4に示すように、熱膨張係数が1.0×10−7(/℃)以上3.5×10−6(/℃)以下の材料として、たとえば石英ガラス、ガラス状カーボン、窒化珪素などを用いることができる。また、押圧部材5は、上述したように高強度(高ヤング率)の材質を用いることが好ましく、表4に示すように、石英ガラス、ガラス状カーボン、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、ジルコニア、グラファイト、タングステン、モリブデンなどを用いることができる。
枠型6の材質としては、高強度(高曲げ強度)の材料を用いることが好ましく、表4に示すように、窒化珪素、炭化珪素、炭化ボロン(BC)、アルミナ、ジルコニア、炭化タンタルなどを用いることができる。
以上に述べた各材質を用いて、表4に示す寸法値となるように各構成要素を形成した素子成形用部材10は、表4に示すID2A〜2Jまでのいずれの項目のものについても先述した数式
0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
を満たすことになる。したがって、いずれの項目における素子成形用部材10についても素子を100個形成して、傾き角度が0.5°を超える素子30が1個も発生しない高品質なものを形成することができた。また、図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係る素子成形用部材10は、1回の処理で複数個の素子を形成させることができるため、高効率に素子30を形成することができた。
今回開示された実施の形態および各実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、傾きを抑制した高品質な素子を高効率に形成する技術として特に優れている。
1 上型、1c 上型外周面、2 下型、3 素材、3c コバ面、4 胴型、5 押圧部材、5a 拘束部、5b スリーブ、6 枠型、7 R面、8 C面、10 素子成形用部材、30 素子。

Claims (24)

  1. 素子を成形する素子成形用部材であり、
    積層配置される積層要素を複数備え、
    前記積層要素は、
    成形を行なうための1対の型と、
    前記型の外周面を囲むように配置した中空の胴型と、
    前記1対の型のうちの一方の型に連接し、前記一方の型を、前記胴型の長軸方向において前記胴型の内周面に沿って押圧する押圧部材とを含み、
    前記積層要素は前記胴型の長軸方向に沿って積層される、素子成形用部材。
  2. 前記押圧部材は、前記胴型の長軸方向において前記胴型の内周面に沿って延在し、前記胴型の内周面が規定する空洞部分に挿入する挿入部分を含む、請求項1に記載の素子成形用部材。
  3. 前記押圧部材は、前記胴型の長軸方向において前記胴型の外周面に沿って延在し、前記胴型の外周面の少なくとも一部を囲む拘束部分を含む、請求項1または2に記載の素子成形用部材。
  4. 前記押圧部材の材質は、石英ガラス、ガラス状カーボン、グラファイト、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタル、モリブデン、タングステンからなる群から選択されるいずれか1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  5. 前記胴型は、熱膨張係数が1.0×10−7(/℃)以上3.5×10−6(/℃)以下の材料を少なくとも90質量%以上含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  6. 前記胴型は、石英ガラスを少なくとも90質量%以上含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  7. 前記胴型は、窒化珪素を少なくとも90質量%以上含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  8. 前記型の外周面のうち、少なくとも前記胴型の内周面と対向する摺動面は、炭素を含む材料により構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  9. 前記炭素を含む材料は、グラファイト、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドからなる群から選択されるいずれか1つを含む、請求項8に記載の素子成形用部材。
  10. 前記型において、前記摺動面と、前記素子を構成する素材を押圧する押圧面とが交差するエッジ部には、0.2mm以上1.0mm以下のR面取り加工またはC面取り加工が施されている、請求項8に記載の素子成形用部材。
  11. 前記胴型の平面外形および前記押圧部材の前記拘束部分の平面内形はそれぞれ円形状であり、
    前記押圧部材における前記拘束部分のうち、前記胴型の外周面と重なる部分の前記長軸方向に沿った方向での長さをL(mm)、前記押圧部材における前記拘束部分の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径をDsi(mm)、前記胴型の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の外側の径をD(mm)、前記胴型の熱膨張係数をα(/℃)、前記押圧部材の熱膨張係数をα(/℃)、前記素子を構成する素材を成形する際に前記素材を加熱する温度と、前記素材を前記1対の型の間に配置した室温との差をΔT(℃)とすれば、
    0.5°≧arctan((Dsiα−Dα)×ΔT/L
    の関係を満たす、請求項3に記載の素子成形用部材。
  12. 前記胴型の平面内形および前記型の平面外形はそれぞれ円形状であり、
    前記胴型の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径をD(mm)、前記型の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の径をD(mm)、前記胴型の熱膨張係数をα(/℃)、前記型の熱膨張係数をα(/℃)、前記素子を構成する素材を成形する際に前記素材を加熱する温度と、前記素材を前記1対の型の間に配置した室温との差をΔT(℃)とすれば、
    α<αであり、かつ、
    0.030≧(α−α)ΔT+(D−D)≧0.003
    の関係を満たす、請求項1〜9に記載の素子成形用部材。
  13. 前記押圧部材の材質は、石英ガラス、ガラス状カーボン、グラファイト、窒化珪素、炭化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタル、モリブデン、タングステンからなる群から選択されるいずれか1つを含む、請求項11または12に記載の素子成形用部材。
  14. 前記胴型は、熱膨張係数が1.0×10−7(/℃)以上3.5×10−6(/℃)以下の材料を少なくとも90質量%以上含む、請求項11〜13のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  15. 前記胴型は、石英ガラスを少なくとも90質量%以上含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  16. 前記胴型は、窒化珪素を少なくとも90質量%以上含む、請求項11〜14のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  17. 前記型の外周面のうち、少なくとも前記胴型の内周面と対向する摺動面は、炭素を含む材料により構成されている、請求項11〜16のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  18. 前記型において、前記摺動面と、前記素材を押圧する押圧面とが交差するエッジ部には、0.2mm以上1.0mm以下のR面取り加工またはC面取り加工が施されている、請求項17に記載の素子成形用部材。
  19. 前記炭素を含む材料は、グラファイト、ガラス状カーボン、DLC、ダイヤモンドからなる群から選択されるいずれか1つを含む、請求項17または18に記載の素子成形用部材。
  20. 前記積層要素は、前記1対の型の間において、前記素子を構成する素材の位置を調整する枠型をさらに含み、
    前記枠型は、曲げ強度300MPa以上のセラミックスにて構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  21. 前記積層要素は、前記1対の型の間において、前記素材の位置を調整する枠型をさらに含み、
    前記枠型は、曲げ強度300MPa以上のセラミックスにて構成される、請求項10〜19のいずれか1項に記載の素子成形用部材。
  22. 前記胴型の平面内形および前記型の平面外形はそれぞれ円形状であり、
    前記胴型の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の内側の径をD(mm)、前記型の、前記長軸方向に交差する断面がなす円形の径をD(mm)、前記胴型の熱膨張係数をα(/℃)、前記型の熱膨張係数をα(/℃)、前記素材を成形する際に前記素材を加熱する温度と、前記素材を前記1対の型の間に配置した室温との差をΔT(℃)とすれば、
    α<αであり、かつ、
    0.030≧(α−α)ΔT+(D−D)≧0.003
    の関係を満たす、請求項11に記載の素子成形用部材。
  23. 前記枠型は、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、炭化ボロン、ジルコニア、炭化タンタルからなる群から選択されるいずれか1つを含む材料により構成される、請求項20または21に記載の素子成形用部材。
  24. 請求項1〜23のいずれか1項に記載の素子成形用部材を用いた素子の製造方法。
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