JP2011173763A - 光学素子用成形型及び光学素子の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、プレス成形した後、冷却固化させる際に、ガラス素材への加圧を効果的に行うことで面形状の不良発生を抑制する光学素子用成形型を提供する。
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3が摺動させて挿入され、光学素子の中心軸を同軸状に規制する内胴4と、内胴4を内挿可能とし、上型2及び下型3間の距離を規制する外胴5と、を有し、外胴は、円環状の基部から軸方向下方に凸部が形成された上部材、円環状の基部から軸方向上方に凸部が形成された下部材、上部材及び下部材の凸部が嵌合されるように上向きの凹状欠落部と下向きの凹状欠落部を交互に形成され、全体として環状に形成された中間部材の3つの部材を組み合わせて円筒状に構成され、上部材及び下部材の熱膨張率が中間部材の熱膨張率よりも大きい素材である光学素子用成形型1。
【選択図】図1
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3が摺動させて挿入され、光学素子の中心軸を同軸状に規制する内胴4と、内胴4を内挿可能とし、上型2及び下型3間の距離を規制する外胴5と、を有し、外胴は、円環状の基部から軸方向下方に凸部が形成された上部材、円環状の基部から軸方向上方に凸部が形成された下部材、上部材及び下部材の凸部が嵌合されるように上向きの凹状欠落部と下向きの凹状欠落部を交互に形成され、全体として環状に形成された中間部材の3つの部材を組み合わせて円筒状に構成され、上部材及び下部材の熱膨張率が中間部材の熱膨張率よりも大きい素材である光学素子用成形型1。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガラスレンズなどの光学素子をプレス成形する光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法に係り、特に、プレス成形後、冷却時においても成形素材に圧力を効果的にかけ続けることで、光学素子の面形状不良の発生を抑制する光学素子用成形型及び成形方法に関する。
現在、光学記録媒体のピックアップ用ガラスレンズ、カメラ用ガラスレンズ、通信用ガラスレンズ等の光学素子を製造する方法として、光学素子成形素材であるガラス素材をプレス成形し、成形面を研磨等せずにそのまま使用することができるプレス成形方法がよく用いられている。
このプレス成形方法は、ガラス素材を加熱して軟化させ、成形型で加圧プレスした後、冷却することにより所定形状の光学素子とするものであるが、このような光学素子には高度な形状精度が求められる。特に、厚み寸法が目的の厚みとなるように、プレス時に上型及び下型間の距離が所定の距離となるように厳密に装置が構成されている。
例えば、従来のプレス成形に用いられている成形型としては、ガラス素材をプレス成形することができる上型、下型及び胴型からなり、胴型が、プレス時に上型及び下型間の距離を規制する外胴と、上型及び下型の光軸を同軸上に規制する内胴の2つを用いたものであって、これら外胴及び内胴の熱膨張率を、それぞれガラス素材の熱膨張率よりも大きいものと小さいものとから構成したものが知られている(特許文献1参照)。この発明は、このような構成とすることによって、成形時のプレスと徐冷時のプレスのガラス素材への加圧量を制御して、高精度の肉厚を有する光学素子を得ようとするものであり、徐冷時にもガラス素材への加圧を行うようにすることで、得られる光学素子の形状不良の発生率を抑えようとしている。
しかしながら、この方法において、徐冷時に内胴のストローク制御を十分に行うためには、外胴の収縮量を稼がなければならない。そのためには外胴として高熱膨張の素材を用いたり、外胴を長くしたりしなければならない。また、外胴を長くする場合は、外胴の長さに合わせて上型、下型の高さを高くし、内胴を長くしなければならない。
ところが、外胴を長くする方法では成形型全体の熱容量が増加し、成形型の加熱、冷却に時間がかかりプレス成形のタクトが長くなって生産性が低下してしまう。さらに、外胴自体の温度差を大きくとれなくなる可能性があり、これも生産性を低下させる原因となる。
加熱時にも冷却時にも外胴の高さにより加圧する方が安定した成形操作を行うことができることから、外胴の収縮量のみに依存して加圧量を制御する光学素子の成形方法が広く行われている。この方法では、外胴の高熱膨張素材として、主にステンレスが用いられている。
このように、外胴にステンレスを使用することで光学素子の成形時の加圧量のコントロールは十分に行えるが、熱膨張率の大きなガラス素材を成形する場合には、冷却時の加圧は、なお十分とは言えない。
この問題を解消するには、ステンレスより高熱膨張の素材を用いればよいが、そのような高熱膨張の素材は高価である上、本発明のような高温での使用に耐えられないものが多い。このように、従来の成形型による加圧の制御は良くも悪くも外胴の素材に依存しているため、その制御範囲には素材の特性に基づく限界があった。
そこで、本発明は、上記の問題を解消するために、外胴の素材のみに依存せずに、さらにプレス成形から冷却時に、外胴の上下方向の収縮量を大きくして、プレス成形した後冷却固化させる際に、光学素子成形素材への加圧を効果的に行うことで面形状の不良発生を抑制した光学素子用成形型及び成形方法を提供することを目的とする。
本発明の光学素子用成形型は、対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入され、光学素子の中心軸を同軸上に規制する円筒状の内胴と、前記内胴を内挿可能とし、前記上型及び下型間の距離を規制する円筒状の外胴と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、前記外胴は、上部材、中間部材及び下部材の3つの部材を組合せて円筒状に構成されたものであって、前記上部材は、円環状の基部に軸方向下方に向けて伸びる複数の等長の凸部が突設されてなり;前記下部材は、前記上部材の下方に同軸的に配置された前記上部材の基部と同径の円環状の基部に前記上部材の凸部の間に介挿されるように軸方向上方に向けて伸びる複数の等長の凸部が突設されてなり;前記中間部材は、前記上部材の凸部が嵌合される下向きの凹状欠落部と前記下部材の凸部が嵌合される上向きの凹状欠落部が交互に形成され、前記上部材の凸部と下部材の凸部が前記各凹状欠落部に嵌合されて全体として外胴を構成する円筒状体からなり、前記上部材及び下部材の熱膨張率が、前記中間部材の熱膨張率よりも大きいことを特徴とするものである。
また、本発明の光学素子の成形方法は、上記光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて前記光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、前記冷却工程において、冷却手段により前記光学素子用成形型を上下方向から加圧することを特徴とするものである。
本発明の光学素子用成形型及び光学素子の成形方法によれば、常温からプレス成形時に加熱したときの外胴の熱膨張量及びその後の冷却における収縮量を大きくすることができるため、成形された光学素子成形素材を冷却する際に、上型及び下型による加圧状態を維持することが容易で、得られる光学素子の形状不良を抑制することができる。
特に、本発明によって、これまで冷却時における外胴収縮で十分な加圧ができなかった熱膨張率の大きい光学素子成形素材を用いる場合でも加圧状態を維持することが可能となり、外胴収縮のみで加圧を制御するため安定して成形操作を行うことができる。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態の光学素子用成形型の模式側断面図であり、図2は、図1の光学素子用成形型に用いる外胴の構成を示す図である。
図1に示した光学素子用成形型1は、光学素子の上面を成形する上型2と、光学素子の下面を成形する下型3と、上型2及び下型3を摺動可能に内挿させて、光学素子の中心軸を同軸状に規制する円筒状の内胴4と、上型2及び下型3間の距離を規制する円筒状の外胴5と、から構成されるものである。
本実施形態において、上型2及び下型3はそれぞれ円柱状の胴部を基本形状とする部材であり、上型2には光学素子の上面を形成する上形成面2aが、下型3には光学素子の下面を形成する下形成面3aが形成されており、これら上形成面2aと下形成面3aとを対向させて一組の成形型として使用される。上型2及び下型3には、使用時にこれらの型が安定するように上型の上端にはフランジ2bが、下型の下端にはフランジ3bがそれぞれ設けられている。
胴型4は、中空円筒形状で、その中空部には上型2及び下型3の円柱状の胴部が内挿される。上型2及び下型3は、プレス工程において、この胴型4内を摺動しつつ中心軸の位置合わせが行われ、成形される光学素子の光学機能面を同軸上に規制する。
外胴5は、内胴4と同様に中空円筒形状であって、内胴4を内挿し、プレス工程において、上型2及び下型3に挟持されることで上型2及び下型3間の最短距離を一定にし、光学素子を所定の厚さに成形するものである。ここで、内胴4及び外胴5は、同一の中心軸を有し、互いに非接触の状態で設けられている。
この外胴5について、図2を参照しながら、さらに詳細に説明する。本発明において、外胴5は、図2(a)及び(b)にその側面図を示したように、上部材51、中間部材52、下部材53の3つの部材が組み合わされて構成されており、図2(b)は3つの部材を分離したところを、図2(a)はこれら3つの部材を組み合わせて、円筒形状の外胴としたところを表わしている。
ここで、上部材51は、円環状の基部51aに軸方向下方に向けて伸びる4本の等長の凸部51bを突設された凹凸形状を有する部材であり、下部材53は、円環状の基部53aに軸方向上方に向けて伸びる4本の等長の凸部53bを突設された凹凸形状を有する部材である。ここで、上部材51と下部材53とは、その円環状の基部は同径で、同軸的に配置されるものであり、互いに、凸部が他方の部材の凸部間(凹部)に介挿されるようになっている。このように介挿されたとき、これらの凸部51bと53bとは高さ方向に重なりを有して組み合わされるようになっている。また、上部材51と下部材53との間には中間部材52を介在させて外胴5を構成するため、上部材51と下部材53とは、直接接触することがない。
中間部材52は、上記の通り、上部材51と下部材53との間に設けられるものであり、その形状は、上部材51の凸部が嵌合される下向きの凹状欠落部と、下部材53の凸部が嵌合される上向きの凹状欠落部が交互に形成され、上部材の凸部51bと下部材の凸部53bとが、この凹状欠落部に嵌合されて全体として外胴を構成する円筒状体からなるものである。このとき、凹状欠落部には、加熱時に成形型が熱膨張した際、上部材51の凸部51bの先端を支持する凸部支持面52aと、下部材53の凸部53bの先端を支持する凸部支持面52bと、を有するものである。
凸部支持面52aと凸部支持面52bとは、高さが異なるように設けられるもので、凸部支持面52aを、凸部支持面52bよりも低くなるように中間部材52を形成しておくことで、上部材51と下部材53の各凸部51b、53bが高さ方向に重なりを有するように組み合わせることができる。このとき、凸部支持面52aと凸部支持面52bとの距離が組み合わせた外胴高さの10%以上であることが好ましい。
また、中間部材52は、上部材51及び下部材53の凸部51b、53bの先端とは接触しているが、各凸部51b、53bの側面とは接触しないように、隙間が形成されるように形成している。これは、プレス成形操作において、プレス成形時の加熱状態において、上部材51及び下部材53が熱膨張した際にも、膨張を妨げずに外胴5がその円筒形状を維持するようにして不具合を生じさせないようにするためである。
そして、本発明は、上記した上部材51及び下部材53の熱膨張率が、中間部材52の熱膨張率よりも大きくなるように、それぞれの部材の素材を選択することが重要であり、上部材51及び下部材53の熱膨張率は同じでも、異なっていてもよいが、同じ素材で作成しておくことがコスト等の面で有利である。
このように熱膨張率の異なる素材を組み合わせて外胴を構成することで、図3に示したように、加熱前の熱膨張を生じていない常温時(25℃)の状態(図3(a))から、プレス成形操作において加熱された際には、中間部材52よりも上部材51及び下部材53の熱膨張による熱膨張量が大きいため、熱膨張量を稼ぐことができる(図3(b))。すなわち、上部材51はその凸部51bの先端が中間部材52により支持されているため中間部材52よりも上方向に大きく伸び、下部材53はその凸部53bの先端が中間部材52により支持されているため中間部材52よりも下方向に大きく伸び、全体としての熱膨張量を稼ぐことができる。
より具体的に見てみると、本発明の光学素子用成形型の外胴5の高さHは、常温時には、図4に示したように、上部材51の基部の高さt1、中間部材52の下部材53の凸部を支持する凸部支持面52bにおける高さt2、下部材の凸部支持面52bと上部材の凸部支持面52aとの距離L、中間部材52の上部材51の凸部を支持する凸部支持面52aにおける高さt3、下部材53の基部の高さt4、を全て足し合わせた距離(t1 +t2 +L+t3 +t4 )である。
そして、これを用いてプレス成形する際には、プレス温度において上部材51、中間部材52、下部材53は、それぞれ常温時よりも熱膨張して、それぞれの部材は変形し、その膨張後の高さHeは次の式(1)で表わすことができる。
He=(t1 +t2 +L)×α1 −L×α2 +(L+t3 +t4 )×α1 …(1)
ここで、上部材51と下部材53は同一素材を用いている場合について説明し、その上部材51及び下部材53に用いられている素材の熱膨張率をα1 、中間部材に用いられている素材の熱膨張率をα2 とした。このとき、外胴5の加熱前後の熱膨張量は(He−H)で表わすことができる。なお、上部材51と下部材53とは、中間部材52よりも熱膨張率の大きい素材であれば、異なる素材を用いて作成したものであってもよい。
このとき、例えば、従来例としては熱膨張率がα1 の単一の素材で常温時に同一の高さで外胴を構成した場合が想定できるが、この従来例における、加熱時の熱膨張量は(t1 +t2 +L+t3 +t4 )×α1 と表わすことができる。すなわち、本願発明との熱膨張量の差は、結局L(α1 −α2 )で表わされ、熱膨張率がα1 >α2 という素材の組み合わせで構成すれば本発明が膨張量を稼ぐことができる点で有利であり、それはα1 とα2 の差を大きく、長さLを大きくすることで有利になることがわかる。
そして、このように熱膨張量を稼ぐことは、同時に、プレス成形後の冷却時において、外胴5の収縮量を大きくすることにもなり、冷却時に光学素子成形素材への加圧を継続して行うことを容易に行うことができるようになり、この加圧によって面形状の不良を効果的に抑制することができる。このとき、光学素子成形素材のプレス成形から冷却における温度への温度変化に対して、外胴5の上下方向の収縮量が、プレス成形された光学素子成形素材の上下方向の収縮量よりも大きくなるようにすることで、光学素子への加圧を効果的に行い、成形を安定して行うことができる点で好ましく、外胴の上下方向の収縮量とプレス成形された光学素子成形素材の収縮量との比率が、3:1〜1:1であると、十分に加圧状態を維持することができより好ましいものである。
本発明は、これまで冷却時の加圧をうまく行うことができなかった熱膨張率の大きい成形素材、例えば、熱膨張率が100×10−7/℃以上を有するものを用いる場合や、中心、周辺を問わず肉厚が比較的厚い光学素子、例えば、胴型全長に対するレンズ最大肉厚が10%以上である成形を行う際に、特に効果的である。実際に、外胴5を構成する際に用いる素材としては、上部材51及び下部材53には、熱膨張率が170〜180×10−7/℃のステンレス、耐熱合金等を、中間部材52には、熱膨張率が30〜60×10−7/℃の超硬合金、セラミックス等を用いる組合せが挙げられる。なお、本明細書において熱膨張率とは、線熱膨張率のことを示し、特に成形素材については、素材を100℃から300℃まで温度を変化させた場合の線熱膨張率を示す。
また、本発明の光学素子用成形型の他の部材は、超硬合金やセラミックス等の素材からなり、上型2及び下型3には、上述したように成形する光学素子の面形状を転写するための成形面がそれぞれ対向する面に形成されている。この図1では、成形型として両凸形状の光学素子を製造するものを図示したが、光学素子形状はこれに限定されるものではなく、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス、凹メニスカス形状のいずれの形状を成形する成形型であっても用いることができる。
また、上部材51と下部材53とは、同一形状でも異なった形状でも良いが、同一形状とすると、凸部支持面が対称位置に配置され安定するため、同一形状とすることが好ましい。図2に示した上部材51と下部材53は、同一形状のものの凸部を対向させ、互いに凸部が他方の部材の凹部に組合されるように、一方の部材を45°軸中心に回転したものを示した。この上部材51と下部材53は、それぞれ凸部51b,53bが円周方向に等間隔に4つ設けられた同一形状の部材である。この凸部はひとつ以上あれば良いが、外胴の上下面の水平度や加工のしやすさから、3乃至5つ設けるのが好ましい。
なお、図2乃至4では、上部材51及び下部材53の凹凸形状が櫛歯状の形状となるように設けたものを示したが、上部材51及び下部材53の凸部が高さ方向に重なりを有するように構成できればこの形状は問わない。例えば、凹凸形状を波状や鋸歯状等の形状のもの、それらの頂点付近を水平に切断して凸部支持を面で行うようにすることで熱膨張時にも外胴が安定するように形成した形状のもの等を用いてもよい。
次に、光学素子用成形型1を用いた光学素子の成形方法について、図5を参照しながら説明する。
まず、成形型の内部に光学素子成形素材80を収容し、その後、光学素子用成形型1を加熱手段上に移動させ加熱手段により上型2及び下型3を加熱し、光学素子用成形型を予め所定の温度まで熱して予備加熱を行っておく。次いで、光学素子用成形型をプレス手段11b上に移動させプレス手段11bを下型3に接触させる。その後、プレス手段11aを下降させてプレス手段11a及び11bをそれぞれ上型2及び下型3に接触させ、さらに加熱させると、その内部に収容されている光学素子成形素材80も加熱され、これにより光学素子成形素材が軟化する(図5(a))。
光学素子成形素材は、変形が容易な屈伏点以上に加熱するが、一般的には、軟化点まで温度を上げるとレンズ表面が白濁するので屈伏点(At)から軟化点の間の温度に設定する。
この加熱温度は、用いる光学素子成形素材が加圧変形できる温度であればよく、屈伏点と軟化点との中間付近の温度であることが好ましい。プレス手段11a及び11bを所定の温度に設定して、この加熱を行うと、上型2及び下型3は、昇温していきプレス手段の設定温度と同じ温度にまで加熱される。
上型2及び下型3が加熱され、光学素子成形素材がプレス成形するのに十分な温度となったところで、プレス手段11aは、これを下降させプレス手段11a及び11b間の距離を狭めることにより、上型2と下型3との距離を狭めて、成形型の内部に収容された光学素子成形素材80に圧力をかけて変形させプレス成形を行う(図5(b))。
このプレス工程では、上記したように成形型の上下から圧力をかけることで光学素子成形素材80のプレス成形を行い、これにより光学素子成形素材には上型2及び下型3の光学形成面が転写され、光学素子形状が付与される。
このプレス工程におけるプレス時の圧力は、2.5〜37.5N/mm2とすることが好ましく、例えば、10〜20N/mm2であることが特に好ましい。ここで言うプレス時の圧力とは、光学素子成形素材に加わる圧力を指す。
このとき、上型2及び下型3の間の上下方向の距離は、外胴5の高さにより所定の距離に規制される。すなわち、このプレス工程において、外胴5はその下面がプレス手段11bと、上面がプレス手段11aと、それぞれ圧接してプレス手段間の距離を規制すると共に、上型2及び下型3の上下位置を規制する。
そして、このようにプレス工程で光学素子成形素材80に光学素子形状を付与した後、光学素子用成形型1を、今度は冷却手段上に移動させて、冷却手段を上型2及び下型3と接触させて、光学素子用成形型1を冷却することによって、光学素子成形素材の冷却、固化を行う。
この冷却工程においては、成形された光学素子成形素材80が、歪点以下になるまで冷却することが好ましい。また、この冷却工程においては、冷却手段による冷却時に、上型2を押圧することとし、冷却時においても光学素子成形素材80への加圧を継続して行う。この加圧は、上記に説明したように3つの部材から構成される外胴5を用いていることから、外胴5の冷却時の収縮量を従来の単一素材で形成した外胴よりも大きくすることができるため、光学素子成形素材への加圧をより効果的に行うことができる。このとき、上記歪点以下の温度になるまで加圧を継続することで、光学素子の面ワレ等の形状不良の発生を抑制することができる。
さらに、この冷却中に、光学素子成形素材の温度がガラス転移点以下になったところで、光学素子成形素材に加圧する圧力を変化させることもでき、例えば、光学素子成形素材80の温度が、ガラス転移点以上のときにはプレス時の圧力と同じ圧力としておき、ガラス転移点よりも低い温度になってからは圧力を高くして、段階的に加圧するようにしてもよい。
ガラス転移点以上の温度を低圧にするのは、肉厚バラツキを抑えるためであり、それ以下の温度域では押込み量がほとんど無いので増圧しても問題ない。すなわち、光学素子成形素材が硬化状態に近づくガラス転移点(Tg)付近までは低い圧力で保圧し、ガラス転移点(Tg)付近からそれ以下の温度となり光学素子成形素材が固化するまで、より高い圧力をかけるものである。このように冷却工程において圧力を継続してかけることにより光学素子の面形状が安定する。
なお、ここで、低い圧力とは2.5N/mm2以下、高い圧力とは2.5N/mm2超である。また、光学素子成形素材が歪点以下となり、固化した後は、さらに20N/mm2超となるような高い圧力をかけてもよい。このように段階的に圧力を高めることで光学素子の面ワレが生じる等の不具合が生じることを抑制し、形状精度を高めることができる。また、固化した後の圧力としては、ガラス素材にワレが生じる等の不具合が生じない限りはどのような圧力でもよいが、通常、30N/mm2程度が上限である。上記では2段階又は3段階に圧力を増加させていく例を説明したが、それ以上の多段階として増圧するようにしてもよい。本明細書において、面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良が生じる離型異常のことを言う。
そして、このように冷却工程が完了した成形型は、さらに冷却させるために、例えば、水冷手段上へ移動させる。この水冷手段による冷却は、冷却工程で冷却された光学素子成形素材をさらに急冷させ、光学素子成形素材を歪点付近の温度から成形型が酸化しない温度の200℃以下まで冷却させるものである。
なお、ここで用いた加熱手段、プレス手段及び冷却手段(水冷手段含む)は、いずれも上下一対のプレートで構成され、下側のプレートの上面に光学素子用成形型1を載置することができるようになっており、上側のプレートは上下に移動可能で、その下面を上型2に接触させ、必要に応じて上型2を押圧することができるようになっている。これらプレートは、それぞれの工程で所望の処理を行うことができるように、その内部にヒータが埋め込まれている。冷却手段におけるプレートも、プレス成形温度からの冷却であって、依然として高温であるためヒータが埋め込まれており、水冷手段のみ内部に冷却水が循環するようになっている。
このようにして冷却、固化して得られた光学素子は、必要に応じてアニール工程等に付されて歪み等を除去する等の後処理を施し、さらにその外周部を切削等により所望の径を有する光学素子形状に加工し、反射防止コート等を施して最終的な製品とされる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子用成形型は、タングステンカーバイドからなる超硬合金製のものであり、プレス成形により、直径7.6mm、中心厚さ1.73mm、周辺厚さ0.9mmの両凸形状の光学素子が得られるものである。ここで、上型2は胴部の直径がφ15mm、高さが20mmであり、下型3は胴部の直径がφ15mm、フランジの直径がφ26mm、フランジの厚みが3mmであり、内胴4はその円筒状の内径がφ15mmで上型及び下型とはクリアランスを10μm設け、外径がφ20mm、高さが24mmであり、外胴5はその円筒状の内径がφ20.5mm、高さが25mm、外径がφ26mmである。
なお、外胴5は上部材51、中間部材52、下部材53の3つの部材からなり、上部材51の基部の高さ(t1,t4)は3mm、凸部の高さは16mm、幅は5mmであり、下部材53は上部材51と同一形状である。また、中間部材52は、上部材51の凸部支持面における高さ(t3)及び下部材53の凸部支持面における高さ(t2)は、3mm、それら凸部支持面52aと52bとの距離(L)は13mmであり、凸部支持面の幅は5.3mm、凸部支持面同士を接続する部分の幅は5mmである。このとき、上部材51及び下部材53はSUS316Lで形成し、中間部材52は超硬合金で形成した。ちなみに、SUS316Lの熱膨張率は175×10−7/℃、超硬合金の熱膨張率は49×10−7/℃である。
この成形型の内部に直径φ4.5mmの球状のリン酸系の光学素子成形素材80を収容し、成形型を600℃に加熱した。なお、この光学素子成形素材の歪点は445℃、ガラス転移点(Tg)は484℃、屈伏点(At)は517℃であり、熱膨張率は115×10−7/℃である。
光学素子成形素材を収容した成形型を、560℃程度に予備加熱した後、搬送手段により550℃に加熱されたプレス手段11b上に搬送して載置すると同時に、プレス手段11bと同じ温度に維持されたプレス手段11aを、下降させて上型2に接触させ、上型2、下型3及び光学素子成形素材80を100秒間十分に加熱し、昇温させて光学素子成形素材を軟化状態とした。
次に、上型2、下型3及び光学素子成形素材80が十分に加熱され、プレス手段11a及び11bと同程度の温度(550℃程度)となったところで、プレス手段11aをさらに下降させ、上型2及び下型3により光学素子成形素材80のプレス成形を行った。成形時の圧力を22N/mm2とし、80秒程度押圧して押切った。
次に、光学素子用成形型1を搬送手段により冷却手段上に搬送して載置させ、さらに上側の冷却手段を下降させて上型2と接触させ成形型全体を冷却した。この冷却の際には、上型2のみを押圧することで成形された光学素子成形素材80へ22N/mm2の圧力をかけるようにして、光学素子成形素材の歪点以下になるまで冷却した。
光学素子成形素材が歪点以下の温度となったところで、成形型を冷却手段から水冷手段上に搬送させて載置し、光学素子成形素材を室温になるまで冷却した。光学素子成形素材が十分に冷却したところで、成形型から取り出し、光学素子を得た。
この光学素子の成形操作を150ショット行い、得られた光学素子の面形状不良率を算出したところ、11%であった。なお、面形状不良は、曲率が不連続な光学面が形成されているか否か、いわゆる面ワレが生じているか、を目視により判定した。
(比較例1)
光学素子用成形型として、外胴がSUS316Lの単一素材で形成されたものを用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学素子の成形操作を行い、光学素子を得た。
光学素子用成形型として、外胴がSUS316Lの単一素材で形成されたものを用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学素子の成形操作を行い、光学素子を得た。
この光学素子の成形操作を150ショット行い、得られた光学素子の面形状不良率を算出したところ、93%であり、本光学素子のようにガラス素材の熱膨張率が100×10−7/℃より大きな光学素子は、従来の成形型構成では実質的に安定した生産が不可能であった。
以上に示したように、本発明の光学素子の成形方法により、従来に比べて得られる光学素子の面形状不良の割合を低減することができ、形状精度の高い光学素子を得ることができることがわかった。
本発明の光学素子の成形方法及び成形装置は、プレス成形による光学素子の製造に用いることができる。
1…光学素子用成形型、2…上型、2a…上形成面、2b…フランジ、3…下型、3a…下形成面、3b…フランジ、4…内胴、5…外胴、51…上部材、52…中間部材、53…下部材、51a,53a…基部、51b,53b…凸部、52a,52b…凸部支持面
Claims (10)
- 対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入され、光学素子の中心軸を同軸上に規制する円筒状の内胴と、前記内胴を内挿可能とし、前記上型及び下型間の距離を規制する円筒状の外胴と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、
前記外胴は、上部材、中間部材及び下部材の3つの部材を組合せて円筒状に構成されたものであって、
前記上部材は、円環状の基部に軸方向下方に向けて伸びる複数の等長の凸部が突設されてなり;前記下部材は、前記上部材の下方に同軸的に配置された前記上部材の基部と同径の円環状の基部に前記上部材の凸部の間に介挿されるように軸方向上方に向けて伸びる複数の等長の凸部が突設されてなり;前記中間部材は、前記上部材の凸部が嵌合される下向きの凹状欠落部と前記下部材の凸部が嵌合される上向きの凹状欠落部が交互に形成され、前記上部材の凸部と下部材の凸部が前記各凹状欠落部に嵌合されて全体として外胴を構成する円筒状体からなり、
前記上部材及び下部材の熱膨張率が、前記中間部材の熱膨張率よりも大きいことを特徴とする光学素子用成形型。 - 前記中間部材の凹状欠落部が、前記上部材及び下部材の凸部先端を支持する凸部支持面を有することを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型。
- 前記上部材及び下部材の凹凸形状が、櫛歯状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子用成形型。
- 前記上部材及び下部材の凹凸形状が、波状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子用成形型。
- 前記上部材及び下部材の凸部が、基部の円周方向に等間隔に3以上形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 前記上部材及び下部材が、同一形状の部材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 前記中間部材において、前記上部材の凸部支持面と前記下部材の凸部支持面との距離が前記外胴高さの10%以上であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 前記上部材及び下部材として同一素材を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 請求項1乃至8のいずれか1項記載の光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて前記光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、
前記冷却工程において、冷却手段により前記光学素子用成形型を上下方向から加圧することを特徴とする光学素子の成形方法。 - 前記プレス工程から冷却工程における温度への温度変化に対して、外胴の上下方向の収縮量と前記プレス成形された光学素子成形素材の収縮量との比率が、3:1〜1:1であることを特徴とする請求項9記載の光学素子の成形方法。
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JP2013062027A (ja) * | 2011-09-12 | 2013-04-04 | Semiconductor Energy Lab Co Ltd | 封止体の作製方法および発光装置の作製方法 |
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