JP2011184249A - 光学素子用成形型及び光学素子の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、プレス成形により光学素子を製造する際に、光学素子の偏心精度を高めることができる光学素子用成形型を提供する。
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3がそれぞれ上下方向から摺動可能に挿入され、上型2及び下型3を同軸上に規制する内胴4と、上型2及び下型3間を互いに接近させるプレス手段間の距離を規制する外胴5と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、下型3及び内胴4の下端には、プレス成形時に外胴の下端に押圧されて互いに圧接するフランジ3a,4aがそれぞれ設けられており、外胴5の側面にはフランジ5aが設けられ、該外胴のフランジ5a上には、プレス成形時に外胴5とプレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせるコイルスプリング6が嵌挿されている光学素子用成形型1。
【選択図】図1
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3がそれぞれ上下方向から摺動可能に挿入され、上型2及び下型3を同軸上に規制する内胴4と、上型2及び下型3間を互いに接近させるプレス手段間の距離を規制する外胴5と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、下型3及び内胴4の下端には、プレス成形時に外胴の下端に押圧されて互いに圧接するフランジ3a,4aがそれぞれ設けられており、外胴5の側面にはフランジ5aが設けられ、該外胴のフランジ5a上には、プレス成形時に外胴5とプレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせるコイルスプリング6が嵌挿されている光学素子用成形型1。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガラスレンズなどの光学素子をプレス成形する光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の製造方法に係り、特に、得られる光学素子の偏心精度を向上させることができる光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法に関する。
ガラス材料等からなる光学素子成形素材を、加熱により軟化させ、得ようとする光学素子の形状をもとに精密加工された上型と下型の間でプレス成形して光学素子形状を付与し、これを冷却固化させてなる光学素子の製造方法が知られている。
ところで、光学素子は、撮像機器、光ピックアップなどに多用され、その画素数や記録密度の増大に伴い、偏心精度などの要求精度が極度に高くなってきている。光学素子の偏心精度は、光学素子における上面の中心軸と下面の中心軸との一致を要求する精度であり、平行偏心(ディセンタ)、傾き偏心(チルト)などによって評価されている。
このような光学素子の偏心精度を向上するためには、光学面を転写する上型と下型の光学中心軸を一致させる必要があり、これら上型及び下型を胴型により位置を規制して中心軸を一致させるようにしていた。ところが、上型及び下型と胴型との間には、型組、摺動のために数μmのクリアランスが必要であり、このクリアランス分、上下型の光学中心軸が平行にずれたり、傾いたりして高精度なレンズを得ることができない。
そのため、偏心精度を向上させたプレス成形装置としては、例えば、上型又は下型の移動をガイドする胴型として、上型又は下型の少なくとも一部に対して、上下方向から圧接させる圧接手段、具体的には、胴型に段を設け、その段をスプリングにより押さえることができるようにした、プレス成形装置が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に開示されたプレス成形装置では、胴型を押さえる力をスプリングのみで発生させているが、プレス成形装置の使用条件が高温であることから、使用によりスプリングがへたりやすく、へたった場合には胴型を圧接する力が十分に発生させることができなくなるという問題があった。また、高温でもへたりが少ないセラミックスプリングを使用することも考えられるが、その場合には、荷重と撓み量が制限されてしまい十分な力が発生できなかったり、折損してしまったりして調整が難しく、安定して胴型を圧接することができないという問題があった。
そこで、本発明は、上記の事情に対処してなされたもので、プレス成形により光学素子を製造する際に、簡便な装置構成で、胴型に荷重をかけることにより上下型の中心軸を高い精度で確保して、光学素子の偏心精度を高めることができる光学素子用成形型及び光学素子の成形方法を提供することを目的とする。
本発明の光学素子用成形型は、対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動可能に挿入され、上型及び下型を同軸上に規制する円筒状の内胴と、前記内胴の外周に被嵌され、前記上型及び下型を互いに接近させて下型上に置かれた光学素子成形素材を加圧するプレス手段の加圧面間の距離を規制する円筒状の外胴と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、
前記下型及び内胴の下端には、プレス成形時に前記外胴の下端に押圧されて互いに圧接するフランジがそれぞれ設けられており、前記外胴の側面にはフランジが設けられ、該外胴のフランジ上には、プレス成形時に前記外胴と前記プレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせるコイルスプリングが嵌挿されていることを特徴とするものである。
前記下型及び内胴の下端には、プレス成形時に前記外胴の下端に押圧されて互いに圧接するフランジがそれぞれ設けられており、前記外胴の側面にはフランジが設けられ、該外胴のフランジ上には、プレス成形時に前記外胴と前記プレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせるコイルスプリングが嵌挿されていることを特徴とするものである。
また、本発明の光学素子の成形方法は、本発明の光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて前記光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、前記プレス工程において、前記外胴と前記プレス手段の上部加圧面との間に前記コイルスプリングにより弾撥力を生じさせ、前記内胴のフランジと前記下型のフランジとを互いに圧接させることを特徴とするものである。
本発明の光学素子用成形型及び光学素子の成形方法によれば、プレス成形時に、まず、コイルスプリングによる外胴のフランジへ圧力がかかり、次いで、プレス手段と直接接触することによる外胴の上端へ圧力がかかり、いずれも外胴を下方へ押圧しようとするものであるが、このように2段階の押圧機構により力が働くため、安定して成形操作を行うことができる。
すなわち、コイルスプリングによる最初の加圧により、プレス成形時に、外胴のフランジ及び上端を押圧することで外胴によって内胴のフランジを押圧することで、下型のフランジと内胴のフランジとを互いに圧接するようにすることで、得られる光学素子の偏心精度を向上させることができる。このとき、外胴の上端を直接押圧するよりも早くフランジからの圧力をかけるようにすることで、押し切るよりも前に上型及び下型の位置を正すことができるため、プレス成形を安定して行うことができる。
また、光学素子の成形操作において、フランジの押圧をコイルスプリングにより行う場合には、高温下での使用となるため早期にコイルスプリングの機能が損なわれることも少なくないが、そのような場合においても外胴の上端を直接プレスする圧力が働くため、本発明においては、偏心精度を向上する機能は失われることなく成形を安定して行うことができる。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態である光学素子用成形型の側断面図であり、図2は、図1の光学素子用成形型を用いたプレス工程を説明する図である。
まず、図1に示した光学素子用成形型1は、光学素子の上面を成形する上型2、光学素子の下面を成形する下型3、上型2及び下型3を内挿し摺動させて、光学素子の中心軸の位置合わせを行う円筒状の内胴4と、内胴の外周に被嵌され、上型及び下型の上下方向の距離を規制するための円筒状の外胴5と、外胴5の外周に配したコイルスプリング6と、からなるものである。
本実施形態において、上型2及び下型3は、それぞれ円柱状の胴部を基本形状とする部材であり、これらの上型2及び下型3には、使用時にこれらの型が安定するように上型の上端にはフランジ2aが、下型の下端にはフランジ3aがそれぞれ設けられている。また、これらの上型及び下型は光学素子を形成するものであるため、上型2には光学素子の上面を形成する上形成面2bが、下型3には光学素子の下面を形成する下形成面3bが形成されており、上型2及び下型3は、これら上形成面2bと下形成面3bとを対向させてなる一対の成形型として使用される。
また、内胴4は、中空円筒形状に形成されており、その中空部分は上記した上型2及び下型3の円柱状の胴部が嵌合可能なようになっている。この内胴4は、上型2及び下型3を嵌合してプレスする際に、これら上型2及び下型3をそれぞれ上下の開口から摺動可能に挿入され、それらの光学中心軸を同軸上に規制するように位置合わせして、形成される光学素子の光学機能面を同軸のものとする。
また、この内胴4には、その円筒形状の外周の下端にフランジ4aを有しており、このフランジ4aは、光学素子成形素材をプレス成形する際に、外胴5の下端からの圧力により、内胴4のフランジ4aと下型3のフランジ3aとを互いに圧接させることができるようになっている。
このように内胴4が下型3に圧接されると、内胴4のフランジ4aは、下型3のフランジ3a部分に押しつけられ、その上面に隙間なく重なることとなり、内胴4のフランジ4a部分を強制的に水平面と平行になるようにすることができる(下型3が載置されるプレス手段は、その下型3との接触面を厳密に水平になるように管理されている)。そして、この内胴4のフランジ4a部分が水平となると、その円筒形状の本体は、鉛直方向に立った形となり、それに伴い、その内部に嵌挿されている上型2及び下型3の中心軸を一致させる方向に補正する力が働くのである。
このフランジ4aは、内胴4の内径に対して、その直径を1.1〜6倍の範囲にすることが好ましく、径を大きくすることにより圧接された際の下型3の配置が安定し、光学素子の中心軸の位置合わせの精度を向上させることができる。
次に、外胴5は、内胴4と同様に中空円筒形状であるが、内胴4の外周に被嵌され、上型2及び下型3間の距離を規制するものである。具体的には、この外胴5は、プレス成形時に、上型2及び下型3を互いに接近させて下型上に置かれた光学素子成形素材を加圧するときに、その加圧のためのプレス手段の加圧面間の距離を規制することで、上型2及び下型3の距離を規制する。
ここで、外胴5は、内胴4と同一の中心軸を有し、内胴4の外周に形成されるもので、その下端部で内胴4のフランジ4aを押圧するようになっているが、その逆の上端部は、プレス手段と直接接触させるようにして、上端部はプレス手段と、下端部は内胴のフランジ4aと接触して、間接的に上型2及び下型3の上下距離を規制するようになっている。
なお、外胴5は、その下端にフランジ5aを有しており、このフランジ5aに上方から圧力をかけることにより、プレス手段との直接接触による圧力だけでなく、内胴4のフランジ4aを押圧することができるようになっている。ここではフランジを下端に設ける例を示したが、上方からの圧力を外胴5の下端により内胴のフランジ4aに伝えることができれば、上端側でも中間位置でも、その位置は問わない。
このフランジ5aは、外胴5の内径に対して、その直径を1.1〜4倍の範囲にすることが好ましく、径を大きくすることにより上部からの押圧を安定に行うことができ、光学素子の中心軸の位置合わせの精度を向上させることができる。
このように、外胴5にかかる下方への圧力を、フランジ5a及び外胴の上端の2箇所で生じさせるようにすることで、内胴のフランジ4aを下方へ押圧する力を確実に与えることができ、プレス成形を安定して行うことができる。
また、コイルスプリング6は、外胴5のフランジ5a上に配され、プレス成形時に該フランジ5aとプレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせ、フランジ5aを上方から押圧するものである。このコイルスプリング6は、外胴5の外周を取り巻くように配置され、プレス手段により成形操作を行う際には、上型2を押し下げる上部のプレス手段によって、その加圧面と外胴のフランジ5aとの間でコイルスプリング6が縮められることとなり、その弾撥力によりフランジ5aへ圧力を生じさせ、外胴5を全体的に下方に押しつけようとする力を生じさせる。
このコイルスプリング6は、フランジ5aを有効に押圧することができるように、その高さは、外胴5のフランジ5aの上面から上型のフランジ2aの上端までの高さよりも高いものであることが好ましい。このような高さを有することで、プレス手段はプレス操作において、上型のフランジ2aの上端よりもコイルスプリング6と接触する方が早く、外胴5による内胴のフランジ4aに圧力がかかる順番はコイルスプリング6による押圧が最初になる。
このように、フランジ5aの上方から圧力をかけるようにすることで、プレス手段により光学素子成形素材を押し切る前に、内胴のフランジ4aを押圧することができ、内胴4及び下型3の中心軸を早い段階で一致させておいて、その後、プレス手段の押し切り動作によって、光学素子の成形を行うことができる。このようにすることで、内胴4によりガイドされる上型2の中心軸は、下型3の中心軸とよく一致することとなり、得られる光学素子の偏心精度を向上することができ、形状精度の高い光学素子を得ることができる。さらに、押し切った際には、プレス手段は外胴5の上端に直接接触し、外胴5の下端はさらにフランジ4aを下方に押圧しようとするため、上型2及び下型3の配置をさらに安定させることができる。
この成形型は、超硬合金やセラミックス等の素材からなり、上型2及び下型3には、成形する光学素子の面形状を転写するための成形面がそれぞれ対向する面に形成されている。この図1では、成形型として凹メニスカス形状の光学素子を製造するものを図示したが、光学素子形状はこれに限定されるものではなく、両凸、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス形状のいずれの形状を成形する成形型であっても用いることができる。
なお、外胴5は、上記セラミックス以外にも、ステンレス、インコネル(大同スペシャルメタル株式会社製、商品名)等の耐熱性のある金属を用いることもでき、ステンレス製とすると、加工が容易で、熱膨張量が大きく安価である点で好ましいものである。また、このとき、室温からプレス成形の成形温度における、外胴の上下方向における熱膨張量が、光学素子成形素材の上下方向の熱膨張量よりも大きくなるようにすることが、成形操作において光学素子に圧力が抜ける時間を生じさせることなく、成形を安定して行うことができる点から好ましい。
また、コイルスプリング6としては、窒化珪素、ジルコニア、インコネル等の耐熱性、強度に優れた素材を用いるものであり、高温雰囲気において常温と比較しヤング率の低下が少なく、高強度であることが好ましい。
次に、この光学素子用成形型1を用いた光学素子の成形方法について、図2を参照しながら説明する。
まず、本発明の光学素子の成形方法に用いる成形装置について説明するが、この成形装置は光学素子を成形するための成形室となるチャンバーと、該チャンバーの内部に設けた成形型を加熱して光学素子成形素材を軟化させる加熱手段と、加熱軟化した光学素子成形素材をプレス成形させるプレス手段と、プレス成形による光学素子形状が付与された光学素子成形素材を冷却する冷却手段と、が、この順番に並べられてなるものである。
ここで、成形室であるチャンバーは、その内部において、光学素子の成形操作を行う場を提供するものであり、光学素子成形素材80を軟化し、変形を容易にするものであって高温に加熱されるため、成形型1が酸化されないように、チャンバー内雰囲気を窒素等の不活性ガス雰囲気とすることができるようになっている。この不活性ガス雰囲気とするには、チャンバーを密閉構造として内部雰囲気を置換することで達成できるが、半密閉構造として、不活性ガスを常時チャンバー内に供給して、チャンバー内を陽圧にしながら外部の空気が流入しないようにして不活性ガス雰囲気を維持するようにしてもよい。
ここで、加熱手段は、成形型に収容された光学素子成形素材を軟化させるものであり、その内部にヒータが埋め込まれた上下一対の加熱プレートから構成されるものである。この加熱プレートは、上下一対の加熱プレートを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させることにより、上型及び下型を加熱することができ、さらに成形型内部に収容されている光学素子成形素材をも加熱させることができるようになっている。
また、プレス手段は、上下のプレスプレート間の距離を狭めることにより、そのプレートの加圧面を成形型と接触させ上型と下型との距離を狭めて、成形型内に収容された光学素子成形素材を軟化状態のまま押圧して変形させ、上型及び下型の光学形成面形状を光学素子成形素材に付与することにより光学素子の成形を行うものであり、その内部にヒータが埋め込まれた上下一対のプレスプレートから構成されるものである。このプレスプレートを用いたプレスは前段階の加熱温度を維持しながら行われるものである。
最後に、冷却手段は、成形型を冷却することにより光学素子形状が付与された光学素子成形素材を冷却、固化するものであり、その内部に、ヒータが埋め込まれた上下一対の冷却プレートから構成されるものである。この冷却プレートは、上下一対の冷却プレートを成形型の上型、下型にそれぞれ接触させることにより、上型及び下型を冷却することができ、さらに成形型内部に収容されている光学素子成形素材をも冷却することができるようになっている。
そして、光学素子用成形型1は、これら加熱手段、プレス手段、冷却手段の各手段間を順次移動しながら所定の処理が施されるものであり、この手段間の移動は図示していないがロボットアーム等により行われる。
まず、上記した光学素子の製造装置を用い、光学素子用成形型1の内部に光学素子成形素材を収容し、加熱プレートにそれぞれ上型2及び下型3を接触させて光学素子用成形型を加熱して、予め所定の温度まで熱して光学素子成形素材を軟化させる。
次いで、光学素子用成形型1をプレスプレート20a,20bによりプレスしてプレス成形を行うために、まず、加熱された光学素子用成形型1をプレス手段20b上に移動させ、プレス手段20bを下型3に接触させる(図2(a))。
その後、プレス手段20aを押し下げてプレス手段20a及び20bによりプレス成形を行うが、プレスプレート20aを下降させたときに、プレスプレート20aが上型2と接触するより前に、先にコイルスプリング6と接触するようになっている。
プレスプレート20aがコイルスプリング6と接触し、そのままプレス操作を継続するとコイルスプリング6が収縮し、その弾撥する力により外胴5のフランジ5aには上方から圧力がかかり、この圧力により、外胴5はその下端が内胴4のフランジ4aを上方から押圧することとなる。すると、内胴のフランジ4aと下型のフランジ3aは互いに圧接され、所定の位置に固定されるようになる。
プレスプレート20aを、さらに下降させていくと、次に、プレスプレート20aは上型2と接触して上型2を押し下げていく。上型2が押し下げられると、光学素子成形素材80はその圧力により変形し、プレス成形が行われる。このプレス成形では、プレスプレート20aが外胴5により規制されるまで下降させて押し切ることで行われ、プレスプレート20a,20b間の距離は、下型のフランジ3aの厚さ、内胴のフランジ4aの厚さ、外胴5の高さにより決定され、このとき、光学素子成形素材80が所定の厚みになるようになっている。
この押し切り操作により、外胴5はその上端がプレスプレート20aにより押圧されるため、外胴5の下端は、さらに内胴のフランジ4aと下型のフランジ3aを圧接させるようになり、このように圧接された内胴4は、そのフランジ4aが、下型3のフランジ3aと隙間なく重なり、これらフランジ3a及び4aは、互いに平行となる。このとき、プレスプレート20bは、その上面が水平面となるように厳密に管理・調整されているため、その上に載置された下型3のフランジ3aも水平面に平行となっており、この圧接動作によって内胴4のフランジ4aも水平面と平行になる。
フランジ4aが水平面となると、内胴4の円筒形状である本体部分の中心軸は、鉛直方向に対するずれが極めて小さくなる。すなわち、この内胴4で中心の位置を規制される上型2及び下型3の中心軸が一致するように力が働くのである。このような力が働かない従来の方法を用いた場合には、上型2及び下型3と内胴4との摺動部分のクリアランスを設けた分だけ、中心軸がずれる可能性があり、本発明はそのようなずれを小さくすることができるものである。
この加熱及びプレス工程において、光学素子成形素材は、変形が容易な屈伏点以上に加熱されるが、一般的には、軟化点まで温度を上げるとレンズ表面が白濁するので屈伏点(At)から軟化点の間の温度に設定する。
この加熱温度は、用いる光学素子成形素材が加圧変形できる温度であればよく、屈伏点と軟化点との中間付近の温度であることが好ましい。加熱手段及びプレス手段を所定の温度に設定して、この加熱を行うことで、これら加熱手段及びプレス手段に接触した上型2及び下型3は、温度が昇温していき設定温度と同じ温度にまで加熱される。
プレス工程では、上記したように成形型の上下から圧力をかけることで光学素子成形素材80のプレス成形を行い、これにより光学素子成形素材には上型2及び下型3の光学形成面が転写され、光学素子形状が付与される。
このプレス工程におけるプレス時の圧力は、2.5〜37.5N/mm2とすることが好ましく、例えば、10〜20N/mm2であることが特に好ましい。ここで言うプレス時の圧力とは、光学素子成形素材に加わる圧力を指す。
そして、このプレス工程において、内胴4はそのフランジ4aが、外胴5と下型3のフランジ3aに挟まれる形となり、外胴5により上方から押圧されるため、フランジ3aに上から圧接することとなる。このとき、フランジ3aもフランジ4aも水平面と平行になる。
そして、このようにプレス工程で光学素子成形素材に光学素子形状を付与した後、光学素子用成形型1を、今度は冷却手段上に移動させて、冷却手段と光学素子用成形型1を接触させて、光学素子用成形型1を冷却することによって、光学素子成形素材の冷却、固化を行う。
この冷却工程においては、成形された光学素子成形素材80が、歪点以下になるまで冷却することが好ましい。この冷却工程においても、光学素子成形素材80への加圧は継続して行うことが好ましく、上記歪点以下の温度になるまで加圧を続けることが好ましい。
さらに、この冷却中に、光学素子成形素材の温度がガラス転移点以下になったところで、光学素子成形素材に加圧する圧力を変化させることもでき、例えば、光学素子成形素材80の温度が、ガラス転移点以上のときにはプレス時の圧力と同じ圧力としておき、ガラス転移点よりも低い温度になってからは圧力を高くして、段階的に加圧するようにしてもよい。
ガラス転移点以上の温度を低圧にするのは、肉厚バラツキを抑えるためであり、それ以下の温度域では押込み量がほとんど無いので増圧しても問題ない。すなわち、光学素子成形素材が硬化状態に近づくガラス転移点(Tg)付近までは低い圧力で保圧し、ガラス転移点(Tg)付近からそれ以下の温度となり光学素子成形素材が固化するまで、より高い圧力をかけるものである。このように冷却工程において圧力を継続してかけることにより光学素子の面形状が安定する。
なお、ここで、低い圧力とは2.5N/mm2以下、高い圧力とは2.5N/mm2超である。また、光学素子成形素材が歪点以下となり、固化した後は、さらに20N/mm2超となるような高い圧力をかけてもよい。このように段階的に圧力を高めることで光学素子の面ワレが生じる等の不具合が生じることを抑制し、形状精度を高めることができる。また、固化した後の圧力としては、ガラス素材にワレが生じる等の不具合が生じない限りはどのような圧力でもよいが、通常、30N/mm2程度が上限である。上記では2段階に圧力を増加させていく例を説明したが、それ以上の多段階として増圧するようにしてもよい。本明細書において、面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良が生じる離型異常のことを言う。
そして、このように冷却工程が完了した成形型は、さらに冷却させるために、例えば、水冷手段上へ移動させる。この水冷手段による冷却は、冷却工程で冷却された光学素子成形素材をさらに急冷させ、光学素子成形素材を歪点付近の温度から成形型が酸化しない温度の200℃以下まで冷却させるものである。ここで言う水冷手段とは、加熱時のヒータに換えて冷却水を循環させる冷却方法である。
なお、ここで用いたプレス手段20a及び20bは、これらの間の距離を狭めることにより成形型の上型2と下型3との距離を狭めることができ、成形型内に収容された光学素子成形素材80を軟化状態のまま押圧して変形させ、上型2及び下型3の光学形成面形状を光学素子成形素材80に付与することにより光学素子の成形を行うものである。すなわち、このプレス手段であるプレス手段20aは、成形型の加熱状態を維持しながらプレス操作を行うことができるようになっているもので、その内部にはヒータが埋め込まれている。
このプレス手段20a及び20bは、光学素子成形素材をプレスする際に、成形型の外胴5の高さによりプレス手段20a及び20b間の距離を規制することで、上型2及び下型3の距離を調整するものである。これにより成形される光学素子の厚みが調整される。なお、図1での上型2及び下型3の距離は、実際には、下型のフランジ3aの厚さ、内胴のフランジ4aの厚さ及び外胴5の高さにより規制されている。
なお、図1の光学素子用成形型1は、上型2が外胴5により上下位置を直接規制されるものではないため、仮に、外胴5が光学素子成形素材よりも熱膨張量が小さくなってしまった場合にも、成形操作において光学素子成形素材に圧力(上型2の自重)をかけ続けることができ、好ましい構成である。
このようにして冷却、固化して得られた光学素子は、必要に応じてアニール工程等に付されて歪み等を除去する等の後処理を施し、さらにその外周部を切削等により所望の径を有する光学素子形状に加工し、反射防止コート等を施して最終的な製品とされる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明するが、この実施形態における光学素子用成形型11は、図3に示したように、光学素子の上面を成形する上型12、光学素子の下面を成形する下型13、上型12及び下型13を内挿し摺動させて、光学素子の中心軸の位置合わせを行う円筒状の内胴14と、内胴の外周に配置されており、上型及び下型の上下方向の距離を規制するための円筒状の外胴15と、からなるものである。
次に、本発明の第2の実施形態について説明するが、この実施形態における光学素子用成形型11は、図3に示したように、光学素子の上面を成形する上型12、光学素子の下面を成形する下型13、上型12及び下型13を内挿し摺動させて、光学素子の中心軸の位置合わせを行う円筒状の内胴14と、内胴の外周に配置されており、上型及び下型の上下方向の距離を規制するための円筒状の外胴15と、からなるものである。
ここで、本実施形態の光学素子用成形型11は、フランジ14aを押圧する外胴15の側面において、外胴15の下端から水平方向に伸びたものが、一旦内胴のフランジ14aを覆うようにフランジ14aと同じ高さまで下がった後、さらに水平方向に伸びた構造であるフランジ15aが形成されている以外は、第1の実施形態と同一の構成を有するものであり、それぞれ対応する構成は、全く同一の機能を有するものである。
このような形状とすることで、コイルスプリングの巻き径を大きくすることができ、自由長も長くとることができるため、コイルスプリングの縮み量に余裕ができ、ヘタリや破損のリスクが低減できるという利点がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子用成形型は、タングステンカーバイドからなる超硬合金製のものであり、プレス成形により、直径15mm、中心厚さ1mm、周辺厚さ5mmの凹メニスカス形状の光学素子が得られるものである。ここで、上型は胴部の直径がφ16mm、フランジの直径がφ21mm、厚みが3mmであり、下型は胴部の直径がφ16mm、フランジの直径がφ27mm、厚みが3mmであり、内胴はその円筒状の内径がφ16mmで上型及び下型とはクリアランスを5μm設け、外径がφ21mm、長さが25mm、フランジの直径が27mm、厚みが3mmである。なお、外胴はSUS316L製で、その円筒状の内径がφ21.6mm、外径がφ26.6mm、長さが29mm、フランジの直径が44mm、厚みが3mmのものを用いた。
この成形型の内部に直径φ5.7mmの球状のランタン系の光学素子成形素材を収容し、成形型を680℃に加熱した。なお、この光学素子成形素材の歪点は600℃、ガラス転移点(Tg)は620℃、屈伏点(At)は660℃である。
光学素子成形素材を収容した成形型を、690℃程度に予備加熱した後、搬送手段により680℃に加熱されたプレス手段20b上に搬送して載置すると同時に、プレス手段20bと同じ温度に維持されたプレス手段20aを、下降させて上型2に接触させ、上型2、下型3及び光学素子成形素材80を120秒間十分に加熱し、昇温させて光学素子成形素材を軟化状態とした。
次に、上型2、下型3及び光学素子成形素材80が十分に加熱され、プレス手段20a及び20bと同程度の温度(680℃程度)となったところで、プレス手段20aをさらに下降させ、上型2及び下型3により光学素子成形素材80のプレス成形を行った。成形時の圧力を22N/mm2とし、100秒程度押圧して押切った。
次に、光学素子用成形型1を搬送手段により冷却手段上に搬送して載置させ、成形型全体を冷却した。この冷却の際にも、光学素子成形素材80へ 22N/mm2の圧力をかけるようにして、光学素子成形素材の歪点以下になるまで冷却した。
光学素子成形素材が歪点以下の温度となったところで、成形型を冷却手段から水冷手段上に搬送させて載置し、光学素子成形素材を室温になるまで冷却した。光学素子成形素材が十分に冷却したところで、成形型から取り出し、光学素子を得た。
この光学素子の成形操作を100ショット行い、得られた光学素子のディセンタに対するcpkと標準偏差及びチルトに対するcpkと標準偏差を求め、その結果を表1に示した。
(比較例1)
光学素子用成形型として、図4に示したように、上型52、下型53、内胴54及び外胴55からなる光学素子用成形型51を用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学素子の成形操作を行った。なお、この光学素子用成形型51において、下型53は、実施例1の下型3とはフランジの大きさが小さくなっており、外胴55が上下のプレス手段と直接接触して上型及び下型の上下の距離を規制することができるようになっている点が異なるものである。また、内胴54は、フランジがない以外は内胴4と同一の形状を有するものであり、外胴55は、上記したように上下のプレス手段と直接接触して距離規制を行うため、その高さが実施例1の外胴5よりも6mm高くなっている。それ以外は、実施例1と同様の構成を有するものであり、同様の操作により、光学素子を得た。
光学素子用成形型として、図4に示したように、上型52、下型53、内胴54及び外胴55からなる光学素子用成形型51を用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学素子の成形操作を行った。なお、この光学素子用成形型51において、下型53は、実施例1の下型3とはフランジの大きさが小さくなっており、外胴55が上下のプレス手段と直接接触して上型及び下型の上下の距離を規制することができるようになっている点が異なるものである。また、内胴54は、フランジがない以外は内胴4と同一の形状を有するものであり、外胴55は、上記したように上下のプレス手段と直接接触して距離規制を行うため、その高さが実施例1の外胴5よりも6mm高くなっている。それ以外は、実施例1と同様の構成を有するものであり、同様の操作により、光学素子を得た。
この光学素子の成形操作を100ショット行い、得られた光学素子のディセンタに対する工程能力指数(cpk)と標準偏差及びチルトに対する標準偏差と工程能力指数(cpk)を同一基準で求め、その結果を表1に示した。標準偏差の単位はμmである。
以上に示したように、本発明の光学素子の成形方法により、特に、内胴による光学素子の中心軸を、従来に比べて精度よく合わせることができるようになり、形状精度の高い光学素子を得ることができることがわかった。
本発明の光学素子の成形方法及び成形装置は、プレス成形による光学素子の製造に用いることができる。
1…光学素子用成形型、2…上型、3…下型、4…内胴、5…外胴、2a,3a,4a,5a…フランジ、6…コイルスプリング、80…光学素子成形素材
Claims (6)
- 対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動可能に挿入され、上型及び下型を同軸上に規制する円筒状の内胴と、前記内胴の外周に被嵌され、前記上型及び下型を互いに接近させて下型上に置かれた光学素子成形素材を加圧するプレス手段の加圧面間の距離を規制する円筒状の外胴と、を有するプレス成形用の光学素子用成形型において、
前記下型及び内胴の下端には、プレス成形時に前記外胴の下端に押圧されて互いに圧接するフランジがそれぞれ設けられており、
前記外胴の側面にはフランジが設けられ、該外胴のフランジ上には、プレス成形時に前記外胴と前記プレス手段の上部加圧面との間に弾撥力を生じさせるコイルスプリングが嵌挿されていることを特徴とする光学素子用成形型。 - 前記外胴のフランジが、外胴の下端に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型。
- 前記内胴のフランジの直径が、前記内胴の内径の1.1〜6倍であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子用成形型。
- 前記外胴のフランジの直径が、前記外胴の内径の1.1〜4倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて前記光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、
前記プレス工程において、前記外胴と前記プレス手段の上部加圧面との間に前記コイルスプリングにより弾撥力を生じさせ、前記内胴のフランジと前記下型のフランジとを互いに圧接させることを特徴とする光学素子の成形方法。 - 前記冷却工程において、前記光学素子成形素材の加圧状態を維持することを特徴とする請求項5記載の光学素子の成形方法。
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CN104924129A (zh) * | 2015-06-26 | 2015-09-23 | 河北东方模具科技有限公司 | 一种玻璃模具口模铣螺牙夹具及其加工方法 |
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2010
- 2010-03-09 JP JP2010052097A patent/JP2011184249A/ja not_active Withdrawn
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