JP2004307330A - レンズの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成形型により加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含む、凹メニスカスレンズを製造する方法。予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、上下型を冷却して暫定レンズを得、得られた暫定レンズの一方の面にクセがある場合、ガラス素材の温度、上型及び/又は下型の温度、上型及び/又は下型の冷却速度を補正して修正レンズを成形する。暫定レンズのプレス成形を、第一加圧及び第二加圧で行い、暫定レンズの一方の面にクセがある場合、第二加圧の荷重を補正して修正レンズを成形する。得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで、補正を繰り返す。
【選択図】
Description
尚、本発明において「クセ」とは、上記のように「光軸を中心とした対称性の面精度異常」を意味する。
(1)ガラス素材加熱温度
(2)成形型加熱温度
(3)上下成形型間の温度差
(4)上下成形型間の冷却速度差
(5)2段階以上の加圧(第一加圧、第二加圧)を行う場合の、第二加圧荷重
の5つのパラメータが大きな影響をもたらすことを見出した。
1)ガラス素材とそれが供給される成形型の温度との相互関係(特に型外でガラス素材を加熱する場合)
2)成形されたレンズの上下の冷却のバランス
3)成形形状を決定する、荷重のかかり方
上記要素に関連して、種々の成形条件について検討した結果、前記(1)〜(5)がレンズの面精度の1つであるクセを支配する条件であり、これらの条件を適宜コントロールすることで、凹メニスカスレンズであっても、面精度の高いレンズが得られることを見出し、本発明を完成した。
(1) 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することにより、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
予熱した上下成形型の成形面間に、所定温度に加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、ガラス素材の温度を、前記所定温度よりも低く補正し、補正したガラス素材の温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、ガラス素材の温度を、前記所定温度よりも高く補正し、補正したガラス素材の温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正したガラス素材の温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記ガラス素材の温度補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記製造方法(本発明の第1の態様)。
所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法(本発明の第2の態様)。
それぞれ所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を低く補正し、又は第1面を成型する型の予熱温度を高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を高く補正し、または第1面を成型する型の予熱温度を低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法(本発明の第3の態様)。
予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、上下型をそれぞれ所定の冷却速度で冷却して暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した冷却速度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記冷却速度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法(本発明の第4の態様)。
予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給して直ちに所定荷重の第一加圧を行い、冷却開始後に、第一加圧より小さな所定荷重によって第二加圧を行うことを含むプレス成形を行うことによって暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して大きくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して小さくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した荷重を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記荷重の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法(本発明の第5の態様)。
(7)前記凹メニスカスレンズが、第1面、又は第2面に非球面を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
本発明においては、例えば以下のような成形工程を繰り返すことにより、連続的にガラスレンズなどの光学素子を成形する。
尚、後述するように、本発明の製造方法では、暫定レンズ、修正レンズ、及び本レンズ(本来の目的物であるガラス光学素子)の製造工程があるが、いずれの製造方法においても、条件の違いはあるが、以下の(a)〜(e)の各工程を経てレンズが製造される。
(a)成形型予熱工程
上下成形型を、加熱手段、例えば高周波誘導コイルなどにより、所定温度に予熱する。先立って行われたサイクルの(e)取り出し工程(後述)が行われた上下成形型は、レンズを離型して取出すために適した温度に冷却されているため、予熱工程において、プレス成形に適した所定温度まで加熱する。成形型の予熱温度は、例えば、ガラスの粘度に換算して108〜1012dPaS相当が好ましい。型の温度に関しても、過度に高温ではガラスの成形面への融着の問題があり、低温ではガラス素材の破壊の問題があるため、上記温度範囲であることが好ましい。このとき、上下成形型の温度設定値は、同一としてもよく、また成形されるレンズの形状や径などによっては温度差を設けてもよい。上下成形型温度の差に関しては、上下成形型間の温度差が大きくなりすぎると、上下面での収縮量の差が大きすぎ、他のパラメータによる修正が効かなくなるばかりでなく、上下型の膨張差により、プレス動作に支障をきたことがある。そのため、上下成形型の間に温度差を設ける場合には、60℃以内の差とすることが好ましい。
予熱された上下成形型間に、搬送されたガラス素材が供給され、下型上に配置される。ガラス素材は、予め適切な重量の所定形状に予備成形されたガラス素材(プリフォーム)を用い、成形に適した粘度まで軟化したものを供給することができる。あるいは、成形に適した粘度に相当する温度より低温のガラス素材を上下型間に供給し、上下型間で更に、成形に適した粘度まで加熱することもできる。予め、型の設定温度よりも高温に加熱し、軟化した状態のガラス素材を供給する場合に、本発明の効果がより顕著に得られる傾向がある。成形型に供給されるときのガラス素材の温度は、粘度で105.5〜1012dPaS相当であることが好ましい。これより低粘度(高温)では、冷却過程でのガラスの収縮量が大きく、良好な面精度を有するガラス成形品が得られなくばかりでなく、ガラス素材と型材との反応により融着が生じてしまうことがあるためである。逆にこれより高粘度(低温)では、プレスによるガラス素材の変形が困難となり、所定の肉厚までプレスできなくなるばかりか、ガラスや型が破壊してしまう場合がある。成形型に供給されるときのガラス素材の温度は、より好ましくは105.5〜108.5dPaS相当とすることができる。
上下成形型とガラス素材がそれぞれ所定の温度範囲にあり、ガラス素材が加熱軟化した状態で、下型を上昇(又は上型を降下)させて加圧し、上下成形型の成形面を転写することによって、所定面形状をもった光学素子を成形する。下型の上昇は、駆動手段(例えばサーボモータ)を作動さることにより行い、下型を所定ストローク上昇させることでガラス素材を加圧する。予め加熱軟化したガラス素材が供給される場合には、供給後直ちに加圧が行われる。加圧のための下型のストロークは予め、成形する光学素子の肉厚から設定された値とし、冷却工程においてガラスが熱収縮する分を見込んで定めた量とすることが適当である。加圧のスケジュールは、成形する光学素子の形状や大きさに応じて任意に設定することができる。
成形型にガラス素材を供給後、直ちにプレス荷重をかけて第一加圧を行い、ガラスを大きく変形させるとともに、所定の肉厚位置で型を停止させる。プレス開始と同時もしくは所定の肉厚位置に達した時点で冷却を開始し、所定の温度まで降温した時点まで型位置を維持する。これにより、ガラスにかかる荷重は実質的に減じられる。所定温度に到達したら、再度プレス荷重を上げ、第二加圧を行う。
上記のように適切な加圧スケジュールを施すとともに、成形された光学素子と成形型の密着を保ちつつ、ガラスの粘度で1012dPaS相当の温度になるまで冷却した後、プレス成形品を離型する。離型温度は、1012.5〜1013.5dPaS相当で行うことが好ましい。
離型した後、下型成形面上のプレス成形品(光学素子)を、例えば、吸着部材を備えた取り出しアーム等により、自動取り出しを行うことができる。
(1)ガラス素材加熱温度の制御(第1の態様)
本発明の製造方法の第1の態様では、予熱した上下成形型の成形面間に、所定温度に加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得る。暫定レンズの製造は、上記(a)〜(e)の各工程を経て行われる。そして、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、ガラス素材の温度を、前記所定温度よりも低く補正し、補正したガラス素材の温度を適用した条件で、修正レンズを成形する。
非球面形状は下記の非球面式で表すことができる。
X=(Y^2/R)/[1+[1-(1+K)(Y/R)^2]^0.5]+BY^4+CY^6+DY^8+EY^10
( K=B=C=D=E=0の場合は、球面となる場合である。)
一般に、上記式の各定数を定めることにより非球面式を規定することができる。レンズ設計時には、設計非球面式を規定する。
すなわち、本発明においては、このようにして得た中心部の曲率半径と、周辺部の曲率半径の関係を調べ、その大小関係に応じて、成形条件を補正するのである。
また、中心部と周辺部の曲率半径の関係と干渉縞で見られるクセの関係を図6に示す。
ガラス素材の温度の補正の程度は、暫定レンズのクセの程度により適宜決定できる。例えば、暫定レンズの第1面のクセを把握し、その本数に応じて、ガラス素材の温度の補正を行うことが好ましい。
「クセが許容範囲内にある」とは、製造する凹メニスカスレンズのスペックに従って適宜決定されることであるが、例えば、「クセが許容範囲内にある」とは、修正レンズに観察されるクセがフィゾー干渉計によるニュートン1本以内であることができる。以下の態様においても、これらの点は同様である。
また、非球面の場合にはクセの大きさの指標としてベストフィットした非球面式と暫定レンズの測定形状との差の大きさ(例えばP-V値)を用い、許容範囲を設定することができる。
尚、本明細書において本レンズとは、目的とする製品であるガラス光学素子であり、暫定レンズ及び修正レンズの成形を経て本レンズが得られる条件に達した後は、その条件で本レンズを繰り返し製造する。
例えば、第1面、第2面ともに球面を有する凹メニスカスレンズの場合、いずれの面ともに、有効径内において曲率半径がレンズ中心から周辺部にわたって一定でなければならない。しかしながら、暫定的な成形条件によって成形されたレンズの、レンズ周辺部の曲率半径が、レンズ中心付近の曲率半径に比べて、小さいクセを生じることがある。このような場合に、ガラス素材の加熱温度を低くする補正をすることによって、均一な曲率半径を有するレンズを得ることができること、及び、逆に、暫定的レンズの、レンズ周辺部の曲率半径が、レンズ中心付近に比べて大きいクセを生じる場合には、ガラス素材の加熱温度を低い側に補正して、本レンズの成形条件を得ることができることを、本発明者らは見出した。具体的には、後述する実施例において示す。
本発明の製造方法の第2の態様では、所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得る。暫定レンズの製造は、上記(a)〜(e)の各工程を経て行われる。そして、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形する。また、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形する。
一方、得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返し、修正レンズのクセが許容範囲内になった場合に、それ以後、補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形する。
本発明の製造方法の第3の態様では、それぞれ所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得る。暫定レンズの製造は、上記(a)〜(e)の各工程を経て行われる。そして、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を低く、又は第1面を成型する型の予熱温度を高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形する。また、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を高く補正し、または第1面を成型する型の予熱温度を低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形する。
一方、得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返し、修正レンズのクセが許容範囲内になった場合に、それ以後、補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形する。
本発明の第4の態様においては、予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、上下型をそれぞれ所定の冷却速度で冷却して暫定レンズを得る。暫定レンズの製造は、上記(a)〜(e)の各工程を経て行われる。
得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径より小さなクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形する。上型の冷却速度及び下型の冷却速度の補正を同時に行うこともできる。
また、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形する。この場合も、第2面を成型する型の冷却速度及び第1面を成型する型の冷却速度の補正を同時に行うこともできる。
冷却速度の補正の程度は、暫定レンズのクセの程度により適宜決定できる。例えば、暫定レンズの第1面のクセを把握することにより、クセの本数に応じて、冷却速度の補正を行うことができる。
一方、得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記冷却速度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返し、修正レンズのクセが許容範囲内になった場合に、それ以後、補正した冷却速度を適用した条件で、本レンズを成形する。
本発明の製造方法の第5の態様においては、予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給して直ちに所定荷重の第一加圧を行い、冷却開始後に、第一加圧より小さな所定荷重によって第二加圧を行うことを含むプレス成形を行うことによって暫定レンズを得る。暫定レンズの製造は、上記(a)〜(e)の各工程を経て行われる。
得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して大きくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形する。また、得られた暫定レンズの第1面若しくは第2面の周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して小さくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形する。
第二加圧の荷重の補正の程度は、暫定レンズのクセの程度により適宜決定できる。例えば、暫定レンズの第1面のクセを把握することにより、クセの本数に応じて、第二加圧の荷重の補正を行うことができる。
尚、荷重をかける時間は一定(変化させない)で、第二加圧の荷重を補正するのみで、補正することができる。
第1面及び第2面の一方または両方が非球面のレンズの場合、例えば、暫定レンズの形状を触針式の形状測定装置によって測定し、この形状をもとに、設計形状を参照して補正方法を求めることができる。球面レンズの場合にも、形状測定装置による測定結果に基づいて補正方法を求めることができることはもちろんである。
[実施例1] (ガラス素材温度によるクセの変化)
直径11mm 中心肉厚1.2mmの、第1、第2面が球面の凹メニスカスレンズを成形した。燐酸塩系ガラス素材(Tg:450 Ts:490℃)を直径10mm、体積420mm3の扁平球形状に予備成形しプリフォームとした。これを粘度が107〜109dPaSとなる種々の温度(550〜510℃)で加熱した後、ガラス粘度で109dPaSに相当する温度(510℃)およびガラス粘度で1010dPaSに相当する温度(490℃)に加熱した上下型間に供給し、ただちに下型を上昇させる事により上下型間でプリフォームをプレスした。プレス時の初期圧力は150Kg/cm2とし、プレス開始直後に冷却(上下型ともに冷却速度100℃/min)を開始した。加圧代を100μm残した位置で下型を停止させ維持することにより、ガラスへの荷重を実質的に減少させた。Tg+15℃まで降温したときに、第二加圧を行い、Tg-20℃にて離型した。第二加圧は80Kg/cm2とした。
実施例1と同様のプリフォームおよび成形型を用い、ガラスの粘度が107dPaSとなる温度(550℃)でプリフォームを加熱した後、ガラス粘度として109〜1011dPaSに相当する温度(470〜510℃)に加熱した下型に供給し、直ちに下型を上昇させる事により上下型間でプリフォームをプレスした。プレス圧、プレススケジュールは実施例1と同様にした。尚、上下型温度は同一とし、冷却速度は、上下型ともに100℃/min、第2加圧は460℃とした。図3に示した様に、型温度が高い場合には面形状は周辺部の曲率半径が中心部に比べて小さくなり、逆に温度が低くなるに従って周辺部の曲率半径が大きくなる方向へ変化した。
実施例1と同様のプリフォームおよび成形型を用い、プリフォームをガラス粘度で107dPaS相当の温度(550℃)で加熱した後、ガラス粘度として109〜1011dPaSに相当する温度(490〜505℃)に加熱した下型(第1面を成型する型)に供給し、すぐに下型を上昇させる事により490℃に加熱した上型(第2面を成型する型)との間でプリフォームをプレスした。プレススケジュールは実施例1と同様としたが、プレス後の冷却速度は上型を80℃/minとし、下型は75〜105℃/minとして変化させた。
2つのパラメータを変化させた場合、良好な面が得られる条件は1つではなく、その組み合わせによって複数存在する。
実施例1と同様のプリフォームおよび成形型を用い、ガラスの粘度が107dPaSとなる温度(550℃)でプリフォームを加熱した後、硝子の粘度として1010dPaSに相当する温度(490℃)に加熱した下型(第1面を成型する型)に供給し、すぐに下型を上昇させる事により495℃に加熱した上型(第2面を成型する型)との間でプリフォームをプレスした。第二加圧は、470℃において図5に示す荷重にて行った。
バリウムホウ珪酸ガラス素材(Tg:514℃、Ts:545℃)を615℃に加熱した後590℃に加熱した下型(第1面成形用球面型)に落下供給し、同温度に加熱した上型(第2面成型用非球面型)との間でプレス成型を行った。プレスと同時に冷却を開始し540℃で第二加圧を行い、495℃にてプレスを終了してレンズを取り出した。この際、冷却時の上下型の冷却速度を変化させた。このようにして得たレンズの第2面の中心部と周辺部の近軸曲率半径をベストフィットにより求め、非球面のクセを調べた結果を表1に示す。これより下型の冷却速度を速くすることにより第2面のクセは周辺部の曲率半径が相対的に小さくなる方向に変化し、上型の冷却速度を速くする事により、周辺部の曲率半径が大きくなることが確認された。
また有効径全域でのベストフィットを行った場合のP-V値より、中心部と周辺部のRの差が小さくなるに従ってクセは小さくなっていることが確認された。
Claims (7)
- 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することにより、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
予熱した上下成形型の成形面間に、所定温度に加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、ガラス素材の温度を、前記所定温度よりも低く補正し、補正したガラス素材の温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、ガラス素材の温度を、前記所定温度よりも高く補正し、補正したガラス素材の温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正したガラス素材の温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記ガラス素材の温度補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記製造方法。 - 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含む、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、上下成形型の予熱温度を前記所定温度よりも高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法。 - 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含む、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
それぞれ所定温度に予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を低く補正し、又は第1面を成型する型の予熱温度を高く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の予熱温度を高く補正し、または第1面を成型する型の予熱温度を低く補正し、補正した成形型温度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した成形型温度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記成形型温度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法。 - 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含む、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給してプレス成形し、上下型をそれぞれ所定の冷却速度で冷却して暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第2面を成型する型の冷却速度を小さくする補正をし、又は第1面を成型する型の冷却速度を大きくする補正をし、補正した冷却速度を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した冷却速度を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記冷却速度の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法。 - 対向する成形面を有する上下一対の成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含む、凸面形状を含む第1面及び凹面形状を含む第2面を有する、凹メニスカスレンズを製造する方法であって、
予熱した上下成形型の成形面間に、加熱したガラス素材を供給して直ちに所定荷重の第一加圧を行い、冷却開始後に、第一加圧より小さな所定荷重によって第二加圧を行うことを含むプレス成形を行うことによって暫定レンズを得、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも小さいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して大きくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた前記暫定レンズの第1面若しくは第2面の、周辺部の曲率半径が、中心部の曲率半径よりも大きいクセが生じていたときには、第二加圧の荷重を上記所定荷重に対して小さくする補正をし、補正した荷重を適用した条件で、修正レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲内にある場合は、以後、前記補正した荷重を適用した条件で、本レンズを成形し、
得られた修正レンズのクセが許容範囲外にある場合は、前記荷重の補正と修正レンズの成形とを、得られた修正レンズのクセが許容範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする、前記方法。 - 凹メニスカスレンズの第1面に球面を有し、かつ得られた暫定レンズの第1面のクセを把握することにより、成形条件の補正を行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記凹メニスカスレンズが、第1面、又は第2面に非球面を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
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