JP2011126758A - 光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、プレス成形により光学素子を製造する際に、簡素な装置構成で上型及び下型の間隔を規制することができ、光学素子の肉厚調整を容易に行うことができる光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法を提供する。
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入される円筒状の胴型4と、を有する光学素子用成形型において、該胴型4の上端部又は下端部に、胴型4と重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行う環状の肉厚調整用スペーサー5を配設した光学素子用成形型1。
【選択図】図1
【解決手段】対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型2及び下型3と、上型2及び下型3がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入される円筒状の胴型4と、を有する光学素子用成形型において、該胴型4の上端部又は下端部に、胴型4と重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行う環状の肉厚調整用スペーサー5を配設した光学素子用成形型1。
【選択図】図1
Description
本発明は、ガラスレンズなどの光学素子をプレス成形する光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法に係り、特に、得られる光学素子の肉厚調整を容易に行うことができる光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法に関する。
ガラス材料等からなる光学素子成形素材を、加熱により軟化させ、上型及び下型の間でプレス成形して光学素子形状を付与し、これを冷却固化させることからなる光学素子の成形方法が知られている。
この光学素子の成形においては、上型及び下型を胴型内で摺動させることで、形成される光学素子の中心軸を一致させ、偏心精度など高度に要求される形状精度が所定の範囲内となるようにしている。
一方、光学素子の肉厚については、上記胴型を用いて、さらに、上型及び下型の間隔をも規制することにより光学素子の肉厚を調整するプレス成形装置と(特許文献1参照)、中心軸を一致させる胴型とは別の上型及び下型の間隔を規制する胴型を用いて、肉厚を調整するプレス成形装置と(特許文献2参照)、が知られている。
特許文献1に開示されたタイプのプレス成形装置では、用いる胴型の素材として光学素子の形状精度を高い状態で担保するために超硬合金等の強度の極めて高い材料が用いられており、このとき、上型及び下型の間隔を規制する胴型の高さが大きい場合には、胴型を研磨して高さの調整が行われている。
しかしながら、超硬合金は加工が容易でなく、その研磨には特殊な設備が必要となるため、光学素子の肉厚の調整を迅速、簡便に行うことができず、光学素子の製造にあたっては、ここが律速となり効率向上を妨げる要因となる。
このような加工の困難性を軽減し、容易に光学素子の肉厚を調整することができるように、光学素子の中心軸を一致させる胴型(内胴)は特許文献1のものと同様に設けられるが、上型及び下型の上下位置を規制する部材としては、別の胴型(外胴)を設けることによって達成する光学素子の成形型も用いられるようになってきた。このとき、内胴はその精度を確保するために超硬合金製とするが、外胴はステンレス製とすることで加工を容易にして肉厚調整を簡便に行うことができるようにしている。このとき、外胴をステンレス製とすることは、プレス成形後の冷却時にその収縮性を利用して、光学素子に圧力をかけたまま冷却することを容易にし、面形状の不具合を減じる利点も有するものである。
しかしながら、このように胴型を2つ用いる成形型は、部材点数が多くなってしまい、ステンレス製の外胴を用いているため、繰り返し成形操作を行った場合の部材の寿命が短かった。また、プレス成形に際しては、外胴はプレス手段により上下から押圧されるため傾くことがないが、このとき内胴は上下からの圧力が無いこと、上下型との摺動のためクリアランスを設けていることから傾くことがあり、その内胴の傾きにより光学素子が偏心して形状不具合が生じる場合があった。
そこで、本発明は、上記の事情に対処してなされたものであり、プレス成形により光学素子を製造する際に、簡素な装置構成で上型及び下型の間隔を規制することができ、その際に胴型が傾斜して形状不具合が生じることがなく、さらに、光学素子の肉厚の微調整も容易に行うことができる光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法を提供することを目的とする。
本発明の光学素子用成形型は、対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入される円筒状の胴型と、を有する光学素子用成形型において、該胴型の上端部又は下端部に、胴型と重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行う環状の肉厚調整用スペーサーを配設したことを特徴とするものである。
また、本発明の光学素子の成形方法は、本発明の光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、プレス工程において、光学素子用成形型の胴型の上端部又は下端部に環状の肉厚調整用スペーサーを重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行うことを特徴とするものである。
本発明の光学素子用成形型及び光学素子の成形方法によれば、プレス成形により成形する光学素子の肉厚の調整が容易となる。すなわち、量産前の段階において、光学素子の肉厚の微調整を胴型自体の加工をせずに行うことができ、肉厚調整を簡便な操作で行うことができる。
また、一旦量産使用した成形型について、同じ成形型を用いて異なる厚さの光学素子を成形する場合に、肉厚調整用スペーサーを厚さの異なるものへ変更することにより、成形型の有効利用を図ることもできる。
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の一実施形態である光学素子用成形型の側断面図であり、図2は、図1で用いた肉厚調整用スペーサーの(a)平面図と(b)その平面図におけるb−b側断面図である。
まず、図1に示した光学素子用成形型1は、光学素子成形素材をプレス成形して光学素子とする上型2及び下型3と、これら上型2及び下型3と摺動させて、光学素子の中心軸の位置合わせ及び肉厚の調整を行う円筒状の胴型4と、胴型4と重ね合わせて上型2及び下型3の間隔を調整する肉厚調整用スペーサー5と、を有するものである。
本実施形態において、上型2及び下型3は共に円柱状の胴部を基本形状とする部材であり、これらは円柱状の軸が鉛直方向に揃うように上下に配置され、上型2の下面には上側の光学機能面を形成する成形面2aが、下型3の上面には下側の光学機能面を形成する成形面3aが設けられている。この上型2及び下型3は、それぞれ設けられた光学素子の成形面2a及び3aを対向させて一対のものとして用いられる。
また、使用時に、プレス成形に用いるプレス手段との接触面積を多くとることでこれらの型が安定するように、上型2の上端及び下型3の下端にはフランジがそれぞれ設けられていることが好ましい。
胴型4は、中空円筒形状に形成されており、その中空部分は上記した上型2及び下型3の円柱状の胴部が嵌合可能なようになっている。この胴型4は、上型2及び下型3をそれぞれ上下の開口部から摺動させて挿入されるようになっており、プレス成形する際にこれら上型2及び下型3で形成される光学素子の中心軸の位置合わせを行い、上型2及び下型3で形成される光学素子の光学機能面を同軸上に規制するものである。
また、この胴型4は、上型2及び下型3の間隔を規制する部材としても機能するものであり、上型2及び下型3をそれぞれプレス手段で押圧する際に、上型2及び下型3の距離がこの胴型4で直接的又は間接的に規制されるようになっていればよい。具体的には、上型2の上端及び下型3の下端にフランジを設け、胴型4を上下型のフランジ間に挟む形でプレスすることで上型2及び下型3の距離を直接的に規制したり、胴型4を上下のプレス手段に挟みこんでプレス手段間の距離を規制することで、間接的に上型2及び下型3の距離を規制したり、胴型4の上端は上側のプレス手段と、下端は下型3のフランジと接触させたり、する等が挙げられる。
この胴型4は、上記したようにプレス成形時に上型2及び下型3間の距離を規制するが、その際に上下方向から押圧されるため、鉛直方向に対して傾くことがなく、成形する光学素子の形状精度を高めることができる。
次に、肉厚調整用スペーサー5は、胴型4と重ね合わせることで、胴型4が行っている上型2及び下型3で規制する間隔を微調整することができるものであり、胴型4の高さ(有効高さ)に加えて、肉厚調整用スペーサー5の厚みにより、上型2及び下型3の間隔を調整するものである。
この肉厚調整スペーサー5は、プレス成形時には胴型4と一体的に使用するもので、上記で説明した上型2及び下型3の間隔の規制は、胴型4のみで行うものではなく、本発明においては、胴型4とこの肉厚調整スペーサー5により調整されるものである。
また、この肉厚調整用スペーサー5を胴型4に重ね合わせる際には、胴型4の上端部又は下端部に、肉厚調整用スペーサー5の形状に対応した段差4aを設けることが好ましい。この段差4aを設けることにより、プレス成形時に肉厚調整用スペーサー5は、この段差4aに配設されるようになり、この位置が所定の場所に固定されることで、肉厚調整用スペーサー5がずれたりしてプレス成形の操作に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
上記した上型2、下型3及び胴型4は、タングステンカーバイド粒子とコバルト金属バインダとの焼結体である超硬合金、タングステンカーバイド粒子の焼結体である超硬、窒化珪素、炭化珪素等のセラミックス等の素材で構成することが好ましく、上型2及び下型3には、成形する光学素子の面形状を転写するための成形面がそれぞれ対向する面に形成されている。図1では、成形型として凹メニスカス形状の光学素子を製造するものを図示したが、光学素子形状はこれに限定されるものではなく、両凸、両凹、平凸、平凹、凸メニスカス形状のいずれのレンズ形状を成形する成形型であっても用いることができる。
なお、肉厚調整用スペーサー5は、上記成形型と同様超硬合金やセラミックス製とすることもできるが、それ以外にも、ステンレス、ニッケル合金(例えば、大同スペシャルメタル株式会社製、商品名:インコネルが挙げられる)等のプレス成形を行う条件で高温時にも高い機械的強度を有しながら、成形型材料よりも加工性に優れた金属を用いることもできる。
ステンレスやニッケル合金製とすると、超硬合金等に比べて加工が容易であるため、光学素子の量産段階に入る前に、肉厚調整用スペーサー5の厚さを研磨等により薄く加工する等の微調整を胴型加工よりも容易に行うことができる。
次に、この光学素子用成形型1を用いた光学素子の成形方法について、図3を参照しながら説明する。
まず、成形型の内部に光学素子成形素材50を収容し、光学素子用成形型を加熱して、予め所定の温度まで熱して予備加熱を行っておく。次いで、光学素子用成形型をプレス手段60b上に移動させ下型3をプレス手段60bと接触させるように載置する(図3(a))。その後、プレス手段60aを押し下げてプレス手段60a及び60bがそれぞれ上型2及び下型3と接触するようにし、さらに加熱させることで、その内部に収容されている光学素子成形素材50も加熱され、これにより光学素子成形素材が軟化する。
光学素子成形素材は、変形が容易な屈伏点以上に加熱するが、一般的には、軟化点まで温度を上げるとレンズ表面が白濁するので屈伏点(At)から軟化点の間の温度に設定する。
この加熱温度は、用いる光学素子成形素材が加圧変形できる温度であればよく、屈伏点と軟化点との中間付近の温度であることが好ましい。プレス手段60a及び60bを所定の温度に設定して、この加熱工程を行うと、上型2及び下型3は、温度が昇温していきプレス手段60a、60bの設定温度と同じ温度にまで加熱される。
上型2及び下型3が加熱され、光学素子成形素材がプレス成形するのに十分な温度となったところで、プレス手段60aを下降させプレス手段60a及び60b間の距離を狭める。これにより、上型2と下型3との距離を狭めて、成形型の内部に収容された光学素子成形素材50に圧力をかけ変形させることでプレス成形を行う。このとき、上型2及び下型3の間の上下方向の距離は、下型3のフランジ部分の厚さ、胴型4の高さ及び肉厚調整用スペーサー5の厚さにより所定の距離に規制される。
このプレス工程では、上記したように成形型の上下から圧力をかけることで光学素子成形素材50のプレス成形を行い、これにより光学素子成形素材50には上型2及び下型3の成形面2a及び3aが転写され、光学素子形状が付与される。
このプレス工程におけるプレス時の圧力は、レンズ成形体の単位面積当たり2.5〜37.5N/mm2とすることが好ましく、例えば10〜20N/mm2とする事が特に好ましい。
ここで言うプレス時の圧力とは、光学素子成形素材に加わる圧力を指す。
ここで言うプレス時の圧力とは、光学素子成形素材に加わる圧力を指す。
そして、このようにプレス工程で光学素子成形素材に光学素子形状を付与した後、光学素子用成形型1を、今度は冷却手段上に移動させ、冷却手段と光学素子用成形型1を接触させて、光学素子用成形型1を冷却することによって、光学素子成形素材の冷却、固化を行う。
この冷却工程においては、成形された光学素子成形素材50が、歪点以下になるまで冷却することが好ましい。この冷却工程においても、光学素子成形素材50への加圧は継続して行うことが好ましく、上記歪点以下の温度になるまで加圧を続けることが好ましい。
さらに、この冷却中に、光学素子成形素材の温度がガラス転移点以下になったところで、光学素子成形素材50に加圧する圧力を変化させることもでき、例えば、光学素子成形素材の温度が、ガラス転移点以上のときにはプレス時の圧力と同じ圧力としておき、ガラス転移点よりも低い温度になってからは圧力を高くして、段階的に加圧するようにしてもよい。
ガラス転移点以上の温度を低圧にするのは、肉厚バラツキを抑えるためであり、それ以下の温度域では押込み量がほとんど無いので増圧しても問題ない。すなわち、光学素子成形素材が硬化状態に近づくガラス転移点(Tg)付近までは低い圧力で保圧し、ガラス転移点(Tg)付近からそれ以下の温度となり光学素子成形素材が固化するまで、より高い圧力をかけるものである。このように冷却工程において圧力を継続してかけることにより光学素子の面形状が安定する。
なお、ここで、低い圧力とは9.8N/mm2以下、高い圧力とは9.8N/mm2超である。また、光学素子成形素材が歪点以下となり、固化した後は、さらに20N/mm2超となるような高い圧力をかけてもよい。このように段階的に圧力を高めることで光学素子の面ワレが生じる等の不具合が生じることを抑制し、形状精度を高めることができる。また、固化した後の圧力としては、ガラス素材にワレが生じる等の不具合が生じない限りはどのような圧力でもよいが、通常、30N/mm2程度が上限である。上記では2段階又は3段階に圧力を増加させていく例を説明したが、それ以上の多段階として増圧するようにしてもよい。本明細書において、面ワレとは、光学素子が成形型から離型する際に、一部だけが先に離型し、その後に残りが離型した場合に、曲率が不連続な光学面が形成されて非球面形状精度が悪化する不良が生じる離型異常のことを言う。
そして、このように冷却工程が完了した成形型は、さらに冷却させるために、例えば、水冷手段上へ移動させる。この水冷手段による冷却は、冷却工程で冷却された光学素子成形素材をさらに急冷させ、光学素子成形素材を歪点付近の温度から成形型が酸化しない温度である200℃以下まで冷却させるものである。
なお、ここで用いたプレス手段60a及び60bは、これらの間の距離を狭めることにより成形型の上型2と下型3との距離を狭めることができ、成形型内に収容された光学素子成形素材50を軟化状態のまま押圧して変形させ、上型2及び下型3の光学形成面形状を光学素子成形素材50に付与することにより光学素子の成形を行うものである。すなわち、このプレス手段であるプレス手段60aは、成形型の加熱状態を維持しながらプレス操作を行うことができるようになっているもので、その内部にはヒータが埋め込まれている。
このプレス手段60a及び60bは、光学素子成形素材をプレスする際に、成形型の外胴5の高さによりプレス手段60a及び60b間の距離を規制することで、上型2及び下型3の距離を調整するものである。これにより成形される光学素子の厚みが調整される。なお、図3での上型2及び下型3の距離は、実際には、下型のフランジの厚さ、胴型4の有効高さ(胴型4の下端から肉厚調整用スペーサー5の嵌合部4aまでの高さ)及び肉厚調整用スペーサー5の厚さにより規制されている。
このようにして冷却、固化して得られた光学素子は、その外周部を切削等により所望の径を有する光学素子形状に加工し、さらに、アニール工程等に付されて歪み等を除去する等の後処理を施して最終的な製品とされる。
なお、肉厚調整用スペーサー5は、成形する光学素子が所定の肉厚となるように用いられるものであるが、光学素子の成形にあたって、量産前の段階においては、所定の肉厚から外れてしまっており、再度調整が必要となる場合がある。
その際に、本発明の肉厚調整用スペーサー5として、図4に示したように、厚さの異なる複数の肉厚調整用スペーサー5a〜5dを用意しておき、この肉厚調整用スペーサーだけを異なる厚さのものに入れ替えて、所定の肉厚のものとするようにすることができる。
また、このように複数の肉厚調整用スペーサーを用意する場合には、それらの単独使用だけではなく、2つ以上の複数枚のスペーサーを組み合わせ重ねて用いるようにすることで、様々な厚さの調整に用いることができるようにしてもよい。
さらに、このように異なる厚さの肉厚調整用スペーサーを用意しておくことは、上記した量産前の肉厚調整だけではなく、例えば、同じ成形型で異なる肉厚の光学素子を成形しようとする場合に、肉厚調整用スペーサーを交換するだけで製造することができ、成形型の有効利用の観点から優れたものでもある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
図1の光学素子用成形型を用いて、光学素子の成形を以下の通り行った。
ここで用いた光学素子用成形型1は、タングステンカーバイドからなる超硬合金製のものであり、プレス成形により、直径36mm、中心厚さ6.4mm、周辺厚さ3mmの凸メニスカス形状の光学素子が得られるものである。ここで、上型2は胴部の直径がφ46mm、フランジの直径がφ48mm、厚みが4mmであり、下型3は胴部の直径がφ46mm、フランジの直径がφ54mm、厚みが4mmであり、胴型4はその円筒状の内径がφ46mmで上型及び下型とはクリアランスを2〜5μm設け、外径は下端部がφ54 mm、上端部がφ60mm、高さが42mm(その上端外周には肉厚調整用スペーサーとの段差4aを高さ5mm、幅4mmで設けている。下端から段差部までの有効高さは 37mm)である。また、肉厚調整用スペーサー5はSUS316L製で、その内径がφ52mm、幅が4mm、厚さが5.2mmの環状のものを用いた。
この成形型の内部に直径φ34mm、中心厚さ8.6mmのホウケイ酸ガラスからなる研削研磨により作製した光学素子成形素材を収容した。なお、この光学素子成形素材の歪点は495℃、ガラス転移点(Tg)は532℃、屈伏点(At)は573℃である。
光学素子成形素材を収容した成形型を、590℃程度に予備加熱した後、搬送手段により600℃に加熱されたプレス手段60b上に搬送して載置すると同時に、プレス手段60bと同じ温度に維持されたプレス手段60aを、下降させて上型2に接触させ、上型2、下型3及び光学素子成形素材50を300秒間十分に加熱し、昇温させて光学素子成形素材を軟化状態とした。
次に、上型2、下型3及び光学素子成形素材50が十分に加熱され、プレス手段60a及び60bと同程度の温度(600℃程度)となったところで、プレス手段60aをさらに下降させ、上型2及び下型3により光学素子成形素材50のプレス成形を行った。成形時の圧力を4N/mm2とし、300秒程度押圧して押切った。
次に、光学素子用成形型1を搬送手段により冷却手段上に搬送して載置させ、成形型全体を冷却した。この冷却の際にも、光学素子成形素材50へ6N/mm2の圧力をかけるようにして、光学素子成形素材の歪点以下になるまで冷却した。
光学素子成形素材が歪点以下の温度となったところで、成形型を冷却手段から水冷手段上に搬送させて載置し、光学素子成形素材を室温になるまで冷却した。光学素子成形素材が十分に冷却したところで、成形型から取り出し、中心肉厚6.5mmの光学素子を得た。
次に、用いた肉厚調整用スペーサーを研磨して厚さを5.1mmに加工し、上記と同様のプレス成形により、光学素子を成形した。このとき得られた光学素子は、その中心肉厚が6.4mmとなり、光学素子の肉厚の調整を簡便に行うことができた。
以上に示したように、本発明の光学素子用成形型及びそれを用いた光学素子の成形方法により、光学素子の形状精度を維持したまま、肉厚調整を簡便な操作により行うことができる。その結果、所望の形状の光学素子を容易に得ることができる。
本発明の光学素子の成形方法及び成形装置は、プレス成形による光学素子の製造に用いることができる。
1…光学素子用成形型、2…上型、3…下型、2a,3a…成形面、4…胴型、5…肉厚調整用スペーサー、50…光学素子成形素材、60a,60b…プレス手段
Claims (6)
- 対向面が光学素子の成形面とされた一対の上型及び下型と、上型及び下型がそれぞれ上下の開口から摺動させて挿入される円筒状の胴型と、を有する光学素子用成形型において、
該胴型の上端部又は下端部に、胴型と重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行う環状の肉厚調整用スペーサーを配設したことを特徴とする光学素子用成形型。 - 前記胴型の上端部又は下端部に、前記肉厚調整用スペーサーの形状に対応した段差を有することを特徴とする請求項1記載の光学素子用成形型。
- 前記肉厚調整用スペーサーとして、厚さの異なる複数枚のスペーサーを準備しておき、そのいずれか又はそれらを組み合わせて前記円筒状の胴型と重ね合わせて配設することを特徴とする請求項1又は2記載の光学素子用成形型。
- 前記肉厚調整用スペーサーが、ステンレス製であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 前記肉厚調整用スペーサーが、超硬合金製であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学素子用成形型。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の光学素子用成形型に光学素子成形素材を収容し、前記光学素子用成形型を加熱して該成形型内の光学素子成形素材を軟化させる加熱工程と、軟化した光学素子成形素材を、プレス手段を用いて前記光学素子用成形型により加圧して光学素子形状を付与するプレス工程と、プレス工程後、前記光学素子用成形型を冷却し、光学素子形状を付与した光学素子成形素材を固化させる冷却工程と、を有する光学素子の成形方法であって、
前記プレス工程において、光学素子用成形型の胴型の上端部又は下端部に環状の肉厚調整用スペーサーを重ね合わせて光学素子の肉厚調整を行うことを特徴とする光学素子の成形方法。
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