JP5228840B2 - 増幅器 - Google Patents

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Description

本発明は、増幅器に係り、特に、あらかじめ定められた程度の過大入力を検出して入力信号の減衰を制御する増幅器に関する。
従来、増幅器の出力側に接続される機器に過大な入力を供給しないように、増幅器の出力やその回路の内部に振幅制限回路が用いられることがある(特許文献1参照)。
この振幅制限回路によれば、出力信号のピーク値を制限するので、増幅器の出力側に接続される機器が過大な入力によって破壊されることを防止することができる。
特開2002−368563号公報
しかしながら、従来の技術では、振幅制限が開始されるレベルを超えて入力信号の振幅が増大すると、増幅器の出力信号波形はクリップする。さらに、入力信号の振幅が増大すると、これに伴って出力信号の歪率が増大し、出力信号波形は矩形波に近づいていく。そして、出力信号波形が矩形波になると、出力信号波形がクリップしない正弦波の場合と比較して、増幅器は出力信号を後段の機器に供給するのに2倍の印加電力が必要となる。
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、ある程度の過大入力を許容しつつ、入力信号の振幅が増加した場合に印加電力の増大を抑制すること解決課題とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る増幅器は、入力信号の振幅を調整して第1信号を出力する可変利得手段と、前記第1信号の振幅を制限して振幅が第1振幅値以下となるように設定された第2信号を出力する振幅制限手段と、前記第2信号を増幅して出力信号として出力する増幅手段と、記第1信号の振幅が第2振幅値以上となる場合を検知して、前記第1信号の振幅が第2振幅値未満となるように前記可変利得手段の利得を制御する制御手段とを備え、前記第2振幅値は前記第1振幅値よりも大きく、前記第2振幅値と前記第1振幅値との差分を最大のクリップ量として許容することを特徴とする。
本発明によれば、可変利得手段において入力信号の振幅を調整して得られた第1信号の振幅を制限する。したがって、入力信号の振幅が増大しても第1信号の振幅は第2振幅値未満となるから、振幅制限手段において振幅が制限されて失われる信号の大きさ(クリップ量)には、一定の限界があり、クリップ量は第2振幅値と第1振幅値との差分で与えられる。よって、第2振幅値と第1振幅値とを適切に設定することによって、入力信号の振幅の増大に伴って、出力信号の波形が矩形波に近づくことを抑制することができる。この結果、増幅器の後段に接続される機器の破壊を防止するとともに、印加電力を大幅に低減できると共に、ある程度の過大入力を許容することができる。
上述した増幅器において、増幅手段は、オペアンプを用いて、第2信号を増幅する負帰還増幅回路を備え、制御手段は、第1信号の振幅が第2振幅値以上となる場合を検知して、第1信号の振幅が第2振幅値未満となるように可変利得手段の利得を制御するとともに、オペアンプの正相入力端子と逆相入力端子との間の電位差と基準電位とを比較し、その比較結果に基づいて負帰還増幅回路の出力信号にクリップが発生したことを検知して、当該クリップが発生しないように可変利得手段の利得を制御することが好ましい。
ここで、負帰還増幅回路が通常に動作している場合(クリップが生じていない場合)、負帰還増幅回路の出力信号は、オペアンプの電源電位の範囲内の値となる。そして、増幅器に入力される入力信号は、負帰還増幅回路の出力信号がオペアンプの電源電位の範囲内に収まるような値に設定されるのが通常である。しかしながら、例えばオペアンプの電源電位を供給する電池(例えばバッテリーなど)が負帰還増幅回路内に内蔵される構成においては、電池が劣化することにより、オペアンプの電源電位の範囲が、想定された範囲よりも狭くなってしまい、意図せずクリップが発生してしまう場合がある。
上述の構成においては、制御手段は、オペアンプの正相入力端子と逆相入力端子との間の電位差と基準電位との比較結果に基づいてクリップが発生したことを検知し、当該クリップが発生しないように可変利得手段の利得を制御するから、上述のように意図せずクリップが発生した場合であっても、クリップが発生したことを検知して当該クリップが発生しないように調整することができる。
また、オペアンプの正相入力端子と逆相入力端子との間の電位差と基準電位とを比較することで、過大入力を定量的に把握することができるようになり、あらかじめ設定された程度の過大入力まではクリップの発生を許容するような態様とすることもできる。この態様によれば、音量感を損なうことなく、過度の過大入力を防止することが可能となる。
さらに、基準電位を調整することで、所定の程度の過大入力によるクリップを検出した場合に、そのクリップが発生しないように調整することもできる。
上述した増幅器において、前記振幅制限手段は、前記第1信号の振幅中心の電位を第1基準電位とした場合に、前記第2信号の電位が、前記第1基準電位から第1電圧だけ高電位の第1電位を超えて高くならないように前記第2信号の振幅を制限する高電位側制限部と、前記第2信号の電位が、前記第1基準電位から前記第1電圧だけ低電位の第2電位を超えて低くならないように前記第2信号の振幅を制限する低電位側制限部とを備え、前記第1振幅値は、前記第1電位と前記第2電位との電位差で与えられることが好ましい。
また、前記制御手段は、前記振幅制限手段が前記第2信号を出力する出力端子の電位を第2基準電位とした場合に、前記第2基準電位より第2電圧だけ高い第3電位と前記第1信号の電位と比較して、前記第1信号の電位が前記第3電位より高い場合に検出信号を有効とする第1比較部と、前記第2基準電位より第2電圧だけ低い第4電位と前記第1信号の電位と比較して、前記第1信号の電位が前記第4電位より低い場合に前記検出信号を有効とする第2比較部と、前記検出信号を積分する積分部とを備え、前記積分部の出力信号を前記制御信号として前記可変利得手段に供給する、ことが好ましい。
また、前記積分手段は、前記比較手段の出力信号の立ち上がり時と立ち下がり時とで時定数が異なることが好ましい。この場合には、帰還系の安定度を確保することができる。
この場合、積分手段は、比較手段の出力信号の立ち上がり時と立ち下がり時とで時定数を異ならせるようにしてもよく、特に、立ち上がり時の時定数が立ち下がり時の時定数より小さいことが望ましい。これにより、過度の過大入力を防止するために比較的速めのアタックタイムと、緩やかに戻すために遅めのリリースタイムとを実現することができる。
<1.第1実施形態>
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の増幅器の構成を示すブロック図である。本図に示すように、入力信号Vinを増幅して出力信号VOとして出力する増幅器100は、反転型の負帰還増幅回路20、入力信号Vinを必要に応じて減衰させる電圧制御減衰器30(VCA:Voltage Controlled Attenuator)、VCA30を制御する制御電圧CTLを生成する制御回路40A、及びVCA30の出力信号Vsの振幅を制限する振幅制限回路50を備える。
入力信号Vin及びVCA30の出力信号Vsは、ともに接地電位GNDを振幅中心とする。負帰還増幅回路20は、入力抵抗R1、帰還抵抗R2、並びに±Vccの電源電位で動作するオペアンプ21を備える。
振幅制限回路50は、VCA30の出力信号Vs(第1信号)の振幅を制限して、振幅が所定範囲内になるように設定された出力信号Vp(第2信号)を出力する。振幅制限回路50の出力信号Vpは、負帰還増幅回路20および制御回路40Aへ供給される。図2に振幅制限回路50の構成を示す。振幅制限回路50は、入力抵抗R3、電源電位+Vccと-Vccとの間に直列に接続された、抵抗R4、電圧源51及び52、並びに抵抗R5を備える。電圧源51及び52は電圧Eを発生し、それらの接続点は接地されている。したがって、ノードN1の電位は+EとなりノードN2の電位は−E1となる。なお、抵抗R4及びR5はバイアス抵抗として機能する。
また、ノードN1の電位+Eはボルテージフォロア53を介してダイオードD1のカソードに供給される一方、ノードN2の電位−Eはボルテージフォロア54を介してダイオードD2のアノードに供給される。ダイオードD1及びD2の降下電圧をVfとすると、ノードPの電位Vpは式(1)に示す範囲内に制限される。
Vf+E1≧Vp≧−Vf−E1……式(1)
ここで、ダイオードD1は、ノードPの電位VpがVf+Eを超えて高電位になるとオン状態となり、ダイオードD2はノードPの電位Vpが−Vf−Eを超えて低電位になるとオン状態となる。
すなわち、ダイオードD1、ボルテージフォロア53、電圧源51、及び抵抗R4は、ノードPの電位Vp(第2信号)が、接地電位GND(中心電位)からVf+Eだけ高電位を超えて高くならないようにノードPの振幅を制限する高電位側制限部として機能する。一方、ダイオードD2、ボルテージフォロア54、電圧源52、及び抵抗R5は、ノードPの電位(第2信号)が、接地電位GND(中心電位)からVf+Eだけ低電位の−Vf−E1を超えて低くならないようにノードPの振幅を制限する低電位側制限部として機能する。
そして、振幅制限回路50は、Vf+E(第1電位)と−Vf−E(第2電位)との電位差(Vf+E)×2を第1振幅値としたとき、VCA30の出力信号Vsの振幅が第1振幅値以下となる出力信号Vpを生成する。
図3に、制御回路40Aの回路構成を示す。制御回路40Aは、比較部41とローパスフィルタ42とを備える。比較部41は、電圧VLを発生する電圧源411及び412、コンパレータ413及び414、並びにオア回路415を備える。電圧源411の低電位側端子と電圧源412の高電位側端子は、ノードPと接続され、電位Vpが供給される。また、電圧源411の高電位側端子はコンパレータ413の負入力端子に接続される一方、電圧源412の低電位側端子はコンパレータ414の正入力端子に接続される。このため、コンパレータ413の負入力端子には、Vp+VLの電位が入力され、コンパレータ414の正入力端子には、Vp−VLの電位が入力される。
よって、VCA30の出力信号VsがVp+VLを上回ると、コンパレータ413の出力信号Vc1はハイレベルとなり、VCA30の出力信号VsがVp−VLを下回ると、コンパレータ413の出力信号Vc2はハイレベルとなる。オア回路415は出力信号Vc1と出力信号Vc2の論理和を演算して出力信号Vcを生成する。出力信号Vcは、VCA30の出力信号VsがVp+VLを上回るか、あるいは、出力信号VsがVp−VLを下回ると、ハイレベルとなる。
すなわち、(Vp+VL)×2=(Vf+E+VL)×2を第2振幅値としたとき、比較部41は、VCA30の出力信号Vsの振幅が第2振幅値以上となる場合に、出力信号Vcをハイレベル(有効)としている。
次に、比較部41の出力信号Vcは、ローパスフィルタ42(積分回路)に供給される。ローパスフィルタ42は、帰還系の安定度確保のために設けられており、アタックタイムおよびリリースタイムを個別に調整できるようになっている。すなわち、抵抗R7を抵抗R6より十分大きくすることで、出力信号Vcの立ち上がり時には抵抗R6とコンデンサC1の時定数で定まるアタックタイムが適用され、出力信号Vcの立ち下がり時には、ダイオードD3により抵抗R6に電流が流れないため、抵抗R7とコンデンサC1の時定数で定まるリリースタイムが適用されることになる。一般的には、立ち上がり時の時定数を立ち下がり時の時手数より短く設定することで、過度の過大入力を防止するために比較的速めのアタックタイムと、緩やかに戻すために遅めのリリースタイムとを実現することが望ましい。これにより、制御回路40Aは、VCA30の出力信号Vsの振幅が第2振幅値(Vp+VL)×2未満となるようにVCA30を制御する。
次に、増幅器100の動作について説明する。入力信号Vinの振幅が増加して、その正のピーク値が図4に示すようにVL+(E+Vf)を上回ったとする。この場合、比較部41の出力信号Vcはハイレベルとなり、VCA30に供給される制御電圧CTLが大きくなる。すると、VCA30の減衰量が増加し、図4に示すようにVCA30の出力信号Vsの正ピーク値がVL+(E+Vf)となる。
出力信号Vsは、図5に示すように振幅制限回路50において、E+Vfのレベルでクリップされる。このようにして振幅が制限された出力信号Vsは、振幅制限回路50の出力信号Vpとなって負帰還増幅回路20へ供給される。これによって、負帰還増幅回路20の振幅が過大となり、後段の機器に損傷を与えるのを防ぐことができる。さらに、増幅器100によれば、クリップ量を一定に保つことができるといった利点がある。
この利点について比較例を挙げながら具体的に説明する。ここでは、図6に示すように図1に示す増幅器100から、VCA30と制御回路40Aとを除いて、入力信号Vinを負帰還増幅回路20に供給する構成を比較例として想定する。入力信号Vinとして図7に示すVin1、Vin2、Vin3が供給されると、振幅制限回路50によって、正のピークは電位E+Vfによって制限される。出力信号Voは、図7に示すクリップされた波形をR2/R1倍したものであるから、入力信号Vinの振幅が大きくなると、出力信号Voの波形は次第に矩形波に近づく。そして、完全に矩形波になった場合は、正弦波の場合と比較して、電力が2倍となる。
これに対して本実施形態では、VCA30を用いて入力信号Vinをクリップすることなく減衰させた後に、振幅制限回路50によって振幅を制限するので、図5に示すように入力信号Vinの振幅が増加してもクリップ量は最大でVLとなる。したがって、VLの大きさを適切に設定することによって、通常は2倍に至る後段の機器への印加電力を概ね1倍近辺の印加電力に低減でき、後段の機器が過大入力によって破壊することを防止できる。
ここで、VL=0とすれば、クリップ量も「0」となる。しかしながら、クリップ量を「0」にすると音量感に欠け迫力のない再生音になってしまう。一方、人間の聴覚上、クリップが発生したとしても、ある程度の歪までの状態は必ずしも不快には感じない。そこで、本実施形態では、あらかじめ設定された程度の過大入力まではクリップの発生を許容している。つまり、最大のクリップ量としてVLを見込んでいる。これにより、臨場感のある音を再生することが可能となる。
<2.第2実施形態>
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。図8は、第2実施形態に係る増幅器200のブロック図である。増幅器200は、制御回路40Aの替わりに制御回路40Bを採用した点、オペアンプ21の負入力端子の電位Viを制御回路40Bに供給する点を除いて、図1に示す第1実施形態の増幅器100と同様に構成されている。
図9に制御回路40Bの構成を示す。制御回路40Bが図3に示す制御回路40Aと相違するのは、比較部41の替わりに比較部43を採用する点である。比較部43は、コンパレータ416を備える点、及び3入力のオア回路417を用いる点を除いて、比較部41と同様に構成されている。
コンパレータ416の正入力端子には、オペアンプ21の負入力端子の電位Viが供給され、その負入力端子には図示せぬ電圧源より基準電位Vrefが供給される。したがって、電位Viが基準電位Vrefを上回ると、コンパレータ416の出力信号Vc3がハイレベルとなる。この結果、制御電圧CTLが増加し、VCA30の減衰量が増加するようにフィードバック制御が実行される。
ここで、増幅器200の負帰還増幅回路20を再掲した図10を参照して、本実施形態の考え方について説明する。一般に、反転型の負帰還増幅回路20では、オペアンプ21の利得をAとして、次の関係が成り立つ。
Figure 0005228840

したがって、通常の負帰還増幅回路として使用している状態での入出力利得は、以下に示すとおりとなる。なお、通常の負帰還増幅回路として使用している状態とは、出力Voが±Vcc内の範囲にあり、クリップが生じていない状態である。
Figure 0005228840

また、
Figure 0005228840

が得られる。ここで、利得Aが十分に大きければ、
Figure 0005228840

と見なすことができる。また、通常の負帰還増幅回路として使用している状態において、オペアンプ21の正入力端子と負入力端子とは同電位のイマジナリショート状態にあり、正入力端子は接地電位GNDに接続されているため、Viは0とすることができる。
次に、電位Vpが過大になり、負帰還増幅回路20でクリップが生じた状態を考える。なお、ここでは簡単のため正方向に過大になったとする。クリップが生じると、オペアンプ21の出力電位Voは、ほぼ電源電位の−Vccと等しくなる。この状態ではイマジナリショートは成り立たず、負入力端子の電位Viは、出力電位Vo(=−Vcc)と電位Vpとの差を抵抗R1と抵抗R2で分圧した値に応じた値となる。すなわち、
Figure 0005228840

が成り立つ。ただし、クリップ時の出力信号Voの電位が、電源電位−Vccに満たない仕様のオペアンプを用いている場合には、−Vccに代えて、クリップ時の出力信号Voの電位を用いてViを算出するようにする。もちろん実験的にViを求めるようにしてもよい。
図11は、電位Vpと、出力信号Voと、負入力端子の電位Viとの関係を示す図である。本図の例では、時刻t1までは、クリップは生じずに通常の負帰還増幅が行われる。このため、オペアンプ21の正入力端子と負入力端子との間でイマジナリショートが成立し、負入力端子電位Viは、ほぼ0となっている。また、出力電位Voは、電位Vpを反転して増幅している。
時刻t1からt2にかけて電位Vpの振幅が過大となり、出力信号Voは、−Vccでクリップする。この期間はイマジナリショートが成り立たず、[数5]の関係が適用されるため、負入力端子の電位Viは、電位Vpに応じたものとなる。すなわち、負入力端子の電位Viを検知することで、出力信号Voがクリップしたことを検出することが可能となる。
このとき、[数5]を変形すると、
Figure 0005228840

が得られる。抵抗R1と抵抗R2および電源電位Vccは定数であるから、クリップ発生時において、負入力端子に生じた電位Viは、電位Vpに比例することになる。
より具体的な値を用いてさらに説明する。例えば、R1:1kΩ、R2:10kΩの増幅率10倍の負帰還増幅回路20を例にする。ここで、オペアンプ21の利得Aを80dB(10000倍)とし、電源電位±Vccを±10Vとする。
増幅率10倍で、電源電位が±10Vであるから、クリップさせずに通常の負帰還増幅回路として使用する場合の最大の入力信号Vsは1Vとなる。この場合は、[数3]が適用されるため、
Figure 0005228840

となる。すなわち、イマジナリショートが成り立っているため、負入力端子の電位Viは1mv以下となり、ほぼ0と見なすことができる。
次に、電位Vpとして10%の過大入力となるVp=1.1Vを供給してクリップを生じさせると、[数5]が適用されるため、
Figure 0005228840

となる。すなわち、10%の過大入力によりクリップが生じると、負入力端子の電位Viは、クリップが生じていない場合と比較して約90倍の大きさとなる。同様に、20%、30%、40%、50%の過大入力の場合の負入力端子の電位Viを求めると、図12に示すように、それぞれ181.82mV、272.73mV、363.64mV、454.55mVが得られる。本図からも明らかなように、クリップ発生時において過大入力の程度と負入力端子電位Viとは線形の関係となり、負入力端子の電位Viから、過大入力の程度を定量的に把握することができる。
図9に戻って、上述の具体値と同様の条件下で、コンパレータ416を±90.9mvで動作するように設定すると、すなわち、Vref=90.9mvに設定すると、10%の過大入力によりクリップが生じたことを検出することができる。このコンパレータ416の出力信号Vc3に基づいてVCA30を制御して、入力信号Vinを減衰させると、10%の過大入力まではクリップを許容し、10%以上の過大入力で入力信号Vinを減衰させる増幅器が得られることになる。同様に、コンパレータ416の動作電位、すなわち、基準電位Vrefを調整することで、20%、30%、40%、50%の過大入力により発生したクリップも検出することができ、所定の程度の過大入力によるクリップを検出した場合に、VCA30を動作させて、入力信号Vinを減衰させるようにする。
つまり、本実施形態では、過大入力を定量的に把握することができるようになり、あらかじめ設定された程度の過大入力まではクリップの発生を許容するようにしている。このような制御を行なっているのは、視聴を行なったところ、人間の聴覚上、クリップが発生したとしても、ある程度の歪までの状態は必ずしも不快には感じないことがわかったためである。この結果、本実施形態では、音量感を損なうことなく、過度の過大入力を防止することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、入力信号の減衰装置として、電圧制御減衰器30を用いたが、本発明はこれに限られず、例えば、抵抗分割方式による電子ボリューム等を用いるようにしてもよい。要は、入力信号の振幅を調整して出力する可変利得手段であればよい。また、本発明は、増幅器の動作モードとして、A級、AB級、D級等に依らず種々の動作モードに適用することができる。また、クリップ発生時に生じる負入力端子の電位Viを検出するコンパレータ416は、正負用に個別に設けるようにしてもよい。
また、前述したように、負帰還増幅回路20が通常に動作している場合(クリップが生じていない場合)、負帰還増幅回路20の出力信号Voは、オペアンプ21の電源電位の範囲内(-Vcc〜+Vcc)にある。そして、入力信号Vinは、出力信号Voが±Vccの範囲に収まるように設定されるのが通常である。しかしながら、例えばオペアンプ21の電源電位Vccを供給する電池(例えばバッテリーなど)が負帰還増幅回路21内に内蔵される構成においては、当該電池が劣化することにより、オペアンプ21の電源電位の範囲が、想定された範囲よりも狭くなってしまい、意図せずクリップが発生してしまう場合がある。
本実施形態によれば、意図せずクリップが発生した場合であっても、クリップが発生したことを検知して当該クリップが発生しないように調整することができる。なお、上述した実施形態では、オペアンプ21の正入力端子の電位が0V(接地電位)であるため、負入力端子の電位ViがVi>0のとき、イマジナリーショートの関係が崩れ、クリップが発生したことを検知できるが、より一般的には、オペアンプの正入力端子と負入力端子との間の電位差が0Vを超えたとき、クリップが発生したことを検知できる。すなわち、制御回路40Bは、オペアンプの正入力端子と負入力端子との間の電位差を検出し、検出した電位差と基準電位Vrefとをコンパレータ416で比較すればよい。
また、上述した実施形態では、負帰還増幅回路20として反転増幅器を用いて構成したが、これをオペアンプを用いた正転増幅器で構成してもよいことは勿論である。この場合には、振幅制限回路50の出力信号Vpがオペアンプの正入力端子に供給され、オペアンプの負入力端子と接地電位GNDとの間に抵抗R1を設け、オペアンプの負入力端子と出力端子との間に抵抗R2を設ければよい。この場合にも、上述した実施形態と同様にクリップが発生するのは、イマジナリーショートの関係が崩れるときである。
したがって、オペアンプの正入力端子と負入力端子との間の電位差を監視することによって、クリップを検知することができる。この点は、上述した実施形態と同様である。そこで、オペアンプの正入力端子と負入力端子との間の電位差を検出し、検出した電位差と基準電位Vrefとをコンパレータ416で比較すればよい。なお、基準電位Vrefを0Vとする場合には、コンパレータ416の一方の入力端子とオペアンプの正入力端子とを接続し、コンパレータ416の他方の入力端子とオペアンプの負入力端子とを接続すればよい。
第1実施形態の増幅器の構成を示す回路図である。 同実施形態に用いる振幅制限回路の構成を示す回路図である。 同実施形態に用いる制御回路の構成を示す回路図である。 同実施形態の増幅器の動作を説明するための波形図である。 同実施形態の増幅器の動作を説明するための波形図である。 比較例の構成を示す回路図である。 比較例の問題点を説明するための波形図である。 第2実施形態の増幅器の構成を示す回路図である。 同実施形態に用いる制御回路の構成を示す回路図である。 増幅器の負帰還増幅回路を再掲した図である。 電位Vpと、出力信号Voと、負入力端子の電位Viとの関係を示す図である。 過大入力の程度と負入力端子の電位Viとの関係を示す図である。
符号の説明
100,200…増幅器、20…負帰還増幅回路、21…オペアンプ、30…電圧制御減衰器(VCA)、40A,40B…制御回路、50…振幅制限回路。

Claims (6)

  1. 入力信号の振幅を調整して第1信号を出力する可変利得手段と、
    前記第1信号の振幅を制限して振幅が第1振幅値以下となるように設定された第2信号を出力する振幅制限手段と、
    前記第2信号を増幅して出力信号として出力する増幅手段と、
    前記第1信号の振幅が第2振幅値以上となる場合を検知して、前記第1信号の振幅が第2振幅値未満となるように前記可変利得手段の利得を制御する制御手段とを備え、
    前記第2振幅値は前記第1振幅値よりも大きく、前記第2振幅値と前記第1振幅値との差分を最大のクリップ量として許容する、
    ことを特徴とする増幅器。
  2. 前記増幅手段は、オペアンプを用いて、前記第2信号を増幅する負帰還増幅回路を備え、
    前記制御手段は、
    前記第1信号の振幅が前記第2振幅値以上となる場合を検知して、前記第1信号の振幅が前記第2振幅値未満となるように前記可変利得手段の利得を制御するとともに、前記オペアンプの正相入力端子と逆相入力端子との間の電位差と基準電位とを比較し、その比較結果に基づいて前記負帰還増幅回路の出力信号にクリップが発生したことを検知して、当該クリップが発生しないように前記可変利得手段の利得を制御することを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
  3. 前記振幅制限手段は、
    前記第1信号の振幅中心の電位を第1基準電位とした場合に、
    前記第2信号の電位が、前記第1基準電位から第1電圧だけ高電位の第1電位を超えて高くならないように前記第2信号の振幅を制限する高電位側制限部と、
    前記第2信号の電位が、前記第1基準電位から前記第1電圧だけ低電位の第2電位を超えて低くならないように前記第2信号の振幅を制限する低電位側制限部とを備え、
    前記第1振幅値は、前記第1電位と前記第2電位との電位差で与えられる、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の増幅器。
  4. 前記制御手段は、
    前記振幅制限手段が前記第2信号を出力する出力端子の電位を第2基準電位とした場合に、
    前記第2基準電位より第2電圧だけ高い第3電位と前記第1信号の電位と比較して、前記第1信号の電位が前記第3電位より高い場合に検出信号を有効とする第1比較部と、
    前記第2基準電位より第2電圧だけ低い第4電位と前記第1信号の電位と比較して、前記第1信号の電位が前記第4電位より低い場合に前記検出信号を有効とする第2比較部と、
    前記検出信号を積分する積分部とを備え、
    前記積分部の出力信号を制御信号として前記可変利得手段に供給する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の増幅器。
  5. 前記積分手段は、前記比較手段の出力信号の立ち上がり時と立ち下がり時とで時定数が異なることを特徴とする請求項4に記載の増幅器。
  6. 前記立ち上がり時の時定数は前記立ち下がり時の時定数より小さいことを特徴とする請求項5に記載の増幅器。
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