JP5225558B2 - 熱伝導性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
特許文献1には、PBT、PEEK等の熱可塑性樹脂と、窒化アルミニウム等の無機繊維及び無機粉末とを含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、特定のブロック共重合体又は水素添加ブロック共重合体と、ゴム用軟化剤と、水酸化マグネシウム等の熱伝導材とを含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、マトリックス樹脂中に窒化アルミニウム焼結体粉末等からなるフィラーが分散するとともに、融点が500℃以下の低融点金属又は共晶合金によって網目状に形成された金属網を介して上記フィラーが相互に連続的に溶着されてなる高熱伝導性複合体が開示されている。
特許文献4には、非球形塊状の黒鉛粒子と、樹脂と、を含む導電性組成物が開示されている。
特許文献5には、熱可塑性樹脂と、70%以上の粒子のアスペクト比が3以下である黒鉛粉末とを含む導電樹脂組成物が開示されている。
1.〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子とが配合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕を100質量部とした場合に、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量が10〜1,000質量部であり、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、並びに、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体を水素添加して得られた水素添加重合体、から選ばれた少なくとも1種のゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
2.上記黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である上記1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
3.上記黒鉛粒子〔B〕の粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80の比D80/D20が2〜12である上記1又は2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
4.更に、〔C〕アスペクト比が3以下であり、重量平均粒子径が10〜70μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子が、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量を100質量部とした場合に、70質量部以下配合されてなる上記1乃至3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
5.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記ゴム強化樹脂及び上記オレフィン系樹脂を含み、該ゴム強化樹脂は、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体からなる非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂、又は、上記水素添加重合体からなる非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂、であり、且つ、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の配合量が、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及び該オレフィン系樹脂の合計に対して、5〜80質量%である上記1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
6.更に、難燃剤を含有し、該難燃剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、1〜30質量部である上記1乃至5のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
7.更に、酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部である上記1乃至6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
8.熱伝導率が7W/m・K以上である上記1乃至7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
9.100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上である上記1乃至8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物。
10.上記1乃至9のいずれかに記載の熱伝導性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である場合には、特に熱伝導性に優れる。
更に、他の特定の黒鉛粒子〔C〕を含有する場合には、成形品の熱伝導率が、成形時の組成物の流れ方向及びその垂直方向において差が小さくなり、更に熱伝導性に優れる。
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、特定のゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、並びにポリエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種を含むので、目的、用途等に応じた、硬度等の異なる成形品に好適であり、熱伝導率が7W/m・K以上である成形品を得ることができる。
また、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記ゴム強化樹脂を含む場合には、100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上である成形品を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂〔A〕が、エチレン・α−オレフィン系共重合体を用いて得られたゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含む場合には、シャルピー衝撃強さが4kJ/m2以上であり、硬度が50以上であり、曲げ歪みが4〜6%の成形品を得ることができる。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
本発明の熱伝導性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、〔A〕後述の熱可塑性樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子(以下、「成分〔B〕」ともいう。)とが配合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕を100質量部とした場合に、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量が10〜1,000質量部である。
この成分〔A〕は、ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、並びに、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体を水素添加して得られた水素添加重合体、から選ばれた少なくとも1種のゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種である。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、3,3−ジメチルブテン−1、ヘプテン−1、メチルヘキセン−1、ジメチルペンテン−1、トリメチルブテン−1、エチルペンテン−1オクテン−1、プロピルペンテン−1等が挙げられる。
また、上記非共役ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン等の脂環式ジエン化合物等が挙げられる。
また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとしては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、より好ましくはスチレンである。
[1]P−Q
[2]P−Q−P
[3]P−Q−R
[4]P−Q1−Q2
(Q1は、共役ジエン系化合物よりなる重合体ブロック、又は、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量が20%以上であるブロック、Q2は、共役ジエン系化合物よりなる重合体ブロック、又は、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量が20%未満であるブロックである。)
[5]Q
[6]P/Q
[7]P−P/Q
[8]P−P/Q−R
[9]P−P/Q−P
[10]Q2−Q1−Q2(Q1及びQ2は、上記と同様である。)
[11]R−Q
[12]R−Q−R
[13]R−P/Q−R
[14]R−P−Q
また、上記水素添加前重合体における共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量は、好ましくは10%以上、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは30〜60%である。このビニル結合含量が10%未満では、水添後の構造がポリエチレンに近くなり、組成物とした場合に衝撃強度が低下することがある。一方、60%を超えると水添後はゴム的性質を失うため、やはり衝撃強度が低下することがある。
即ち、重合体ブロックPが、芳香族ビニル化合物よりなる単位を90質量%以上含む重合体ブロックであり、重合体ブロックQ1が、ポリブタジエンからなり且つ1,2−ビニル結合含量が30〜70%である重合体ブロックであり、Q2が、ポリブタジエンからなり且つ1,2−ビニル結合含量が20%未満の重合体ブロックであるブロック共重合体であって、該共重合体中の重合体ブロックPの含量が10〜50質量%、重合体ブロックQ1の含量が30〜80質量%、及び、重合体ブロックQ2の含量が5〜30質量%である。尚、このブロック共重合体は、カップリングされた共重合体を用いることができ、その場合は、P−Q1−Q2が、カップリング剤残基を介して上記の重合体ブロックP、Q1及びQ2のうち少なくとも1つと結合しているブロック共重合体とすることができる。
即ち、上記[7]の構成を含む共重合体において、共役ジエン系化合物よりなる単位、及び、芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合が、それぞれ、50〜95質量%及び50〜5質量%であり、重合体ブロックPを構成する芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有量が、共重合体を構成する単位の全量に対して3〜40質量%であり、且つ、重合体ブロックP/Qにおけるビニル結合含量が15〜80質量%であるブロック共重合体とすることができる。
また、上記[8]の構成を含む共重合体において、共役ジエン系化合物よりなる単位、及び、芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合が、それぞれ、50〜95質量%及び50〜5質量%であり、重合体ブロックP及びRを構成する芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有量の合計が、共重合体を構成する単位の全量に対して3〜40質量%であり、且つ、重合体ブロックP/Qにおけるビニル結合含量が15〜80質量%であるブロック共重合体とすることができる。
上記水素添加重合体の製造方法は、公知の方法を適用することができるが、例えば、特開平1−275605号公報等に開示された方法がある。
従って、上記ビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物の1種以上及びシアン化ビニル化合物の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上と、シアン化ビニル化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(1)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物。
(2)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物。
(3)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(4)(メタ)アクリル酸エステル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(5)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(6)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(7)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(8)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合することにより、製造することができる。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体及びビニル系単量体は、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、ビニル系単量体を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
また、ゴム質重合体及びビニル系単量体の各使用量については、ゴム質重合体100質量部に対し、ビニル系単量体の使用量は、通常、25〜1,900質量部、より好ましくは60〜560質量部である。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
尚、複数のゴム強化ビニル系樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化ビニル系樹脂(A1)とすることができる。
溶液重合及び塊状重合によるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトンに溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
尚、上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
上記成分〔A〕として、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂を併用する場合、これらの使用割合は、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂の合計を100質量%とすると、それぞれ、好ましくは30〜90質量%及び70〜10質量%であり、より好ましくは40〜85質量%及び60〜15質量%、更に好ましくは50〜80質量%及び50〜20質量%である。但し、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂の合計を100質量%とする。
尚、上記成分〔A〕として、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂を併用した組成物において、ゴム質重合体の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。
炭素数2〜10のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1及び4−メチルペンテン−1が好ましい。
上記オレフィン系樹脂が共重合体である場合、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等の、上記α−オレフィンの2種以上を用いてなる共重合体、上記α−オレフィンと、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンとからなる共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記オレフィン系樹脂が共重合体である場合には、ランダム共重合体であってよいし、ブロック(タイプの)共重合体であってもよい。
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、及び、プロピレン単位を含む(共)重合体が好ましい。プロピレン単位を含む(共)重合体を構成するプロピレン単位の含有量は、全単位の合計量に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは55〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
上記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系単独重合体(ホモタイプ)の場合、曲げモジュラス及び硬度に優れる傾向があり、ブロックタイプの共重合体の場合、耐衝撃性及び柔軟性に優れる傾向がある。
また、上記オレフィン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210に準拠)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、かかるメルトフローレートに相当する分子量を備える樹脂が好ましい。
上記オレフィン系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂を用いる場合には、金型を用いて成形品とする場合に、離型性に優れる。また、得られる成形品の耐衝撃性に優れる。
上記成分〔A〕がオレフィン系樹脂である場合には、従来のジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合に比べ、成形加工性及び離型性、並びに、耐衝撃性及び曲げモジュラスに優れる一方、熱伝導性及び耐熱性が低下し、曲げ歪みが高くなる傾向にあった。そこで、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を組み合わせることにより、耐衝撃性、曲げモジュラス、曲げ歪み及び硬度のバランスに優れた成形品を得ることができた。
上記ゴム強化樹脂としては、上記のように、ゴム質重合体として、非ジエン系重合体を用いてなるゴム強化ビニル系樹脂(非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂)を含むことが好ましい。
上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を併用する場合、これらの使用割合は、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂の合計を100質量%とすると、それぞれ、好ましくは20〜95質量%及び80〜5質量%であり、より好ましくは30〜85質量%及び70〜15質量%、更に好ましくは40〜80質量%及び60〜20質量%である。上記範囲とすることにより、耐衝撃性、曲げモジュラス、曲げ歪み及び硬度のバランスに優れた成形品を得ることができる。
尚、上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を併用した組成物において、ゴム質重合体の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。
本発明の組成物は、成分〔A〕の種類、成分〔A〕に対する成分〔B〕の配合量等によって、熱伝導率及び機械的性質が大きく変化するため、目的とする性能の選択性が広い。上記のように、上記成分〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、このゴム強化樹脂が非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合には、機械的性質の調節が容易であり、且つ、各性質のバランスを高度なものとすることができる。上記組み合わせによると、熱伝導率が8〜10W/m・Kであり、シャルピー衝撃強さが4kJ/m2以上であり、硬度が50以上であり、曲げモジュラスが3500MPa以上であり、曲げ歪みが4〜6%の成形品を得ることができる。このような性能の成形品は、例えば、オレフィン系樹脂20〜30質量%、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂20〜30質量%及び成分〔B〕40〜60質量%からなる組成物(全体を100質量%とする)によって、得ることができる。尚、上記成分〔A〕がオレフィン系樹脂である場合、及び、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合のいずれにおいても、上記のような性能を得ることは、難しい傾向にある。
また、アミノカルボン酸としては、アミノカプロン酸、アミノエナン酸、アミノカプリル酸、アミノベルゴン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
上記成分〔A〕として、ポリアミド系樹脂を用いる場合には、得られる成形品の耐熱性に優れる。
更に、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のような、オキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体を用いることもできる。
上記酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、必要に応じて、長鎖型のジオール化合物(ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)等を用いることもできる。
上記ジオール成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔A〕として、ポリエステル系樹脂を用いる場合には、得られる成形品の耐熱性に優れる。
この成分〔B〕は、特定の物性を有する黒鉛粒子である。即ち、アスペクト比が10〜20、好ましくは12〜18であり、重量平均粒子径が10〜200μm、好ましくは15〜180μmであり、固定炭素量が98質量%以上、好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。各物性が、上記範囲にあることにより、熱伝導性が一段と優れる。
上記アスペクト比は、電子顕微鏡等により縦横の各長さを測定し、算出することができる。重量平均粒子径は、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。尚、本発明に係る「重量平均粒子径」は、粒度分布を測定して得られた、累積重量が50%であるときの粒子径(D50)を意味する。また、固定炭素量は、JIS M8511に準じて測定することができる。
天然黒鉛としては、レーザーラマン測定により、1360cm−1あたりの波長においてバンドが認められないものであれば、特に限定されず、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛及び土状黒鉛が挙げられる。これらのうち、鱗片状黒鉛が好ましい。
[1]重量平均粒子径は限定されないが、アスペクト比が10〜15(好ましくは11〜14)の黒鉛粒子と、アスペクト比が15を超えて20以下(好ましくは16〜19)の黒鉛粒子との組み合わせ。
アスペクト比が限定されない例は、下記の通りである。
[2]重量平均粒子径が10〜50μm(好ましくは15〜40μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が50μmを超えて200μm以下(好ましくは70〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
[3]重量平均粒子径が10〜100μm(好ましくは15〜80μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が100μmを超えて200μm以下(好ましくは120〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
[4]重量平均粒子径が10〜150μm(好ましくは15〜130μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下(好ましくは150〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
[5]重量平均粒子径が10〜50μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が50μmを超えて120μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が120μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
[6]重量平均粒子径が10〜80μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が80μmを超えて150μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
[7]重量平均粒子径が10〜120μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が120μmを超えて150μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
また、上記成分〔B〕の含有量が多量である組成物とする場合、上記成分〔B〕の配合量は、好ましくは100〜1,000質量部、より好ましくは150〜900質量部、更に好ましくは230〜570質量部である。
以下、この成分〔C〕及び該成分〔C〕を含有する組成物について説明する。
この成分〔C〕は、特定の物性を有する黒鉛粒子である。即ち、アスペクト比が3以下、好ましくは1〜3であり、重量平均粒子径が10〜70μm、好ましくは15〜60μmであり、固定炭素量が98質量%以上、好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。各物性が、上記範囲にあることにより、熱伝導性が一段と優れ、特に、成形品とした場合に、その成形方法による流れ方向及び直角方向において、熱伝導率の差が小さくなる。
尚、上記成分〔C〕について、粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80の比D80/D20は、特に限定されない。
天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛及び土状黒鉛が挙げられる。これらのうち、鱗片状黒鉛が好ましい。
上記成分〔C〕としては、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
上記充填剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは2〜20質量部である。
上記熱安定剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。
上記酸化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。
上記紫外線吸収剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、本発明の組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、難燃性を改良するために、シリコーンオイルを配合することができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
上記可塑剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
上記抗菌剤の含有量は、上記成分〔A〕100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
近年、パソコン、ワープロ、テレビゲーム等のコンピュータを利用した電子機器等が身近なものとなっている。これらの電子機器は高速の信号を利用しているため、電磁波の影響を受け易く、またこれらの機器自身も電磁波を発生している。電波の利用範囲が拡大するにつれて、電磁環境が悪化し、電磁波同士が互いに干渉したり、ある機器には有効なものでも他方の機器には障害となったりする。更に、様々な原因で発生する不要電磁波もまた電磁環境を汚染すると言われている。本発明の組成物は、上記のような電磁環境の汚染に対して良好な環境を確保するために、外部との電磁波の往来を遮断させる成形品に好適である。
成形温度及び金型温度は、成分〔A〕の種類によって選択される。成分〔A〕が、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を含有する場合には、成形時のシリンダー温度は、通常、220〜300℃、好ましくは230〜280℃である。金型温度は、通常、70〜90℃である。成分〔A〕が、上記オレフィン系樹脂を含む場合には、成形時のシリンダー温度は、通常、200〜280℃、好ましくは210〜250℃である。金型温度は、通常、30〜50℃である。成分〔A〕が、上記ポリアミド系樹脂を含む場合には、成形時のシリンダー温度は、通常、230〜300℃、好ましくは250〜280℃である。金型温度は、通常、70〜90℃である。成分〔A〕が、上記ポリエステル系樹脂を含む場合には、成形時のシリンダー温度は、通常、230〜300℃、好ましくは250〜280℃である。金型温度は、通常、70〜90℃である。尚、成形品が大型である場合には、一般に、シリンダー温度を高めに設定して製造される。
熱伝導性樹脂組成物の製造に用いた原料成分を以下に示す。尚、ゴム質重合体の重量平均粒子径;黒鉛粒子の重量平均粒子径並びに累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80の比D80/D20については、日機装社製のマイクロトラック粒度分布測定装置「FRA型」を用いて測定した。黒鉛粒子のアスペクト比は、電子顕微鏡(SEM)による画像から、粒子100個の最長径及び最短径の各平均値を用いて算出した。また、黒鉛粒子の固定炭素量は、JIS M8511に準じて測定した。
1−1.成分〔A〕
[1]ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)
ジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径280nm及びトルエン不溶分80%のポリブタジエンゴム粒子を含むラテックスの存在下に、スチレン及びアクリロニトリルを乳化重合させて得られた、ポリブタジエンゴム41.5%、スチレン単位量42.7%及びアクリロニトリル単位量15.8%からなるジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を用いた。
この樹脂のグラフト率は55%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.45dl/gである。
[2]アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−2)
スチレン単位量74.5%及びアクリロニトリル単位量25.5%からなる共重合体を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.60dl/gである。
[3]ポリカーボネート樹脂(A−3)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。GPCによる粘度平均分子量は22,000である。
[4]ブロックタイプポリプロピレン(A−4)
日本ポリプロ社製の「NOVATEC BC6C」(商品名)を用いた。
[5]ホモタイプポリプロピレン(A−5)
日本ポリプロ社製の「NOVATEC EA9」(商品名)を用いた。
[6]ブロックタイプポリブロピレン(A−6)
日本ポリプロ社製の「ノバテックBC6DR」(商品名)を用いた。
[7]高密度ポリエチレン(A−7)
日本ポリエチレン社製の「NOVATEC HJ360」(商品名)を用いた。
[8]ポリアミド樹脂(A−8)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「NOVAMID 1013J」(商品名)を用いた。
[9]ポリブチレンテレフタレート(A−9)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「NOVADURAN 5007」(商品名)を用いた。
まず、1,3−ブタジエンを用いてなる共重合体(水素添加前重合体)を合成し、その後、水素添加により、水素添加重合体(非ジエン系ゴム質重合体)を製造した。次いで、この水素添加重合体を用いて、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−10)を製造した。以上の工程を以下に示す。
(1)容積50リットルのオートクレーブに、脱気及び脱水したシクロヘキサン25kg及び1,3−ブタジエン800gを仕込み、n−ブチルリチウム1.0gを添加して、温度50℃で等温重合を行った。重合転化率がほぼ100%となった後、テトラヒドロフラン30g、1,3−ブタジエン2400g及びスチレン200gを添加し、50℃から80℃への昇温重合を行った。
重合転化率がほぼ100%となった後、更にスチレン600gを添加し、15分間重合を行い、P−Q1−Q2型トリブロック共重合体(水素添加前重合体)を得た。
一方、別の容器で、チタノセンジクロライド15gをシクロヘキサン240ミリリットル中に分散させ、その後、トリエチルアルミニウム20gを添加し、室温で反応させた。次いで、これにより得られた、見かけ上均一な溶液(暗青色)を、上記P−Q1−Q2型トリブロック共重合体を含む重合体溶液に添加し、温度50℃、及び、水素ガスの圧力50kgf/cm2の条件下、水素化反応を2時間行った。
その後、メタノール及び塩酸を用いて脱溶媒し、2,6−ジ−tert−ブチルカテコールを添加して、減圧乾燥することにより、水素添加されたP−Q1−Q2型トリブロック共重合体(水素添加重合体)を得た(水素添加率97%)。この水素添加重合体の分子特性を表1に示す。
反応開始から6時間経過した後、1時間かけて120℃まで昇温し、更に2時間反応させて終了した。重合転化率は97%であった。
次いで、反応系を100℃まで冷却し、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2部を添加した。その後、反応生成物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により溶媒及び未反応物を留去するとともに、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−10)を得た。グラフト率は35%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.30dl/gであった。
リボン型翼を備えたステンレス製オートクレーブの内部を窒素ガスにより置換した後、このオートクレーブに、窒素気流中、予め、JSR社製EPDM「EP82」(商品名)32部をトルエンに均一に溶解した溶液と、スチレン44部と、アクリロニトリル24部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、トルエン(全量で120部)とを仕込み、撹拌しながら昇温した。混合物の温度が50℃に達した時点で、ベンゾイルパーオキサイド0.5部及びジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、更に昇温した。反応系を温度80℃で保持しながら、重合反応を進めた。
反応開始から6時間経過した後、1時間かけて120℃まで昇温し、更に2時間反応させて終了した。重合転化率は97%であった。
次いで、反応系を100℃まで冷却し、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2部を添加した。その後、反応生成物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により溶媒及び未反応物を留去するとともに、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−11)を得た。グラフト率は60%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.40dl/gであった。
(1)黒鉛粒子(B−1)
中越黒鉛工業所社製の「HF−150A」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は161μm、固定炭素量は99.8%である。また、D80/D20は2.7である。
(2)黒鉛粒子(B−2)
中越黒鉛工業所社製の「CBR」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は18.7μm、固定炭素量は99.7%である。また、D80/D20は4.3である。
(1)黒鉛粒子(C1−1)
中越黒鉛工業所社製の「WF−015」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は1、重量平均粒子径は16.8μm、固定炭素量は99.7%である。また、D80/D20は1.7である。
(2)黒鉛粒子(C1−2)
中越黒鉛工業所社製の「WF−025」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は1、重量平均粒子径は28.8μm、固定炭素量は99.8%である。また、D80/D20は1.1である。
(3)黒鉛粒子(C1−3)
西村黒鉛社製の「PC−L50」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は1、重量平均粒子径は50μm、固定炭素量は99.0%である。また、D80/D20は1.5である。
(4)黒鉛粒子(C1−4)
中越黒鉛工業所社製の「HF−150AA」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は5、重量平均粒子径は35μm、固定炭素量は99.8%である。また、D80/D20は3.7である。
中越黒鉛工業所社製の「S−87」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は15μm、固定炭素量は85.0%である。また、D80/D20は3.4である。
(6)黒鉛粒子(C2−2)
西村黒鉛社製の「PB−99」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は5、重量平均粒子径は14.7μm、固定炭素量は99.0%である。また、D80/D20は5.2である。
(7)黒鉛粒子(C2−3)
西村黒鉛社製の「PA−99」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は5、重量平均粒子径は22.2μm、固定炭素量は99.0%である。また、D80/D20は4である。
(1)芳香族縮合リン酸エステル
大八化学社製の1,3−フェニレンビスジキシレニルホスフェート「PX−200」(商品名)を用いた。
(2)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
ヘキストジャパン社製の「Hostaflon」(商品名)を用いた。
上記難燃剤による難燃性を改良するため、信越化学工業社製のジメチルシリコーンオイル「KF−96H−12,500cs」(商品名)を用いた。
1−6.酸化防止剤
(1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(H−1)
旭電化工業社製のテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]メタン「アデカスタブAO−60」(商品名)を用いた。
(2)ホスファイト系酸化防止剤(H−2)
旭電化工業社製のサイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト「アデカスタブPEP−36」(商品名)を用いた。
(1)成形加工性
新潟鉄工所社製の射出成形機「NN30B型」による、縦55mm、横80mm及び厚さ2.4mmの板状試験片の成形状況から、成形加工性を下記基準で判定した。尚、試験片の成形条件は、成分〔A〕として(A−1)を用いる場合、シリンダー温度が280℃、金型温度が70℃、射出圧が80%であり、(A−4)〜(A−7)を用いる場合、シリンダー温度が250℃、金型温度が50℃、射出圧が20%であり、(A−8)及び(A−9)を用いる場合、シリンダー温度が280℃、金型温度が70℃、射出圧が80%であり、(A−4)〜(A−6)のいずれかと、(A−10)又は(A−11)とを併用する場合、シリンダー温度が250℃、金型温度が60℃、射出圧が20%である。
○;射出成形が可能であった。
△;射出成形が可能であるが、表面外観が一部不良であった。
×;ショートショットとなり、成形できなかった。
(2)熱伝導率
熱伝導率は、試験片成形時の組成物の流動方向に対して測定した値(以下、「熱伝導率(I)」という。)、及び、該流動方向に対して垂直の厚み方向で測定した値(以下、「熱伝導率(II)」という。)を示した。
熱伝導率(I)は、下記方法により測定した。
DYNATECH R&D社製の定常熱流計「TCHM−DV型」を用い、60℃における熱伝導率を測定した。試験片は、内径50mm及び厚さ5.5mmの円板である。測定に際し、試験片の上下面の温度差を正確に測定するため、図1に示すように、CC(銅−コンスタンタン)熱電対を試験片中央の上下面にホットプレスにより埋め込んだ。ホットプレスを用いることにより、試験片の平坦性を高めるとともに、試験片と熱電対との密着性を高めることができる。熱伝導率の測定は、熱流量を安定させるため、1時間、所定温度に保った後に行った。
また、熱伝導率(II)は、アルバック理工社製のレーザーフラッシュ法熱定数測定装置「TR−7000R型」を用い、25℃における熱伝導率を測定した。試験片は、内径10mm及び厚さ1.5mmの円板である。
アドバンテスト社製のスペクトラムアナライザ「R3361A型」及び「TR17301型」を用い、100MHzの周波数における電磁波の反射性を測定し、電磁シールド性を評価した。試験片は、150mm×150mm×3mmの平板である。
抵抗値により、下記の3種の装置を使い分けて測定した。試験片は、内径100mm、厚さ2mmの円板であり、抵抗値の単位はΩである。
1×103Ω以下; ダイアインスツルメンツ社製の抵抗率計「ロレスタGP MCP−T600型」。
1×104Ω〜1×1012Ω; ダイアインスツルメンツ社製の抵抗率計「ハイレスタUP MCP−HT450型」。
1×108Ω〜1×1016Ω; Agilent Technologies社製のハイ・レジスタンス・メータ「4339B」。
(5)難燃性
UL94規格に準じ、垂直燃焼試験を行った。試験片は、長さ127mm、幅13mm及び厚さ2mmの平板である。
ISO179に準じて、シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を測定した。単位は、kJ/m2である。
(7)曲げモジュラス及び曲げ歪み
ISO178に準じて、島津製作所社製の精密万能試験機「オートグラフAG−10kNI型」を用い、試験片のスパン間隔64mm及び曲げ速度1mm/分の条件で3点式曲げ強度測定法により測定した。試験片のサイズは、127mm×10mm×4mmである。
(8)硬度
ISO2039に準じて、ロックウェル硬さ(Rスケール)を測定した。
(9)熱変形温度
ISO75に準じて測定した。荷重は、1.80MPaである。
3−1.ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物の製造及び評価
実施例1〜12及び比較例1〜8
上記ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)を含む各原料成分を、表2及び表3の配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した。その後、二軸押出機を用いて溶融混練(シリンダー温度240〜280℃)し、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を製造した。その後、このペレットを、日本製鋼社製の射出成形機「J100E型」に供給して、シリンダー温度240〜280℃、金型温度70℃、射出速度60mm/秒、及び、保圧力70MPaの条件で、評価項目に準じた、所定形状及び大きさの評価用試験片を作製し、各種評価を行った。その結果を表2及び表3に示す。
比較例1、5、6及び8は、成分〔B〕の配合量が、本発明の範囲外で少ないため、熱伝導率(I)及び(II)、電磁シールド性並びに表面固有抵抗に劣っている。比較例2は、成分〔B〕の配合量が、本発明の範囲外で多いため、成形加工性が劣っている。比較例3は、黒鉛粒子〔C〕の固定炭素量が低いため、熱伝導率(I)及び(II)、電磁シールド性並びに表面固有抵抗に劣っている。比較例4及び7は、黒鉛粒子〔C〕のアスペクト比が小さいため、熱伝導率(I)及び(II)、電磁シールド性並びに表面固有抵抗に劣っている。
一方、実施例1〜12は、成形加工性、熱伝導性及び電磁シールド性に優れている。また、難燃剤を配合した実施例12は、V−0を達成した。
実施例13〜23
上記のポリプロピレン、ポリエチレン等の原料成分を、表4の配合割合で用い、実施例1と同様にして、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を製造した。その後、射出成形法により評価用試験片を作製し、評価した。その結果を表4に示す。
尚、実施例13〜23において、組成物製造のための混練時のシリンダー温度は210〜240℃であり、成形条件は、シリンダー温度が210〜240℃、金型温度が30℃、射出速度が30mm/秒、保圧力が50MPaである。
上記のポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート等を、表5の配合割合で用い、実施例1と同様にして、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を製造した。その後、射出成形法により評価用試験片を作製し、評価した。その結果を表5に示す。
尚、実施例24〜27において、混練時のシリンダー温度は250〜280℃であり、成形条件は、シリンダー温度が250〜280℃、金型温度が70℃、射出速度が60mm/秒、保圧力が70MPaである。
上記のポリプロピレン、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂等を、表6の配合割合で用い、実施例1と同様にして、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を製造した。その後、射出成形法により評価用試験片を作製し、評価した。その結果を表6に示す。
尚、実施例28〜36において、混練時のシリンダー温度は210〜240℃であり、成形条件は、シリンダー温度が210〜240℃、金型温度が30℃、射出速度が30mm/秒、保圧力が50MPaである。
実施例37
上記のジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−2)等を、表6の配合割合で用い、実施例1と同様にして、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を製造した。その後、射出成形法により評価用試験片を作製し、評価した。その結果を表6に示す。
尚、混練時のシリンダー温度は240〜280℃であり、成形条件は、シリンダー温度が240〜280℃、金型温度が70℃、射出速度が60mm/秒、保圧力が70MPaである。
2;銅線
3;コンスタンタン線
4;熱電対溶接部。
Claims (10)
- 〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子とが配合されてなり、上記熱可塑性樹脂〔A〕を100質量部とした場合に、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量が10〜1,000質量部であり、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、並びに、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物の共重合体を水素添加して得られた水素添加重合体、から選ばれた少なくとも1種のゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
- 上記黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 上記黒鉛粒子〔B〕の粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80の比D80/D20が2〜12である請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 更に、〔C〕アスペクト比が3以下であり、重量平均粒子径が10〜70μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子が、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量を100質量部とした場合に、70質量部以下配合されてなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 上記熱可塑性樹脂〔A〕が、上記ゴム強化樹脂及び上記オレフィン系樹脂を含み、該ゴム強化樹脂は、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体からなる非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂、又は、上記水素添加重合体からなる非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂、であり、且つ、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の配合量が、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及び該オレフィン系樹脂の合計に対して、5〜80質量%である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 更に、難燃剤を含有し、該難燃剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、1〜30質量部である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 更に、酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕の含有量を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 熱伝導率が7W/m・K以上である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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