JPWO2014024743A1 - 絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、{ポリカーボネート系樹脂(A)}/{前記熱可塑性樹脂(B)}の体積比が50/50〜95/5の割合であり、{熱伝導性グラファイト(C)}/{ポリカーボネート系樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計}の比率が体積比で1/99〜50/50であり、特定式で表される熱伝導性グラファイト(C)のポリカーボネート系樹脂(A)への分配比と、特定式で表されるポリカーボネート系樹脂(A)の存在比の比率(分配比/存在比)が0.4以下であり、少なくともポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成する、連続相構造及び非連続相構造を有することを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品等の射出成形品等に好適に使用することができる。

Description

本発明は、耐衝撃性、高熱伝導性、及び電気絶縁性を兼ね備え、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性樹脂及びフィラーを使用した絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物に関する。
ポリカーボネート系樹脂は、耐衝撃性、耐熱性等に優れた熱可塑性樹脂であり、これらの特徴を生かして機械、自動車、電気、電子分野における部品等に広く用いられている。しかしながら、成形加工性、耐薬品性等に劣るという欠点がある。そこで、ポリカーボネート系樹脂の長所を活かしながら、欠点を補う目的で、ポリカーボネート系樹脂とその他熱可塑性樹脂とをアロイ化する技術が種々提案されている。
一方で、熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、LEDなどの次世代照明など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。例えば特許文献1では、ポリカーボネート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂等とのアロイに、炭素繊維等の導電性無機物を配合してなる熱伝導性樹脂組成物が報告されている。このように無機物を配合して高熱伝導性樹脂組成物を得る際には、通常は炭素繊維等の導電性物質を添加する方法が用いられるが、このような方法では樹脂組成物が導電性を示してしまうため、電子デバイス材料等の電気絶縁性が要求される用途では利用が制限される。
一方で、絶縁熱伝導性無機化合物を大量に添加するような方法で高熱伝導性樹脂組成物を得ようとすると、通常高熱伝導性無機物を50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。しかしながら、これほど大量に高熱伝導性無機物を熱可塑性樹脂中に配合すると、熱可塑性樹脂の成形加工性が急激に低下してしまい、複雑な形状へ射出成形することが困難となる場合がある。また、大量の無機物が樹脂の衝撃強度などの実用物性を極端に低下させ非常に脆い材料となってしまうため、大型成形品などへの適用が困難となり、用途が限られてしまうという問題があった。
このような課題を解決するために、特許文献2では、ポリアミド樹脂を海構造とし、ポリフェニレンエーテル樹脂を島構造とした複合樹脂組成物のうち、海相であるポリアミド樹脂中により多く絶縁熱伝導性無機化合物を分散させることで分散密度が高くなり、より熱伝導性に優れた樹脂組成物が得られることが示されている。特許文献3では、柔軟相を有するブロック共重合ポリマーの柔軟ブロック相に絶縁熱伝導性無機化合物を選択的に分散させた高熱伝導性材料が報告されている。特許文献4では、極性基と非極性基とを有するブロック共重合ポリマーの極性基ブロック相に絶縁熱伝導性無機化合物を選択的に分散させた高熱伝導性材料が報告されている。特許文献5では、熱可塑性ポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂と、熱可塑性ポリエステル系樹脂とからなるポリマーアロイの熱可塑性ポリエステル系樹脂相中に絶縁熱伝導性無機化合物を選択的に分散させた高熱伝導性材料が、特許文献6では、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された1種以上の熱可塑性樹脂とポリアミド系樹脂とからなるポリマーアロイにおいて、絶縁熱伝導性無機化合物をポリアミド系樹脂中に分散させた高熱伝導性材料が、それぞれ示されている。この特許文献5及び6では、海相を形成する樹脂に前記無機化合物を集中させる技術が使用されている。
特開2005−298552号公報 特開平9−59511号公報 特開2004−71385号公報 特開2007−314667号公報 国際公開第2007/066711号パンフレット 特開2007−327010号公報
上記のような特定の場所にのみ絶縁熱伝導性無機化合物を配置し絶縁高熱伝導性樹脂組成物を得る方法は、高価な熱伝導性無機化合物の使用量を少なくしながら良好な熱伝導性を有する高熱伝導性材料を得ることができ、熱伝導性無機化合物の使用量を低減できることにより材料コストが低く抑えられ、熱伝導性無機化合物の混合を低濃度にできることで材料の成形加工性も維持でき、しかも複雑な形状の成形が可能な電気絶縁性高熱伝導性材料を得ることができ有用である。しかしながら絶縁熱伝導性無機化合物自体の熱伝導性は導電性熱伝導性無機化合物と比べて低い値にとどまってしまうため、得られる樹脂組成物の熱伝導率が低くなってしまうという問題点は、上記文献に於いても依然として解決できていない課題である。
本発明は上記現状に鑑み、ポリカーボネート系樹脂が本来有する、優れた耐衝撃性などの機械的特性をほとんど低下させることなく、高熱伝導性及び高電気絶縁性を達成した、樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリカーボネート系樹脂を海構造(以下、連続相構造ともいう)とし、ポリカーボネート系樹脂以外の熱可塑性樹脂を島構造(以下、非連続相構造ともいう)とする海/島構造のポリマーアロイにおいて、熱伝導性グラファイトなどの導電性高熱伝導性無機化合物をポリカーボネート系樹脂以外の相(島相)内に優先的に配置することにより、熱伝導性グラファイトを少量使用するだけで樹脂組成物の熱伝導率を大幅に向上させうる一方で導電性の増加は抑制できること、また高熱伝導性無機化合物の添加量を少なくしても熱伝導率を高くできる結果、得られた組成物の機械的物性や成形加工性をほとんど犠牲にせず、よって樹脂組成物全体としては電気絶縁性を維持しうることなどを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明の第1は、ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、
1){ポリカーボネート系樹脂(A)}/{前記熱可塑性樹脂(B)}の体積比が50/50〜95/5の割合であり、
2)ポリカーボネート系樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計に対する熱伝導性グラファイト(C)の比率 (C)/{(A)+(B)}が、体積比で1/99〜50/50であり、
3)下記式で表される熱伝導性グラファイト(C)のポリカーボネート系樹脂(A)への分配比と、下記式で表されるポリカーボネート系樹脂(A)の存在比の比率(分配比/存在比)が0.4以下であり、
分配比=(ポリカーボネート系樹脂(A)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)
存在比=ポリカーボネート系樹脂(A)の体積/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)の体積)
4)少なくともポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成する、連続相構造及び非連続相構造を有することを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第2は、ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、
1){ポリカーボネート系樹脂(A)}/{前記熱可塑性樹脂(B)}の体積比が50/50〜95/5の割合であり、
2)ポリカーボネート系樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計に対する熱伝導性グラファイト(C)の比率 (C)/{(A)+(B)}が、体積比で1/99〜50/50であり、
3)熱伝導性グラファイト(C)がポリカーボネート系樹脂(A)の相中に存在している比率が、ポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.4以下であり、
4)ポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成しており、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)が連続相構造を形成していないことを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第3は、前記熱伝導性グラファイト(C)が、板状、鱗片状、又は球状であることを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第4は、前記熱伝導性グラファイト(C)の数平均粒子径が12μm以上5000μm以下であることを特徴とする、第1〜3のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第5は、前記熱可塑性樹脂(B)が、温度50〜350℃の範囲内に流動開始温度を有するものであることを特徴とする、第1〜4のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第6は、前記熱可塑性樹脂(B)が、オレフィン系熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、第1〜5のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第7は、前記熱可塑性樹脂(B)が、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいるビニル系共重合体であることを特徴とする、第1〜6のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第8は、前記熱可塑性樹脂(B)が、オレフィン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体よりなる熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、第1〜7のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第9は、前記熱可塑性樹脂(B)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、第1〜8のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第10は、前記熱可塑性樹脂(B)が、エラストマー成分を含有する樹脂であることを特徴とする、第1〜9のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第11は、前記ポリカーボネート系樹脂(A)の粘度平均分子量が18000以上であることを特徴とする、第1〜10のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第12は、前記熱伝導性グラファイト(C)の単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上であることを特徴とする、第1〜11のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第13は、前記熱伝導性グラファイト(C)の単体での面方向熱伝導率が700W/mK以上であることを特徴とする、第1〜12のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第14は、熱伝導性グラファイト(C)が、芳香族ポリイミドフィルムを2500℃以上の温度で熱処理して得られる、単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上の高熱伝導性合成グラファイトであることを特徴とする、第1〜13のいずれかに記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物である。
本発明の第15は、ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、アイゾット衝撃強度が5kJ/m2以上であり、熱伝導率が0.6W/mK以上であり、体積固有抵抗値が1×107Ωcm以上であることを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂成形体である。
本発明によれば、海/島構造の島側に熱伝導性グラファイトを優先的に存在させているため、該グラファイトが高導電性であっても組成物全体では導電性の増加を抑制でき、しかも少量のグラファイトでも熱伝導率を大幅に向上させることができかつ海ポリマー(ポリカーボネート系樹脂)の優れた物性を損なうことがない。そのため、従来では大量の高熱伝導性無機化合物が必要であった高熱伝導樹脂組成物分野で、無機化合物の使用量を大幅に低減でき、樹脂組成物の耐衝撃性を劇的に改善させることができ、かつ安価に高絶縁性及び高熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
このようにして得られた複合材料(樹脂組成物)は、樹脂フィルム、樹脂成形品、樹脂発泡体、塗料やコーティング剤などのさまざまな形態で、電子材料、照明部材、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明で得られた高分子材料(樹脂組成物)は、現在広く用いられている射出成形機や押出成形機等の一般的な熱可塑性プラスチック用成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する製品への成形も容易である。特に成形加工性、耐衝撃性、耐薬品性、熱伝導性などの重要な諸特性のバランスに優れていることから、発熱源を内部に有するディスプレーやコンピューターなどの筐体用樹脂、照明部材用樹脂、モバイル電子機器用樹脂、特に携帯電話の筐体用樹脂として非常に有用である。
本発明の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(以下、単に熱可塑性樹脂組成物と称する場合がある)は、ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)(以下、単に熱可塑性樹脂(B)と称する場合がある)、及び熱伝導性グラファイト(C)の三成分を必須成分として含有するものである。本発明では、ポリカーボネート系樹脂(A)で海構造を形成し、少なくとも1つの前記熱可塑性樹脂(B)で島構造を形成させ、熱伝導性グラファイト(C)を島構造に集中させることにより、ポリカーボネート系樹脂(A)の耐衝撃性を低下させることなく、熱伝導性グラファイト(C)の熱伝導率を発現させると同時に、通常は導電性を示す熱伝導性グラファイト(C)が島構造に隔離されて絶縁性を発現させることを特徴とする。なお、本発明において、「絶縁性」とは、成形体の体積固有抵抗値が1×107Ωcm以上を示すことを意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合するポリカーボネート系樹脂(A)は、2価以上のフェノール化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルとを公知の方法で重合させて得られるポリカーボネートである。
2価のフェノール化合物としては特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−ナフチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−エチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジヒドロキシジアリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン等のジヒドロキシジアリールシクロアルカン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン等のジヒドロキシジアリールケトン類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4′−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のジヒドロキシアリールフルオレン類;ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類;1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、ビスフェノールAなどのビスフェノール類が好適である。炭酸ジエステルとしては特に限定されず、例えば、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネート系樹脂(A)は、直鎖状のポリカーボネートに限定されず、分岐状のポリカーボネートであってもよい。この分岐状ポリカーボネートを得るために用いられる分岐剤としては特に限定されず、例えば、フロログルシン、メリト酸、トリメリト酸、トリメリト酸クロリド、無水トリメリト酸、没食子酸、没食子酸n−プロピル、プロトカテク酸、ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物、α−レゾルシン酸、β−レゾルシン酸、レゾルシンアルデヒド、イサチンビス(o−クレゾール)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4′−トリヒドロキシフェニルエーテル、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシフェニルエーテル、2,4,4′−トリヒドロキシジフェニル−2−プロパン、2,2′−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4′−トリヒドロキシジフェニルメタン、1−〔α−メチル−α−(4′−ジヒドロキシフェニル)エチル〕−3−〔α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、1−〔α−メチル−α−(4′−ジヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α′,α′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン、α,α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス〔4,4−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル〕プロパン、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−5′−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン、ビス〔2−ヒドロキシ−3−(2′−ヒドロキシ−5′−イソプロピルベンジル)−5−メチルフェニル〕メタン、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、1,3−ビス(2′,4′−ジヒドロキシフェニルイソプロピル)ベンゼン、トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−アミル−s−トリアジン等が挙げられる。
場合によっては、ポリカーボネート系樹脂(A)は、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部とからなるポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体であってもよい。この際、ポリオルガノシロキサン部の重合度は5以上であることが好ましい。
更にポリカーボネート系樹脂(A)は、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の直鎖状脂肪族二価カルボン酸を共重合させることにより得られるポリカーボネート系共重合体であってもよい。
ポリカーボネート系樹脂(A)を重合する際に用いる末端停止剤としては、公知のものを各種使用することができる。具体的には、フェノール、p−クレゾール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、ノニルフェノール等の一価フェノール等が挙げられる。
難燃性を必要とする場合には、ポリカーボネート系樹脂(A)は、リン化合物とのポリカーボネート系共重合体であってもよいし、リン系化合物で末端封止したポリカーボネート系樹脂であってもよい。また、耐候性を高めるためには、ベンゾトリアゾール基を有する二価フェノールとのポリカーボネート系共重合体であってもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合されるポリカーボネート系樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜60000であることが好ましい。10000未満の場合、得られる樹脂組成物の強度や耐熱性等が不充分である場合が多い。一方60000を超えると、成形加工性が不充分である場合が多い。ポリカーボネート系樹脂(A)の粘度平均分子量は、耐衝撃性の観点から、前記範囲内で高いほど好ましく、より好ましくは15000〜45000であり、更に好ましくは18000〜35000であり、最も好ましくは18500〜28500である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂(A)は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは特に限定されない。例えば、モノマー単位が異なるもの、共重合モル比が異なるもの、分子量が異なるもの等を任意に組み合わせることができる。
本発明の熱可塑性樹脂(B)は、ポリカーボネート系樹脂と混合可能な任意の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。前記各樹脂には変性樹脂も含まれ、また前記各樹脂の単量体同士を共重合させた共重合体を熱可塑性樹脂(B)として用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でもポリカーボネート系樹脂とのアロイ化が容易であること、物性バランスに優れた樹脂組成物を製造しやすいことなどの観点から、オレフィン系熱可塑性樹脂、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂、及び液晶性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。なお具体例については後述するが、前記熱可塑性樹脂(B)は、耐衝撃性、靭性を向上させる観点から、エラストマー成分、例えばゴム状重合体を含有する樹脂であることも好ましい。
熱可塑性樹脂(B)のうち好ましい樹脂の一つである、オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ−1−ブテン;ポリイソブチレン;プロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体又はブロック共重合体;エチレンとプロピレンとジエンとのあらゆる比率でのエチレン/プロピレン/ジエン三元共重合体;ポリメチルペンテン;シクロペンタジエンとエチレン及び/又はプロピレンとの共重合体等の環状ポリオレフィン;エチレン又はプロピレンとのあらゆる比率でのビニル化合物等とのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましい。
また、極性基を有する不飽和カルボン酸単量体と相溶し易いという点から、極性基が導入されたポリオレフィン系樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン系樹脂の具体例としては、
(1)変性ポリオレフィン類、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリプロピレンなど、
(2)エチレン又はα−オレフィン/ビニル単量体共重合体、例えば、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体等のオレフィン/ハロゲン化ビニル共重合体;エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体等のオレフィン/アクリロニトリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体等のオレフィン/カルボン酸ビニル共重合体;エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体等のオレフィン/アクリルアミド共重合体;エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体等のオレフィン/酸共重合体;エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体等の第1のオレフィン/(メタ)アクリル共重合体;エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、又はエチレン/酢酸ビニル共重合体の鹸化物等のオレフィン/ビニル基含有酸共重合体;エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体等の第2のオレフィン/(メタ)アクリル共重合体;
(3)塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等の塩素化ポリオレフィン等が挙げられ、これらの極性基導入ポリオレフィン系樹脂は単独で使用しても良く、また2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、工業的規模で安価に製造できるという点からポリプロピレンが好ましい。
上述したポリオレフィン系樹脂のうち、オレフィン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂の双方の特性を併せ持つことから、オレフィン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体を特に好ましく用いることができる。中でも、少なくとも1種以上のオレフィン単位と1種以上の(メタ)アクリル酸グリシジルエステル単位とを含有する共重合体、あるいは少なくとも1種以上のオレフィン単位と1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位とを含有する共重合体を用いることが好ましい。
該共重合体は、一般的には1種以上のオレフィン単位と、1種以上の(メタ)アクリル系単位とを、ラジカル開始剤の存在下にラジカル重合することにより得られるが、重合方法はこれに限られるものではなく、一般的に知られている公知の種々の重合方法を用いて重合することができる。共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
該共重合体のオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどが挙げられる。これらオレフィンは1種または2種以上組み合わせて用いられる。該オレフィンで特に好ましくはエチレンである。
また、共重合体中の(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートなどが挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて用いられる。該(メタ)アクリル系単量体で特に好ましくは、グリシジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートである。
該共重合体のメルトインデックス(MI)の値は、190℃、2kg荷重条件(JIS K6730に準拠)において、好ましくは0.2〜1000g/10min、より好ましくは0.3〜500g/10min、さらに好ましくは0.5〜300g/10minである。MI値が0.2g/10min未満では、得られた組成物の成形加工性が低下する傾向があり、1000g/10minを超えると、得られた組成物の耐衝撃性改良効果が低下する傾向がある。
該共重合体中における、1種以上のオレフィン単位と1種以上の(メタ)アクリル系単位との共重合量は、該共重合体100重量%に対して1種以上の(メタ)アクリル系単量体単位が好ましくは0.1〜55重量%、より好ましくは1〜41重量%である。(メタ)アクリル系単量体単位が0.1重量%未満でも55重量%超でも、共重合体としての特性である相溶性と耐衝撃性とのバランスがとりにくくなる傾向がある。共重合体は、単独または共重合成分、MI値の異なるものを2種以上組み合わせて用いられる。
またオレフィン単位と(メタ)アクリル系単位以外に、他の成分が共重合されていても良い。好ましい共重合成分としては、酢酸ビニル単位、一酸化炭素単位等が挙げられる。
上述したポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて、他の樹脂又はゴムを本発明の効果を奏する範囲内で添加しても良い。
そのような他の樹脂又はゴムとしては、例えばポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1等のポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体等のエチレン又はα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等のエチレン又はα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体等のビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体等のビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)等の水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)等の水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体等のビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等のビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体等のビニル系共重合体等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂に対するこれら他の樹脂又はゴムの添加量は、この樹脂又はゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を奏する範囲内にあれば良いものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
また、これらポリオレフィン系樹脂(各種の添加材料を含む場合もある)は粒子状のものであってもペレット状のものであっても良く、その大きさや形は特に制限されるものではない。
熱可塑性樹脂(B)のうち好ましい樹脂の一つである、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂を用いる場合、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂は、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成されればよく、特に限定されるものではない。
スチレン系単量体としては例えば、スチレンの他、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン、ヒドロキシスチレン、アミノスチレン、シアノスチレン、ニトロスチレン、クロロメチルスチレン、アセトキシスチレン、p−ジメチルアミノメチルスチレン等が用いることができる。
また、本発明における(メタ)アクリル系単量体とは、メタアクリル系単量体とアクリル系単量体の双方を意味する。これらは多くの単量体が知られているが、それらを本発明に用いることができる。その中であえて具体的に例示すれば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が例示でき、好適に用いることができる。
スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂(例えばスチレン系樹脂)は、これら単量体を用いて合成されたものであればよく、例えばポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(HIPS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ゴム質重合体−アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。また、スチレン−ゴム質(ゴム状)重合体−アクリロニトリル共重合体としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・ジエン−スチレン)樹脂、AAS(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン)樹脂、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン)樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用することもできる。
さらに、これらのスチレンの一部、及び/又はアクリロニトリルの一部又は全部は、得られる樹脂が熱可塑性の特性を示す範囲において上記しているスチレンを除くスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体で置換されていてもよい。置換されるスチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体としてはα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸単量体等のスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体で置換されているものが、得られる樹脂が熱可塑性の特性を示す範囲において好ましく用いることができる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。
好ましくは、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、HIPS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、MB(メチルメタクリレート−ブタジエン)樹脂、イミド化ポリメチルメタクリレート樹脂等である。
より好ましくは、ABS樹脂あるいはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート樹脂あるいはMB(メチルメタクリレート−ブタジエン)樹脂、またはMBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン)樹脂である。中でもABS樹脂あるいはポリスチレン、ブタジエンで変性されていてもいなくてもよいメチルメタクリレート樹脂が好ましい。これら樹脂を用いるとポリカーボネート系樹脂(A)とのアロイ化が容易になる傾向がある。
スチレン系樹脂の製造法としては、特に制限はなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状−懸濁重合法等の通常の方法を用いることができる。
本発明で用いられるスチレン系樹脂は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、ポリカーボネート系樹脂(A)との相溶性、経済的観点などから、芳香族ビニル化合物40〜80重量%、シアン化ビニル化合物15〜50重量%、他の共重合可能なビニル系化合物0〜30重量%からなる共重合体(1)と、平均粒子径0.01〜5.0μmのゴム状重合体(2)30〜95重量%の存在下に、グラフト共重合可能なビニル系化合物(3)70〜5重量%をグラフト共重合して得られるグラフト共重合体(4)とからなる樹脂(特にABS系樹脂)が挙げられる。
前記グラフト共重合可能なビニル系化合物(3)としては、前記共重合体(1)と同様、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、他の共重合可能なビニル系化合物を用いることができる。これらは、いずれも単独又は2種以上の組み合わせで用いられる。ゴム状重合体が95重量%を超えると耐衝撃性、耐油性が低下する場合があり、30重量%未満では耐衝撃性が低下する場合がある。ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン等が挙げられる。
グラフト共重合体で使用されるゴム状重合体(2)には、ポリカーボネート系樹脂(A)の耐衝撃性や成形体外観の観点から、重量平均粒子径0.01〜5.0μmのものが好ましく用いられる。重量平均粒子径0.02〜2.0μmのものが特に好ましい。さらに、衝撃強度を向上する目的で、小粒子ゴム状重合体ラテックスを凝集肥大化させて好ましくは上記の重量平均粒子径としたゴム状重合体ラテックスを使用することができる。
小粒子ゴム状重合体ラテックスを凝集肥大化する方法としては、従来公知の方法、例えば酸性物質を添加する方法(特公昭42−3112号公報、特公昭55−19246号公報、特公平2−9601号公報、特開昭63−117005号公報、特開昭63−132903号公報、特開平7−157501号公報、特開平8−259777号公報)、酸基含有ラテックスを添加する方法(特開昭56−166201号公報、特開昭59−93701号公報、特開平1−126301号公報、特開平8−59704号公報、特開平9−217005号公報)等を採用することができ、特に制限はない。
前記共重合体(1)及びグラフト共重合体(4)とからなる樹脂は、例えば、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、及びそれらの組合せ、即ち乳化−懸濁重合、乳化−塊状重合などによって合成できる。乳化重合法を用いる場合には通常の方法が適用可能である。即ち、前記化合物を水性媒体中、ラジカル開始剤の存在下に反応させればよい。その際、前記化合物を混合物として使用しても、また必要に応じ、分割して使用してもよい。さらに、前記化合物の添加方法としては一度に全量仕込んでも、また逐次添加してもよく、特に制限されるものではない。
ラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の水溶性又は油溶性の過酸化物を例示することができ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。その他、重合促進剤、重合度調節剤、乳化剤も、公知の乳化重合法で使用されているものを適宜選択して使用してもよい。
乳化重合などのようにラテックスを形成しつつ重合する方法では、公知の方法を用いて、得られたラテックスから乾燥樹脂を得ればよい。その際、共重合体(1)及びグラフト共重合体(4)のラテックスを混合した後、乾燥樹脂を得てもよく、別々に樹脂を得て粉末状態で混合してもよい。ラテックスから樹脂を得る方法としては、例えばラテックスに塩酸、硫酸、酢酸等の酸、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩を加え、ラテックスを凝固したのち、脱水、乾燥する方法が用いられる。以上のようにして製造された共重合体とグラフト共重合体の混合樹脂はABS樹脂の特性を保持しながら、なおかつポリカーボネート系樹脂(A)との高い相溶性を発現できるものである。
熱可塑性樹脂(B)のうち好ましい樹脂の一つである、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、2価以上のカルボン酸化合物と、2価以上のアルコール及び/又はフェノール化合物とを公知の方法で重縮合することにより得られる熱可塑性ポリエステルである。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2価以上のカルボン酸化合物としては特に限定されず、例えば、炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等のフタル酸;ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の2価カルボン酸;トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸;これら2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸のエステル形成能を有する誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、取り扱い易さ、反応の容易さ、得られる樹脂組成物の物性等の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸又はナフタレンジカルボン酸が好ましい。
2価以上のアルコール及び/又はフェノール化合物としては特に限定されず、例えば、炭素数2〜15の脂肪族化合物、炭素数6〜20の脂環式化合物、又は炭素数6〜40の芳香族化合物のいずれかであってかつ分子内に2個以上の水酸基を有する化合物、これらの水酸基がエステル形成性基になった誘導体等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール、これらのエステル形成能を有する誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、取り扱い易さ、反応の容易さ、得られる樹脂組成物の物性等の観点から、エチレングリコール、ブタンジオール又はシクロヘキサンジメタノールが好ましい。
熱可塑性ポリエステル系樹脂は、上述のカルボン酸化合物並びにアルコール及び/又はフェノール化合物に加えて、所望の特性を損なわない範囲で、公知の共重合可能な化合物を共重合して得られたものであってもよい。このような共重合可能な化合物としては特に限定されず、例えば、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。具体的には、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸又はそのエステル形成能を有する誘導体等が挙げられる。その他にも、p−ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸又はそのエステル形成性誘導体、ε−カプロラクトン等の環状エステル等も挙げられる。
また熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ポリアルキレングリコール単位を高分子鎖中に一部共重合させることにより得られた熱可塑性ポリエステル系樹脂であってもよい。このようなポリアルキレングリコールとしては特に限定されず、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロック及び/又はランダム共重合体、ビスフェノールA共重合ポリエチレンオキシド付加重合体、同プロピレンオキシド付加重合体、同テトラヒドロフラン付加重合体、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
熱可塑性ポリエステル系樹脂における上述のような共重合成分の使用量としては、通常、20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
熱可塑性ポリエステル系樹脂は、得られる樹脂組成物の物性バランス(例えば成形加工性)に優れることから、アルキレンテレフタレート単位を80重量%以上含有するポリアルキレンテレフタレートであることが好ましい。より好ましくは同単位を85重量%以上、更に好ましくは90重量%以上含有するポリアルキレンテレフタレートである。
熱可塑性ポリエステル系樹脂は、フェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒中、25℃で測定したときの対数粘度(IV)が0.30〜2.00dl/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.30dl/g未満では、成形品の難燃性や機械的強度が不充分である場合が多く、2.00dl/gを超えると成形流動性が低下する傾向がある。より好ましくは0.40〜1.80dl/gであり、更に好ましくは0.50〜1.60dl/gであり、最も好ましくは0.55〜1.40dl/gである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、熱可塑性ポリエステル系樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、その組み合わせは特に限定されない。例えば、共重合成分やモル比が異なるもの、分子量が異なるもの等を任意に組み合わせることができる。
本発明において、前記熱可塑性樹脂(B)は、具体的にオレフィン系樹脂(例えば直鎖低密度ポリエチレン樹脂)とポリエチレンテレフタレート樹脂、スチレン系樹脂(例えばABS樹脂またはポリスチレン樹脂)、スチレン系樹脂(例えばMBS樹脂)とメタアクリル酸アルキルエステル樹脂(例えばPMMA樹脂)、スチレン系樹脂(例えばMBS樹脂)とポリエチレンテレフタレート樹脂、オレフィン・メタアクリル酸アルキルエステル共重合体(例えばエチルアクリレート含有量25重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体)とポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、スチレン系樹脂(例えばMBS樹脂)とポリエチレンテレフタレート樹脂、オレフィン系樹脂(例えば直鎖低密度ポリエチレン樹脂)とスチレン系樹脂(例えばMBS樹脂)とオレフィン・メタアクリル酸アルキルエステル共重合体(例えばエチルアクリレート含有量25重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体)とポリエチレンテレフタレート樹脂を例示することができる。
上記熱可塑性樹脂を2種以上で使用する場合、各樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂(B)がポリカーボネート系樹脂(A)において島構造を形成し、島構造に熱伝導性グラファイト(C)が優先的に集中するように調整すればよく、例えば主成分のポリエチレンテレフタレート樹脂またはPMMA樹脂の量は、熱可塑性樹脂(B)100重量%中、好ましくは60重量%以上、95重量%以下、より好ましくは65重量%以上、90重量%以下である。
海/島構造を形成する技術では、非晶構造かつ高粘度を呈し、比較的温度が高くても高粘度を呈するポリカーボネート系樹脂(A)が使用され、後述のようにポリカーボネート系樹脂(A)量を前記熱可塑性樹脂(B)量よりも多くする技術が採用されている。
前記熱可塑性樹脂(B)は、該熱可塑性樹脂(B)で島を形成し、かつこの島相中に熱伝導性グラファイト(C)を配分させる観点から、樹脂組成物の成形温度以下の所定温度の範囲に流動開始温度を有しているのが望ましい。熱可塑性樹脂(B)が成形温度以下に流動開始温度を有していると、成形温度まで加熱する際に熱可塑性樹脂(B)は低融点化する。これに対して、海相を形成するポリカーボネート系樹脂(A)は、通常、成形温度まで加熱しても高粘度を維持する性質を有しているため、成形温度では高粘度のポリカーボネート系樹脂(A)と低粘度の熱可塑性樹脂(B)が存在することになり、熱伝導性グラファイトは自然と低粘度の熱可塑性樹脂(B)側に優先的に分配される。上記所定温度とは、例えば、50〜350℃、好ましくは60〜300℃、さらに好ましくは70〜250℃である。本発明において、流動開始温度は上記樹脂(B)が溶融して流れだす温度であり、例えばJIS K 7210の規格を使用して測定されるものである。
なお熱可塑性樹脂(B)が前記流動開始温度を有さなくても、本発明の構造を達成できる。例えば熱可塑性樹脂(B)と熱伝導性グラファイト(C)を先に混ぜて微細ペレットを調製しておき、これをポリカーボネート系樹脂(A)と混ぜて、先の微細ペレットが島となる様に配合比や混合条件を制御すれば、島に熱伝導性グラファイト(C)が優先的に分配された本発明の海/島構造を達成できる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との比率[(A)/(B)]は、体積比で50/50〜95/5の割合である。50/50よりもポリカーボネート系樹脂(A)の割合が少ない場合は、耐衝撃性等が低下する傾向があり、95/5よりもポリカーボネート系樹脂(A)が多いと、得られる成形品の電気絶縁性が低下する傾向がある。体積比率は好ましく55/45〜92/8であり、より好ましくは60/40〜90/10であり、さらに好ましくは65/35〜87/13であり、最も好ましくは67/33〜85/15である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、樹脂組成物中のミクロ相分離構造を観察した際、ポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成しており、熱可塑性樹脂(B)が連続相構造を形成していないことが必要である。このような相構造を形成することにより、得られた樹脂組成物の衝撃強度が向上し、かつ導電性を有する熱伝導性グラファイト(C)を添加しても、組成物としては電気絶縁性を維持することが可能となる。なお、複数のポリカーボネート系を除く熱可塑性樹脂を含有する場合は、そのいずれかが非連続相構造(島構造)を形成し、この島相中に熱伝導性グラファイト(C)が優先的に分配されていればよい。
前記熱伝導性グラファイト(C)は、大部分がポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)の相中に存在していれば、一部は海相中に存在していてもよい。従って得られた組成物を電子顕微鏡などで観察すると、得られた写真では熱可塑性樹脂(B)は混合比よりも多くの割合を占めているように見える。例えば体積比で(A)/(B)/(C)=60/30/10にて混合し、(C)成分が全て(B)成分中に存在していると、見た目の体積比は(A)/{(B)+(C)}=60/40に見える。
しかしながら本発明で言う比率[(A)/(B)]は、(C)成分を除いた体積比率であるので、このような例の場合でも、[(A)/(B)]=67/33であると定義する。従って[(A)/(B)]の体積比は、両樹脂の混合比とほぼ同じ値となる。
本発明の樹脂組成物には、主に熱伝導性を付与させるために、熱伝導性グラファイト(C)が配合される。本発明で使用する熱伝導性グラファイトとしては、天然黒鉛、各種の人造黒鉛、合成黒鉛のいずれも利用することができる。グラファイトの形状については板状、鱗片状、球状のいずれでも良い。
天然黒鉛としては、土状黒鉛、鱗状黒鉛(塊状黒鉛とも称されるVein Graphite)、及び鱗片状黒鉛(Flake Graphite)のいずれを利用することもできる。上記例示した天然黒鉛の中では、鱗片状黒鉛が好適に使用できる。天然黒鉛の適用により、より高い熱伝導性と高い弾性率を得ることができる。
人造黒鉛は、無定形炭素を熱処理し不規則な配列の微小黒鉛結晶の配向を人工的に行わせたものであり、一般炭素材料に使用される人造黒鉛の他、キッシュ黒鉛、分解黒鉛、および熱分解黒鉛などを含む。一般炭素材料に使用される人造黒鉛は、通常石油コークスや石炭系ピッチコークスを主原料として黒鉛化処理により製造される。
熱伝導性グラファイト(C)の固定炭素量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは98重量%以上である。また、熱伝導性グラファイトの揮発分は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。熱伝導性グラファイトの表面は、本発明の組成物の特性を損なわない限りにおいて熱可塑性樹脂との親和性を増すために、表面処理、例えばエポキシ処理、ウレタン処理、シランカップリング処理、および酸化処理等を施してもよい。
単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上の高熱伝導性天然または合成グラファイトを使用することができるが、得られる樹脂組成物の熱伝導率をより高めたい場合には、熱伝導性グラファイト(C)として、単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上の高熱伝導性合成グラファイトよりなるものを用いるのが好ましい。このようなグラファイトは、例えば、芳香族ポリイミドフィルムを2500℃以上の温度で熱処理して得ることができる。
高熱伝導性天然または合成グラファイト単体での面方向熱伝導率が500W/mK未満では、組成物の熱伝導率を向上させる効果に劣る傾向がある。単体での面方向熱伝導率は、好ましくは700W/mK以上、さらに好ましくは800W/mK以上、特に好ましくは1000W/mK以上、最も好ましくは1200W/mK以上のものが用いられる。熱伝導性グラファイト(C)単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には2000W/mK以下、さらには1900W/mK以下のものが好ましく用いられる。
高熱伝導性合成グラファイトの原料となる芳香族ポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造される。
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法(1)−(5)が好ましい。
(1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
(2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
この好ましい1つの態様は、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマーを合成し、前記プレポリマーに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法である。
(3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いて、このプレポリマーに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
(4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
(5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
これらの中でも(2)、(3)に示すプレポリマーを経由する重合方法が好ましい。というのは、このポリイミドフィルムを熱処理することにより、結晶性が高く、密度および熱伝導性が優れたグラファイトを得やすくなるからである。また、規則正しく、制御されることで、芳香環の重なりが多くなり、低温の熱処理でもグラファイト化が進行しやすくなると推定される。また得られるグラファイトの熱伝導率を高めるために、イミド基含有量を増やすと、樹脂中の炭素比率が減り、黒鉛処理後の炭素化収率が減るが、プレポリマーを経由して合成されるポリイミドフィルムは、樹脂中の炭素比率を落とすことなく、複屈折を高めることが出来るために好ましい。炭素比率が高まるために、分解ガスの発生を抑えることができ、外観上優れたグラファイトフィルムが得られやすくなる。また芳香環の再配列を抑えることができ、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。
本発明において芳香族ポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
本発明において芳香族ポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
特に高熱伝導性のグラファイトを得るという観点から、本発明における芳香族ポリイミドフィルムの製造では、下記式(1)で表される酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
ここで、R1は、下記の式(2)〜式(14)に含まれる2価の有機基の群から選択されるいずれかである。
ここで、R2、R3、R4、およびR5の各々は−CH3、−Cl、−Br、−F、または−OCH3の群から選択されるいずれかであり得る。
上述の酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率の芳香族ポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
特に、酸二無水物におけるR1として式(2)〜式(14)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られる芳香族ポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、得られるグラファイトの熱伝導率が高くなるという観点から好ましい。さらに得られるグラファイトの熱伝導率を高くするためには、本発明における芳香族ポリイミドの合成に下記式(15)で表される酸二無水物(すなわち、式(1)及び式(9)の組み合わせ)を原料に用いればよい。
特に、2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する酸二無水物を原料に用いて得られる芳香族ポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直な性質を有する。その結果、この原料を用いることによって芳香族ポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることができる。
さらに複屈折を大きくするためには、本発明における芳香族ポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
また、本発明において芳香族ポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが全ジアミンに対して10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られる芳香族ポリイミドフィルムの複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚い芳香族ポリイミドフィルムを得るのが難しくなることがある。炭素比率が減り、分解ガスの発生量を減らすことができ、芳香環の再配列の必要が減り、外観、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができるという観点からは、4,4’−オキシジアニリンを全ジアミンに対して好ましくは10モル%以上、さらには30モル%以上、さらには50モル%以上、またさらには70モル%以上を使用するのが良い。
本発明において芳香族ポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(15)で表されるp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られる芳香族ポリイミドフィルムの複屈折が小さくなる傾向になる。
また、芳香族ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
次に、ポリイミドの製造方法には、ポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法を用いる。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものを用いると、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。ケミカルキュア法は、得られるフィルムの複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点から必要である。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを容器に接触させたり固定・保持したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
本発明の芳香族ポリイミドフィルムのグラファイト化は、炭素化と黒鉛化の2段階で行う。炭素化と黒鉛化は、別々に行っても良いし、連続的に行っても良い。
炭素化は、炭素分が主成分となる物質に変化させる過程のことを意味する。出発物質である芳香族ポリイミドフィルムを減圧下もしくは窒素などの不活性ガス中で予備加熱処理して炭素化を行う。この予備加熱は通常800〜1500℃、好ましくは850〜1350℃の温度で行われる。また、炭化の最高温度に達した時点で30分から1時間程度、最高温度のまま温度の保持を行っても良い。例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度の保持を行っても良い。昇温の段階では、芳香族ポリイミドフィルムの分子配向性が失われないように、フィルムの破損が起きない程度に膜面に垂直方向に圧力を加えてもよい。芳香族ポリイミドフィルムを分解温度で熱処理すると結合の開裂が起こり、分解成分は二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、水素等のガスとなって離脱し、約1000℃で熱処理されると、炭素が主成分の材料となる。
黒鉛化は、炭素質材料を熱処理し、芳香環が平面状に繋がったグラファイト層が多数積層した構造に変換させる過程のことを意味する。黒鉛化は、炭素化した芳香族ポリイミドフィルムを一度取り出した後、黒鉛化用の炉に移し変えてからおこなっても良いし、炭素化から黒鉛化を連続的におこなっても良い。黒鉛化は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムが適当である。熱処理温度としては最低でも2500℃以上が必要で、最終的には2600℃以上、より好ましくは2700℃以上、さらに好ましくは2800℃以上で熱処理することが、熱伝導性、表面硬度、密度、表面の接着性、外観に優れたグラファイトを得るためにはよい。
熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。グラファイトヒーターの消耗は2700℃以上で進行し、2800℃ではその消耗速度が約10倍になり、2900℃ではさらにその約10倍になる。したがって、原材料のポリイミドフィルムの改善によって、良質のグラファイトへの転化が可能な温度を例えば2800℃から2700℃に下げることは大きな経済的効果を生じる。なお、一般に入手可能な工業的炉において、熱処理可能な最高温度は3000℃が限界である。
高分子を熱処理して得られた炭素質材料が全て黒鉛になるわけではない。エポキシやフェノール樹脂を熱処理して作製した炭素質材料は、2500℃以上の温度で熱処理しても黒鉛になることはなくガラス状炭素のままである。芳香族ポリイミド、ポリオキサジアゾール等の芳香環を有する高分子で芳香環が面内にある程度配向し、耐熱性が高い限られた高分子材料を熱処理して得られる炭素質材料のみが黒鉛となる。
芳香族ポリイミドフィルムのグラファイト化は上述の通り、炭素化と黒鉛化の2段階を経由しておこり、熱処理により炭素化した後、さらに高温で熱処理することでグラファイト構造に転化させられる。この過程では炭素−炭素結合の開裂と再結合が起きなければならない。グラファイト化をできる限り起こしやすくするためには、その開裂と再結合が最小のエネルギーで起こるようにする必要がある。出発原料である芳香族ポリイミドフィルムの分子配向は炭素化フィルム中の炭素原子の配列に影響を与え、その分子配向はグラファイト化の際に炭素−炭素結合の開裂と再結合化のエネルギーを少なくする効果を生じ得る。したがって、高度な分子配向が生じやすくなるように分子設計を行うことによって、比較的低温でのグラファイト化が可能になる。この分子配向の効果は、フィルム面に平行な二次元的分子配向とすることによって一層顕著になる。
高熱伝導性合成グラファイトの原料に用いる芳香族ポリイミドフィルムとしては、厚みが100μm以下のものが好ましい。原料フィルムが厚ければ低温でグラファイト化が進行しにくいため、厚い原料フィルムをグラファイト化する場合には、フィルム表面層ではグラファイト構造が形成されているのにフィルム内部ではまだグラファイト構造になっていないという状況が生じ得るためである。原料フィルムとして100μm以下のものを用いることにより、フィルムの表面層と内部とでほぼ同時にグラファイト化が進行するため、内部から発生するガスが表面層に形成されたグラファイト構造を破壊するのを避けることが可能となる。原料芳香族ポリイミドフィルムの厚みは、好ましくは90μm以下、より好ましくは80μm以下、最も好ましくは75μm以下である。
本発明で用いられる高熱伝導性合成グラファイトは、引張弾性率が1GPa以上であることが、得られる組成物の熱伝導率が高くなるため好ましい。引張弾性率は、例えばオートグラフを用いた引張試験により測定されるグラファイトフィルムの面方向の引張弾性率である。これは、本発明のグラファイトが面方向にグラファイト層が非常に発達しており、結晶性に優れているため強度に優れるものである。引張弾性率の好ましい値としては、好ましくは1GPa以上、より好ましくは1.02GPa以上、さらに好ましくは1.05GPa以上である。一方引張弾性率の上限値は特に規定されないが、一般的には100GPa以下のものが用いられる。
芳香族ポリイミドフィルムから上記のようにして製造された高熱伝導性合成グラファイトは、一般的にはフィルム形状で得られる。このグラファイトを樹脂と混合する際には、混合容易なよう、粉末形状に粉砕して用いるのが一般的であるが、混合時の形状は粉末状に限定されるものではなく、フィルム形状やフレーク形状のまま混練装置に供給し、樹脂混合と同時、あるいは樹脂と混練時に、粉砕しても良い。高熱伝導性合成グラファイトを粉砕して用いる場合の形状については、種々の形状のものを適応可能である。
このような方法で得られた高熱伝導性合成グラファイト粉末は、樹脂と混練して樹脂組成物を得る際、及び樹脂組成物を成形加工して実成形品とする際に、剪断力などにより再度破砕されて細かい粒子となるのが一般的である。最終的に樹脂組成物内に存在する際の高熱伝導性合成グラファイト粉末の形状は、板状あるいは鱗状であることが、成形体の面方向熱伝導率を高めることができるため好ましい。
これら高熱伝導性合成グラファイトを添加する際には、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。これら高熱伝導性合成グラファイトは、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
樹脂と混合した後の熱伝導性グラファイト(C)の数平均粒子径は、7μm以上5000μm以下が好ましく、8μm以上5000μm以下がより好ましく、12μm以上5000μm以下がさらに好ましい。粒径が小さくなるほど熱伝導性に劣る傾向があり、5000μmを超えると樹脂中での分散が不均一となるため熱伝導率にばらつきが生じる傾向がみられる。樹脂と混合した後の熱伝導性グラファイト(C)の数平均粒子径は、さらにより好ましくは15〜3000μm、特に好ましくは30〜1000μm、最も好ましくは40〜600μmである。数平均粒子径が上記の範囲にあると、樹脂に配合した際の高熱伝導性と成形加工性や耐衝撃性とのバランスが良好となる。数平均粒子径は、樹脂組成物をプレス成形機で270℃10分間プレスし、厚み0.1mmのシート状に加工したのち、シート状成形体を光学式顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡にて少なくとも100個以上、好ましくは1000個以上観察し、観察した画像から粒子径を測定することにより、算出することができる。
ポリカーボネート系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)との合計に対する熱伝導性グラファイト(C)の比率 (C)/{(A)+(B)}は、体積比で1/99〜50/50である。体積比で1/99よりも(C)成分が少ないと、熱伝導性改善効果が得られにくいことがあり、体積比で50/50よりも(C)成分が多いと、組成物の電気絶縁性や耐衝撃性が低下する場合がある。(C)/{(A)+(B)}の比率は、好ましくは2/98〜40/60、より好ましくは3/97〜30/70、さらに好ましくは4/96〜20/80、さらにより好ましくは5/95〜20/80、特に好ましくは6/94〜20/80、最も好ましくは7/93〜20/80である。また前記比率(C)/{(A)+(B)}は、10/90以下、特に5/95以下であってもよい。熱伝導性グラファイト(C)を微量に使用するだけで高い熱伝導性を達成することができ、また熱伝導性グラファイト(C)が少ないほど、電気絶縁性を高めることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、熱伝導性グラファイト(C)が、ポリカーボネート系樹脂(A)の相中に存在している比率(体積基準)が、ポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.4以下、例えば[(A)の体積/{(A)の体積+(B)の体積}]×0.4以下であることが必要である。言い換えれば、下記式で表される熱伝導性グラファイト(C)のポリカーボネート系樹脂(A)への分配比と、下記式で表されるポリカーボネート系樹脂(A)の存在比の比率(分配比/存在比)が0.4以下である事が必要である。
分配比=(ポリカーボネート系樹脂(A)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)
存在比=ポリカーボネート系樹脂(A)の体積/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)の体積)
上記数値規定は、熱伝導性グラファイト(C)が熱可塑性樹脂(B)(すなわち島相)に優先的に分配されていることを意味する。このことにより、導電性を有するグラファイトを樹脂に添加しても、絶縁性を示す熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、かつ耐衝撃性などのポリカーボネート系樹脂が有する特性をほとんど低下させずに維持することができる。
なかでも、熱伝導性グラファイト(C)が、ポリカーボネート系樹脂(A)の相中に存在している比率が、ポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.3以下であることが好ましい。より好ましくはポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.25以下である。さらに最も好ましくはポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.2、最も好ましくはポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.16以下である。
熱伝導性グラファイト(C)がポリカーボネート系樹脂(A)相に存在する割合が小さいほど、すなわち、熱伝導性グラファイト(C)が前記熱可塑性樹脂(B)相により形成される島に存在する割合が大きいほど、電気絶縁性を維持したまま組成物の熱伝導性を向上させることができる。
熱伝導性グラファイト(C)存在比率の測定は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を切削した切削物を透過型電子顕微鏡により観察し、その視野内に見られる熱伝導性グラファイト(C)の総体積、及びポリカーボネート系樹脂(A)相内に存在する熱伝導性グラファイト(C)の体積をそれぞれ計測することによって測定可能である(ここで、ポリカーボネート系樹脂(A)相と、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)相とは、電子顕微鏡で識別が可能である)。
このときポリカーボネート系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)との界面付近で、両者にまたがって熱伝導性グラファイト(C)が存在しているものがある場合には、ポリカーボネート系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)との界面を、熱伝導性グラファイト(C)が存在する箇所までなめらかに延長することで、見かけ上の両者の界面を設定することにより、熱伝導性グラファイト(C)が存在する比率を算出するものとする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、樹脂組成物の耐熱性や機械的強度をより高めるため、本発明の特徴を損なわない範囲で熱伝導性グラファイト(C)以外の無機充填剤を更に添加することができる。このような無機化合物としては特に限定されず、公知の充填剤を広く使用できる。無機充填剤単体での熱伝導率は特に限定が無いが、好ましくは0.5W/mK以上、より好ましくは1W/mK以上のものである。得られる組成物が熱伝導性に優れるという観点からは、単体での熱伝導率が10W/mK以上の高熱伝導性無機化合物であることが特に好ましい。
高熱伝導性無機化合物単体での熱伝導率は、好ましくは12W/mK以上、さらに好ましくは15W/mK以上、特に好ましくは20W/mK以上、最も好ましくは30W/mK以上のものが用いられる。高熱伝導性無機化合物単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/mK以下、さらには2500W/mK以下のものが好ましく用いられる。
高熱伝導性無機化合物のうち、電気絶縁性を示す電気絶縁性高熱伝導性無機化合物としては金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属炭酸塩、絶縁性炭素材料、金属水酸化物、炭素繊維、金属粉、金属繊維、フェライト類等を例示することができる。金属酸化物としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、酸化亜鉛等を挙げることができる。金属窒化物としては窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等を挙げることができる。
金属炭化物としては炭化ケイ素を、金属炭酸塩としては炭酸マグネシウムを、絶縁性炭素材料としてはダイヤモンドを、金属水酸化物としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを挙げることができる。
金属粉としては各種金属を微粒子化した金属粉、金属繊維としては各種金属を繊維状に加工した金属繊維、フェライト類としては軟磁性フェライト等の各種フェライト類、炭素繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の高熱伝導性無機化合物が挙げられる。
中でも、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、酸化亜鉛、金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、及び金属繊維からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物が好ましい。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
高熱伝導性無機化合物の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子状、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形状、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体状等の種々の形状を例示することができる。またこれら高熱伝導性無機化合物は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら高熱伝導性無機化合物は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
これら高熱伝導性無機化合物は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
本発明の樹脂組成物には、前記の高熱伝導性無機化合物以外にも、その目的に応じて公知の無機充填剤を広く使用できる。樹脂単体の熱伝導率が高いために、無機化合物の熱伝導率が10W/mK未満と比較的低くても、樹脂組成物として高い熱伝導率を発現することが可能である。
高熱伝導性無機化合物以外の無機充填剤としては、例えばケイソウ土粉;塩基性ケイ酸マグネシウム;焼成クレイ;微粉末シリカ;石英粉末;結晶シリカ;カオリン;タルク;三酸化アンチモン;微粉末マイカ;二硫化モリブデン;ロックウール;セラミック繊維;アスベストなどの無機質繊維;およびガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスクロス、溶融シリカ等の充填剤が挙げられる。
これら充填剤を用いることで、例えば熱伝導性、機械強度、または耐摩耗性など樹脂組成物を応用する上で好ましい特性を向上させることが可能となる。さらに必要に応じて紙、パルプ、木材;ポリアミド繊維、アラミド繊維、ボロン繊維などの合成繊維;ポリオレフィン粉末等の樹脂粉末;などの有機充填剤を併用して配合することができる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等の酸化防止剤;リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を必要に応じ乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。溶融混練装置のなかでも、ポリカーボネート系樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)との混練を充分に行うためには二軸押出機を用いるのが好ましい。二軸押出機としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。スクリューの回転は同一方向のものでもよいし、反対方向のものでもよい。この二軸押出機は、第一供給口と第二供給口との間に、ニーディングディスク又は逆ネジ構造、スクリューと壁面との間隔を狭くする等の、樹脂を滞留させる構造を有しているものがより好ましい。このような樹脂を滞留させる構造のすぐ下流部に、大気圧に開放されたベント口を設けてもよい。この他、前記熱可塑性樹脂(B)と、熱伝導性グラファイト(C)を予め混合して、微細ペレットを形成後、ポリカーボネート系樹脂(A)を加えて混合してもよい。
本発明の製造方法において、混練装置のスクリュー回転数は、一般に、20〜2000rpm、好ましくは50〜1500rpm、より好ましくは100〜1000rpm、さらに好ましくは120〜500rpmである。また、設定温度は、一般に、第一供給口から第二供給口までの区間では常温〜300℃の範囲で適宜設定し、第一供給口から第二供給口まで段階的に温度が上昇するように設定してもよい。第一供給口の温度は好ましくは25〜150℃、より好ましくは50〜125℃、さらに好ましくは80〜110℃であり、第二供給口以降では好ましくは250〜300℃、より好ましくは250〜280℃である。混練装置中の樹脂の滞留時間は特に制限は無いが、0.5〜15分程度でよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形等が利用できる。
本発明の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と熱伝導性に優れ、かつ電気絶縁性に優れる。従って、本発明の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の成形体は、例えば、アイゾット衝撃強度が、5kJ/m2以上、より好ましくは6kJ/m2以上、さらに好ましくは7kJ/m2以上、特に好ましくは8kJ/m2以上であり、好ましくは40kJ/m2以下、より好ましくは35kJ/m2以下、さらに好ましくは30kJ/m2以下、特に好ましくは27kJ/m2以下である。
熱伝導率は、0.6W/mK以上、より好ましく0.7W/mK以上、さらに好ましくは0.8W/mK以上、特に好ましくは0.85W/mK以上、好ましくは100W/mK以下、より好ましくは50W/mK以下、さらに好ましくは15W/mK以下、特に好ましくは9W/mK以下である。
体積固有抵抗値は、1×107Ωcm以上、より好ましくは1×108Ωcm以上、さらに好ましくは1×109Ωcm以上、さらにより好ましくは1×1010Ωcm以上、特に好ましくは1×1011Ωcm以上、好ましくは1×1020Ωcm以下、より好ましくは1×1019Ωcm以下、さらに好ましくは1×1018Ωcm以下、さらにより好ましくは1×1017Ωcm以下、特に好ましくは1×1016Ωcm以下である。アイゾット衝撃強度、熱伝導率、及び体積固有抵抗値は、後述の通りに測定することができる。
本願は、2012年8月10日に出願された日本国特許出願第2012−178857号及び2012年10月19日に出願された日本国特許出願第2012−232380号に基づく優先権の利益を主張するものである。2012年8月10日に出願された日本国特許出願第2012−178857号及び2012年10月19日に出願された日本国特許出願第2012−232380号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(参考製造例1):スチレン系樹脂(ST−1)の製造
攪拌機及び還流冷却器の設置された反応缶に、窒素気流中で下記の物質を仕込んだ。水250重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4重量部、硫酸第一鉄0.0025重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム2.0重量部を60℃に加熱攪拌後、α−メチルスチレン70重量部、アクリロニトリル25重量部、スチレン5重量部を、開始剤のクメンハイドロパーオキサイド0.3重量部、重合度調節剤のt−ドデシルメルカプタン0.5重量部とともに6時間かけて連続的に滴下添加した。滴下終了後、さらに60℃で1時間攪拌を続け、重合を終了させ、共重合体(a)を得た。
次に、攪拌機及び還流冷却器の設置された反応缶に、窒素気流中で下記の物質を仕込んだ。水250重量部、過硫酸カリウム0.5重量部、ブタジエン100重量部、t−ドデシルメルカプタン0.3重量部、不均化ロジン酸ナトリウム3.0重量部を、重合温度60℃で重合し、ブタジエンの重合率が80%になった時点で重合を停止して未反応ブタジエンを除去し、ゴム状重合体であるポリブタジエンのラテックス(X)を得た。この時ポリブタジエンゴムの平均粒子径は0.30μmであった。
さらに、攪拌機及び還流冷却器の設置された反応缶に、窒素気流中で下記の物質を仕込んだ。水250重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホンキシレート0.4重量部、硫酸第一鉄0.0025重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01重量部、ポリブタジエン70重量部〔上記で得られた(X)〕を60℃に加熱攪拌後、スチレン10重量部、メチルメタクリレート20重量部を、開始剤のクメンハイドロパーオキサイド0.3重量部、重合度調節剤のt−ドデシルメルカプタン0.2重量部とともに5時間かけて連続的に滴下添加した。滴下終了後、さらに60℃で1時間攪拌を続け、重合を終了させ、グラフト共重合体(b)を得た。
上記で得られた共重合体(a)のラテックス64重量%、グラフト共重合体(b)のラテックス36重量%を均一に混合し、フェノール系抗酸化剤を加え、塩化マグネシウム水溶液で凝固した後、水洗、脱水、乾燥し、スチレン系樹脂(ST−1)(具体的にはABS樹脂)を得た。
(参考製造例2):高熱伝導性合成グラファイト粉末(GP−2)の製造方法
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルホルムアミド)溶液に、ピロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5重量%)を得た。この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液を、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布し、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥し自己支持性を有するゲルフィルムにし、アルミ箔から引き剥がし熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒーターにて460℃で23秒段階的に加熱して乾燥した。以上のようにして、厚さ75μmのポリイミドフィルム(c)(弾性率3.1GPa、複屈折0.10)を得た。
ポリイミドフィルム(c)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で、1000℃まで昇温した後、1000℃で1時間熱処理して炭素化処理した。炭素化されたフィルム400cm(縦200mm×横200mm)を、縦270mm×横270mm×厚み3mmの板状の平滑なグラファイトで上下から挟み、縦300mm×横300mm×厚み60mmの直接通電可能な黒鉛容器内に保持した。アルゴン雰囲気下にて容器を3000℃まで加熱し、高熱伝導性グラファイトフィルム(d)を製造した。高熱伝導性グラファイトフィルム(d)の面方向熱伝導率は1100W/mK、厚みは40μm、線膨張係数は−2.6ppm、引張弾性率は1.2GPaであった。この高熱伝導性グラファイトフィルム(d)をシュレッダーにて粗粉砕した後、ミルを用いてさらに粉砕することにより、板状であり、数平均粒子径250μmの高熱伝導性合成グラファイト粉末(GP−2)を得た。その他実施例及び比較例に用いた原料は、下記の通りである。
<ポリカーボネート系樹脂(A)>
(PC−1)ポリカーボネート系樹脂(具体的には粘度平均分子量22000のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂):タフロン(登録商標)A−2200(出光興産(株)社製)
(PC−2)ポリカーボネート系樹脂(具体的には粘度平均分子量25000のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂):タフロン(登録商標)A−2500(出光興産(株)社製)
<ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)>
(PO−1)オレフィン系樹脂(具体的には直鎖低密度ポリエチレン樹脂;流動開始温度約122〜124℃):モアテック(登録商標)0168N((株)プライムポリマー社製)
(ST−1)スチレン系樹脂(具体的にはABS樹脂):参考製造例1記載の方法で得られた樹脂;流動開始温度約80〜125℃
(ST−2)スチレン系樹脂(具体的にはハイインパクトポリスチレン樹脂):PSJ−ポリスチレン433(PSジャパン(株)社製;流動開始温度約160℃)
(ST−3)スチレン系樹脂(具体的にはMBS樹脂):カネエース(登録商標)M−711((株)カネカ社製)
(ST−4)メタアクリル酸アルキルエステル樹脂(具体的にはPMMA樹脂):アクリペットMD(三菱レイヨン(株)社製;流動開始温度約160℃)
(EEA−1)オレフィン・メタアクリル酸アルキルエステル共重合体(具体的にはエチルアクリレート含有量25重量%のエチレン・エチルアクリレート共重合体):NUC−6570(日本ユニカー(株)社製;流動開始温度約91℃)
(PES−1)熱可塑性ポリエステル系樹脂(具体的にはゲルマニウム触媒を用いて重合されたポリエチレンテレフタレート樹脂):EFG−70((株)ベルポリエステルプロダクツ社製;流動開始温度約245℃)
(PES−2)熱可塑性ポリエステル系樹脂(具体的にはポリブチレンテレフタレート樹脂):ノバデュラン(登録商標)5009L(三菱エンジニアリングプラスチック(株)社製;流動開始温度約224℃)
<熱伝導性グラファイト(C)>
(GP−1)熱伝導性グラファイト:熱伝導率850W/mK、固定炭素分99%、数平均粒径300μmの鱗片状黒鉛である、CPB−80((株)中越黒鉛工業所社製)
(GP−2)高熱伝導性合成グラファイト:固定炭素分99%、参考製造例2記載の方法で得られた高熱伝導性合成グラファイト
(GP−3)グラファイト:熱伝導率600W/mK、固定炭素分99%、数平均粒径10μmの鱗状黒鉛である、CPB−6S((株)中越黒鉛工業所社製)
(GP−X)絶縁性熱伝導性フィラー:六方晶窒化ホウ素である、PT−110(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)社製)
(実施例1)
ポリカーボネート系樹脂(A)として(PC−1)を、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂のうち(B−1)として(PES−1)を、また(B−2)として(PO−1)を、熱伝導性グラファイト(C)として(GP−1)を、体積比で(A)/(B−1)/(B−2)/(C)=65/21/4/10となるよう混合した。さらに安定剤としてアデカスタブEP−22、アデカスタブAO−60、アデカスタブHP−10(いずれも(株)アデカ社製)、各0.2重量部をスーパーフローターにて混合し、原料(1)を得た。
原料(1)を、減圧ベント口を有するTEX44同方向噛み合い型二軸押出機((株)日本製鋼所製社製)のスクリュー根本付近に設けられたホッパーより投入した。ポリカーボネート系樹脂(A)と熱可塑性ポリエステル系樹脂(B)との合計に対する、高熱伝導性無機化合物(C)の比率は、(C)/{(A)+(B)}の体積比=10/90となるよう設定した。
第二供給口とスクリュー先端との中間部に、減圧ポンプに接続された減圧ベント口を設けた。スクリュー回転数150rpm、時間あたり吐出量を20kg/hrに設定した。設定温度は第一供給口近傍が100℃で、順次設定温度を上昇させ、ニーディングディスク部手前を270℃に設定した。ニーディングディスク部から大気圧開放ベント口までを270℃に、大気圧開放ベント口から第二供給口までを265℃に、第二供給口からスクリュー先端部までを260℃に設定した。本条件にて評価用サンプルペレットを得た。
(実施例2〜13、比較例1〜5)
使用する樹脂の種類や量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、評価用サンプルペレットを得た。
[熱伝導性グラファイト(C)の存在比測定、連続相構造の確認]得られた直径約3.6mmのペレットを中央部で切断し、ペレット中心部で超薄切片を作製し、ルテニウム染色を行った後透過型電子顕微鏡による観察を行った。ペレット中心部切片の電子顕微鏡写真を元に染色されている箇所とされていない箇所とでそれぞれの相構造を観察する方法により、ポリエステル系樹脂等の前記熱可塑性樹脂(B)が連続相をなしているかどうかを確認した。ポリカーボネート相内に存在する無機粒子の面積、及び、ポリカーボネート相以外に存在する無機粒子の面積を計測し、面積比から体積に換算することによって、ポリカーボネート系樹脂(A)の相内に存在する熱伝導性グラファイト(C)の存在比を体積比から算出した。
[試験片の成形]得られた各サンプルペレットを乾燥した後、射出成形機にて厚み1mm×25mmφの円板状試験片、および127mm×12.7mm×厚み3.2mmの試験片、120mm×120mm×厚み3mmの平板を成形した。
[耐衝撃性]厚み3.2mm試験片を中央部分で切断したサンプルにて、AST M D256に従いノッチ付アイゾッド衝撃強度を測定した。
[熱伝導率]熱伝導率:厚み1mm×25mmφの円板状試験片にて、レーザーフラッシュ法熱伝導率測定装置(NETZSCH社製 LFA447)で、室温大気中におけるサンプルの面方向の熱拡散率を測定した。別途水中置換法にてサンプルの密度を、DSCにて比熱を測定したうえで、(熱拡散率)×(密度)×(比熱)によりサンプルの面方向の熱伝導率を算出した。
[数平均粒子径]得られた樹脂組成物をプレス成形機で270℃10分間プレスし、厚み0.1mmのシート状に加工したのち、シート状成形体を光学式顕微鏡あるいは操作型電子顕微鏡にて少なくとも500個以上観察し、観察した画像から粒子径を測定することにより、算出した。
[電気絶縁性]120mm×120mm×厚み3mmの平板を用いて、ASTM D−257に従い体積固有抵抗値を測定した。
それぞれの結果を表1に示す。
表1及び2に示すように、実施例で用いられている樹脂組成物は、熱伝導率と耐衝撃性、いずれも良好であり、かつ導電性のグラファイトを添加しているにもかかわらず電気絶縁性の組成物が得られることがわかる。
このような絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器においても外装材料としても適用可能である。中でもモバイル電子機器などの小型高性能デバイスにおける発熱問題を解決しうる素材として、産業上非常に有用である。

Claims (15)

  1. ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、
    1){ポリカーボネート系樹脂(A)}/{前記熱可塑性樹脂(B)}の体積比が50/50〜95/5の割合であり、
    2)ポリカーボネート系樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計に対する熱伝導性グラファイト(C)の比率 (C)/{(A)+(B)}が、体積比で1/99〜50/50であり、
    3)下記式で表される熱伝導性グラファイト(C)のポリカーボネート系樹脂(A)への分配比と、下記式で表されるポリカーボネート系樹脂(A)の存在比の比率(分配比/存在比)が0.4以下であり、
    分配比=(ポリカーボネート系樹脂(A)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)中の熱伝導性グラファイト(C)の量)
    存在比=ポリカーボネート系樹脂(A)の体積/(ポリカーボネート系樹脂(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)の体積)
    4)少なくともポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成する、連続相構造及び非連続相構造を有することを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  2. ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、
    1){ポリカーボネート系樹脂(A)}/{前記熱可塑性樹脂(B)}の体積比が50/50〜95/5の割合であり、
    2)ポリカーボネート系樹脂(A)と前記熱可塑性樹脂(B)との合計に対する熱伝導性グラファイト(C)の比率 (C)/{(A)+(B)}が、体積比で1/99〜50/50であり、
    3)熱伝導性グラファイト(C)がポリカーボネート系樹脂(A)の相中に存在している比率が、ポリカーボネート系樹脂(A)の体積分率×0.4以下であり、
    4)ポリカーボネート系樹脂(A)が連続相構造を形成しており、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)が連続相構造を形成していないことを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記熱伝導性グラファイト(C)が、板状、鱗片状、又は球状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱伝導性グラファイト(C)の数平均粒子径が12μm以上5000μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記熱可塑性樹脂(B)が、温度50〜350℃の範囲内に流動開始温度を有するものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記熱可塑性樹脂(B)が、オレフィン系熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂(B)が、スチレン系単量体及び/又は(メタ)アクリル系単量体を用いて合成された熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいるビニル系共重合体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂(B)が、オレフィン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合体よりなる熱可塑性樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  9. 前記熱可塑性樹脂(B)が、熱可塑性ポリエステル系樹脂を少なくとも含んでいることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  10. 前記熱可塑性樹脂(B)が、エラストマー成分を含有する樹脂であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  11. 前記ポリカーボネート系樹脂(A)の粘度平均分子量が18000以上であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  12. 前記熱伝導性グラファイト(C)の単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  13. 前記熱伝導性グラファイト(C)の単体での面方向熱伝導率が700W/mK以上であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  14. 前記熱伝導性グラファイト(C)が、芳香族ポリイミドフィルムを2500℃以上の温度で熱処理して得られる、単体での面方向熱伝導率が500W/mK以上の高熱伝導性合成グラファイトよりなることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
  15. ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリカーボネート系樹脂を除く熱可塑性樹脂(B)、及び熱伝導性グラファイト(C)を含み、
    1)アイゾット衝撃強度が5kJ/m2以上であり、
    2)熱伝導率が0.6W/mK以上であり、
    3)体積固有抵抗値が1×107Ωcm以上であることを特徴とする、絶縁性高熱伝導性熱可塑性樹脂成形体。
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