JP2007238917A - 熱伝導性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

熱伝導性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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邦男 松坂
Shinsuke Fujioka
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Abstract

【課題】成形加工性に優れ、更に、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れた成形品を与える熱伝導性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形品を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、熱可塑性樹脂と、アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子と、耐衝撃性改良剤とが配合されてなり、上記黒鉛粒子の配合量は、上記熱可塑性樹脂及び上記耐衝撃性改良剤の合計を100質量部とした場合に、10〜1,000質量部であり、上記耐衝撃性改良剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂及び上記耐衝撃性改良剤の合計を100質量%とした場合に、1〜50質量%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、成形加工性に優れ、更に、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れた成形品を与える熱伝導性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形品に関する。
LSI等の半導体素子の集積密度の増大と動作の高速化、そして電子部品の高密度実装に伴い、発熱部品を備える製品における放熱対策が大きな課題となっている。例えば、電子部品のハウジングには、従来、熱伝導率の高い金属やセラミックスが用いられてきたが、近年、形状選択の自由度が高く、軽量化及び小型化の容易な樹脂組成物が用いられている(特許文献1、2及び3参照)。
特許文献1には、PBT、PEEK等の熱可塑性樹脂と、窒化アルミニウム等の無機繊維及び無機粉末とを含む樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、特定のブロック共重合体又は水素添加ブロック共重合体と、ゴム用軟化剤と、水酸化マグネシウム等の熱伝導材とを含む樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、マトリックス樹脂中に窒化アルミニウム焼結体粉末等からなるフィラーが分散するとともに、融点が500℃以下の低融点金属又は共晶合金によって網目状に形成された金属網を介して上記フィラーが相互に連続的に溶着されてなる高熱伝導性複合体が開示されている。
また、他の熱伝導性を付与する材料としては、黒鉛粉末等の粉末状物質、繊維状物質等があり、これらを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献4及び5参照)。
特許文献4には、非球形塊状の黒鉛粒子と、樹脂と、を含む導電性組成物が開示されている。
特許文献5には、熱可塑性樹脂と、70%以上の粒子のアスペクト比が3以下である黒鉛粉末とを含む導電樹脂組成物が開示されている。
特開平8−283456号 特開2001−106865号 特開平6−196884号 特開2003−253127号 特開2001−60413号
熱伝導性樹脂組成物において、黒鉛粉末の配合により熱伝導性を向上させる場合には、比較的多量の添加を必要とするため、得られる成形品の機械的強度が十分ではなく、用途が限定される場合があった。
本発明の目的は、成形加工性に優れ、更に、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れた成形品を与える熱伝導性樹脂組成物及びそれを用いてなる成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下に示される。
1.〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子と、〔D〕耐衝撃性改良剤とが配合されてなり、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、10〜1,000質量部であり、上記耐衝撃性改良剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び該耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、1〜50質量%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
2.上記黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である上記1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
3.上記黒鉛粒子〔B〕の粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80を用いて得られる比D80/D20が2〜12である上記1又は2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
4.更に、〔C〕アスペクト比が3以下であり、重量平均粒子径が10〜70μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子が、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量を100質量部とした場合に、70質量部以下配合されてなる上記1乃至3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
5.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む上記1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
6.上記ビニル系単量体(b)が、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)である上記5に記載の熱伝導性樹脂組成物。
7.上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、該ゴム強化樹脂は、非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂であり、且つ、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の配合量が、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及び該オレフィン系樹脂の合計に対して、3〜70質量%である上記5に記載の熱伝導性樹脂組成物。
8.上記非ジエン系ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム、及び/又は、共役ジエン系化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックと、芳香族ビニル化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物である上記7に記載の熱伝導性樹脂組成物。
9.上記耐衝撃性改良剤〔D〕が、共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、並びに、これらの重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至8のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
10.上記酸無水物グラフト化重合体における酸無水物のグラフト量が、該酸無水物グラフト化重合体に対して0.3〜0.7質量%である上記9に記載の熱伝導性樹脂組成物。
11.更に、難燃剤を含有し、該難燃剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、1〜40質量部である上記1乃至10のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
12.更に、酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部である上記1乃至11のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
13.熱伝導率が7W/m・K以上である上記1乃至12のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
14.100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上である上記1乃至13のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
15.上記1乃至14のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂〔A〕と、特定の黒鉛粒子〔B〕と、耐衝撃性改良剤〔D〕とを含有することから、成形加工性に優れ、更に、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。即ち、熱伝導率が7W/m・K以上であり、100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上であり、シャルピー衝撃強さが4kJ/m以上である成形品を容易に得ることができる。
黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である場合には、特に熱伝導性に優れる。
更に、他の特定の黒鉛粒子〔C〕を含有する場合には、成形品の熱伝導率が、成形時の組成物の流れ方向及びその垂直方向において差が小さくなり、更に熱伝導性に優れる。
また、上記耐衝撃性改良剤〔D〕が、共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、並びに、これらの重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である場合には、特に耐衝撃性に優れる。
更に、上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、該ゴム強化樹脂は、非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合には、シャルピー衝撃強さが4kJ/m以上であり、硬度が50以上であり、曲げ歪みが4〜6%の成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、熱可塑性樹脂〔A〕と、黒鉛粒子〔B〕と、耐衝撃性改良剤〔D〕とを含有することにより、表面外観性に優れ、更に、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味する。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
1.熱伝導性樹脂組成物
本発明の熱伝導性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、〔A〕熱可塑性樹脂(以下、「成分〔A〕」ともいう。)と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子(以下、「成分〔B〕」ともいう。)と、〔D〕耐衝撃改良剤(以下、「成分〔D〕」ともいう。)とが配合されてなり、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、10〜1,000質量部であり、上記耐衝撃性改良剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び該耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、1〜50質量%である。
1−1.成分〔A〕
この成分〔A〕は、熱可塑性を有し、且つ、成形用の重合体からなるものであれば、特に限定されず、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のゴム強化樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂及びこれらのアロイ、並びに、オレフィン系樹脂が好ましい。
上記ゴム強化樹脂は、ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、このゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)とよりなる混合物、からなるものである。
上記ゴム質重合体(a)は、室温でゴム質であれば、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)及び非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)が挙げられる。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
上記ジエン系重合体(ジエン系ゴム質重合体)としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体ゴム;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。上記ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記非ジエン系重合体(非ジエン系ゴム質重合体)としては、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを含むエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体等が挙げられる。尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。上記非ジエン系重合体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記非ジエン系重合体としては、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム、及び、共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体を水素添加してなる重合体が好ましい。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムは、エチレン単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを含むものであり、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、3−メチルブテン−1、ヘキセン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、3,3−ジメチルブテン−1、ヘプテン−1、メチルヘキセン−1、ジメチルペンテン−1、トリメチルブテン−1、エチルペンテン−1オクテン−1、プロピルペンテン−1等が挙げられる。
また、上記非共役ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン等の脂環式ジエン化合物等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・3−メチル−1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・3−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・3−エチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体、エチレン・1−ウンデセン共重合体等が挙げられる。
また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムとしては、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムを構成するエチレン単位の含有量は、全単位の合計量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。また、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムの数平均分子量(Mn)は、好ましくは5,000〜100,0000、より好ましくは30,000〜300,000である。このMnが大きすぎると、得られる非ジエン系ゴム強化樹脂を用いた際の加工性が低下することがある。更に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、好ましくは10以下である。
次に、共役ジエン系化合物よりなる単位を含む(共)重合体(以下、「水素添加前重合体」ともいう。)を水素添加してなる重合体(以下、「水素添加重合体」ともいう。)について説明する。この水素添加前重合体は、共役ジエン系化合物よりなる単位のみからなる(共)重合体であってよいし、共役ジエン系化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックと、他の単量体よりなる単位を主として含む重合体ブロックとからなる共重合体であってもよい。尚、上記「主として」は、50%以上であることを意味する。
上記水素添加前重合体の形成に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらのうち、1,3−ブタジエン、イソプレン及び1,3−ペンタジエンが好ましく、より好ましくは1,3−ブタジエンである。
また、上記水素添加前重合体の形成に用いられる他の単量体は、通常、芳香族ビニル化合物であり、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン等が挙げられる。また、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等の官能基含有芳香族ビニル化合物を用いることもできる。
これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましく、より好ましくはスチレンである。
従って、上記水素添加前重合体の好ましい例としては、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックを「P」、共役ジエン系化合物よりなる重合体ブロックを「Q」、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン系化合物よりなるランダム共重合体ブロックを「P/Q」、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン系化合物の共重合体からなり且つ芳香族ビニル化合物よりなる単位が漸増するテーパーブロックを「R」とした場合、少なくとも1つのブロックP又はブロックRと、少なくとも1つのブロックQ又はブロックP/Qとを含むブロック共重合体、ブロックQもしくはブロックP/Qを含む(共)重合体である。これらの(共)重合体を構成する部分の具体例を以下に示す。
[1]P−Q
[2]P−Q−P
[3]P−Q−R
[4]P−Q1−Q2
(Q1は、共役ジエン系化合物よりなる重合体ブロック、又は、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量が20%以上であるブロック、Q2は、共役ジエン系化合物よりなる重合体ブロック、又は、共役ジエン系化合物及び芳香族ビニル化合物よりなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量が20%未満であるブロックである。)
[5]Q
[6]P/Q
[7]P−P/Q
[8]P−P/Q−R
[9]P−P/Q−P
[10]Q2−Q1−Q2(Q1及びQ2は、上記と同様である。)
[11]R−Q
[12]R−Q−R
[13]R−P/Q−R
[14]R−P−Q
尚、上記[4]の構成を含む重合体は、特開平2−133406号公報に、上記[5]及び[6]の構成を含む重合体は、特開昭63−127400号公報に、それぞれ、開示されている。また、上記[7]及び[8]の構成を含む重合体は、特開平2−305814号公報及び特開平3−72512号公報に開示されている。
上記水素添加前重合体を構成する共役ジエン系化合物よりなる単位、及び、芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合は、それぞれ、好ましくは40質量%以上100質量%未満、及び、0質量%を超えて60質量%以下、より好ましくは50質量%以上100質量%未満、及び、0質量%を超えて50質量%以下である。上記水素添加前重合体が、芳香族ビニル化合物よりなる単位を含有する場合、上記含有割合は、好ましくは50〜90質量%及び50〜10質量%である。芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有量が60質量%を超えると、上記水素添加前重合体が樹脂状となり、得られる組成物の耐衝撃性が低下することがある。
また、上記水素添加前重合体における共役ジエン系化合物よりなる単位におけるビニル結合含量は、好ましくは10%以上、より好ましくは20〜80%、更に好ましくは30〜60%である。このビニル結合含量が10%未満では、水添後の構造がポリエチレンに近くなり、組成物とした場合に衝撃強度が低下することがある。一方、60%を超えると水添後はゴム的性質を失うため、やはり衝撃強度が低下することがある。
上記水素添加前重合体は、カップリングされた(共)重合体であってもよい。
上記水素添加前重合体は、共役ジエン系化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックQと、芳香族ビニル化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックPとからなるブロック共重合体が好ましく、特に、上記[4]の構成を含む共重合体、上記[7]の構成を含む共重合体、及び、上記[8]の構成を含む共重合体が好ましい。これらのうち、上記[4]の構成を含む共重合体が好ましい。
上記[4]の構成を含む共重合体における好ましい構成は、以下の通りである。
即ち、重合体ブロックPが、芳香族ビニル化合物よりなる単位を90質量%以上含む重合体ブロックであり、重合体ブロックQ1が、ポリブタジエンからなり且つ1,2−ビニル結合含量が30〜70%である重合体ブロックであり、Q2が、ポリブタジエンからなり且つ1,2−ビニル結合含量が20%未満の重合体ブロックであるブロック共重合体であって、該共重合体中の重合体ブロックPの含量が10〜50質量%、重合体ブロックQ1の含量が30〜80質量%、及び、重合体ブロックQ2の含量が5〜30質量%である。尚、このブロック共重合体は、カップリングされた共重合体を用いることができ、その場合は、P−Q1−Q2が、カップリング剤残基を介して上記の重合体ブロックP、Q1及びQ2 のうち少なくとも1つと結合しているブロック共重合体とすることができる。
上記[7]、及び、上記[8]の構成を含む共重合体における好ましい構成は、以下の通りである。
即ち、上記[7]の構成を含む共重合体において、共役ジエン系化合物よりなる単位、及び、芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合が、それぞれ、50〜95質量%及び50〜5質量%であり、重合体ブロックPを構成する芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有量が、共重合体を構成する単位の全量に対して3〜40質量%であり、且つ、重合体ブロックP/Qにおけるビニル結合含量が15〜80質量%であるブロック共重合体とすることができる。
また、上記[8]の構成を含む共重合体において、共役ジエン系化合物よりなる単位、及び、芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有割合が、それぞれ、50〜95質量%及び50〜5質量%であり、重合体ブロックP及びRを構成する芳香族ビニル化合物よりなる単位の含有量の合計が、共重合体を構成する単位の全量に対して3〜40質量%であり、且つ、重合体ブロックP/Qにおけるビニル結合含量が15〜80質量%であるブロック共重合体とすることができる。
上記水素添加重合体は、上記水素添加前重合体における、共役ジエン部分の二重結合に対し、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上が水素添加され飽和されていることが必要である。また、上記水素添加重合体の数平均分子量は、GPCにより測定することができ、好ましくは5,000〜1,000,000、より好ましくは30,000〜300,000である。この数平均分子量が5,000未満では、重合体が液状となる場合があり、一方、大きすぎると、ゴム強化樹脂とした場合に、加工性が低下する場合がある。更に、水素添加重合体の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)は、好ましくは10以下である。
上記水素添加重合体の製造方法は、公知の方法を適用することができるが、例えば、特開平1−275605号公報等に開示された方法がある。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いるゴム質重合体(a)の形状は、特に限定されない。また、その重量平均粒子径は、ゴム質重合体(a)の形状が粒子状である場合、好ましくは50〜3,000nmであり、更に好ましくは100〜2,000nm、特に好ましくは120〜800nmである。重量平均粒子径が50nm未満では、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、3,000nmを超えると、成形品の表面外観性が劣る傾向にある。尚、上記重量平均粒子径は、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。
上記ゴム質重合体(a)が粒子状である場合、重量平均粒子径が上記範囲内にあるものであれば、例えば、特公平4−79366号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている方法等の公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
上記ゴム質重合体(a)が架橋重合体である場合、ゲル分率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55〜98質量%、更に好ましくは60〜95質量%である。このゲル分率は、ゴム質重合体1gをトルエン100ml中に加え、48時間室温で放置した後、100メッシュ金網でろ過し、分取したろ液からトルエンを除去、乾燥してトルエン可溶分(g)を秤量し、次式により算出することができる。
ゲル分率=〔{1(g)−トルエン可溶分(g)}/1(g)〕×100
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、平均粒子径の調整等を考慮し、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。また、上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有するゴム質重合体(a)の2種類以上をブレンドする方法でもよい。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物が含まれればよく、それ以外では、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物を、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物の1種以上の単量体、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上、及び、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上を組み合わせた単量体を用いることができる。
上記芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記化合物以外に、必要に応じて、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、架橋重合体とするために、少なくとも2以上の不飽和結合を有する化合物、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、トリビニルベンゼン等を用いることができる。
上記ビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物を含むが、この場合の、芳香族ビニル化合物(b1)と、それ以外のビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(2〜95)質量%/(98〜5)質量%、より好ましくは(10〜90)質量%/(90〜10)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)としては、下記の組み合わせで用いることが好ましい。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐変色性の物性バランスが向上する。
(1)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物。
(2)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を重合して得られたものである。このゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ビニル系単量体(b)として芳香族ビニル化合物のみを用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(i)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(1)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(ii)の1種以上であってよいし、ビニル系単量体(b)として上記(2)の単量体を用いて得られたゴム強化ビニル系樹脂(iii)の1種以上であってもよい。更には、これらを適宜、組み合わせたものであってもよい。
尚、前述のように、上記成分〔A〕としてゴム強化樹脂を用いる場合には、該ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物であってもよい。このビニル系単量体としては、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いた化合物、即ち、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物及び官能基を有する化合物から選ばれる1種以上を用いることができる。従って、上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる組成で異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
上記(共)重合体(A2)は、ビニル系単量体の重合によって得られた単独重合体又は共重合体であり、下記(3)〜(8)に例示される。尚、各単量体は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられる化合物を適用でき、好ましい化合物も同様である。
(3)芳香族ビニル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(4)(メタ)アクリル酸エステル化合物のみを重合して得られた(共)重合体の1種以上。
(5)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(6)芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(7)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物を重合して得られた共重合体の1種以上。
(8)芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物を除く他の化合物とを重合して得られた共重合体の1種以上。
これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記(共)重合体(A2)の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
次に、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、通常、乳化重合、溶液重合、塊状重合することにより、製造することができる。尚、ゴム質重合体(a)として、非ジエン系重合体を用いる場合には溶液重合を適用することが好ましい。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
また、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)の各使用量については、ゴム質重合体(a)100質量部に対し、ビニル系単量体(b)の使用量は、通常、25〜1,900質量部、より好ましくは60〜560質量部である。
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、複数のゴム強化ビニル系樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化ビニル系樹脂(A1)とすることができる。
溶液重合及び塊状重合によるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200質量%、更に好ましくは15〜150質量%、特に好ましくは20〜100質量%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10質量%未満では、本発明の組成物及びそれを含む成形品の表面外観性及び耐衝撃性が低下することがある。また、200%を超えると、成形加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリルゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリルゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。この範囲とすることにより、成形加工性に優れ、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性も優れる。
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に適用される重合開始剤等を用いて、ビニル系単量体を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、製造することができる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
上記(共)重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。尚、この(共)重合体(A2)の極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の場合と同様、製造条件を調整することにより制御することができる。
上記ゴム強化樹脂のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
本発明の組成物が、成分〔A〕として、上記ゴム強化樹脂、即ち、そのゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、及び、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)との混合物からなる場合のいずれにおいても、該ゴム強化樹脂を構成するゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられたゴム質重合体(a)の含有量は、目的、用途等によって選択されるが、本発明の組成物に対して、通常、1〜50質量%、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、本発明の組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性が劣る傾向にある。一方、多すぎると、成形加工性、成形品の表面外観性、剛性、耐熱性等が劣る傾向にある。尚、上記ゴム質重合体(a)の含有量は、成分〔D〕の種類によっても選択される。
尚、上記成分〔A〕がゴム強化樹脂を含む場合には、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の種類を選択することによって、多様な組成物とすることができる。例えば、ゴム質重合体(a)としてジエン系重合体を用いてなるジエン系ゴム強化ビニル系樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを組み合わせた成分〔A〕を用いた組成物、ゴム質重合体(a)として非ジエン系重合体を用いてなる非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂と、オレフィン系樹脂とを組み合わせた成分〔A〕を用いた組成物等である。
また、上記ポリカーボネート樹脂としては、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは15,000〜40,000、より好ましくは17,000〜30,000、特に好ましくは18,000〜28,000である。この粘度平均分子量が高いほど、流動性が十分でなく、成形加工性が低下する傾向にある。
尚、上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
上記ポリカーボネート樹脂は、上記ゴム強化樹脂又は上記(共)重合体(A2)として例示したアクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体等の共重合体とともに、成分〔A〕として用いることができる。
上記成分〔A〕として、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂を併用する場合、これらの使用割合は、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%であり、より好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、更に好ましくは15〜85質量%及び15〜85質量%である。但し、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂の合計を100質量%とする。
また、上記成分〔A〕として、ポリカーボネート樹脂及びゴム強化樹脂を併用した組成物において、ゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。
上記オレフィン系樹脂は、室温で非ゴム質の、炭素数2〜10のα−オレフィンからなる単位の少なくとも1種を含むα−オレフィン系(共)重合体、環状オレフィン共重合体等であり、これらの変性重合体も含まれる。
炭素数2〜10のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1及び4−メチルペンテン−1が好ましい。
上記オレフィン系樹脂が単独重合体である場合、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記オレフィン系樹脂が共重合体である場合、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等の、上記α−オレフィンの2種以上を用いてなる共重合体、上記α−オレフィンと、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエンとからなる共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
尚、上記オレフィン系樹脂が共重合体である場合には、ランダム共重合体であってよいし、ブロック(タイプの)共重合体であってもよい。
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、及び、プロピレン単位を含む(共)重合体が好ましい。プロピレン単位を含む(共)重合体を構成するプロピレン単位の含有量は、全単位の合計量に対して、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは55〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。
上記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系単独重合体(ホモタイプ)の場合、曲げモジュラス及び硬度に優れる傾向があり、ブロックタイプの共重合体の場合、耐衝撃性及び柔軟性に優れる傾向がある。
また、上記オレフィン系樹脂は、上記α−オレフィン(共)重合体が、マレイン酸無水物等の酸無水物により変性されてなる酸無水物基変性オレフィン系樹脂、カルボキシル基変性オレフィン系樹脂、塩素化ポリエチレン等の変性重合体であってもよい。
上記オレフィン系樹脂の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が20%以上であることが好ましい。また、JIS K7121に準拠して測定された融点は、40℃以上であることが好ましい。
また、上記オレフィン系樹脂のメルトフローレート(JIS K7210に準拠)は、好ましくは0.01〜500g/10分、より好ましくは0.05〜100g/10分であり、かかるメルトフローレートに相当する分子量を備える樹脂が好ましい。
上記オレフィン系樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂を用いる場合には、金型を用いて成形品とする場合に、離型性に優れる。また、得られる成形品の耐衝撃性に優れる。
上記オレフィン系樹脂は、上記ゴム強化樹脂とともに、成分〔A〕として用いることができる。
上記成分〔A〕がオレフィン系樹脂である場合には、従来のジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合に比べ、成形加工性及び離型性、並びに、耐衝撃性及び曲げモジュラスに優れる一方、熱伝導性及び耐熱性が低下し、曲げ歪みが高くなる傾向にあった。そこで、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を組み合わせることにより、耐衝撃性、曲げモジュラス、曲げ歪み及び硬度のバランスに優れた成形品を得ることができた。
上記ゴム強化樹脂としては、上記のように、ゴム質重合体(a)として、非ジエン系重合体を用いてなるゴム強化ビニル系樹脂(非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂)を含むことが好ましい。
上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を併用する場合、これらの使用割合は、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂の合計を100質量%とすると、それぞれ、好ましくは20〜95質量%及び80〜5質量%であり、より好ましくは30〜85質量%及び70〜15質量%、更に好ましくは40〜80質量%及び60〜20質量%である。上記範囲とすることにより、耐衝撃性、曲げモジュラス、曲げ歪み及び硬度のバランスに優れた成形品を得ることができる。
尚、上記成分〔A〕として、オレフィン系樹脂及びゴム強化樹脂を併用した組成物において、ゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは3〜35質量%、特に好ましくは5〜35質量%である。
本発明の組成物は、成分〔A〕の種類、成分〔A〕に対する成分〔B〕の配合量等によって、熱伝導率及び機械的性質が大きく変化するため、目的とする性能の選択性が広い。上記のように、上記成分〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、このゴム強化樹脂が非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合には、機械的性質の調節が容易であり、且つ、各性質のバランスを高度なものとすることができる。上記組み合わせによると、熱伝導率が8〜10W/m・Kであり、シャルピー衝撃強さが4kJ/m以上であり、硬度が50以上であり、曲げモジュラスが3,500MPa以上であり、曲げ歪みが4〜6%の成形品を得ることができる。このような性能の成形品は、例えば、オレフィン系樹脂20〜30質量%、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂20〜30質量%及び成分〔B〕40〜60質量%からなる組成物(全体を100質量%とする)によって、得ることができる。尚、上記成分〔A〕がオレフィン系樹脂である場合、及び、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である場合のいずれにおいても、上記のような性能を得ることは、難しい傾向にある。
1−2.成分〔D〕
この成分〔D〕は、本発明の組成物を含む成形品における耐衝撃性を向上させる重合体成分(軟質樹脂、ゴム及びエラストマー)である。具体的には、共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、並びに、これらの重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・グリシジルエーテル共重合体、ナイロン12・ポリトリメチレングリコール共重合体、ナイロン12・ポリテトラメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリトリメチレングリコール共重合体、ポリブチレンテレフタレート・ポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、並びに、これらの重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩が好ましい。
尚、上記成分〔D〕は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
上記共役ジエン系重合体は、共役ジエンからなる単位を含むものであれば、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよい。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。
上記共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。
上記共役ジエン系重合体が、共重合体である場合、他の構成単位としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物等からなる各単位が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
尚、上記共役ジエン系重合体が、共重合体である場合、ブロック共重合体であってよいし、ランダム共重合体であってもよい。
上記共役ジエン系重合体の好ましい例は、以下の構造を有する重合体である。
a)P−Q
b)P−Q−P
c)P−Q−R
d)P−Q−Q
e)Q
f)P/Q
g)P−P/Q
h)P−P/Q−R
i)P−P/Q−P
j)Q−Q−Q
k)R−Q
l)R−Q−R
m)R−P/Q−R
n)R−P−Q
但し、Pは、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックであり、Qは、共役ジエンからなる重合体ブロックであり、P/Qは、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンのランダム共重合体からなる重合体ブロックであり、Rは、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンの共重合体からなり、且つ、芳香族ビニル化合物からなる単位が漸増するテーパー型重合体ブロックを意味する。また、Qは、共役ジエンからなる重合体ブロック、又は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンの共重合体からなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン部分のビニル結合含量が好ましくは20%以上である。Qは、共役ジエンからなる重合体ブロック、又は、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンの共重合体からなる重合体ブロックであり、且つ、共役ジエン部分の(共役ジエン単位中の)ビニル結合含量が好ましくは20%未満である。
上記共役ジエン系重合体が、芳香族ビニル化合物及び共役ジエンの共重合体である場合、各単量体単位の割合は、それぞれ、好ましくは、0を超えて60質量%以下、及び、40質量%以上100質量%未満、より好ましくは、10〜50質量%及び50〜90質量%未満である。この範囲にあれば、得られる組成物の耐衝撃性が向上する。
また、上記共役ジエン系重合体における共役ジエン部分のビニル結合含量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。
上記d)の構造を有する重合体については、特開平2−133406号公報に、上記e)及びf)の構造を有する重合体については、特開昭63−127400号公報に開示されている。また、上記g)及びh)の構造を有する重合体については、特開平2−305814号公報及び特開平3−72512号公報に開示されている。
尚、上記共役ジエン系重合体は、a)〜n)の構造を有し、カップリングされてなる重合体であってもよい。
上記共役ジエン系重合体は、構成する共役ジエンからなる単位が有する不飽和結合の一部又は全部が水素化(水素添加)されてなる重合体(以下、「水素添加重合体」又は「水添重合体」という。)であってもよい。
好ましくは、下記の共役ジエン系重合体に対して水素化して得られた水素添加重合体である。
[i]上記d)の構造を有するブロック共重合体であって、重合体ブロックPが、芳香族ビニル化合物からなる単位を90質量%以上含み、重合体ブロックQが、1,2−ビニル結合含量がこの重合体ブロックQ中のポリブタジエンに対し30〜70%のブタジエン系(共)重合体ブロックであり、重合体ブロックQが、1,2−ビニル結合含量がこの重合体ブロックQ中のポリブタジエンに対し30%未満のブタジエン系(共)重合体ブロックであり、且つ、重合体ブロックP、Q及びQの含量が、該ブロック共重合体に対し、それぞれ10〜50質量%、30〜80質量%及び5〜30質量%である共役ジエン系重合体。
[ii]上記[i]の共役ジエン系重合体における重合体ブロックP、Q及びQの少なくとも1つにカップリング剤残基が結合している共役ジエン系重合体。
尚、上記[i]及び[ii]において、重合体ブロックQは、好ましくは共役ジエン単位と、芳香族ビニル化合物からなる単位とを含むブロックであり、重合体ブロックQは、好ましくは共役ジエン単位のみからなるブロックである。
[iii]上記g)又はh)の構造を有するブロック共重合体であって、芳香族ビニル化合物からなる単位及び共役ジエン単位の質量比が5〜50質量%/50〜95質量%であり、且つ、重合体ブロックP及びRにおける、芳香族ビニル化合物からなる単位の合計量が該ブロック共重合体全体に対して3〜40質量%であり、且つ、重合体ブロックP/Qにおける共役ジエン部分のビニル結合含量が15〜80質量%である共役ジエン系重合体。
上記共役ジエン系重合体に対する水素化の程度、即ち、水素添加率は、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%である。水素添加率が低すぎると、耐衝撃性改良効果は認められるものの、耐候性及び耐熱性が低下する場合がある。
上記水素添加重合体の数平均分子量は、好ましくは5,000〜1,000,000、より好ましくは30,000〜300,000である。この範囲にあれば、得られる組成物の耐衝撃性が向上する。また、重量平均分子量Mwと、数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は、好ましくは10以下である。尚、上記の数平均分子量及び重量平均分子量は、標準ポリスチレンを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記水素添加重合体の製造方法は、公知の方法を適用することができるが、例えば、特開平1−275605号公報等に開示された方法がある。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体は、エチレンからなる単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とを少なくとも含む共重合体である。更に他の化合物からなる単位を含んでもよい。他の化合物としては、非共役ジエン等が挙げられる。尚、上記のα−オレフィンからなる単位、及び、他の化合物からなる単位は、それぞれ、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで含まれてよい。
上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン等が挙げられる。
上記「非共役ジエン」は、ジエンの他にトリエン以上のポリエンを含む意味であり、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘキサジエン等の直鎖の非環状ジエン化合物;5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、5,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、7−メチルオクタ−1,6−ジエン、ジヒドロミルセン等の分岐連鎖の非環状ジエン化合物;テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2,5−ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の脂環式ジエン化合物等が挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィン系共重合体が、エチレンからなる単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位とからなる共重合体である場合、例えば、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・3−メチル−1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・3−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・3−エチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体、エチレン・1−ウンデセン共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体が、エチレンからなる単位と、炭素数3以上のα−オレフィンからなる単位と、非共役ジエンからなる単位とからなる共重合体である場合、例えば、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、エチレンからなる単位と、(メタ)アクリル酸エステルからなる単位とを少なくとも含む共重合体である。更に他の化合物(α−オレフィンを除く)からなる単位を含んでもよい。他の化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。尚、上記の(メタ)アクリル酸エステルからなる単位、及び、他の化合物からなる単位は、それぞれ、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで含まれてよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、炭化水素基を含むアルキルエステルのほか、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アルコキシシリル基等の官能基を有するアルキル基であってもよい。
上記エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に係る成分〔D〕としては、上記の共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体又はエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物の1種以上を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体を用いることもできる。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水クロトン酸等が挙げられる。
上記酸無水物グラフト化重合体としては、未水添又は水添のスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体−g−無水マレイン酸共重合体(「g」はグラフトを表す。以下も同様である。)、未水添又は水添のスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・ブテン−1−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・2,5−ノルボルナジエン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル−g−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記酸無水物グラフト化重合体において、酸無水物のグラフト量(「酸変性量」ともいう。)は、該酸無水物グラフト化共重合体に対して、好ましくは0.3〜0.7質量%、より好ましくは0.35〜0.65質量%、更に好ましくは0.4〜0.6質量%である。この範囲であれば、十分な耐衝撃性が得られ、熱安定性の低下を抑制することができる。
上記酸無水物グラフト化共重合体は、公知の方法により製造することができ、下記に例示される。
(1)グラフト共重合反応前の重合体を有機溶媒に溶解させた後、酸無水物及びラジカル重合開始剤を添加して加熱攪拌しながらグラフト共重合反応を行う方法。
(2)グラフト共重合反応前の重合体を加熱して溶融させた後、この溶融状態で酸無水物及びラジカル重合開始剤を添加し攪拌することによりグラフト共重合反応を行う方法。
(3)各反応成分を押出機に供給して加熱混練することによりグラフト共重合反応を行う方法。
(4)グラフト共重合反応前の重合体の粉体に、酸無水物及びラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解した溶液を含浸させた後、上記粉体が溶解しない温度まで加熱し、グラフト共重合反応を行う方法。
上記グラフト共重合反応に用いられるラジカル重合開始剤は、通常、ラジカル重合反応に用いられる化合物から、適宜、選択して使用することができ、上記成分〔A〕の説明の中でゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に用いられる重合開始剤を適用することができる。
また、上記グラフト共重合反応に用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロルエチレン、クロルベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
また、上記酸無水物グラフト化共重合体は、該重合体に含まれるカルボン酸部が、カルボン酸金属塩となった重合体であってもよい。この金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、カルシウム塩等が挙げられる。
上記成分〔D〕の含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計を100質量%とした場合に、1〜50質量%であり、好ましくは3〜45質量%、より好ましくは5〜40質量%である。この範囲であれば、十分な耐衝撃性を得ることができる。尚、この成分〔D〕の含有量が多すぎると、成形加工性が低下する場合がある。
本発明において、成形加工性及び耐衝撃性の観点、また、成形加工性と、耐衝撃性、硬度及び曲げ歪みのバランスとの観点から、上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせは、下記に例示される。
(1)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体である態様。
(2)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(3)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(4)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(5)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(6)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(7)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(8)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(9)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(10)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(11)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体である態様。
(12)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(13)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体である態様。
(14)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(15)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体である態様。
(16)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(17)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体である態様。
(18)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(19)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体である態様。
(20)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(21)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(22)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(23)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(24)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(25)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(26)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋の非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋のエチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、非架橋のエチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(27)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種である態様。
(28)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋非ジエン系重合体を用いて得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋エチレン・α−オレフィン系共重合体、及び、架橋エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体から選ばれた少なくとも1種の重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(29)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体である態様。
(30)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として非架橋のジエン系重合体を用い、不飽和結合を有する酸無水物の非存在下に得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、非架橋の共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
(31)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用いて得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体である態様。
(32)成分〔A〕が、ゴム質重合体(a)として架橋ジエン系重合体を用い、不飽和結合を有する酸無水物の非存在下に得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂であり、成分〔D〕が、架橋共役ジエン系重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である態様。
上記の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)、(13)、(15)、(17)、(19)、(21)、(23)、(25)、(27)、(29)及び(31)の態様において、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂又は非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の形成に用いるビニル系単量体(b)は、上記のように、芳香族ビニル化合物等を含むことが好ましい。尚、このビニル系単量体(b)は、不飽和結合を有する酸無水物を含まないビニル系単量体、即ち、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)を用いることができる。
また、上記の(1)、(3)、(5)、(7)、(9)、(11)、(13)、(15)、(17)、(19)、(21)、(23)、(25)、(27)、(29)及び(31)の態様において、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂又は非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の形成に用いるビニル系単量体(b)は、上記ビニル系単量体(b’)であることが好ましい。
上記の態様のうち、(1)〜(12)、(15)、(16)、(21)、(22)、(25)、(26)、(29)及び(30)が好ましく、(1)、(2)、(4)、(7)、(8)、(9)、(10)、(15)、(16)、(25)及び(26)が特に好ましい。上記の態様は、組み合わせて適用することができ、これらを組み合わせる場合の例は、態様(3)〜(6)のうちの2以上、態様(3)、(4)、(7)及び(8)のうちの2以上、態様(1)、(2)、(3)及び(4)のうちの2以上、態様(3)、(4)、(21)及び(22)のうちの2以上、態様(5)、(6)、(9)及び(10)のうちの2以上、並びに、態様(7)〜(10)のうちの2以上である。
尚、上記(1)〜(32)の各態様において、成分〔A〕は、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂等他の樹脂成分を含有してもよい。
例えば、上記成分〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、このゴム強化樹脂は、非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、不飽和結合を有する酸無水物を含まず、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂である組成物とすることにより、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂の各性質を併せ持つ成形品を得ることができる。尚、上記組み合わせの場合の非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の配合量は、耐衝撃性、硬度及び曲げ歪みのバランスの観点から、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及びオレフィン系樹脂の合計を100質量%とした場合、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは4〜65質量%、更に好ましくは5〜60質量%である。
上記のように、複数の樹脂成分の組み合わせで多態様の組成物とすることができる。
本発明の組成物が、上記成分〔A〕として、ゴム強化樹脂を含有する場合、本発明の組成物中における、上記ゴム強化樹脂を構成するゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられたゴム質重合体(a)の含有量は、上記のように、好ましくは1〜50質量%である。しかしながら、本発明の組成物が、成分〔D〕を含有する場合には、ゴム質重合体(a)の含有量は、目的、用途等によって選択され、本発明の組成物に対して、通常、3〜40質量%、好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)を上記範囲で含有することにより、良好な成形加工性を維持し、優れた耐衝撃性、表面外観性、剛性、耐熱性等を有する成形品を得ることができる。尚、上記ゴム質重合体(a)の含有量は、成分〔D〕の種類によっても選択され、以下に示される。
上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記の(1)〜(6)の態様のいずれかである場合における、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、架橋ジエン系重合体の含有量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
また、上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記(7)〜(12)の態様のいずれかである場合における、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、非架橋のジエン系重合体の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは8〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
また、上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記(21)及び(22)の態様のいずれかである場合における、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、架橋非ジエン系重合体の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは8〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
更に、上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記の(1)〜(4)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、又は、上記の(3)〜(6)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、架橋ジエン系重合体の含有量の合計は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記の(3)、(4)、(7)及び(8)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、又は、上記の(5)、(6)、(9)及び(10)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、架橋ジエン系重合体及び非架橋のジエン系重合体の含有量の合計は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記の(7)〜(10)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、非架橋のジエン系重合体の含有量の合計は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは8〜35質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
また、上記の成分〔A〕及び〔D〕の組み合わせが、上記の(3)、(4)、(21)及び(22)の態様のうちの2以上の組み合わせによる場合、本発明の組成物中のゴム質重合体(a)、即ち、架橋ジエン系重合体及び架橋非ジエン系重合体の含有量の合計は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
上記のように、成分〔D〕は、上記成分〔A〕が、ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む場合、及び、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を含む場合、のいずれにおいても好ましく用いられ、耐衝撃性に優れた成形品、並びに、耐衝撃性、硬度及び曲げ歪みのバランスに優れた成形品を得ることができる。更に、上記成分〔A〕が、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及びオレフィン系樹脂を組み合わせてなる場合、オレフィン系樹脂を含む場合等において用いることにより、耐衝撃性に優れた成形品、並びに、耐衝撃性、硬度及び曲げ歪みのバランスに優れた成形品を得ることもできる。
1−3.成分〔B〕
この成分〔B〕は、特定の物性を有する黒鉛粒子である。即ち、アスペクト比が10〜20、好ましくは12〜18であり、重量平均粒子径が10〜200μm、好ましくは15〜180μmであり、固定炭素量が98質量%以上、好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。各物性が、上記範囲にあることにより、熱伝導性が一段と優れる。
上記アスペクト比は、電子顕微鏡等により縦横の各長さを測定し、算出することができる。重量平均粒子径は、レーザー回折法、光散乱法等により測定することができる。尚、本発明に係る「重量平均粒子径」は、粒度分布を測定して得られた、累積重量が50%であるときの粒子径(D50)を意味する。また、固定炭素量は、JIS M8511に準じて測定することができる。
また、上記成分〔B〕は、粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80を用いて得られる比D80/D20が2〜12であることが好ましい。より好ましくは2.5〜10である。上記比D80/D20が2未満では、熱伝導率が低下する傾向があり、組成物の製造が困難な場合がある。一方、比D80/D20が12を超えると、耐衝撃性及び成形外観性が低下する傾向がある。
上記成分〔B〕としては、α−黒鉛及びβ−黒鉛のいずれでもよい。また、これらを組み合わせてもよい。更に、天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれでもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
天然黒鉛としては、レーザーラマン測定により、1360cm−1あたりの波長においてバンドが認められないものであれば、特に限定されず、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛及び土状黒鉛が挙げられる。これらのうち、鱗片状黒鉛が好ましい。
上記成分〔B〕としては、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、下記に例示される。
(1)重量平均粒子径は限定されないが、アスペクト比が10〜15(好ましくは11〜14)の黒鉛粒子と、アスペクト比が15を超えて20以下(好ましくは16〜19)の黒鉛粒子との組み合わせ。
アスペクト比が限定されない例は、下記の通りである。
(2)重量平均粒子径が10〜50μm(好ましくは15〜40μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が50μmを超えて200μm以下(好ましくは70〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
(3)重量平均粒子径が10〜100μm(好ましくは15〜80μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が100μmを超えて200μm以下(好ましくは120〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
(4)重量平均粒子径が10〜150μm(好ましくは15〜130μm)の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下(好ましくは150〜180μm)の黒鉛粒子との組み合わせ。
(5)重量平均粒子径が10〜50μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が50μmを超えて120μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が120μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
(6)重量平均粒子径が10〜80μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が80μmを超えて150μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
(7)重量平均粒子径が10〜120μmの黒鉛粒子と、重量平均粒子径が120μmを超えて150μm以下の黒鉛粒子と、重量平均粒子径が150μmを超えて200μm以下の黒鉛粒子との組み合わせ。
本発明の組成物は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計を100質量部とした場合に、上記成分〔B〕を、10〜1,000質量部の範囲より選択して配合してなるものである。従って、要求される成形品性能等に応じて、成分〔B〕の種類(上記(1)〜(7))とともに、配合量を決定することができる。上記成分〔B〕の配合量が10質量部未満では、熱伝導性及び電磁シールド性が十分でなく、一方、1,000質量部を超えると、成形加工性が十分でない場合がある。
上記成分〔B〕の含有量が少量である組成物とする場合、上記成分〔B〕の配合量は、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは25〜82質量部、更に好ましくは42〜82質量部である。
また、上記成分〔B〕の含有量が多量である組成物とする場合、上記成分〔B〕の配合量は、好ましくは100〜1,000質量部、より好ましくは150〜900質量部、更に好ましくは230〜570質量部である。
上記の成分〔A〕、〔B〕及び〔D〕を主として含む本発明の組成物又はその成形品中に含まれる成分〔B〕は、公知の方法により作製した試験片に対し、電子顕微鏡等により観察することにより、アスペクト比及び平均粒子径(より詳細には、数平均粒子径)を求めることができる。上記のアスペクト比及び平均粒子径は、通常、それぞれ、配合前の成分〔B〕のアスペクト比及び重量平均粒子径と同様である。
本発明の組成物は、更に他の黒鉛粒子が配合されてなるものでもよい。該黒鉛粒子としては、〔C〕アスペクト比が3以下であり、重量平均粒子径(D50)が10〜70μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子(以下、「成分〔C〕」ともいう。)が好ましい。
以下、この成分〔C〕及び該成分〔C〕を含有する組成物について説明する。
1−4.成分〔C〕
この成分〔C〕は、特定の物性を有する黒鉛粒子である。即ち、アスペクト比が3以下、好ましくは1〜4であり、重量平均粒子径が10〜70μm、好ましくは15〜60μmであり、固定炭素量が98質量%以上、好ましくは98.5質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。各物性が、上記範囲にあることにより、熱伝導性が一段と優れ、特に、成形品とした場合に、その成形方法による流れ方向及び直角方向において、熱伝導率の差が小さくなる。
尚、上記成分〔C〕について、粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80の比D80/D20は、特に限定されない。
上記成分〔C〕としては、α−黒鉛及びβ−黒鉛のいずれでもよい。また、これらを組み合わせてもよい。更に、天然黒鉛及び人造黒鉛のいずれでもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
天然黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛及び土状黒鉛が挙げられる。これらのうち、鱗片状黒鉛が好ましい。
上記成分〔C〕としては、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記成分〔C〕の使用に際しては、重量平均粒子径が10〜70μmの成分〔B〕と併用してもよいが、重量平均粒子径が70μmを超える、例えば、100〜200μmの成分〔B〕と併用することが好ましい。重量平均粒子径の大きな成分〔B〕のみを用いた場合には、隣り合う黒鉛粒子どうしの間に間隙ができるため、重量平均粒子径が10〜70μmの成分〔C〕を併用することにより、その間隙を満たすことができ、より熱伝導性及び電磁シールド性を向上させることができる。
上記成分〔C〕の配合量は、上記成分〔B〕の配合量を100質量部とした場合に、好ましくは70質量部以下、より好ましくは5〜60質量部、更に好ましくは8〜50質量部である。この配合量が多すぎると、熱伝導性及び電磁シールド性の改良効果が十分でない場合がある。但し、上記成分〔C〕の配合量を70質量部以下とした場合、上記成分〔B〕の配合量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕を100質量部とした場合に、通常、600質量部以下である。
上記の成分〔A〕、〔B〕、〔C〕及び〔D〕を主として含む本発明の組成物又はその成形品中に含まれる成分〔B〕及び〔C〕は、公知の方法により作製した試験片に対し、電子顕微鏡等により観察することにより、アスペクト比及び平均粒子径(より詳細には、数平均粒子径)を求めることができる。即ち、黒鉛粒子の形状及び大きさにより成分〔B〕及び〔C〕に分類した後、これらを求めることができる。上記のアスペクト比及び平均粒子径は、それぞれ、配合前の成分〔B〕及び〔C〕のアスペクト比及び重量平均粒子径と同様である。
1−5.添加剤
本発明の組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、離型剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフィライトクレー、シラン処理クレー、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラスナイト、ゼオライト、ゾノトライト、アスベスト、PMF(Processed Mineral Fiber)、胡粉、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルン、シリカバルン、ハイドロタルサイト、フライアシュバルン、シラスバルン、カーボン系バルン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは2〜25質量部、更に好ましくは2〜20質量部である。
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。
上記酸化防止剤としては、ホスファイト類、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤を用いる場合の含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記紫外線吸収剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系、モリブデン系、スズ酸亜鉛、グアニジン塩、シリコーン系、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記難燃剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは3〜35質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。
尚、本発明の組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ、酸化鉄等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記離型剤としては、ワックス類、シリコーンオイル、脂肪族カルボン酸及びその金属塩、ポリアルキレングリコール、鉱油等が挙げられる。
上記離型剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕、〔D〕及び全黒鉛粒子の合計を100質量部とした場合、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜8質量部である。この範囲であれば、金型汚染を引き起こすことなく、良好な離型性をもって成形品を得ることができる。
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜15質量部、更に好ましくは1〜10質量部である。
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤を用いる場合のその含有量は、上記の成分〔A〕及び〔D〕の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
上記着色剤としては、有機染料、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物は、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等により、原料成分を混練することにより製造することができる。原料成分の使用方法は特に限定されず、各々の成分を一括配合して混練してもよく、多段、分割配合して混練してもよい。
本発明の組成物は、熱伝導性に優れ、下記実施例に記載の方法で測定される熱伝導率は、好ましくは7W/m・K以上、より好ましくは10〜50W/m・K、更に好ましくは15〜40W/m・Kである。特に、成分〔C〕を含有する組成物を用い、射出成形等により成形品とした場合には、熱伝導率は、成形時の組成物の流れ方向及びその垂直方向において差が小さくなり、成形品全体として熱伝導性に優れる。従って、発熱部材を備える部品、装置、機器等から熱を外部に逃がす用途に好適である。
また、本発明の組成物は、電磁シールド性にも優れ、100MHzの周波数における電磁シールド効果は、好ましくは15dB以上、より好ましくは15〜60dB、更に好ましくは20〜55dBである。
更に、本発明の組成物は、耐衝撃性にも優れ、ISO179に準ずるシャルピー衝撃強さは、好ましくは4kJ/m以上、より好ましくは5kJ/m以上、更に好ましくは6kJ/m以上とすることができる。
2.成形品
近年、パソコン、ワープロ、テレビゲーム等のコンピュータを利用した電子機器等が身近なものとなっている。これらの電子機器は高速の信号を利用しているため、電磁波の影響を受け易く、またこれらの機器自身も電磁波を発生している。電波の利用範囲が拡大するにつれて、電磁環境が悪化し、電磁波同士が互いに干渉したり、ある機器には有効なものでも他方の機器には障害となったりする。更に、様々な原因で発生する不要電磁波もまた電磁環境を汚染すると言われている。本発明の組成物は、上記のような電磁環境の汚染に対して良好な環境を確保するために、外部との電磁波の往来を遮断させる成形品に好適である。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、射出成形、押出成形(シート押出、異形押出)、中空成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形、ブロー成形等の公知の成形法により、成形品とすることができる。即ち、本発明の成形品は、上記熱伝導性樹脂組成物を含む。
成形温度は、特に、成分〔A〕及び〔D〕の種類等によって選択されるが、通常、各種成形機におけるシリンダー温度を220〜270℃、好ましくは230〜260℃として、成形される。
本発明の成形品としては、ハウジング、基板、パネル、ヒートシンク、放熱フィン、ファン、パッキン、玩具等が挙げられる。これらのうち、特に、耐衝撃性の要求されるハウジングが好適である。
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
1.熱伝導性樹脂組成物の原料成分
熱伝導性樹脂組成物の製造に用いた原料成分を以下に示す。尚、ゴム質重合体の重量平均粒子径;黒鉛粒子の重量平均粒子径並びに累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80を用いて得られる比D80/D20については、日機装社製マイクロトラック粒度分布測定装置「FRA型」を用いて測定した。黒鉛粒子のアスペクト比は、電子顕微鏡(SEM)による画像から、粒子100個の最長径及び最短径の各平均値を用いて算出した。また、黒鉛粒子の固定炭素量は、JIS M8511に準じて測定した。
1−1.熱可塑性樹脂〔A〕
[1]ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)
ジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径280nm及びゲル分率(トルエン不溶分)80%のポリブタジエンゴム粒子を含むラテックスの存在下に、スチレン及びアクリロニトリルを乳化重合させて得られた、ポリブタジエンゴム41.5%、スチレン単位量42.7%及びアクリロニトリル単位量15.8%からなるジエン系ゴム強化ビニル系樹脂を用いた。
この樹脂のグラフト率は55%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.45dl/gである。
[2]非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−2)
まず、1,3−ブタジエンを用いてなる共重合体(水素添加前重合体)を合成し、その後、水素添加により、水素添加重合体(非ジエン系ゴム質重合体)を製造した。次いで、この水素添加重合体を用いて、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−2)を製造した。以上の工程を以下に示す。
(1)容積50リットルのオートクレーブに、脱気及び脱水したシクロヘキサン25kg及び1,3−ブタジエン800gを仕込み、n−ブチルリチウム1.0gを添加して、温度50℃で等温重合を行った。重合転化率がほぼ100%となった後、テトラヒドロフラン30g、1,3−ブタジエン2,400g及びスチレン200gを添加し、50℃から80℃への昇温重合を行った。
重合転化率がほぼ100%となった後、更にスチレン600gを添加し、15分間重合を行い、P−Q−Q型トリブロック共重合体(水素添加前重合体)を得た。
一方、別の容器で、チタノセンジクロライド15gをシクロヘキサン240ミリリットル中に分散させ、その後、トリエチルアルミニウム20gを添加し、室温で反応させた。次いで、これにより得られた、見かけ上均一な溶液(暗青色)を、上記P−Q−Q型トリブロック共重合体を含む重合体溶液に添加し、温度50℃、及び、水素ガスの圧力50kgf/cmの条件下、水素化反応を2時間行った。
その後、メタノール及び塩酸を用いて脱溶媒し、2,6−ジ−tert−ブチルカテコールを添加して、減圧乾燥することにより、水素添加されたP−Q−Q型トリブロック共重合体(水素添加重合体)を得た(水素添加率97%)。この水素添加重合体の分子特性を表1に示す。
Figure 2007238917
(2)リボン型翼を備えたステンレス製オートクレーブの内部を窒素ガスにより置換した後、このオートクレーブに、窒素気流中、予め、上記水素添加重合体28部(固形分)をトルエンに均一に溶解した溶液と、スチレン7部と、アクリロニトリル10部と、メタクリル酸メチル55部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、トルエン(全量で120部)とを仕込み、撹拌しながら昇温した。混合物の温度が50℃に達した時点で、ベンゾイルパーオキサイド0.5部及びジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、更に昇温した。反応系を温度80℃で保持しながら、重合反応を進めた。
反応開始から6時間経過した後、1時間かけて120℃まで昇温し、更に2時間反応させて終了した。重合転化率は97%であった。
次いで、反応系を100℃まで冷却し、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2部を添加した。その後、反応生成物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により溶媒及び未反応物を留去するとともに、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−2)を得た。グラフト率は35%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.30dl/gであった。
[3]非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−3)
リボン型翼を備えたステンレス製オートクレーブの内部を窒素ガスにより置換した後、このオートクレーブに、窒素気流中、予め、JSR社製EPDM「EP82」(商品名)32部をトルエンに均一に溶解した溶液と、スチレン44部と、アクリロニトリル24部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、トルエン(全量で120部)とを仕込み、撹拌しながら昇温した。混合物の温度が50℃に達した時点で、ベンゾイルパーオキサイド0.5部及びジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、更に昇温した。反応系を温度80℃で保持しながら、重合反応を進めた。
反応開始から6時間経過した後、1時間かけて120℃まで昇温し、更に2時間反応させて終了した。重合転化率は97%であった。
次いで、反応系を100℃まで冷却し、2,2−メチレンビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール0.2部を添加した。その後、反応生成物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により溶媒及び未反応物を留去するとともに、非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(A−3)を得た。グラフト率は60%、アセトン可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.40dl/gであった。
[4]アクリロニトリル・スチレン樹脂(A−4)
スチレン単位量74.5%及びアクリロニトリル単位量25.5%からなる共重合体を用いた。極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は0.60dl/gである。
[5]ポリカーボネート樹脂(A−5)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製の「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。GPCによる粘度平均分子量は22,000である。
[6]ブロックタイプポリプロピレン(A−6)
日本ポリプロ社製の「NOVATEC BC6C」(商品名)を用いた。
[7]ホモタイプポリプロピレン(A−7)
日本ポリプロ社製の「NOVATEC EA9」(商品名)を用いた。
[8]ブロックタイプポリブロピレン(A−8)
日本ポリプロ社製の「ノバテックBC6DR」(商品名)を用いた。
1−2.黒鉛粒子〔B〕
[1]黒鉛粒子(B−1)
中越黒鉛工業所社製、商品名「HF−150A」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は161μm、固定炭素量は99.8%である。また、D80/D20は2.7である。
[2]黒鉛粒子(B−2)
中越黒鉛工業所社製、商品名「CBR」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は18.7μm、固定炭素量は99.7%である。また、D80/D20は4.3である。
1−3.黒鉛粒子〔C〕
[1]黒鉛粒子(C1−1)
中越黒鉛工業所社製、商品名「WF−015」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は1、重量平均粒子径は16.8μm、固定炭素量は99.7%である。また、D80/D20は1.7である。
[2]黒鉛粒子(C1−2)
中越黒鉛工業所社製、商品名「WF−025」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は1、重量平均粒子径は28.8μm、固定炭素量は99.8%である。また、D80/D20は1.1である。
[3]黒鉛粒子(C2−1)
中越黒鉛工業所社製、商品名「S−87」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径は15μm、固定炭素量は85.0%である。また、D80/D20は3.4である。
[4]黒鉛粒子(C2−2)
西村黒鉛社製、商品名「PB−99」を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は5、重量平均粒子径は14.7μm、固定炭素量は99.0%である。また、D80/D20は5.2である。
1−4.耐衝撃性改良剤〔D〕
[1]無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(D−1)
JSR社製の「T7741P」(商品名)を用いた。赤外分光法による酸変性量は0.5%、密度は0.86g/cm、JIS K7210に準ずるMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は1.0g/10分である。
[2]無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(D−2)
JSR社製の「T7712SP」(商品名)を用いた。赤外分光法による酸変性量は0.3%、密度は0.87g/cm、JIS K7210に準ずるMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は5.0g/10分である。
[3]スチレン・ブタジエン系熱可塑性エラストマー(D−3)
JSR社製の「TR2000」(商品名)を用いた。スチレン/ブタジエン比40/60、重量平均分子量は10万、比重は0.96g/cm、JIS K7210に準ずるMFR(温度190℃、荷重2.16kg)は3.0g/10分である。
[4]ポリブタジエン系水添重合体(D−4)
JSR社製の「DYNARON 6200P」(商品名)を用いた。密度は0.88g/cm、ASTM D1238に準ずるMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は2.5g/10分である。
[5]スチレン・ブタジエン系水添重合体(D−5)
JSR製のスチレン・エチレン−ブチレン・スチレンブロック共重合体「DYNARON 8601P」(商品名)を用いた。スチレン含量15%、密度は0.89g/cm、ASTM D1238に準ずるMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は3.5g/10分である。
[6]EPDM(D−6)
JSR社製の「EP02P」(商品名)を用いた。
1−5.難燃剤
[1]芳香族縮合リン酸エステル
1,3−フェニレンビスジキシレニルホスフェート(大八化学社製、商品名「PX−200」)を用いた。
[2]ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
ヘキストジャパン社製、「Hostaflon」(商品名)を用いた。
1−6.添加剤
上記難燃剤による難燃性を改良するため、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製、商品名「KF−96H−12,500cs」)を用いた。動粘度(25℃)は12,500mm/s、比重は0.975g/cmである。
1−7.酸化防止剤
[1]ヒンダードフェノール系酸化防止剤(E−1)
テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]メタン(旭電化工業社製、商品名「アデカスタブAO−60」)を用いた。
[2]ホスファイト系酸化防止剤(E−2)
サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト(旭電化工業社製、商品名「アデカスタブPEP−36」)を用いた。
2.熱伝導性樹脂組成物の製造及び評価
実施例1〜11及び比較例1〜10
上記の各原料成分を、表2〜表5の配合割合でヘンシェルミキサーにより5分間混合した。その後、二軸押出機を用いて溶融混練(シリンダー設定温度240〜260℃)し、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を得た。その後、このペレットを十分に乾燥し、射出成形機(日本製鋼社製、型式「J100−5C」)に導入して、評価項目に準じた、所定形状及び大きさの評価用試験片を得た。成形条件は、シリンダー設定温度が230〜260℃、金型温度が70℃である。
各評価項目及びその測定方法は、下記の通りである。評価結果を表2〜表5に示した。
(1)成形加工性
シリンダー温度240℃及び射出圧80%の条件下、射出成形機(新潟鉄工所社製「NN30B型」)により、縦55mm、横80mm及び厚さ2.4mmの板状試験片の成形状況から、成形加工性を下記基準で判定した。
○;射出成形が可能であった。
×;ショートショットとなり、成形できなかった。
(2)耐衝撃性
ISO179に準じて、シャルピー衝撃強さを測定した。単位は、kJ/mである。
(3)熱伝導率
熱伝導率は、試験片成形時の組成物の流動方向に対して測定した値(以下、「熱伝導率(I)」という。)、及び、該流動方向に対して垂直の厚み方向で測定した値(以下、「熱伝導率(II)」という。)を示した。
熱伝導率(I)は、下記方法により測定した。
DYNATECH R&D社製の定常熱流計(型式「TCHM−DV」)を用い、60℃における熱伝導率を測定した。試験片1は、内径50mm及び厚さ5.5mmの円板である。測定に際し、試験片の上下面の温度差を正確に測定するため、図1に示すように、CC(銅−コンスタンタン)熱電対を試験片1中央の上下面にホットプレスにより埋め込んだ。ホットプレスを用いることにより、試験片1の平坦性を高めるとともに、試験片1と熱電対との密着性を高めることができる。熱伝導率の測定は、熱流量を安定させるため、1時間、所定温度に保った後に行った。
また、熱伝導率(II)は、アルバック理工社製のレーザーフラッシュ法熱定数測定装置(型式「TR−7000R」)を用い、25℃における熱伝導率を測定した。試験片は、内径10mm及び厚さ1.5mmの円板である。
(4)電磁シールド性
アドバンテスト社製スペクトラムアナライザ(型式「R3361A」及び「TR17301」)を用い、100MHzの周波数における電磁波の反射性を測定し、電磁シールド性を評価した。試験片は、150mm×150mm×3mmである。
(5)表面固有抵抗
抵抗値により、下記の3種の装置を使い分けて測定した。試験片は、内径100mm、厚さ2mmの円板であり、抵抗値の単位はΩである。
1×10Ω以下; ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計「ロレスタGP MCP−T600型」。
1×10Ω〜1×1012Ω; ダイアインスツルメンツ社製抵抗率計「ハイレスタUP MCP−HT450型」。
1×10Ω〜1×1016Ω; Agilent Technologies社製ハイ・レジスタンス・メータ「4339B」。
(6)難燃性
UL94規格に準じ、垂直燃焼試験を行った。試験片は、長さ127mm、幅13mm及び厚さ2.0mmの平板である。
Figure 2007238917
Figure 2007238917
Figure 2007238917
Figure 2007238917
表2〜表5より、以下のことが明らかである。
実施例1〜9、及び、比較例1〜6は、ゴム強化ビニル系樹脂とビニル系単量体の(共)重合体との混合物からなるゴム強化樹脂を成分〔A〕として用いた例である。比較例1及び6は、成分〔B〕を含有しない、又は、その配合量が、本発明の範囲外で少ないため、熱伝導率(I)及び(II)が十分ではなく、電磁シールド性並びに表面固有抵抗に劣っていた。比較例2は、成分〔B〕の配合量が、本発明の範囲外で多いため、成形加工性及び耐衝撃性が劣っていた。比較例3及び5は、成分〔D〕を含有しない例であり、耐衝撃性に劣っていた。比較例4は、成分〔D〕の配合量が、本発明の範囲外で多いため、溶融混練ができなかった。一方、実施例1〜9は、成形加工性、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れていた。
また、実施例10及び11、並びに、比較例7〜10は、成分〔A〕が、ゴム強化樹脂及びポリカーボネート樹脂からなる例である。比較例7及び8は、成分〔D〕を含有しない例であり、耐衝撃性に劣っていた。比較例9及び10は、成分〔B〕を含有しない、又は、配合量が、本発明の範囲外で少ないため、熱伝導率(I)及び(II)が十分ではなく、電磁シールド性並びに表面固有抵抗に劣っていた。一方、実施例10及び11は、成形加工性、熱伝導性、電磁シールド性及び耐衝撃性に優れていた。尚、実施例11は、難燃剤を配合した例であり、V−0を達成した。
実施例12〜36及び比較例11〜12
上記の各原料成分を、表6〜表9の配合割合でヘンシェルミキサーにより5分間混合した。その後、二軸押出機を用いて溶融混練し、ペレット(熱伝導性樹脂組成物)を得た。その後、このペレットを十分に乾燥し、日本製鋼社製の射出成形機「J100E型」に供給して、評価項目に準じた、所定形状及び大きさの評価用試験片を作製し、評価した。
尚、実施例12〜19及び比較例11において、組成物製造のための混練時のシリンダー温度は210〜240℃であり、成形条件は、シリンダー温度が210〜240℃、金型温度が40℃、射出速度が60mm/秒、保圧力が50MPaである。また、成形加工性評価のための試験片の成形条件は、シリンダー温度が250℃、金型温度が50℃、射出圧が20%である。
また、実施例20〜36及び比較例12において、組成物製造のための混練時のシリンダー温度は210〜240℃であり、成形条件は、シリンダー温度が210〜240℃、金型温度が50℃、射出速度が60mm/秒、保圧力が50MPaである。また、成形加工性評価のための試験片の成形条件は、シリンダー温度が250℃、金型温度が50℃、射出圧が20%である。
Figure 2007238917
Figure 2007238917
Figure 2007238917
Figure 2007238917
表6より、成分〔A〕(オレフィン系樹脂)の種類が同じであり、成分〔B〕の配合量を一定とした実施例12及び19を比較すると、曲げ歪み及び硬度がほぼ同等であるのに、実施例19においてシャルピー衝撃強さが約1.5倍も向上している。
また、表6〜表9より、成分〔A〕及び〔D〕の配合割合を様々とすることにより、機械的強度が広範囲に得られる。例えば、表7における実施例20、25及び26のように、成分〔A〕及び〔B〕の種類及び配合量が同じ場合、成分〔D〕の種類を変えることにより、シャルピー衝撃強さ、曲げモジュラス、曲げ歪み及び硬度が変化している。従って、所望の物性を有する成形品の設計に好適である。比較例11及び12は、成分〔B〕の配合量が、本発明の範囲外で少ないため、熱伝導率(I)及び(II)が十分ではなかった。また、比較例13は、成分〔D〕の配合量が、本発明の範囲外で多いため、溶融混練ができなかった。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、成形加工性及び耐衝撃性に優れるため、形状及び大きさについて、選択性が高い。また、金属、合金等の熱伝導率の高い成分を含有しなくとも、熱伝導性及び電磁シールド性に優れた成形品とすることができる。従って、ハウジング、基板、パネル、ヒートシンク、放熱フィン、ファン、パッキン、玩具等として用いることができる。これらの部材は、回路基板、チップ、サーマルヘッド、モーター等の電子部品;テレビ、ラジオ、カメラ、ビデオカメラ、オーディオ、ビデオ、照明具等の電気機器等に好適であり、特に、電子部品等からの熱を外部に逃がすためのハウジング、ヒートシンク及びファン;オーディオバックパネル;液晶テレビの液晶板固定部材等に好適である。
実施例で成形された試験片を用いた熱伝導率(I)の測定方法を示す概略説明図である。
符号の説明
1;試験片
2;銅線
3;コンスタンタン線
4;熱電対溶接部。

Claims (15)

  1. 〔A〕熱可塑性樹脂と、〔B〕アスペクト比が10〜20であり、重量平均粒子径が10〜200μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子と、〔D〕耐衝撃性改良剤とが配合されてなり、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、10〜1,000質量部であり、上記耐衝撃性改良剤〔D〕の含有量は、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び該耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量%とした場合に、1〜50質量%であることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
  2. 上記黒鉛粒子〔B〕の形状が鱗片状である請求項1に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  3. 上記黒鉛粒子〔B〕の粒度分布を測定して得られた、累積重量が、それぞれ、20%及び80%であるときの粒子径D20及びD80を用いて得られる比D80/D20が2〜12である請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  4. 更に、〔C〕アスペクト比が3以下であり、重量平均粒子径が10〜70μmであり、且つ、固定炭素量が98質量%以上である黒鉛粒子が、上記黒鉛粒子〔B〕の配合量を100質量部とした場合に、70質量部以下配合されてなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  5. 上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂(A1)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)とビニル系単量体の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂、ポリカーボネート樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  6. 上記ビニル系単量体(b)が、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)である請求項5に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  7. 上記熱可塑性樹脂〔A〕が、ゴム強化樹脂及びオレフィン系樹脂を含み、該ゴム強化樹脂は、非ジエン系ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物のうちの少なくとも芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b’)を重合して得られた非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂であり、且つ、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の配合量が、該非ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂及び該オレフィン系樹脂の合計に対して、3〜70質量%である請求項5に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  8. 上記非ジエン系ゴム質重合体が、エチレン・α−オレフィン系共重合体ゴム、及び/又は、共役ジエン系化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックと、芳香族ビニル化合物よりなる単位を主として含む重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物である請求項7に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  9. 上記耐衝撃性改良剤〔D〕が、共役ジエン系重合体、エチレン・α−オレフィン系共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、並びに、これらの重合体の存在下、不飽和結合を有する酸無水物を反応させて得られた酸無水物グラフト化重合体及びその金属塩から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  10. 上記酸無水物グラフト化重合体における酸無水物のグラフト量が、該酸無水物グラフト化重合体に対して0.3〜0.7質量%である請求項9に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  11. 更に、難燃剤を含有し、該難燃剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、1〜40質量部である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  12. 更に、酸化防止剤を含有し、該酸化防止剤の含有量が、上記熱可塑性樹脂〔A〕及び上記耐衝撃性改良剤〔D〕の合計を100質量部とした場合に、0.01〜5質量部である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  13. 熱伝導率が7W/m・K以上である請求項1乃至12のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  14. 100MHzの周波数における電磁シールド効果が15dB以上である請求項1乃至13のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物。
  15. 請求項1乃至14のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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