JP5217596B2 - 非水溶媒二次電池用集電体並びにこれを用いた電極および電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水溶媒二次電池用集電体並びにこれを用いた電極および電池に関する。
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
モータ駆動用二次電池としては、全ての電池の中で最も高い理論エネルギを有するリチウムイオン二次電池などの非水溶媒二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続されてなる積層体(電池要素)を有する。また、外部へ電力を取り出す目的で、電池要素には電極端子(正極端子および負極端子)が電気的に接続され、当該電池要素はさらに、アルミニウム等の軽量金属からなる箔の両面に樹脂シートが積層されてなる金属−樹脂ラミネートシート中に、電極端子が外部に導出するように収容されるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照)。
ここで、リチウムイオン二次電池の電極を構成する集電体としては、通常、正極にはアルミニウムなどの金属からなる箔が用いられ、負極には銅などの金属からなる箔が用いられるのが一般的である。
そして、これらの箔を集電体として用いて電極を製造する際には、電極活物質やバインダ等を溶媒に分散させたスラリーを当該箔の表面に塗布し、乾燥させた後、ロールプレス等の手法を用いてプレス処理を施す。これにより、平坦でかつ所望の厚さの活物質層が、箔の表面に形成される。
しかしながら、従来一般的に用いられているアルミニウム箔や銅箔を集電体として用いて電極を作製すると、上述したプレス処理によって箔に皺が生じるという問題がある。このように箔に皺が生じると、これに起因して箔から活物質が剥離してしまうという問題が生じる。
かような皺の発生を抑制することを目的として、プレス処理の処理条件を最適化することが行われている。具体的には、例えば、集電体を厚くする、活物質層を形成するためのスラリーの塗布量を減らす、プレス処理の際の圧力を小さくする、などの手法が試みられている。
しかしながら、かようなプレス処理条件の調節のみでは皺の発生が充分に抑制されない場合がある。また、集電体を厚くしたり、プレス圧力を小さくしたりすると、活物質層の体積の増加に起因して、電池の体積エネルギ密度が低下するという問題も生じる。さらに、スラリー塗布量の削減は、電池全体の容量そのものを低下させてしまう。
そこで、これらの種々の問題の発生を最小限に抑制すべく、プレス処理条件の調節以外にも種々の解決手段が提案されている。例えば、電極作製時に集電体の上方にメッシュを配置し、当該メッシュを通して活物質を堆積させることで、メッシュ形状に活物質層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2では、かような構成とすることで、活物質層が形成された部位における活物質の膨張収縮に起因する応力を、活物質層がほとんどまたは全く形成されない部位を設けることで緩和し、最終的には当該応力による集電体の皺の発生を防止することを試みている。
なお、活物質の担持性と電気伝導性とに優れた二次電池負極用金属箔と提供することを目的として、電解析出法によって形成された単層の金属箔においてビッカース硬さやヤング率などのパラメータを制御する技術が提案されている(例えば、特許文献3および4を参照)。
特開2001−236946号公報 特開2002−279974号公報 特開2002−279999号公報 特開2002−280000号公報
しかしながら、特許文献2に記載の技術もまた、活物質層における活物質の含有量を部分的に削減していることに変わりはなく、体積エネルギ密度の低下が避けられないという問題は依然として残っている。かような体積エネルギ密度の低下の影響は、より一層の小型化が求められている車載用リチウムイオン二次電池において顕著である。また、集電体における皺の発生を抑制すべく、単に剛性の高い材料を用いて集電体を構成した場合には、活物質層と集電体との間で十分な密着性が得られず、活物質層の剥離やこれに伴う電池容量の低下などの問題が発生する虞がある。
そこで本発明は、非水溶媒二次電池において、体積エネルギ密度の減少を防止しつつ、集電体における皺の発生を最小限に抑制し、さらには活物質層と集電体との間の密着性を向上させうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、弾性率や剛性に関わる特定のパラメータ(具体的には、ヤング率(E)やビッカース硬さ(Hv))が制御された積層構造の集電体を採用することで、当該課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1は、第1の金属層と、前記第1の金属層の表面に積層された第2の金属層と、を含む非水溶媒二次電池用集電体であって、前記第1の金属層を構成する金属のヤング率(E1)および厚さ(T1)、並びに前記第2の金属層を構成する金属のヤング率(E2)および厚さ(T2)が、下記数式1:
Figure 0005217596
を満足することを特徴とする、非水溶媒二次電池用集電体である。
また、本発明の第2は、第1の金属層と、前記第1の金属層に積層された第2の金属層と、を含む非水溶媒二次電池用集電体であって、前記第1の金属層のビッカース硬さ(Hv1)および厚さ(T1)、並びに前記第2の金属層のビッカース硬さ(Hv2)および厚さ(T2)が、下記数式2:
Figure 0005217596
を満足することを特徴とする、非水溶媒二次電池用集電体である。本発明の第1および第2の双方の構成要件を満足する集電体もまた、好ましい。
上述した本発明の第1および第2の非水溶媒二次電池用集電体においては、第1の金属層の第2の金属層が積層された面の裏面に、第2の金属層を構成する金属と同一の金属から構成される金属層がさらに積層されていてもよい。かような構成を有する集電体は、電池要素が双極型(直列接続)でない並列接続型の電池(以下、単に「積層型電池」とも称する)用の電極に好ましく用いられうる。換言すれば、かような構成を有する集電体が電池に用いられる場合には、極性(正極・負極)が同一の活物質層が当該集電体の両面に形成されることが好ましい。
さらに、上述した本発明の第1および第2の非水溶媒二次電池用集電体においては、第1の金属層の第2の金属層が積層された面の裏面に、第3の金属層がさらに積層され、前記第3の金属層のヤング率(E3)およびビッカース硬さ(Hv3)、並びにE1、Hv1、E2およびHv2が、下記数式:
Figure 0005217596
を満足する形態もまた、好ましい。かような構成を有する集電体は、電池要素が双極型(直列接続)の電池(以下、単に「双極型電池」とも称する)用の電極(以下、単に「双極型電極」とも称する)に好ましく用いられうる。換言すれば、かような構成を有する集電体が電池に用いられる場合には、当該集電体のそれぞれの表面に形成されたそれぞれの活物質層の極性(正極・負極)が異なることが好ましい。
本発明の非水溶媒二次電池用集電体によれば、非水溶媒二次電池において、体積エネルギ密度の減少を防止しつつ、集電体における皺の発生が最小限に抑制され、さらには活物質層と集電体との間の密着性が向上しうる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。
図1に示すように、本実施形態の集電体1は2層の金属層からなる構造を有する。具体的には、第1の金属層100と、第2の金属層200とが積層されてなる構造を有する。本実施形態の集電体1は、一般的な電池用集電体と同様に、その一方の面または両面に活物質層が形成されて電極となり、最終的には電池を構成する。
本実施形態の集電体1において、第1の金属層100を構成する金属(以下、「第1の金属」とも称する)および第2の金属層200を構成する金属(以下、「第2の金属」とも称する)は、第1の金属のヤング率(E1)およびビッカース硬さ(Hv1)、並びに第2の金属のヤング率(E2)およびビッカース硬さ(Hv2)が所定の関係を満たすように選択される。
ここで、ヤング率(E)とは、弾性範囲で応力に対するひずみの値を規定する値であり、物質に固有の値である。換言すれば、弾性範囲での応力とひずみとの関係を示す下記のフックの法則:
Figure 0005217596
より、ヤング率(E)はE=σ/εとして算出されうる。よって、ヤング率(E)が大きいほど、一定応力によるその物質のひずみは小さいことを意味する。なお、本願におけるヤング率の値としては、後述する実施例に記載の手法により得られる値を採用するものとする。
また、ビッカース硬さ(Hv)とは、物質の硬さを規定する値であり、同様に物質に固有の値である。ビッカース硬さ(Hv)は、大雑把に言えば、所定のピラミッド形ダイヤモンド製圧子を材料表面に押し込み、その際に生じたへこみの表面積と荷重との関係から算出され、Hvが大きいほどその物質は硬いことを意味する。なお、本願におけるビッカース硬さの値としては、後述する実施例に記載の手法により得られる値を採用するものとする。
具体的には、第1の金属のヤング率(E1)は第2の金属のヤング率(E2)よりも大きい(E1>E2)。また、第1の金属のビッカース硬さ(Hv1)は第2の金属のビッカース硬さ(Hv2)よりも大きい(Hv1>Hv2)。かような構成とするための第1の金属および第2の金属の具体的な種類は特に制限されず、電池用の集電体材料として従来用いられている金属が適宜採用されうる。一例を挙げると、第1の金属としてはニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタンまたは銅が挙げられる。なかでも、皺の発生を防止するという観点からは、ニッケル、鉄が好ましく、ニッケルが最も好ましい。また、第2の金属としてはアルミニウムまたは銅が挙げられ、なかでも、電極活物質の埋錨効果を十分に得るという観点からは、アルミニウムが最も好ましい。参考までに、これらの金属のヤング率(E)およびビッカース硬さ(Hv)の値を、本願の実施例の値をもとに下記の表1に示す。
Figure 0005217596
さらに、本実施形態の集電体1において、第1の金属層100の厚さ(T1)は、第2の金属層200の厚さ(T2)よりも小さい(T1<T2)。それぞれの金属層(T1、T2)の具体的な厚さは特に制限されず、適用される電池の種類や製造の容易さなどを考慮して、適宜設定されうる。例えば、第1の金属層の厚さ(T1)は、好ましくは1〜100μm程度であり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。また、第2の金属層の厚さ(T2)は、好ましくは5〜200μm程度であり、より好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは10〜20μmである。かような範囲から、T1<T2を満たすように適宜設定されうる。さらに、第1の金属層の厚さ(T1)に対する第2の金属層の厚さ(T2)の比についても特に制限はないが、T1を基準(1)とした場合に、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜5であり、さらに好ましくは1〜2である。T1を基準とした場合にT2が1以上であれば、活物質と集電体との密着性を十分に向上させうる。一方、T1を基準とした場合にT2が10以下であれば、電池の体積容量密度の低下が抑制されうる。なお、金属層の厚さは、従来公知の手法(例えば、断面のSEM観察)により測定されうる。
集電体1の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体1が用いられる。小型の電池に用いられるのであれば、面積の小さな集電体1が用いられる。
上述したように、本実施形態の集電体1は、その表面に活物質層が形成されて、最終的には電池用の電極を構成する。この際、活物質層は集電体1の一方の面のみに形成されてもよいし、両面に形成されてもよい。
例えば、1層のみの単電池層(正極/電解質層/負極)からなる電池に用いる場合には、集電体1の一方の面のみに活物質層を形成すればよい。また、後述する双極型電池の最外層集電体として用いる場合にも、集電体1の一方の面のみに活物質層を形成すればよい。これらの場合において、活物質層は、第2の金属層の表面に形成するとよい。かような形態によれば、活物質層が形成される面の裏面が、比較的薄いがヤング率の大きい第1の金属からなる層(第1の金属層)で裏打ちされることとなり、電池の体積エネルギ密度の低下を防止しつつ、集電体の耐歪み性を向上させることができ、結果として活物質層形成時の皺の発生を効果的に防止することが可能となる。また、ビッカース硬さの比較的小さい第2の金属からなる層(第2の金属層)の表面に活物質層を形成することで、電池の体積エネルギ密度の低下を防止しつつ、集電体の剛性を向上させることができ、さらに活物質の埋錨効果によって集電体と活物質層との密着性を向上させることが可能となる。なお、この際に形成される活物質層が正極活物質層である場合には、第2の金属として耐酸化性の高いアルミニウムを採用することが好ましく、形成される活物質層が負極活物質層である場合には、第2の金属として銅を採用することが好ましい。
本実施形態の集電体1は、好ましくは、それぞれの層の表面に極性(正極・負極)の異なる活物質層が形成されて、双極型電池用の電極(以下、単に「双極型電極」とも称する)として用いられる。かような形態においては、第2の金属層の表面に正極活物質層を形成し、第1の金属層の表面に負極活物質層を形成することが好ましい。かような形態によってもまた、上記と同様に電池の体積エネルギ密度の低下を防止しつつ、活物質層形成時の皺の発生を抑制し、集電体と活物質層(特に正極活物質層)との密着性を向上させることが可能となる。
ここで、本実施形態における第1の金属と第2の金属との好ましい組み合わせを下記の表2に示すが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されることはない。
Figure 0005217596
本実施形態の集電体1の製造方法については特に制限はなく、金属積層体を製造可能な従来公知の技術(装置、条件等)が適宜参照されうる。一例を挙げると、第1の金属と第2の金属とを重ねて圧延機に供給し、圧延処理を施すことにより、本実施形態の集電体が製造可能である。また、めっき法やスパッタリング法などの技術が用いられても、勿論よい。
以上、第1の金属および第2の金属が、ヤング率(E)およびビッカース硬さ(Hv)の双方のパラメータについて所定の要件を満足する場合を例に挙げて本発明の第1実施形態を詳細に説明した。ただし、第1実施形態の変形例として、第1の金属および第2の金属が、ヤング率(E)またはビッカース硬さ(Hv)のいずれか一方のみについて上記の要件を満足し、他方については上記の要件を満足しない形態もまた、本発明の技術的範囲に包含される。
上述した通り、本実施形態の集電体1は、それぞれの層の表面に極性(正極・負極)の異なる活物質層が形成されて、双極型電極として用いられることが好ましい。ここで、参考までに、本実施形態の集電体1を採用した双極型電池の概要を示す断面図を図2に示す。
図2に示す双極型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の電池要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
図2に示すように、本実施形態の双極型電池10の電池要素21は、集電体1の一方の面(第2の金属層200の表面)に正極活物質層13が形成され他方の面(第1の金属層100の表面)に負極活物質層15が形成された複数の双極型電極を有する。各双極型電極は、電解質層17を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一の双極型電極の正極活物質層13と前記一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層17が積層されている。なお、電解質層17は、セパレータに電解質が保持されてなる構成を有する。
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。従って、双極型電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体1間を絶縁するための絶縁層31が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(1a、1b)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体1aの第2の金属層200の表面)または負極活物質層15(負極側最外層集電体1bの第1の金属層100の表面)のいずれか一方が形成されている。
さらに、図2に示す双極型電池10では、正極側最外層集電体1aが延長されて正極タブ25とされ、外装であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体1bが延長されて負極タブ27とされ、同様にラミネートシート29から導出している。
上述した通り、図2に示す双極型電池10では、第1実施形態の集電体1が双極型電極の集電体として採用されているが、集電体以外の構成要素については、非水溶媒二次電池の要素として従来公知の形態が適宜採用されうる。以下、双極型電池10を構成する集電体以外の部材について簡単に説明するが、下記の形態のみに制限されることはない。
[活物質層]
活物質層は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム−金属合金材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
各活物質層(13、15)に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは1〜5μmである。ただし、この範囲を外れる形態が採用されても、勿論よい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、活物質粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味するものとし、「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
正極活物質層13および負極活物質層15に含まれうる添加剤としては、例えば、バインダ、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。
導電助剤とは、正極活物質層13または負極活物質層15の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層(13、15)が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記イオン伝導性ポリマーは、双極型電池10の電解質層17において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
正極活物質層13および負極活物質層15中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
各活物質層(13、15)の厚さについても特に制限はなく、非水溶媒二次電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層(13、15)の厚さは、2〜100μm程度である。
[電解質層]
電解質層17は、セパレータに電解質が保持されてなる層である。電解質層17に含まれる電解質(具体的には、リチウム塩)は、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。
電解質層17を構成する電解質としては、一般に、液体電解質またはポリマー電解質が挙げられる。本発明においては、好ましくはポリマー電解質が用いられる。ポリマー電解質を用いることにより、電解質などの液漏れが防止され、双極型電池10の寿命が向上しうる。
ポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーから構成され、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。優れた機械的強度を発現させることを目的として、重合性のイオン伝導性ポリマーが、熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などにより架橋されてなるものが用いられてもよい。かかる架橋ポリマーを用いることで電池の信頼性が向上し、かつ簡易な構成で出力特性に優れた双極型電池10が得られる。この際に、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させるために配合されうる重合開始剤は、開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
ポリマー電解質としては、真性ポリマー電解質、およびゲルポリマー電解質が挙げられる。
真性ポリマー電解質としては、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。また、これらの高分子は、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。
また、ゲルポリマー電解質とは、一般的に、イオン伝導性を有する全固体高分子電解質に、電解液を保持させたものをいう。なお、本願では、リチウムイオン伝導性を有しない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも、ゲルポリマー電解質に含まれるものとする。用いられる電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されない。電解質塩としては、例えば、LiBETI、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO等のリチウム塩が例示される。また、可塑剤としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類などが例示される。
[絶縁層]
双極型電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁層31が設けられる。この絶縁層31は、電池内で隣り合う集電体1同士が接触したり、電池要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁層31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10が提供されうる。
絶縁層31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層31の構成材料として好ましく用いられる。
[タブ]
双極型電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、最外層集電体(1a、1b)に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が外装であるラミネートシート29の外部に取り出される。具体的には、正極用最外層集電体1aに電気的に接続された正極タブ25と、負極用最外層集電体1bに電気的に接続された負極タブ27とが、外装の外部に取り出される。
タブ(正極タブ25および負極タブ27)を構成する材料は特に制限されず、非水溶媒二次電池用のタブとして従来用いられている公知の材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極タブ25と負極タブ27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、本実施形態のように、最外層集電体(1a、1b)を延長することによりタブ(25、27)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
[外装]
双極型電池10においては、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、電池要素21は、ラミネートシート29などの外装内に収容されることが好ましい。外装としては特に制限されず、従来公知の外装が用いられうる。自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を迅速に電池動作温度まで加熱しうる点で、好ましくは、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートシート等が用いられうる。
なお、図2に示す双極型電池10を製造する方法についても特に制限はなく、双極型電池の製造に関する従来公知の知見が適宜参照されうる。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。
図3に示すように、本実施形態の集電体1においては、第1の金属層100および第2の金属層200に加えて、第1の金属層100の、第2の金属層200が積層された面の裏面にさらに他の金属層210(以下、「第2’の金属層」とも称する)が積層されている点で、上記の第1実施形態とは異なる。そして、当該第2’の金属層210は、第2の金属層200を構成する金属と同一の金属から構成されている。すなわち、本実施形態の集電体は、ヤング率(E)およびビッカース硬さ(Hv)が比較的小さい金属(第2の金属)から構成され、かつ、比較的厚い第2の金属層200および第2’の金属層210により、比較的薄い第1の金属層100が挟持されてなる構造を有する。
本実施形態の集電体1において、第1の金属層100および第2の金属層200を構成する金属(第1の金属、第2の金属)の種類等の具体的な形態や、これらの層(100、200)の厚さなどの形態は、上記の第1実施形態と同様である。また、本実施形態の集電体1においては、第2’の金属層210の具体的な形態もまた、第1の金属層100の、第2の金属層200が積層された面の裏面に積層されていること以外は、上記の第1実施形態における第2の金属層200と同様である。さらに、本実施形態の集電体は、上記の第1実施形態の集電体と同様の手法により製造されうる。従って、ここではこれらの具体的な形態に関する詳細な説明を省略する。なお、本実施形態の集電体1において、第2の金属層200の厚さ(T2)と第2’の金属層の厚さ(T2’)とは、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、好ましくは同一である。
本実施形態の集電体1によってもまた、上記の第1実施形態と同様に、電池の体積エネルギ密度の低下を防止しつつ、活物質層形成時の皺の発生を抑制し、集電体と活物質層(特に正極活物質層)との密着性を向上させることが可能となる。また、かような3層構造とすることにより、中間に位置する第1の金属層によって集電体の耐歪み性や剛性を向上させつつ、両側に位置する第2の金属層および第2’の金属層を活物質層と相性のよい材料から構成することが可能となる。
ここで、本実施形態における第1の金属と第2の金属との好ましい組み合わせを下記の表3に示すが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されることはない。
Figure 0005217596
以上、上記の第1実施形態と同様に、第1の金属および第2の金属が、ヤング率(E)およびビッカース硬さ(Hv)の双方のパラメータについて所定の要件を満足する場合を例に挙げて本発明の第2実施形態を詳細に説明した。ただし、第1実施形態と同様に、第2実施形態の変形例として、第1の金属および第2の金属が、ヤング率(E)またはビッカース硬さ(Hv)のいずれか一方のみについて上記の要件を満足し、他方については上記の要件を満足しない形態もまた、本発明の技術的範囲に包含される。
図3に示すように、本実施形態の集電体1においては、同一の金属からなる層(200、210)が両面に位置する。従って、本実施形態の集電体1は、積層型電池用の電極に用いられることが好ましい。ここで、参考までに、本実施形態の集電体1を採用した積層型電池の概要を示す断面図を図4に示す。
図4に示す積層型電池10’は、本実施形態の集電体からなる正極集電体33の両面に正極活物質層13が形成されてなる正極と、同様に本実施形態の集電体からなる負極集電体35の両面に負極活物質層15が形成されてなる負極とが、電解質層17を介して交互に積層されてなる構造を有する。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体には、片面のみに活物質層が形成されている。
ここで、本実施形態の集電体1が積層型電池10’の正極を構成する集電体(正極集電体33)として用いられる場合には、正極活物質層が形成される第2の金属層200および第2’の金属層210を構成する金属(第2の金属)は、アルミニウムであることが好ましい。また、負極を構成する集電体(負極集電体35)として用いられる場合には、第2の金属は銅であることが好ましい。図4に示す積層型電池10’のその他の具体的な形態は特に制限されず、上記の第1実施形態の欄において説明した双極型電池10における具体的な形態や、その他従来公知の知見を参照することにより、適宜構成することが可能である。
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。
図5に示すように、本実施形態の集電体1においては、第1の金属層100および第2の金属層200に加えて、第1の金属層100の、第2の金属層200が積層された面の裏面にさらに他の金属層300(以下、「第3の金属層」とも称する)が積層されている点で、上記の第1実施形態とは異なる。そして、本実施形態の集電体1において、第1の金属、第2の金属、および第3の金属層300を構成する金属(以下、「第3の金属」とも称する)は、E1およびHv1、E2およびHv2、並びに第3の金属のヤング率(E3)およびビッカース硬さ(Hv3)が所定の関係を満たすように選択される。
具体的には、第3の金属のヤング率(E3)は、第1の金属のヤング率(E1)よりも小さく、第2の金属のヤング率(E2)よりも大きい(E1>E3>E2)。また、第3の金属のビッカース硬さ(Hv3)は、第1の金属のビッカース硬さ(Hv1)よりも小さく、第2の金属のビッカース硬さ(Hv2)よりも大きい(Hv1>Hv3>Hv2)。
本実施形態の集電体1において、第1の金属層100および第2の金属層200を構成する金属(第1の金属、第2の金属)の種類等の具体的な形態や、これらの層(100、200)の厚さなどの形態は、上記の第1実施形態と同様である。また、第3の金属層300を構成する金属(第3の金属)の種類等の具体的な形態や、第3の金属層300の厚さなどの形態もまた、上述した第1および第2の金属層の形態を参照して適宜選択されうる。さらに、本実施形態の集電体は、上記の第1実施形態の集電体と同様の手法により製造されうる。従って、ここではこれらの具体的な形態に関する詳細な説明を省略する。なお、本実施形態の集電体1において、各金属層の厚さ(T1、T2、T3)は特に規定されないが、T1はT2およびT3よりも小さいことが好ましい(T1<T2、T3)。ただし、かような形態のみには限定されない。
ここで、本実施形態における第1の金属〜第3の金属の好ましい組み合わせを下記の表4に示すが、本発明の技術的範囲が下記の形態のみに限定されることはない。
Figure 0005217596
表4に示す組み合わせのなかでも、より好ましい形態においては、下記数式7:
Figure 0005217596
を満足する。また、他の好ましい形態においては、下記数式8:
Figure 0005217596
を満足する。ここで、これらの規定を満足する第1の金属/第2の金属/第3の金属の組み合わせの一例としては、ニッケル/アルミニウム/銅やステンレス鋼/アルミニウム/銅が挙げられる。これらの金属の組み合わせを用いて本実施形態の集電体1を構成すると、本発明の作用効果がより一層顕著に発揮されうる。
以上、第1の金属、第2の金属および第3の金属が、ヤング率(E)およびビッカース硬さ(Hv)の双方のパラメータについて所定の要件を満足する場合を例に挙げて本発明の第3実施形態を詳細に説明した。ただし、第3実施形態の変形例として、第1の金属、第2の金属および第3の金属が、ヤング率(E)またはビッカース硬さ(Hv)のいずれか一方のみについて上記の要件を満足し、他方については上記の要件を満足しない形態もまた、本発明の技術的範囲に包含される。
本実施形態の集電体1は、双極型電池用の電極に用いられることが好ましい。かような形態においては、第2の金属層の表面に正極活物質層を形成し、第3の金属層の表面に負極活物質層を形成することが好ましい。なお、双極型電池の構成については、上記の第1実施形態の欄において記載した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
かような形態によってもまた、上記と同様に電池の体積エネルギ密度の低下を防止しつつ、活物質層形成時の皺の発生を抑制し、集電体と活物質層(特に正極活物質層)との密着性を向上させることが可能となる。また、上記の第2実施形態と同様に、かような3層構造とすることにより、中間に位置する第1の金属層によって集電体の耐歪み性や剛性を向上させつつ、両側に位置する第2の金属層および第3の金属層を活物質層と相性のよい材料から構成することが可能となる。
(第4実施形態)
(組電池)
第4実施形態においては、上述した双極型電池(図2)および/または積層型電池(図4)の複数個を、並列及び/または直列に接続して、組電池を構成する。
図6は、本実施形態の組電池を示す斜視図である。
図6に示す組電池40は、上述した双極型電池10が複数個接続されることにより構成されている。各双極型電池10の正極タブ25および負極タブ27がバスバーを用いて接続されることにより、各双極型電池10が接続されている。組電池40の一の側面には、組電池40全体の電極として、電極ターミナル(42、43)が設けられている。
組電池40を構成する複数個の双極型電池10を接続する際の接続方法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。例えば、超音波溶接、スポット溶接などの溶接を用いる手法や、リベット、カシメなどを用いて固定する手法が採用されうる。かような接続方法によれば、組電池40の長期信頼性が向上しうる。
本実施形態の組電池40によれば、組電池40を構成する個々の双極型電池10が容量特性に優れることから、容量特性に優れる組電池が提供されうる。
なお、組電池40を構成する双極型電池10の接続は、複数個全て並列に接続してもよく、また、複数個全て直列に接続してもよく、さらに、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。これにより、容量及び電圧を自由に調節することが可能となる。
(第5実施形態)
(車両)
第5実施形態においては、上述した双極型電池10、または第4実施形態の組電池40をモータ駆動用電源として搭載して、車両を構成する。双極型電池10または組電池40をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、及び燃料電池自動車などの、車輪をモータによって駆動する自動車、並びに他の車両(例えば電車)が挙げられる。これにより、従来に比して高寿命で信頼性の高い車両を製造することが可能となる。
参考までに、図7に、組電池40を搭載する自動車50の概略図を示す。自動車50に搭載される組電池40は、上記で説明したような特性を有する。このため、組電池40を搭載する自動車50は容量特性に優れ、長寿命となりうる。
以上のように、本発明の幾つかの好適な実施形態について示したが、本発明は、以上の実施形態に限られるものではなく、当業者によって種々の変更、省略、および追加が可能である。
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下の実施例および比較例において用いた金属材料の物性を下記の表1に示す。ここで、ヤング率の測定は、JIS Z 2280に準拠して行った。また、ビッカース硬さの測定は、JIS Z 2244に準拠して行った。
Figure 0005217596
<実施例1:単層電池>
(正極の作製)
正極集電体として、Al(15μm)/Ni(6μm)/Al(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を準備した。
正極活物質であるLiMn(85質量部)、導電助剤であるアセチレンブラック(5質量部)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量部)を、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の適量に分散させて、正極活物質スラリーを調製した。
調製した正極活物質スラリーを、上記で準備した正極集電体の片方の面にコーティング装置を用いて60mg/cmの面密度(固形分換算)で塗布し、乾燥させた。次いで、ロールプレス機を用いて、得られた積層体に10〜30t/mの線圧でプレス処理を施し、正極活物質層(厚さ:240μm)を形成した。そして、6cm×10cmのサイズにカットし、集電体の端部をポリイミドテープで保護し、集電体にAl製リードを溶接して、正極を作製した。
(負極の作製)
負極集電体として、Cu(6μm)/Ni(6μm)/Cu(6μm)の順に積層されてなるクラッド材を準備した。
負極活物質である非晶質炭素(85質量部)、導電助剤であるアセチレンブラック(5質量部)およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量部)を、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の適量に分散させて、負極活物質スラリーを調製した。
調製した負極活物質スラリーを、上記で準備した負極集電体の片方の面にコーティング装置を用いて30mg/cmの面密度(固形分換算)で塗布し、乾燥させた。次いで、ロールプレス機を用いて、得られた積層体に10〜30t/mの線圧でプレス処理を施し、負極活物質層(厚さ:300μm)を形成した。そして、6.4cm×10.4cmのサイズにカットし、集電体にNi製リードを溶接して、負極を作製した。
(単層電池の作製)
セパレータとして、ポリプロピレン製微多孔質膜(厚さ:25μm、サイズ:7cm×11cm)を準備した。また、電解液として、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との等体積混合液にリチウム塩であるLiPFが1Mの濃度に溶解した溶液を準備した。
上記で準備したセパレータを、正極活物質層と負極活物質層とが向き合うように、上記で作製した正極および負極により挟持し、AlリードおよびNiリードが外部に導出するように、アルミラミネートシートからなる外装中に入れ、上記で準備した電解液を注入して、封止することにより、単層電池を完成させた。
<実施例2:単層電池>
正極集電体として、Al(15μm)/Fe(10μm)/Al(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例3:単層電池>
正極集電体として、Al(15μm)/SUS316L(8μm)/Al(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例4:単層電池>
正極集電体として、Al(15μm)/Ti(10μm)/Al(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例5:単層電池>
負極集電体として、Cu(15μm)/Ni(6μm)/Cu(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例6:単層電池>
負極集電体として、Cu(15μm)/Fe(10μm)/Cu(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例7:単層電池>
負極集電体として、Cu(15μm)/SUS316L(8μm)/Cu(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例8:単層電池>
負極集電体として、Cu(15μm)/Ti(10μm)/Cu(15μm)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<実施例9:双極型電池>
(双極型電極の作製)
集電体として、Al(15μm)/Fe(10μm)が積層されてなるクラッド材を準備した。
上記の実施例1と同様の正極活物質スラリーを、上記で準備した集電体のAl面にコーティング装置を用いて60mg/cmの面密度(固形分換算)で塗布し、乾燥させた。また、上記の実施例1と同様の負極活物質スラリーを、上記で準備した集電体のFe面にコーティング装置を用いて30mg/cmの面密度(固形分換算)で塗布し、乾燥させた。次いで、ロールプレス機を用いて、得られた積層体に10〜30t/mの線圧でプレス処理を施し、正極活物質層(厚さ:240μm)および負極活物質層(厚さ:300μm)を形成した。そして、6cm×10cmのサイズにカットして、双極型電極を作製した。
(双極型電池の作製)
セパレータおよび電解液として、上記の実施例1と同様の材料を準備した。
上記で作製した双極型電極5枚およびセパレータ4枚を、隣接する双極型電極どうしの正極活物質層と負極活物質層とが向き合うように交互に積層した。この際、セパレータの外周部には、正極活物質層と負極活物質層との接触を防止するためのシール材を配置した。なお、最外層に位置する双極型電極の活物質層の形成は割愛し、さらに正極側の最外層に位置する双極型電極の集電体(Al面)にはAl製リードを溶接し、負極側の最外層に位置する双極型電極の集電体(Fe面)にはNi製リードを溶接した。
次いで、AlリードおよびNiリードが外部に導出するように、得られた積層体をアルミラミネートシートからなる外装中に入れ、上記で準備した電解液を注入して、封止することにより、双極型電池を完成させた。
<実施例10:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/SUS316L(8μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例11:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Ti(10μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例12:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Cu(10μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例13:双極型電池>
集電体として、Cu(15μm;正極側)/Fe(10μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例14:双極型電池>
集電体として、Cu(15μm;正極側)/SUS316L(8μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例15:双極型電池>
集電体として、Cu(15μm;正極側)/Ti(10μm;負極側)が積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例16:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Ni(6μm)/Cu(15μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例17:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Fe(10μm)/Cu(15μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例18:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Fe(10μm)/Ni(6μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例19:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/SUS316L(8μm)/Cu(15μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例20:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Ti(10μm)/Cu(15μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<実施例21:双極型電池>
集電体として、Al(15μm;正極側)/Ti(10μm)/Ni(6μm;負極側)の順に積層されてなるクラッド材を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<比較例1:単層電池>
正極集電体として、Al(20μm)箔を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<比較例2:単層電池>
負極集電体として、Cu(15μm)箔を用いたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、単層電池を完成させた。
<比較例3:双極型電池>
集電体として、Ni(6μm)箔を用いたこと以外は、上記の実施例9と同様の手法により、双極型電池を完成させた。
<評価>
(密着性)
集電体と活物質層との密着性を評価するために、上述した各実施例および各比較例において作製した電極に対して、90度ピール試験を行った。得られた結果を下記の表2に示す。
なお、実施例1〜4では正極集電体における密着性を評価し、実施例5〜8では負極集電体における密着性を評価し、実施例9〜21では正極側における密着性を評価した。具体的には、JIS K 6854の接着剤はく離接着強さ試験方法に準拠して行った。
(皺の発生)
上述した各実施例および各比較例において作製した電極の集電体における皺の発生の有無を目視により確認した。得られた結果を下記の表2に示す。なお、皺の発生の有無の判断基準は以下の通りである。
◎:皺の発生が観察されなかった
○:皺の発生がほとんど観察されなかった
△:皺の発生がいくつか観察された
×:皺の発生により電池の作製が困難であった
Figure 0005217596
表6に示す結果から、本発明によれば、従来の単層からなる集電体を用いて電池を構成した場合と比較して、電極作製時における集電体への皺の発生が抑制され、また、集電体と活物質層との間の密着性を向上させうることが示される。
第1実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。 第1実施形態の集電体を採用した双極型電池の概要を示す断面図である。 第2実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。 第2実施形態の集電体を採用した積層型電池の概要を示す断面図である。 第3実施形態の非水溶媒二次電池用集電体の面方向に垂直な方向の断面図である。 第4実施形態の組電池を示す斜視図である。 第4実施形態の組電池を搭載する第5実施形態の自動車の概略図である。
符号の説明
1 集電体。
1a 正極側最外層集電体、
1b 負極側最外層集電体、
10 双極型電池、
10’ 積層型電池、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層
19 単電池層、
21 電池要素、
25 正極タブ、
27 負極タブ、
29 ラミネートシート、
31 絶縁層、
33 正極集電体、
35 負極集電体、
40 組電池、
42、43 電極ターミナル、
50 自動車、
100 第1の金属層、
200 第2の金属層、
210 第2’の金属層、
300 第3の金属層。

Claims (8)

  1. 第1の金属層と、
    前記第1の金属層の表面に積層された第2の金属層と、
    を含む非水溶媒二次電池用集電体であって、
    前記第1および第2の金属層を構成するそれぞれの金属のヤング率(E1、E2)、並びに前記第1および第2の金属層のそれぞれの厚さ(T1、T2)が、下記数式1:
    Figure 0005217596
    を満足し、
    前記第1の金属層の前記第2の金属層が積層された面の裏面に形成された、前記第2の金属層を構成する金属と同一の金属から構成される金属層をさらに含むことを特徴とする、非水溶媒二次電池用集電体。
  2. 第1の金属層と、
    前記第1の金属層に積層された第2の金属層と、
    を含む非水溶媒二次電池用集電体であって、
    前記第1および第2の金属層を構成するそれぞれの金属のビッカース硬さ(HV1、HV2)、並びに前記第1および第2の金属層のそれぞれの厚さ(T1、T2)が、下記数式2:
    Figure 0005217596
    を満足し、
    前記第1の金属層の前記第2の金属層が積層された面の裏面に形成された、前記第2の金属層を構成する金属と同一の金属から構成される金属層をさらに含むことを特徴とする、非水溶媒二次電池用集電体。
  3. 第1の金属層と、
    前記第1の金属層に積層された第2の金属層と、
    を含む非水溶媒二次電池用集電体であって、
    前記第1および第2の金属層を構成するそれぞれの金属のヤング率(E1、E2)およびビッカース硬さ(HV1、HV2)、並びに前記第1および第2の金属層のそれぞれの厚さ(T1、T2)が、下記数式3:
    Figure 0005217596
    を満足し、
    前記第1の金属層の前記第2の金属層が積層された面の裏面に形成された、前記第2の金属層を構成する金属と同一の金属から構成される金属層をさらに含むことを特徴とする、非水溶媒二次電池用集電体。
  4. 前記第1の金属層を構成する金属が、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタンまたは銅である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水溶媒二次電池用集電体。
  5. 前記第2の金属層を構成する金属が、アルミニウムまたは銅である、請求項1〜のいずれか1項に記載の非水溶媒二次電池用集電体。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の集電体と、
    前記集電体の表面に形成された活物質層と、
    を含む、非水溶媒二次電池用電極。
  7. 前記集電体が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の集電体であり、極性が同一の前記活物質層が前記集電体の両面に形成されている、請求項に記載の非水溶媒二次電池用電極。
  8. 請求項6または7に記載の非水溶媒二次電池用電極を用いた、非水溶媒二次電池。
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