JP5214776B2 - 加硫済みトレッド - Google Patents
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Description
台タイヤは、例えば使用済みタイヤのトレッド部をバフ装置により除去することにより得られ、トレッド部除去後の表面が新たなトレッドを貼着するための貼着面として形成される。貼着面の形成に際しては、バフ装置を構成するドラムに対して内圧が印加された状態で回転不能に固定された使用済みタイヤのトレッド部にグラインダの切削部を接触させることにより行われる。具体的には、ドラムを回転させながらグラインダを使用済みタイヤの幅方向に繰り返し移動させることにより、貼着面をその幅方向断面においてタイヤ幅方向中央から両端側に向かって曲率半径が小さくなるように所定形状に成形する。所定形状の貼着面を有する台タイヤには、予め肉厚が一定に、或いは、幅方向中央部から両端部に向かって薄肉に形成された加硫済みトレッドが貼着され、両者が一体化されることにより製品タイヤとして完成する。
特に加硫済みトレッドの最外に位置する溝では、他の溝の端縁における径変化に比べて半径差が大きくなる結果、タイヤ設計時に想定した接地長に比べて接地長が長くなり、製品タイヤ使用時にトレッドの幅方向外側において偏摩耗が生じ易くなってしまう。また、台タイヤの貼着面の成形においては、ホイール組み付け時のリム幅に比べてビード部の幅を広げた状態で使用済みタイヤのトレッド部がバフ掛けされるため、使用済みタイヤの偏平率によっては、完成した製品タイヤをホイールに組み付けたときに、トレッドにおける踏面の形状がバフ掛け時の形状に比べて大きな弓なりとなる場合がある。この場合、トレッド中央の半径に比べてトレッド端部側の半径が小さくなり易く、トレッドの幅方向端部側においてタイヤ設計時に想定した接地長よりも極端に短くなり、製品タイヤ使用時に加硫済みトレッドの幅方向中央において偏摩耗が生じ易くなってしまう。
本構成によれば、長手方向に延長する溝を幅方向に複数本備える加硫済みトレッドの幅方向の断面厚さが、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて漸減し、最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて漸増するため、当該加硫済みトレッドが適用された製品タイヤの踏面が、路面と接地したときの接地形状を最適化することができる。
即ち、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて断面厚さが漸減することにより、加硫済みトレッドが適用された製品タイヤに内圧を印加したときに、当該タイヤの踏面における断面形状を滑らかな曲線にすることができる。また、最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて断面厚さが漸増することにより、幅方向外側が路面と接地しなくなることを防止できる。よって、製品タイヤの踏面と路面とがバランスよく接地するのでトレッドの偏摩耗を抑制することができる。
本構成によれば、長手方向に延長する溝を幅方向に複数本備える加硫済みトレッドの幅方向の断面厚さが、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて漸減し、最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて一定であるため、当該加硫済みトレッドが適用された製品タイヤの踏面が、路面と接地したときの接地形状を最適化することができる。
即ち、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて断面厚さが漸減することにより、加硫済みトレッドが適用された製品タイヤに内圧を印加したときに、当該タイヤの踏面における断面形状を滑らかな曲線にすることができる。また、最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて一定であることにより、幅方向最外端が路面と接地し過ぎることを防止できる。例えば、偏平率の小さい台タイヤにトレッドが適用された製品タイヤは、トレッドが偏平率の大きい台タイヤに適用された製品タイヤに比べて内圧を印加したときに、最外溝の幅方向外側溝端における径変化が小さい。このため、断面厚さを該最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて一定とすることで、幅方向外側溝端が路面と接地し過ぎることや、不接地となることを防止できる。即ち、製品タイヤの踏面と路面とがバランスよく接地するのでトレッドの偏摩耗を抑制することができる。
本構成によれば、幅方向最外端における断面厚さが、赤道における断面厚さよりも薄いため、製品タイヤが路面に接地したときに、赤道におけるタイヤ円周方向の接地長さが最も長くなるので、製品タイヤにおけるトレッドと路面との接地形状が理想的なものとなる。つまり、路面に対してトレッドの引っ掛かりがなくなるので転がり抵抗が小さくなり、トレッドに偏摩耗が生じることがない。
本構成によれば、最外溝の赤道側溝端における断面厚さと、幅方向最外端における断面厚さとが等しいため、製品タイヤが路面に接地したときに、加硫済みトレッドの幅方向最外端が接地し過すぎることを防止できる。
図1(a),(b)に示すように、本発明に係るトレッド1は、台タイヤ2の外周面に形成された接着層3を介して貼着される。図2に示すように、トレッド1は、所定寸法の帯状に加硫成型されたものである。トレッド1の幅方向(短手方向)の断面形状は、略台形形状であって、台タイヤ2に貼着される非踏面1a側が直線状に、路面と接地する踏面1b側が波状に成型される。
トレッド1の踏面1bには、台タイヤ2に貼着された際の円周方向(長手方向)に沿って延長する複数の主溝M1;M2と、隣接する主溝M1;M2及び主溝M1;M1同士をトレッド1の幅方向において接続する幅方向溝N1;N2;N3とが形成される。
主溝M1は、幅方向中心である赤道側に位置し、主溝M2は主溝M1よりも幅方向外側に位置する最外溝である。主溝M1;M2の溝底には、例えばトレッド1の摩耗限界を示すウェアインジケータが形成される(JIS D 4230)。
図2,図3に示すように、路面と接地する側となる踏面1bには、幅方向溝N1が主溝M1;M1同士を接続し、長手方向に沿って周期的又は非周期的に形成されることにより、トレッド1の幅方向中央部において幅方向溝N1;N1により区画されるセンターブロック5が形成される。また、踏面1bには、幅方向溝N2が主溝M1;M2同士を接続し、長手方向に沿って周期的又は非周期的に形成されることにより、センターブロック5の幅方向外側において幅方向溝N2;N2により区画されるサイドブロック6が形成される。
また、踏面1bには、幅方向溝N3が主溝M2とトレッド側端面S(以下、側端面Sという)とを接続し、長手方向に沿って周期的又は非周期的に形成されることにより、サイドブロック6の幅方向外側において幅方向溝N3;N3により区画されるショルダーブロック7が形成される。
なお、本実施形態では、説明を簡易化するためトレッドパターンを図3,図4に示すトレッド幅方向中心である赤道P1(以下、幅方向中心P1という)を基準として対称なものとして説明するが、具体的なトレッドパターンの態様はこれに限られるものではない。
図3,図4に示すように、センターブロック5は、トレッド1の幅方向中央に位置し、幅方向中心P1を挟んで幅方向に跨って形成される。
また、主溝M1の幅方向外側の端縁P3における非踏面1aから踏面1bまでの厚さH3は、前述の端縁P2における厚さH2よりもさらに薄く形成される。端縁P3は、踏面1b側において主溝M1が開口する外側の溝端(外側溝端)である。
サイドブロック6とショルダーブロック7とを区画する主溝M2の幅方向中心P1側の端縁P4における非踏面1aから踏面1bまでの厚さH4は、前述の端縁P3における厚さH3よりもさらに薄く形成される。端縁P4は、踏面1b側において主溝M2が開口する赤道側の溝端(赤道側溝端)である。
なお、幅方向中心P1から各端縁P2;P3;P4を結ぶ断面形状線は、例えばバフラインに近似した滑らかな曲線となるように形成されるのが望ましいが、例えば同一のブロック中において段階的或いは直線的に延長する形状であってもよく、厚さの減少率も任意に設定可能である。
主溝M2の幅方向外側の端縁P5における非踏面1aから踏面1bまでの厚さH5は、例えば前述の端縁P4における厚さH4よりもさらに薄く形成される。端縁P5は、踏面1b側において開口する主溝M2の幅方向外側の溝端(幅方向外側溝端)である。トレッド1の側端面Sの踏面1b側の端縁P6における非踏面1aから踏面1bまでの厚さH6は、端縁P5の厚さH5よりも厚く形成される。端縁P6は、踏面1bと側端面Sとが接続する踏面1bにおける幅方向最外端である。
より詳細には、主溝M2の幅方向外側の端縁P5における厚さH5を端縁P4における厚さH4よりもさらに薄く形成し、端縁P5から幅方向最外の端縁P6にかけて断面厚さを漸次増加させ、端縁P6における厚さH6が端縁P4における厚さH4と同一となるように形成される。
換言すれば、端縁P6における厚さH6が、端縁P4における厚さH4と等しくなるように端縁P5から厚さが漸増する。また、断面形状において、端縁P5と端縁P6とを結ぶ形状線は、例えば直線として設定される。
また、トレッド1の幅方向最外に位置する主溝M2の外側の端縁P5から幅方向最外端である端縁P6にかけて厚さが漸次増加するように形成しておくことで、貼着面において曲率の変化が大きい台タイヤ2のショルダー部に沿って曲げて貼着しても、端縁P5から端縁P6にかけて最適な曲線となるように貼着することができる。即ち、トレッド1が貼着面に貼着されると、台タイヤ2のショルダー部における貼着面の大きな曲率の変化によって端縁P5と端縁P6とに製品タイヤにおける半径差が生じ易いが、端縁P5から端縁P6にかけて厚さが漸次増加していることで、当該半径差を小さくすることができる。また、端縁P6における厚さH6が端縁P4における厚さH4と同一となるように形成しておくことにより、トレッド1を貼着面に貼着したときに、端縁P4から端縁5を経て端縁P6までを滑らかな曲線とすることができる。よってトレッド1が適用された製品タイヤが路面に接地したときに、加硫済みトレッドの踏面1bの幅方向最外端である端縁P6が接地しすぎることを防止できる。
図示は省略するが、加硫装置は、トレッド1の踏面1b側を型付けする踏面側金型と、非踏面1a側を型付けする非踏面側金型とを備え、両金型によって形成される成型空間内に予め帯状に形成されたトレッド部材を収容することにより、一定の圧力を印加した状態で加熱することが可能な装置である。
踏面側金型の表面には、トレッド1が有するトレッドパターンの形状を反転させた形状の凹凸が形成されており、トレッド部材の表面が踏面側金型の表面に押し付けられることにより、所望のトレッドパターンを有するトレッド1を得ることができる。また、非踏面側金型の表面は平坦面として形成されており、当該平坦面と対向する面がトレッド1の非踏面として形成される。
つまり、トレッド1は、接着層3を介して台タイヤ2と予備的に一体化される。次に、予備的に一体化されたトレッド1及び台タイヤ2は、エンベロープと呼ばれる密閉袋体内に収容される。
エンベロープは、内部の空気を脱気可能なバルブを有し、トレッド1及び台タイヤ2を収容した後にバルブを介して内部の空気を脱気することにより、エンベロープの表面をトレッド1及び台タイヤ2の表面に密着させる。そして、エンベロープによって圧力が印加された状態のトレッド1及び台タイヤ2は、加硫缶と呼ばれる加硫装置内に搬入される。加硫装置内に搬入されたトレッド1及び台タイヤ2における接着層3としてのクッションゴムは、一定時間に渡って所定圧力と温度が付与された状態に置かれることにより加硫が進行し、トレッド1と台タイヤ2とを強固に一体化し、製品タイヤの製造が完了する。
図6(a)は、本発明に基づいて加硫成型されたトレッド1の断面形状を示し、図6(b)は、従来の断面厚さが一定の平板状のトレッド10の断面形状を示す。図6(c)は、本発明に係るトレッド1が適用された製品タイヤの接地形状を示し、図6(d)は、従来のトレッド10が適用されたタイヤの接地形状を示す。図6(e)は、図6(c),(d)の接地形状における接地長の長さの違いを表にしたものである。なお、表において、接地長は、トレッド中心P1におけるタイヤ円周方向の接地長L1を基準(100)とし、各端縁P4〜P6における接地長L4〜L6を接地長L1に対する割合で示してある。
実施例1では、275/80R22.5の使用済みタイヤをバフ掛けした台タイヤ2に対して、本発明に係るトレッド1と、比較例として加硫成型されたトレッド10とをそれぞれ貼着して製品タイヤを試作して比較試験を行った。
図6(b)に示すように、比較例に係るトレッド10α(10)は、幅方向中心P1から端縁P6までの厚さが18.8mmで一定の平板状に形成したものである。
図6(c),図6(d),図6(e)に示すように、製品タイヤAは、タイヤ設計時において想定された目標とする形状(接地長)と一致することが分かる。即ち、トレッド1αの断面厚さが、幅方向中心P1から幅方向最外に位置する主溝M2における幅方向中心P1側の端縁P4にかけて漸減し、主溝M2の外側溝端である端縁P5から幅方向外側端にかけて漸増するように成型しておくことで、所望の接地形状となる製品タイヤAを製造することができる。特に、内圧が印加された状態の最も径変化の大きい、主溝M2よりも幅方向外側において、踏面1bは所望の形状となったことにより、偏摩耗は見られなかった。よって本発明のトレッド1αが適用されてなる製品タイヤAは、タイヤ設計時の性能を備えた偏摩耗の生じない転がり抵抗の小さいタイヤとなる。
一方で、製品タイヤBは、タイヤ設計時において想定された目標よりも全体的に接地長が長くなる傾向にあり、特に端縁P5における接地長L5は、幅方向中心P1における接地長L1よりも長くなっている。つまり、トレッド10αが貼着された製品タイヤBは、端縁P5が局所的に路面に対して強く押し付けられることとなるため、タイヤ全体が均一に摩耗せず、当該部分において偏摩耗が生じる結果となった。このような偏摩耗は、転がり抵抗を増加させる要因となり、操縦時における不安定さを生じさせることとなってしまう。
図7(a)は、本発明に基づいて加硫成型されたトレッド1の断面形状を示し、図7(b)は、従来の断面厚さが一定の平板状のトレッド10の断面形状を示す。図7(c)は、本発明に係るトレッド1が適用された製品タイヤの接地形状を示し、図7(d)は、従来のトレッド10が適用されたタイヤの接地形状を示す。図7(e)は、図7(c),(d)の接地形状における接地長の長さの違いを表にしたものである。なお、表において、接地長は、トレッド中心P1におけるタイヤ円周方向の接地長L1を基準(100)とし、各端縁P4〜P6における接地長L4〜L6を接地長L1に対する割合で示してある。
実施例2では、実施例1とはタイヤサイズの異なる11R22.5の使用済みタイヤをバフ掛けした台タイヤ2に対して、本発明に係るトレッド1と、比較例として加硫成型されたトレッド10とをそれぞれ貼着して製品タイヤを試作して比較試験を行った。
図7(b)に示すように、比較例に係るトレッド10β(10)は、幅方向中心P1から端縁P6までの厚さが18.8mmで一定の平板状に形成したものである。
図7(c),図7(d),図7(e)に示すように、製品タイヤAは、タイヤ設計時において想定された目標とする形状(接地長)と一致することが分かる。即ち、トレッド1βの断面厚さが、幅方向中心P1から幅方向最外に位置する主溝M2の幅方向中心P1側の端縁P4にかけて漸減し、主溝M2の幅方向外側の端縁P5から幅方向最外端である端縁P6にかけて一定に成型しておくことで、所望の接地形状となる製品タイヤAを製造することができる。特に、本実施例の製品タイヤAは、実施例1の製品タイヤAに比べて偏平率が大きいため、主溝M2の外側の端縁P5から幅方向外側端にかけて一定に成型しておくことにより、内圧が印加された状態において最もタイヤの直径の変化の大きい主溝M2よりも幅方向外側で、踏面1bが所望の形状となったことにより、偏摩耗が見られなかった。よって本発明のトレッド1βが適用されてなる製品タイヤAは、タイヤ設計時の性能を備えた偏摩耗の生じない転がり抵抗の小さいタイヤとなる。
一方で、本実施例の製品タイヤBは、実施例1の製品タイヤBよりも偏平率が大きいことから、タイヤ設計時において想定された目標値よりもトレッド10βの幅方向外側において接地長が長くなる傾向にあり、特に端縁P6における接地長L6は、目標値よりもはるかに長くなっている。つまり、トレッド10βが貼着された製品タイヤBは、ショルダーブロック7が路面に対して強く押し付けられることとなるため、タイヤ全体が均一に摩耗せず、特に端縁P6において偏摩耗が生じる結果となった。このような偏摩耗は、転がり抵抗を増加させる要因となり、操縦時における不安定さを生じさせることとなってしまう。
また、端縁P4の厚さH4に対する端縁P5の厚さH5が、同じ、又は、厚くなるように適宜設定することにより、タイヤショルダー部である幅方向外側においてエッジ効果が得られるので旋回性及び安定性を向上させることができる。
また、上記実施形態において台タイヤは、使用済みタイヤから摩耗したトレッド部をバフ掛けして成形するとしたが、新品の台タイヤとして加硫成型された台タイヤのクラウン部をバフ掛けして成形されたものでも良い。
4 トレッドブロック、5 センターブロック、6 サイドブロック、
7 ショルダーブロック、H1乃至H6 厚さ、L1;L4;L5;L6 接地長、
M1;M2 主溝、N1;N2;N3 幅方向溝、P1 トレッド中心、
P2乃至P6 端縁。
Claims (4)
- 長手方向に延長する溝を幅方向に複数本備え、
断面厚さが、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて漸減し、該最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて漸増する加硫済みトレッド。 - 長手方向に延長する溝を幅方向に複数本備え、
断面厚さが、赤道から幅方向最外に位置する最外溝の赤道側溝端にかけて漸減し、該最外溝の幅方向外側溝端から幅方向外側にかけて一定である加硫済みトレッド。 - 幅方向最外端における断面厚さが、赤道における断面厚さよりも薄い請求項1または請求項2記載の加硫済みトレッド。
- 前記最外溝の赤道側溝端における断面厚さと、幅方向最外端における断面厚さとが等しい請求項1乃至請求項3いずれか記載の加硫済みトレッド。
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