JP5206565B2 - 内燃機関の制御システム - Google Patents

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Description

本発明は、気筒内に発生した既燃ガスを掃気するための内燃機関の制御システムに関する。
内燃機関の吸気バルブおよび/または排気バルブの開弁特性を変更可能な可変動弁機構が知られている。可変動弁機構を利用した技術としては、バルブオーバーラップ期間中に既燃ガスを掃気させようとする技術も提案されている。例えば、遠心過給機を備えた内燃機関において、吸気圧力が排気圧力に比して大きくなる場合に、バルブオーバーラップ期間中にシリンダから排気管へ掃気されて減少する内部EGR量を演算し、内部EGR掃気量に基づきオーバーラップ期間を制御することにより、遠心過給機の過給遅れを軽減しようとする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2008−75549号公報 特開2002−89304号公報 特開2004−52678号公報 特開2006−132410号公報
ところで、位相を可変とする機構と作用角を可変とする機構とを備える内燃機関については、気筒内の既燃ガスを掃気する場合に双方の機構が不用意に制御されると、掃気効果が低減し、加速性能の低下を招く可能性がある。
本発明は、上記したような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排気バルブの位相を変更する機構と排気バルブの作用角を変更する機構とを利用して気筒内の既燃ガスを掃気する内燃機関の制御システムにおいて、掃気効果の低減を抑制して加速性能の向上を図ることにある。
本発明は、上記した課題を解決するために、排気バルブの作用角を変更する可変作用角機構と排気バルブの位相を変更する可変位相機構とを利用してバルブオーバーラップ期間中に気筒内から排気系へ掃気される既燃ガスを増加させる掃気制御を行う内燃機関の制御システムにおいて、掃気制御の開始時に先ず排気バルブの開弁タイミングを掃気制御用の開弁タイミングへ変更し、次いで排気バルブの閉弁タイミングを掃気制御用の閉弁タイミングへ変更するようにした。
詳細には、本発明の内燃機関の制御システムは、
排気バルブの作用角を変更する可変作用角機構と、
排気バルブの位相を変更する可変位相機構と、
バルブオーバーラップ期間のタイミングが所定の目標タイミングとなるように前記可変作用角機構及び前記可変位相機構を制御することにより、気筒内から排気系へ掃気される既燃ガス量を増加させる掃気制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、掃気制御を開始するときに、先ず排気バルブの開弁タイミングを掃気
制御用の目標開弁タイミングに変更し、次いで排気バルブの閉弁タイミングを掃気制御用の目標閉弁タイミングに変更すべく前記可変作用角機構及び前記可変位相機構を制御するようにした。
気筒内の既燃ガスを排気系へ掃気させる場合は、バルブオーバーラップ期間中の排気圧が吸気圧より低くなる必要がある。このため、掃気制御実行時におけるバルブオーバーラップ期間のタイミング(開始タイミング及び終了タイミング)は、排気脈動の負圧波が排気ポートへ到達するタイミングと同期するように定められる。よって、本発明に係わる「所定の目標タイミング」は、排気脈動の負圧波が排気ポートへ到達するタイミングと同期するタイミングである。
ところで、掃気制御が開始された時点からバルブオーバーラップ期間のタイミングが掃気制御用のタイミングと一致する時点までの過渡期は、排気脈動の負圧波が排気ポートへ到達するタイミングとバルブオーバーラップ期間のタイミングとが同期しない可能性がある。
例えば、掃気制御が開始されるときに、可変位相機構が可変作用角機構より先に作動され、或いは可変位相機構の動作速度が可変作用角機構の動作速度より速くなると、一の気筒の吸気バルブが開弁する前に他の気筒の排気バルブが開弁する事態が発生し得る。
ここで、上記した過渡時において一の気筒の吸気バルブが開弁する前に他の気筒の排気バルブが開弁すると、一の気筒のバルブオーバーラップ期間中に排気圧が吸気圧を上回る事態が発生し、気筒内に残留する既燃ガスが増加してしまう。
従って、掃気制御が開始されるときに、可変位相機構が可変作用角機構より先に作動され、或いは可変位相機構の動作速度が可変作用角機構の動作速度より速くなると、掃気効果が低減する可能性がある。
これに対し、本発明の内燃機関の制御システムは、掃気制御を開始するときに、先ず排気バルブの開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミングに変更し、続いて排気バルブの閉弁タイミングを掃気制御用の目標閉弁タイミングに変更すべく可変作用角機構および/または可変位相機構を制御する。
このような制御手順によると、掃気制御開始後の過渡時において、一の気筒の吸気バルブが開弁する前に他の気筒の排気バルブが開弁する事態が発生し難くなる。その結果、掃気制御開始後の過渡時において、一の気筒のバルブオーバーラップ期間中に排気圧が吸気圧を上回る事態を可及的に回避することができる。
また、本発明に係わる制御手段は、排気バルブの開弁タイミングが掃気制御用の目標開弁タイミングに変更する際に、排気バルブの閉弁タイミングが変化しないように可変作用角機構および/または可変位相機構を制御してもよい。
このような制御によると、一の気筒の吸気バルブが開弁する前に他の気筒の排気バルブが開弁し得る条件下において、バルブオーバーラップ期間が発生し又はバルブオーバーラップ期間が増加されることがなくなる。その結果、掃気制御開始後の過渡時において、気筒内に残留する既燃ガスの増加を抑制することができる。
なお、本発明を適用する内燃機関が吸気バルブの開弁時期を変更可能な機構を備えている場合には、制御手段は、排気バルブの閉弁タイミングと同様に吸気バルブの開弁タイミングも固定することが好ましい。
また、本発明を適用する内燃機関が遠心過給器を具備する場合は、排気バルブの開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミングへ変更する際の変更速度が過給圧に応じて調整されるようにしてもよい。
例えば、制御手段は、実際の過給圧が目標過給圧以下である場合は、実際の過給圧が目標過給圧より高い場合に比して、変更速度が遅くなるように可変作用角機構および/または可変位相機構を制御してもよい。
過給圧が低いときに排気バルブの開弁タイミングが急激に遅角されると、排気圧の低下に伴って過給圧も低下する。そのため、気筒内へ流入する新気(空気)が減少する可能性がある。
これに対し、排気バルブの開弁タイミングが徐々に遅角されると、排気圧の低下及び過給圧の低下を緩和することができる。その結果、気筒内へ流入する新気(空気)の減少も緩和される。
本発明によれば、排気バルブの位相を変更する機構と排気バルブの作用角を変更する機構とを利用して気筒内の既燃ガスを掃気する内燃機関の制御システムにおいて、掃気効果の低減を抑制して加速性能の向上を図ることができる。
実施例1において本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。 可変作用角機構の構成を示す図である。 掃気制御開始前の吸気圧と排気圧との関係を示す図である。 掃気制御開始からバルブオーバーラップ期間のタイミングが所望の目標タイミングとなるまでの過渡期における吸気圧と排気圧との関係を示す図である。 掃気制御において排気バルブの開弁タイミングを変更する手順を示す図である。 排気バルブの作用角が変更されたときの吸気圧と排気圧との関係を示す図である。 掃気制御において排気バルブの閉弁タイミングを変更する手順を示す図である。 掃気制御において排気バルブの閉弁タイミングを変更しているときの吸気圧と排気圧との関係を示す図である。 実施例1における掃気制御ルーチンを示すフローチャートである。 実施例2において本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。 実施例2における掃気制御ルーチンを示すフローチャートである。
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
先ず、本発明の第1の実施例について図1乃至図9に基づいて説明する。図1は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、複数の気筒2を具備する火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)である。なお、図1においては、複数気筒のうち1つの気筒のみが示されている。
内燃機関1は、シリンダブロック1aとシリンダヘッド1bを具備している。シリンダブロック1aには、複数の気筒2が形成されている。各気筒2には、ピストン3が摺動自在に内装されている。ピストン3は、コネクティングロッド4を介してクランクシャフト5と連結されている。クランクシャフト5近傍のシリンダブロック1aには、クランクポジションセンサ6が取り付けられている。
シリンダヘッド1bには、各気筒2へ新気(空気)を導くための吸気ポート7が形成されている。吸気ポート7の開口端は、吸気バルブ8により開閉される。吸気バルブ8の基端(バルブステムの基端)は、ロッカーアーム9に当接している。ロッカーアーム9は、揺動自在にシリンダヘッド1bに取り付けられており、吸気カム10と当接している。
吸気カム10は、吸気カムシャフト11と一体的に回転してロッカーアーム9を揺動させる。吸気カムシャフト11は、クランクシャフト5と図示しないチェーン又はベルトを介して連結されており、クランクシャフト5により回転駆動される。また、吸気カムシャフト11には、クランクシャフト5に対する吸気カムシャフト11の位相を変更する第1可変位相機構24が設けられている。第1可変位相機構24としては、例えば、カムプーリと吸気カムシャフト11との間に設けられ、カムプーリに対する吸気カムシャフト11の位相を変更する機構を例示することができる。
また、シリンダヘッド1bには、各気筒2で燃焼されたガス(既燃ガス)を排出するための排気ポート12が形成されている。排気ポート12の開口端は、排気バルブ14により開閉される。排気バルブ14は、排気カムシャフト15に設けられた排気カム16により開閉駆動される。
排気カムシャフト15は、クランクシャフト5と図示しないチェーン又はベルトを介して連結されており、クランクシャフト5により回転駆動される。また、排気カムシャフト15には、クランクシャフト5に対する排気カムシャフト15の位相を変更する第2可変位相機構23が設けられている。第2可変位相機構23としては、例えば、カムプーリと排気カムシャフト15との間に設けられ、カムプーリに対する排気カムシャフト15の位相を変更する機構を例示することができる。
また、排気バルブ14と排気カム16との間には、排気バルブ14の作用角を変更するための可変作用角機構40が介在している。ここで、可変作用角機構40の構成について図2に基づいて説明する。図2は、可変作用角機構40を排気カムシャフト15の軸方向から見た図である。
図2に示すように、可変作用角機構40は、排気カム16とローラロッカーアーム35との間に配置されている。ローラロッカーアーム35の基端部は、ラッシュアジャスタ37により揺動自在に支持されている。ローラロッカーアーム35の先端部は、排気バルブ14のバルブステム14aの基端部と当接している。
可変作用角機構40は、排気カムシャフト15と平行に配置された制御軸41を有している。制御軸41は、周方向へ回転自在にシリンダヘッド1bに取り付けられている。制御軸41には、制御アーム42がボルト43によって固定されている。制御アーム42の一部は、制御軸41の径方向に突出している。制御アーム42の突出部には、ピン45が固定されている。ピン45には中間アーム44の基端部が回転自在に取り付けられ、中間アーム44がピン45を支点として揺動可能になっている。中間アーム44の先端部には、後述する連結軸54が固定されている。
また、制御軸41には、揺動カムアーム50が揺動可能に支持されている。揺動カムアーム50は、排気カム16に対向する側に、スライド面50aを有している。また、揺動カムアーム50は、スライド面50aの反対側に、揺動カム面51を有している。揺動カム面51は、揺動カムアーム50の揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面51aと、非作用面51aから離れた位置ほど制御軸41の軸中心からの離間するように形成された作用面51bとで構成されている。
排気カム16と可変作用角機構40との間には、前述した中間アーム44の先端部が位置し、該先端部には連結軸54が固定されている。連結軸54には、第1ローラ52と第2ローラ53が回転自在に支持されている。その際、第1ローラ52及び第2ローラ53の位置と直径は、第1ローラ52が排気カム16と当接し且つ第2ローラ53が揺動カムアーム50のスライド面50aと当接するように決定される。
中間アーム44は、前述したピン45を支点として回転(揺動)するため、第1ローラ52及び第2ローラ53はピン45から一定距離を保ちながらスライド面50a及び排気カム16の周面に沿って揺動する。
また、揺動カムアーム50には、バネ座50bが形成されている。このバネ座50bには、ロストモーションスプリング38の一端が当接している。ロストモーションスプリング38の他端は、シリンダヘッド1bに固定されている。このロストモーションスプリング38により、揺動カムアーム50のスライド面50aが第2ローラ53に押し当てられるとともに、第1ローラ52が排気カム16に押し当てるられる。その結果、第1ローラ52及び第2ローラ53は、スライド面50aと排気カム16の周面とに挟持された状態で位置決めされる。
揺動カムアーム50の下方には前述したローラロッカーアーム35が位置している。ローラロッカーアーム35のロッカーローラ36は、前述したバルブスプリング14bの付勢力とラッシュアジャスタ37の油圧とにより揺動カム面51に押し当てられている。
このように構成された可変作用角機構40によれば、排気カム16のカムノーズが第1ローラ52を押動すると、中間アーム44が揺動しつつ第2ローラ53がスライド面50aを押下する。すなわち、排気カム16のカムノーズが第1ローラ52を押動すると、揺動カムアーム50が制御軸41を支軸として回転する。
その結果、揺動カム面51とロッカーローラ36との接点が非作用面51aから作用面51bへ移動し、ローラロッカーアーム35が押下されることになる。ローラロッカーアーム35が押下されると、それに伴って排気バルブ14が開弁する。
また、制御軸41の回転角度が変更されると、スライド面50a上における第2ローラ53の位置が変化し、リフト動作時の揺動カムアーム50の揺動範囲が変化する。例えば、制御軸41が図2中の反時計回りに回転すると、スライド面50aにおける第2ローラ53の位置が揺動カムアーム50の先端側に移動する。それに伴い、揺動カム面51とロッカーローラ36との当接位置が非作用面51aの範囲内において作用面51bから離間する位置へ変化する。
よって、排気カム16のカムノーズが第1ローラ52を押動し始めてからローラロッカーアーム35が揺動し始めるまでに要する揺動カムアーム50の回転量(回転角度)が増加する。その結果、排気バルブ14の閉弁タイミングが固定されつつ作用角(及びリフト量)が減少する。
逆に、制御軸41が図2中の時計回りに回転すると、スライド面50aにおける第2ローラ53の位置が揺動カムアーム50の基端側へ移動する。それに伴い、揺動カム面51とローラロッカーアーム35との当接位置が非作用面51aの範囲内において作用面51bに近い位置へ変化する。
よって、排気カム16のカムノーズが第1ローラ52を押動し始めてからローラロッカーアーム35が揺動し始めるまでに要する揺動カムアーム50の回転量(回転角度)が減少する。その結果、排気バルブ14の閉弁タイミングが固定されつつ作用角(及びリフト量)が増加する。
ここで図1に戻り、内燃機関1には、ECU60が併設されている。ECU60は、CPU、ROM、RAM、バックアップラムなどから構成される電子制御ユニットである。ECU60は、前述したクランクポジションセンサ6に加え、アクセルポジションセンサ20等の各種センサの出力信号が入力されるようになっている。アクセルポジションセンサ20は、アクセルペダル21の操作量に応じた電気信号を出力するセンサである。
また、ECU60は、前述した可変作用角機構40の制御軸41を回転駆動するためのアクチュエータ22、第1可変位相機構24、及び第2可変位相機構23等と電気的に接続され、それらを電気的に制御する。例えば、ECU60は、内燃機関1が加速運転状態にあるときは、気筒2内に残留する既燃ガス(内部EGRガス)が減少するように第1可変位相機構24、第2可変位相機構23、及び可変作用角機構40を制御(掃気制御)する。
以下、本実施例における掃気制御について述べる。
掃気制御は、バルブオーバーラップ期間中に気筒2内の既燃ガスを新気(空気)と入れ換えるための制御である。掃気制御を成立させるためには、バルブオーバーラップ期間中の排気圧が吸気圧より低くなる必要がある。すなわち、排気脈動の負圧波が排気ポート12へ到達するタイミングとバルブオーバーラップ期間とを同期させる必要がある。
また、複数の気筒2を有する内燃機関1では、一の気筒2のバルブオーバーラップ期間が開始される直前に他の気筒2の排気バルブ14が開弁する可能性がある。そのような場合は、他の気筒2から排出された排気の圧力が一の気筒2の排気ポート12へ作用する。
ここで、掃気制御開始前の吸気圧と排気圧との関係を図3に示す。図3において、一の気筒(図3中の「自気筒」)に作用する排気圧は、自気筒の次に燃焼される気筒(図3中の「次気筒」)の排気バルブが開弁したときに上昇し始め、吸気上死点(吸気TDC)の近傍において吸気圧より高くなる。
図3に示したような状況下で掃気制御が開始された場合に、第2可変位相機構23が可変作用角機構40より先に作動し、或いは第2可変位相機構23の動作速度が可変作用角機構40の動作速度より速くなると、排気バルブ14の開弁タイミングが所望の目標開弁タイミングとなる前に排気バルブ14の閉弁タイミングが遅角される事態が発生し得る。そのような事態が発生すると、気筒2内に残留する既燃ガスが増加する可能性がある。
例えば、掃気制御開始からバルブオーバーラップ期間のタイミングが所望の目標タイミングとなるまでの過渡期は、図4に示すように、バルブオーバーラップ期間(図4中の「O/L」)において排気圧が吸気圧より高くなる期間が生じる。このため、掃気制御実行期間の初期において気筒2内に残留する既燃ガスが増加し、吸気の充填効率が低下する可能性がある。
これに対し、本実施例の掃気制御では、ECU60は、排気バルブ14の作用角を変更した後に位相を変更するようにした。具体的には、ECU60は、先ず、図5に示すように、排気バルブ14の閉弁タイミングが固定されつつ該排気バルブ14の作用角が減少するようにアクチュエータ22を制御(制御軸41を図2中の反時計回りに回転させる)。すなわち、ECU60は、排気バルブ14の閉弁タイミングを固定しつつ該排気バルブ14の開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミングまで遅角させる。
排気バルブ14の閉弁タイミングが固定されつつ開弁タイミングが掃気制御用の目標開弁タイミングまで遅角されると、図6に示すように、次気筒の排気バルブ14の開弁タイミングが自気筒の吸気バルブ8の開弁タイミングよりも遅くなる。
よって、自気筒に作用する排気圧が吸気圧より高くなるタイミングは、自気筒の吸気上死点(吸気TDC)より大幅に遅くなる。なお、排気バルブ14の開弁タイミングが目標開弁タイミングまで遅角される過程において排気圧が吸気圧より高くなる可能性もあるが、バルブオーバーラップ期間が短い又は殆ど存在しないため気筒内に残留する既燃ガスが増加することも抑制される。
続いて、ECU60は、図7に示すように、排気バルブ14の開弁タイミングが固定されつつ該排気バルブ14の作用角が増加するようにアクチュエータ22及び第2可変位相機構23を制御する。すなわち、ECU60は、排気バルブ14の開弁タイミングを固定しつつ排気バルブ14の閉弁タイミングを掃気制御用の目標閉弁タイミングまで遅角させる。その際、ECU60は、第1可変位相機構24を制御することにより、バルブオーバーラップ期間の開始時期を調整してもよい。
図6,図7に示した手順により掃気制御が実行されると、図8に示すように、掃気制御開始後の過渡期においても、バルブオーバーラップ期間中に排気圧が吸気圧を上回る事態が可及的に回避される。その結果、掃気制御実行期間の初期においても気筒2内に残留する既燃ガスが極めて少なくなり、吸気の充填効率を高めることが可能となる。その結果、内燃機関1の加速性能を向上させることができる。
以下、本実施例における掃気制御の実行手順について図9に沿って説明する。図9は、掃気制御ルーチンを示すフローチャートである。この掃気制御ルーチンは、予めECU60のROMに記憶されているルーチンであり、ECU60によって周期的に実行される。
図9の掃気制御ルーチンでは、ECU60は、先ずS101において掃気制御実行条件が成立したか否かを判別する。掃気制御実行条件としては、例えば内燃機関1が加速運転状態にある等の条件を例示することができる。
前記S101において否定判定された場合は、ECU60は本ルーチンの実行を終了する。一方、前記S101において肯定判定された場合は、ECU60はS102へ進む。S102では、ECU60は、排気バルブ14の閉弁タイミングEVCを固定しつつ排気バルブ14の作用角を減少させるべくアクチュエータ22を制御する。この処理は、排気バルブ14の開弁タイミングEVOが掃気制御用の目標開弁タイミングEVOtrgと一致するまで継続される。
S103では、ECU60は、排気バルブ14の開弁タイミングEVOが目標開弁タイミングEVOtrgと一致したか否かを判別する。排気バルブ14の開弁タイミングEVOは、制御軸41の回転角度を検出するセンサ、排気カムシャフト15の回転角度を検出するセンサ、及びクランクポジションセンサ6等の出力信号から演算することができる。
前記S103において否定判定された場合は、ECU60は、排気バルブ14の開弁タイミングEVOが目標開弁タイミングEVOtrgと一致するまで前記S102の処理を継続する。一方、前記S103において肯定判定された場合は、ECU60は、S104へ進む。
S104では、ECU60は、排気バルブ14の開弁タイミングEVOを目標開弁タイミングEVOtrgに固定しつつ排気バルブ14の作用角を拡大させるべく、アクチュエータ22及び第2可変位相機構23を制御する。具体的には、ECU60は、クランクシャフト5に対する排気カムシャフト15の位相が遅角されるように第2可変位相機構23を制御しつつ、排気バルブ14の作用角が拡大するようにアクチュエータ22を制御する。この処理は、排気バルブ14の閉弁タイミングEVCが掃気制御用の目標閉弁タイミングEVCtrgと一致するまで継続される。
以上述べたようにECU60が図9の掃気制御ルーチンを実行することにより、本発明に係わる制御手段が実現される。その結果、掃気制御開始時からバルブオーバーラップ期間のタイミングが目標タイミングと一致するまでの過渡期において、気筒2内に残留する既燃ガスを可及的に減少させることができる。よって、内燃機関1の加速性能を向上させることができる。
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について図10,図11に基づいて説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
前述した第1の実施例では過給機を備えていない内燃機関に本発明を適用する例について述べたが、本実施例では遠心過給器を備えた内燃機関に本発明を適用する例について述べる。
図10は、本発明を適用する内燃機関の概略構成を示す図である。図10において、前述した第1の実施例と同様の構成要素には同一の符号が付されている。
内燃機関1の吸気ポート7には、吸気通路70が接続されている。吸気通路70には、遠心過給機(ターボチャージャ)80のコンプレッサ81が配置されている。また、内燃機関1の排気ポート12には、排気通路120が接続されている。排気通路120には、遠心過給機(ターボチャージャ)80のタービン82が配置されている。
コンプレッサ81より下流の吸気通路70にはスロットル弁71が配置されている。スロットル弁71は、ECU60によって電気的に制御される。また、スロットル弁71より下流の吸気通路70には、該吸気通路70内の圧力を計測する圧力センサ72が配置されている。
このように構成された内燃機関1において掃気制御が行われる場合に、排気バルブ14の開弁タイミングが目標開弁タイミングへ急激に変更されると、排気圧が低下して遠心過給機80の仕事量が減少(過給圧が低下)する可能性がある。過給圧が低下すると、気筒2内へ供給される新気(空気)量が減少するため、内燃機関1の加速性能が低下する。
これに対し、本実施例の掃気制御では、ECU60は、排気バルブ14の開弁タイミングが目標開弁タイミングへ変更される際の変更速度(作用角の減少速度)を、前記圧力センサ72の出力信号(過給圧)に応じて調整するようにした。
具体的には、ECU60は、圧力センサ72の出力信号値が目標過給圧より高い場合は、排気バルブ14の作用角が最大速度で変更されるようにアクチュエータ22を制御する。この場合、作用角変更前の過給圧が目標過給圧より高いため、作用角の変更によって過給圧が低下しても加速性能の低下が抑制される。
また、ECU60は、圧力センサ72の出力信号値が目標過給圧以下である場合は、排気バルブ14の作用角が徐々に変更されるようにアクチュエータ22を制御する。その際の変更速度は、予め実験的に求められた固定速度であってもよいが、圧力センサ72の出力信号と目標過給圧との差が大きくなるほど遅くされるようにしてもよい。この場合、排気圧の急激な低下が緩和されるため、過給圧が大幅に低下しなくなる。
このように過給圧に応じて作用角の変更速度が調整されると、過給圧の低下を緩和しつつ掃気効果を高めることができる。
以下、本実施例における掃気制御の実行手順について図11に沿って説明する。図11は、本実施例における掃気制御ルーチンである。図11において、前述した第1の実施例の掃気制御ルーチン(図9を参照)と同等の処理には同一の符号が付されている。
第1の実施例の掃気制御ルーチンと本実施例の掃気制御ルーチンとの差違は、S102の代わりにS201−S203が実行される点にある。すなわち、ECU60は、S101において肯定判定された場合に、S201へ進む。S201では、ECU60は、圧力センサ72の出力信号値(過給圧)が目標過給圧より高いか否か判別する。
前記S201において肯定判定された場合は、ECU60は、S202へ進む。S202では、ECU60は、排気バルブ14の閉弁タイミングEVCを固定しつつ排気バルブ14の作用角を最大速度で減少させるべくアクチュエータ22を制御する。すなわち、ECU60は、アクチュエータ22に印加される駆動電流を最大値に設定する。
また、前記S201において否定判定された場合は、ECU60は、S203へ進む。S203では、ECU60は、排気バルブ14の閉弁タイミングEVCを固定しつつ排気バルブ14の作用角を徐々に減少させるべくアクチュエータ22を制御する。その際、ECU60は、アクチュエータ22に印加される駆動電流を圧力センサ72の出力信号値(過給圧)に応じて決定してもよい。例えば、ECU60は、圧力センサ72の出力信号値(過給圧)が小さくなるほど駆動電流を少なくしてもよい。
なお、前記したS201乃至S203の処理は、排気バルブ14の開弁タイミングEVOが目標開弁タイミングEVOtrgと一致するまで継続される。すなわち、ECU60は、S103において肯定判定されるまでS201乃至S203の処理を繰り返し実行する。
このようにECU60が掃気制御ルーチンを実行すると、過給圧の低下を緩和しつつ掃気効果の低下を抑制することができる。よって、内燃機関1の加速性能を高めることが可能となる。
なお、前述した第1及び第2の実施例では、排気バルブ14の開弁タイミングを変化させずに作用角を変更可能な可変作用角機構40を例示したが、排気バルブ14の閉弁タイミングを変化させずに作用角を変更可能な可変作用角機構、又は排気バルブ14の開弁タイミング及び閉弁タイミングを変化させつつ作用角を変更可能な可変作用角機構であってもよい。その場合は、排気バルブ14の開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミン
グまで遅角させる際に、第2可変位相機構23を併用すればよい。
1 内燃機関
1a シリンダブロック
1b シリンダヘッド
2 気筒
6 クランクポジションセンサ
7 吸気ポート
8 吸気バルブ
9 ロッカーアーム
10 吸気カム
11 吸気カムシャフト
12 排気ポート
14 排気バルブ
14a バルブステム
14b バルブスプリング
15 排気カムシャフト
16 排気カム
20 アクセルポジションセンサ
21 アクセルペダル
22 アクチュエータ
23 第2可変位相機構
24 第1可変位相機構
35 ローラロッカーアーム
36 ロッカーローラ
37 ラッシュアジャスタ
38 ロストモーションスプリング
40 可変作用角機構
60 ECU
70 吸気通路
71 スロットル弁
72 圧力センサ
80 遠心過給機
120 排気通路

Claims (3)

  1. 複数の気筒を有する内燃機関の制御システムにおいて、
    排気バルブの作用角を変更する可変作用角機構と、
    排気バルブの位相を変更する可変位相機構と、
    バルブオーバーラップ期間中に気筒内の既燃ガスが新気と入れ換わるように前記可変作用角機構及び前記可変位相機構を制御する掃気制御を行う制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、掃気制御を開始するときに、先ず排気バルブの開弁タイミングを自気筒の吸気バルブの開弁タイミングに対して次気筒の排気バルブの開弁タイミングが遅くなる掃気制御用の目標開弁タイミングに遅角し、次いで排気バルブの閉弁タイミングを自気筒の排気バルブの閉弁タイミングが自気筒の吸気バルブの開弁タイミングより遅くなる掃気制御用の目標閉弁タイミングに遅角すべく前記可変作用角機構及び前記可変位相機構を制御することを特徴とする内燃機関の制御システム。
  2. 請求項1において、前記制御手段は、排気バルブの開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミングに変更する際に、排気バルブの閉弁タイミングが固定されるように前記可変作用角機構および/または前記可変位相機構を制御することを特徴とする内燃機関の制御システム。
  3. 請求項1又2において、内燃機関の排気エネルギを利用して吸気を過給する遠心過給器と、
    前記遠心過給機による吸気の過給圧を取得する取得手段と、を更に備え、
    前記制御手段は、前記取得手段により取得された過給圧が目標過給圧以下である場合は、前記取得手段により取得された過給圧が目標過給圧より高い場合に比して、排気バルブの開弁タイミングを掃気制御用の目標開弁タイミングへ変更する際の変更速度が遅くなるように前記可変作用角機構および/または前記可変位相機構を制御することを特徴とする内燃機関の制御システム。
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