以下、本発明に係る既存建屋の屋根葺き替えユニット及び屋根葺き替え方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<<<既存建屋1>>>
図1A乃至図1Cは、既存建屋1の説明図である。図1Aには平面図を示し、図1Bには図1A中のB−B断面図を、また、図1Cには図1A中のC−C断面図を示している。なお、以下では、既存建屋1の桁行方向を前後方向とも言い、梁間方向を左右方向とも言う。また、図1A中では、既存建屋1の棟3の右側の屋根材5を取り外して示している。
既存建屋1(以下、建屋と言う)は、例えば工場や倉庫として使用される平屋であり、その外観形状は、梁間方向よりも桁行方向に長い略直方体である。屋根は切り妻造りであり、つまり梁間方向の中央の棟3を境に、その高さは、梁間方向の両端の軒先にかけて適宜な水勾配で徐々に低くなっている。
建屋1の支持架構は、建屋1の床面BSに立設された複数の門型フレーム7を本体とする。各門型フレーム7は、それぞれに、梁間方向に所定間隔を隔てて立設された一対の柱部8,8と、これら一対の柱部8,8の上端部に架け渡された梁部9とから構成されており、これら門型フレーム7は、桁行方向に所定ピッチで配置されている。
そして、桁行方向に互いに隣り合う柱部8,8同士の間には、側面壁部11が貼り渡されているとともに、桁行方向の両端の門型フレーム7には、それぞれ、一対の柱部8,8同士の間に前面壁部13及び後面壁部15が貼り渡されて四方が囲まれ、これにより、建屋1の内部には、図1Bに示すように、門型フレーム7の内側空間の立面と略同形の立面が桁行方向に連続してなる一つの大空間SP0が区画形成されている。
各梁部9は、上述の水勾配に対応させて棟3の部分にて屈折した略へ字状部材である。そして、桁行方向に隣り合う梁部9,9同士の間には、複数の母屋材17が梁間方向に適宜ピッチで架け渡されているとともに、これら母屋材17の上には、複数の屋根材5が敷設されてボルト止めされている。
各屋根材5は、梁間方向に長い帯状の鋼板であり、その長さは、棟3から軒先までに亘る長さを有している。そして、これら屋根材5は、桁行方向に並んで配置されており、桁行方向に隣り合う屋根材5,5同士は、互いの端縁にて、はぜ継ぎが施されて連結され、これにより、桁行方向に並ぶ全ての屋根材5が連結一体化されて建屋1の屋根をなしている。よって、母屋材17との止めボルトを外すとともに、はぜ継ぎを外せば、屋根材一枚単位で取り外し可能である。
ちなみに、当該屋根材5は、所謂折版である。つまり、帯状の鋼板が、図2の斜視図に示すように、梁間方向に沿う折れ線にて山谷の波形状に屈曲加工されてなり、これにより屋根材5の剛性が高められている。また、屋根材5の下面には、耐火被覆目的でアスベスト系断熱材が布設されている。
<<<屋根葺き替えユニット>>>
図3A乃至図3Cは、屋根葺き替えユニットの説明図であり、既存建屋1に屋根葺き替えユニットが配置された状態を示している。図3Aは平面図、図3Bは図3A中のB−B断面図、図3Cは図3A中のC−C断面図である。
屋根葺き替えユニットは、建屋外に配置される外部ユニット31と、建屋内に配置される内部ユニット81とを有する。外部ユニット31は、屋根材5の葺き替え作業時に生じ得るアスベスト等の異物の建屋外飛散を防ぐものであり、つまり、建屋1の屋根材5の上面に近接してその上方に略密閉状の屋根葺き替え作業用空間SP11を区画形成し(図中、薄い網掛けで示す範囲を参照)、当該作業用空間SP11内に異物を封じ込める。この外部ユニット31は建屋1の桁行方向へ移動可能であり、もって、葺き替え対象の屋根材5の交換が終わったら、前記作業用空間SP11が次ぎの葺き替え対象の屋根材5の上方に位置するように移動する。
他方、内部ユニット81は、屋根材5の葺き替え作業時に生じ得るアスベスト等の異物の建屋内飛散を防ぐものであり、つまり、建屋1の屋根材5の下面に隣接してその下方に略密閉状の隔離空間SP21を区画形成し(図中、薄い網掛けで示す範囲を参照)、当該隔離空間SP21内に異物を封じ込める。この内部ユニット81も、桁行方向へ移動可能であるとともに、前記隔離空間SP21が前記作業用空間SP11の下方に位置するように移動する。
よって、この屋根葺き替えユニットによれば、桁行方向に沿って葺き替え対象の屋根材5の位置へ外部ユニット31及び内部ユニット81を移動し、前記作業用空間SP11と前記隔離空間SP21との間に在る屋根材5を新規の屋根材5に交換したら、次ぎの葺き替え対象の屋根材5の位置へ外部ユニット31及び内部ユニット81を移動し、これを順次繰り返すことにより、屋根材5の葺き替えを建屋1の全長に亘って行うことになる。
つまり、葺き替え対象の屋根材5の位置へ外部ユニット31及び内部ユニット81が移動するので、外部ユニット31の作業用空間SP11及び内部ユニット81の隔離空間SP21は、それぞれに、当該葺き替え対象の屋根材5のみを覆い得るサイズであれば十分であり、もって、屋根葺き替え工事に際して建屋1の全体をシート等で覆わずに済み、結果、屋根葺き替え工事の規模を小さく抑えることができる。
また、桁行方向に大きい建屋1に対しては、後述のレールRを長くするというように、外部ユニット31及び内部ユニット81の桁行方向の移動ストローク量を長くしてやれば、外部ユニット31及び内部ユニット81のサイズを特に大きくしなくても対処可能である。よって、桁行方向に大きい建屋1に対しては、特に有効に屋根葺き替え工事の規模の拡大を抑えることができる。
以下、外部ユニット31と内部ユニット81について説明する。
<外部ユニット31>
図4A乃至図4Cは、何れも、既存建屋1に外部ユニット31が配置された状態を示しており、図4Aはその平面図、図4Bは図4A中のB−B断面図、図4Cは図4A中のC−C断面図である。
外部ユニット31は、図中太線で示すように、梁間方向に建屋1を挟んで互いに対向して立設された一対の脚部35,35と、建屋1の上方にて前記一対の脚部35,35に架け渡されて支持されて、内側に前記作業用空間SP11を区画形成する作業用空間区画部37とからなる門型構造体33を本体(以下、外部ユニット本体33と言う)とする。そして、当該外部ユニット本体33は、前記脚部35と地面Gとの間に設けられた移動機構によって、桁行方向に移動可能である。
(1)移動機構
移動機構は、建屋外の地面Gに、梁間方向に建屋1を挟んで配置された一対のレール群RG,RGと、レール群RGのレールR上を転動し、外部ユニット本体33の前記脚部35に設けられ外部ユニット本体33を支持する複数の車輪(不図示)と、外部ユニット本体33を桁行方向に牽引するウインチ(不図示)と、を有する。
各レールRは、その長手方向を建屋1の桁行方向に揃えつつ、その長さは、建屋1から桁行方向の前後にはみ出す長さに設定されている。よって、外部ユニット本体33を、建屋1の桁行方向の全長に亘る任意の位置に移動可能である。また、ウインチは、例えば、外部ユニット本体33の前方及び後方の各地面Gに配置されており、そして、各ウインチのワイヤーは、それぞれに、外部ユニット本体33に連結されている。よって、前側のウインチでワイヤーが巻き取られれば、その巻き取り量に応じた距離だけ前方へ外部ユニット本体33は牽引されて移動する一方、後側のウインチでワイヤーが巻き取られれば、その巻き取り量に応じた距離だけ後方へ外部ユニット本体33は牽引されて移動する。
ちなみに、レールRやウインチを用いずに移動機構を構成しても良く、例えば、外部ユニット本体33を支持するタイヤと、タイヤを駆動回転するモーターとを使用して、外部ユニット本体33を自走可能にしても良い。
(2)外部ユニット本体33
外部ユニット本体33の前記一対の脚部35,35は、何れも、枠組足場が略直方体状に組まれたものであり、その高さは、ほぼ建屋1の軒高と同高である。そして、一対の脚部35,35の上面には、それぞれに天板36が敷設され、更に、これら天板36の上には、前記作業用空間区画部37の両端部が載置固定され、これにより、作業用空間区画部37は、梁間方向に建屋1を跨いで一対の脚部35,35に架け渡されて両端支持されている。
作業用空間区画部37は、梁間方向に長い略直方体の外形形状を呈する。その外形寸法は、この内側に区画形成される前記作業用空間SP11内で葺き替え作業を無理なく行えるような十分な大きさに設定される。例えば、高さについては、作業者の身長よりも高く設定される一方、桁行方向の大きさについては、前記作業用空間SP11において桁行方向に並ぶ二枚の屋根材5,5のうちの一方を取り外す際にもう一方の屋根材5を作業床として互いに使用すべく、少なくとも二枚分の屋根材5の桁行方向の幅寸よりも大きいサイズに設定される。
この外形形状を維持するための骨組みフレームは、左側の脚部35の天板36の4つの出隅部に立設固定される4本の支柱(不図示)と、右側の脚部35の天板36の4つの出隅部に立設固定される4本の支柱(不図示)と、これら左右の脚部35,35の前記支柱の上端部に架け渡されて、建屋1の上方を梁間方向に跨いで配置される前後一対の梁部(不図示)と、を備えている。
そして、この骨組みフレームは、建屋1の屋根と対向する下面以外の5つの面、すなわち、上面37a、前面37b、後面37c、右面37d、及び左面37eにおいて、鉄板や塩ビ板等の金属製又は樹脂製の仕切板(仕切部材に相当)で気密に覆われており、これにより、内側には、外部空間と仕切られた略閉空間SP1が区画形成されている。ここで、下面に仕切板が設けられず底無し状になっているのは、作業用空間SP11内の作業者が建屋1の屋根材5に乗って葺き替え作業をするためである。また、前面37b及び後面37cに配置される仕切板は、それぞれに、建屋1の屋根の切り妻形状に対応させて、その下端縁が三角形状に切り欠かれており、これにより、外部ユニット本体33の桁行方向の移動の際に、建屋1の屋根と干渉しないようになっている。
なお、上記の仕切板の代わりにビニールシート等のシート状部材で各面37a,37b,…37eを覆っても良いが、風雨に対抗するには、作業用空間区画部37に適度な剛性が必要であり、このことから、好ましくは、上記の仕切板の如き板材で前記各面37a,37b,…37eを覆って骨組みフレームを補強する方が良い。また、上面37aに配置される仕切板は、作業用空間区画部37の屋根部(作業用屋根部に相当)となるので、前記閉空間SP1への採光の観点からは透明板や半透明板を用いるのが好ましい。
この作業用空間区画部37内の前記閉空間SP1は、更に、ビニールシート等の仕切シート39,39によって、梁間方向に三つの空間SP11,SP12,SP13に仕切られている。すなわち、建屋1の屋根の直上に位置する前記作業用空間SP11と、右側の脚部35の天板36直上に位置する搬入用空間SP12と、左側の脚部35の天板36直上に位置する搬出用空間SP13とに区画されている。
そして、右側の搬入用空間SP12からは新規の屋根材5が作業用空間SP11へ搬入される一方、作業用空間SP11において建屋1から取り外された屋根材5は、左側の搬出用空間SP13へと搬出される。よって、屋根材5の搬送方向を右から左への一方向に統一できて謂わば一方通行的に屋根材5は搬送されるので、搬送経路の錯綜を防止でき、葺き替え作業効率を高めることができる。
また、これら三つの空間SP12,SP11,SP13に跨って、ホイスト40のレール40aが梁間方向に連続して配置されており、レール40aには複数のウインチ40bがレール40aに沿って移動可能に吊り下げられている。よって、屋根材5の搬入及び搬出を、上記ホイスト40により行うことができて、葺き替え作業効率を更に高めることができる。
ちなみに、搬入用空間SP12及び搬出用空間SP13の床部は、それぞれに、上述の右側の脚部35の天板36及び左側の脚部35の天板36である。そして、これら天板36は、更に、各脚部35の内側の空間と、搬入用空間SP12及び搬出用空間SP13とを気密に仕切るための仕切板としても機能する。よって、作業用空間区画部37の下面の矩形開口の前辺L1及び後辺L2は、上記の前面37b及び後面37cの仕切板の下端縁で規定されているが、右辺L3及び左辺L4については、上記の天板36の内辺で規定される。
搬出用空間SP13と作業用空間SP11との間の仕切シート39には、建屋1から取り外された屋根材5を通すための扉(不図示)が形成されており、屋根材5が通る時には扉は開き、通らない時には略密閉状態に閉まる。搬出用空間SP13には、切断装置43が配置されており、この切断装置43は、作業用空間SP11から当該搬出用空間SP13へ搬出された屋根材5を、駆動回転刃等により小片に切断する。また、搬出用空間SP13の後方に隣接させて、予備空間SP14が設けられており、その更に後方には荷下ろし用空間SP15が設けられている。よって、切断装置43により小片に切断された屋根材5は、アスベストが透過不能な素材の袋に収容されて封口された後、予備空間SP14を経て荷下ろし用空間SP15へ水平搬送され、荷下ろし用空間SP15が具備する小型のホイスト(不図示)により地上へ荷下ろしされる。なお、ここで小型のホイストで十分なのは、屋根材5が切断装置43で小片に切断されていて、前記袋への屋根材5の収容重量を調整できるからである。また、予備空間SP14を設けている理由は、荷下ろし用空間SP15を介して外部空間の空気が搬出用空間SP13へ流入するのを防ぐためである。すなわち、搬出用空間SP13には、後述するように当該搬出用空間SP13等を負圧にするための除塵機(不図示)が設けられているが、他方、荷下ろし用空間SP15は外部空間と連通している。よって、搬出用空間SP13が荷下ろし用空間SP15に直結していると、搬出用空間SP13から荷下ろし用空間SP15への前記袋の排出の都度、搬出用空間SP13には空気が流入することになって、その結果、前記搬出用空間SP13等を負圧に維持し難くなるためである。
他方、搬入用空間SP13と作業用空間SP11との間の仕切シート39にも、屋根材5が通るサイズの扉(不図示)が形成されており、更に、搬入用空間SP12を挟んで前記仕切シート39の反対側の壁面、すなわち作業用空間区画部37の右面37dの仕切板にも、同サイズの扉(不図示)が形成されている。これら扉は、何れも、新規の屋根材5を作業用空間SP11へ取り込むためのものであり、すなわち、作業用空間区画部37の外で成型された新規の屋根材5は、前記右面37dの仕切板の扉を通って搬入用空間SP12へ取り込まれた後、前記仕切シート39の扉を通って作業用空間SP11へ送られる。なお、これら扉も、屋根材5が通る時には開き、通らない時には略密閉状態に閉まる。
搬入用空間SP12の梁間方向に隣接する位置には、外部ユニット本体33の脚部35とほぼ同高のステージ45が一体に設けられており、このステージ45(以下、屋根材成型ステージとも言う)には、屋根材成型装置47が載置されている。屋根材成型装置47は、コイル材Cから帯状の鋼板を梁間方向に繰り出すリール47aと、繰り出された鋼板Pを前記梁間方向に平行な折れ線の波形状に屈曲加工して折版を成型するプレス機47bと、を有している。そして、プレス機47bは、鋼板Pの投入口を梁間方向のリール47a側たる右側に向け、且つ、折版の排出口を梁間方向の搬入用空間SP12側たる左側に向けて配置されている。よって、屋根材成型装置47にて成型された折版は、梁間方向に沿って搬入用空間SP12へ向けて送出されて、前記排出口近傍のシャー装置(不図示)によって新規の屋根材5の必要長さに切断される。
なお、ここで、作業用空間SP11のホイスト40のレール40aは、前述したように、当該搬入用空間SP12にまで達している。よって、搬入用空間SP12に送出された折版たる新規の屋根材5は、前記ホイスト40のウインチ40bに吊り下げられた後、ウインチ40bごとレール40aに案内されて作業用空間SP11内へ即座に搬送され、これにより、葺き替え作業効率を更に高めることができる。
また、この屋根材成型ステージ45の前方に隣接する位置には、資材置き台49が一体に設けられており、当該資材置き台49は、資材を屋根材成型ステージ45へ荷揚げするためのホイスト(不図示)も備えている。よって、必要な資材を即座に作業用空間SP11へ搬送可能である。なお、この資材置き台49の平面サイズは、比較的小スペースである。この理由は、新規の屋根材5は、建屋1に取り付けられる直前に、屋根材成型装置47によりコイル材Cから成型されるため、資材置き台49にはコイル材Cの形態で保管されていて嵩張らないからである。
更に、搬入用空間SP12の後方には、これに隣接させて一体に浄化室SP16が設けられている。この浄化室SP16は、作業用空間SP11で葺き替え作業に従事した作業者が外部空間へ出る際に、外部空間へのアスベスト等の異物の持ち出しを防ぐための部屋であり、搬入用空間SP12の後面37cの仕切板に形成されたドアを介して搬入用空間SP12から入ることができる。そして、この浄化室SP16には、作業者に付着した異物を吹き飛ばすエアーシャワー装置が設けられており、浄化された作業者は、浄化室SP16の屋外に面したドアを介して外部空間へ出ていく。
なお、この外部空間への異物飛散防止に関連して、前記搬出用空間SP13には除塵機(不図示)が配置されている。この除塵機は、ブロワによって搬出用空間SP13の空気を筐体内に取り込んで、取り込んだ空気を除塵フィルターにて濾過後に、当該浄化空気を作業用空間区画部37の外たる外部空間に排出する。よって、除塵機の作動中には、除塵機に吸い込まれる空気量分、搬出用空間SP13、作業用空間SP11、及び搬入用空間SP12の気圧は、外部空間の気圧よりも低くなる。つまり、作業用空間区画部37内の閉空間SP1は負圧状態になり、その結果、当該閉空間SP1と外部空間とを仕切る作業用空間区画部37の前記仕切板の取り合いにおいて隙間があるような場合でも、そのような隙間からは、主に外部空間から前記閉空間SP1へと空気が流入されるので、異物の外部空間への漏出は有効に防止される。
ここで、特に大きくなり得る隙間としては、前記作業用空間SP11の下面が矩形状に開口していることから、当該下面の矩形開口と建屋1との間の隙間が挙げられる。よって、この矩形開口の四辺たる前辺L1、後辺L2、右辺L3、左辺L4には、それぞれに、建屋1との隙間を塞ぐためのシール部材51,55が設けられている。
図5A及び図5Bは、これらシール部材51,55の説明図である。図5Aには、外部ユニット本体33を前方から見た正面図を示し、図5Bには、図5A中のB−B断面図を示している。
先ず、前記矩形開口の前辺L1及び後辺L2に設けられるシール部材51について説明する。図4A及び図4Bに示すように、前記矩形開口の前辺L1及び後辺L2は、それぞれに、作業用空間SP11の前面37bを覆う仕切板の下端縁と、作業用空間SP11の後面37cを覆う仕切板の下端縁とに相当する。そして、図5Aに示すように、これら各下端縁L1,L2と屋根材5との間には各々隙間があるが、これらの隙間は、外部ユニット本体33が建屋1の上方を桁行方向に移動する際に、屋根材5と外部ユニット本体33との干渉を防ぐべく必要なものである。但し、外部ユニット本体33の停止中にあっては、隙間は開いていなくても良いため、この実施例では、図5Aに示すように、前記前面37b及び前記後面37cの仕切板の下端縁L1,L2には、外部ユニット本体33の停止中に前記隙間を塞ぐための帯状のシール板51が設けられている。
詳しくは、図5Bに示すように、前記下端縁L1,L2に固定されたヒンジ軸52を介してシール板51の基端部が前記下端縁L1,L2に沿って支持されており、これにより、シール板51の先端部は、ヒンジ軸52回りに上下旋回可能になっている。そして、シール板51の先端部が上方を向くように旋回して、図中の二点鎖線のように前記仕切板の外面に重なると、前記隙間が開いた状態になる一方、その状態から、上述と逆向きに旋回して先端部が下方を向くと、図中の実線のようにシール板51の先端部は、前記仕切板の下端縁L1,L2よりも下方に垂れ下がって、屋根材5の山部と谷部との間の斜面部5aに当接し、これにより隙間が塞がれる。なお、上述の除塵機により前記作業用空間SP11が負圧状態にされれば、このシール板51は前記隙間によって作業用空間SP11側へ吸引されて屋根材5へ押し付けられるようになるため、その密閉性は更に向上する。また、ヒンジ軸52にトーションスプリングを設けて、その捻りばね力でシール板51を下方に旋回する方向に付勢すれば、上記の屋根材5への押し付け力が更に高まるので、密閉性を一層向上させることができる。
ちなみに、前記仕切板の外面には、シール板51が重なった状態で係止するフック材等の係止部材(不図示)も設けられており、もって、外部ユニット本体33の移動中には、この係止部材によってシール板51は前記仕切板の外面に重なった状態に保持される。一方、外部ユニット本体33が停止した際には、係止部材の係止が解除されることにより、シール板51が屋根材5へ向けて旋回して当接し、作業用空間SP11を密閉状態にする。このようなシール板51の素材としては、硬質ゴム等の弾性体が挙げられる。
次に、作業用空間SP11の下面の矩形開口の右辺L3及び左辺L4に設けられるシール部材55について説明する。図5Aに示すように、これらシール部材55は、前記矩形開口の右辺L3と建屋1との間の隙間、及び、前記矩形開口の左辺L4と建屋1との間の隙間を塞ぐべく設けられるものであり、例えば、ビニールシート等のシート状部材55である。そして、各シート状部材55の一端は、前記右辺L3又は左辺L4に気密に取り付けられているとともに、他端55bは、前記脚部35建屋1の側面壁部11近傍まで張り出した支持部材56に支持されており、これにより、シート状部材55は、前記隙間を下方から覆って塞いでいる。
ところで、上述した前辺L1のシール板51及び後辺L2のシール板51にあっては、建屋1との隙間を塞ぐべく、前記シール板51を葺き替え対象の屋根材5よりも後方又は前方に位置する屋根材5に当接させている(図5Bを参照)。ところが、桁行方向の前端又は後端の屋根材5の葺き替えの際には、桁行方向の隣には屋根材5が無い。例えば、図6Aに示す前端の屋根材5の場合には、それよりも前方に屋根材5が無く、また、後端の屋根材5の場合には、それよりも後方に屋根材5が無い。それ故、前端の屋根材5の葺き替えの際には、作業用空間SP11の下面の矩形開口の前辺L1側の隙間をシール板51で塞ぐことができず、また、後端の屋根材5の葺き替えの際には、同じく前記矩形開口の後辺L2側の隙間をシール板51で塞ぐことができない。
そこで、この実施例では、前端の屋根材5を葺き替える場合には、図6Bに示すように、作業用空間区画部37の前面37bの仕切板に気密に取り付けられた養生シート61を建屋1の妻面たる前面壁部13まで引き出して貼り付け、これにより、前記矩形開口の前辺L1側の隙間を塞ぐようにしている。同様に、後端の屋根材5を葺き替える場合には、作業用空間SP11の後面37cの仕切板に気密に取り付けられた養生シート(不図示)を建屋1の妻面たる後面壁部15まで引き出して貼り付け、これにより前記矩形開口の後辺L2側の隙間を塞ぐようにしている。
但し、この養生シート61の前面壁部13及び後面壁部15への貼り付け作業を行うには、建屋1の妻面に対面しつつ建屋1よりも桁行方向の外側の位置に作業足場が必要となる。そこで、この外部ユニット本体33では、この養生シート61を妻面に貼り付ける際に用いる足場ユニット63を作業用空間区画部37内に搭載している。
図7A乃至図7Cに、足場ユニット63の説明図を示す。図7Aは、足場ユニット63を右側から見た側面図であり、図7Bは、足場ユニット63を前方から見た正面図であるまた、図7Cは、足場ユニット63の使用状態及び不使用状態を示す側面図である。
図7Aに示すように、足場ユニット63は、前端の屋根材5用及び後端の屋根材5用に各々設けられ、前者は、作業用空間区画部37の前面37bの仕切板に取り付けられている一方、後者は、作業用区間区画部37の後面37cの仕切板に取り付けられている。なお、両者とも同構成のため、以下では前者について説明する。
図7Aに示すように、前端用の足場ユニット63は、外部ユニット本体33の作業用空間SP11が建屋1の屋根の前端縁5bを前後に跨いで配置された状態で使用される。すなわち、不使用時には、図7Cの中央に示すように折り畳まれた状態で作業用空間SP11内に収容されているが、使用時には、図7Cの左側に示すように下方にスライドされた後に建屋1の方へ向けて拡げられ、これにより、建屋1の前面壁部13と作業用空間区画部37の前面37bの仕切板との間に水平な作業足場64が形成される。
詳しくは、図7A及び図7Bに示すように、足場ユニット63は、作業足場としての平板状の床板64と、この床板64を支持すべく梁間方向に適宜ピッチで配置された複数のリンク機構65,65,…65とを有する。各リンク機構65は、それぞれに、作業用空間区画部37の前面37bを覆う仕切板に上下スライド可能に案内支持された縦材65aと、縦材65aの上端部に水平ピン66を介して旋回可能に連結された斜材65bとを有する。また、縦材65aの下端部には、水平ピン66を介して床板64の一端部が鉛直方向から水平方向までに亘る90°だけ旋回可能に連結されており、更に床板64の他端部には、手摺りフレーム67が水平ピン66により床板64と平行な状態から垂直な状態までの90°だけ旋回可能に連結されている。
よって、不使用時においては、図7A中二点鎖線で示すように、足場ユニット63は折り畳まれて作業用空間SP11内に格納されているが、使用時には、同図中実線で示すように、先ず、縦材65aが下方へスライドして下端部が作業用空間SP11から下方に突出するとともに、縦材65aと重なって鉛直状態にあった床板64が、90°旋回して建屋1の方へ倒れて水平状態になり、更に、この水平状態の床板64に対して手摺りフレーム67が90°旋回して鉛直に立ち上がり、最後に、この手摺りフレーム67の上端部に前記斜材65bの端部が連結されれば、作業足場64が形成される。そして、この作業足場64が形成されたら、前面37bの仕切板に気密に取り付けられた前記養生シート61(不図示)が、作業足場64の上面に被さって覆うとともに、養生シート61の先端縁は、建屋1の妻面たる前面壁部13まで引き延ばされて密着され、これにより、作業用空間SP11の矩形開口の前側の隙間が塞がれて、もって外部空間への異物の飛散が防止される。ちなみに、不使用時の際には、上記の逆操作をすれば足場ユニット63は前記前面37bの仕切板に重なった状態に折り畳まれて作業用空間SP11内に収容される。
<内部ユニット81>
図8Aは、建屋1内に配置された内部ユニット81の正面図であり、図8Bは図8A中のB−B断面図である。
内部ユニット81は、梁間方向の両端に一対の脚部85,85を有する床部87を本体(以下、内部ユニット本体83と言う)とする。この内部ユニット本体83は、前記脚部85と建屋内の床面BSとの間に設けられた移動機構によって桁行方向に移動可能な所謂可動床であり、前述の外部ユニット本体33の移動に連動して、前記作業用空間SP11の下方に位置して移動し、前記作業用空間SP11の下方に、建屋内空間から隔離された隔離空間SP21(可動床上方空間に相当)を区画する(図中、網掛けで示す範囲を参照)。すなわち、前記床部87からその上方の屋根材5までに亘る空間(可動床上方空間に相当)を、建屋内空間から隔離する。
内部ユニット本体83の前記一対の脚部85,85は、何れも、例えば枠組足場が略直方体状に組まれたものであり、これら一対の脚部85,85は、互いの間に大きな間隔を隔てるべく、建屋1の左右の側面壁部11,11に近接配置されている。各脚部85,85の上面には、梁材等で補強された天板87が、梁間方向に架け渡されて前記床部87をなしており、これにより、内部ユニット本体83は略門型構造体の外観を呈している。
なお、ここで、上記の天板87が建屋1の天井たる屋根材5の下面に近接して配置されており、且つ、前記一対の脚部85,85が建屋1の左右の側面壁部11,11に近接配置されていることから、内部ユニット本体83は前記一対の脚部85,85の間に大きな空間を形成できて、もって、建屋内に元々在る既設物との干渉を有効に回避し得る。そして、その結果、内部ユニット本体83の桁行方向の移動に伴う建屋内の既設物の移動を極力行わずに済む。
前記床部87には、その上面の外周縁の全周に沿って手摺り部89が立設されている。そして、前記隔離空間SP21を形成する場合には、床部87の上面を覆って、気密性の養生シート(不図示)が配置されるとともに、上記手摺り部89を利用して前記養生シートの外周縁が上方へ立ち上げられた後、当該外周縁は、葺き替え対象の屋根材5の外側に位置する屋根材5に接着等により取り付けられて支持され、これにより、前記作業用空間SP11の下方には、建屋内空間から略密閉状態に隔離された前記隔離空間SP21が区画される。なお、この内部ユニット本体83の停止位置の近傍に、建屋1の支持架構たる門型フレーム7が在る場合には、前記養生シートの外周縁を門型フレーム7の梁部9に取り付けて支持させても良い。また、この隔離空間SP21は、建屋1の屋根材5が取り外された際に外部ユニット31の作業用空間SP11に連通するので、前述の搬出用空間SP13の除塵機によって負圧状態になり、もって、前記養生シートの取り付けに関し隙間が生じてしまう場合でも、その隙間から建屋内空間への異物の漏出は有効に防がれる。
移動機構は、前記一対の脚部85,85に対応させて、建屋1の床面BSにおける梁間方向の両端に、桁行方向に沿って配置された一対のレール群RG,RGと、レール群RGのレールR上を転動し、前記脚部85,85の下部に設けられて前記内部ユニット本体83を支持する複数の車輪(不図示)と、内部ユニット本体83を桁行方向に牽引するウインチ(不図示)と、を備えている。ウインチは、内部ユニット本体83の前方及び後方の各床面BSに配置されており、また、各ウインチのワイヤーは、それぞれに、内部ユニット本体83に連結されている。よって、前側のウインチでワイヤーが巻き取られれば、その巻き取り量に応じた距離だけ前方へ内部ユニット本体83は牽引されて移動する一方、後側のウインチでワイヤーが巻き取られれば、その巻き取り量に応じた距離だけ後方へ内部ユニット本体83は牽引されて移動する。
なお、内部ユニット本体83及び外部ユニット本体33の桁行方向の位置は、レーザー変位計等の適宜な位置センサーによりリアルタイムで検出され、これらの位置信号は、適宜なコンピュータからなる制御装置へ送信される。そして、この制御装置が、前方及び後方のウインチのワイヤーの巻き取り量を制御することにより、外部ユニット本体33の桁行方向の移動に連動して、内部ユニット本体83を移動する。すなわち、外部ユニット本体33の前記作業用空間SP11の下方に、内部ユニット本体83の前記隔離空間SP21が位置するように内部ユニット本体83を移動する。
<<<屋根葺き替え作業手順>>>
以上説明してきた屋根葺き替えユニットによれば、以下の手順で屋根葺き替え作業が行われる。
<屋根葺き替えユニットの組み立て>
(1)内部ユニット81の組み立て
図8A及び図8Bに示すように、先ず、建屋1内の床面BSに左右一対のレール群RGを配置し、内部ユニット牽引用のウインチを設置する。また、枠組足場で左右一対の脚部85,85を組むとともに、その下端部に車輪を取り付けて、前記一対の脚部85,85を、対応するレール群RGのレールR上に配置する。そして、これら一対の脚部85,85に、床部としての天板87を架け渡して固定したら、門型の内部ユニット本体83が形成される。
そうしたら、内部ユニット本体83の床部87に手摺り部89を立設し、しかる後に、内部ユニット本体83の床部87の上面に養生シートを敷いて覆ったら、養生シートの外周縁を、手摺り部89に引っ掛けて保持しておく。
(2)外部ユニット31の組み立て
図4A及び図4Bに示すように、先ず、建屋1外の地面Gに左右一対のレール群RGを配置し、外部ユニット牽引用のウインチを設置する。また、枠組足場で左右一対の脚部35,35を組むとともに、その下端部に車輪を取り付けて、前記一対の脚部35,35を、対応するレール群RGのレールR上に配置する。そして、これら一対の脚部35,35に、作業用空間区画部37の骨組みフレームを架け渡して固定するとともに、骨組みフレームの上面37a、前面37b、後面37c、右面37d、及び左面37eに仕切板を固定して覆えば、門型の外部ユニット本体33が形成される。
そうしたら、その作業用空間区画部37の閉空間SP1内にホイスト40のレール40a及びウインチ40bを設置するとともに、同閉空間SP1に2枚の仕切シート39,39を取り付けて、搬入用空間SP12、作業用空間SP11、及び搬出用空間SP13の三つに仕切り、更に、搬出用空間SP13には切断装置43及び除塵機を設置する。
また、作業用空間区画部37の対応する各部位に隣接させて、屋根材成型ステージ45、予備空間SP14、荷下ろし用空間SP15、浄化室SP16、資材置き台49を一体に設け、それぞれの場所に、対応する機器(屋根材成型装置47、荷下ろし用ホイスト、エアーシャワー装置、荷揚用ホイスト等)を配置する。
そして、これをもって、屋根葺き替えユニットの組み立て作業が終了し、次ぎに当該屋根葺き替えユニットによる葺き替え作業が行われる。
<屋根葺き替え>
(1)建屋1の後端部の屋根葺き替え
図9A乃至図9Dに、屋根葺き替えの様子を側面視で示す。この実施例では、屋根葺き替え作業を、建屋1の桁行方向の後端から前端へと順番に行っていく。従って、初回の葺き替え対象は後端の屋根材5であり、もって、始めに、図9Aに示すように、外部ユニット31及び内部ユニット81を建屋1の後端部へ移動する。
ここで、外部ユニット31は、桁行方向の後端の屋根材5の後端縁5cを作業用空間SP11が前後に跨ぐように配置される。そして、作業用空間SP11の後面37cの仕切板と後端の屋根材5との間に、後端用の足場ユニット63を拡げて作業足場64を形成し、しかる後に、この作業足場64上に養生シート61を敷設するとともに、養生シート61の前端縁を建屋1の後面壁部15に貼り付けて固定し、これにより作業用空間SP11の矩形開口の後辺L2と建屋1との隙間を塞ぐ。また、同矩形開口の前辺L1、右辺L3、及び左辺L4と建屋1との各隙間を、外部ユニット31の前記シール板51及び前記シート状部材55により塞ぐ。
一方、この時、内部ユニット81は、建屋1内の後端位置たる建屋1の後面壁部15の隣接位置へ移動しており、もって、内部ユニット81は、外部ユニット31の作業用空間SP11の下方に、屋根材5を挟んで位置している。そして、内部ユニット81の床部87上に隔離空間SP21を区画すべく、前記床部87を覆う養生シートの外周縁を上方へ持ち上げて、当該外周縁を、その全周に亘って葺き替え対象の屋根材5よりも外側の屋根材5又は門型フレーム7に固定し、しかる後に除塵機を作動して、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21を負圧にする。
そうしたら、葺き替え対象たる後端の屋根材5を建屋1から取り外すべく、作業用空間SP11において当該屋根材5のはぜ継ぎを外すとともに、母屋材17との止めボルトも外し、しかる後に、当該屋根材5をウインチ40bで吊り上げる。そして、ウインチ40bごとレール40aに沿って搬出用空間SP13へ屋根材5を搬送し、搬出用空間SP13の切断装置43で屋根材5を小片に切断する。そして、これら小片を気密袋に詰めて封口し、荷下ろし用空間SP15のホイストによって地上へ荷下ろししたら、処分場行きトラックに荷積みされる。
一方、屋根材5が取り外された建屋1の部分には、新規の屋根材5が取り付けられる。新規の屋根材5は、先ず、搬入用空間SP12の隣にある屋根材成型ステージ45の屋根材成型装置47によって、コイル材Cから成型される。成型された屋根材5は、搬入用空間SP12のウインチ40bにより吊り上げられ、そして、ウインチ40bごとレール40aに沿って作業用空間SP11へ搬送される。そうしたら、新規の屋根材5は、建屋1の母屋材17上に下ろされて母屋材17にボルト止めされる。
なお、このような屋根材5の取り外し及び取り付け作業は、建屋1の棟3を挟んで梁間方向の両側の屋根材5に対してそれぞれ行われる。
そうしたら、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21の清掃を行い、作業用空間SP11及び隔離空間SP21内に配置されたアスベスト濃度センサーにて濃度測定を行う。そして、アスベストの濃度測定値が許容範囲外の場合には再度清掃を行う一方、許容範囲内の場合には、外部ユニット31及び内部ユニット81を次の葺き替え対象の位置へ移動すべく準備する。すなわち、外部ユニット31については、建屋1から養生シート61を外すとともに後側用の足場ユニット63を折り畳んで作業用空間SP11に格納し、また、前記作業用空間区画部37の前記シール板51やシート状部材55を建屋1から外す等する一方、内部ユニット81については、前記養生シートの外周縁を建屋1の屋根材5等から外し、そして、除塵機を停止する。
(2)建屋1の後端部及び前端部以外の屋根葺き替え
上述のように後端の屋根材5の葺き替え作業が終わったら、図9Bに示すように、外部ユニット31及び内部ユニット81を桁行方向の前方へ移動して、次ぎの葺き替え対象の屋根材5を作業用空間SP11及び隔離空間SP21内に入れる。ここで、この移動の停止位置は、この直前に葺き替え済みの屋根材5の上方に、今回の作業用空間SP11の後端縁が位置するように決められる。そして、このように停止すれば、今回の葺き替え対象の屋根材5の後端縁を作業用空間SP11及び隔離空間SP21に完全に収めることができるので、今回の葺き替え対象の屋根材5の取り外しを、当該作業用空間SP11及び隔離空間SP21内において確実に行うことができる。
次に、外部ユニット31の作業用空間区画部37の前記シール板51及び前記シート状部材55によって、作業用空間SP11の矩形開口の前辺L1、後辺L2、右辺L3、及び左辺L4と建屋1との各隙間を塞ぐ。また、内部ユニット81の床部87上に隔離空間SP21を区画すべく、前記床部87を覆う養生シートの外周縁を上方へ持ち上げて、当該外周縁を、その全周に亘って葺き替え対象の屋根材5よりも外側の屋根材5又は門型フレーム7に固定する。そして、除塵機を作動して、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21を負圧にする。
そうしたら、作業用空間SP11において葺き替え対象の屋根材5のはぜ継ぎを外すとともに、母屋材17との止めボルトも取り外し、しかる後に、当該屋根材5をウインチ40bで吊り上げたら、ウインチ40bごとレール40aに沿って搬出用空間SP13へ屋根材5を搬送し、搬出用空間SP13の切断装置43で屋根材5を小片に切断する。そして、これら小片を気密袋に詰めて封口し、荷下ろし用空間SP15のホイストによって地上へ荷下ろししたら、処分場行きトラックに荷積みされる。これを、作業用空間SP11内に入っている全ての屋根材5に対して行う。
一方、屋根材5が取り外された建屋1の部分には、新規の屋根材5が取り付けられる。新規の屋根材5は、上述の後端の屋根材5の場合と同様に、屋根材成型装置47によってコイル材Cから成型され、搬入用空間SP12にてウインチ40bで吊り上げられて作業用空間SP11へと搬送される。そうしたら、新規の屋根材5は、その桁行方向の後方に隣り合う葺き替え済みの屋根材5にはぜ継ぎされるとともに、母屋材17にボルト止めされる。
そうしたら、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21の清掃を行い、アスベスト濃度センサーにて濃度測定を行う。そして、アスベストの濃度測定値が許容範囲外の場合には再度清掃を行う一方、許容範囲内の場合には、外部ユニット31及び内部ユニット81を次の葺き替え対象の位置へ移動すべく準備をする。すなわち、外部ユニット31の前記シール板51及びシート状部材55を建屋1から外す等する一方、内部ユニット31の前記養生シートの外周縁を建屋1の屋根材5等から外し、そして、除塵機を停止する。
そうしたら、図9Cに示すように、外部ユニット31及び内部ユニット81を、図9Cに示すように前方の未葺き替えの屋根材5の位置へ移動し、そして、その作業用空間SP11及び隔離空間SP21内の未葺き替えの屋根材5に対して上述の葺き替え作業が繰り返される。
(3)建屋1の前端部の屋根葺き替え
上述の葺き替え作業が行われる度に、外部ユニット31及び内部ユニット81が順次前方へ移動して、その結果、図9Dに示すように建屋1の前端部に達したら、最後に、前端の屋根材5に対して葺き替え作業が行われる。この作業は、上述した建屋1の後端部の葺き替え作業と前後関係が逆なだけであり、その作業内容は概ね同じである。
すなわち、外部ユニット31は、桁行方向の前端の屋根材5の前端縁5bを作業用空間SP11が前後に跨ぐように配置される。そして、作業用空間SP11の前面37bの仕切板と前端の屋根材5との間に、前端用の足場ユニット63を拡げて作業足場64を形成し、しかる後に、この作業足場64上に養生シート61を敷設するとともに、養生シート61の後端縁を建屋1の前面壁部13に貼り付けて固定し、これにより作業用空間SP11の矩形開口における前辺L1と建屋1との隙間を塞ぐ。また、作業用空間SP11の矩形開口の後辺L2、右辺L3、及び左辺L4と建屋1との各隙間を、外部ユニット31の前記シール板51及び前記シート状部材55によって塞ぐ。
一方、この時、内部ユニット81は、建屋1内の前端位置たる建屋1の前面壁部13の隣接位置へ移動しており、もって、内部ユニット81は、外部ユニット31の作業用空間SP11の下方に屋根材5を挟んで位置している。そして、内部ユニット81の床部87上に隔離空間SP21を区画すべく、床部87を覆う養生シートの外周縁を上方へ持ち上げて、当該外周縁を、その全周に亘って葺き替え対象の屋根材5よりも外側の屋根材5又は門型フレーム7に固定し、しかる後に除塵機を作動して、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21を負圧にする。
そうしたら、葺き替え対象たる前端の屋根材5を建屋1から取り外すべく、作業用空間SP11において母屋材17との止めボルトを外し、しかる後に、取り外した屋根材5を搬出用空間SP13の切断装置43で小片に切断し、これら小片を気密袋に詰めたら、荷下ろし用空間SP15を経て、処分場行きトラックに荷積みされる。
一方、屋根材5が取り外された建屋1の部分には、屋根材成型装置47により成型された新規の屋根材5が取り付けられる。
そうしたら、作業用空間SP11、搬入用空間SP12、搬出用空間SP13、及び隔離空間SP21の清掃を行い、アスベスト濃度センサーにて濃度測定を行い、許容範囲内の場合には、除塵機を停止する。
そして、以上をもって、建屋1の全ての屋根材5が葺き替えられたことになり、この後、外部ユニット31及び内部ユニット81の解体作業が行われて、一連の建屋1の屋根葺き替え作業が完了する。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
(a)上述の実施形態においては、既存建屋1の屋根材5にアスベストが布設されている場合を例示したが、何等これに限るものではない。例えば、アスベスト等が布設されていない単なる折版の屋根材5であっても良い。そして、その場合には、葺き替え作業時の作業用空間SP11や隔離空間SP21の密閉条件を緩和できて、例えば、シール板51等のシール部材や除塵機を省略しても良いし、更には、浄化室SP16やアスベストの濃度測定作業も省略して良い。
また、葺き替え作業時に伴う異物の飛散が殆ど無い場合には、更に屋根葺き替えユニットの構成要素を更に省いても良い。例えば、「居ながら施工」を行う場合には、建屋1の屋根材5を取り外した際に建屋の雨仕舞いが確保されていれば良く、ここで、雨仕舞いに必須の構成は、外部ユニット本体33の作業用空間区画部37の上面37aを覆う仕切板たる作業用屋根部だけになる。よって、前記作業用空間区画部37の前面37b、後面37c、右面37d、及び左面37eを覆う仕切板を省略しても良いし、更には、建屋1内の内部ユニット81を省略しても良い。
(b)上述の実施形態においては、内部ユニット本体83を建屋1の床面BSのレールRによって桁行方向に移動可能に案内支持していたが、何等これに限るものではない。例えば、図10Aの内部ユニット81の正面図及び図10A中のB−B断面図たる図10Bに示すように、建屋1の門型フレーム7の各柱部8の上端部に、桁行方向に沿ってレールRを架け渡して固定するとともに、当該レールRに内部ユニット本体83の車輪Wを係合させて吊り下げることにより、内部ユニット本体83の床部87を桁行方向に移動可能に案内支持しても良い。
(c)上述の実施形態においては、既存建屋1の説明について、タイトフレームや面戸、樋などの説明を省略しているが、上述した既存建屋1がこれらの部材を備えていても良く、また、これらの部材を備えている場合には、上述の屋根葺き替え作業に際し、適宜これらの部材の取り外し及び取り付けが行われるのは言うまでもない。